特許第6763760号(P6763760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763760
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】グリーンタイヤの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/32 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   B29D30/32
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-239601(P2016-239601)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-94754(P2018-94754A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 謙介
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−067030(JP,U)
【文献】 特開昭56−120329(JP,A)
【文献】 特開昭52−021086(JP,A)
【文献】 特開昭57−075844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00− 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に軸方向の両端からはみ出すようにカーカスプライを支持するドラムと、
前記ドラムの軸方向外方に先端を前記ドラムに向け、先端に向かうほど拡径するように周方向に並べて配置され、基端部を支点に径方向へ移動可能に設けられた複数の羽根部と、
前記ドラムの軸方向外方において軸方向に移動可能に設けられたガイドリングと、
ビードコアを保持するビードセットリングと
を備え、
前記ガイドリングの内周面が前記羽根部の外面を前記ドラムへ向けて摺動することで、前記カーカスプライにおいて前記ドラムからはみ出すオーバーハング部を複数の前記羽根部が径方向内方へ折り曲げ、折り曲げられたオーバーハング部に前記ビードセットリングが保持するビードコアを圧着するグリーンタイヤの製造装置において、
前記ガイドリングは、軸方向のドラム側の内径が反ドラム側より大きいグリーンタイヤの製造装置。
【請求項2】
前記ガイドリングの内周面は、軸方向の反ドラム側からドラム側に向かうほど内径が大きくなるテーパ面をなしている請求項1に記載のグリーンタイヤの製造装置。
【請求項3】
軸方向に対する前記ガイドリングの内周面の角度が10度以上30度以下である請求項2に記載のグリーンタイヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンタイヤの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリーンタイヤの製造装置において、ドラムの外周面に軸方向の両端からはみ出すようにカーカスプライを巻付け、ドラムからはみ出したオーバーハング部を径方向内方に折り曲げつつ、ビードコアをオーバーハング部に圧着して取り付ける装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
このような製造装置は、カーカスプライを支持するドラムに加え、ドラムの軸方向外方に先端をドラムに向けて配置された複数の羽根部と、羽根部の外面を摺動するガイドリングと、ビードコアを保持するビードセットリングと、ガイドリング及びビードセットリングをドラムの軸方向外方において軸方向に移動可能に保持するビードホルダとを備える。複数の羽根部は、先端に向かうほど拡径するように周方向に並べて配置され、基端部を支点に径方向へ移動可能に設けられている。
【0004】
そして、複数の羽根部の先端側が径方向に広がった開径状態からガイドリングの内周面が羽根部の外面をドラムへ向けて摺動することで、複数の羽根部の先端側が径方向内方へ移動して縮径状態となり、カーカスプライのオーバーハング部を径方向内方へ折り曲げ、折り曲げられたオーバーハング部にビードセットリングが保持するビードコアを圧着するようになっている。
【0005】
上記のグリーンタイヤの製造装置では、設備の共通化を図るため異なるサイズのタイヤを同じ装置して製造することがあるが、このような場合に次のような問題がある。
【0006】
すなわち、カーカスプライやビードコアはタイヤサイズに応じて変わるため、これらを支持するドラムやビードセットリングはタイヤサイズに応じて径方向の位置が変化するが、羽根部やガイドリングの位置はタイヤサイズが変化しても径方向の位置が変化しない。そのため、タイヤサイズの小さいタイヤを製造する場合、羽根部の先端側が径方向内方へ移動を開始してからカーカスプライのオーバーハング部に接触するまでの距離が長くなり、その結果、カーカスプライのオーバーハング部を径方向内方へ折り曲げる量(径方向内方の移動量)が小さくなり、ビードコアやその外周に設けられたビードフィラとカーカスプライとの間にエアが入りやすくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−67030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の問題に鑑み、カーカスプライのオーバーハング部を半径方向内方に折り曲げつつ、ビードコアをオーバーハング部に圧着して取り付けるグリーンタイヤの製造装置において、異なるサイズのタイヤを製造する場合であっても、ビードコアやビードフィラとカーカスプライとの間にエアが入りにくいグリーンタイヤの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のグリーンタイヤの製造装置は、外周面に軸方向の両端からはみ出すようにカーカスプライを支持するドラムと、前記ドラムの軸方向外方に先端を前記ドラムに向け、先端に向かうほど拡径するように周方向に並べて配置され、基端部を支点に径方向へ移動可能に設けられた複数の羽根部と、前記ドラムの軸方向外方において軸方向に移動可能に設けられたガイドリングと、ビードコアを保持するビードセットリングと、を備え、前記ガイドリングの内周面が前記羽根部の外面を前記ドラムへ向けて摺動することで、前記カーカスプライにおいて前記ドラムからはみ出すオーバーハング部を複数の前記羽根部が径方向内方へ折り曲げ、折り曲げられたオーバーハング部に前記ビードセットリングが保持するビードコアを圧着するグリーンタイヤの製造装置において、前記ガイドリングは、軸方向のドラム側の内径が反ドラム側より大きいものである。
【0010】
本発明の好ましい態様において、前記ガイドリングの内周面は、軸方向の反ドラム側からドラム側に向かうほど内径が大きくなるテーパ面をなしている。この場合において、軸方向に対する前記ガイドリングの内周面の角度が10度以上30度以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグリーンタイヤの製造装置では、ガイドリングの軸方向ドラム側の内径が反ドラム側より大きいため、羽根部の開径状態において羽根部の先端側を径方向外方へ大きく開かせることができる。これにより、羽根部がカーカスプライのオーバーハング部を径方向内方へ折り曲げる量を大きくすることができ、ビードコアやビードフィラとカーカスプライとの間にエアが入るのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態のグリーンタイヤの製造装置の概略断面図
図2】摺動ブロックに設けられた羽根部の断面図。
図3】摺動ブロック及びビードホルダをドラムに近接移動させた状態を示すグリーンタイヤの製造装置の概略断面図。
図4】ビードコアをオーバーハング部に圧着した状態を示すグリーンタイヤの製造装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態のグリーンタイヤの製造装置の概略断面図である。
【0014】
グリーンタイヤの製造装置は、図1に示すように、カーカスプライKを支持するドラム1と、ドラム1の軸方向外方X1に設けられた羽根ホルダ2及びビードホルダ20とを備える。なお、グリーンタイヤの製造装置では、羽根ホルダ2及びビードホルダ20がドラム1の軸方向Xの両側に設けられているが、いずれも同一の構成を備えるため、ここでは、軸方向一方側について詳述した軸方向他方側の羽根ホルダ2及びビードホルダ20の説明を省略する。
【0015】
ドラム1は、外周面に円筒状のカーカスプライKを支持する本体部1aと、本体部1aの軸方向両端部に本体部1aより外径の小さい縮径部1bとを備える。カーカスプライKの軸方向Xの両端部は、ドラム1の本体部1aより軸方向外方X1へはみ出すオーバーハング部Kaをなしている。
【0016】
羽根ホルダ2は、軸方向Xに移動可能に設けられた摺動ブロック3を備える。この摺動ブロック3は、ドラム1の軸方向外方X1においてドラム1に対して近接離隔移動する。摺動ブロック3の外周面には、ドラム1の回転軸Lの周りに等間隔に配置された複数の突起3aが突出している。
【0017】
複数の突起2aのそれぞれには、羽根部10が取り付けられている。これにより複数の羽根部10が摺動ブロック3の外周面に回転軸Lの周りに並べて配置されている。複数の羽根部10は、先端に向かうほど拡径するように、先端部10aをドラム10へ向けた状態で基端部10bが突起3bに対してピン4によって連結されている。つまり、複数の羽根部10は、基端部10bから先端部10aに向かうほど回転軸Lから離れるように傾斜した状態で、基端部10bに設けられたピン4を支点として径方向Rに移動可能に設けられている。
【0018】
羽根部10は、基端側の幅が狭く、先端側の幅が広い略台形の板状体からなる。図2に示すように、羽根部10の断面形状は、幅方向の一方側10cが大径の円弧状に、また他方側10dが上記一方側10cよりも羽根部10の厚み相当する長さだけ小さい半径の円弧状にそれぞれ形成されている。
【0019】
ビードホルダ20は、羽根ホルダ2の外側を囲むように配置され、軸方向Xに移動可能に設けられた摺動円筒部21を備える。摺動円筒体21のドラム側端面には、ビードセットリング22が固定され、このビードセットリング22にビードコアCの外周面にビードフィラFを固定したビードBが保持されるようになっている。
【0020】
また、摺動円筒体21の内周面には、ガイドリング23が固定されている。このガイドリング23は、軸方向内方X2に相当する軸方向のドラム側X2の内径riが、軸方向外方X1に相当する反ドラム側X1の内径roより大きく、ガイドリング23の内周面23aが、軸方向Xの反ドラム側X1からドラム側X2へ向けて内径が漸次大きくなるテーパ面をなしている。なお、ガイドリング23の内周面23aは、軸方向Xに対する角度θを10度以上30度以下に設定することが好ましい。
【0021】
ガイドリング23の内周面23aは、羽根ホルダ2の羽根部10の外面に接触している。摺動円筒体21が羽根ホルダ2に対して軸方向Xへ移動してビードセットリング22とともにガイドリング23が軸方向Xへ移動すると、ガイドリング23の内周面23aが羽根部10の基端部10bと先端部10aとの間を摺動する。
【0022】
図1及び図3に示すように、ガイドリング23が羽根部10の基端部10bに位置すると、複数の羽根部10は先端側が径方向外方R1に広がった開径状態となる。その際、ガイドリング23は軸方向Xのドラム側の内径riが反ドラム側の内径roより大きくなっているため、開径状態においてガイドリング23の軸方向ドラム側X2と羽根部10とが干渉しにくくなり、回転軸Lに対する羽根部10の角度が大きくなるように、羽根部10の先端側を径方向外方R1に大きく広げることができる。
【0023】
そして、ガイドリング23が羽根部10の基端部10bから先端部10aへ摺動すると、図4に示すように、ガイドリング23の内周面23aによって羽根部10が径方向内方R2へ押し下げられ、羽根部10の先端部10aが縮径する縮径状態となる。また、ガイドリング23が羽根部10の先端部10aから基端部10bへ摺動すると、羽根部10の先端部10aは、図4に示すような縮径状態から図1及び図3に示すような開径状態に戻るようになっている。
【0024】
次に上記構成のグリーンタイヤの製造装置の動作について説明する。
【0025】
まず、ドラム1の本体部1aの軸方向両側にオーバーハング部Kaができるように本体部1aの外周面にカーカスプライKを支持させるとともに、ビードホルダ20のビードセットリング22にビードBのビードコアCを保持させる。この時、図1に示すように、羽根ホルダ2は、羽根部10の先端部10aがカーカスプライKのオーバーハング部Kaから軸方向外方X1へ離れるように配置され、ビードホルダ20は、ガイドリング23が羽根部10の基端部10bに接触するように配置される。
【0026】
次いで、ガイドリング23が羽根部10の基端部10bに接触した状態を保つように羽根ホルダ2とビードホルダ20とを、同期して軸方向ドラム側X2へ移動させてドラム1に近づけ、図3に示すように、羽根部10の内面にカーカスプライKのオーバーハング部Kaを当接させる。なお、羽根部10の内面がオーバーハング部Kaに当接すると、羽根ホルダ2の摺動ブロック3がドラム1の縮径部1bの軸方向端面に当接するように設けて羽根ホルダ2を軸方向Xのドラム側へ移動させる際の位置決めを行ってもよい。
【0027】
次いで、羽根ホルダ2を軸方向反ドラム側X1へ移動させるとともに、ビードホルダ20を軸方向ドラム側X2へ移動させる。これにより、ビードホルダ20に設けられたガイドリング23の内周面23aが羽根部10の基端部10bから先端部10aへ摺動するため、図4に示すように、複数の羽根部10がオーバーハング部Kaを径方向内方R2へ折り曲げながら縮径状態となる。
【0028】
次いで、ビードホルダ20を軸方向ドラム側X2へ更に移動させ、径方向内方へ折り曲げられたオーバーハング部Kaにビードセットリング22が保持するビードコアCを当接させる。オーバーハング部Kaに当接したビードコアCは、ビードセットリング22とドラム1の本体部1aとの間で挟持されることでオーバーハング部Kaに圧着される。
【0029】
次いで、オーバーハング部KaにビードコアCを圧着すると、ビードBをカーカスプライKに残してビードホルダ20を軸方向反ドラム側X1へ移動させる。
【0030】
そして、不図示のブラダーを膨張させてオーバーハング部KaのうちビードコアCより径方向内方R2へ垂れ下がる部分をビードBの回りに折り返すことで、軸方向Xの両端部にビードBを取り付けた円筒状のカーカスプライKが得られる。
【0031】
以上のような本実施形態のグリーンタイヤの製造装置では、ガイドリング23は軸方向Xのドラム側の内径riが反ドラム側の内径roより大きくなっているため、ガイドリング23が羽根部10の基端部10bに位置する開径状態においてガイドリング23の軸方向Xのドラム側と羽根部10とが干渉しにくくなり、回転軸Lに対する羽根部10の角度が大きくなるように、羽根部10の先端側を径方向外方R1に大きく広げることができる。その結果、ガイドリング23を基端部10bから先端部10aへ摺動させると、羽根部10の先端部10aが径方向内方R2へ大きく移動するため、オーバーハング部Kaの径方向内方R2への折り曲げる量が大きくなり、ビードコアやビードフィラとカーカスプライとの間にエアが入るのを抑えることができる。
【0032】
また、本実施形態のようにガイドリング23の内周面23aを軸方向反ドラム側X1からドラム側X2に向かうほど内径が大きくなるテーパ面とすることで、羽根部10の外面と面接触させることができ、ガイドリング23の摩耗を抑えることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1…成型ドラム、1a…本体部、1b…縮径部、2…羽根ホルダ、3…摺動ブロック、3a…突起、4…ピン、10…羽根部、10a…先端部、10b…基端部、20…ビードホルダ、21…摺動円筒体、22…ビードセットリング、23…ガイドリング、23a…内周面、K…カーカスプライ、Ka…オーバーハング部
図1
図2
図3
図4