【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題を鑑みて発明されたものであって、筆記時の芯の消耗に応じて、使用者が任意のタイミングで該芯を筆記面に強く押圧することで、当該芯が前方に繰り出されるシャープペンシルを単純な構造で提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、
「1.軸筒と、当該軸筒内に配され芯の前進は許容するが後退は阻止するチャックを有する芯繰出機構と、前記芯を適度な力で保持する芯保持部材と、を備え、前記芯を軸心に沿って後方へ押圧することにより当該芯を前方に繰り出すシャープペンシルであって、
前記軸筒が、当該軸筒の前端開口部から前端を突出させ前後動可能に配設された先部材と、当該先部材の先端開口部から前端を突出させ前後動可能に配設されたスライド部材と、当該スライド部材に内設した前記芯保持部材と、前記先部材を前方に弾発する第一の弾発部材と、前記芯繰出機構を前方に弾発する第二の弾発部材と、を備え、
前記軸筒と、前記先部材または前記芯繰出機構と、の間に摺動速度制御手段を有しており、
前記芯を後方に押圧することで、前記軸筒に対して前記芯繰出機構及び前記先部材が後退し、
前記芯に掛かる押圧を解除した際、前記摺動速度制御手段により、前記軸筒に対する前記先部材の前進する速度と、当該軸筒に対する前記芯繰出機構の前進する速度と、に速度差を発生させることで前記芯を前方へ繰り出すことを特徴としたシャープペンシル。
2.前記摺動速度制御手段として、前記軸筒と、当該軸筒に対して前後動可能に配設された前記先部材または芯繰出機構と、の間に粘性材料を有することで、前記先部材の後退および前進動作に摺動抵抗をも持たせ、前記軸筒に対する前記先部材の前進する速度と、当該軸筒に対する前記芯繰出機構の前進する速度と、に速度差を発生させたことを特徴とする前記1項に記載のシャープペンシル。
3.前記摺動速度制御手段として、前記先部材には、軸径方向に弾性力を有する弾性片が当該先部材の本体と一体または別体で形成されており、前記弾性片と前記軸筒の内面とを摺接するよう構成することで、前記先部材の後退および前進動作に摺動抵抗をも持たせ、前記軸筒に対する前記先部材の前進する速度を当該軸筒に対する前記芯繰出機構の前進する速度より遅くしたことを特徴とする前記1項または2項に記載のシャープペンシル。」である。
【0009】
本発明のシャープペンシルは、筆記により芯が摩耗し、先部材の先端からの芯の突出量が減少した際に、筆記先端である芯を筆記面等に押圧することで、芯と共に芯繰出機構と先部材とを軸筒に対して後退させ、芯を筆記面から離して当該芯への押圧を解除した際、
軸筒と、先部材または芯繰出機構と、の間に設けた摺動速度制御手段により、軸筒に対する先部材が前進する速度と、軸筒に対する芯繰出機構が前進する速度と、に速度差を発生させることが肝要である。
【0010】
前記摺動速度制御手段により、軸筒に対する先部材が前進する速度を、軸筒に対する芯繰出機構が前進する速度より相対的に遅くした場合、芯を筆記面から離した際、芯繰出機構は先部材より先に前進し元の位置に戻るが、この際、チャックで狭持した芯を芯繰出機構により前進させる力は、芯保持部材の保持力よりも高いため、芯を先部材に対して前進させる。そして、遅れて前進する先部材は芯保持部材で芯を保持しており、チャックは芯の前進は許容するため、チャックで狭持した芯を前方に引き出しつつ元の位置に戻る。このため、芯を後方に押圧することで芯を前方に繰り出すことが可能となる。
また、前記摺動速度制御手段により、軸筒に対する先部材が前進する速度を、軸筒に対する芯繰出機構が前進する速度より相対的に早くした場合、芯を筆記面から離した際、先部材は芯繰出機構より先に前進し元の位置に戻るが、この際、芯繰出機構のチャックは芯の前進を許容するため、芯保持部材で芯を保持している先部材により当該芯がチャックから前方に引き出される。そして、遅れて前進する芯繰出機構のチャックは芯の後退は許容せず強く狭持していることから、芯を狭持したまま前進し、芯を先部材から前方に突出させる。このため、芯を後方に押圧することで芯を前方に繰り出すことが可能となる。
【0011】
また、本発明の芯繰出機構は、芯の前進は許容するが後退は阻止するものであればその構造は限定さればいが、例えば公知のチャックと締め具の間にボールを配置したボールチャックが好適に使用できる。
【0012】
また、前記第一の弾発部材は、先部材を前方に弾発していれば、形状や構成は限定されないが、例えば、軸筒と先部材との間に第一の弾発部材を張架して当該先部材を前方に弾発してもよく、芯繰出機構と先部材との間に第一の弾発部材を張架して当該先部材を前方に弾発してもよい。
【0013】
更に、第ニの弾発部材は芯繰出機構を前方へ弾発していれば、第一の弾発部材と同様に、形状や構成は限定されないが、例えば、軸筒と芯繰出機構との間に張架して当該芯繰出機構を前方に弾発してもよい。
また、筆記時の筆圧では芯が後退しないよう、第二の弾発部材の弾発力は筆圧より高くすることが好ましい。このため、一般的に筆記具で筆記する際の筆圧は1.5Nから2.5N程度であり、高くても4.0N程度であることから、第二の弾発部材の取付時の弾発力は4.0N以上が好ましく、5.0N以上がより好ましい。
【0014】
次に、前記摺動速度制御手段により、軸筒に対する先部材が前進する速度と、軸筒に対する芯繰出機構が前進する速度と、に速度差を発生させる手段としては、先部材と軸筒の間に粘性材料を塗布し、軸筒に対する先部材の摺動に摺動抵抗を付加することで、軸筒に対する芯繰出機構の前進速度より軸筒に対する先部材の前進速度を遅延させてもよく、芯繰出機構と軸筒の間に粘性材料を塗布し、軸筒に対する芯繰出機構の摺動に摺動抵抗を付加することで、軸筒に対する先部材の前進速度より軸筒に対する芯繰出機構の前進速度を遅延させてもよい。また、前記粘性材料の変わりにシリコンオイル、二硫化モリブデン、フッ素樹脂、黒鉛などの潤滑剤を塗布し摺動抵抗を減らすことで速度差を発生させてもよい。
【0015】
尚、前記粘性材料としては、ダンパー用グリースを好適に用いることができ、その稠度(グリースの硬さ)は適度に摺動抵抗を出せるように、130以上385以下が好ましく、175以上340以下がより好ましい。
また、本発明において、前記稠度とは、グリースの硬さを表す数値であり、JIS−K2220に準拠した方法で測定したものである。
【0016】
また、摺動速度制御手段として、先部材には軸径方向(軸方向に対して直交する方向)に弾性力を有する弾性片を設け、弾性片と軸筒内面とを摺接させることで摺動抵抗を向上させてもよい。
尚、前記弾性片は軸筒内面に摺接され、軸筒に対して先部材の前後動に摺動抵抗を付加するものであればその構造は特に限定されないが、例えば、弾性を有する弾性片の一端が先部材本体に接続され、他端部が軸筒の内面に常に摺接するよう形成して摺動抵抗を発生させてもよく、軸筒と先部材との両方に当接するようにゴム部材を配設して摺動抵抗を発生させてもよい。また、前記ゴム部材の形状としては、Oリングのように円管状に形成してもよく、板状に形成してもよい。さらに、その固定手段は先部材の外面ないし軸筒の内面に溝状部を設けてゴム部材を嵌着してもよく、接着剤を塗布して固着してもよく、2色成形を用いて先部材と一体で成形してもよい。
さらにゴム部材は、摺動抵抗を発生できればその材料は限定されないが、成形性がよく摩耗し難いシリコンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム等が好適に使用できる。