特許第6763782号(P6763782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコムの特許一覧

<>
  • 特許6763782-位置指示器 図000002
  • 特許6763782-位置指示器 図000003
  • 特許6763782-位置指示器 図000004
  • 特許6763782-位置指示器 図000005
  • 特許6763782-位置指示器 図000006
  • 特許6763782-位置指示器 図000007
  • 特許6763782-位置指示器 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763782
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】位置指示器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20200917BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   G06F3/03 400F
   G06F3/03 400A
   G06F3/046 B
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-571910(P2016-571910)
(86)(22)【出願日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2016050623
(87)【国際公開番号】WO2016121478
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-16973(P2015-16973)
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 広幸
【審査官】 菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−005148(JP,U)
【文献】 特開平05−019937(JP,A)
【文献】 特開平11−095903(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3181323(JP,U)
【文献】 特開2009−086925(JP,A)
【文献】 特開2011−186803(JP,A)
【文献】 特開2012−221304(JP,A)
【文献】 特表平08−511372(JP,A)
【文献】 特開2014−021674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口部を有する筒状の筐体と、
前記筐体内に収納される複数の芯体と、
前記複数の芯体の内の一つの芯体の少なくとも先端を、選択的に前記開口部から突出させるようにする芯体選択機構部と、
前記筐体の前記開口部を有する前記一端側に配設される、コイルが巻回されている磁性体コアと、
前記磁性体コアの前記芯体の挿入側に設けられて、前記磁性体コアを前記筐体の前記一端側に固定する固定部材と、
を備え、
前記磁性体コアは、前記複数の芯体の内の一つの芯体が挿入及び挿通可能であって、前記開口部と連通するようにされた第1の貫通孔を有し、
前記固定部材は、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔の中心軸と同一の中心軸を有する第2の貫通孔を有すると共に、前記固定部材の前記第2の貫通孔は、前記芯体が挿入される側の径が、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔との連通側の径よりも大きく、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔との連通側の径は、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔との連通側の径以下に選定されており、
前記芯体選択機構部により選択されていない前記芯体は、前記磁性体コアの前記貫通孔から離間した位置に在るようにされると共に、前記芯体選択機構部により選択された前記芯体の少なくとも先端は、前記貫通孔を通じて前記開口部より外部に突出するようにされる
ことを特徴とする位置指示器。
【請求項2】
前記磁性体コアに巻回された前記コイルと共に共振回路を構成するコンデンサを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【請求項3】
前記磁性体コアの前記第1の貫通孔は、前記芯体が挿入される側の径が、前記開口部との連通側の径よりも大きく選定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【請求項4】
前記磁性体コアの前記第1の貫通孔は、前記芯体が挿入される側から前記開口部側に近づくに従い徐々に細くなるようなテーパー状に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の位置指示器。
【請求項5】
前記芯体は、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔の内壁面に沿って案内されながら前記貫通孔を通じて挿通されるように、軸心方向に交差する方向に撓むように構成されている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の位置指示器。
【請求項6】
前記固定部材前記第2の貫通孔は、前記芯体が挿入される側から前記磁性体コアの前記第1の貫通孔との連通側に近づくに従い徐々に細くなるようなテーパー状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【請求項7】
前記複数の芯体の少なくとも一つは、インクを収納するボールペン用の替え芯である
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【請求項8】
前記複数の芯体の少なくとも一つは、樹脂材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【請求項9】
前記樹脂材料の芯体は、前記ボールペン用の替え芯と同じ透磁率を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の位置指示器。
【請求項10】
前記複数の芯体の先端とは反対側には、前記開口部から突出させられている前記芯体に印加される圧力を検出する筆圧検出部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【請求項11】
前記共振回路は、前記芯体選択機構部により、前記複数の芯体の内の一つの芯体の少なくとも先端を、選択的に前記開口部から突出させられたときに、動作可能とされている
ことを特徴とする請求項2に記載の位置指示器。
【請求項12】
前記複数の芯体の先端とは反対側には、前記開口部から突出させられている前記芯体に印加される圧力を検出する筆圧検出部を備え、
前記共振回路は、前記筆圧検出部における前記芯体に印加される圧力の検出結果に基づいて動作可能とされる
ことを特徴とする請求項2に記載の位置指示器。
【請求項13】
前記複数の芯体の一つは、導電性材料からなり、前記導電性材料からなる芯体を通じて信号を送出する回路を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出装置と共に使用される位置指示器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から筆記道具としてのペンには、多色ボールペンのように、1個の共通の筐体に、異なる色のインクが充填された複数本のボールペン芯が収納されたものがある。この多色ボールペンを用いれば、インクの色が異なる複数のペンを所持しなくても、1本のペンで複数色の筆記ができるので、非常に便利である。
【0003】
ところで、パッド型パソコンや携帯電話端末などの携帯端末に対して入力指示する手段として電子ペンと呼ばれる位置指示器が知られている。この種の位置指示器が入力手段として用いられる携帯端末は、一般的には表示画面に重畳して位置検出用のセンサを備え、位置指示器による表示画面上での細かい指示・操作入力を受け付けることができる。そして、位置指示器を用いれば、マウスや指などでは入力が困難な繊細な入力指示ができ、非常に有用である。
【0004】
位置指示器での操作の一つとして、絵を描く場合がある。絵を描く場合は、複数の色等を駆使して描くが、従来は、位置指示器と共に使用される位置検出装置を搭載する携帯端末等の電子機器側において、位置指示器によって指示入力された線の色合い等のメニューを呈示して、そのメニューから位置指示器の使用者が所望する色を選択することで、位置指示器による入力色を変えていた。または、所定の色に設定された複数の電子ペンを用いる場合もあった。
【0005】
また、位置指示器による指示位置を検出するセンサ上に、例えば帳票や契約書を置き、直接書類にサインをしながら、電子的にも筆跡を残したい場合がある。このような場合は、例えば特許文献1(特開2012−234423号公報)に記載されているように、位置指示器の筐体の中にボールペンの芯を組み込むことで、実現するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−234423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように近年の使用態様の多様化に対応可能な電子ペン(位置指示器)の要望が強まってきた。そこで、複数の色や機能などに対応して複数の電子ペンの機能を備える位置指示器が考えられている。その一つのアプローチ方法として、電子ペンをカートリッジ化して、多色ボールペンの筐体と同様の筐体に、ボールペンの替え芯と同様に組み込む方法がある。
【0008】
このアプローチ方法を採用した位置指示器の一例として、公知ではないが、図7に示すような位置指示器1Mが考えられている。この例の位置指示器1Mでは、図7(A)に示すように、筐体2M内に3本の位置指示器用カートリッジ3R,3B,3Eを収納し、ノック機構により、その3本の位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eの内の1本を選択して、その選択した位置指示器用カートリッジのペン先部の先端を、筐体2Mのペン先側の開口2Maから突出させて使用するようにする。
【0009】
ここで、この例の位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれは、位置検出装置と電磁誘導方式で結合するタイプのもので、市販のボールペンの替え芯と互換性を取れる構成を備えるように市販のノック式ボールペンの替え芯と同サイズに構成されている。このため、筐体2Mは、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構と同一の構成を備えており、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構をそのまま用いることができる。
【0010】
図7の例の位置指示器1Mの位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eは、全て同じ構成を有するが、当該位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれから送出する識別情報により、それぞれの機能、例えば線の色や、実線や破線などの線の種別等が割り当てられている。
【0011】
例えば、位置指示器用カートリッジ3Bは、その指示位置に応じて表示する軌跡(文字や図形)を黒色で表す機能を割り当てられ、位置指示器用カートリッジ3Rは、その指示位置に応じて表示する軌跡を赤色で表す機能を割り当てられ、位置指示器用カートリッジ3Eは、その指示位置に応じて、先に指示入力された軌跡を消去する機能を割り当てられる。
【0012】
位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eと共に使用される位置検出装置は、位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれから送信されてくる識別情報を受信して、位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eの違いを判別し、位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれに割り当てられた機能を実現するようにする。
【0013】
図7(B)は、位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eの構成例を示す図である。また、図7(C)は、図7(B)に示す位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eの要部の構成を説明するための図である。
【0014】
位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eは、図7(B)に示すように、芯体部31と、筒状体部32とが結合されて一体化された構成を有する。芯体部31は、図7(C)に示すように、磁性体コア、この例ではフェライトコア310に、部分的にコイル311が巻回されていると共に、そのコイル311が巻回されていない部分を保護材312で覆うようにしてペン先部313が形成された構成とされている。
【0015】
筒状体部32は、電子回路部品が配設される第1の筒状体部321と、筆圧検出用部品が配設される第2の筒状体部322とで構成される。筒状体部32の第1の筒状体部321内には、図7(C)に示すように、プリント基板33が配設されると共に、そのプリント基板33上には、コイル311と共に共振回路を構成するコンデンサを含む回路部品34が設けられている。
【0016】
そして、芯体部31と、筒状体部32の第1の筒状体部321とは、例えば芯体部31のフェライトコア310の一部が、第1の筒状体部321内に挿入される状態で結合されて一体的に構成される。
【0017】
第2の筒状体部322は、この例では、市販のボールペンの替え芯のインク収納部の径と等しい径の筒状体で構成されている。この第2の筒状体部322は、図7(B)に示すように、長尺部322aと、短尺部322bとに2分されており、その結合部35の近傍に筆圧検出部材36が設けられている。
【0018】
図7(C)に示すように、長尺部322aと短尺部322bとは、結合部35において、連結棒部材351とコイルバネ352を介して結合されている。この場合に、長尺部322aと短尺部322bとは、コイルバネ352により、常に、軸心方向において、互いに離れるように弾性変位されるが、連結棒部材351により、所定位置で係止して、それ以上は軸芯方向に変位しないように構成されている。
【0019】
そして、図7(C)に示すように、長尺部322aには、筆圧検出部材36が設けられる。そして、連結棒部材351の一端351a側が、筆圧検出部材36の押圧部として働くように構成されている。
【0020】
この例の筆圧検出部材36は、例えば特許文献:特開2011−186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段を使用した、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量コンデンサの構成とされている。
【0021】
位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eの先端に圧力が加わると、位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eの長尺部322a側の全体が、コイルバネ352の弾性力に抗して、短尺部322b側に移動しようとする力が働き、筆圧検出部材36の静電容量が筆圧に応じたものとなる。したがって、筆圧検出部材36の静電容量を検出することで、位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eの先端に印加される圧力(筆圧)を検出することができる。
【0022】
以上のような構成の位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれが、ホルダー部4を通じて、位置指示器1Mのノック機構の一部を構成するノック棒5B,5R,5Eに嵌合されて、筐体2M内に収納される。そして、ノック棒5B,5R,5Eのいずれかが、ペン先側にスライド移動されることで、位置指示器用カートリッジ3B,3R,3Eのいずれかのペン先(先端)が突出するようにされる。そして、その先端が突出された位置指示器用カートリッジのフェライトコア310に巻回されたコイル311と図示を省略したコンデンサからなる共振回路と、位置検出装置のセンサと電磁結合することで、その先端が突出された位置指示器用カートリッジにより、位置検出装置との間で信号のやり取りをすることで位置指示することができるようにされる。
【0023】
以上のように構成された位置指示器1Mは、市販の筆記道具の多色ボールペンの筐体をそのまま用いることができるという利点がある反面、以下のような問題がある。
【0024】
すなわち、位置指示器1Mは、市販のボールペンの替え芯と交換可能なようにされた位置指示器用カートリッジを用いるものである。そして、この位置指示器用カートリッジのそれぞれは、フェライトコアにコイルを巻回したものをそれぞれ備えて、位置検出装置のセンサ側との間で、電磁誘導(共振動作)することにより信号のやり取りを行うものである。
【0025】
そして、位置指示器1Mは、複数の位置指示器用カートリッジが、1個の筐体内に収納される構成であるため、それら複数の位置指示器用カートリッジのフェライトコアとコイルは、筐体内において隣り合うように隣接する。このために、位置指示器用カートリッジと位置検出装置のセンサとの間で信号のやり取りを行うに当たり、隣接する位置指示器用カートリッジの共振回路が干渉し合う場合がある。
【0026】
また、位置指示器用カートリッジの各々は、フェライトコアに巻回されたコイルを備える必要があると共に、所定の回路も必要となる。そのため、位置指示器用カートリッジの各々が高価になり、複数種の位置指示器用カートリッジ(例えば、黒色用、赤色用、消しゴム用等)の使用を欲する使用者にとっては、コストが嵩むという問題がある。
【0027】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした位置指示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の課題を解決するために、この発明は、
一端側に開口部を有する筒状の筐体と、
前記筐体内に収納される複数の芯体と、
前記複数の芯体の内の一つの芯体の少なくとも先端を、選択的に前記開口部から突出させるようにする芯体選択機構部と、
前記筐体の前記開口部を有する前記一端側に配設される、コイルが巻回されている磁性体コアと、
前記磁性体コアの前記芯体の挿入側に設けられて、前記磁性体コアを前記筐体の前記一端側に固定する固定部材と、
を備え、
前記磁性体コアは、前記複数の芯体の内の一つの芯体が挿入及び挿通可能であって、前記開口部と連通するようにされた第1の貫通孔を有し、
前記固定部材は、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔の中心軸と同一の中心軸を有する第2の貫通孔を有すると共に、前記固定部材の前記第2の貫通孔は、前記芯体が挿入される側の径が、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔との連通側の径よりも大きく、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔との連通側の径は、前記磁性体コアの前記第1の貫通孔との連通側の径以下に選定されており、
前記芯体選択機構部により選択されていない前記芯体は、前記磁性体コアの前記貫通孔から離間した位置に在るようにされると共に、前記芯体選択機構部により選択された前記芯体の少なくとも先端は、前記貫通孔を通じて前記開口部より外部に突出するようにされる
ことを特徴とする位置指示器を提供する。

【0029】
上述の構成のこの発明による位置指示器においては、一端側に開口部を有する筒状の筐体の、前記開口部を有する一端側にコイルが巻回されている磁性体コアが配設されている。そして、筐体内には、複数個の芯体が収納され、芯体選択機構部により選択されていない芯体は、磁性体コアの貫通孔から離間した位置に在るようにされると共に、芯体選択機構部により選択された芯体の少なくとも先端は、貫通孔を通じて開口部より外部に突出するようにされる。
【0030】
すなわち、この発明の位置指示器においては、複数の芯体に対して共通のフェライトコアが、筐体の開口部の形成されている一端側に配設され、このフェライトコアにコイルが巻回され、位置検出装置のセンサとの間での信号のやり取りを行うことが可能となる。したがって、この発明によれば、前述したような位置指示器用カートリッジを用いることなく、市販のボールペンの芯や、電子ペンの芯体を、筐体に対して装着して使用することができる。
【0031】
複数の芯体に共通の1個のフェライトコアにコイルが巻回されたものを用いるために、前述した複数個の位置指示器用カートリッジの場合のような干渉が生じることはなく、しかも、市販のボールペンの芯や、電子ペンの芯体を用いることができるので、コスト的にも安価とすることができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、位置指示器用カートリッジのような特殊な構成のものを部品として必要としないので、安価に構成できると共に、位置検出装置のセンサ部との間の信号のやり取りにおいて、干渉などの不具合は生じないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この発明による位置指示器の実施形態の概要の構成例を示す図である。
図2】この発明による位置指示器の実施形態の要部の構成例を説明するための図である。
図3】この発明による位置指示器の実施形態の電子回路の構成例を、対応する位置検出装置の回路構成例と共に示すブロック図である。
図4】この発明による位置指示器の実施形態の動作の一例を説明するための図である。
図5】この発明による位置指示器の他の実施形態を説明するために用いる図である。
図6】この発明による位置指示器の他の実施形態を説明するために用いる図である。
図7】先に提案されている公知ではない位置指示器の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明による位置指示器の実施形態を、図を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施形態の位置指示器100の全体を構成を説明するための概略構成図である。また、図2(A)は、実施形態の位置指示器100の縦断面図である。さらに、図2(B)は、実施形態の位置指示器100の筐体101の、芯体の先端が突出する開口部側における構成を示す図である。
【0035】
この実施形態の位置指示器100は、図1及び図2(A)に示すように、筐体101内に、第1の芯体102及び第2の103との2個の芯体を収納し、これら2個の芯体102及び103のうち、芯体選択機構により選択された方の芯体(図2(A)の例では芯体102)の先端(図2(A)の例では芯体102の先端102a)が、筐体101の軸心方向の一端側に形成されている開口部101aから突出するように構成される。この例では、開口部101aは、第1の筐体部111に形成されている。
【0036】
筐体101は、一端側に開口部101aを有する筒状体からなる。この例では、図2に示すように、筐体101は、その軸心方向に2分された第1の筐体部111と第2の筐体部112とが、芯体ホルダー104の部分で結合されることで、一体的に結合されている。筐体101の開口部101aは、第1の筐体部111の芯体ホルダー104と結合される側とは反対側に形成されている。
【0037】
芯体ホルダー104は、2個の芯体102及び103を挿通する貫通孔104a及び104bを備えている。そして、第1の筐体部111は、図2(A)に示すように、芯体ホルダー104のネジ部104cにおいて、芯体ホルダー104と螺合結合される。第2の筐体部112は、芯体ホルダー104の嵌合部104dにおいて嵌合結合されている。
【0038】
第2の筐体部112には、第1の芯体102用の第1のノック操作部120と、第2の芯体103用のノック操作部130とが設けられると共に、ストッパ140が設けられている。第1のノック操作部120は、第2の筐体部112に形成されているスリット112aから外部に突出する突出部121と、第2の筐体部112の中心軸方向に突出する突部122及び123と、ストッパ140と係合する切り欠き溝124とを備える。同様に、第2のノック操作部130は、第2の筐体部112に形成されているスリット112bから外部に突出する突出部131と、第2の筐体部112の中心軸方向に突出する突部132及び133と、ストッパ140と係合する切り欠き溝134とを備える。ストッパ140の先端には、第1のノック操作部120の切り欠き溝124または第2のノック操作部130の切り欠き溝134と係合する凹部141が形成されている。
【0039】
また、第1のノック操作部120及び第2のノック操作部130の軸心方向の開口部101a側の端部には、筆圧検出部材105および106が設けられている。この筆圧検出部材105及び106は、例えば前述した特許文献:特開2011−186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段を使用した、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量コンデンサの構成とされている。
【0040】
そして、第1の芯体102の、先端102aとは反対側の端部を、芯体ホルダー104の貫通孔104aを挿通させた後、第1のノック操作部120に結合されて設けられている筆圧検出部材105の嵌合部(図示は省略)に圧入嵌合させることにより、第1の芯体102を、第1のノック操作部120に対して結合して装着させることができる。これにより、第1の芯体102を、筐体101内に収納することができる。
【0041】
同様に、第2の芯体103の、先端103aとは反対側の端部を、芯体ホルダー104の貫通孔104bを挿通させた後、第2のノック操作部130に結合されて設けられている筆圧検出部材106の嵌合部に圧入嵌合させることにより、第2の芯体103を、第2のノック操作部130に対して結合して装着させる。これにより、第2の芯体103を、筐体101内に収納することができる。この状態において、筆圧検出部材105及び106により構成される可変容量コンデンサは、第1の芯体102及び第2の芯体103の先端102a及び103aに印加された圧力に応じた静電容量を呈することができる。
【0042】
なお、第1の芯体102及び第2の芯体103は、筆圧検出部材105及び106に嵌合させることにより、装着できるものであるので、交換可能であることは言うまでもない。
【0043】
図1に示すように、筆圧検出部材105で構成される可変容量コンデンサの一端及び他端、また、筆圧検出部材106で構成される可変容量コンデンサの一端及び他端は、第2の筐体部112内に配設されているプリント基板150の導体パターンに、それぞれ電気的に接続されている。プリント基板150には、例えばIC(Integrated Circuit)からなる制御回路400等が設けられている。制御回路400は、後述するように、筆圧検出部材105及び106のそれぞれで構成される可変容量コンデンサの静電容量に基づいて、それぞれで検出された筆圧値を算出する。
【0044】
そして、図1及び図2(A)に示すように、芯体ホルダー104と筆圧検出部材105との間には、第1の芯体102に挿通された状態のばね125が設けられている。そして、図1及び図2(A)に示すように、芯体ホルダー104と筆圧検出部材106との間には、第2の芯体103に挿通された状態のばね135が設けられている。これらのばね125及び135は、ノック操作部120及び130を元の位置に復帰させるための弾性部材である。
【0045】
この例では、ノック操作部120及び130と、ストッパ140と、ばね125及び135により、芯体選択機構の一例が構成される。すなわち、使用者は、第2の筐体部112に形成されているスリット112a及び112bから突出しているノック操作部120及び130の突出部121及び131のいずれかを、スリット112aまたは112bにより案内される状態で、開口部101aの方向(以下、ペン先方向と称する)に、ばね125または135の弾性力に抗して、スライド移動させることできる。
【0046】
そして、ノック操作部120またはノック操作部130のいずれかは、所定位置までスライド移動されると、当該スライド移動させられたノック操作部120または130のいずれかの切り欠き溝124または134が、ストッパ140の凹部141に嵌合して、その位置で係止する状態となる。図2(A)では、ノック操作部120がスライド移動させられて、第1の芯体102の先端102aが、開口部101aから筐体101の外部に突出している状態を示している。このように先端102aが外部に突出することで、第1の芯体102は、筆圧を受けることが可能な状態となる。
【0047】
そして、図2(A)に示すように第1の芯体102の先端102aが外部に突出している状態の場合において、第2のノック操作部130をペン先方向にスライド移動させることで、第1の芯体102の先端102aを筐体101内に収納する状態に復帰させると共に、第2の芯体103の先端103aを筐体101の外部に突出させる状態に変更させることができる。
【0048】
この場合に、第2のノック操作部130の突出部131をペン先方向にスライド移動させる操作(ノック操作)が行われると、ノック操作部130の突部132及び133が、第1のノック操作部120をスリット112aの方向に押し出すように働く。これにより、第1のノック操作部120の切り欠き溝124は、ストッパ140の凹部141から外れる。すると、ばね125の復元力により、第1のノック操作部120は、ペン先方向と逆方向に付勢されてストッパ140に沿って移動し、先端102aが筺体101内に収納された状態となる。
【0049】
そして、第2のノック操作部130は、その切り欠き溝134が、ストッパ140の凹部141に嵌合して、その位置で係止する状態となる。この状態から、第1のノック操作部120がペン先方向にスライド移動させられると、同様に、第1のノック操作部120の突部122及び123が第2のノック操作部130をスリット112bの方向に押し出すように働く。これにより、第2のノック操作部130の切り欠き溝134は、ストッパ140の凹部141から外れ、ばね135の復元力により、第2のノック操作部130は、ペン先方向と逆方向に付勢されてストッパ140に沿って移動し、第2の芯体103の先端103aは、筐体101内に収納される状態となり、その代わりに、第1の芯体102の先端102aが筐体101の外部に突出する状態となる。
【0050】
以上のように、この実施形態の位置指示器100は、ノック操作により、第1の芯体102の先端102aが開口部101aから外部に突出する状態(第1の状態)、第2の芯体103の先端103aが開口部101aから外部に突出する状態(第2の状態)、または、第1の芯体102及び第2の芯体103の両方が筐体101内に収納される状態(第3の状態)のいずれかの状態に切り替わる。
【0051】
そして、この実施形態の位置指示器100においては、第1の筐体部111の開口部101a側に、磁性体コアの例としてのフェライトコア161が配設されている。このフェライトコア161の周囲にはコイル162が巻回されている。そして、コイル162の一端162a及び他端162bは、図1に示すように、プリント基板150の導体パターンに、それぞれ電気的に接続されている。
【0052】
後述するように、プリント基板150には、コイル162と並列に接続されて共振回路を構成するコンデンサ(図3のコンデンサ401)が設けられている。この共振回路が用いられて、位置指示器100と、位置検出装置のセンサとの信号のやり取りがなされて、位置指示器100による指示位置が位置検出装置で検出することができるようにされる。
【0053】
フェライトコア161には、図1及び図2(A),(B)に示すように、第1の芯体102または第2の芯体103が挿通される貫通孔161aが形成されている。フェライトコア161は、この貫通孔161aの中心軸線位置が筐体101の中心軸線位置と一致し、かつ、この貫通孔161aが筐体101の開口部101aと連通するようにして、第1の筐体部111の開口部101a側の端部に配置される。
【0054】
図2(B)に示すように、貫通孔161aの開口部101a側の径は、開口部101aの径R1と同一とされる。また、貫通孔161aの開口部101a側とは反対側の径R2は、開口部101a側の径R1よりも大きく選定される(R1<R2)。この場合に、貫通孔161aの開口部101a側とは反対側の径R2は、図2(B)に示すように、第1の芯体102の先端102a及び第2の芯体103の先端103aが共に筐体101内に収納されている状態(前述した第3の状態)において、当該第1の第1の芯体102の先端102a及び第2の芯体103の先端103aの中心線102z及び103zの延長線が、当該径R2内に含まれるような大きさとされることが望ましい。
【0055】
フェライトコア161の貫通孔161aの内壁面は、径R2から径R1まで徐々に細くなるようにテーパー状に形成されている。ここで、貫通孔161aの内壁面のテーパー面は、径R2から径R1まで徐々に小さくなるような変化であれば、直線的な変化ではなくてもよい。
【0056】
そして、フェライトコア161は、図2(A),(B)に示すように、固定部材163により第1の筐体部111の開口部101a側に押し付けられる状態で固定される。固定部材163は、貫通孔163aを有するリング状形状を有する部材であり、その外周側面の径は、第1の筐体部111の内径とほぼ等しい、あるいは第1の筐体部111の内径よりも僅かに小さい値とされている。そして、この固定部材163の外周側面が第1の筐体部111の内壁面に、例えば接着されるなどして、固定部材163が第1の筐体部111内に固定されることにより、フェライトコア161も第1の筐体部111内に固定される。
【0057】
固定部材163は、貫通孔163aの中心軸線位置がフェライトコア161の貫通孔161aの中心軸線位置と一致するようにして、貫通孔163aがフェライトコア161の貫通孔161aと連通するように構成されている。そして、図2(B)に示すように、固定部材163の貫通孔163aの開口部101a側の径R3は、フェライトコア161の貫通孔161aの開口部101a側とは反対側の径R2以下の値とされる(R3≦R2)。
【0058】
また、固定部材163の貫通孔163aの開口部101a側とは反対側の径R4は、フェライトコア161の貫通孔161aの開口部101a側とは反対側の径R2よりも大きい値に選定される(R4>R2)。
【0059】
そして、固定部材163の貫通孔163aの内壁面は、径R4から径R3まで徐々に細くなるようにテーパー状に形成される。ここで、貫通孔163aの内壁面のテーパー面は、径R4から径R3まで徐々に小さくなるような変化であれば、直線的な変化ではなくてもよい。
【0060】
固定部材163の貫通孔163aの径R3,R4が上述のように選定される結果、図2(B)に示すように、第1の芯体102の先端102a及び第2の芯体103の先端103aが共に筐体101内に収納されている状態(前述した第3の状態)においては、第1の芯体102の先端102a及び第2の芯体103の先端103aの中心線102z及び103zの延長線が、固定部材163の径R4内に含まれるようになる。
【0061】
図2(B)に示すように、第1の芯体102の先端102a及び第2の芯体103の先端103aが共に筐体101内に収納されている状態(前述した第3の状態)においては、第1の芯体102の先端102a及び第2の芯体103の先端103aは、固定部材163の貫通孔163aよりも離れた位置となるように構成されている。
【0062】
そして、前述したように、ノック操作部120または130のいずれかが操作されてペン先方向側にスライド移動させられると、それに応じた第1の芯体102または第2の芯体103は、まず、固定部材163の貫通孔163aのテーパー状部分の面に案内されつつ、フェライトコア161の貫通孔161a内に導かれる。そして、ノック操作部120または130のいずれかのスライド移動操作に応じて、第1の芯体102の先端102aまたは第2の芯体103の先端103aは、フェライトコア161の貫通孔161aを貫通して、図2(A)に示すように、開口部101aから外部に突出する状態となる。
【0063】
なお、この実施形態の第1の芯体102及び第2の芯体103は、その軸心方向に交差する方向に撓むことが可能なものとされている。
【0064】
第1の芯体102は、この例では、市販のボールペンの芯の構成とされ、先端102aは例えば金属からなるとともに、当該先端102aに例えば黒色のインクを送り込むために、当該黒色のインクが内部に充填されている樹脂からなるチューブ状部材とからなる。周知のように、このボールペンの芯は、その軸心方向に交差する方向に撓むことが可能である。
【0065】
また、第2の芯体103は、電磁誘導方式の電子ペンの芯体として構成される電子ペン芯とされる。この電子ペン芯は、比較的硬質で弾性を有する樹脂材料、例えばPOM(Polyoxymethylene)からなり、その軸心方向に交差する方向に撓むことが可能である。第2の芯体103を構成する樹脂材料は、例えば磁性体粉を含ませることで、第1の芯体102の例のボールペン芯の透磁率と等しい、あるいはほぼ等しいものが選定される。
【0066】
以上のようにして、この実施形態の位置指示器100においては、第1の芯体102と、第2の芯体103とに対して共通の1個のフェライトコア161が、ペン先となる筐体101の一端側に設けられている。そして、当該フェライトコア161の貫通孔161aがテーパー状とされていることにより、第1の芯体102または第2の芯体103は、フェライトコア161の貫通孔161a内に容易に挿通される。
【0067】
また、この実施形態においては、フェライトコア161を、筐体101内に固定する固定部材163にもテーパー状の内壁面を有する貫通孔163を形成するようにしたので、この固定部材163の貫通孔163aによって、第1の芯体102または第2の芯体103は、容易にフェライトコア161の貫通孔161a内に導かれる。
【0068】
そして、この実施形態では、フェライトコア161に巻回されたコイル162と、プリント基板150に設けられているコンデンサとで構成される共振回路により、位置検出装置のセンサとの間で信号のやり取りを行うようにするが、当該共振回路は、第1の芯体102の先端102aまたは第2の芯体103の先端103aが開口部101aから外部に突出して、その突出している先端102aまたは先端103aに所定以上の筆圧が印加されたときに、動作を開始するように構成される。
【0069】
更に、この実施形態の位置指示器100では、筆圧検出部材105と106のいずれで所定以上の筆圧が検知されたかを判別することで、第1の芯体102の先端102aと第2の芯体103の先端103aのいずれが、開口部101aから外部に突出しているかを判別することができるようにしている。以上のことを実現する電子回路が、プリント基板150に形成されている。
【0070】
[位置指示器100の回路構成例及び位置検出装置の回路構成例]
図3は、この実施形態の位置指示器100のプリント基板150に形成されている電子回路40の一例を、この位置指示器100と電磁誘導結合による信号授受を行う位置検出装置200の回路構成例と共に示す図である。
【0071】
位置指示器100は、この実施形態では、位置検出装置200のセンサの導体と電磁誘導結合することにより、位置検出用信号を授受すると共に、筆圧検出部材105または106を通じて検出される筆圧情報と、位置指示器100自身の識別情報(ID)や、第1の芯体102と、第2の芯体103のいずれの先端が開口部101aから突出している状態かの識別情報(ID)を、位置検出装置200に送信するように構成される。
【0072】
すなわち、位置指示器100の電子回路40においては、フェライトコア161に巻回されたコイル162に対して、コンデンサ401が並列に接続されて並列共振回路40Rが構成される。
【0073】
そして、電子回路40は、図3に示すように、付加情報の送信を制御する制御回路400を備える。この例では、この制御回路400はIC(Integrated Circuit;集積回路)として構成されている。この制御回路400を構成するICは、蓄電手段の例としての電気二重層コンデンサ410から得られる電源電圧Vccにより動作するように構成されている。そして、並列共振回路40Rにて位置検出装置200から電磁結合により受信した交流信号が、ダイオード402及びコンデンサ403からなる整流回路404にて整流され、電気二重層コンデンサ410に蓄電される。なお、図3の例では、整流回路404は半波整流回路とされているが、全波整流回路でもよいことは言うまでもない。また、ICからなる制御回路400の電源としては、この例の電気二重層コンデンサ410のような蓄電手段ではなく、電池であっても勿論よい。
【0074】
そして、この例では、並列共振回路40Rと整流回路404との間には、通常は開(ノーマルオープン)の状態とされるスイッチ回路405が設けられている。このスイッチ回路405は、例えば半導体スイッチ回路で構成され、開の状態では、高インピーダンスの状態となっている。
【0075】
このスイッチ回路405は、スイッチ制御回路406からのスイッチ制御信号によりオンとなるように制御される。スイッチ制御回路406は、並列共振回路40Rにて位置検出装置200から電磁結合により受信した交流信号からスイッチ制御信号を生成する。
【0076】
また、電子回路40においては、コイル162と、コンデンサ401とにより構成される並列共振回路40Rに並列に、スイッチ回路407が接続されている。このスイッチ回路407は、制御回路400によりオン・オフ制御されるように構成されている。なお、制御回路400には、位置検出装置200との間での電磁誘導信号の授受のための同期信号として、コンデンサ408を介して、位置検出装置200から送信された電磁誘導信号が供給される。
【0077】
この実施形態では、図3に示すように、制御回路400には、筆圧検出部材105及び106で構成される可変容量コンデンサ105C及び106Cが接続される。これらの可変容量コンデンサ105C及び106Cには、抵抗Ra及びRbがそれぞれ並列に接続されている。この例では、制御回路400は、可変容量コンデンサ105C及び106Cを充電した後、抵抗Ra及びRbを通じて放電させ、可変容量コンデンサ105C及び106Cが接続されている端子の電圧(可変容量コンデンサ105C及び106Cの両端電圧に相当)が所定閾値になるまでの時間を計測することで、可変容量コンデンサ105C及び106Cのそれぞれの静電容量を測定する。
【0078】
そして、制御回路400は、その測定した可変容量コンデンサ105C及び106Cの静電容量の変化から筆圧の変化を検出し、第1の芯体102または第2の芯体103に筆圧が印加されたかどうかを検出すると共に、筆圧が印加されたことを検出したときには、その筆圧値を可変容量コンデンサ105C、106Cの静電容量の値から算出するようにする。
【0079】
そして、この実施形態では、制御回路400は、算出した筆圧値の情報(筆圧データ)を、スイッチ回路407をオン・オフ制御することで、複数ビットのデジタル信号として位置検出装置200に送信する。この実施形態では、筆圧データは、付加情報の一部を構成する。
【0080】
また、制御回路400には、この例では、位置指示器100の製造者番号及び製品番号を含む識別情報(ID)と、筆圧検出部材105に対応する第1の芯体102(この例では、ボールペン芯)を識別するための識別情報及び筆圧検出部材106に対応する第2の芯体103(この例では、電子ペン芯)を識別するための識別情報を記憶するIDメモリ409が接続されている。そして、制御回路400は、このIDメモリ409に記憶されている識別情報を読み出して、スイッチ回路407をオン・オフ制御することで、複数ビットのデジタル信号として位置検出装置200に送信する。この実施形態では、この識別情報も、付加情報の一部を構成する。
【0081】
この実施形態では、制御回路400は、第1の芯体102の先端102aが開口部101aから外部に突出している状態(第1の状態)または第2の芯体103の先端103aが開口部101aから外部に突出している状態(第2の状態)であるか、あるいは両芯体102及び103の先端が共に筐体101内に収納されている状態(第3の状態)であるかを判別する。この判別は、筆圧検出部材105及び筆圧検出部材106で検出される筆圧値に基づいて行う。
【0082】
すなわち、位置指示器100の第3の状態では、両芯体102及び103の先端が共に筐体101内に収納されているので、芯体102及び103には筆圧が印加されることはない。そして、第1の状態では、第1の芯体102の先端102aが外部に突出しているの、筆圧検出部材105により、当該先端102aに印加される筆圧が検出される状態となる。また、第2の状態では、第2の芯体103の先端103aが外部に突出しているの、筆圧検出部材106により、当該先端103aに印加される筆圧が検出される状態となる。
【0083】
そして、この例では、制御回路400は、筆圧が印加されていない状態から、筆圧値が所定の閾値以上増加したとき、それを検出して筆圧の印加が開始されたと判断する。
【0084】
この実施形態では、制御回路400は、第1の芯体102または第2の芯体103のいずれに対しても筆圧の印加が開始されてはいないと検出したときには、スイッチ回路407をオンとして、並列共振回路40Rを非動作状態にする。また、制御回路400は、第1の芯体102または第2の芯体103のいずれかに筆圧の印加が開始されたと検出したときには、スイッチ回路407をオフとして、並列共振回路40Rを動作状態にする。
【0085】
したがって、第1の芯体102の先端102aが開口部101aから外部に突出している状態(第1の状態)または第2の芯体103の先端103aが開口部101aから外部に突出している状態(第2の状態)において、所定の筆圧が芯体の先端に印加されたときには、動作状態とされた並列共振回路40Rにより、位置検出装置200との信号のやり取りが開始される。
【0086】
この状態で、制御回路400は、コンデンサ408を通じて位置検出装置からの同期信号を受信すると、その同期信号に基づいたタイミングで、スイッチ回路407をオン・オフ制御することにより、筆圧データや識別情報を、後述するようにASK(Amplitude Shift Keying)変調信号として、位置検出装置200に送信するようにする。なお、ASK変調に代えてOOK(On Off Keying)信号に変調するようにしてもよい。
【0087】
位置検出装置200には、図3に示すように、X軸方向ループコイル群211Xと、Y軸方向ループコイル群212Yとが積層されて位置検出コイルが形成されている。各ループコイル群211X,212Yは、例えば、それぞれn,m本の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群211X,212Yを構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
【0088】
また、位置検出装置200には、X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yが接続される選択回路213が設けられている。この選択回路213は、2つのループコイル群211X,212Yのうちの一のループコイルを順次選択する。
【0089】
さらに、位置検出装置200には、発振器221と、電流ドライバ222と、切り替え接続回路223と、受信アンプ224と、検波器225と、ローパスフィルタ226と、サンプルホールド回路227と、A/D変換回路228と、処理制御部229とが設けられている。処理制御部229は、例えばマイクロコンピュータにより構成されている。
【0090】
発振器221は、周波数f0の交流信号を発生する。位置指示器100の共振回路40Rの共振周波数は、この周波数f0を中心周波数とするように選定されている。そして、発振器221で発生した交流信号は電流ドライバ222に供給される。電流ドライバ222は、発振器221から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路223へ送出する。切り替え接続回路223は、処理制御部229からの制御により、選択回路213によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ222が、受信側端子Rには受信アンプ224が、それぞれ接続されている。
【0091】
選択回路213により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路213及び切り替え接続回路223を介して受信アンプ224に送られる。受信アンプ224は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器225へ送出する。
【0092】
検波器225は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、ローパスフィルタ226へ送出する。ローパスフィルタ226は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器225の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路227へ送出する。サンプルホールド回路227は、ローパスフィルタ226の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路228へ送出する。A/D変換回路228は、サンプルホールド回路227のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理制御部229に出力する。
【0093】
処理制御部229は、選択回路213におけるループコイルの選択、切り替え接続回路223の切り替え、サンプルホールド回路227のタイミングを制御する。処理制御部229は、A/D変換回路228からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yから一定の送信継続時間をもって電磁誘導信号を送信させる。
【0094】
X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yの各ループコイルには、位置指示器100から送信される電磁誘導信号によって誘導電圧が発生する。処理制御部229は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて位置指示器100のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
【0095】
また、処理制御部229は、電流ドライバ222に、送信信号を断続制御するための信号及び送信信号レベル制御のための信号を供給すると共に、位置指示器100からの筆圧データや識別情報などの付加情報の受信処理を行うようにする。処理制御部229は、後述するように、位置指示器100からのASK信号からなる断続信号を、複数ビットのデジタル信号として検出して、筆圧データや識別情報などの付加情報を検出するようにする。
【0096】
[位置指示器100の動作及び位置検出装置200の動作]
以下に、位置指示器100及び位置検出装置200間での位置検出動作及び付加情報の送受について説明する。
【0097】
位置検出装置200は、処理制御部229の処理制御に基づいて送信信号の交流信号を送出している。位置指示器100では、位置検出装置200あるいは充電装置からの交流信号を並列共振回路40Rで受信する状態にないときには、スイッチ回路405がオフで、電気二重層コンデンサ410には充電されない。そして、位置検出装置200あるいは充電装置からの交流信号を並列共振回路40Rで受信する状態になるとスイッチ回路405がオンとなって、電気二重層コンデンサ410への充電(蓄電)がなされる。
【0098】
そして、この実施形態の位置指示器100は、第1の芯体102または第2の芯体103のいずれかが筐体101の開口部101aから外部に突出しておらず、いずれにも筆圧が印加されない状態では、スイッチ回路407はオンとされていて、共振回路40Rは非動作の状態となっている。
【0099】
位置指示器100のノック操作部120または130が操作されて、第1の芯体102または第2の芯体103のいずれかの先端102aまたは先端103aが開口部101aから外部に突出した状態になり、かつ、筆圧検出部材105または106のいずれかに所定の筆圧値以上の筆圧が印加されると、共振回路40Rが動作状態となる。これにより、位置指示器100は、並列共振回路40Rにおいて、位置検出装置200からの交流信号を受信可能の状態となる。そして、使用者により位置指示器100が位置検出装置200のセンサ上の持ち来たらされると、並列共振回路40Rが位置検出装置200からの交流信号を電磁誘導結合により受けることが可能な状態になる。
【0100】
すると、位置指示器100の電子回路40のスイッチ制御回路406は、並列共振回路40Rが位置検出装置200のセンサから受信した交流信号から、スイッチ回路405をオンにするスイッチ制御信号を生成する。これにより、スイッチ回路405がオンになると、並列共振回路40Rが受信した交流信号が整流回路404で整流され、電気二重層コンデンサ410が充電(蓄電)される。
【0101】
制御回路400は、電気二重層コンデンサ410からの電源電圧Vccにより動作する。図4は、位置指示器100の電子回路40の制御回路400の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【0102】
制御回路400は、先ず、筆圧検出部材105,106で構成される可変容量コンデンサ105C,106Cの静電容量の変化を監視して、第1の芯体102の先端102aまたは第2の芯体103の先端103aのいずれかに所定値以上の筆圧が印加されたか否か判別する(ステップS101)。このステップS101で、所定値以上の筆圧の印加は検出されていないと判別したときには、制御回路400は、スイッチ回路407をオンとして共振回路40Rを非動作状態とする(ステップS102)。このステップS102の後には、制御回路400は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0103】
ステップS101で、第1の芯体102の先端102aまたは第2の芯体103の先端103aのいずれかに所定値以上の筆圧の印加が検出されたと判別したときには、制御回路400は、スイッチ回路407をオフとして共振回路40Rを動作状態とする(ステップS103)。そして、次に、制御回路400は、所定値以上の筆圧の印加が検出されたのは、筆圧検出部材105または106のいずれであるかを判別することにより、先端が突出しているのは第1の芯体か第2の芯体かを検知する(ステップS104)。
【0104】
共振回路40Rが動作状態においては、位置検出装置200のセンサからの信号を共振回路40Rで受信し、その受信した信号を、位置検出装置200のセンサに帰還するように位置指示器100は動作する。位置検出装置200では、この位置指示器100からの帰還信号を受信することで、位置指示器100の指示位置を検出するようにする。そして、位置検出装置200は、位置指示器100からの付加情報の受信タイミングになると前述したように同期信号を位置指示器100に送る。
【0105】
位置指示器100では、この位置検出装置200からの同期信号に基づいて、ステップS104で検知した芯体の識別情報及び位置指示器100自身の識別情報と、筆圧検出部材105または106で検出された筆圧値を、付加情報として生成する。そして、制御回路400は、その生成した付加情報のデジタル値に応じてスイッチ回路407をオン・オフ制御することで、生成した付加情報を、位置指示器100から位置検出装置200に送信する(ステップS105)。なお、制御回路400は、ステップS104において検知した方の芯体の識別情報を、IDメモリ409から、読み出す。
【0106】
この場合に、スイッチ回路407がオフであるときには、並列共振回路40Rは、位置検出装置200から送信された交流信号に対して共振動作を行って、電磁誘導信号を位置検出装置200に返送することができる。位置検出装置200のループコイルは、位置指示器100の共振回路40Rからの電磁誘導信号を受信する。これに対して、スイッチ回路407がオンであるときには、並列共振回路40Rは、位置検出装置200からの交流信号に対する共振動作が禁止された状態になり、このために、並列共振回路40Rから位置検出装置200に電磁誘導信号は返送されず、位置検出装置200のループコイルは、位置指示器100からの信号を受信しない。
【0107】
この例では、位置検出装置200の処理制御部229は、位置指示器100からの受信信号の有無の検出を、付加情報のビット数分の回数だけ行うことにより、当該複数ビットのデジタル信号の付加情報を受信する。
【0108】
一方、位置指示器100の制御回路400は、送信する付加情報に対応した複数ビットのデジタル信号を生成し、その複数ビットのデジタル信号により、位置検出装置200との間の電磁誘導信号の送受信に同期してスイッチ回路407をオン・オフ制御する。例えば、付加情報のビットが「0」であるときには、スイッチ回路407はオンにされる。すると、前述したように、位置指示器100からは、電磁誘導信号が位置検出装置200に返送されない。一方、付加情報のビットが「1」であるときには、スイッチ回路407はオフにされる。すると、前述したように、位置指示器100からは、電磁誘導信号が位置検出装置200に返送される。
【0109】
したがって、位置検出装置200の処理制御部229は、位置指示器100からの受信信号の有無の検出を付加情報のビット数分の回数だけ行うことにより、デジタル信号である付加情報を受信することができる。
【0110】
次に、制御回路400は、筆圧検出部材105または106で構成される可変容量コンデンサ105Cまたは106Cの静電容量に基づく筆圧の変化を監視し、所定値以上の筆圧が印加されなくなって消失したか否か判別する(ステップS106)。このステップS106で、筆圧は印加されていて消失してはいないと判別したときには、制御回路400は、処理をステップS105に戻し、このステップS105以降の処理を繰り返す。
【0111】
また、ステップS106で筆圧が印加されなくなって消失したと判別したときには、制御回路400は、筆圧の消失状態が所定時間以上、例えば10秒以上、継続したか否か判別し(ステップS107)、所定時間以上経過してはいないと判別したときには、処理をステップS105に戻し、このステップS105以降の処理を繰り返す。ステップS107で、筆圧の消失状態が所定時間以上継続したと判別したときには、制御回路400は、スイッチ回路407をオンとして共振回路40Rを非動作状態とする(ステップS108)。このステップS108の次には、制御回路400は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0112】
ステップS107で、筆圧が印加されなくなって消失したと判別したときに即座に付加情報の送出を停止しなかったのは、使用者が位置指示器100により位置検出装置200のセンサ面での入力を継続しているが、一時的に、位置指示器100をセンサ面から離間させる場合を考慮したものである。
【0113】
上述の実施形態の位置指示器100では、第1の芯体102としてのボールペン芯の先端102aを突出させた状態では、位置検出装置のセンサ上に配置した用紙に、第1の芯体102としてのボールペン芯で描画すると、位置検出装置200では、その描画軌跡を指示位置の検出結果として検出することができる。したがって、用紙に描画すると同時に、その描画情報の電子データ(指示位置データ)を取得することが可能となる。
【0114】
また、位置検出装置200のセンサの上に表示画面が重畳配置されている場合には、第2の芯体103としての電子ペン芯を突出させた状態とすることで、表示画面に芯体の先端を支障なく接触させることができて、位置指示器100により指示入力をすることができる。
【0115】
そして、上述の実施形態の位置指示器100では、芯体は、筆圧検出部材や回路部品を備えるカートリッジの構成とする必要はなく、ボールペン芯や樹脂からなる電子ペン芯をそのまま用いることができる。このため、上述の実施形態の位置指示器100は、コスト的に安価に構成することができ、芯体の交換のためのコストも安価となる。
【0116】
[上述の実施形態の変形例]
上述の実施形態では、第1の芯体102をボールペン芯とし、第2の芯体103を電子ペン芯としたが、これら第1の芯体と第2の芯体103としては、どのような芯体であってもよい。例えば、第1の芯体102及び第2の芯体103を、共にボールペン芯としてもよい。その場合に、第1の芯体102のボールペン芯は黒色インクとし、第2の芯体のボールペン芯は赤色インクとすることができる。そして、位置検出装置では、第1の芯体102と第2の芯体103の識別情報を受信することができるので、その識別情報に基づいて、それぞれのボールペン芯の描画情報の電子データ(指示位置データ)について、描画色を認識して、それを電子データに含めることができる。
【0117】
また、第1の芯体102及び第2の芯体103を、共に電子ペン芯としてもよい。その場合に、第1の芯体102の電子ペン芯と第2の芯体の電子ペン芯に割り当てられた表示色や、線種、線の太さなどの機能は、位置検出装置において、第1の芯体102と第2の芯体103の識別情報を位置指示器100から付加情報として受信することで判別することができる。
【0118】
なお、第1の芯体と第2の芯体との識別情報を付加情報として位置検出装置に送信することは、この発明の位置指示器としては、必須の要件ではない。上述した実施形態のように、第1の芯体102をボールペン芯とし、第2の芯体103を電子ペン芯とした場合のように、用途が限定されていて、いずれの芯体の先端が突出されているかを位置検出装置側で認識する必要がない場合もある。
【0119】
上述の実施形態では、筆圧検出部材で所定値以上の筆圧が検出されたときにのみ、共振回路を動作させるようにしたが、共振回路は、常時、動作状態とするようにしてもよい。その場合には、位置指示器100が位置検出装置のセンサの接触する前のホバー状態においても、位置検出装置では、位置指示器100の位置を検出することができる。
【0120】
また、第1の芯体と第2の芯体のいずれの先端が開口部101aから外部に突出しているかの検出は、上述の実施形態では、筆圧検出部材で検出される筆圧値を用いるようにしたが、これに限られるものではない。例えば芯体ホルダー104の部分に、第1の芯体、第2の芯体のスライド移動を検知するセンサ部材を設けておくようにしてもよい。
【0121】
また、上述の実施形態では、筆圧検出部材は、第1の芯体及び第2の芯体のそれぞれについて、別々の筆圧検出部材を設ける構成とした。しかし、第1の芯体と第2の芯体のいずれが開口部101aから外部に突出しているかを筆圧値から検出しないようにする場合には、第1の芯体及び第2の芯体に対して筆圧検出部材を共通に設けてもよい。例えばストッパ140の部分に共通の1個の筆圧検出部材を設けると共に、ノック操作部120,130の切り欠き溝124,134と嵌合する凹部を備える押圧伝達部材を設け、その押圧伝達部材を共通の1個の筆圧検出部材に嵌合させるように構成するようにしてもよい。
【0122】
[他の実施形態]
上述の実施形態は、電磁誘導方式の位置指示器の場合であったが、この発明は、信号発信回路を備える、いわゆるアクティブ静電方式の位置指示器にも適用可能である。その場合には、フェライトコア161に巻回されたコイル162と、プリント基板150に設けられるコンデンサ401とで構成される共振回路は、電磁誘導方式の充電回路の一部を構成するものとされ、充電式バッテリーからの電源電圧で信号発信回路が駆動されるようにされる。
【0123】
図5は、このアクティブ静電方式の位置指示器100ESと、当該位置指示器100ESと共に使用される位置検出装置500の回路構成例を示す図である。位置指示器100ESは、充電式のバッテリー(図示せず)を備えると共に、信号発信回路170を備える。この信号発信回路170は、上述の実施形態の位置指示器100の制御回路400に対応する制御回路を含む。
【0124】
信号発信回路170は、発振器(図示せず)を内蔵しており、この信号発信回路170からの発信信号は、導電体である芯体を通じて位置検出装置500に対して送信される。したがって、この例の位置指示器の場合の芯体のそれぞれは、導電体で構成されることになる。
【0125】
上述の実施形態の位置指示器100では、共振回路40Rが用いられて位置検出装置200との間での信号のやり取りが行われるようにされているのに対して、この例の位置指示器100ESでは、信号発信回路170から、芯体選択機構により選択的に筐体101の開口部101aから先端が突出するようにされた芯体を通じて信号が送出される点が異なるが、その他の点では、位置指示器100と同様に構成される。以下の説明では、上述の実施形態の位置指示器100と同一部分については、同一の参照符号を用いることとする。
【0126】
この例の位置指示器100ESと静電容量結合されることで、信号の受信がなされる位置検出装置500のセンサ510は、図5に示すように、第1の導体の群と第2の導体の群を交差させて形成したセンサパターンを用いて、位置指示器100ESから送出される信号を受信して、位置指示器100ESが指示する位置を検出すると共に、付加情報を受信する構成を備えている。
【0127】
第1の導体の群は、例えば、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体511Y、511Y、…、511Y(mは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。
【0128】
また、第2の導体の群は、第1の導体511Y、511Y、…、511Yの延在方向に対して交差する方向、この例では直交する縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体512X、512X、…、512X(nは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。
【0129】
位置検出装置500は、センサ510との入出力インターフェースとされる選択回路521と、増幅回路522と、バンドパスフィルタ523と、検波回路524と、サンプルホールド回路525と、AD(Analog to Digital)変換回路526と、制御回路527とからなる。
【0130】
選択回路521は、制御回路527からの制御信号に基づいて、第1の導体の群および第2の導体の群の中からそれぞれ1本の導体を選択する。選択回路521により選択された導体は増幅回路522に接続され、位置指示器100ESからの信号が、選択された導体により検出されて増幅回路522により増幅される。この増幅回路522の出力はバンドパスフィルタ523に供給されて、位置指示器100ESから送信される信号の周波数の成分のみが抽出される。
【0131】
バンドパスフィルタ523の出力信号は検波回路524によって検波される。この検波回路524の出力信号はサンプルホールド回路525に供給されて、制御回路527からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路526によってデジタル値に変換される。AD変換回路526からのデジタルデータは制御回路527によって読み取られ、処理される。
【0132】
制御回路527は、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路525、AD変換回路526、および選択回路521に、それぞれ制御信号を送出するように動作する。また、制御回路527は、AD変換回路526からのデジタルデータから、位置指示器100ESによって指示されたセンサ510上の位置座標を算出する。また、AD変換回路526からのデジタルデータから、位置指示器100ESから送られてきた付加情報を復調するようにする。
【0133】
図6は、この位置検出装置500のセンサ510で受信される、この実施形態の発信型の位置指示器100ESからの所定のパターンの信号を説明するためのタイミングチャートである。この実施形態の位置指示器100ESにおいては、信号発信回路170の制御回路は、位置検出用信号及び付加情報とからなる所定のパターンの信号を繰り返し出力するようにする。
【0134】
図6(A)は、信号発信回路170の制御回路からの制御信号の例を示すもので、ハイレベルを維持する一定期間は、図6(B)に示すように、信号発信回路170からの発信信号をバースト信号として連続送信する(図6(C)の連続送信期間)。
【0135】
この連続送信期間中に、信号発信回路170の制御回路は、開口部101aから先端が突出している芯体に印加される筆圧の値を、前述の実施形態の位置指示器100で説明したのと同様の方法で、筆圧検出部材105,106で構成される可変容量コンデンサ105C,106Cの静電容量に応じた値として検出し、その筆圧値を複数ビット例えば10ビットの値(2進コード)として求める。
【0136】
信号発信回路170の制御回路は、スタート信号に続いて、上述した位置指示器100と同様の複数ビットの付加情報を順次送信するように信号発信回路170を制御する。信号発信回路170の制御回路は、以上のような連続送信期間と送信データ期間とからなるパターンの信号を、繰り返し送信するようにする。
【0137】
以上のようにして、この例の位置指示器100ESによれば、静電容量方式の発信型の電子ペンにおいても、上述した実施形態の位置指示器100と同様の作用効果を得ることができる。
【0138】
なお、信号発信回路を、前述した電子回路40内に設けて、導体からなる芯体の先端が筐体101の開口部101aから外部に突出したことを検出したときには、電子回路40の信号発信回路からの信号を当該先端が外部に突出している導電性の芯体を通じて送信するように構成することで、位置指示器を、静電容量方式と、電磁誘導方式との両方式に対応させるように構成することもできる。
【0139】
[その他の実施形態及び変形例]
なお、上述の実施形態では、筆圧検出部材は、特許文献:特開2011−186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段を使用した、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量コンデンサの構成としたが、これに限らず、例えば、特開2013−161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた構成することもできる。
【0140】
また、上述の実施形態では、筐体内に収納される芯体は、2個としたが、2個以上であってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0141】
100…位置指示器、101…筐体、102…第1の芯体、103…第2の芯体、105,106…筆圧検出部材、120,130…ノック操作部、150…プリント基板、161…フェライトコア、162…コイル、163…固定部材、401…共振回路を構成するコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7