【実施例】
【0213】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において遺伝子操作に関する各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.著,Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊)に記載の方法により行うか、又は、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
【0214】
<実施例1>
ラット抗ALK2抗体(11E2、15A6、25C11、および27D11:以下、A2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dと略す)の作製
1)-1 抗原の調製
抗原となるmALK2-Fcは、Sino Biological Inc.社製のマウスALK2-His&Fc(Cat.#50297-M03H)を用いた。
【0215】
1)-2 動物の免疫
1mg/mLのマウスALK2-His&FcとTiterMaxGold (TiterMax、USA)を等量混合しエマルジョンを作製した。6週齢のWister雌ラット、2匹に、1匹あたり100μgの抗原をアジュバントと共に、2回に分けて皮下投与した。1〜2週間後に抗原溶液のみを40μg皮下投与し、3日後に抗体産生細胞として脾臓細胞と各種リンパ節を無菌的に摘出し、以下の細胞融合に供した。
【0216】
1)-3 骨髄腫細胞との細胞融合
上記の抗体産生細胞を、BALB/cマウスから得られた株化骨髄腫細胞(P3U1細胞)と5:1〜10:1の割合に調整し、50%ポリエチレングリコール1500を用いて3分間融合させ、その後、6分間かけて希釈した。融合した細胞は、ラット1匹あたり10枚の96穴プレートを用いて、フィーダー細胞(胸腺細胞)と共に播種した。培地として、HATサプリメントを含む15%FBS含有RPMI1640培地(グルタミン、ピルビン酸、ペニシリン、ストレプトマイシン含有)で培養した。
【0217】
1)-4 ハイブリドーマの選択
細胞融合から1週間後、それぞれの培養上清を用いて、酵素結合免疫吸着法(ELISA)で、抗原として用いたマウスALK2-His&Fcを認識するクローンを選択し、さらに、ヒトFc(Sino Biological Inc.社製)のみを認識するクローンを除外した。ELISAは以下のように行った。
【0218】
まず、96ウェルのELISA用プレート(NUNC社製、Cat.#442404)に、1μg/mlとなるようにPBSで希釈した抗原を、室温で2時間、または4℃で一晩、固相化した。固相化液を取り除き、PBSに溶解した0.5%スキムミルク溶液で、室温で30分間のブロッキングを行った。次に、上記ハイブリドーマの培養上清を添加し、室温で1時間静置した。プレートを洗浄後、0.5%スキムミルクで1:2500に希釈したALP標識抗ラットIgG抗体(SBA社製)を加え、さらに、室温で1時間静置した。プレートを洗浄後、フェニルリン酸系基質を室温で20分反応させた後、波長492nmの吸光度を測定した。
【0219】
選択したハイブリドーマについて、限界希釈法で2回以上のクローニングを行った。以上の操作により、モノクローナル抗体A2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dを産生するハイブリドーマ株を単離した。
【0220】
結果を
図1に記載する。ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体は、それぞれマウスALK2-His&Fcを認識し、ヒトFcには結合しないことが示された。
【0221】
<実施例2>
ラット抗ALK2抗体(A2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27D)のin vitro評価
2)-1 フローサイトメトリー法による抗体スクリーニング
2)-1-1 マウスおよびヒトALK2発現細胞の調製
HEK293A細胞を、3×10
4細胞/cm
2となるように100mmディッシュに播種し、15%FBSを含むDMEM培地中で、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。翌日、pcDEF3/マウスALK2(WT)-EGFP、pcDEF3/ヒトALK2(WT)-EGFP、pcDEF3/ヒトALK2(R206H)-EGFP、pcDEF3を、それぞれHEK293A細胞にLipofectamine 2000(Invitrogen社製)を用いて導入し、さらに一晩培養した。翌日、1×10
6細胞/mLとなるように調整した細胞懸濁液を、100μLずつ1.5mL微量遠心管に分注し、500gで5分間遠心した後に上清を除去した。細胞に、1μg/mLに希釈した精製IgG100μLを加え、4℃で30分間静置した。細胞をPBSで3回洗浄後、1:200に希釈したAlexa flour 647 Goat anti-Rat IgG(H+L)(Life Technologies社製)100μLを加え、さらに4℃で30分間静置した。細胞をPBSで3回洗浄後、フローサイトメーター(FACS Aria II:BD Biosciences社製)で蛍光を検出した。データはBD Diva Software(BD Biosciences社製)で解析し、細胞の発現するEGFPの強度と、染色されたAlexa flour 647の蛍光強度をプロットした。
【0222】
結果を
図2A〜
図2Dに記載する。ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体はそれぞれ、蛍光タンパク質EGFP発現細胞(
図2A)を認識しないが、マウスALK2発現細胞(
図2B)と、野生型およびFOPのヒトALK2発現細胞(それぞれ、
図2C及び
図2D)を特異的に認識することが確認された。この結果は、ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体が、ALK2の細胞外領域に結合する抗体であることを示している。
【0223】
2)-2 免疫染色法による抗体スクリーニング
2)-2-1 ヒトALK1、ALK2、ALK3、ALK6発現細胞の調製
マウスC2C12細胞を5×10
3細胞/穴となるように、96穴プレート(グライナー社製)に播種し、15%FBSを含むDMEM培地中で、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。翌日、pcDEF3/ヒトALK1-EGFP、pcDEF3/ヒトALK2-EGFP、pcDEF3/ヒトALK3-EGFP、pcDEF3/ヒトALK6-EGFP、およびコントロールのpcDEF3を、それぞれC2C12細胞にLipofectamine 2000(Invitrogen社製)を用いて導入し、さらに一晩培養した。
【0224】
2)-2-2 ヒトALK1、ALK2、ALK3、ALK6の蛍光免疫染色
C2C12細胞を、10%中性ホルマリン(ナカライテスク社製、日本)で、室温、20分間固定後、10%ヤギ正常血清で30分間ブロッキングを行った。ブロッキング液を除去した後、ブロッキング液で10μg/mLに希釈した精製IgGを加え、室温で1時間静置した。PBSで3回洗浄後、ブロッキング液で1:1000に希釈したGoat Alexa594-conjugated anti-rat IgG(Invitrogen社製)を加えて、室温で1時間静置した。PBSで3回洗浄後、10%中性ホルマリンで室温、15分固定し、DAPI(LifeTechnologies社製)を用いて核染色を施した。蛍光シグナルは、蛍光顕微鏡BZ-9000(Keyence社製)を用いて観察した。
【0225】
結果を
図3に記載する。ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体は、ALK2発現細胞のみを特異的に認識し、ALK1、ALK3、ALK6発現細胞は認識しないことが確認された。この結果は、ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体が、ALK2に特異的に結合する抗体であることを示している。
【0226】
2)-2-3 FOPで同定されたALK2変異体発現細胞の調製
マウスC2C12細胞を0.5×10
3細胞/穴となるように、96穴プレート(グライナー社製)に播種し、15%FBSを含むDMEM培地中で、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。翌日、pcDEF3に組み込んだヒトALK2 cDNAの野生型、およびpcDEF3/ヒトALK2―L196P、pcDEF3/ヒトALK2―P197_F198delinsL,pcDEF3/ヒトALK2―R202I,pcDEF3/ヒトALK2―R206H,pcDEF3/ヒトALK2―Q207E,pcDEF3/ヒトALK2―R258S,pcDEF3/ヒトALK2―G325A,pcDEF3/ヒトALK2―G328E,pcDEF3/ヒトALK2―G328R,pcDEF3/ヒトALK2―G328W,pcDEF3/ヒトALK2―G356D,およびpcDEF3/ヒトALK2―R375Pの各FOPで同定された変異体、およびコントロールのpcDEF3を、それぞれC2C12細胞にLipofectamine 2000(Invitrogen社製)を用いて導入し、さらに一晩培養した。
【0227】
2)-2-4 FOPで同定されたALK2変異体の蛍光免疫染色
C2C12細胞を、10%中性ホルマリン(ナカライテスク社製、日本)で、室温、20分間固定後、10%ヤギ正常血清で30分間ブロッキングを行った。ブロッキング液を除去した後、ブロッキング液で10μg/mLに希釈した精製IgGを加え、室温で1時間静置した。PBSで3回洗浄後、ブロッキング液で1:1000に希釈したGoat Alexa594-conjugated anti-rat IgG(Invitrogen社製)を加えて、室温で1時間静置した。PBSで3回洗浄後、10%中性ホルマリンで室温、15分固定し、DAPI(LifeTechnologies社製)を用いて核染色を施した。蛍光シグナルは、蛍光顕微鏡BZ-9000(Keyence社製)を用いて観察した。
【0228】
結果を
図4に記載する。ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体は、野生型のALK2発現細胞に加え、FOPで同定された12種類のALK2変異体発現細胞を認識することが確認された。この結果は、ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dが産生するモノクローナル抗体は、野生型ALK2、およびFOPの各ALK2変異体に結合する抗体であることを示している。
【0229】
2)-3 ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイによる抗体スクリーニング
モノクローナル抗体のALK2を介した細胞内シグナルの阻害活性は、BMP特異的なルシフェラーゼ・レポーターを用いて解析した。HEK293A細胞を、1×10
4細胞/穴となるように、ルシフェラーゼ・アッセイ用96穴白色プレート(グライナー社製)に播種し、15%FBSを含むDMEM培地中で、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。翌日、pcDEF3/ヒトALK2(WT)-V5-His、またはpcDEF3/ヒトALK2(R206H)-V5-His、pGL4.26/Id1WT4F-luc(Genes Cells,7,949(2002))、phRL SV40(Promega社製)を、Lipofectamine 2000(Invitrogen社製)を用いて導入した。2.5時間後、培地を新鮮なOPTI-MEM I(LifeTechnologies社製)に交換し、さらに1時間培養した。その後、段階希釈したモノクローナル抗体と10ng/mLのBMP7(Milteney社製)、または0.5ng/mLのBMP9(Peprotech社製)を含むOPTI-MEM Iに交換し、さらに一晩培養した。翌日、Dual-Glo Luciferase Assay System(Promega社製)を用いて、Firefly、およびRenillaのルシフェラーゼ活性をプレートリーダーGENios(TECAN社製)で測定した。
【0230】
結果を
図5に記載する。ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体は、ALK2の野生型およびR206H変異型を過剰発現させたHEK293A細胞において、BMP7が誘導するBMP特異的ルシフェラーゼ活性を、用量依存的に抑制することが確認された。
【0231】
2)-4 BMPの骨芽細胞分化誘導アッセイによる抗体スクリーニング
モノクローナル抗体の内在性ALK2を介した細胞内シグナルの阻害活性は、BMPによるC2C12細胞の骨芽細胞への分化誘導活性に対する効果で解析した。C2C12細胞を、0.5×10
3細胞/穴となるように、96穴プレート(グライナー社製)に播種し、15%FBSを含むDMEM培地中で、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。翌日、段階希釈したモノクローナル抗体と200ng/mLのBMP2(コアフロント社製)、200ng/mLのBMP7(Milteney社製)、または20ng/mLのGDF2/BMP9(Peprotech社製)を含むOPTI-MEM Iに交換し、さらに3日間培養した。C2C12細胞の培地を除き、PBSで洗浄した後、細胞を50μL/穴の氷冷したアセトン:エタノール(1:1)溶液で1分間処理し、さらに3回、PBSで洗浄した。骨芽細胞用細胞への分化の指標として、ALP活性を測定した。ALP活性の測定は、100μL/穴の基質溶液(1 mg/mL 4-Nitrophenyl phosphate(Sigma-Aldrich社製)と1mM MgCl
2を含む0.1M Diethanolamine(Sigma-Aldrich社製)-HCl,pH10.0)を加え、室温で15-30分間、撹拌振盪機上で反応させた。反応は、50μLの3M NaOHを添加して停止させ、波長405nmの吸光度をマイクロプレートリーダーinfinite F50(TECAN社製)を用いて測定した。
【0232】
結果を
図6及び
図7に記載する。ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体は、BMP2が誘導するC2C12細胞の骨芽細胞様細胞への分化をほとんど抑制しなかったが(
図6)、BMP7およびGDF2/BMP9が誘導するC2C12細胞の骨芽細胞様細胞への分化は、用量依存的に抑制することが確認された(
図7)。この結果は、ハイブリドーマA2-11E、A2-15A、A2-25C、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体が、C2C12細胞が生理的に発現する内在性ALK2を抑制する抗体であることを示している。
【0233】
<実施例3>
ラット抗ALK2抗体(A2−11E,A2−15A,A2−25C,A2−27D)の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
3)−1 A2−11Eの可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
3)−1−1 A2−11E産生ハイブリドーマからのtotal RNAの調製
A2−11Eの可変領域を含むcDNAを増幅するため、A2−11E産生ハイブリドーマよりTRIzol Reagent(Ambion社)を用いてtotal RNAを調製した。
【0234】
3)−1−2 cDNA(5’−RACE−Ready cDNA)の合成
cDNA(5’−RACE−Ready cDNA)の合成は実施例3)−1−1で調製したtotal RNAの1μgを用い、SMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社)を用いて実施した。
【0235】
3)−1−3 5’−RACE PCRによるA2−11Eの重鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
A2−11Eの重鎖遺伝子の可変領域のcDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして、UPM (Universal Primer A Mix:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)、及び
5’−CTCCAGAGTTCCAGGTCACGGTGACTGGC−3’(RG2AR3;配列番号88)の配列を有するオリゴヌクレオチドを用いた。UPMはSMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社)に付属のものを使用し、RG2AR3はデータベースのラット重鎖の定常領域の配列から設計した。
【0236】
このプライマーの組み合わせと、実施例3)−1−2で合成したcDNA(5’−RACE−Ready cDNA)を鋳型とした5’−RACE PCRによりA2−11Eの重鎖の可変領域を含むcDNAを増幅した。PCRは、PolymeraseとしてKOD−Plus−(TOYOBO社、日本)を用い、SMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社)のマニュアルに従い、タッチダウンPCRプログラムで実施した。
【0237】
5’−RACE PCRで増幅した重鎖の可変領域を含むcDNAをMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製後、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen社)を用いてクローニングし、クローニングした重鎖の可変領域を含むcDNAのヌクレオチド配列のシークエンス解析を実施した。
【0238】
シークエンスプライマーとして、データベースのラット重鎖の定常領域の配列から設計した
5’−CTCCAGAGTTCCAGGTCACGGTGACTGGC−3’(RG2AR3;配列番号88)の配列を有するオリゴヌクレオチド、及びNUP (Nested Universal Primer A:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)を用いた。
【0239】
シークエンス解析は遺伝子配列解析装置(「ABI PRISM 3700 DNA Analyzer;Applied Biosystems」あるいは「Applied Biosystems 3730xl Analyzer;Applied Biosystems」)を用いて実施し、シークエンス反応は、GeneAmp 9700(Applied Biosystems社)を用いた。
【0240】
決定されたA2−11Eの重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号1に示し、アミノ酸配列を配列番号2に示した。
【0241】
3)−1−4 5’−RACE PCRによるA2−11Eの軽鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
A2−11Eの軽鎖遺伝子の可変領域のcDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして、UPM (Universal Primer A Mix:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)、及び
5’−TCAGTAACACTGTCCAGGACACCATCTC−3’(RKR5;配列番号89)の配列を有するオリゴヌクレオチドを用いた。UPMはSMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社)に付属のものを使用し、RKR5はデータベースのラット軽鎖の定常領域の配列から設計した。
【0242】
このプライマーの組み合わせと、実施例3)−1−2で合成したcDNA(5’−RACE−Ready cDNA)を鋳型とした5’−RACE PCRによりA2−11Eの軽鎖の可変領域を含むcDNAを増幅した。PCRは、PolymeraseとしてKOD−Plus−(TOYOBO社、日本)を用い、SMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社)のマニュアルに従い、タッチダウンPCRプログラムで実施した。
【0243】
5’−RACE PCRで増幅した軽鎖の可変領域を含むcDNAをMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製後、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen社)を用いてクローニングし、クローニングした軽鎖の可変領域を含むcDNAのヌクレオチド配列のシークエンス解析を実施した。
【0244】
シークエンスプライマーとして、データベースのラット軽鎖の定常領域の配列から設計した。
【0245】
5’−TCAGTAACACTGTCCAGGACACCATCTC−3’(RKR5;配列番号89)の配列を有するオリゴヌクレオチド、及びNUP (Nested Universal Primer A:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)を用いた。
【0246】
シークエンス解析は遺伝子配列解析装置(「ABI PRISM 3700 DNA Analyzer;Applied Biosystems」あるいは「Applied Biosystems 3730xl Analyzer;Applied Biosystems」)を用いて実施し、シークエンス反応は、GeneAmp 9700(Applied Biosystems社)を用いた。
【0247】
決定されたA2−11Eの軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号3に示し、アミノ酸配列を配列番号4に示した。
【0248】
3)−2 A2−15Aの可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
3)−2−1 A2−15A産生ハイブリドーマからのtotal RNAの調製
A2−15Aの可変領域を含むcDNAを増幅するため、A2−15A生産ハイブリドーマより実施例3)−1−1と同様の方法でtotal RNAを調製した。
【0249】
3)−2−2 cDNA(5’−RACE−Ready cDNA)の合成
cDNA(5’−RACE−Ready cDNA)の合成は実施例3)−2−1で調製したtotal RNAの1μgを用い、実施例3)−1−2と同様の方法で実施した。
【0250】
3)−2−3 5’−RACE PCRによるA2−15Aの重鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
実施例3)−2−2で合成したcDNA(5’−RACE−Ready cDNA)を鋳型として用いて、実施例3)−1−3と同様の方法でA2−15Aの重鎖可変領域を含むcDNAを増幅して配列を決定した。
【0251】
決定されたA2−15Aの重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号5に示し、アミノ酸配列を配列番号6に示した。
【0252】
3)−2−4 5’−RACE PCRによるA2−15Aの軽鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
実施例3)−2−2で合成したcDNA(5’−RACE−Ready cDNA)を鋳型として用いて、実施例3)−1−4と同様の方法でA2−15Aの軽鎖可変領域を含むcDNAを増幅して配列を決定した。
【0253】
決定されたA2−15Aの軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号7に示し、アミノ酸配列を配列番号8に示した。
【0254】
3)−3 A2−25Cの可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
3)−3−1 A2−25C産生ハイブリドーマからのtotal RNAの調製
A2−25Cの可変領域を含むcDNAを増幅するため、A2−25C生産ハイブリドーマより実施例3)−1−1と同様の方法でtotal RNAを調製した。
【0255】
3)−3−2 cDNA(5’−RACE−Ready cDNA)の合成
cDNA(5’−RACE−Ready cDNA)の合成は実施例3)−3−1で調製したtotal RNAの1μgを用い、実施例3)−1−2と同様の方法で実施した。
【0256】
3)−3−3 5’−RACE PCRによるA2−25Cの重鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
実施例3)−3−2で合成したcDNA(5’−RACE−Ready cDNA)を鋳型として用いて、実施例3)−1−3と同様の方法でA2−25Cの重鎖可変領域を含むcDNAを増幅して配列を決定した。
【0257】
決定されたA2−25Cの重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号9に示し、アミノ酸配列を配列番号10に示した。
【0258】
3)−3−4 5’−RACE PCRによるA2−25Cの軽鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
実施例3)−3−2で合成したcDNA(5’−RACE−Ready cDNA)を鋳型として用いて、実施例3)−1−4と同様の方法でA2−25Cの軽鎖可変領域を含むcDNAを増幅して配列を決定した。
【0259】
決定されたA2−25Cの軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号11に示し、アミノ酸配列を配列番号12に示した。
【0260】
3)−4 A2−27Dの可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
3)−4−1 A2−27D産生ハイブリドーマからのtotal RNAの調製
A2−27Dの可変領域を含むcDNAを増幅するため、A2−27D生産ハイブリドーマより実施例3)−1−1と同様の方法でtotal RNAを調製した。
【0261】
3)−4−2 cDNA(5’−RACE−Ready cDNA)の合成
cDNA(5’−RACE−Ready cDNA)の合成は実施例3)−4−1で調製したtotal RNAの1μgを用い、実施例3)−1−2と同様の方法で実施した。
【0262】
3)−4−3 5’−RACE PCRによるA2−27Dの重鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
実施例3)−4−2で合成したcDNA(5’−RACE−Ready cDNA)を鋳型として用いて、実施例3)−1−3と同様の方法でA2−27Dの重鎖可変領域を含むcDNAを増幅して配列を決定した。
【0263】
決定されたA2−27Dの重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号13に示し、アミノ酸配列を配列番号14に示した。
【0264】
3)−4−4 5’−RACE PCRによるA2−27Dの軽鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
実施例3)−4−2で合成したcDNA(5’−RACE−Ready cDNA)を鋳型として用いて、実施例3)−1−4と同様の方法でA2−27Dの軽鎖可変領域を含むcDNAを増幅して配列を決定した。
【0265】
決定されたA2−27Dの軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号15に示し、アミノ酸配列を配列番号16に示した。
【0266】
<実施例4>
ラット抗ALK2抗体(A2-15A、およびA2-27D)のin vivo評価
4)−1 ハイブリドーマ培養上清の調製
実施例1)−4で得られた1.0×10
6個のハイブリドーマを10%FBS含有TILハイグルコース培地で培養し(T75フラスコ)、その後INTEGRA CL1000にて高密度培養を行った(10%FBS培地)。次に培地を無血清に置換し、さらにINTEGRA CL1000での培養を行った後に必要量のハイブリドーマ培養上清を取得した。取得したハイブリドーマ培養上清は精製に供するまで2〜8℃で保存した。
【0267】
4)−2 ハイブリドーマ培養上清からの抗体の精製
実施例4)−1で得られた培養上清から抗体をProtein Gアフィニティークロマトグラフィー(4〜6℃下)一段階工程で精製した。Protein Gアフィニティークロマトグラフィー精製後のバッファー置換工程は4〜6℃下で実施した。最初に、PBSで平衡化したProtein G(GE Healthcare Bioscience社)が充填されたカラムにハイブリドーマの培養上清をアプライした。培養上清液がカラムに全て入ったのち、カラム容量2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に0.1 Mグリシン/塩酸水溶液(pH2.7)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。集めた画分に1M Tris−HCl(pH9.0)を加えてpH7.0〜7.5に調製した後に、透析(Thermo Scientificsha,Slide−A−Lyzer Dialysis Cassette)によりHBSor(25mM ヒスチジン/5% ソルビトール、pH6.0)への液置換を行った。Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社、4℃下)にて濃縮し、IgG濃度を8mg/ml以上に調製した。最後にMinisart−Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0268】
4)-3 BMP移植による異所性骨化誘導モデル
モノクローナル抗体の骨格筋組織における異所性骨化の抑制活性は、マウスにおけるBMPによる異所性骨誘導実験で解析した。BMP含有ペレットは、1μgのBMP7(Milteney社製)、または1μgのGDF2/BMP9(Peprotech社製)を、直径4mmに調整したI型コラーゲンスポンジ(Collatape、Zimmer Dental社製)に染み込ませ、一晩、凍結乾燥機(FDU-810、東京理科器械社製、日本)にて凍結乾燥して作製した。8-10週令のC57BL/6マウスを、小動物実験用簡易吸入麻酔装置(夏目製作所社製、日本)および2%イソフルラン(和光純薬工業社製、日本)を用いて全身麻酔し、左右下肢の大腿筋組織内にBMP含有ペレットを1個ずつ移植した。ハイブリドーマA2-15A、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体を、移植1週間前から、10mg/kg、1回/週、皮下投与し、移植後2週目まで、同様に抗体を投与しながら飼育した。対照群には、等量の溶媒(25mM Histidine/5%Sorbitol,pH6.0)を投与した。BMP含有ペレット移植2週間後、大腿骨とともに移植したBMP含有ペレットを摘出し、マイクロCT(μCT35,SCANCO社製)で異所性骨の形成を解析した。
【0269】
結果を
図8に記載する。BMP7およびGDF2/BMP9を移植しvehicleで処理したマウスでは、マイクロCT解析で大腿骨の右側に異所性骨が誘導された。一方、ハイブリドーマA2-15A、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体を投与したマウスでは、BMP7およびGDF2/BMP9を移植しても異所性骨は検出されなかった。したがって、ハイブリドーマA2-15A、およびA2-27Dの産生するモノクローナル抗体は、BMP7およびGDF2/BMP9が誘導する骨格筋組織における異所性骨誘導を抑制することが確認された。
【0270】
<実施例5>
ヒトキメラ化抗ALK2抗体(cA2−15A、cA2−27D)の作製
5)−1キメラ及びヒト化抗体軽鎖発現ベクターpCMA−LKの構築
プラスミドpcDNA3.3−TOPO/LacZ(Invitrogen社)を制限酵素XbaI及びPmeIで消化して得られる約5.4kbのフラグメントと、配列番号17に示すヒトκ鎖分泌シグナル及びヒトκ鎖定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を、In−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、pcDNA3.3/LKを作製した。
【0271】
pcDNA3.3/LKを鋳型として、下記プライマーセットでPCRを行い、得られた約3.8kbのフラグメントをリン酸化後セルフライゲーションすることによりCMVプロモーターの下流にシグナル配列、クローニングサイト、及びヒトκ鎖定常領域を持つ、キメラ及びヒト化抗体軽鎖発現ベクターpCMA−LKを構築した。
プライマーセット
5’−TATACCGTCGACCTCTAGCTAGAGCTTGGC−3’(3.3−F1;配列番号90)
5’−GCTATGGCAGGGCCTGCCGCCCCGACGTTG−3’(3.3−R1;配列番号91)
【0272】
5)−2 キメラ及びヒト化抗体IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G1の構築
pCMA−LKをXbaI及びPmeIで消化してκ鎖分泌シグナル及びヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片と、配列番号18に示すヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1定常領域のアミノ酸をコードするDNA配列を含むDNA断片を、In−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、CMVプロモーターの下流にシグナル配列、クローニングサイト、ヒトIgG1重鎖定常領域をもつキメラ及びヒト化抗体IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G1を構築した。
【0273】
5)−3 cA2−15A重鎖発現ベクターの構築
実施例3)−2−3で得られたA2−15Aの重鎖の可変領域を含むcDNAをテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社、日本)と下記のプライマーセットで重鎖の可変領域をコードするcDNAを含むDNA断片を増幅し、キメラ及びヒト化IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G1を制限酵素BlpIで切断した箇所にIn−Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて挿入することにより、cA2−15A重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/cA2−15A」と命名した。cA2−15A重鎖のヌクレオチド配列を配列番号19に示し、アミノ酸配列を配列番号20に示した。
cA2−15A重鎖用プライマーセット
5’−CCAGATGGGTGCTGAGCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGCGGAG−3’(A2−15AH−F;配列番号92)
5’−CTTGGTGGAGGCTGAGCTGACAGTGACCAGAGTGCCTTGGCCCCAG−3’(A2−15AH−R;配列番号93)
【0274】
5)−4 cA2−15A軽鎖発現ベクターの構築
実施例3)−2−4で得られたA2−15Aの軽鎖の可変領域を含むcDNAをテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社、日本)と下記のプライマーセットで軽鎖の可変領域をコードするcDNAを含むDAN断片を増幅し、キメラ及びヒト化軽鎖発現汎用ベクターpCMA−LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn−Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて挿入することにより、cA2−15Aの軽鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−LK/cA2−15A」と命名した。cA2−15Aの軽鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号21に示し、アミノ酸配列を配列番号22に示した。
cA2−15A軽鎖用プライマーセット
5’−ATCTCCGGCGCGTACGGCGACATTGTCTTGACCCAGTCTCCTGC−3’(A2−15AL−F;配列番号94)
5’−GGAGGGGGCGGCCACAGCCCGTTTCAGTTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(A2−15AL−R;配列番号95)
【0275】
5)−5 cA2−27D重鎖発現ベクターの構築
実施例3)−4−3で得られたA2−27Dの重鎖の可変領域を含むcDNAをテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社、日本)と下記のプライマーセットで重鎖の可変領域をコードするcDNAを含むDNA断片を増幅し、キメラ及びヒト化IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G1を制限酵素BlpIで切断した箇所にIn−Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて挿入することにより、cA2−27D重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/cA2−27D」と命名した。cA2−27D重鎖のヌクレオチド配列を配列番号23に示し、アミノ酸配列を配列番号24に示した。
cA2−27D重鎖用プライマーセット
5’−CCAGATGGGTGCTGAGCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGAGGAG−3’(A2−27DH−F;配列番号96)
5’−CTTGGTGGAGGCTGAGCTCACGGTGACCACGGTTCCTGGGCCCCAG−3’(A2−27DH−R;配列番号97)
【0276】
5)−6 cA2−27D軽鎖発現ベクターの構築
実施例3)−4−4で得られたA2−27Dの軽鎖の可変領域を含むcDNAをテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社、日本)と下記のプライマーセットで軽鎖の可変領域をコードするcDNAを含むDAN断片を増幅し、キメラ及びヒト化抗体軽鎖発現汎用ベクターpCMA−LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn−Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて挿入することにより、cA2−27D抗体の軽鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−LK/cA2−27D」と命名した。cA2−27D抗体の軽鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号25に示し、アミノ酸配列を配列番号26に示した。
cA2−27D軽鎖用プライマーセット
5’−ATCTCCGGCGCGTACGGCGAAATTGTTCTCACTCAGTCTCCAAC−3’(A2−27DL−F;配列番号98)
5’−GGAGGGGGCGGCCACAGCCCGTTTCAGTTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(A2−15AL−R;配列番号95)
【0277】
5)−7 cA2−15A及びcA2−27Dの生産
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。対数増殖期の1.2×10
9個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を3L Fernbach Erlenmeyer Flask(CORNING社)に播種し、FreeStyle293 expression medium (Invitrogen社)で希釈して2.0×10
6細胞/mlに調製したのちに、37℃、8%CO
2インキュベーター内で90rpmで1時間振とう培養した。Polyethyleneimine(Polyscience #24765)1.8mgをOpti−Pro SFM培地(Invitrogen社)20mlに溶解し、次にNucleoBond Xtra(TaKaRa社、日本)を用いて調製したH鎖発現ベクター(0.24mg)及びL鎖発現ベクター(0.36mg)を20mlのOpti−Pro SFM培地(Invitrogen社)に添加した。Polyethyleneimine/Opti−Pro SFM混合液20mlに、発現ベクター/Opti−Pro SFM混合液20mlを加え穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8%CO
2インキュベーターで4時間、90rpmで振とう培養後に600mlのEX−CELL VPRO培地(SAFC Biosciences社)、18mlのGlutaMAX I(GIBCO社)、及び30mlのYeastolate Ultrafiltrate(GIBCO社)を添加し、37℃、8%CO
2インキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter (Advantec #CCS−045−E1H)でろ過した。
【0278】
pCMA−G1/cA2−15AとpCMA−LK/cA2−15Aとの組合せによって取得されたラット抗体A2−15Aのキメラ抗体を「cA2−15A」と命名し、pCMA−G1/cA2−27DとpCMA−LK/cA2−27Dとの組合せによって取得されたラット抗体A2−27Dのキメラ抗体を「cA2−27D」と命名した。
【0279】
5)−8 cA2−15A及びcA2−27Dの二段階工程精製
実施例5)−7で得られた培養上清から抗体をrProtein Aアフィニティークロマトグラフィー(4−6℃下)とセラミックハイドロキシアパタイト(室温下)の二段階工程で精製した。rProtein Aアフィニティークロマトグラフィー精製後とセラミックハイドロキシアパタイト精製後のバッファー置換工程は4−6℃下で実施した。PBSで平衡化したMabSelectSuRe(GE Healthcare Bioscience社製、HiTrapカラム)に培養上清をアプライした。培養上清がカラムに全て入ったのち、カラム容量2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide−A−Lyzer Dialysis Cassette)によりPBSに置換した後、5mMリン酸ナトリウム/50mM MES/pH7.0のバッファーで5倍希釈した抗体溶液を、5mM NaPi/50mM MES/30mM NaCl/pH7.0のバッファーで平衡化されたセラミックハイドロキシアパタイトカラム(日本バイオラッド、Bio−Scale CHT Type―1 Hydroxyapatite Column)にアプライした。塩化ナトリウムによる直線的濃度勾配溶出を実施し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientificsha,Slide−A−Lyzer Dialysis Cassette)によりHBSor(25mM ヒスチジン/5%ソルビトール、pH6.0)への液置換を行った。Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社、4℃下)にて濃縮し、IgG濃度を2mg/ml以上に調整した。最後にMinisart−Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0280】
<実施例6>
ヒトキメラ化抗ALK2抗体(cA2-15A、cA2-27D)のin vitro活性評価
6)−1 ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイによる抗体評価
作製したヒトキメラ化抗体のALK2を介した細胞内シグナルの阻害活性は、BMP特異的なルシフェラーゼ・レポーターを用いて解析した。HEPG2細胞を、1×10
4細胞/穴となるように、ルシフェラーゼ・アッセイ用96穴白色プレート(CORNING社製)に播種し、10%FBSを含むDMEM培地中で、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。翌日、pGL4.26/Id1WT4F-luc(Genes Cells,7,949(2002))を、Lipofectamine 2000(Invitrogen社製)を用いて導入した。2.5時間後、培地を新鮮なOPTI-MEM I(LifeTechnologies社製)に交換し、さらに3時間培養した。その後、段階希釈したモノクローナル抗体と10ng/mLのBMP7(Milteney社製)を含むOPTI-MEM Iに交換し、さらに一晩培養した。翌日、Dual-Glo Luciferase Assay System(Promega社製)を用いてルシフェラーゼ活性をプレートリーダーSpectraMaxM4(Molecular Devices社製)で測定した。
【0281】
結果を
図9に記載する。キメラ化抗体cA2-15A、cA2-27Dは、BMP7が誘導するBMP特異的ルシフェラーゼ活性に対して、それぞれのラットモノクローナル抗体A2-15A、A2-27Dと同等の阻害活性を示すことが確認された。
【0282】
6)−2 BMPの骨芽細胞分化誘導アッセイによる抗体評価
作製したヒトキメラ化抗体の内在性ALK2を介した細胞内シグナルの阻害活性は、BMPによるC2C12細胞の骨芽細胞への分化誘導活性に対する効果で解析した。C2C12細胞を、5×10
3細胞/穴となるように、96穴プレート(IWAKI社製)に播種し、15%FBSを含むDMEM培地中で、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。翌日、培地を新鮮なOPTI-MEM I(LifeTechnologies社製)に交換し、段階希釈したモノクローナル抗体と2 ng/mLのGDF2/BMP9(Peprotech社製)を含むOPTI-MEM Iに交換し、さらに3日間培養した。C2C12細胞の培地を除き、PBSで洗浄した後、細胞を50μL/穴の氷冷したアセトン:エタノール(1:1)溶液で1分間処理し、さらに3回、PBSで洗浄した。骨芽細胞用細胞への分化の指標として、ALP活性を測定した。ALP活性の測定は、100 μL/穴の基質溶液(1 mg/mL 4-Nitrophenyl phosphate(Sigma-Aldrich社製)と1mM MgCl
2を含む0.1M Diethanolamine(Sigma-Aldrich社製)-HCl,pH10.0)を加え、室温で15-30分間、撹拌振盪機上で反応させた。反応は、50 μLの3 M NaOHを添加して停止させ、波長405nmの吸光度をプレートリーダーSpectraMaxM4(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
【0283】
結果を
図10に記載する。キメラ化抗体cA2-15A、cA2-27Dは、BMPによって誘導されるC2C12細胞の骨芽細胞様細胞への分化を、用量依存的に抑制することが確認された。この結果は、キメラ化抗体cA2-15A、cA2-27Dが、C2C12細胞が生理的に発現する内在性ALK2を抑制する抗体であることを示している。また、その阻害活性は、それぞれのラットモノクローナル抗体A2-15A、A2-27Dと同等であることが確認された。
【0284】
<実施例7>
抗ALK2抗体A2−15A、および A2−27Dのヒト化体デザイン
7)−1 ヒト化hA2−15Aの設計
7)−1−1 A2−15Aの可変領域の分子モデリング
A2−15Aの可変領域の分子モデリングは、ホモロジーモデリングとして公知の方法(Methods in Enzymology,203,121−153,(1991))によって実行された。Protein Data Bank(Nuc.Acid Res.35,D301−D303(2007))に登録されるヒト免疫グロブリンの可変領域の1次配列(X線結晶構造から誘導される三次元構造が入手可能である)を、上で決定されたA2−15Aの可変領域と比較した。結果として、3KYMと3S35がそれぞれA2−15Aの重鎖と軽鎖の可変領域に対して最も高い配列同一性を有するとして選択された。フレームワーク領域の三次元構造は、A2−15Aの重鎖及び軽鎖に対応する3KYM及び3S35の座標を組み合わせて、「フレームワークモデル」を得ることによって作製された。次いで、それぞれのCDRについての代表的なコンホメーションがフレームワークモデルに組み込まれた。
【0285】
最後に、エネルギーの点でA2−15Aの可変領域の可能性のある分子モデルを得るために、不利な原子間接触を除くためのエネルギー計算を行った。上記手順を、市販のタンパク質立体構造解析プログラムDiscovery Studio(Accelrys社製)を用いて行った。
【0286】
7)−1−2 ヒト化hA2−15Aに対するアミノ酸配列の設計
ヒト化hA2−15Aの構築を、CDRグラフティング(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))として一般的に公知の方法によって行った。アクセプター抗体は、フレームワーク領域内のアミノ酸同一性に基づいて選択された。
【0287】
A2−15Aのフレームワーク領域の配列を、ヒトのサブグループ・コンセンサス配列のフレームワーク領域と比較した。結果として、KABAT et al. (Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service National Institutes of Health, Bethesda,MD.(1991))において既定されたヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列とヒトκ鎖サブグループ4のコンセンサス配列が、そのフレームワーク領域において高い配列同一性に有することに起因して、アクセプターとして選択された。ヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列とヒトκ鎖サブグループ4のコンセンサス配列についてのフレームワーク領域のアミノ酸残基を、A2−15Aについてのアミノ酸残基と整列させ、異なるアミノ酸が使用される位置を同定した。これらの残基の位置は、上で構築されたA2−15Aの三次元モデルを使用して分析され、そしてアクセプター上にグラフティングされるべきドナー残基が、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))によって与えられる基準によって選択された。選択された幾つかのドナー残基をアクセプター抗体に移入することによって、ヒト化hA2−15Aの配列を以下の実施例に記載されるように構築した。
【0288】
7)−2 A2−15A重鎖のヒト化
7)−2−1 ヒト化hA2−15A−H1タイプ重鎖
配列番号20に示されるキメラcA2−15Aの重鎖のアミノ酸番号35(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号61(スレオニン)をグリシンに、アミノ酸番号94(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号96(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号103(アスパラギン酸)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号112(スレオニン)をバリンに、アミノ酸番号116(スレオニン)をアラニンに置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−15A重鎖を「ヒト化hA2−15A−H1タイプ重鎖」(「hA2−15A−H1」と呼ぶこともある)と命名した。
【0289】
ヒト化hA2−15A−H1タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号28に記載されている。配列番号28のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至142番目のアミノ酸残基からなる配列、143乃至472番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号28のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号27に記載されている。配列番号27のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至426番目のヌクレオチドからなる配列、427乃至1416番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号27のヌクレオチド配列及び配列番号28のアミノ酸配列は、
図15にも記載されている。
【0290】
7)−2−2 ヒト化hA2−15A−H4タイプ重鎖
配列番号20に示されるキメラcA2−15Aの重鎖のアミノ酸番号35(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号61(スレオニン)をグリシンに、アミノ酸番号103(アスパラギン酸)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−15A重鎖を「ヒト化hA2−15A−H4タイプ重鎖」(「hA2−15A−H4」と呼ぶこともある)と命名した。
【0291】
ヒト化hA2−15A−H4タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号30に記載されている。配列番号30のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至142番目のアミノ酸残基からなる配列、143乃至472番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号30のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号29に記載されている。配列番号29のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至426番目のヌクレオチドからなる配列、427乃至1416番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号29のヌクレオチド配列及び配列番号30のアミノ酸配列は、
図16にも記載されている。
【0292】
7)−3 A2−15A軽鎖のヒト化
7)−3−1 ヒト化hA2−15A−L1タイプ軽鎖
配列番号22に示されるキメラcA2−15Aの軽鎖のアミノ酸番号24(ロイシン)をメチオニンに、アミノ酸番号29(アラニン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号29−30の間(欠損残基)をセリンに、アミノ酸番号36(グルタミン)をグルタミン酸に、アミノ酸番号41(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号66(リジン)をプロリンに、アミノ酸番号81(イソロイシン)をバリンに、アミノ酸番号83(アラニン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号99(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号100(プロリン)をセリンに、アミノ酸番号101(バリン)をロイシンに、アミノ酸番号104(アスパラギン酸)をグルタミン酸に、アミノ酸番号106(イソロイシン)をバリンに、アミノ酸番号108(スレオニン)をバリンに、アミノ酸番号123(アラニン)をグルタミンに、アミノ酸番号127(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号129(ロイシン)をイソロイシンに置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−15A軽鎖を「ヒト化hA2−15A−L1タイプ軽鎖」(「hA2−15A−L1」と呼ぶこともある)と命名した。
【0293】
ヒト化hA2−15A−L1タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号32に記載されている。配列番号32のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至133番目のアミノ酸残基からなる配列、134乃至238番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号32のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号31に記載されている。配列番号31のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至424番目のヌクレオチドからなる配列、425乃至739番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号31のヌクレオチド配列及び配列番号32のアミノ酸配列は、
図17にも記載されている。
【0294】
7)−3−2 ヒト化hA2−15A−L4タイプ軽鎖
配列番号22に示されるキメラcA2−15Aの軽鎖のアミノ酸番号29(アラニン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号29−30の間(欠損残基)をセリンに、アミノ酸番号36(グルタミン)をグルタミン酸に、アミノ酸番号41(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号99(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号100(プロリン)をセリンに、アミノ酸番号108(スレオニン)をバリンに、アミノ酸番号123(アラニン)をグルタミンに置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−15A軽鎖を「ヒト化hA2−15A−L4タイプ軽鎖」(「hA2−15A−L4」と呼ぶこともある)と命名した。
【0295】
ヒト化hA2−15A−L4タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号34に記載されている。配列番号34のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至133番目のアミノ酸残基からなる配列、134乃至238番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号34のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号33に記載されている。配列番号33のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至424番目のヌクレオチドからなる配列、425乃至739番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号33のヌクレオチド配列及び配列番号34のアミノ酸配列は、
図18にも記載されている。
【0296】
7)−3−3 ヒト化hA2−15A−L6タイプ軽鎖
配列番号22に示されるキメラcA2−15Aの軽鎖のアミノ酸番号29(アラニン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号29−30の間(欠損残基)をセリンに、アミノ酸番号36(グルタミン)をグルタミン酸に、アミノ酸番号41(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号79(セリン)をグルタミンに、アミノ酸番号99(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号100(プロリン)をセリンに、アミノ酸番号108(スレオニン)をバリンに、アミノ酸番号123(アラニン)をグルタミンに置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−15A軽鎖を「ヒト化hA2−15A−L6タイプ軽鎖」(「hA2−15A−L6」と呼ぶこともある)と命名した。
【0297】
ヒト化hA2−15A−L6タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号36に記載されている。配列番号36のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至133番目のアミノ酸残基からなる配列、134乃至238番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号36のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号35に記載されている。配列番号35のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至424番目のヌクレオチドからなる配列、425乃至739番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号35のヌクレオチド配列及び配列番号36のアミノ酸配列は、
図19にも記載されている。
【0298】
7)−3−4 ヒト化hA2−15A−L7タイプ軽鎖
配列番号22に示されるキメラcA2−15Aの軽鎖のアミノ酸番号29(アラニン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号29−30の間(欠損残基)をセリンに、アミノ酸番号36(グルタミン)をグルタミン酸に、アミノ酸番号41(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号70(ロイシン)をアラニンに、アミノ酸番号99(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号100(プロリン)をセリンに、アミノ酸番号108(スレオニン)をバリンに、アミノ酸番号123(アラニン)をグルタミンに置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−15A軽鎖を「ヒト化hA2−15A−L7タイプ軽鎖」(「hA2−15A−L7」と呼ぶこともある)と命名した。
【0299】
ヒト化hA2−15A−L7タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号38に記載されている。配列番号38のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至133番目のアミノ酸残基からなる配列、134乃至238番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号38のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号37に記載されている。配列番号37のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至424番目のヌクレオチドからなる配列、425乃至739番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号37のヌクレオチド配列及び配列番号38のアミノ酸配列は、
図20にも記載されている。
【0300】
7)−4 重鎖及び軽鎖の組み合わせによるヒト化hA2−15Aの設計
ヒト化hA2−15A−H1タイプ重鎖及びヒト化hA2−15A−L1タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−15A−H1/L1」(「hA2−15A−H1/L1」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−15A−H1タイプ重鎖及びヒト化hA2−15A−L4タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−15A−H1/L4」(「hA2−15A−H1/L4」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−15A−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−15A−L1タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−15A−H4/L1」(「hA2−15A−H4/L1」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−15A−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−15A−L4タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−15A−H4/L4」(「hA2−15A−H4/L4」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−15A−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−15A−L6タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−15A−H4/L6」(「hA2−15A−H4/L6」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−15A−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−15A−L7タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−15A−H4/L7」(「hA2−15A−H4/L7」と呼ぶこともある)と命名した。以上により設計した抗体は、実施例8に準じて作製し、実施例2及び4に準じて評価することができる。
【0301】
7)−5 ヒト化hA2−27Dの設計
7)−5−1 A2−27Dの可変領域の分子モデリング
A2−27Dの可変領域の分子モデリングは、ホモロジーモデリングとして公知の方法(Methods in Enzymology,203,121−153,(1991))によって実行された。Protein Data Bank(Nuc.Acid Res.35,D301−D303(2007))に登録されるヒト免疫グロブリンの可変領域の1次配列(X線結晶構造から誘導される三次元構造が入手可能である)を、上で決定されたA2−27Dの可変領域と比較した。結果として、3EYQと4I9WがそれぞれA2−27Dの重鎖と軽鎖の可変領域に対して最も高い配列同一性を有するとして選択された。フレームワーク領域の三次元構造は、A2−27Dの重鎖及び軽鎖に対応する3EYQ及び4I9Wの座標を組み合わせて、「フレームワークモデル」を得ることによって作製された。次いで、それぞれのCDRについての代表的なコンホメーションがフレームワークモデルに組み込まれた。
【0302】
最後に、エネルギーの点でA2−27Dの可変領域の可能性のある分子モデルを得るために、不利な原子間接触を除くためのエネルギー計算を行った。上記手順を、市販のタンパク質立体構造解析プログラムDiscovery Studio(Accelrys社製)を用いて行った。
【0303】
7)−5−2 ヒト化hA2−27Dに対するアミノ酸配列の設計
ヒト化hA2−27Dの構築を、CDRグラフティング(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))として一般的に公知の方法によって行った。アクセプター抗体は、フレームワーク領域内のアミノ酸同一性に基づいて選択された。
【0304】
A2−27Dのフレームワーク領域の配列を、ヒトのサブグループ・コンセンサス配列のフレームワーク領域と比較した。結果として、KABAT et al.(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))において既定されたヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列とヒトκ鎖サブグループ4のコンセンサス配列が、そのフレームワーク領域において高い配列同一性に有することに起因して、アクセプターとして選択された。ヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列とヒトκ鎖サブグループ3のコンセンサス配列についてのフレームワーク領域のアミノ酸残基を、A2−27Dについてのアミノ酸残基と整列させ、異なるアミノ酸が使用される位置を同定した。これらの残基の位置は、上で構築されたA2−27Dの三次元モデルを使用して分析され、そしてアクセプター上にグラフティングされるべきドナー残基が、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))によって与えられる基準によって選択された。選択された幾つかのドナー残基をアクセプター抗体に移入することによって、ヒト化hA2−27Dの配列を以下の実施例に記載されるように構築した。
【0305】
7)−6 A2−27D重鎖のヒト化
7)−6−1 ヒト化hA2−27D−H1タイプ重鎖
配列番号24に示されるキメラcA2−27Dの重鎖のアミノ酸番号35(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号42(ロイシン)をアラニンに、アミノ酸番号56(イソロイシン)をバリンに、アミノ酸番号68(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号94(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号95(アルギニン)をリジンに、アミノ酸番号103(スレオニン)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号112(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号117(アラニン)をアルギニンに、アミノ酸番号132(プロリン)をグルタミンに、アミノ酸番号135(バリン)をロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−15A重鎖を「ヒト化hA2−27D−H1タイプ重鎖」(「hA2−27D−H1」と呼ぶこともある)と命名した。
【0306】
ヒト化hA2−27D−H1タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号40に記載されている。配列番号40のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至140番目のアミノ酸残基からなる配列、141乃至470番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号40のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号39に記載されている。配列番号39のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至420番目のヌクレオチドからなる配列、421乃至1410番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号39のヌクレオチド配列及び配列番号40のアミノ酸配列は、
図21にも記載されている。
【0307】
7)−6−2 ヒト化hA2−27D−H2タイプ重鎖
配列番号24に示されるキメラcA2−27Dの重鎖のアミノ酸番号35(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号42(ロイシン)をアラニンに、アミノ酸番号68(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号94(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号95(アルギニン)をリジンに、アミノ酸番号103(スレオニン)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号112(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号132(プロリン)をグルタミンに、アミノ酸番号135(バリン)をロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D重鎖を「ヒト化hA2−27D−H2タイプ重鎖」(「hA2−27D−H2」と呼ぶこともある)と命名した。
【0308】
ヒト化hA2−27D−H2タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号42に記載されている。配列番号42のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至140番目のアミノ酸残基からなる配列、141乃至470番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号42のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号41に記載されている。配列番号41のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至420番目のヌクレオチドからなる配列、421乃至1410番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号41のヌクレオチド配列及び配列番号42のアミノ酸配列は、
図22にも記載されている。
【0309】
7)−6−3 ヒト化hA2−27D−H3タイプ重鎖
配列番号24に示されるキメラcA2−27Dの重鎖のアミノ酸番号35(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号42(ロイシン)をアラニンに、アミノ酸番号94(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号95(アルギニン)をリジンに、アミノ酸番号103(スレオニン)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号112(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号132(プロリン)をグルタミンに、アミノ酸番号135(バリン)をロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D重鎖を「ヒト化hA2−27D−H3タイプ重鎖」(「hA2−27D−H3」と呼ぶこともある)と命名した。
【0310】
ヒト化hA2−27D−H3タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号44に記載されている。配列番号44のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至140番目のアミノ酸残基からなる配列、141乃至470番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号44のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号43に記載されている。配列番号43のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至420番目のヌクレオチドからなる配列、421乃至1410番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号43のヌクレオチド配列及び配列番号44のアミノ酸配列は、
図23にも記載されている。
【0311】
7)−6−4 ヒト化hA2−27D−H4タイプ重鎖
配列番号24に示されるキメラcA2−27Dの重鎖のアミノ酸番号35(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号42(ロイシン)をアラニンに、アミノ酸番号94(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号95(アルギニン)をリジンに、アミノ酸番号103(スレオニン)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号135(バリン)をロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D重鎖を「ヒト化hA2−27D−H4タイプ重鎖」(「hA2−27D−H4」と呼ぶこともある)と命名した。
【0312】
ヒト化hA2−27D−H4タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号46に記載されている。配列番号46のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至140番目のアミノ酸残基からなる配列、141乃至470番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号46のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号45に記載されている。配列番号45のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至420番目のヌクレオチドからなる配列、421乃至1410番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号45のヌクレオチド配列及び配列番号46のアミノ酸配列は、
図24にも記載されている。
【0313】
7)−6−5 ヒト化hA2−27D−H5タイプ重鎖
配列番号24に示されるキメラcA2−27Dの重鎖のアミノ酸番号35(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号42(ロイシン)をアラニンに、アミノ酸番号95(アルギニン)をリジンに、アミノ酸番号103(スレオニン)をアスパラギンに、アミノ酸番号135(バリン)をロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D重鎖を「ヒト化hA2−27D−H5タイプ重鎖」(「hA2−27D−H5」と呼ぶこともある)と命名した。
【0314】
ヒト化hA2−27D−H5タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号48に記載されている。配列番号48のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至140番目のアミノ酸残基からなる配列、141乃至470番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号48のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号47に記載されている。配列番号47のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至420番目のヌクレオチドからなる配列、421乃至1410番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号47のヌクレオチド配列及び配列番号48のアミノ酸配列は、
図25にも記載されている。
【0315】
7)−7 A2−27D軽鎖のヒト化
7)−7−1 ヒト化hA2−27D−L1タイプ軽鎖
配列番号26に示されるキメラcA2−27Dの軽鎖のアミノ酸番号29(スレオニンをグリシンに、アミノ酸番号31(メチオニン)をロイシンに、アミノ酸番号32(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号33(アラニン)をロイシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号39(バリン)をアラニンに、アミノ酸番号42(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号59(セリン)をプロリンに、アミノ酸番号61(アラニン)をグルタミンに、アミノ酸番号62(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号64(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号66(トリプトファン)をロイシンに、アミノ酸番号77(バリン)をイソロイシンに、アミノ酸番号79(アスパラギン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号89(セリン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号90(チロシン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号91(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号93(アラニン)をスレオニンに、アミノ酸番号96(セリン)をアルギニンに、アミノ酸番号97(メチオニン)をロイシンに、アミノ酸番号99(アラニン)をプロリンに、アミノ酸番号102(バリン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号104(スレオニン)をバリンに、アミノ酸番号120(アラニン)をグルタミンに、アミノ酸番号124(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号126(ロイシン)をイソロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D軽鎖を「ヒト化hA2−27D−L1タイプ軽鎖」(「hA2−27D−L1」と呼ぶこともある)と命名した。
【0316】
ヒト化hA2−27D−L1タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号50に記載されている。配列番号50のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至129番目のアミノ酸残基からなる配列、130乃至234番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号50のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号49に記載されている。配列番号49のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至412番目のヌクレオチドからなる配列、413乃至727番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号49のヌクレオチド配列及び配列番号50のアミノ酸配列は、
図26にも記載されている。
【0317】
7)−7−2 ヒト化hA2−27D−L2タイプ軽鎖
配列番号26に示されるキメラcA2−27Dの軽鎖のアミノ酸番号29(スレオニンをグリシンに、アミノ酸番号31(メチオニン)をロイシンに、アミノ酸番号32(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号33(アラニン)をロイシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号39(バリン)をアラニンに、アミノ酸番号42(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号59(セリン)をプロリンに、アミノ酸番号61(アラニン)をグルタミンに、アミノ酸番号64(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号79(アスパラギン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号89(セリン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号90(チロシン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号91(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号93(アラニン)をスレオニンに、アミノ酸番号96(セリン)をアルギニンに、アミノ酸番号97(メチオニン)をロイシンに、アミノ酸番号99(アラニン)をプロリンに、アミノ酸番号102(バリン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号104(スレオニン)をバリンに、アミノ酸番号120(アラニン)をグルタミンに、アミノ酸番号124(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号126(ロイシン)をイソロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D軽鎖を「ヒト化hA2−27D−L2タイプ軽鎖」(「hA2−27D−L2」と呼ぶこともある)と命名した。
【0318】
ヒト化hA2−27D−L2タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号52に記載されている。配列番号52のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至129番目のアミノ酸残基からなる配列、130乃至234番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号52のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号51に記載されている。配列番号51のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至412番目のヌクレオチドからなる配列、413乃至727番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号51のヌクレオチド配列及び配列番号52のアミノ酸配列は、
図27にも記載されている。
【0319】
7)−7−3 ヒト化hA2−27D−L3タイプ軽鎖
配列番号26に示されるキメラcA2−27Dの軽鎖のアミノ酸番号29(スレオニンをグリシンに、アミノ酸番号31(メチオニン)をロイシンに、アミノ酸番号32(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号33(アラニン)をロイシンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号39(バリン)をアラニンに、アミノ酸番号42(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号59(セリン)をプロリンに、アミノ酸番号64(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号79(アスパラギン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号89(セリン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号91(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号93(アラニン)をスレオニンに、アミノ酸番号96(セリン)をアルギニンに、アミノ酸番号97(メチオニン)をロイシンに、アミノ酸番号99(アラニン)をプロリンに、アミノ酸番号102(バリン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号124(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号126(ロイシン)をイソロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D軽鎖を「ヒト化hA2−27D−L3タイプ軽鎖」(「hA2−27D−L3」と呼ぶこともある)と命名した。
【0320】
ヒト化hA2−27D−L3タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号54に記載されている。配列番号54のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至129番目のアミノ酸残基からなる配列、130乃至234番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号54のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号53に記載されている。配列番号53のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至412番目のヌクレオチドからなる配列、413乃至727番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号53のヌクレオチド配列及び配列番号54のアミノ酸配列は、
図28にも記載されている。
【0321】
7)−7−4 ヒト化hA2−27D−L4タイプ軽鎖
配列番号26に示されるキメラcA2−27Dの軽鎖のアミノ酸番号29(スレオニンをグリシンに、アミノ酸番号32(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号42(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号59(セリン)をプロリンに、アミノ酸番号64(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号79(アスパラギン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号89(セリン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号91(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号93(アラニン)をスレオニンに、アミノ酸番号96(セリン)をアルギニンに、アミノ酸番号99(アラニン)をプロリンに、アミノ酸番号102(バリン)をフェニルアラニンに置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D軽鎖を「ヒト化hA2−27D−L4タイプ軽鎖」(「hA2−27D−L4」と呼ぶこともある)と命名した。
【0322】
ヒト化hA2−27D−L4タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号56に記載されている。配列番号56のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至129番目のアミノ酸残基からなる配列、130乃至234番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号56のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号55に記載されている。配列番号55のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至412番目のヌクレオチドからなる配列、413乃至727番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号55のヌクレオチド配列及び配列番号56のアミノ酸配列は、
図29にも記載されている。
【0323】
7)−7−5 ヒト化hA2−27D−L5タイプ軽鎖
配列番号26に示されるキメラcA2−27Dの軽鎖のアミノ酸番号29(スレオニンをグリシンに、アミノ酸番号32(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号91(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号93(アラニン)をスレオニンに、アミノ酸番号96(セリン)をアルギニンに、アミノ酸番号99(アラニン)をプロリンに、アミノ酸番号102(バリン)をフェニルアラニンに置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−27D軽鎖を「ヒト化hA2−27D−L5タイプ軽鎖」(「hA2−27D−L5」と呼ぶこともある)と命名した。
【0324】
ヒト化hA2−27D−L5タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号58に記載されている。配列番号58のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至129番目のアミノ酸残基からなる配列、130乃至234番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号58のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号57に記載されている。配列番号57のヌクレオチド配列の26乃至85番目のヌクレオチドからなる配列、86乃至412番目のヌクレオチドからなる配列、413乃至727番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号57のヌクレオチド配列及び配列番号58のアミノ酸配列は、
図30にも記載されている。
【0325】
7)−8 重鎖及び軽鎖の組み合わせによるヒト化hA2−27Dの設計
ヒト化hA2−27D−H1タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L1タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H1/L1」(「hA2−27D−H1/L1」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H1タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L2タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H1/L2」(「hA2−27D−H1/L2」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H1タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L3タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H1/L3」(「hA2−27D−H1/L3」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H2タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L1タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H2/L1」(「hA2−27D−H2/L1」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H2タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L2タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H2/L2」(「hA2−27D−H2/L2」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H2タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L3タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H2/L3」(「hA2−27D−H2/L3」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L1タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H3/L1」(「hA2−27D−H3/L1」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L2タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H3/L2」(「hA2−27D−H3/L2」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L3タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H3/L3」(「hA2−27D−H3/L3」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L4タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H3/L4」(「hA2−27D−H3/L4」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L3タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H4/L3」(「hA2−27D−H4/L3」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L4タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H4/L4」(「hA2−27D−H4/L4」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L5タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H4/L5」(「hA2−27D−H4/L5」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−27D−H5タイプ重鎖及びヒト化hA2−27D−L4タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−27D−H5/L4」(「hA2−27D−H5/L4」と呼ぶこともある)と命名した。以上により設計した抗体は、実施例8に準じて作製し、実施例2及び4に準じて評価することができる。
【0326】
<実施例8>
ヒト化A2−15A抗体、及びヒト化A2−27D抗体の発現ベクターの構築と抗体の調製
8)−1 ヒト化A2−15Aの重鎖発現ベクターの構築
8)−1−1 ヒト化hA2−15A−H1タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号27に示すヒト化hA2−15A−H1のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至443に示されるヒト化hA2−15A−H1の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社、日本)と下記のプライマーセットでヒト化hA2−15A−H1の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を増幅し、キメラ及びヒト化抗体IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G1を制限酵素BlpIで切断した箇所にIn−Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて挿入することによりヒト化hA2−15A−H1発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−15A−H1」と命名した。
プライマーセット
5’−AGCTCCCAGATGGGTGCTGAGC−3’(EG−Inf−F;配列番号99)
5’−GGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGC−3’(EG1−Inf−R;配列番号100)
【0327】
8)−1−2 ヒト化hA2−15A−H4タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号29に示すヒト化hA2−15A−H4のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至443に示されるヒト化hA2−15A−H4の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−15A−H4発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−15A−H4」と命名した。
【0328】
8)−2 ヒト化A2−15Aの軽鎖発現ベクターの構築
8)−2−1 ヒト化hA2−15A−L1タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号31に示すヒト化hA2−15A−L1をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社)と下記のプライマーセットでヒト化hA2−15A−L1をコードする配列を含むDNA断片を増幅し、発現ベクターpCMA−LKを制限酵素XbaIおよびPmeIで消化してκ鎖分泌シグナルおよびヒトκ鎖定常領域を取り除いた箇所にIn−Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて挿入することによりヒト化hA2−15A−L1発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−15A−L1」と命名した。
プライマーセット
5’−CCAGCCTCCGGACTCTAGAGCCACC−3’(CM−inf−F;配列番号101)
5’−AGTTAGCCTCCCCCGTTTAAACTC−3’(CM−inf−R;配列番号102)
【0329】
8)−2−2 ヒト化hA2−15A−L4タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号33に示すヒト化hA2−15A−L4をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。実施例8)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−15A−L4発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−15A−L4」と命名した。
【0330】
8)−2−3 ヒト化hA2−15A−L6タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号35に示すヒト化hA2−15A−L6をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。実施例8)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−15A−L6発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−15A−L6」と命名した。
【0331】
8)−2−4 ヒト化hA2−15A−L7タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号37に示すヒト化hA2−15A−L7をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。実施例8)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−15A−L7発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−15A−L7」と命名した。
【0332】
8)−3 ヒト化A2−27Dの重鎖発現ベクターの構築
8)−3−1 ヒト化hA2−27D−H1タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号39に示すヒト化hA2−27D−H1のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至437に示されるヒト化hA2−27D−H1の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−H1発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−27D−H1」と命名した。
【0333】
8)−3−2 ヒト化hA2−27D−H2タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号41に示すヒト化hA2−27D−H2のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至437に示されるヒト化hA2−27D−H2の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−H2発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−27D−H2」と命名した。
【0334】
8)−3−3 ヒト化hA2−27D−H3タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号43に示すヒト化hA2−27D−H3のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至437に示されるヒト化hA2−27D−H3の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−H3発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−27D−H3」と命名した。
【0335】
8)−3−4 ヒト化hA2−27D−H4タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号45に示すヒト化hA2−27D−H4のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至437に示されるヒト化hA2−27D−H4の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−H4発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−27D−H4」と命名した。
【0336】
8)−3−5 ヒト化hA2−27D−H5タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号47に示すヒト化hA2−27D−H5のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至437に示されるヒト化hA2−27D−H5の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−H5発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−27D−H5」と命名した。
【0337】
8)−4 ヒト化A2−27Dの軽鎖発現ベクターの構築
8)−4−1 ヒト化hA2−27D−L1タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号49に示すヒト化hA2−27D−L1をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。実施例8)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−L1発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−27D−L1」と命名した。
【0338】
8)−4−2 ヒト化hA2−27D−L2タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号51に示すヒト化hA2−27D−L2をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。実施例8)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−L2発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−27D−L2」と命名した。
【0339】
8)−4−3 ヒト化hA2−27D−L3タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号53に示すヒト化hA2−27D−L3をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。実施例8)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−L3発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−27D−L3」と命名した。
【0340】
8)−4−4 ヒト化hA2−27D−L4タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号55に示すヒト化hA2−27D−L4をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。実施例8)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−L4発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−27D−L4」と命名した。
【0341】
8)−4−5 ヒト化hA2−27D−L5タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号57に示すヒト化hA2−27D−L5をコードする配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 遺伝子合成サービス)。実施例8)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−27D−L5発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−27D−L5」と命名した。
【0342】
8)−5 ヒト化A2−15A抗体(IgG1)、及びヒト化A2−27D抗体(IgG1)の調製
8)−5−1 ヒト化A2−15A抗体(IgG1)、及びヒト化A2−27D抗体(IgG1)の生産
実施例5)−7と同様の方法で生産した。すなわち、実施例8)−1−2で構築したpCMA−G1/hA2−15A−H4と実施例8)−2−3で構築したpCMA/hA2−15A−L6との組合せによって、ヒト化hA2−15A−H4/L6を取得した。実施例8)−3−2で構築したpCMA−G1/hA2−27D−H2と実施例8)−4−2で構築したpCMA/hA2−27D−L2との組合せによって、ヒト化hA2−27D−H2/L2を取得した。実施例8)−3−3で構築したpCMA−G1/hA2−27D−H3と実施例8)−4−4で構築したpCMA/hA2−27D−L4の組合せによって、ヒト化hA2−27D−H3/L4を取得した。
【0343】
8)−5−2 ヒト化A2−15A抗体(IgG1)、及びヒト化A2−27D抗体(IgG1)の二段階工程精製
実施例8)−5−1で得られた培養上清を、実施例5)−8と同様の方法で精製した。
【0344】
<実施例9>
ヒト化A2−15A抗体(IgG1)、及びヒト化A2−27D抗体(IgG1)のin vitro活性評価
9)−1 ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイによる抗体評価
実施例8)−5で作製したヒト化hA2−15A−H4/L6、ヒト化hA2−27D−H2/L2、及びヒト化hA2−27D−H3/L4のALK2を介した細胞内シグナルの阻害活性は、BMP特異的なルシフェラーゼ・レポーターを用いて解析した。実施例6)−1と同様の方法でHEPG2細胞に対してpGL4.26/Id1WT4F-luc(Genes Cells,7,949(2002))を導入し、3時間後に培地を新鮮なFreeStyle293 expression medium (Invitrogen社)に交換した。その後、ヒト化抗体と10 ng/mLのBMP7(Milteney社製)を添加し、翌日にルシフェラーゼ活性を測定した。
【0345】
結果を
図31に記載する。ヒト化hA2−15A−H4/L6、ヒト化hA2−27D−H2/L2、及びヒト化hA2−27D−H3/L4は、BMP7が誘導するBMP特異的ルシフェラーゼ活性を、用量依存的に抑制することが確認された。
【0346】
<実施例10>
ヒト化A2−15A抗体(IgG1)、及びヒト化A2−27D抗体(IgG1)のヒトALK2に対する結合性評価
実施例8)−5で作製したヒト化hA2−15A−H4/L6、ヒト化hA2−27D−H2/L2及びヒト化hA2−27D−H3/L4と抗原(Recombinant Human ALK2 Fc Chimera、Sino Biological Inc.)との解離定数測定は、Biacore T200(GEヘルスケアバイオサイエンス(株))を使用し、抗原をリガンドとして固定化し、抗体をアナライトとして測定した。抗原は、1.25μg/mLにて60秒間添加し、センサーチップCM5(GEヘルスケアバイオサイエンス(株))へ固定化させた。ランニングバッファーとしてHBS−EP+(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl,3mM EDTA、0.05%Surfactant P20)を用いた。抗原を固定化したチップ上に、抗体の希釈系列溶液(0.2−50nM)を流速30μl/分で300秒間添加し、引き続き1800秒間の解離相をモニターした。再生溶液として、10mM グリシン塩酸溶液pH1.5を流速10μl/分で30秒間、2回添加した。データの解析には、分析ソフトウェア(BIAevaluation software, version 1.0)のBivalent結合モデルを用いて、結合速度定数ka、解離速度定数kd及び解離定数(KD;KD=kd/ka)を算出した。
【0347】
結果を表1に示す。
【表1】
【0348】
<実施例11>
ヒト化A2−15A抗体(IgG2)の調製
11)−1 ヒト化IgG2タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G2の構築
実施例5)−1で構築したpCMA−LKをXbaI及びPmeIで消化してκ鎖分泌シグナル及びヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片と、ヒト重鎖分泌シグナル配列及びヒトIgG2定常領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片(配列番号103)をIn−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、CMVプロモーターの下流にシグナル配列、クローニングサイト、ヒトIgG2重鎖定常領域をもつキメラ及びヒト化IgG2タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G2を構築した。
【0349】
11)−2 ヒト化hA2−15A−H4 IgG2タイプ重鎖発現ベクターの構築
実施例8)−1−2で構築したpCMA−G1/hA2−15A−H4をテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社)と下記のプライマーセットで重鎖の可変領域をコードするcDNAを含むDNA断片を増幅し、ヒト化IgG2タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G2を制限酵素BlpIで切断した箇所にIn−Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて挿入することにより、ヒト化hA2−15A−H4 IgG2タイプ発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G2/hA2−15A−H4」と命名した。
【0350】
ヒト化hA2−15A−H4 IgG2タイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列番号104に示し、アミノ酸配列を配列番号105に示した。配列番号104のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至426番目のヌクレオチドからなる配列、427乃至1404番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号105のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至142番目のアミノ酸残基からなる配列、143乃至468番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号104のヌクレオチド配列及び配列番号105のアミノ酸配列は、
図32にも記載されている。
ヒト化hA2−15A−H4 IgG2タイプ重鎖用プライマーセット
5’−CAGATGGGTGCTGAGCGAAGTGCAGCTGGTGGAATCTGGC−3’(15A−H4−F;配列番号130)
5’−CTTGGTGCTGGCTGAGCTGACGGTCACGAGGGTGCC−3’(15A−H4−R;配列番号131)
【0351】
11)−3 ヒト化A2−15A抗体(IgG2)の生産
実施例5)−7と同様の方法で生産した。実施例11)−2で構築したpCMA−G2/hA2−15A−H4と実施例8)−2−3で構築したpCMA/hA2−15A−L6との組合せによって取得されたヒト化A2−15A抗体を「ヒト化hA2−15A−H4/L6(IgG2)」と命名した。
11)−4 ヒト化hA2−15A−H4/L6(IgG2)の二段階工程精製
実施例11)−3で得られた培養上清を、実施例5)−8と同様の方法で精製した。
【0352】
<実施例12>
ヒト化A2−27D抗体(IgG1 LALA)の調製
12)−1 ヒト化hA2−27D−H2−LALAタイプ重鎖発現ベクターの構築
実施例8)−3−2で構築したpCMA−G1/hA2−27D−H2をテンプレートとし、下記プライマーセットとKOD −Plus− Mutagenesis Kit(TOYOBO社)を用いて、変異を導入することによりhA2−27D−H2−LALAタイプ重鎖発現ベクターを構築した。構築した発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−27D−H2−LALA」と命名した。
【0353】
ヒト化hA2−27D−H2−LALAタイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列番号106に示し、アミノ酸配列を配列番号107に示した。配列番号106のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至420番目のヌクレオチドからなる配列、421乃至1410番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号107のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至140番目のアミノ酸残基からなる配列、141乃至470番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号106のヌクレオチド配列及び配列番号107のアミノ酸配列は、
図33にも記載されている。
プライマーセット:
5’−GCGGGGGGACCCTCAGTCTTCCTCTTCCCC−3’(LALA−F;配列番号132)
5’−GGCTTCAGGTGCTGGGCAGGGTGGGCATGTG−3’(LALA−R;配列番号133)
【0354】
12)−2 ヒト化hA2−27D−H3−LALAタイプ重鎖発現ベクターの構築
実施例8)−3−3で構築したpCMA−G1/hA2−27D−H3をテンプレートとし、実施例12)−1と同様の方法でhA2−27D−H3−LALAタイプ重鎖発現ベクターを構築した。構築した発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−27D−H3−LALA」と命名した。
【0355】
ヒト化hA2−27D−H3−LALAタイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列番号108に示し、アミノ酸配列を配列番号109に示した。配列番号108のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至420番目のヌクレオチドからなる配列、421乃至1410番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号109のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至140番目のアミノ酸残基からなる配列、141乃至470番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号108のヌクレオチド配列及び配列番号109のアミノ酸配列は、
図34にも記載されている。
【0356】
12)−3 ヒト化A2−27D抗体(IgG1 LALA)の生産
実施例5)−7と同様の方法で生産した。実施例12)−1で構築したpCMA−G1/hA2−27D−H2−LALAと実施例8)−4−2で構築したpCMA/hA2−27D−L2の組合せによって取得されたヒト化A2−27D抗体を「ヒト化hA2−27D−H2/L2(IgG1 LALA)」と命名し、実施例12)−2で構築したpCMA−G1/hA2−27D−H3−LALAと実施例8)−4−4で構築したpCMA/hA2−27D−L4の組合せによって取得されたヒト化A2−27D抗体を「ヒト化hA2−27D−H3/L4(IgG1 LALA)」と命名した。
【0357】
12)−4 ヒト化A2−27D抗体(IgG1 LALA)の二段階工程精製
実施例12)−3で得られた培養上清を、実施例5)−8と同様の方法で精製した。
【0358】
<実施例13>
ヒト化A2−15A抗体(IgG2)、ヒト化A2−27D抗体(IgG1 LALA)のin vitro活性評価
13)−1 ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイによる抗体評価
実施例11)−4で作製したヒト化A2−15A−H4/L6(IgG2)、実施例12)−4で得られたヒト化A2−27D−H2/L2(IgG1 LALA)のALK2を介した細胞内シグナルの阻害活性は、BMP特異的なルシフェラーゼ・レポーターを用いて解析した。実施例6)−1と同様の方法でHEPG2細胞に対してpGL4.26/Id1WT4F-luc(Genes Cells,7,949(2002))を導入し、3時間後に培地を新鮮なFreeStyle293 expression medium (Invitrogen社)に交換した。その後、ヒト化抗体と2.5 ng/mLのBMP9を添加し、実施例6)−1と同様に翌日にルシフェラーゼ活性を測定した。
【0359】
結果を
図35に記載する。ヒト化A2−15A−H4/L6(IgG2)、ヒト化A2−27D−H2/L2(IgG1 LALA)は、BMP7が誘導するBMP特異的ルシフェラーゼ活性を、用量依存的に抑制することが確認された。
【0360】
<実施例14>
ヒト化A2−15A抗体(IgG2)、ヒト化A2−27D抗体(IgG1 LALA)のヒトALK2に対する結合性評価
14)−1 ヒトALK2細胞外ドメインの発現精製
ヒトALK2細胞外ドメイン(NCBIの蛋白データベースのACCESSION番号NP_001096のアミノ酸配列の21乃至123番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド)をコードするDNAをベクターpET−28b(+)(ノバジェン社、カタログ番号:69865)に組み込み、C末端側にHisタグ配列を連結した蛋白を発現させるプラスミドを構築した。このプラスミドを用いて、大腸菌SHuffle T7(ニューイングランドバイオラボ社、カタログ番号:C3029H)を形質転換し、TB培地(シグマアルドリッチ社、カタログ番号:T0918)で培養した。培養後、超音波破砕した菌体を遠心分離し、上清をHisTrap FF crudeカラム(GEヘルスケア社、カタログ番号:17−5286−01)で精製した。その後、HiLoad 26/600 Superdex 200カラム(GEヘルスケア社、カタログ番号:28−9893−36)を用いて、電気泳動で分子量12kDaの単一バンドになるまでヒトALK2細胞外ドメインを精製した。
【0361】
14)−2 ヒト化A2−15A抗体(IgG2)、ヒト化A2−27D抗体(IgG1 LALA)を用いた抗原結合能の測定
実施例11)−4で作製したヒト化hA2−15A−H4/L6(IgG2)、実施例12)−4で作製したヒト化hA2−27D−H2/L2(IgG1 LALA) 及びヒト化hA2−27D−H3/L4(IgG1 LALA)と抗原(実施例14)−1にて調製したヒトALK2細胞外ドメイン)との解離定数測定は、Biacore T200(GEヘルスケアバイオサイエンス(株)、日本)を使用し、固定化した抗ヒトIgG(Fc)抗体に抗体をリガンドとして捕捉(キャプチャー)し、抗原をアナライトとして測定するキャプチャー法にて行った。抗ヒトIgG(Fc)抗体(Human Antibody Capture kit、GEヘルスケアバイオサイエンス(株))は、センサーチップCM5(GEヘルスケアバイオサイエンス(株))へアミンカップリング法にて約1000RU共有結合させた。リファレンスセルにも同様に固定化した。ランニングバッファーとしてHBS−EP+(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl,3mM EDTA、0.05%Surfactant P20)を用いた。抗ヒトIgG(Fc)抗体を固定化したチップ上に、抗体を約1分間添加した後、抗原の希釈系列溶液(0.78−200nM)を流速30μl/分で300秒間添加し、引き続き600秒間の解離相をモニターした。再生溶液として、3M塩化マグネシウム溶液を流速10μl/分で30秒間添加した。データの解析には、分析ソフトウェア(BIAevaluation software, version 1.0)の1:1結合モデルを用いて、結合速度定数ka、解離速度定数kd及び解離定数(KD;KD=kd/ka)を算出した。
【0362】
結果を表2に示す。
【表2】
【0363】
<実施例15>
ヒト化A2−15A抗体(IgG2)、ヒト化A2−27D抗体(IgG1 LALA)のin vivo活性評価
実施例11)−4で作製したヒト化hA2−15A−H4/L6(IgG2)、及び実施例12)−4で作製したヒト化hA2−27D−H2/L2(IgG1 LALA)の異所性骨化に対する抑制活性はマウスを用いたBMP7の移植による異所性骨化モデルを用いて解析した。4mm径の円形に切り取ったCollaTape(Zimmer Dental社製)にBMP7(Milteney社製)を2.5マイクロG(μg)染み込ませたものを−80℃で一晩凍結させた後に真空乾燥させた。マウス(C57BL/6:8−9週齢)の大腿骨近傍の皮膚の毛を除毛し、イソフルラン吸引麻酔下で切開し、凍結乾燥させた濾紙を骨格筋内に移植した。移植してから2週間後に異所性骨化をマイクロCT(Comscan社製)にて石灰化した異所性骨の解析を行い、その後に骨格筋内の異所性骨を取り出し、重量を測定した。抗体の投与は1週間に1回(移植日をDay0としてDay−1, Day6)皮下投与にて実施した。投与抗体の濃度は1,3,10mg/kgとなるように溶媒(HBSor)で希釈を行った。コントロール群のマウスに対してはIgG(JACKSON IMMUNORESEARCH社製)を10mg/kgとなるように溶媒で調製して投与を行った。
【0364】
結果を
図36に記載する。ヒト化hA2−15A−H4/L6(IgG2)、及びヒト化hA2−27D−H2/L2(IgG1 LALA)は、BMP7が誘導するマウスの骨格筋組織における異所性骨誘導を抑制することが確認された。
【0365】
<実施例16>
A2−27D抗体のエピトープ解析
16)−1 ヒトキメラcA2−27D Fabフラグメントの作製
Pierce Fab Preparation Kitを使用して実施例5)−8で得られたヒトキメラcA2−27D抗体からFabフラグメントを作製した。
【0366】
16)−2 ヒトキメラcA2−27D FabフラグメントとALK2−ECD複合体の結晶化と構造解析
16)−1で得られたヒトキメラcA2−27D Fabフラグメントと実施例14に準じて調製したALK2−ECD複合体を2.4mg/mLに濃縮し、結晶化に用いた。結晶化には蒸気拡散法を用いた。タンパク質溶液0.5μLに沈殿剤溶液(2%(v/v)Tacsimate pH7.0,100mM HEPES pH7.5,20%(w/v)Polyethylene Glycol3,350)を等量加えた溶液を、50μLの沈殿剤溶液を入れた密閉容器に両溶液が触れ合わないように収め、20℃で静置した。3日後に0.1mm×0.1mm×0.1mmの単結晶が得られた。得られた結晶を20%(v/v)Glycerolを加えた沈殿剤溶液に浸し、続いて液化窒素で凍結した。高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設のBL1Aにて95K窒素気流下でX線回折データを収集した。得られた回折像からソフトウェアXDS(Acta Cryst.(2010).D66,125−132)を用いて回折強度を数値化し、結晶構造因子を求めた。結晶は体心単斜晶系で空間群はC121、結晶の単位格子はa=c=119.39Å、b=37.32Å,β=92.54であった。得られた構造因子とFab(過去に結晶構造解析した抗体構造を利用)の三次元構造座標を用いて分子置換法を行い、位相を決定した。計算にはソフトウェアphaser (CCP4:Collaborative Computation Project No.4)を使用した。結晶は非対称単位に1つの複合体を含んでいた。ソフトウェアrefmac5(CCP4)を用いて構造の精密化を行い、ソフトウェアcootを用いてモデルの修正を行った。この操作を繰り返し行い、2.6Å分解能で最終のR値22.3%、freeR値26.7%を得た。モデルは1つの複合体から成り、A2−27D FabのL鎖アミノ酸残基1-211、H鎖アミノ酸残基1-134と141−223、ALK2−ECDのアミノ酸残基11−89、及び61個の水分子を含む。決定されたA2−27D Fabから4Å以内にあるALK2−ECDのアミノ酸残基は以下の通りである: Glu18,Gly19,Ile39,Asn40,Asp41,Gly42,Phe43,His44,Val45,Tyr46,Asn82,Thr84,Gln86,Leu87。
図37に複合体全体のリボンモデルを示した。
【0367】
<実施例17>
ヒト化A2−11E抗体、及びヒト化A2−25C抗体のデザイン
17)−1 ヒト化hA2−11Eの設計
17)−1−1 A2−11Eの可変領域の分子モデリング
A2−11Eの可変領域の分子モデリングは、ホモロジーモデリングとして公知の方法(Methods in Enzymology,203,121−153,(1991))によって実行された。Protein Data Bank(Nuc.Acid Res.35,D301−D303(2007))に登録されるヒト免疫グロブリンの可変領域の1次配列(X線結晶構造から誘導される三次元構造が入手可能である)を、上で決定されたA2−11Eの可変領域と比較した。結果として、3BN9がA2−11Eの重鎖と軽鎖の可変領域に対して最も高い配列同一性を有するとして選択された。フレームワーク領域の三次元構造は、3BN9の座標を組み合わせて、「フレームワークモデル」を得ることによって作製された。次いで、それぞれのCDRについての代表的なコンホメーションがフレームワークモデルに組み込まれた。
【0368】
最後に、エネルギーの点でA2−11Eの可変領域の可能性のある分子モデルを得るために、不利な原子間接触を除くためのエネルギー最小化計算を行った。上記手順を、市販のタンパク質立体構造解析プログラムDiscovery Studio(Accelrys社製)を用いて行った。
【0369】
17)−1−2 ヒト化hA2−11Eに対するアミノ酸配列の設計
ヒト化hA2−11Eの構築を、CDRグラフティング(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))として一般的に公知の方法によって行った。アクセプター抗体は、フレームワーク領域内のアミノ酸同一性に基づいて選択された。
【0370】
A2−11Eのフレームワーク領域の配列を、ヒトのサブグループ・コンセンサス配列のフレームワーク領域と比較した。結果として、KABAT et al. (Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service National Institutes of Health, Bethesda,MD. (1991))において既定されたヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列とヒトκ鎖サブグループ1のコンセンサス配列が、そのフレームワーク領域において高い配列同一性に有することに起因して、アクセプターとして選択された。ヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列とヒトκ鎖サブグループ1のコンセンサス配列についてのフレームワーク領域のアミノ酸残基を、A2−11Eについてのアミノ酸残基と整列させ、異なるアミノ酸が使用される位置を同定した。これらの残基の位置は、上で構築されたA2−11Eの三次元モデルを使用して分析され、そしてアクセプター上にグラフティングされるべきドナー残基が、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))によって与えられる基準によって選択された。選択された幾つかのドナー残基をアクセプター抗体に移入することによって、ヒト化hA2−11Eの配列を以下の実施例に記載されるように構築した。
【0371】
17)−2 A2−11E重鎖のヒト化
17)−2−1 ヒト化hA2−11E−H3タイプ重鎖
配列表の配列番号2に示されるA2−11E重鎖のアミノ酸番号7(スレオニン)をセリンに、アミノ酸番号16(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号19(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号23(バリン)をアラニンに、アミノ酸番号48(イソロイシン)をバリンに、アミノ酸番号61(プロリン)をアラニンに、アミノ酸番号69(アラニン)をスレオニンに、アミノ酸番号75(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号76(グルタミン酸)をリジンに、アミノ酸番号88(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号93(スレオニン)をバリンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−11E重鎖を「hA2−11E−H3タイプ重鎖」と命名した。
【0372】
ヒト化hA2−11E−H3タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号111に記載されている。配列番号111のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至137番目のアミノ酸残基からなる配列、138乃至467番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号111のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号110に記載されている。配列番号110のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至411番目のヌクレオチドからなる配列、412乃至1401番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号110のヌクレオチド配列及び配列番号111のアミノ酸配列は、
図38にも記載されている。
【0373】
17)−2−2 ヒト化hA2−11E−H4タイプ重鎖
配列表の配列番号2に示されるA2−11E重鎖のアミノ酸番号7(スレオニン)をセリンに、アミノ酸番号16(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号19(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号23(バリン)をアラニンに、アミノ酸番号69(アラニン)をスレオニンに、アミノ酸番号75(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号76(グルタミン酸)をリジンに、アミノ酸番号88(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号93(スレオニン)をバリンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−11E重鎖を「hA2−11E−H4タイプ重鎖」と命名した。
【0374】
ヒト化hA2−11E−H4タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号113に記載されている。配列番号113のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至137番目のアミノ酸残基からなる配列、138乃至467番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号113のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号112に記載されている。配列番号112のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至411番目のヌクレオチドからなる配列、412乃至1401番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号112のヌクレオチド配列及び配列番号113のアミノ酸配列は、
図39にも記載されている。
【0375】
17)−3 A2−11E軽鎖のヒト化
17)−3−1 ヒト化hA2−11E−L2タイプ軽鎖
配列表の配列番号4に示されるA2−11E軽鎖のアミノ酸番号10(ロイシン)をセリンに、アミノ酸番号21(ロイシン)をイソロイシンに、アミノ酸番号22(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号40(ロイシン)をプロリンに、アミノ酸番号42(グルタミン酸)をリジンに、アミノ酸番号58(イソロイシン)をバリンに、アミノ酸番号83(バリン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号85(イソロイシン)をスレオニンに、アミノ酸番号87(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号99(プロリン)をグルタミンに、アミノ酸番号103(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号105(ロイシン)をイソロイシンに、アミノ酸番号108(アラニン)をスレオニンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−11E軽鎖を「hA2−11E−L2タイプ軽鎖」と命名した。
【0376】
ヒト化hA2−11E−L2タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号115に記載されている。配列番号115のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至128番目のアミノ酸残基からなる配列、129乃至233番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号115のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号114に記載されている。配列番号114のヌクレオチド配列の1乃至60番目のヌクレオチドからなる配列、61乃至384番目のヌクレオチドからなる配列、385乃至699番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号114のヌクレオチド配列及び配列番号115のアミノ酸配列は、
図40にも記載されている。
【0377】
17)−3−2 ヒト化hA2−11E−L3タイプ軽鎖
配列表の配列番号4に示されるA2−11E軽鎖のアミノ酸番号10(ロイシン)をセリンに、アミノ酸番号21(ロイシン)をイソロイシンに、アミノ酸番号22(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号40(ロイシン)をプロリンに、アミノ酸番号42(グルタミン酸)をリジンに、アミノ酸番号83(バリン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号85(イソロイシン)をスレオニンに、アミノ酸番号87(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号99(プロリン)をグルタミンに、アミノ酸番号103(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号105(ロイシン)をイソロイシンに、アミノ酸番号108(アラニン)をスレオニンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−11E軽鎖を「hA2−11E−L3タイプ軽鎖」と命名した。
【0378】
ヒト化hA2−11E−L3タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号117に記載されている。配列番号117のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至128番目のアミノ酸残基からなる配列、129乃至233番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号117のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号116に記載されている。配列番号116のヌクレオチド配列の1乃至60番目のヌクレオチドからなる配列、61乃至384番目のヌクレオチドからなる配列、385乃至699番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号116のヌクレオチド配列及び配列番号117のアミノ酸配列は、
図41にも記載されている。
【0379】
17)−3−3 ヒト化hA2−11E−L4タイプ軽鎖
配列表の配列番号4に示されるA2−11E軽鎖のアミノ酸番号10(ロイシン)をセリンに、アミノ酸番号21(ロイシン)をイソロイシンに、アミノ酸番号40(ロイシン)をプロリンに、アミノ酸番号83(バリン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号103(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号105(ロイシン)をイソロイシンに、アミノ酸番号108(アラニン)をスレオニンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−11E軽鎖を「hA2−11E−L4タイプ軽鎖」と命名した。
【0380】
ヒト化hA2−11E−L4タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号119に記載されている。配列番号119のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至128番目のアミノ酸残基からなる配列、129乃至233番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号119のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号118に記載されている。配列番号118のヌクレオチド配列の1乃至60番目のヌクレオチドからなる配列、61乃至384番目のヌクレオチドからなる配列、385乃至699番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号118のヌクレオチド配列及び配列番号119のアミノ酸配列は、
図42にも記載されている。
【0381】
17)−4 重鎖及び軽鎖の組み合わせによるヒト化hA2−11Eの設計
ヒト化hA2−11E−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−11E−L2タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−11E−H3/L2」(「hA2−11E−H3/L2」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−11E−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−11E−L3タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−11E−H3/L3」(「hA2−11E−H3/L3」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−11E−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−11E−L4タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−11E−H3/L4」(「hA2−11E−H3/L4」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−11E−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−11E−L2タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−11E−H4/L2」(「hA2−11E−H4/L2」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−11E−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−11E−L3タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−11E−H4/L3」(「hA2−11E−H4/L3」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−11E−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−11E−L4タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−11E−H4/L4」(「hA2−11E−H4/L4」と呼ぶこともある)と命名した。以上により設計した抗体は、実施例18に準じて作製し、実施例2及び4に準じて評価することができる。
【0382】
17)−5 ヒト化hA2−25Cの設計
17)−5−1 A2−25Cの可変領域の分子モデリング
A2−25Cの可変領域の分子モデリングは、ホモロジーモデリングとして公知の方法(Methods in Enzymology,203,121−153,(1991))によって実行された。Protein Data Bank(Nuc.Acid Res.35,D301−D303(2007))に登録されるヒト免疫グロブリンの可変領域の1次配列(X線結晶構造から誘導される三次元構造が入手可能である)を、上で決定されたAA2−25Cの可変領域と比較した。結果として、3BN9がA2−25Cの重鎖と軽鎖の可変領域に対して最も高い配列同一性を有するとして選択された。フレームワーク領域の三次元構造は、3BN9の座標を組み合わせて、「フレームワークモデル」を得ることによって作製された。次いで、それぞれのCDRについての代表的なコンホメーションがフレームワークモデルに組み込まれた。
【0383】
最後に、エネルギーの点でA2−25Cの可変領域の可能性のある分子モデルを得るために、不利な原子間接触を除くためのエネルギー最小化計算を行った。上記手順を、市販のタンパク質立体構造解析プログラムDiscovery Studio(Accelrys社製)を用いて行った。
【0384】
17 )−5−2 ヒト化hA2−25Cに対するアミノ酸配列の設計
ヒト化hA2−25Cの構築を、CDRグラフティング(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))として一般的に公知の方法によって行った。アクセプター抗体は、フレームワーク領域内のアミノ酸同一性に基づいて選択された。
【0385】
A2−25Cのフレームワーク領域の配列を、ヒトのサブグループ・コンセンサス配列のフレームワーク領域と比較した。結果として、KABAT et al.(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service National Institutes of Health, Bethesda,MD.(1991))において既定されたヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列とヒトκ鎖サブグループ1のコンセンサス配列が、そのフレームワーク領域において高い配列同一性に有することに起因して、アクセプターとして選択された。ヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列とヒトκ鎖サブグループ1のコンセンサス配列についてのフレームワーク領域のアミノ酸残基を、A2−25Cについてのアミノ酸残基と整列させ、異なるアミノ酸が使用される位置を同定した。これらの残基の位置は、上で構築されたA2−25Cの三次元モデルを使用して分析され、そしてアクセプター上にグラフティングされるべきドナー残基が、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))によって与えられる基準によって選択された。選択された幾つかのドナー残基をアクセプター抗体に移入することによって、ヒト化hA2−25Cの配列を以下の実施例に記載されるように構築した。
【0386】
17)−6 A2−25C重鎖のヒト化
17)−6−1 ヒト化hA2−25C−H3タイプ重鎖
配列表の配列番号10に示されるA2−25C重鎖のアミノ酸番号19(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号38(システイン)をアルギニンに、アミノ酸番号42(スレオニン)をグリシンに、アミノ酸番号63(スレオニン)をセリンに、アミノ酸番号75(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号84(アスパラギン酸)をアスパラギンに、アミノ酸番号88(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号93(スレオニン)をバリンに、アミノ酸番号112(バリン)をスレオニンに、アミノ酸番号113(メチオニン)をロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−25C重鎖を「hA2−25C−H3タイプ重鎖」と命名した。
【0387】
ヒト化hA2−25C−H3タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号121に記載されている。配列番号121のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至137番目のアミノ酸残基からなる配列、138乃至467番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号121のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号120に記載されている。配列番号120のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至411番目のヌクレオチドからなる配列、412乃至1401番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号120のヌクレオチド配列及び配列番号121のアミノ酸配列は、
図43にも記載されている。
【0388】
17)−6−2 ヒト化hA2−25C−H4タイプ重鎖
配列表の配列番号10に示されるA2−25C重鎖のアミノ酸番号19(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号38(システイン)をアルギニンに、アミノ酸番号42(スレオニン)をグリシンに、アミノ酸番号63(スレオニン)をセリンに、アミノ酸番号75(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号84(アスパラギン酸)をアスパラギンに、アミノ酸番号88(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号113(メチオニン)をロイシンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−25C重鎖を「hA2−25C−H4タイプ重鎖」と命名した。
【0389】
ヒト化hA2−25C−H4タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号123に記載されている。配列番号123のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ酸残基からなる配列、20乃至137番目のアミノ酸残基からなる配列、138乃至467番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号123のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号122に記載されている。配列番号122のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至411番目のヌクレオチドからなる配列、412乃至1401番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号122のヌクレオチド配列及び配列番号123のアミノ酸配列は、
図44にも記載されている。
【0390】
17)−7 A2−25C軽鎖のヒト化
17)−7−1 ヒト化hA2−25C−L1タイプ軽鎖
配列表の配列番号12に示されるA2−25C軽鎖のアミノ酸番号9(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号15(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号16(グルタミン酸)をグリシンに、アミノ酸番号17(グルタミン酸)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号18(イソロイシン)をアルギニンに、アミノ酸番号43(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号45(グルタミン)をリジンに、アミノ酸番号66(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号70(グルタミン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号71(チロシン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号72(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号74(リジン)をスレオニンに、アミノ酸番号77(アルギニン)をセリンに、アミノ酸番号79(アルギニン)をグルタミンに、アミノ酸番号80(バリン)をプロリンに、アミノ酸番号83(イソロイシン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号84(グリシン)をアラニンに、アミノ酸番号85(イソロイシン)をスレオニンに、アミノ酸番号100(セリン)をグルタミンに、アミノ酸番号104(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号109(アラニン)をスレオニンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−25C軽鎖を「hA2−25C−L1タイプ軽鎖」と命名した。
【0391】
ヒト化hA2−25C−L1タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号125に記載されている。配列番号125のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至129番目のアミノ酸残基からなる配列、130乃至234番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号125のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号124に記載されている。配列番号124のヌクレオチド配列の1乃至60番目のヌクレオチドからなる配列、61乃至387番目のヌクレオチドからなる配列、388乃至702番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号124のヌクレオチド配列及び配列番号125のアミノ酸配列は、
図45にも記載されている。
【0392】
17)−7−2 ヒト化hA2−25C−L2タイプ軽鎖
配列表の配列番号12に示されるA2−25C軽鎖のアミノ酸番号9(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号15(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号16(グルタミン酸)をグリシンに、アミノ酸番号17(グルタミン酸)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号18(イソロイシン)をアルギニンに、アミノ酸番号43(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号45(グルタミン)をリジンに、アミノ酸番号70(グルタミン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号72(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号74(リジン)をスレオニンに、アミノ酸番号77(アルギニン)をセリンに、アミノ酸番号79(アルギニン)をグルタミンに、アミノ酸番号80(バリン)をプロリンに、アミノ酸番号83(イソロイシン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号84(グリシン)をアラニンに、アミノ酸番号85(イソロイシン)をスレオニンに、アミノ酸番号100(セリン)をグルタミンに、アミノ酸番号104(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号109(アラニン)をスレオニンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−25C軽鎖を「hA2−25C−L2タイプ軽鎖」と命名した。
【0393】
ヒト化hA2−25C−L2タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号127に記載されている。配列番号127のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至129番目のアミノ酸残基からなる配列、130乃至234番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号127のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号126に記載されている。配列番号126のヌクレオチド配列の1乃至60番目のヌクレオチドからなる配列、61乃至387番目のヌクレオチドからなる配列、388乃至702番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号126のヌクレオチド配列及び配列番号127のアミノ酸配列は、
図46にも記載されている。
【0394】
17)−7−3 ヒト化hA2−25C−L3タイプ軽鎖
配列表の配列番号12に示されるA2−25C軽鎖のアミノ酸番号9(アラニン)をセリンに、アミノ酸番号15(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号16(グルタミン酸)をグリシンに、アミノ酸番号17(グルタミン酸)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号18(イソロイシン)をアルギニンに、アミノ酸番号45(グルタミン)をリジンに、アミノ酸番号72(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号74(リジン)をスレオニンに、アミノ酸番号77(アルギニン)をセリンに、アミノ酸番号79(アルギニン)をグルタミンに、アミノ酸番号80(バリン)をプロリンに、アミノ酸番号83(イソロイシン)をフェニルアラニンに、アミノ酸番号84(グリシン)をアラニンに、アミノ酸番号85(イソロイシン)をスレオニンに、アミノ酸番号104(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号109(アラニン)をスレオニンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化hA2−25C軽鎖を「hA2−25C−L3タイプ軽鎖」と命名した。
【0395】
ヒト化hA2−25C−L3タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号129に記載されている。配列番号129のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ酸残基からなる配列、21乃至129番目のアミノ酸残基からなる配列、130乃至234番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号129のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号128に記載されている。配列番号128のヌクレオチド配列の1乃至60番目のヌクレオチドからなる配列、61乃至387番目のヌクレオチドからなる配列、388乃至702番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号128のヌクレオチド配列及び配列番号129のアミノ酸配列は、
図47にも記載されている。
【0396】
17)−8 重鎖及び軽鎖の組み合わせによるヒト化hA2−25Cの設計
ヒト化hA2−25C−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−25C−L1タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−25C−H3/L1(「hA2−25C−H3/L1」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−25C−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−25C−L2タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−25C−H3/L2」(「hA2−25C−H3/L2」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−125C−H3タイプ重鎖及びヒト化hA2−25C−L3タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−25C−H3/L3」(「hA2−25C−H3/L3」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−25C−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−25C−L1タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−25C−H4/L1」(「hA2−25C−H4/L1」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−25C−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−25C−L2タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−25C−H4/L2」(「hA2−25C−H4/L2」と呼ぶこともある)と命名した。ヒト化hA2−25C−H4タイプ重鎖及びヒト化hA2−25C−L3タイプ軽鎖からなる抗体を設計し「ヒト化hA2−25C−H4/L3」(「hA2−25C−H4/L3」と呼ぶこともある)と命名した。以上により設計した抗体は、実施例18に準じて作製し、実施例2及び4に準じて評価することができる。
【0397】
<実施例18>
ヒト化A2−11E抗体(IgG1)、及びヒト化A2−25C抗体(IgG1)のベクターの構築と調製
18)−1 ヒト化A2−11Eの重鎖発現ベクターの構築
18)−1−1 ヒト化hA2−11E−H3タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号110に示すヒト化hA2−11E−H3のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至428に示されるヒト化hA2−11E−H3の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−11E−H3発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−11E−H3」と命名した。
【0398】
18)−1−2 ヒト化hA2−11E−H4タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号112に示すヒト化hA2−11E−H4のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至428に示されるヒト化hA2−11E−H4の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−11E−H4発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−11E−H4」と命名した。
【0399】
18)−2 ヒト化A2−11Eの軽鎖発現ベクターの構築
18)−2−1 ヒト化hA2−11E−L2タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号114に示すヒト化hA2−11E−L2のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至399に示されるヒト化hA2−11E−L2の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社)と下記のプライマーセットでヒト化hA2−11E−L2の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を増幅し、実施例5)−1で構築したキメラ及びヒト化抗体軽鎖発現ベクターpCMA−LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn−Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて挿入することによりヒト化hA2−11E−L2発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−11E−L2」と命名した。
プライマーセット
5’−CTGTGGATCTCCGGCGCGTACGGC−3’(CM−LKF;配列番号134)
5’−GGAGGGGGCGGCCACCGTACG−3’(KCL−Inf−R;配列番号135)
【0400】
18)−2−2 ヒト化hA2−11E−L3タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号116に示すヒト化hA2−11E−L3のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至399に示されるヒト化hA2−11E−L3の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例18)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−11E−L3発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−11E−L3」と命名した。
【0401】
18)−2−3 ヒト化hA2−11E−L4タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号118に示すヒト化hA2−11E−L4のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至339に示されるヒト化hA2−11E−L4の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例18)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−11E−L4発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−11E−L4」と命名した。
【0402】
18)−3 ヒト化A2−25Cの重鎖発現ベクターの構築
18)−3−1 ヒト化hA2−25C−H3タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号120に示すヒト化hA2−25C−H3のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至428に示されるヒト化hA2−25C−H3の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−25C−H3発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−25C−H3」と命名した。
【0403】
18)−3−2 ヒト化hA2−25C−H4タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号122に示すヒト化hA2−25C−H4のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至428に示されるヒト化hA2−25C−H4の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例8)−1−1と同様の方法でヒト化hA2−25C−H4発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hA2−25C−H4」と命名した。
【0404】
18)−4 ヒト化A2−25Cの軽鎖発現ベクターの構築
18)−4−1 ヒト化hA2−25C−L1タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号124に示すヒト化hA2−25C−L1のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至402に示されるヒト化hA2−25C−L1の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例18)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−25C−L1発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−25C−L1」と命名した。
【0405】
18)−4−2 ヒト化hA2−25C−L2タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号126に示すヒト化hA2−25C−L2のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至402に示されるヒト化hA2−25C−L2の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例18)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−25C−L2発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−25C−L2」と命名した。
【0406】
18)−4−3 ヒト化hA2−25C−L3タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号128に示すヒト化hA2−25C−L3のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至402に示されるヒト化hA2−25C−L3の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。実施例18)−2−1と同様の方法でヒト化hA2−25C−L3発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA/hA2−25C−L3」と命名した。
【0407】
18)−5 ヒト化A2−11E抗体(IgG1)、及びヒト化A2−25C抗体(IgG1)の小スケール生産
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。
【0408】
対数増殖期の1×10
7個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)をFreeStyle293 expression medium (Invitrogen社)で9.6mLに希釈した後に、30mL Square Storage Bottle(Nalgene社)に播種し、37℃、8%CO
2インキュベーター内で90rpmで一時間振とう培養した。Polyethyleneimine(Polyscience #24765)30μgをOpti−Pro SFM(Invitrogen社)200μLに溶解し、次にNucleoBond Xtra(TaKaRa社)を用いて調製した軽鎖発現ベクター(6μg)及び重鎖発現ベクター(4μg)を200μLのOpti−Pro SFM(Invitrogen社)に添加した。Polyethyleneimine/Opti−Pro SFM混合液200μLに、発現ベクター/Opti−Pro SFM混合液200μLを加え穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8%CO
2インキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をMinisart−Plus filter(Sartorius社)、ろ過して評価用のサンプルとした。
【0409】
実施例18)−1−1で構築したpCMA−G1/hA2−11E−H3と実施例18)−2−1で構築したpCMA/hA2−11E−L2との組合せによって、ヒト化hA2−11E−H3/L2を取得した。実施例18)−1−1で構築したpCMA−G1/hA2−11E−H3と実施例18)−2−2で構築したpCMA/hA2−11E−L3との組合せによって、ヒト化hA2−11E−H3/L3を取得した。実施例18)−1−1で構築したpCMA−G1/hA2−11E−H3と実施例18)−2−3で構築したpCMA/hA2−11E−L4との組合せによって、ヒト化hA2−11E−H3/L4を取得した。実施例18)−1−2で構築したpCMA−G1/hA2−11E−H4と実施例18)−2−1で構築したpCMA/hA2−11E−L2との組合せによって、ヒト化hA2−11E−H4/L2を取得した。実施例18)−1−2で構築したpCMA−G1/hA2−11E−H4と実施例18)−2−2で構築したpCMA/hA2−11E−L3との組合せによって、ヒト化hA2−11E−H4/L3を取得した。実施例18)−1−2で構築したpCMA−G1/hA2−11E−H4と実施例18)−2−3で構築したpCMA/hA2−11E−L4との組み合わせによって、ヒト化hA2−11E−H4/L4を取得した。
【0410】
実施例18)−3−1で構築したpCMA−G1/hA2−25C−H3と実施例18)−4−1で構築したpCMA−/hA2−25C−L1との組合せによって、ヒト化hA2−25C−H3/L1を取得した。実施例18)−3−1で構築したpCMA−G1/hA2−25C−H3と実施例18)−4−2で構築したpCMA/hA2−25C−L2との組合せによって、ヒト化hA2−25C−H3/L2を取得した。実施例18)−3−1で構築したpCMA−G1/hA2−25C−H3と実施例18)−4−3で構築したpCMA/hA2−25C−L3との組合せによって、ヒト化hA2−25C−H3/L3を取得した。実施例18)−3−2で構築したpCMA−G1/hA2−25C−H4と実施例18)−4−1で構築したpCMA/hA2−25C−L1との組合せによって、ヒト化hA2−25C−H4/L1を取得した。実施例18)−3−2で構築したpCMA−G1/hA2−25C−H4と実施例18)−4−2で構築したpCMA/hA2−25C−L2との組合せによって、ヒト化hA2−25C−H4/L2を取得した。実施例18)−3−2で構築したpCMA−G1/hA2−25C−H4と実施例18)−4−3で構築したpCMA/hA2−25C−L3との組合せによって、ヒト化hA2−25C−H4/L3を取得した。
【0411】
<実施例19>
ヒト化A2−11E抗体(IgG1)、及びヒト化A2−25C抗体(IgG1)のin vitro活性評価
19)−1 BMPの骨芽細胞分化誘導アッセイによる抗体評価
実施例18)−5で作製したヒト化A2−11E抗体(IgG1)、及びヒト化A2−25C抗体(IgG1)の内在性ALK2を介した細胞内シグナルの阻害活性は、実施例6)−2と同様にBMPによるC2C12細胞の骨芽細胞への分化誘導活性に対する効果で解析した。分化誘導には2.5ng/mLのGDF2/BMP9(RD‐SYSTEMS社製)を用いた。
【0412】
結果を
図48に記載する。ヒト化A2−11E抗体(IgG1)、及びヒト化A2−25C抗体(IgG1)は、BMPによって誘導されるC2C12細胞の骨芽細胞様細胞への分化を、用量依存的に抑制することが確認された。
【0413】
<実施例20>
ヒト化A2−11E抗体(IgG1)、及びヒト化A2−25C抗体(IgG1)のヒトALK2に対する結合性評価
実施例18)−5で作製したヒト化A2−11E抗体(IgG1)、及びヒト化A2−25C抗体(IgG1)と抗原(実施例14)−1にて調製したヒトALK2細胞外ドメイン)との解離定数測定は、Biacore T200(GEヘルスケアバイオサイエンス(株))を使用し、固定化した抗ヒトIgG(Fc)抗体に抗体をリガンドとして捕捉(キャプチャー)し、抗原をアナライトとして測定するキャプチャー法にて行った。抗ヒトIgG(Fc)抗体(Human Antibody Capture kit、GEヘルスケアバイオサイエンス(株))は、センサーチップCM5(GEヘルスケアバイオサイエンス(株))へアミンカップリング法にて約1000RU共有結合させた。リファレンスセルにも同様に固定化した。ランニングバッファーとしてHBS−EP+(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl,3mM EDTA、0.05%Surfactant P20)を用いた。抗ヒトIgG(Fc)抗体を固定化したチップ上に、抗体を含む培養上清を約1分間添加した後、抗原の希釈系列溶液(0.78−200nM)を流速30μl/分で300秒間添加し、引き続き600秒間の解離相をモニターした。再生溶液として、3M MgCl
2を流速10μl/分で30秒間添加した。データの解析には、分析ソフトウェア(BIAevaluation software, version 1.0)の1:1結合モデルを用いて、結合速度定数ka、解離速度定数kd及び解離定数(KD;KD=kd/ka)を算出した。
【0414】
結果を表3に示す。
【表3】
【0415】
<実施例21>
A2−25C抗体のエピトープ解析
21)−1 ヒトキメラcA2−25C Fabフラグメントの作製
実施例5)−8と同様に調製したヒトキメラcA2−25Cを Papain(Sigma−Aldrich)を使用してFabフラグメントとFcフラグメントに切断し、これをHiTrap Protein A HPカラム(GE Healthcare)に添加した。フロースルー画分にて回収されたFabフラグメントを濃縮した。
【0416】
21)−2 ヒトキメラcA2−25C FabフラグメントとALK2−ECD複合体の結晶化と構造解析
実施例21)−1で得られたキメラA2−25C Fabフラグメントと実施例14に準じて調製したALK2−ECD複合体を3.8mg/mLに濃縮し、結晶化に用いた。結晶化には蒸気拡散法を用いた。タンパク質溶液0.5μLに沈殿剤溶液(0.15M Li
2SO
4,0.1M NaCitrate pH3.4,18%(w/v)PEG6,000,20%(v/v)Ethylene Glycol)を等量加えた溶液を、50μLの沈殿剤溶液を入れた密閉容器に両溶液が触れ合わないように収め、20℃で静置した。3日後に0.1mm×0.05mm×0.02mmの単結晶が得られた。得られた結晶を液化窒素で凍結し、SPring8のBL41XUにて95K窒素気流下でX線回折データを収集した。得られた回折像からソフトウェアmosflm(CCP4:Collaborative Computation Project No.4)を用いて回折強度を数値化し、結晶構造因子を求めた。結晶は直方晶系で空間群はP2
12
12
1、結晶の単位格子はa=74.49Å,b=128.05Å、c=147.73Åであった。得られた構造因子とFab(過去に結晶構造解析した抗体構造を利用)の三次元構造座標を用いて分子置換法を行い、位相を決定した。計算にはソフトウェアphaser(CCP4:Collaborative Computation Project No.4)を使用した。結晶は非対称単位に2つの複合体を含んでいた。ソフトウェアrefmac5(CCP4)を用いて構造の精密化を行い、ソフトウェアcootを用いてモデルの修正を行った。この操作を繰り返し行い、2.1Å分解能で最終のR値22.4%、freeR値25.3%を得た。モデルは2つの複合体から成り、A2−25C FabのL鎖アミノ酸残基1-212、H鎖アミノ酸残基1-219、ALK2−ECDのアミノ酸残基12−52および66−88、及び411個の水分子を含む。決定された2つのA2−25C Fabから共通して4Å以内にあるALK2−ECDのアミノ酸残基は以下の通りである:Glu18,Gly19,Leu20,Ile39,Asp41,Gly42,Phe43,His44,Val45,Tyr46,Thr84。
図49に複合体全体のリボンモデルを示した。
【0417】
<実施例22>
様々な変異ALK2に対するA2-27Dの阻害活性評価
これまでにFOP症例から同定された13種類の変異体(L196P、delP197_F198insL、R202I、R206H、Q207E、R258S、R258G、G325A、G328E、G328R、G328W、G356D、及びR375P)、および野生型ALK2に対するA2-27の阻害活性は、実施例2)-3と同様に、HEK293A細胞を用いたBMP特異的なId1WT4F-lucルシフェラーゼ・レポーターで解析した。遺伝子導入後、2.5時間後に培地を10ng/mLのBMP7(Milteney社製)と、3μg/mLのラットIgG1(R&D Systems社製)、またはA2-27Dを含む新鮮なOPTI-MEM I(LifeTechnologies社製)に交換して一晩培養した。翌日、Dual-Glo Luciferase Assay System(Promega社製)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。
【0418】
結果を
図50に記載する。モノクローナル抗体A2-27Dは、BMP7によって誘導されるルシフェラーゼ活性を、野生型および13種類すべての変異体で抑制することが確認された(
図50)。