(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
熱交換器に用いられる熱交換チューブには、ケースの内部又は外部にフィンが配置されているものがあり、一部には、フィンが上下2層に配置されているものも存在する。上下2層のフィンを内部に有する熱交換チューブに関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
図8を参照する。
図8は、特許文献1の
図3を再掲して符号を振り直したものであり、上流から下流に向かって見た熱交換チューブの断面が示されている。熱交換チューブ100は、互いに向かい合わされた略U字形状を呈する第1ケース101及び第2ケース102と、これらの第1,第2ケース101,102内に上下2層に配置された第1フィン103,第2フィン104と、これらの第1,第2フィン103,104の間に配置され第1,第2フィン103,104を上下に隔てるセパレータ105と、からなる。第1ケース101及び第2ケース102の両端は、互いに結合されている。第1フィン103は、セパレータ105及び第1ケース101の底部101aに接合している。第2フィン104は、セパレータ105及び第2ケース102の底部102aに接合している。
【0004】
ところで、セパレータ105の端部105a,105aは、それぞれ、第1ケースの側壁部101b、第2ケースの側壁部102bと接触している。そのため、高温の熱媒体が熱交換チューブ100内を流れてセパレータ105が熱伸びをしたとき、第1,第2ケースの側壁部101b,102bは、セパレータ105から力を受け、第1,第2ケース101,102には負荷が加わる。セパレータ105が熱伸びをしても、第1,第2ケース101,102への負荷が抑制できることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱伸びするセパレータからケースへの負荷を抑制することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1による発明によれば、熱交換チューブの内部に流される排気ガスと、前記熱交換チューブの外部に流される冷却水とで熱交換を行い、
前記熱交換チューブは、ケースと、このケースの内部に上下2層に配置されたフィンと、これらのフィンの間に配置され前記フィンを上下に隔てるセパレータと、からなり、
前記ケースは、前記排気ガスの流れ方向の上流から下流を見た場合に、共に略U字形状を呈する第1ケース及び第2ケースが向かい合わせに配置されてなり、
前記第1ケースは、第1ケース底部と、この第1ケース底部の両端から前記第2ケースに向かってそれぞれ立ち上げられた第1ケース側壁部と、からなり、
前記第2ケースは、第2ケース底部と、この第2ケース底部の両端から前記第1ケースに向かってそれぞれ立ち上げられた第2ケース側壁部と、からなり、
前記フィンは、共にコルゲート形の第1フィンと、第2フィンと、からなり、
前記第1フィンは、前記第1ケース底部、及び、前記セパレータの上面に接合され、
前記第2フィンは、前記第2ケース底部、及び、前記セパレータの下面に接合されている熱交換器において、
前記ケースの内部には、一方の面のみが前記第1ケース側壁部及び前記第2ケース側壁部に当接すると共に接合する平板状の接合プレートが配置されており、
前記排気ガスの流れ方向の上流から下流を見た場合に、前記排気ガスの熱により熱伸びした前記セパレータから前記ケースへの負荷を抑制できるように、前記セパレータの端部は、前記
接合プレートに対して離間して設けられていることを特徴とする熱交換器が提供される。
【0009】
請求項2による発明によれば、熱交換チューブの内部に流される排気ガスと、前記熱交換チューブの外部に流される冷却水とで熱交換を行い、
前記熱交換チューブは、ケースと、このケースの内部に上下2層に配置されたフィンと、これらのフィンの間に配置され前記フィンを上下に隔てるセパレータと、からなり、
前記ケースは、前記排気ガスの流れ方向の上流から下流を見た場合に、共に略U字形状を呈する第1ケース及び第2ケースが向かい合わせに配置されてなり、
前記第1ケースは、第1ケース底部と、この第1ケース底部の両端から前記第2ケースに向かってそれぞれ立ち上げられた第1ケース側壁部と、からなり、
前記第2ケースは、第2ケース底部と、この第2ケース底部の両端から前記第1ケースに向かってそれぞれ立ち上げられた第2ケース側壁部と、からなり、
前記フィンは、共にコルゲート形の第1フィンと、第2フィンと、からなり、
前記第1フィンは、前記第1ケース底部、及び、前記セパレータの上面に接合され、
前記第2フィンは、前記第2ケース底部、及び、前記セパレータの下面に接合されている熱交換器において、
前記排気ガスの流れ方向の上流から下流を見た場合に、前記排気ガスの熱により熱伸びした前記セパレータから前記ケースへの負荷を抑制できるように、前記セパレータは、複数の板材によって構成され、これらの複数の板材がそれぞれ離間して配置されており、
前記ケースの内部には、前記第1ケース側壁部及び前記第2ケース側壁部に当接すると共に接合する接合プレートが配置されており、
前記接合プレートは、前記セパレータと一体の部材であることを特徴とする熱交換器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1
及び請求項2に係る発明では、第1熱媒体の流れ方向の上流から下流に向かって熱交換チューブを見た場合に、セパレータの端部は、ケースに対して離間して設けられ、又は、第1熱媒体の流れ方向の上流から下流を見た場合に、セパレータは、複数の板材によって構成され、これらの複数の板材がそれぞれ離間して配置されている。即ち、セパレータ、セパレータを構成する板材又はケースは、少なくともいずれかが互いに離間している。そのため、熱交換チューブ内に高温の熱媒体が流れて、セパレータ又はセパレータを構成する板材が熱伸びしても、セパレータ、板材、ケースは互いに接触しない。結果、セパレータからケースへ負荷を抑制できる。
【0011】
加えて、ケースの内部には、第1ケース側壁部及び第2ケース側壁部に当接すると共に接合する接合プレートが配置されている。即ち、第1,第2ケースの側壁部の外側には、これらの第1,第2ケースを接合するための部位や部材が設けられていない。そのため、熱交換チューブを小型化することができる。
【0012】
請求項
2に係る発明では、第1ケース側壁部及び第2ケース側壁部を接合する接合プレートは、
セパレータと一体の部材である。この場合、接合プレートは、セパレータに支持されるともいえる。そのため、フィンが取り付けられたセパレータを、ケースに配置した場合、第1,第2ケースの側壁部と接合する位置に接合プレートを配置することができる。結果、接合プレート及び第1,第2ケースの接合作業が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【0015】
<実施例1>
図1を参照する。EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ10は、車両用のディーゼルエンジン20の排気口21と吸気口22との間に接続される排気ガス再循環装置である。
【0016】
排気口21から排出された排気ガス(第1熱媒体)の一部はEGRクーラ10に導入される。導入された排気ガスは、EGRクーラ10内において冷却水(第2熱媒体)により冷却され、排出される。冷却された排気ガスは、空気と共にディーゼルエンジン20内に再び導入される。ディーゼルエンジン20内に導入される酸素濃度は低下するため、NOx(窒素酸化物)の生成量は抑制される。
【0017】
なお、EGRクーラ10が取付けられるのは、ディーゼルエンジン20に限られず、ガソリンエンジンにも取り付け可能であり、これらのものに用途は限定されない。
【0018】
図2を参照する。EGRクーラ10は、排気ガスが導入される排気ガス導入部材11と、この排気ガス導入部材11に接続されている上流側エンドプレート12と、この上流側エンドプレート12に接続されているコアケース13と、このコアケース13の下流側の端部に接続されている下流側エンドプレート14と、この下流側エンドプレート14に接続されている排気ガス排出部材15と、コアケース13内に積層され両端が上流側エンドプレート12及び下流側エンドプレート14によって支持されている熱交換チューブ30と、からなる。
【0019】
コアケース13の上面には、上流側エンドプレート12近傍において、冷却水導入管16が差し込まれる冷却水導入口17が形成されている。同様に、コアケース13の上面には、下流側エンドプレート14近傍において、冷却水排出管18が差し込まれる冷却水排出口19が形成されている。
【0020】
排気ガス導入部材11及び排気ガス排出部材15には、それぞれ、他の部品に取り付けるための、フランジ11a,15aが取り付けられている。
【0021】
図3を参照する。
図3は、排気ガスの流れ方向を基準として上流側から下流側に向かって見た場合の、コアケース13の断面図である。コアケース13内には、3つの熱交換チューブ30,30,30が積層されている。コアケース13は、略U字状の上部コアケース13aと、略U字状の下部コアケース13bとが、互いの開口側を対向させ、端部を重ね合わされることにより形成される。
【0022】
図2を併せて参照し、排気ガスと冷却水との熱交換について説明する。排気ガス導入部材11により導入される排気ガスは、上流側エンドプレート12を介して、コアケース13のなかの熱交換チューブ30の内部のみに流される。排気ガスの熱は熱交換チューブ30に伝わる。排気ガスは、下流側エンドプレート14を通じて、排気ガス排出部材15から排出される。
【0023】
冷却水導入管16から導入される冷却水は、冷却水導入口17を通じて、コアケース13内に導入される。冷却水は、コアケース13内において、熱交換チューブ30の外部に流される。このとき、排気ガスの熱は、熱交換チューブ30を介して、冷却水に伝わる。温められた冷却水は、冷却水排出口19を通じて、冷却水排出管18から排出される。
【0024】
図4を参照する。熱交換チューブ30は、ケース31と、このケース31の内部に上下2層に配置されたフィン60と、これらのフィン60の間に配置されフィン60を隔てる板状のセパレータ70と、からなる。
【0025】
ケース31は、排気ガスの流れ方向の上流から下流に向かって見た場合に、共に略U字形状を呈する第1ケース40及び第2ケース50が向かい合わせに配置されてなる。第1ケース40の端部及び第2ケース50の端部は、対向していると共に、僅かに隙間を有している。
【0026】
第1ケース40は、第1ケース底部41と、この第1ケース底部41の両端から第2ケース50に向かってそれぞれ立ち上げられた第1ケース側壁部42,42と、からなる。第2ケース50は、第2ケース底部51と、この第2ケース底部51の両端から第1ケース40に向かってそれぞれ立ち上げられた第2ケース側壁部52,52と、からなる。
【0027】
第1ケース40と第2ケース50は同一の形状を呈する。2層に配置されたフィン60は、共にコルゲート形の第1フィン61と、第2フィン62と、からなる。これらの第1フィン61と第2フィン62とは、略矩形波の形状を呈する。
【0028】
第1フィン61は、第1ケース底部41、及び、セパレータ70の上面(一面)に接合されている。第2フィン62は、第2ケース底部51、及び、セパレータ70の下面(他面)に接合されている。
【0029】
ケース31の内部には、第1ケース側壁部42及び第2ケース側壁部52に当接すると共に接合する接合プレート80,80が両端に配置されている。接合プレート80,80は、それぞれ、第1ケース側壁部42に当接する第1当接部81と、第2ケース側壁部52に当接する第2当接部82と、からなる。
【0030】
第1ケース側壁部42及び第1当接部81は、レーザ溶接により貫通接合されている。同様に、第2ケース側壁部52及び第2当接部82は、レーザ溶接により貫通接合されている。
【0031】
図5を参照する。接合プレート80及び第1,第2ケース側壁部42,52について、その他の接合方法を説明する。
【0032】
図5(a)を参照する。
図5(a)には、
図4の場合と比較して、第1ケース側壁部42の第1先端部43と、第2ケース側壁部52の第2先端部53との隙間が広い場合が示されている。第1当接部81は、第1ケース側壁部42に対し、排気ガスの流れ方向に沿って連続的に形成される第1ビード44により、溶接されている。同様に、第2当接部82は、第2ケース側壁部52に対し、排気ガスの流れ方向に沿って連続的に形成される第2ビード54により、溶接されている。
【0033】
即ち、第1ビード44が第1ケース側壁部42の第1先端部43に形成され、第2ビード54が第2ケース側壁部52の第2先端部53に形成されることにより、接合プレート80と、第1ケース側壁部42及び第2ケース側壁部52とが接合される。
【0034】
図5(b)を参照する。第1先端部43と第2先端部53との間の隙間を埋めるように、1つのビードのみが形成されてもよい。即ち、ややビード幅の広い第3ビード33により、接合プレート80と、第1ケース側壁部42及び第2ケース側壁部52とが接合される。
【0035】
次に本発明の作用及び効果について説明する。
【0036】
図4を参照する。排気ガスの流れ方向の上流から下流に向かって熱交換チューブ30を見た場合に、セパレータ70の端部70a,70aは、ケース31に対して離間して設けられている。そのため、熱交換チューブ30内に排気ガスが流れて、セパレータ70が長手方向に熱伸びしても、セパレータ70及びケース31は互いに接触しない。結果、セパレータ70からケース31への負荷を抑制できる。
【0037】
加えて、ケース31の内部には、第1ケース側壁部42及び第2ケース側壁部52に当接すると共に接合する接合プレート80が配置されている。即ち、第1,第2ケース側壁部42,52の外側には、第1,第2ケース40,50を接合するための部位や部材が設けられていない。そのため、熱交換チューブ30を小型化することができる。
【0038】
<実施例2>
図6を参照する。次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2では、フィン61A,62A、セパレータ70A、接合プレート80Aが異なる。その他の構成については、実施例1の熱交換チューブ30と同様であり、符号を流用すると共に説明を省略する。
【0039】
排気ガスの流れ方向の上流から下流を見た場合に、熱交換チューブ30Aのセパレータ70Aは、第1セパレータ71(板材71)及び第2セパレータ72(板材72)から構成され、これらの第1,第2セパレータ71,72がそれぞれ離間して配置されている。
【0040】
熱交換チューブ30Aは、長手方向の中央(第1セパレータ71及び第2セパレータ72の間)を基準として、対称の構成である。即ち、第1セパレータ71側の構成及び第2セパレータ72側の構成は、対称であり、第1セパレータ71側について説明した構成については、第2セパレータ72側の構成に適宜読み替えることができる。
【0041】
第1セパレータ71の両面には、第1,第2フィン61A,62Aが配置されている。第1フィン61Aは、第1ケース底部41、及び、第1セパレータ71の上面(一面)に接合されている。第2フィン62Aは、第2ケース底部51、及び、第1セパレータ71の下面(他面)に接合されている。
【0042】
第1セパレータ71は、接続部35を介して、接合プレート80Aの第2当接部82Aの下端(端部83A)に接続している。接続部35は、排気ガスの流れ方向の上流から下流を見た場合に、略J字状を呈する。第1セパレータ71、接続部35及び接合プレート80Aは、曲げ加工により一体的に形成されている。
【0043】
なお、第1セパレータ71は、接続部35を介して、接合プレート80Aの第1当接部81Aの上端(端部83A)に接続してもよい。
【0044】
セパレータ70Aは、互いに離間した第1,第2セパレータ71,72により構成される。そのため、熱交換チューブ30A内に排気ガスが流れて第1,第2セパレータ71,72が熱伸びをしても、第1,第2セパレータ71,72は互いに接触しない。結果、第1,第2セパレータ71,72からケース31へ負荷を抑制できる。さらに、熱交換チューブ30Aによれば、上記の構成により、以下の特有の効果を得ることができる。
【0045】
第1ケース側壁部42及び第2ケース側壁部52を接合する接合プレート80Aは、接続部35を介して、第1セパレータ71に接続されている。この場合、接合プレート80Aは、第1セパレータ71に支持されているともいえる。そのため、第1,第2フィン61A,62Aが取り付けられた第1セパレータ71を、第1,第2ケース40,50に配置した場合、第1,第2ケース側壁部42,52と接合する位置に接合プレート80Aを配置することができる。結果、接合プレート80A及び第1,第2ケース40,50の接合作業が容易となる。
【0046】
加えて、接続部35は、略J字状を呈し、第1当接部81の下端(83A)と接続している。即ち、第1セパレータ71の長手方向で、第1セパレータ71と、接合プレート80Aの端部83A,83Aは互いにオフセットしている。仮に、第1セパレータの長手方向の延長線状に直線上の接続部が設けられた場合、第1セパレータが熱伸びをすると、接合プレートの端部に負荷が集中する。一方、接続部35が略J字状を呈しており、第1セパレータ71と端部83Aがオフセットしていれば、接続部35は撓みやすくなる。そのため、第1セパレータ71熱伸びによる負荷は、分散して第1,第2ケース側壁部42,52に伝わる。
【0047】
<実施例3>
図7を参照する。次に、本発明の実施例3について説明する。実施例3では、セパレータ70B,接合プレート80が実施例2と異なる。その他の構成については、実施例2の熱交換チューブ30Aと同様であり、符号を流用すると共に説明を省略する。
【0048】
セパレータ70Bは、第1セパレータ71B及び第2セパレータ72から構成され、これらの第1セパレータ71B及び第2セパレータ72は、それぞれ離間して配置されている。加えて、第1セパレータ71Bは、接合プレート80と接続していない。熱交換チューブ30Bにおいても、本発明所定の効果を得ることができる。さらに、熱交換チューブ30Bによれば、上記の構成により、以下の特有の効果を得ることができる。
【0049】
第1セパレータ71Bは、第2セパレータ72と離間し、かつ、接合プレート80と離間している。そのため、第1セパレータ71Bの熱伸びが大きい場合であっても、第1セパレータ71Bからケース31への負荷を抑制することできる。
【0050】
本発明の熱交換器は、実施の形態では四輪車に適用したが、車両全般に適用可能であり、さらに車両以外の用途に用いることも差し支えない。
【0051】
さらに、本発明における熱交換チューブが搭載されている熱交換器は、実施の形態ではEGRクーラに適用したが、排熱回収装置やコージェネレーションシステム、熱電発電装置への適用も可能である。さらに、これらのように、排気ガスの熱と媒体との間で熱交換を行うもの以外の物にも適用が可能である。