特許第6763792号(P6763792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763792
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】雪片の生成装置および生成方法
(51)【国際特許分類】
   F25C 3/04 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   F25C3/04
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-6260(P2017-6260)
(22)【出願日】2017年1月17日
(65)【公開番号】特開2018-115795(P2018-115795A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2017年8月2日
【審判番号】不服2019-7619(P2019-7619/J1)
【審判請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩司
【合議体】
【審判長】 林 茂樹
【審判官】 槙原 進
【審判官】 平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−6362(JP,A)
【文献】 特開2000−130900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体が配置される周囲温度のみを、周囲湿度を管理することなく、雪片の生成にとって十分に低い所定温度に設定する段階と、
予め造雪された、粒度分布が0.4ミリ以下の雪粒を担体に向かって搬送する段階と、
搬送された雪粒を担体の表面で捕捉して、雪粒同士を担体表面上で付着成長させることにより、3ミリ片から10ミリ片の雪片を生成する段階と、
生成した雪片を担体表面から剥離する段階と、を有し、
前記担体は、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から
隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、
前記最狭部より上のスペースに、搬送される雪粒を受けることが可能なように配置された
複数のローラーを有し、
隣接するローラーにより、前記最狭部において、雪片を形成し、
前記複数のローラーのそれぞれのローラーは、ゴムローラーからなり、前記外周面に、ローラーの軸線方向に延在す
る凹凸を有し、前記最狭部において、隣接するローラーの一方の凹部と他方の凸部とにより、雪粒同士を圧密化する、
ことを特徴とする雪片の生成方法。
【請求項2】
人工雪を用いて試験を行う試験室内に配置される雪片の生成装置であって、
予め造雪された、粒度分布が0.4ミリ以下の雪粒を担体に向かって搬送する搬送手段と、
搬送された雪粒を捕捉して、雪粒同士を付着成長させることにより、3ミリ片から10ミリ片の雪片を生成する担体手段と、
生成した雪片を担体から剥離する剥離手段と、
担体が配置される周囲温度のみを、周囲湿度を管理することなく、雪片の生成にとって十分に低い所定温度に設定する周囲温度調整装置と、を有し、
前記担体手段は、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から
隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、
前記最狭部より上のスペースに、搬送される雪粒を受けることが可能なように配置された
複数のローラーを有し、
隣接するローラーにより、前記最狭部において、雪片を形成し、
前記剥離手段は、前記複数のローラーの回転により、前記最狭部において形成される雪片
を下方に押し出し、
前記複数のローラーは、試験室内の上方において、試験室を仕切るように配置され、それ
ぞれのローラーは、ゴムローラーからなり、前記外周面に、ローラーの軸線方向に延在す
る凹凸を有し、前記最狭部において、隣接するローラーの一方の凹部と他方の凸部とによ
り、雪粒同士を圧密化し、前記外周面には、多数の貫通穴が設けられ、前記剥離手段は、
エアをそれぞれのローラーの内部から前記貫通穴を通じて噴出する、
ことを特徴とする雪片の生成装置。
【請求項3】
前記剥離手段は、前記担体手段を加振することにより、生成した雪片を前記担体手段の表
面から剥離する、請求項2に記載の雪片の生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪片の生成装置および生成方法に関し、より詳細には、雪を利用した環境試験において、既存の試験室に設置可能であり、試験室における試験条件の融通性を向上した雪片の生成装置、および造雪した雪粒を雪片化することにより、雪質を所望に変えることが可能な雪片の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、完成モデルの車両を室内に置き、さまざまな自然環境・気象条件を設定し、車両への負荷をデータとして収集し、分析するための環境試験室が用いられている。
その一例として、環境試験室内で人工雪を用いて、エンジンルーム内への雪の混入による不具合問題、足回り部品の凍結等の着氷問題に対処することが行われている。
【0003】
このため、環境試験室内には、車両、造雪部および降雪部が設けられる。
一例が、特許文献1に開示されている。
特許文献1においては、造雪部は、ミスト状に噴霧した微水滴を低温空間で凍結させ、凍結させた氷粒を担体の膜に成り行きで捕捉し、氷粒同士を担体表面上で付着成長させ、降雪部は、付着成長した雪片が担体表面から衝撃にて剥離させて落下し、試験室内で車両に降雪させるように構成している。
【0004】
他の例が、特許文献2に開示されている。
特許文献2においては、造雪部は、担体の通気膜に加湿空気を通過させることにより、膜表面に樹枝状結晶雪を模擬した霜を成り行きで成長させ、降雪部は、成長した霜が膜表面から自重により落下し、試験室内で車両に降雪させるように構成している。
【0005】
これら人工雪の降雪装置には、共通に、以下のような技術的問題点が存する。
第1に、試験室内に造雪部および降雪部が配置されることに起因して、試験に用いる人工雪の雪質を所望に変えることが困難である点である。
より詳細には、造雪部は、零度以下の温度が要求されるため、同じ試験室内の降雪部も同様な温度となり、たとえば、降雪の際、湿雪化することが困難であり、一方、凍結した氷粒および成長した霜は、成り行きで担体に捕捉され、成長するに過ぎないので、付着成長する雪片の大きさを調整することも困難である。
この点、昨今、車両を試験対象とする環境試験の試験条件は、多様となっており、既存の環境試験設備に大幅な改造をすることなしに、車両に対して単に自然降雪態様を模擬するだけでなく、車両に対して所望の大きさ、所望の雪質の雪片を降雪させたり、所望の大きさ、所望の雪質の雪片の吹雪を車両に吹き付けたりすることが、業界内で要望されている。
【0006】
第2に、造雪工程および降雪工程が連続することに起因して、試験に用いる人工雪の調達に融通性が欠ける点である。
より詳細には、造雪工程により造雪された雪が、そのまま降雪工程において降雪されるので、たとえば、造雪工程により造雪された雪をいったん貯雪することが困難であり、だからといって、過不足の生じないように、降雪に必要な量の雪を造雪工程により、必要なそのときに造雪するのも困難である。
この場合、造雪部および降雪部を場所的に分離し、あるいは造雪工程および降雪工程を時間的に分離することにより、第1および第2の技術的問題点に対処するとしても、既存の環境試験設備に対して、大幅な改造を施すことなく対処するのは、技術的に困難である。
【0007】
なお、特許文献3には、降雪を模擬する試験室内において、互いに平行に水平方向に整列配置された複数のローラー回転体が記載され、これら複数のローラー回転体により、試験室上部の造雪部と、試験室下部の降雪部とが、一見すると仕切られている点まで開示されているように見える。
しかしながら、複数のローラー回転体において、隣接するローラー回転体同士は、以下の理由から、敢て、隙間を設けており、試験室上部の造雪部と試験室下部の降雪部とを仕切る点については、開示はおろか示唆すらなされていない。
【0008】
すなわち、造雪部は、それぞれ、駆動ローラーと、被駆動ローラーとの間に掛け渡された無端ベルト状の回転可能な通気膜を有する複数の回転膜装置を有し、鉛直向きに配置された各通気膜に対して、空気を送り、通気膜の表面上で霜を成長させて、いわゆる結晶雪を生成するところ、複数の回転膜装置それぞれの一方のローラーを水平向きに整列配置するとともに、隣接する一方のローラーの間に、ローラー回転体を配置することにより、試験室上部の造雪部の温度より試験室下部の降雪部の温度のほうが高い場合であっても、一方のローラーとローラー回転体に設けた所定隙間より、造雪部において循環する空気の一部を積極的に下方に排出することにより、降雪部から上方に造雪部に流入しようとする空気をブロックし、以って霜の成長の阻害を防止している。
【0009】
つまり、特許文献3においては、特に、結晶雪を造雪する場合において、結晶雪を生成するのに用いる空気を利用して、隣接するローラーの間の所定隙間から降雪部に向けて排出することにより、降雪部から造雪部への空気の流入を防止しているに過ぎない。
【特許文献1】特開平3−236575号公報
【特許文献2】特開平9−329380号公報
【特許文献3】特許第4549364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、造雪した雪粒を雪片化することにより、雪質を所望に変えることが可能な雪片の生成方法を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、雪を利用した環境試験において、既存の試験室に設置可能であり、試験室における試験条件の融通性を向上した雪片の生成装置を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、造雪工程と降雪工程とを分離し、その間で、造雪工程により造雪された雪粒を雪片化し、生成された雪片を所望に降雪することが可能な雪片の生成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明の雪片の生成方法は、
担体が配置される周囲温度または周囲温湿度を所定に設定する段階と、
予め造雪された雪粒を担体に向かって搬送する段階と、
搬送された雪粒を担体の表面で捕捉して、雪粒同士を担体表面上で付着成長させることにより、雪片を生成する段階と、
生成した雪片を担体表面から剥離する段階と、を有する構成としている。
【0012】
以上の構成を有する雪片の生成方法によれば、造雪した雪粒をそのまま利用せずに、担体が配置される周囲温度または周囲温湿度を所定に設定したうえで、予め造雪された雪粒を担体に向かって搬送し、搬送された雪粒を担体の表面で捕捉して、雪粒同士を担体表面上で付着成長させることにより、雪片を生成し、生成した雪片を担体表面から剥離することにより、造雪した雪粒の雪片化を通じて、たとえば、担体表面から剥離する雪片を降雪させる場合において、降雪する雪粒の大きさを変えたり、造雪工程と降雪工程とを分離することにより、造雪環境と異なる環境(温度条件、湿度条件)で降雪させ、降雪中に湿雪化することも可能であり、総じて、雪質を所望に変えることが可能である。
【0013】
上記課題を達成するために、本発明の雪片の生成装置は、
人工雪を用いて試験を行う試験室内に配置される雪片の生成装置であって、
予め造雪された雪粒を担体に向かって搬送する搬送手段と、
搬送された雪粒を捕捉して、雪粒同士を付着成長させることにより、雪片を生成する担体手段と、
生成した雪片を担体から剥離する剥離手段と、
担体が配置される周囲温度または周囲温湿度を所定に設定する周囲温度または周囲温湿度調整装置と、を有する、構成としている。

また、前記剥離手段は、前記担体手段を加振することにより、生成した雪片を前記担体手段の表面から剥離するのがよい。
さらに、前記担体手段は、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、搬送される雪粒を受けることが可能なように配置された複数のローラーを有し、
隣接するローラーにより、前記最狭部において、雪粒同士を圧密化することにより、雪片を形成し、
前記剥離手段は、前記複数のローラーの回転により、前記最狭部において形成される雪片を下方に押し出すのがよい。
【0014】
さらにまた、前記複数のローラーは、試験室内の上方において、試験室を仕切るように配置され、それぞれのローラーは、前記外周面に植毛された回転ブラシを構成し、前記外周面には、多数の貫通穴が設けられ、前記剥離手段は、エアをそれぞれのローラーの内部から前記貫通穴を通じて噴出するのでもよい。
加えて、前記複数のローラーは、試験室内の上方において、試験室を仕切るように配置され、それぞれのローラーは、ゴムローラーからなり、前記外周面にローラーの軸線方向に延在する凹凸を有し、前記最狭部において、隣接するローラーの一方の凹部と他方の凸部とにより、雪粒同士を圧密化し、前記外周面には、多数の貫通穴が設けられ、前記剥離手段は、エアをそれぞれのローラーの内部から前記貫通穴を通じて噴出するのでもよい。
【0015】
また、前記担体手段は、表面に雪粒が付着成長可能なように所定メッシュの金網から構成され、試験室内の上方において、試験室を仕切るように配置され、
前記剥離手段は、雪粒が搬送される側の前記金網の表面を摺動可能なブラシ状に構成されるのでもよい。
さらに、前記担体手段は、それぞれ長手方向を中心に回転及び揺動可能に設けられた、複数の可撓性長尺板により構成されるブラインド状をなし、該可撓性長尺板の表面において、雪片が生成されるのでもよい。
さらにまた、前記担体手段は、表面に雪粒が付着成長可能なように所定メッシュの金網から構成され、試験室内の上方において、試験室を仕切るように配置され、
さらに、前記金網の上方に、前記金網の上表面を覆うように、所定メッシュの通気膜が配置され、
前記通気膜により仕切られる試験室の上スペースから前記通気膜を介してエアを吸引する吸引手段が設けられ、それにより、雪粒を前記担体手段に向かって吸引捕捉するのでもよい。
【0016】
加えて、前記搬送手段は、管内で気流により雪粒を圧送する本管と、上流側端面が、該本管の下流側端面と平行に配置される雪粒の拡散式噴雪装置により構成され、
前記雪粒の拡散式噴雪装置は、上流側端面が前記本管の下流側端面と平行に配置された回転体と、該回転体をその軸線方向を中心に所定回転速度で回転させる回転駆動部とを有し、
該回転体はその内部に、該回転体を軸線方向に貫通する圧送流路を有し、
該圧送流路は、前記上流側端面に、前記本管の下流側端面に設けられる流出開口に近接対向して非接触式に配置される取り入れ口を備え、前記下流側端面に排出口を備え、
前記排出口は、雪粒が前記排出口から軸線方向に対して拡散する向きに排出するように、前記取り入れ口に対して位置決めされるのでもよい。
【0017】
また、前記回転体の前記上流側端面および前記下流側端面それぞれは、円形であり、前記圧送流路は、直線状流路であり、前記排出口は前記取り入れ口に対してオフセット配置されるのがよい。
さらに、前記雪粒の拡散式噴雪装置を利用して、雪粒を天井に向かって上方に拡散し、前記担体手段に捕捉させるのでもよい。
さらにまた、前記雪粒の拡散式噴雪装置を利用して、雪粒を床面に向かって下方に拡散し、前記担体手段に捕捉させるのでもよい。
加えて、前記担体手段は、帯電可能な材質から構成され、前記担体に向かって搬送される帯電した雪粒を静電気力による吸引するのでもよい。
【0018】
また、雪粒は、前記担体に向かって搬送される間に、粒の大きさに応じてプラス電荷またはマイナス電荷に帯電され、それにより、前記担体手段において、粒径の異なる雪粒が混在した雪片として形成されるのでもよい。
さらに、前記複数の回転ブラシ体の下方には、前記複数の回転ブラシ体のブラシ先端に当たるように配置された巻取り式金網が設けられ、
巻取り式金網は、幅は前記複数の回転ブラシ体の軸方向長さより長く、前記複数の回転ブラシ体の一端の回転ブラシから他端の回転ブラシまで及ぶように設けられ、
両端の回転ブラシそれぞれに巻き取り部を有し、水平向きに往復移動可能とされ、
巻取り式金網の下方には、ブラシの先端が上向きで巻取り式金網の下面に当たるように固定ブラシが設けられるのでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の環境試験方法および環境試験装置の第1実施形態について、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
まず、雪環境試験システムについて説明すれば、図1に示すように、雪環境試験システム10は、氷粒からなる人工雪を利用し、人工雪により試験供試体である車両Vに対して降雪を模擬するように構成され、そのために、雪環境試験システム10は、人工雪を造る造雪部と、造雪した雪粒を搬送する搬送部と、搬送される雪粒を拡散させる拡散部と、拡散した雪粒から雪片を生成する雪片生成部と、生成した雪片を降雪させる降雪部とを有し、このうち、搬送部の一部と、拡散部と、雪片生成部と、降雪部とが、車両Vが配置される試験室内に配置され、造雪部と搬送部とが試験室外に配置される。
【0020】
より具体的には、雪環境試験システム10は、概略的には、製氷室で製氷された氷片を低温室で砕氷して、氷粒化することにより人工雪を製造し、人工雪を試験室に向けて圧送して、試験室内において、人工雪を拡散して、雪片を生成し、生成した雪片を車両Vに対して降雪するように構成している。
【0021】
造雪部において用いるリーマ式製氷機22は、フレーク状の氷片を製造するいわゆるリーマ式製氷機22であ。
【0022】
より具体的には、図2に示すように、リーマ式製氷機22は、従来既知のタイプであるが、内周面を製氷面とする略円筒状の製氷シリンダ402と、製氷シリンダ402の内周面に向けて水を散水供給して、氷を形成する散水部404と、製氷シリンダ402の下側に配設されて、製氷シリンダ402で凍結せずに流下した水を受止めて貯留する貯留部406と、製氷シリンダ402の内周面に沿って移動しつつ氷を割るリーマ408とを備える。
【0023】
リーマ408は、鉛直方向に延びる略円柱状の回動軸の周囲に刃先を螺旋状配置とされる割氷用の複数の刃412を一体に取付けられてなり、中心軸411から突出するリーマ支持部に回動自在に支持される。リーマ408の刃412と製氷シリンダ402の内周面との最小間隔は、たとえば、氷の厚さより小さい0.4ないし0.5mm程度に設定可能にしている。このように、リーマ408は、製氷シリンダ402の中心線を中心に公転しつつ、中心軸411を中心に自転しながら、製氷面に形成される薄氷層を剥離するようにしてある。
【0024】
造雪部においてフレーク状の氷片を破砕して氷粒にするのに用いる砕氷機(図示せず)は、主に、上部に配置されたロータリーフィーダー(図示せず)と、下部に配置された一対の砕氷ドラム(図示せず)とからなり、供給された氷片をロータリーフィーダーにより分量化して一対の砕氷ドラムに供給し、一対の砕氷ドラムにより砕氷して、所定粒径の氷粒として雪供給管40に供給するようにしている。
【0025】
拡散部において、人工雪の拡散装置34について説明すれば、人工雪の拡散装置34は、搬送される氷粒を所望拡散範囲に亘って拡散するのに用いられる。
【0026】
図3ないし図8に示すように、人工雪の拡散装置34は、管内で気流により人工雪を圧送する雪供給管40の先端開口との間に間隔を隔てて配置される。
【0027】
人工雪の拡散装置34は、上流側端面105が雪供給管40の下流側端面106と平行に配置された回転体110と、回転体110をその軸線方向を中心に所定回転速度で回転させる回転駆動部(図示せず)とを有する。回転駆動部は、たとえば、駆動モータである。
回転体110は、円柱状であり、その内部に回転体110を軸線方向に貫通する圧送流路114を有する。圧送流路114は、上流側端面に、雪供給管40の下流側端面106に設けられる流出開口116に近接対向して非接触式に配置される取り入れ口118を備え、下流側端面に排出口122を備える。取り入れ口118および排出口122は、円形開口でよい。
【0028】
圧送流路114は、回転体110の内部に、単一に設けられ、取り入れ口118は、回転体110の軸線を中心とし、排出口122は、取り入れ口118に対して、回転体110の軸線方向からオフセット配置される。偏心量は、人工雪の圧送流量に応じて、排出口122からの所望拡散範囲の観点から決定すればよい。
すなわち、後に説明する回転体110の回転速度が一定の場合、偏心量が大きいほど、人工雪の拡散範囲は拡大する。
取り入れ口118の内径は、雪供給管40の内径よりも小さく設定し、回転体110内の圧送流路114が雪供給管40側の取り入れ口118から排出口122に向かって先細に形成されている。しかしながら、雪供給管40内を流れる気流速度、雪供給管40内を気流により圧送される人工雪の量によっては、取り入れ口118の内径を雪供給管40の内径とほぼ同じあるいは大きくする場合もあり、この場合には、回転体内の圧送流路114は、取り入れ口118と排出口122の間を同一径あるいは取り入れ口118から排出口122に向かって先太に形成する。
回転体110の回転速度は、偏心量との関係において、所望の拡散範囲に応じて設定される。回転体110の上流側端面104および下流側端面106それぞれは、円形であり、雪供給管40の下流側端面106を包摂する領域と同じ大きさを有し、圧送流路114は、直線状流路である。
圧送流路114により圧送される人工雪が、圧送流路114の内周面128に付着しないように、圧送流路114の内周面128は、樹脂製であり、圧送流路114内で人工雪を圧送する気流速度は、人工雪の内周面128への付着力を上回る剥離力が生じるような速度に設定する。
【0029】
拡散装置34によれば、気流により人工雪を圧送する雪供給管40から、回転する回転体110の圧送流路114を介して、人工雪を拡散することが可能である。
より具体的には、まず、リーマ式製氷機22によって製氷された氷片が砕氷機(図示せず)によって砕氷され、所定粒径の氷粒となり、雪供給管40により気流により圧送される。
【0030】
圧送される雪は、気流とともに雪供給管40の流出開口116から流出し、回転駆動部により回転体110の軸線方向を中心に所定回転速度で回転する回転体110の内部の圧送流路114に取り入れ口118から流入し、排出口122から流出して、拡散するようにしてある。
なお、雪粒の拡散方向は、雪粒を天井に向かって上方に拡散し、担体手段(後に説明)に捕捉させて、雪片の生成を行ってもよいし、雪粒を床面に向かって下方に拡散し、担体手段に捕捉させるのでもよい。
【0031】
図19に示すように、拡散装置34の排出口122の前方には、拡散プレート74が設けられ、雪粒は、拡散プレート74に当って四方外方に拡散するようにしている。
【0032】
拡散プレート74の排出口122に向く側には、対向面104が設けられ、対向面104は、排出口122の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に配置され、それにより、排出口122から吹き出され、気流に乗って気流進行方向に沿って発生する吹雪が、対向面104に当って偏向され、対向面104の四方外方に向かって拡散するようにしてある。
拡散プレート74は、回転体110の軸線方向を中心に回転可能にするのでもよく、さらに、傾斜角度αを調整可能としてもよい。
【0033】
次に、雪片生成部について説明すれば、図9および図10に示すように、担体手段は、互いに平行に外周面312を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラー306の間の最狭部304に向かう向きに回転可能である複数のローラー306であって、最狭部304より上のスペースに、搬送される雪粒を受けることが可能なように配置された複数のローラー306を有する。隣接するローラー306により、最狭部304において、雪粒同士を圧密化することにより、雪片を形成し、剥離手段は、複数のローラー306の回転により、最狭部304において形成される雪片を下方に押し出すようにしている。
より詳細には、複数のローラー306は、試験室308内の上方において、試験室308を仕切るように配置される。より具体的には、複数のローラー306はそれぞれ、試験室308の矩形横断面(短辺 X 長辺)において、ローラー306の回転軸が短辺に平行に延び、試験室308の一対の対向面(図示せず)それぞれに回転可能に支持され、長辺の長さをカバーするのに必要なローラー306が、互いに平行に配置され、試験室308内の上部と下部とを仕切るようにしている。
【0034】
複数のローラー306のうち、1つが駆動ローラー306(図面上では一番左)であり、たとえば、ローラー306回転軸が駆動モータに連結され、それ以外は、被駆動ローラー306であり、駆動ローラー306の回転駆動力により、回転されるようにしている。これにより、図9に示すように、隣接するローラー306から1つ置きに、ローラーの下方の回転により、生成される雪片(後に説明)が下方に送り出されるようにしている。
それぞれのローラー306は、ゴムローラー306からなり、外周面312に亘って、ローラーの軸線方向に延在する凹凸310を有する。
より具体的には、複数の凸部が周方向に所定の均等な角度間隔を隔てて設けられ、それぞれの凸部は、頂部が、ローラー306の回転軸に沿って延びる細長平面部312を構成し、外周面312全体として、いわば歯車状を呈する。
【0035】
それぞれのローラー306の径、および凸部の高さHは、生成する雪片の所望の雪質、特に硬度に応じて決定すればよく、特に、凸部の高さHは、長辺方向に隣接するローラー306同士が最狭部304において、一方のローラー306の凹部とが、他方のローラー306の凸部とが噛み合い、それにより、一方のローラー306から他方のローラー306へ回転駆動力が伝達されるとともに、凹部の底面と凸部の頂面との間に、雪粒の圧密部を形成するようにする。
この意味において、最狭部304における隣接するローラー306同士の間隔Dは、要求される雪片の大きさに応じて決定する必要があり、各ローラー306のローラー306の回転軸を長辺方向に移動可能として、間隔Dを調整可能とするのが好ましい。
この場合、雪片を生成するのに、雪粒の粒度分布は、0.4ミリ以下であることが必要であり、これより大きいと、雪粒同士が付着困難となり、圧密により強制的に付着させると要求以上の硬度となる可能性が大きくなる。
【0036】
なお、最狭部304において、隣接するローラー306同士は、凹凸310を介して噛み合っており、実質的に、複数のローラー306により、試験室308の上部スペースと下部スペースとは仕切られていることから、従来においては、試験室308の上部において、人工雪を製造するのに零度以下に試験室308内の温度を維持する必要があり、上下スペースが連通することに起因して、試験室308の下部において、降雪部のスペースも同様な温度となっていたことから、たとえば、降雪部において、雪片を湿雪化することが技術的に困難であった点を克服している。
なお、生成した雪片をローラーから剥離して降雪を模擬するのに、剥離手段として、別途ローラーを加振することでもよいし、エアをそれぞれのローラー306の内部から貫通穴316を通じて噴出して、生成した雪片を担体手段の表面から剥離させてもよい。
【0037】
変形例としては、図11および図12に示すように、複数のローラー306は、試験室308内の上方において、試験室308を仕切るように配置され、それぞれのローラー306は、外周面312に植毛された回転ブラシ314を構成し、外周面312には、多数の貫通穴316が設けられ、剥離手段は、エアをそれぞれのローラー306の内部から貫通穴316を通じて噴出するのでもよい。
回転ブラシ314は、たとえば、樹脂製の柔軟性を有する材質からなり、ゴムローラー306の場合と異なり、その先端が、対向するローラー306の外周面312に接触する長さを有してもよく、回転ブラシ314の径および回転ブラシ314のローラー306の外周面312上の密度は、回転ブラシ314を除くローラー306の外周面312上に雪粒が付着し得る面積の観点から適宜定めればよい。
エアの噴出は、パルス的に噴出するのでもよく、エアの温度を−1℃以下の冷風とすることにより、試験室308内の温度が零度以上であっても、この雰囲気が回転ブラシ314及びローラー306に直接接触しないようにし、以って生成された雪片が溶解するのを防止することが可能である。エアの貫通穴316の密度は、このような観点から定めればよい。
【0038】
なお、ゴムローラー306の場合には、隣接するローラー306の最狭部304において、付着した雪粒を圧密化することから、硬化した雪片を模擬するのに適し、回転ブラシ314付きローラー306の場合には、ゴムローラー306とは異なり、付着した雪粒を圧密化しないことから、結晶雪を回転ブラシ314によりローラー306から剥離し、降雪を模擬するのに適するが、いずれにせよ、ゴムローラー306の場合も、回転ブラシ314付きローラー306の場合も、特に、回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとすることにより、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり、試験室308内において、造雪スペースと降雪スペースとを互いに独立の温度領域とし、たとえば、試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化することも可能となる。
図13に示すように、さらなる変形例として、複数のゴムローラー306と、回転ブラシ314付きローラー306とを組み合わせ、回転ブラシ314付きローラー306を複数のゴムローラー306より上側に配置して、まず、回転ブラシ314付きローラー306により、雪粒から雪片を生成し、さらに、複数のゴムローラー306により圧密化してもよい。
加えて、担体手段としてのローラー306について、帯電可能な材質から構成し、担体であるローラー306に向かって搬送される帯電した雪粒を静電気力による吸引するのでもよく、この場合には、雪粒は、担体に向かって搬送される間に、粒の大きさに応じてプラス電荷またはマイナス電荷に帯電され、それにより、担体手段において、粒径の異なる雪粒が混在した雪片として形成し、雪質を変えることが可能となる。
【0039】
以上の構成を有する雪環境試験システム10について、雪片の生成方法を含め、その作用を以下に説明する。
まず、担体が配置される試験室308内の担体が配置される周囲温度または周囲温湿度を、周囲温度または周囲温湿度装置により、所定に設定するとともに、複数のローラー306を連続的に回転させておく。
この場合、周囲温度が雪片生成にとって十分に低温sであれば、湿度管理は不要であるが、周囲温度が雪片生成にとって高すぎる場合には、温度とともに湿度を管理する。
回転数は、たとえば、10RPMである。
次いで、リーマ式製氷機22により、氷片を製造し、砕氷機26により、氷片を破砕し、氷粒を生成し、雪供給管40を通じて拡散装置34に圧送し、拡散プレート74と協働して、雪粒をゴムローラー306の上面320に向けて下方に拡散する(図9のA参照)。
次いで、拡散装置により拡散した雪粒が、複数のローラー306の上部に積もる。
次いで、積もった雪粒は、隣接するローラー306間の最狭部304において、圧密化されることにより、多数の雪粒同士が付着して、不定形だが、たとえば3mm辺から10mm辺に雪片化される。すなわち、最狭部304において、隣接するローラー306の一方の凹部と他方の凸部とにより、雪粒同士を圧密化するようにしている。
【0040】
次いで、隣接するローラー306間において、1つおきに、下方への送り出しが行われ、生成された雪片は、ローラー306の回転により下方に送り出され、そのまま下方に落下し、降雪を模擬し、試験体である車両Vの上部に積雪する(図9のB参照)。
なお、複数のローラー306による雪片の生成段階と、拡散装置34による雪粒の拡散段階とは、バッチ的に行ってもよい。すなわち、拡散装置による雪粒の拡散する際、駆動ローラー306を停止しておき、複数のローラー306を回転しない状態としておき、それにより、拡散する雪粒が複数のローラー306の上部に積雪する。次いで、所望高さまで積雪した段階で、駆動ローラー306を駆動し、複数のローラー306を回転させ、複数のローラー306の上部の積雪層がなくなるまで、雪片を生成して、降雪を模擬してもよい。
【0041】
以上の構成を有する雪片の生成方法によれば、造雪した雪粒をそのまま利用せずに、担体が配置される周囲温度または周囲温湿度を所定に設定したうえで、予め造雪された雪粒を担体に向かって搬送し、搬送された雪粒を担体の表面で捕捉して、雪粒同士を担体表面上で付着成長させることにより、雪片を生成し、生成した雪片を担体表面から剥離することにより、造雪した雪粒の雪片化を通じて、たとえば、担体表面から剥離する雪片を降雪させる場合において、降雪する雪粒の大きさを変えたり、造雪工程と降雪工程とを分離することにより、造雪環境と異なる環境(温度条件、湿度条件)で降雪させ、降雪中に湿雪化することも可能であり、総じて、雪質を所望に変えることが可能である。
また、造雪工程と降雪工程とを分離することが可能であるので、造雪工程において造雪した人工雪をいったん貯雪し、試験を行う際、貯雪中の雪を搬送して、降雪に利用することが可能である。
【0042】
以下に、本発明の第2実施形態について、図14なしし図15を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本発明の第2実施形態ないし第4実施形態の特徴は、共通に、造雪された雪粒を利用して雪片を生成する場合の雪粒を担持する担体手段の態様、担体手段への雪粒の捕捉の態様、および雪粒を担体手段に向かって拡散する場合の態様にある。
本実施形態の担体手段は、表面に雪粒が付着成長可能なように所定メッシュの金網318から構成され、試験室308内の上方において、試験室308を仕切るように配置され、剥離手段は、雪粒が搬送される側の金網318の表面を摺動可能なブラシ状に構成される。
より詳細には、金網318は、試験室308の上部において、天井面329に平行に水平に配置され、メッシュが2通り形成され、一方のメッシュは目の粗いメッシュ、他方のメッシュは目の細かいメッシュであり、金網318の上面320に向かって下方に拡散される雪粒が、金網318の上面320に捕捉され、上面320において、雪粒同士が付着して、雪片を形成する。形成された雪片が、後に説明する剥離手段により、上面320から剥離され、下方に落下して、降雪を模擬する観点から、メッシュの詰まりを防止するように、各メッシュサイズを決定すればよい。なお、変形例として、試験内容により要求される雪片の大きさが変わることに対処可能なように、メッシュを構成する金網318の各バー321を水平方向に可動としてもよい。
図15に示すように、剥離手段は、金網318の上方に配置された複数のプレート状ブラシ324であり、各プレート状ブラシ324は、プレート面326を鉛直方向に向けて、下端縁328が金網318の上面320に接するように配置される。金網318の一方向に続く複数のメッシュに対応して、複数のプレート状ブラシ324が、金網318のバー322と平行に延びる支持バー322により固定支持され、ブラシの組をなす。各組のプレート状ブラシは、金網318の一方向に続く複数のメッシュに対して、1つ置きに配置され、一方向と直交する向きに隣接する組のプレート状ブラシは、金網318の一方向にメッシュ1つ分オフセット配置され、全体として、千鳥状に配置される。各組のプレート状ブラシ324は、支持バー322ごと水平方向に移動可能とされ、それにより、プレート状ブラシ324の下端縁328が金網318の上面320上を摺動し、それにより、金網318の上面320に生成された雪片を金網318の上面320から剥離し、以って下方に落下させ、降雪を模擬するようにしている。
【0043】
以下に、本発明の第3実施形態について、図16を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本実施形態の特徴は、雪片生成装置の担体手段の代替として、ブラインド構造332を利用する点にあり、担体手段が、それぞれ長手方向を中心に回転及び揺動可能に設けられた、複数の可撓性長尺板330により構成されるブラインド状をなす。この場合、ブラインド構造332に向かって雪粒を拡散させる方向は、上向きであり、雪粒同士が付着して雪片に成長すると(図16のE参照)、自重により自然落下して、降雪を模擬するようにしている。使用しない場合には、通常のブラインドと同様に、複数の可撓性長尺板330それぞれを長手方向を中心に、全体として平面状をなす位置まで回転させておけばよい。
なお、自重により自然落下の代替として、ブラインド構造332に対して従来既知の加振装置により振動を加え、自重により自然落下する前に、すなわち、雪片が比較的小さいうちに降雪させてもよく、この場合、雪粒が付着する可撓性長尺板330の表面の性状との関係において、加振力を調整することにより、ある程度、降雪する雪片の大きさを調整することが可能である。
【0044】
以下に、本発明の第4実施形態について、図17を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本発明の第4実施形態の特徴は、通気膜334により仕切られる試験室308の上スペースから通気膜334を介してエアを吸引する吸引手段が設けられ、それにより、雪粒を担体手段に向かって吸引捕捉する点にある。
【0045】
より詳細には、第1実施形態においては、担体手段をローラー306とし、担体手段に対する雪粒の拡散は下方に向けて行っていたのに対して、本実施形態においては、担体手段を可動式金網318とする一方、担体手段に対する雪粒の拡散は、可動式金網318の下面336に向けて上方に行っている点が異なり、さらに、可動式金網318と天井との間に、可動式金網318と平行に通気膜334を設け、通気膜334を介して可動式金網318の下面336から通気膜334に向けて吸引している点(図17のD参照)も異なる。
可動式金網318について、メッシュサイズは、生成する雪片の大きさに応じて決定すればよく、いずれにせよ、第1実施形態に比べて、可動式金網318によりその上方スペースと、降雪スペースである下方スペースとを仕切り、両スペース間で温度湿度が互いに独立に調整可能とするのは、困難である。
しかしながら、通気膜334を通じて、可動式金網318の下面336に向けて拡散される雪粒を積極的に吸引することにより、雪粒を効率的に下面336に捕捉し、以って雪粒同士の付着を通じて雪片を生成することが可能であるとともに、可動式金網318と通気膜334とで2層構造をなしているので、通気膜334のメッシュサイズ次第で、実質的に、上方スペースと下方スペースとを仕切ることが可能である。
【0046】
以下に、本発明の第5実施形態について、図18を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本実施形態の特徴は、担体手段が、複数の回転ベルト式通気膜338であり、担体手段に対する雪粒の拡散は、複数の回転ベルト式通気膜338に向けて上方に行っている点である。
より詳細には、複数の回転ベルト式通気膜338それぞれは、駆動ローラー306と、被駆動ローラー306と、両ローラー306の間で掛け渡された所定メッシュ数の無端状通気膜とを有する。複数の回転ベルト式通気膜338それぞれは、鉛直方向に配置され、互いに水平方向に所定隙間を介して配置されている。
このような構成により、雪粒が隣接する回転ベルト式通気膜338の隙間に向けて上方に拡散すると、回転ベルト式通気膜338の外表面340により捕捉され、そこで、雪粒同士が付着成長し、雪片化する。生成した雪片は、自重により落下して、降雪が模擬される。回転ベルト式通気膜338の回転数は、雪粒が雪片として成長し、落下するまでに要する時間を考慮して、決定すればよい。
【0047】
以下に、本発明の第6実施形態について、図20を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本発明の第6実施形態の特徴は、雪片を生成する回転ブラシ314群の下方には、回転ブラシ314群のブラシ先端に当たるように配置された巻取り式金網500が設けられる点にある。
【0048】
雪環境試験システムの雪片生成装置は、第1実施形態(図11)と同様であり、回転ブラシ314群により生成される雪片は、隣接する回転ブラシ314同士間で圧雪されることにより形成されることから、大きな塊状の雪片が生成されることがあり、巻取り式金網500は、このような大雪片がそのまま降雪しないようにするために設けられ、金網の材質および網径は、任意であるが、メッシュサイズは、大きな塊状の雪片がそのまま降雪しない観点から、大きな塊状の雪片の大きさより大きい、たとえば、5ミリないし8ミリである。
巻取り式金網500は、幅は回転ブラシ314群の軸方向長さより長く、回転ブラシ314群の一端の回転ブラシ314から他端の回転ブラシ314まで及ぶように設けられ、回転ブラシ314群の各回転ブラシ314に設けられるブラシの回転ブラシ314の中心からの長さは均一であるので、巻取り式金網500は、略水平向きに設置される。
【0049】
巻取り式金網500は、両端の回転ブラシ314それぞれに巻き取り部502を有し、いずれかに既知の回転モーター506が設けられ、回転モーター506の回転により水平向きに往復移動可能とされている。
巻取り式金網500は、回転ブラシ314群の回転中に、雪片を生成する間に水平向きに往復移動させる必要があり、巻取り式金網500の水平向きの移動速度は、回転ブラシ314の回転速度に応じて設定すればよいが、回転ブラシ314のブラシ先端の周速度より低く設定される。これにより、雪片が水平方向に移動している巻取り式金網500のメッシュを通過して、降雪するまでの時間を確保するようにしている。
【0050】
巻取り式金網500の下方には、ブラシの先端が上向きで巻取り式金網500の下面510に当たるように固定ブラシ504が設けられる。固定ブラシ504は、複数設けられ、各固定ブラシ504は、回転ブラシ314群の隣接する回転ブラシ314のブラシ同士が噛み合う位置、すなわち、雪片が生成される位置の下方に設けられるのが好ましい。これにより、巻取り式金網500の下面510に付着している雪片を固定ブラシ504により掻き取り、確実に降雪させるようにしている。
以上の構成によれば、回転ブラシ314群の回転中に、隣接する回転ブラシ314のブラシ同士が噛み合う位置で生成される雪片は、回転ブラシ314により下方に案内されることにより、水平方向に移動している巻取り式金網500の上面508が受け、巻取り式金網500は回転ブラシ314群のブラシ先端に当たることにより、はじかれ、それにより、巻取り式金網500の上面508の雪片は小片化され、巻取り式金網500のメッシュを通過して、降雪可能となる。その際、巻取り式金網500の下面510に付着する雪片は、固定ブラシ504により掻き取られ、確実に降雪させるようにしている。
なお、水平方向移動中に巻取り式金網500は、両端の回転ブラシ314のいずれかに巻き取られた場合には、回転モーター502の回転方向を逆転することにより、巻取り式金網500を水平方向逆向きに移動させればよく、このように、巻取り式金網500を水平方向に往復移動させればよい。
以上のように、雪片を生成する回転ブラシ314群の下方には、回転ブラシ314群のブラシ先端に当たるように配置された巻取り式金網500を設けることにより、巻取り式金網500を設けない場合に比べて、巻取り式金網500のメッシュに応じて、回転ブラシ314群と巻取り式金網500と協働して、より仕切り的な機能を奏することも可能である。
【0051】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、降雪を模擬する雪として、氷片を破砕することにより形成される人工雪であるものとして説明したが、それに限定されることなく、自然雪であったり、あるいは所定湿度および所定温度の冷風を利用して生成される人工結晶雪であってもよく、これらは湿雪でなくてもよい。
たとえば、本実施形態において、雪片を生成する態様として、雪粒を捕捉する担体手段として、第1実施形態ないし第5実施形態それぞれにおいて、複数のローラー、可動式金網、ブラインド構造、回転ベルト式通気膜を単一の担体手段としてそれぞれ利用するものとして説明したが、それに限定されることなく、たとえば、試験室内において、複数のローラーと可動式金網とを採用する領域を区分けする等、適宜、担体手段を任意に組み合わせて用いてもよい。
たとえば、本実施形態において、雪片を生成する態様として、第6実施形態において、回転ブラシ群のブラシ先端に当たるように配置された巻取り式金網を用いるものとして説明したが、それに限定されることなく、巻取り式金網のように移動式でなく、固定タイプで振動を加えて、巻取り式金網500の上面508の雪片を小雪片化するのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の第1実施形態に係る雪環境試験システムの全体概要図である。
図2】本発明の第1実施形態の雪環境試験システムの造雪部において用いるリーマ式製氷機の概略斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る雪粒の拡散装置の回転体を環境試験システムの雪供給管に設けた状態を拡大して示す切欠き斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る雪粒の拡散装置の回転体を示す斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る雪粒の拡散装置の回転体の回転軸線方向の断面図である。
図6図4中の矢印A方向より見た回転体の回転軸線方向の端面図である。
図7図4中の矢印B方向より見た回転体の回転軸線方向の端面図である。
図8図4に示した回転体を上流側から見た端面図である。
図9】本発明の第1実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置の概略図である。
図10】本発明の第1実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置のゴムローラーの詳細図である。
図11】本発明の第1実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置の変形例の概略図である。
図12】本発明の第1実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置の変形例の回転ブラシ付きローラーの詳細図である。
図13】本発明の第1実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置のさらなる変形例の概略図である。
図14】本発明の第2実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置の概略図である。
図15】本発明の第2実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置の担体手段の概略図である。
図16】本発明の第3実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置の概略図である。
図17】本発明の第4実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置の概略図である。
図18】本発明の第5実施形態の雪環境試験システムの雪片生成装置の概略図である。
図19】本発明の第1実施形態に係る拡散装置まわりの概要図である。
図20】本発明の第6実施形態に係る雪環境試験システムの雪片生成装置の概略図である。
【符号の説明】
【0053】
A 拡散装置により拡散する雪粒群
B 降雪する雪片群
C 金網上に積もる雪粒群
D 吸引される雪粒群
E ブラインド構造の表面上に形成される雪片群
V 車両
X 回転軸線
10 雪環境試験システム
22 リーマ式製氷機
34 拡散装置
40 雪供給管
105 上流側端面
106 下流側端面
107 下流側端面
110 回転体
114 圧送流路
116 流出開口
118 取り入れ口
120 流入開口
122 排出口
128 内周面
312 外周面
304 最狭部
306 駆動ローラー
306 被駆動ローラー
306 ゴムローラー
308 試験室
310 凹凸部
314 回転ブラシ
316 貫通穴
318 金網
320 上面
322 支持バー
322 バー
324 プレート状ブラシ
326 プレート面
328 下端縁
329 天井面
330 長尺板
332 ブラインド構造体
336 下面
338 回転ベルト式通気膜
340 外表面
500 巻き取り式金網
502 巻き取り部
504 固定ブラシ
506 回転モーター
508 上面
510 下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20