(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術に係るバイナリ発電システムでは、凝縮器が高温の状態でシステムを停止し、その後に再起動した場合に、ポンプのケーシング内でキャビテーションが発生するという問題がある。即ち、凝縮器が高温の状態でシステムを停止した場合には、作動媒体の循環停止により、圧力が急激に低下するのに対して、温度が高温であるために飽和状態となる。このため、凝縮器の下流に位置するポンプの吸込口部分で飽和状態になる。
【0006】
そして、ポンプの吸込口部分で作動媒体が飽和状態になった状態から、システムを再起動し、ポンプを駆動すると、吸込口部分が過熱状態になり、ケーシング内でキャビテーションが発生する。ポンプのケーシング内でキャビテーションが発生した場合には、システムの運転不良が発生し、また、ポンプの破損に繋がる場合もある。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、システムの再起動時におけるポンプ内でのキャビテーションの発生を抑制することができるバイナリ発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るバイナリ発電システムは、作動媒体循環路と、蒸発器と、膨張機と、エネルギ回収機と、凝縮器と、ポンプと、
制御部と、を備える。
【0009】
前記作動媒体循環路は、作動媒体が循環する経路である。
【0010】
前記蒸発器は、前記作動媒体循環路中に設けられ、回収熱エネルギにより作動媒体を蒸発させる機能を有する構成部材である。
【0011】
前記膨張機は、前記作動媒体循環路中における前記蒸発器の下流側に設けられ、前記蒸発器から送り出された前記作動媒体を膨張させる機能を有する構成部材である。
【0012】
前記エネルギ回収機は、前記膨張機で生成される運動エネルギを回収する機能を有する構成部材である。
【0013】
前記凝縮器は、前記作動媒体循環路中における前記膨張機の下流側に設けられ、前記膨張機から送り出された前記作動媒体を、冷却媒体との熱交換により凝縮する機能を有する構成部材である。
【0014】
前記ポンプは、前記作動媒体循環路中における前記凝縮器の下流側であって、前記蒸発器の上流側に設けられ、前記凝縮器から送り出された前記作動媒体を前記蒸発器へと送り出す機能を有する構成部材である。
【0015】
前記ポンプは、ケーシングと、回転軸と、羽根車と、を有する。
【0016】
前記ケーシングは、長手方向の端部に端壁を有する中空状をしている。
【0017】
前記回転軸は、前記長手方向に沿って軸芯が配され、前記端壁に軸支された状態で、前記ケーシング内に少なくとも一部が配され、回転駆動力を受けて回転する構成部材である。
【0018】
前記複数の羽根車は、前記長手方向に沿って並んだ状態で、前記回転軸に接合された構成部材である。
【0019】
そして、前記ポンプは、前記回転軸の前記軸芯が鉛直方向に対して交差する向きで配されている。
前記制御部は、該システムの停止に際して、前記作動媒体循環路における前記凝縮器と前記ポンプとの間において、飽和温度と、前記凝縮器出口部分での前記作動媒体の温度とに基づいて算出される過冷却度が、が所定の過冷却度以上の状態を維持して、前記ポンプを段階的又は漸次的に低下させ、停止させる。
【0020】
本態様に係るバイナリ発電システムでは、ポンプを、回転軸の軸芯が鉛直方向に対して交差する向きで配している。このため、本態様に係るバイナリ発電システムでは、回転軸の軸芯を鉛直方向に沿うようにポンプを配置している従来技術に対して、システム再起動時におけるポンプのケーシング内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0021】
即ち、回転軸の軸芯を鉛直方向に対して交差する向きでポンプを配置することにより、回転軸の軸芯を鉛直方向に沿うようにポンプを配置する場合に比べて、システム再起動時に、作動媒体をスムーズにケーシング内で流通させることができる。システムの停止中においても、作動媒体は凝縮器で冷却されており、冷却された作動媒体がポンプのケーシング内を流通することで、吸込口付近での飽和状態が解消される。よって、システム再起動時におけるポンプのケーシング内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0022】
従って、本態様に係るバイナリ発電システムでは、システムの再起動時におけるポンプのケーシング内でのキャビテーションの発生を抑制することで、作動媒体を確実に蒸発器側へと送り出すことができ、運転不良が発生するのを抑制することができる。
【0023】
また、上記のように、本態様に係るポンプでは、再起動時におけるキャビテーションの発生を抑制することができるので、ガス溜まりの発生を抑制することができる。このため、再起動におけるポンプの破損を確実に抑制することができる。即ち、本態様に係るバイナリ発電システムでは、回転軸の軸芯が鉛直方向に対して交差する向きにポンプを配置することにより、回転軸の軸芯を鉛直方向に沿う向きにポンプを配する場合に比べて、ポンプの立ち上げ時における作動媒体の流通がスムーズになされ、これにより早期にケーシング内が冷却される。よって、キャビテーションの発生を抑制することができ、ガス溜まりの発生も抑制することができるので、ガス溜まりに起因するポンプの破損を抑制することができる。
さらに、本態様に係るバイナリ発電システムでは、飽和温度と凝縮器出口部分での作動媒体の温度とに基づく過冷却度が、所定の過冷却度以上の状態を維持して、ポンプを段階的又は漸次的に低下させた上で停止させることとしているので、システム再起動時におけるキャビテーションの発生を抑制し、運転不良の発生を抑制することができる。
ここで、仮に凝縮器が高温の状態でポンプを停止した場合には、凝縮器の下流部における作動媒体の圧力が急激に低下するが、温度が高温であるために飽和状態となる。よって、ポンプの吸込口で作動媒体が飽和状態となる。この状態からシステム再起動した場合には、ポンプの吸込口が過熱状態になり、ポンプのケーシング内でキャビテーションが発生しやすくなる。
これに対して、本態様に係るバイナリ発電システムでは、凝縮器の出口部分において、上記のように、飽和温度と作動媒体の温度とから算出される過冷却度が、所定の過冷却度以上の状態を維持しながら、ポンプのモータ回転数を段階的又は漸次的に低下させて停止させることとしているので、システム停止時にポンプの吸込口で加熱状態になることを抑制でき、システム再起動時におけるポンプのケーシング内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0024】
従って、本態様に係るバイナリ発電システムでは、システム再起動時におけるポンプなどの故障の発生を抑制することができ、高い信頼性が長期に亘って維持される。
【0025】
本発明の別態様に係るバイナリ発電システムは、上記構成において、前記ポンプは、前記回転軸の前記軸芯が鉛直方向に対して75°〜90°の角度で配置されている。
【0026】
本態様に係るバイナリ発電システムでは、ポンプを、回転軸の軸芯が鉛直方向に対して75°〜90°の角度で配しているので、再起動時におけるポンプ内での作動媒体のキャビテーションの発生を抑制するのに効果的である。即ち、本態様に係るポンプは、略横向きに寝かせた状態(略水平状態)で配置され、ケーシング内における作動媒体の流通経路も略横向き(略水平状態)となる。
【0027】
よって、作動媒体の液面レベルが低く、システム停止時に必ずしもポンプ内が作動媒体で満たされていない状況にあっても、システム再起動時において、スムーズにポンプのケーシング内で作動媒体を流通させることができる。このため、上述のように、ポンプにおけるケーシング内でのキャビテーションの発生を抑制することができ、運転不良やポンプの破損を抑制することができる。
【0032】
本発明の別態様に係るバイナリ発電システムは、上記構成において、さらに、圧力検出部と、温度検出部と、冷却温度検出部と、を備える。
【0033】
前記圧力検出部は、前記作動媒体循環路における前記凝縮器と前記ポンプとの間
の部分に設けられ、当該部分における前記作動媒体の圧力を検出する検出部である。
【0034】
前記温度検出部は、前記作動媒体循環路における前記凝縮器と前記ポンプとの間
の部分に設けられ、当該部分における前記作動媒体の温度を検出する検出部である。
【0035】
前記冷却温度検出部は、前記凝縮器への前記冷却媒体の供給路に設けられ、当該部分における前記冷却媒体の温度を検出する検出部である。
【0036】
本態様に係る前記制御部は、次のステップを順に実行する。
【0037】
(検出情報受付ステップ)前記温度検出部からの温度情報と、前記圧力検出部からの圧力情報と、前記冷却温度検出部からの冷却温度情報と、を逐次受け付ける。
【0038】
(算出ステップ)前記圧力情報(取得した凝縮器出口部分での作動媒体の圧力)から飽和温度Tsを算出する。
【0039】
(判定ステップ)前記飽和温度Tsと、前記凝縮器出口部分での前記作動媒体の温度Tr1との差分である過冷却度(Ts−Tr1)が、所定の過冷却度a以上か否かを判定する。
【0040】
(回転数低減ステップ)前記判定ステップにおける判定が肯定的である場合に、前記ポンプの回転数を所定値低下させる。
【0041】
(冷却温度値比較ステップ)前記回転数低減ステップの実行前後の前記冷却温度情報(冷却媒体の温度)を比較する。
【0042】
そして、本態様
では、前記冷却温度値比較ステップにおいて、前記回転数低減ステップの実行後の前記冷却温度情報(冷却媒体の温度)が、前記回転数低減ステップの実行前の前記冷却温度情報(冷却媒体の温度)に比べて低いと判断
された場合に、前記回転数低減ステップ
と前記冷却温度値比較ステップ
とが繰り返して実行
される。
【0043】
本態様では、前記凝縮器出口部分での前記作動媒体の温度Tr1との差分である過冷却度(Ts−Tr1)が所定の過冷却度a以上の状態を維持して、前記ポンプを段階的又は漸次的に停止させるために、制御部が実行する具体的な制御ステップについて規定する。制御部が上記のようなステップを実行することにより、システム停止時にポンプの吸込口で加熱状態になることを抑制でき、システム再起動時におけるポンプ内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0044】
本発明の別態様に係るバイナリ発電システムは、上記構成において、前記凝縮器は、前記作動媒体循環路において、上流側に設けられた第1凝縮部と、下流側に設けられた第2凝縮部と、が直列接続されてなり、前記冷却温度検出部は、前記第2凝縮部に対する前記冷却媒体の供給路に設けられている。
【0045】
本態様に係るバイナリ発電システムでは、凝縮器を、直列接続されてなる第1凝縮部と第2凝縮部とで構成することとしている。即ち、本態様では、膨張機から送られてきた作動媒体を第1凝縮部と第2凝縮部との2段階で凝縮することとしている。
【0046】
よって、システム停止時における、ポンプでの作動媒体の過冷却度を一定以上に維持し易くなり、システム再起動時におけるポンプの吸込口部分での作動媒体の過冷却度がポンプの有効吸込みヘッド(NPSH;Net Positive Suction Head)以上になるように調整することができる。
【0047】
従って、本態様に係るバイナリ発電システムでは、さらに確実に、システムの再起動時におけるポンプ内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0048】
本発明の一態様に係るバイナリ発電システムの停止方法は、その対象となるバイナリ発電システムが、作動媒体循環路と、蒸発器と、膨張機と、エネルギ回収機と、凝縮器と、ポンプと、温度検出部と、圧力検出部と、冷却温度検出部と、を備える。
【0049】
前記作動媒体循環路は、作動媒体が循環する経路である。
【0050】
前記蒸発器は、前記作動媒体循環路中に設けられ、回収熱エネルギにより作動媒体を蒸発させる機能を有する構成部材である。
【0051】
前記膨張機は、前記作動媒体循環路中における前記蒸発器の下流側に設けられ、前記蒸発器から送り出された前記作動媒体を膨張させる機能を有する構成部材である。
【0052】
前記エネルギ回収機は、前記膨張機で生成される運動エネルギを回収する機能を有する構成部材である。
【0053】
前記凝縮器は、前記作動媒体循環路中における前記膨張機の下流側に設けられ、前記膨張機から送り出された前記作動媒体を、冷却媒体との熱交換により凝縮する機能を有する構成部材である。
【0054】
前記ポンプは、前記作動媒体循環路中における前記凝縮器の下流側であって、前記蒸発器の上流側に設けられ、前記凝縮器から送り出された前記作動媒体を前記蒸発器へと送り出す機能を有する構成部材である。
【0055】
前記圧力検出部は、前記作動媒体循環路における前記凝縮器と前記ポンプとの間に設けられ、当該部分における前記作動媒体の圧力を検出する検出部である。
【0056】
前記温度検出部は、前記作動媒体循環路における前記凝縮器と前記ポンプとの間に設けられ、当該部分における前記作動媒体の温度を検出する検出部である。
【0057】
前記冷却温度検出部は、前記凝縮器への前記冷却媒体の供給路に設けられ、当該部分における前記冷却媒体の温度を検出する検出部である。
【0058】
本態様に係るバイナリ発電システムの停止方法では、次のステップを順に実行する。
【0059】
(検出情報受付ステップ)前記温度検出部からの温度情報と、前記圧力検出部からの圧力情報と、前記冷却温度検出部からの冷却温度情報と、を逐次受け付ける。
【0060】
(算出ステップ)前記圧力情報(取得した凝縮器出口部分での作動媒体の圧力)から飽和温度Tsを算出する。
【0061】
(判定ステップ)前記飽和温度Tsと、前記凝縮器出口部分での前記作動媒体の温度Tr1との差分である過冷却度(Ts−Tr1)が、所定の過冷却度a以上か否かを判定する。
【0062】
(回転数低減ステップ)前記判定ステップにおける判定が肯定的である場合に、前記ポンプの回転数を所定値低下させる。
【0063】
(冷却温度値比較ステップ)前記回転数低減ステップの実行前後の前記冷却温度情報(冷却媒体の温度)を比較する。
【0064】
そして、本態様に係る前記制御部は、前記冷却温度値比較ステップにおいて、前記回転数低減ステップの実行後の前記冷却温度情報(冷却媒体の温度)が、前記回転数低減ステップの実行前の前記冷却温度情報(冷却媒体の温度)に比べて低いと判断した場合に、前記回転数低減ステップから前記冷却温度値比較ステップまでを繰り返して実行する。
【発明の効果】
【0065】
上記の各態様に係るバイナリ発電システム及びその停止方法では、システムの再起動時におけるポンプでのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下では、本発明の実施形態について、図面を用い説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0068】
[第1実施形態]
1.全体構成
本発明の第1実施形態に係るバイナリ発電システム1の全体構成について、
図1を用い説明する。
【0069】
図1に示すように、本実施形態に係るバイナリ発電システム1は、作動媒体循環路10と、予熱器11と、蒸発器12と、膨張機13と、凝縮器14と、ポンプ15と発電機16と、インバータ17と、コントローラ18と、を備える。
【0070】
作動媒体循環路10は、作動媒体が循環する経路である。作動媒体は、水よりも沸点が低く、常温で沸騰する媒体、例えば、代替フロン(HFC245fa等)や、アンモニアと水の混合液や、イソペンタンやイソブタンといった有機物質などを採用することができる。例えば、HFC245faの沸点は、15.3[℃]であり、常温で蒸発する媒体である。
【0071】
予熱器11及び蒸発器12は、ともに向流装置の原理を用いた熱交換器である。即ち、予熱器11及び蒸発器12では、蒸気供給路19を流れる蒸気あるいは温水に対して、対向する向きに作動媒体が送られ、作動媒体は、予熱器11で予熱された後、蒸発器で蒸発する。
【0072】
膨張機13は、作動媒体循環路10中における蒸発器12の下流側に設けられている。膨張機13では、蒸発器12から送られてきた作動媒体を膨張させる。詳細な図示を省略しているが、本実施形態では、膨張機13として、雄雌一対のスクリューロータを有する容積式のスクリュー膨張機を採用している。
【0073】
そして、膨張機13では、送られてきた気相状態の作動媒体の膨張エネルギにより一対のロータが回転駆動される。膨張機13からは、一対のスクリューロータの内の一方に接続された回転軸13aが延出されており、その端部が発電機16に接続されている。
【0074】
発電機16は、本実施形態に係るバイナリ発電システム1において、エネルギ回収機として設けられている。発電機16は、膨張機13の回転駆動力を受けて、電力を生成する。これにより、供給された蒸気の熱エネルギの回収がなされる。
【0075】
凝縮器14は、作動媒体循環路10中における膨張機13の下流側に設けられている。凝縮器14は、向流式の熱交換器であって、膨張機13から送られてくる気相状態の作動媒体と、冷却媒体循環路20を送られてくる冷却媒体(例えば、冷却水)とが向流方向に流れることで熱交換がなされる。凝縮器14では、送られてきた作動媒体が上記のように冷却されることにより凝縮され、液相状態となってポンプ15へと送られる。
【0076】
ポンプ15は、作動媒体循環路10中における凝縮器14の下流側であって、予熱器11の上流側に設けられている。ポンプ15の詳細な構成については後述するが、モータと、モータにより回転駆動される複数の羽根車を有する、所謂、多段渦巻きポンプが採用されている。ポンプ15に送られてきた作動媒体は、所定の圧力まで加圧されて予熱器11に送り出される。
【0077】
インバータ17は、ポンプ15のモータを可変速駆動するためのデバイスである。インバータ17は、ポンプ15のモータに供給する電力の周波数を変えることにより、モータの可変速を行う。
【0078】
コントローラ18は、入力情報に基づき、インバータ17に対してポンプ15の可変速に関する指令を出す。
【0079】
2.ポンプ15の構成及び配置形態
本実施形態に係るバイナリ発電システム1の構成の内、ポンプ15の構成及び配置形態について、
図2及び
図3を用い説明する。
図2(a)は、ポンプ15の構成及び配置形態を側面側から示す模式断面図であり、
図2(b)は、ポンプ15の構成及び配置形態を上面側から示す模式断面図である。また、
図3は、ポンプ15の構成及び配置形態を端面側から示す模式断面図である。
【0080】
図2(a)、(b)に示すように、ポンプ15は、ケーシング150と、回転軸151と、複数の羽根車152と、モータ153と、軸受154と、を備える。
【0081】
ケーシング150は、中空筒である側周壁150cと、長手方向の端部に端壁150dと端壁150eと、を有する。
図2(a)、(b)に示すように、ケーシング150は、長手方向(X方向)の寸法が、径方向(Y,Z方向)の寸法に比べて長い、長筒形状をしている。
【0082】
回転軸151は、その軸芯Ax
15がX方向(水平方向)に沿う状態で配されている。回転軸151は、X方向右側の端部がケーシング150の端壁150eを挿通して外方に延出されている。回転軸151におけるケーシング150の外方に延出されてなる端部は、駆動源としてのモータ153の駆動軸153aに連結されている。
【0083】
軸受154は、ケーシング150における端壁150eの外面側に接合され、軸芯Ax
15の水平姿勢(X方向に沿った姿勢)を維持した状態で回転軸151を軸支する。即ち、本実施形態では、回転軸151を端壁150e側の一端で軸支している。ただし、回転軸151を端壁150dと端壁150eとの両端で軸支することとしてもよい。
【0084】
なお、本実施形態に係るバイナリ発電システム1では、回転軸151の軸芯Ax
15が水平方向になるように、ポンプ15を配置することとしているが、回転軸151の軸芯Ax
15が鉛直方向(Z方向)に対して交差する状態に配置することとすればよい。例えば、鉛直方向(Z方向)に対して、回転軸151の軸芯Ax
15が75°以上90°未満の範囲内となるように配置することも可能である。
【0085】
複数の羽根車152は、回転軸151におけるケーシング150内に収容された部分に対して、X方向に並んだ状態で接合されている。複数の羽根車152は、モータ153の回転駆動により、回転軸151と一体に回転する。
【0086】
図2(b)に示すように、ケーシング150における側周壁150cには、吸込口150aと吐出口150bとが開口されている。吸込口150aは、側周壁150cにおけるX方向左側(端壁150d側)の部分に開口されている。吐出口150bは、側周壁150cにおけるX方向右側(端壁150e側)の部分に開口されている。
【0087】
図3に示すように、ポンプ15の吸込口150aには、吸込口配管21を介して配管22が接続されており、吐出口150b(
図3では、図示を省略。)には、吐出口配管23を介して配管24が接続されている。
【0088】
凝縮器14から送られてきた液相状態の作動媒体は、配管22の管内路22a及び吸込口配管21の管内路21aを通り、ポンプ15におけるケーシング150内に導入される。導入された作動媒体は、複数の羽根車152の回転に伴って加圧されながら、紙面奥向きに送られる。そして、加圧された作動媒体は、吐出口配管23及び配管24を通り、予熱器11へと送られる。
【0089】
ここで、
図2(a)に示すように、本実施形態に係るポンプ15は、回転軸151の軸芯Ax
15が水平方向(X方向)に沿うように横向きの姿勢で配置されている。このため、配管22の管内路22aにおいて、作動媒体の液面が
図3に示すレベルLev1のように低い場合にあっても、ポンプ15での加圧しながら吐出口150bへと送ることが十分に可能である。
【0090】
3.参考例に係るポンプ95の構成及び配置形態
上記のような構成及び配置形態を有するポンプ15との比較のため、参考例に係るポンプ95の構成及び配置形態について、
図4を用い説明する。
【0091】
図4に示すように、参考例に係るポンプ95も、ケーシング950と、回転軸951と、複数の羽根車952と、モータ953と、軸受954と、を備える。この内、回転軸951、複数の羽根車952、モータ953、及び軸受954については、上記で説明したポンプ15の回転軸151、複数の羽根車152、モータ153、及び軸受154と構成面での変更箇所はない。このため、これらについての説明を省略する。
【0092】
ポンプ95におけるケーシング950は、中空筒である側周壁950cと、長手方向の端部に端壁950dと端壁950eと、側周壁950cの一部に沿って設けられ、側周壁950cの一部とで吐出路950gを囲む外側壁950fと、を有する。
【0093】
ケーシング950における側周壁950cのZ方向下側(端壁950d側)には、吸込口950aが開口されており、側周壁950cのZ方向上側(端壁950e側)には、吐出口950bが開口されている。そして、ケーシング950における外側壁950fには、Z方向下側に外側吐出口950hが開口されている。
【0094】
図4に示すように、本参考例に係るポンプ95は、回転軸951の軸芯Ax
95がZ方向(鉛直方向)に沿うように、縦向きの姿勢で配置されている。このため、ケーシング950における吸込口950aは、Z方向下側に位置し、吐出口950bは、Z方向上側に位置する。
【0095】
なお、吸込口950aには、吸込口配管91を介して配管92が接続され、外側吐出口950hには、吐出口配管93を介して配管94が接続されている。
【0096】
凝縮器から送られてきた作動媒体は、配管92の管内路92aから吸込口配管91を通って吸込口950aからケーシング950内へと導入される。そして、導入された作動媒体は、複数の羽根車952の回転駆動によって、加圧されながらZ方向上側へと送られる。そして、加圧された作動媒体は、吐出口950bから吐出路950g及び外側吐出口950h、さらに吐出口配管93及び配管94を通り、予熱器へと送られる。
【0097】
4.効果
以下では、第1実施形態に係るバイナリ発電システム1が奏する効果について、
図4に示した参考例に係るポンプ95を備えるシステムを比較対象としながら説明する。
【0098】
4−1.第1実施形態
第1実施形態に係るバイナリ発電システム1では、
図2及び
図3を用い説明したように、ポンプ15の配置を、回転軸151の軸芯Ax
15が略水平方向となるように横向きの姿勢で配置している。このため、バイナリ発電システム1では、参考例に係るポンプ95のように、回転軸951の軸芯Ax
95を鉛直方向(Z方向)に沿うように縦向きの姿勢で配置している場合に比べて、バイナリ発電システム1の再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0099】
即ち、第1実施形態に係るバイナリ発電システム1では、ポンプ15を横向きの姿勢で配置することにより、縦向きの姿勢で配置する参考例の場合に比べて、作動媒体の液面がレベルLev1のように低い場合でも、システム再起動時に、作動媒体を吸込口150aから吐出口150bにスムーズに流通させることができる。
【0100】
これより、バイナリ発電システム1の停止中にも、凝縮器で冷却された作動媒体がポンプ15のケーシング150内にスムーズに導入されることで、吸込口150a付近での飽和状態が解消される。よって、第1実施形態に係るバイナリ発電システム1では、システム再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0101】
従って、バイナリ発電システム1では、システム再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生を抑制することができ、運転不良が発生するのを抑制することができる。
【0102】
また、上記のように、本実施形態に係るポンプ15では、システム再起動時に、スムーズに作動媒体をケーシング150内に流通させることができるので、ケーシング150内でのガス溜まりの発生を抑制することができる。
【0103】
これより、本実施形態に係るバイナリ発電システム1では、ガス溜まりの発生に起因するポンプの破損を抑制することができる。
【0104】
従って、第1実施形態に係るバイナリ発電システム1では、システム再起動時に伴うポンプ15の軸受154などの破損を抑制することができ、高い信頼性が長期に亘って維持される。
【0105】
4−2.参考例
一方、
図4を用い説明したように、参考例に係るポンプ95は、回転軸951の軸芯Ax
95が鉛直方向(Z方向)に沿うように縦向きの姿勢で配置されている。このため、ポンプ95の立ち上げ時を考慮して、ケーシング950内を作動媒体で満たしておこうとした場合には、配管92の管内路92aにおいて、作動媒体の液面が
図4に示すレベルLev2のように高い位置としておくことが必要となる。
【0106】
仮に、配管92の管内路92aにおける作動媒体の液面がレベルLev2よりも低い位置にあり、ケーシング950内を作動媒体で満たすことができない場合には、システム再起動時におけるポンプ95の立ち上げに際して、ケーシング950内でキャビテーションが発生する場合がある。ケーシング950内でキャビテーションが発生した場合には、ケーシング950内におけるZ方向上方部分(矢印Aで指し示す部分)にガス溜まりが発生する場合がある。
【0107】
このように、ケーシング950内におけるZ方向上方部分にガス溜まりが発生すると、回転軸951の回転に伴う発熱により、ガス溜まりが発生しているZ方向上方部分と端壁950eを挟んで表裏の関係にある軸受954などが熱により破損してしまうおそれ等がある。
【0108】
また、参考例に係るポンプ95を備えるバイナリ発電システムでは、ポンプ95の立ち上げ時にガス溜まりが発生する場合があるので、作動媒体が吐出口950bからスムーズに排出されず、運転不良を生じる場合も生じ得る。
【0109】
[第2実施形態]
1.全体構成
本発明の第2実施形態に係るバイナリ発電システム3の全体構成について、
図5を用い説明する。なお、
図5では、上記第1実施形態に係るバイナリ発電システム1と同様の構成に対しては、同一の符号を付し、以下での説明を省略する。
【0110】
図5に示すように、本実施形態に係るバイナリ発電システム3は、作動媒体循環路10と、予熱器11と、蒸発器12と、膨張機13と、凝縮器14と、ポンプ15と発電機16と、インバータ17と、コントローラ38と、を備える。また、本実施形態に係るバイナリ発電システム3は、圧力検出部31と、温度検出部32と、冷却温度検出部33と、を備えている。
【0111】
圧力検出部31は、作動媒体循環路10中における凝縮器14とポンプ15との間に設けられ、凝縮器14の出口部分における作動媒体の圧力を検出する検出部である。
【0112】
温度検出部32は、圧力検出部31と同様に、作動媒体循環路10中における凝縮器14とポンプ15との間に設けられており、凝縮器14の出口部分における作動媒体の温度を検出する検出部である。
【0113】
冷却温度検出部33は、凝縮器14に接続された冷却媒体循環路20における凝縮器14への供給口部分に設けられ、凝縮器14に供給される冷却媒体(例えば、冷却水)の温度を検出するセンサである。
【0114】
コントローラ38は、上記コントローラ18と同様に、インバータ17に信号を送出し、ポンプ15のモータ153の駆動を制御する。コントローラ38が上記第1実施形態に係るコントローラ18と異なる部分は、圧力検出部31、温度検出部32、及び冷却温度検出部33からの、圧力情報、温度情報、及び冷却温度情報を逐次受け付け、当該受け付けた情報をモータ153の駆動制御(停止制御)に用いる点にある。
【0115】
2.システム停止時にコントローラ38が実行する制御
本実施形態に係るバイナリ発電システム3のシステム停止時にコントローラ38が実行する制御について、
図6を用い説明する。
【0116】
図6に示すように、コントローラ38は、システムの停止に際して、先ず、作動媒体循環路10における凝縮器14の出口部分での作動媒体の圧力情報Pr1を圧力検出部31から取得し、温度情報Tr1を温度検出部32から取得する(ステップS1)。なお、コントローラ38による圧力情報Pr1及び温度情報Tr1の取得については、システムの停止に際してだけ実行することとしてもよいし、常時、実行することとしてもよい。また、コントローラ38による圧力情報Pr1及び温度情報Tr1の取得については、本実施形態において、逐次実行することとしている。
【0117】
次に、コントローラ38は、取得した圧力情報(凝縮器14出口部分での作動媒体の圧力)Pr1から飽和温度Tsを算出する(ステップS2)。そして、コントローラ38は、算出した飽和温度Tsと取得した温度情報(凝縮器14出口部分での作動媒体の温度)Tr1との差分である過冷却度(Ts−Tr1)を算出し、当該過冷却度(Ts−Tr1)が所定の(目標とする)過冷却度a[℃]以上か否かを判定する(ステップS3)。
【0118】
コントローラ38は、ステップS3において、(Ts−Tr1)<aであるとの判定を下した場合には(ステップS3:No)、ステップS1からステップS3を再度実行する。
【0119】
なお、ステップS3の判定における所定の過冷却度a[℃]は、例えば、1.0[℃]〜2.0[℃]の範囲内の値である。
【0120】
一方、飽和温度に対して、(Ts−Tr1)≧aであるとの判定を下した場合には(ステップS3:Yes)、コントローラ38は、凝縮器14に供給される冷却媒体の冷却温度情報(凝縮器14に供給される冷却媒体の温度)Tw1を冷却温度検出部33から取得する(ステップS4)。そして、コントローラ38は、取得した冷却温度情報Tw1をTw1(th)として一旦格納し(ステップS5)、インバータ17に対して、ポンプ15のモータ153に供給する電力のインバータ周波数を、所定値b[Hz]だけ低下するよう指示を出す(ステップS6)。これにより、ポンプ15のモータ153の回転数は、120×b/p(rpm)だけ低下する。なお、“p”は、モータ153の極数である。
【0121】
本実施形態では、上記所定値b[Hz]は、例えば、0.5〜1.0[Hz]の範囲内の値である。
【0122】
次に、コントローラ38は、インバータ周波数を下げた時点での、作動媒体循環路10における凝縮器14の出口部分での作動媒体の圧力情報Pr1と、温度情報Tr1と、を再度取得する(ステップS7)。コントローラ38は、取得した温度情報Tr1を用い、飽和温度Tsと取得した温度情報Tr1との差分である過冷却度(Ts−Tr1)を再度算出し、算出した過冷却度(Ts−Tr1)が所定の(目標とする)過冷却度a[℃]以上か否かの判定を実行する(ステップS8)。ステップS8において、(Ts−Tr1)≧aであるとの判定を下した場合には(ステップS8:Yes)、冷却媒体の冷却温度情報Tw1を取得し(ステップS9)、取得した冷却温度情報Tw1がステップS5で格納した冷却温度情報Tw1(th)、即ち、インバータ周波数を低下させる前の冷却温度情報Tw1に対して低下しているか否かの判定を実行する(ステップS10)。
【0123】
コントローラ38は、ステップS8及びステップS10の判定の何れかにおいて、“No”との判定を下した場合には、ステップS1に戻り制御を再度実行する。
【0124】
一方、コントローラ38は、ステップS8の判定が“Yes”であり、ステップS10の判定も“Yes”であるとの判定を下した場合には、次に、インバータ17のインバータ周波数が下限値未満であるか否かを判定する(ステップS11)。インバータ17のインバータ周波数が下限値未満であるとの判定を下した場合には(ステップS11:Yes)、コントローラ38は、ポンプ15におけるモータ153の駆動を停止する(ステップS12)。
【0125】
コントローラ38は、ステップS11において、インバータ周波数が下限値以上であるとの判定を下した場合には(ステップS11:No)、ステップS5からステップS11までのステップを繰り返して実行する。
【0126】
以上のように、本実施形態に係るコントローラ38は、取得した3つの情報(圧力情報Pr1、温度情報Tr1、冷却温度情報Tw1)に基づいて、過冷却度(Ts−Tr1)が所定の過冷却度a[℃]以上の状態を維持しながら、ポンプ15のモータ153の回転数を段階的に低下させ、停止させる。
【0127】
3.効果
本実施形態に係るバイナリ発電システム3では、コントローラ38が、
図6に示すような制御の実行により、飽和温度Tsと凝縮器14の出口部分での作動媒体の温度Tr1との差分である過冷却度(Ts−Tr1)が所定の過冷却度a[℃]以上の状態を維持して、凝縮器14の出口部分での作動媒体の圧力を低下させながらポンプ15のモータ153を段階的又は漸次的に低下させた上で停止させることとしているので、システム再起動時におけるポンプ15でのキャビテーションの発生を抑制し、運転不良の発生を抑制することができる。
【0128】
なお、上述のように、仮に凝縮器が高温の状態でポンプを急に停止した場合には、凝縮器の下流部における作動媒体の圧力が急激に低下するが、温度が高温であるために飽和状態となる。よって、ポンプの吸込口で作動媒体が飽和状態となる。この状態からシステム再起動した場合には、ポンプの吸込口が過熱状態になり、キャビテーションが発生しやすくなる。
【0129】
これに対して、本実施形態に係るバイナリ発電システム3では、ポンプ15におけるモータ153を、上記のように飽和温度Tsと凝縮器14の出口部分での作動媒体の温度Tr1との差分である過冷却度(Ts−Tr1)が所定の過冷却度a[℃]以上の状態を維持して、凝縮器14の出口部分での作動媒体の圧力を低下させながらポンプ15のモータ153を段階的又は漸次的に低下させて停止させることとしているので、システム停止時にポンプ15の吸込口150aで加熱状態になることを抑制でき、システム再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0130】
また、本実施形態に係るバイナリ発電システム3においても、上記第1実施形態と同様に、ポンプ15を横向きの姿勢で配置することにより、縦向きの姿勢で配置する参考例に比べて、作動媒体の液面がレベルLev1のように低い場合でも、システム再起動時に、作動媒体を吸込口150aから吐出口150bにスムーズに流すことができる。よって、本実施形態に係るバイナリ発電システム3でも、上記バイナリ発電システム1と同様に、システム再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0131】
従って、本実施形態に係るバイナリ発電システム3では、コントローラ38による上記のような制御の採用と、上記第1実施形態と同様のポンプ15の構成及び配置形態の採用と、によりシステムの再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生をより確実に抑制することができ、システムの運転不良やポンプ15の故障などをより確実に抑制することができる。
【0132】
[第3実施形態]
1.構成
本発明の第3実施形態に係るバイナリ発電システム5の全体構成について、
図7を用い説明する。なお、
図7では、上記第1実施形態及び上記第2実施形態に係るバイナリ発電システム1,3と同様の構成に対しては、同一の符号を付し、以下での重ねての説明を省略する。
【0133】
図7に示すように、本実施形態に係るバイナリ発電システム5は、作動媒体循環路50と、予熱器11と、蒸発器12と、膨張機13と、凝縮器54と、ポンプ15と発電機16と、インバータ17と、コントローラ58と、を備える。また、バイナリ発電システム5でも、作動媒体循環路50における凝縮器54の出口部分に設けられた圧力検出部51及び温度検出部52と、凝縮器54に供給される冷却媒体の温度を検出する冷却温度検出部53も備える。
【0134】
本実施形態に係るバイナリ発電システム5においても、圧力検出部51、温度検出部52、及び冷却温度検出部53の各機能は、上記第2実施形態に係るバイナリ発電システム3における圧力検出部31、温度検出部32、及び冷却温度検出部33と基本的に同じである。
【0135】
図7に示すように、本実施形態に係る凝縮器54は、作動媒体循環路50中において、直列接続された第1凝縮部541と第2凝縮部542とを備える。第1凝縮部541は、作動媒体循環路50における上流側に配置され、第2凝縮器542は、その下流側に配置されている。
【0136】
第1凝縮部541に対しては、冷却媒体循環路60を介して冷却媒体(例えば、冷却水)が供給され、第2凝縮部542に対しては、冷却媒体循環路61を介して冷却媒体(例えば、冷却水)が供給されるようになっている。
【0137】
本実施形態に係るバイナリ発電システム5においても、システムが停止している場合においても、冷却媒体により第1凝縮部541及び第2凝縮部542の作動媒体は冷却される。
【0138】
圧力検出部51及び温度検出部52は、作動媒体循環路50における第2凝縮部542の出口部分に設けられている。換言すると、本実施形態においても、圧力検出部
51及び
温度検出部
52は、作動媒体循環路50における凝縮器54の出口部分に設けられている。
【0139】
冷却温度検出部53は、作動媒体循環路50における下流側に位置する第2凝縮部542への冷却媒体循環路61に設けられており、第2凝縮部542に供給される冷却媒体の温度を検出する。
【0140】
コントローラ58は、上記第2実施形態と同様に、システムの停止時において、取得した3つの情報(圧力情報Pr1、温度情報Tr1、冷却温度情報Tw1)に基づいて、飽和温度Tsと凝縮器出口部分での作動媒体の温度Tr1との差分である過冷却度(Ts−Tr1)が所定の過冷却度a[℃]以上の状態を維持しながら、ポンプ15のモータ153の回転数を段階的に低下させ、停止させる。コントローラ58が実行する制御については、
図6に示した制御と同様である。
【0141】
2.効果
本実施形態に係るバイナリ発電システム5でも、上記第2実施形態と同様に、コントローラ58が、凝縮器54の出口部分において、作動媒体の温度Tr1に基づき算出される過冷却度(Ts−Tr1)が所定の過冷却度a[℃]以上の状態を維持しながら、ポンプ15のモータ153の回転数を段階的に低下させ、停止させることとしているので、システム再起動時におけるポンプ15でのキャビテーションの発生を抑制し、運転不良の発生を抑制することができる。
【0142】
また、本実施形態に係るバイナリ発電システム5においても、上記第1実施形態及び上記第2実施形態と同様に、ポンプ15を横向きに配置することにより、システム再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0143】
さらに、本実施形態に係るバイナリ発電システム5では、作動媒体循環路50において直列接続された第1凝縮部541と第2凝縮部542とで凝縮器54を構成することとしているので、ポンプ15に送られる作動媒体がより冷却可能な構成となっている。即ち、本実施形態に係るバイナリ発電システム5では、膨張機13から送られてきた作動媒体を第1凝縮部541と第2凝縮部542との2段階で凝縮することとしている。
【0144】
これより、システム停止時における、ポンプ15での作動媒体の過冷却度を一定以上に維持し易くなり、システム再起動時におけるポンプ15の吸込口150a部分での作動媒体の過冷却度がポンプ15の有効吸込みヘッド(NPSH)以上になるように調整することができる。
【0145】
よって、本実施形態では、凝縮器54における第2凝縮部542が過冷却器として機能し、飽和温度Tsと、凝縮器54の出口部分での作動媒体の温度Tr1とに基づき算出される過冷却度(Ts−Tr1)が所定の過冷却度a[℃]以上である状態を維持しながら、システム停止するのに優位である。
【0146】
従って、本実施形態に係るバイナリ発電システム
5では、上記第2実施形態と同様のコントローラ58によるシステム停止時における制御の採用と、上記第1実施形態及び上記第2実施形態と同様のポンプ15の構成及び配置形態の採用と、によりシステムの再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生をより確実に抑制することができ、システムの運転不良やポンプ15の故障などをより確実に抑制することができる。
【0147】
[変形例]
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、蒸気供給路19を介して蒸発器12に蒸気が供給される構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、蒸発器12に対して温水や排ガス等が供給される構成であってもよい。
【0148】
また、蒸発器12に対して、ある程度の温度を有するオイルなどが供給される構成とすることもできる。
【0149】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、作動媒体循環路10,50におけるポンプ15と膨張機13との間に、予熱器11と蒸発器
12とが設けられてなる構成としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、作動媒体循環路におけるポンプと膨張機との間に、蒸発器だけが設けられてなる構成を採用することもできる。
【0150】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、エネルギ回収機の一例として発電機16を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、回収された熱エネルギにより、気体や液体を圧縮する圧縮機を採用することもできる。
【0151】
また、上記第2実施形態及び上記第3実施形態では、ポンプ15におけるモータ153の回転数を低下させるために、インバータ周波数を低下させてゆくこととしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、インバータ周波数とともに、印加電圧を低下させる、所謂、可変電圧可変周波数(AVAF;Adjustable Voltage Adjustable Frequency)制御を採用することもできる。
【0152】
また、上記第2実施形態及び上記第3実施形態では、コントローラ38,58の制御に係るクロック周波数を小さくするにしたがって、ポンプ15におけるモータ153の回転数が漸次的に低下することになる。本発明は、ポンプにおけるモータの回転数が段階的に低下する形態、及び漸次的に低下する形態の両形態について技術的範囲に含む。
【0153】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態の各バイナリ発電システム1,3,5では、ポンプ15に配置について、回転軸151の軸芯Ax
15が水平方向になる形態を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。即ち、本発明では、ポンプ15における回転軸151の軸芯Ax
15が鉛直方向(Z方向)に対して交差する状態に配置すればよい。例えば、鉛直方向(Z方向)に対して、回転軸151の軸芯Ax
15が75°以上90°未満の範囲内となるように配置することも可能である。これにより、
図4に示す参考例のように、回転軸951の軸芯Ax
95が鉛直方向に沿う姿勢でポンプ95を配置する場合に比べて、再起動時におけるポンプ15のケーシング150内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0154】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、ポンプ15において、回転軸150に対して6つの羽根車152が接合されてなる形態を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。回転軸に対して接合される羽根車の数は、2つ〜5つであってもよいし、7つ以上であってもよい。
【0155】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、ポンプ15の駆動源としてモータ153を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関や、ガスタービンや、空圧や油圧で回転駆動するアクチュエータなどを採用することも可能である。また、必ずしもポンプの構成要素としてモータを具備する必要はない。外部の駆動源からの回転駆動力を受けてポンプを駆動することとしてもよい。
【0156】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、ポンプ15における回転軸151を一方で軸支する片持ち形態としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。両端で軸支する形態とすることもできる。
【0157】
また、上記第2実施形態及び上記第3実施形態では、ポンプ15の配置形態に加えて、コントローラ38,58による上記制御を実行することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、システムにおけるポンプとして
図4に示す参考例に係るポンプ95を採用することもできる。そして、その上で、コントローラが
図6に示すような制御を実行することで、システム再起動時におけるキャビテーションの発生を実質的に抑制することが可能な場合も考えられる。
【0158】
ただし、
図2から
図4を用い説明したように、ポンプ15における回転軸151の軸芯Ax
15が鉛直方向(Z方向)に対して交差する向きの姿勢で配置することにより、システム再起動時におけるキャビテーションの発生を抑制するという観点から優位である。
【0159】
また、上記第2実施形態や上記第3実施形態に係る制御を実行する場合には、ポンプとして遠心渦巻きポンプだけでなく、他の形式のポンプを採用することも可能である。例えば、歯車ポンプやベーンポンプ、あるいはねじポンプなどの容積式ポンプを用いることも可能である。
【0160】
また、上記第2実施形態及び上記第3実施形態では、圧力検出部31,51、温度検出部32,52、及び冷却温度検出部33,53を各1つ設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、それぞれ複数の検出部を設けて、それぞれの平均値を算出した上で、当該平均値を用いて上記制御を実行することとしてもよい。これにより、より高精度の制御を実行することができる。
【0161】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、予熱器11、蒸発器12、凝縮器14,54などの熱交換器として、交流型の熱交換器を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、並流型の熱交換器や直交流型の熱交換器などを採用することもできる。