特許第6763807号(P6763807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763807受動光学構成要素の製造方法および受動光学構成要素を備えるデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763807
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】受動光学構成要素の製造方法および受動光学構成要素を備えるデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20200917BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   G02B3/00 Z
   G02B3/00 A
   H01L27/146 D
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-42941(P2017-42941)
(22)【出願日】2017年3月7日
(62)【分割の表示】特願2014-520486(P2014-520486)の分割
【原出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-167533(P2017-167533A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年3月31日
【審判番号】不服2019-3979(P2019-3979/J1)
【審判請求日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】61/509,357
(32)【優先日】2011年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512195902
【氏名又は名称】ヘプタゴン・マイクロ・オプティクス・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HEPTAGON MICRO OPTICS PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラドマン,ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】ウェステンホーファー,ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】テサノビク,ボージャン
【合議体】
【審判長】 里村 利光
【審判官】 宮澤 浩
【審判官】 井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−90909(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055654(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0290435(US,A1)
【文献】 特開2010−204631(JP,A)
【文献】 特表2011−508253(JP,A)
【文献】 特開2011−97294(JP,A)
【文献】 特開2011−104811(JP,A)
【文献】 特開2005−72662(JP,A)
【文献】 特開2005−37884(JP,A)
【文献】 特開2009−86041(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140419(WO,A1)
【文献】 特開平4−234702(JP,A)
【文献】 特開2011−90263(JP,A)
【文献】 特開2011−84060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B 3/00-3/14 B29D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの受動光学構成要素と、少なくとも1つの能動光学構成要素とを備える光電子デバイスの製造方法であって、前記方法は、
a)少なくとも1つの阻止部と多数の透明素子とを備えるウェハを設けるステップを備え、
前記多数の透明素子の各々は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して透過性を有する1つ以上の材料でできており、前記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、前記特定のスペクトル範囲の光に対して透過性をもたない1つ以上の材料でできており、
c)前記少なくとも1つの受動光学構成要素を備える多数の別々の受動光学構成要素を備える、光学ウェハと呼ばれるウェハを製造するステップを備え、
ステップc)は、
c1)前記多数の透明素子の各々の上に、複製加工を用いて他の光学構造と分離した少なくとも1つの光学構造を生成することによって、前記多数の別々の受動光学構成要素を生成するステップを備え、これにより、前記光学構造の各々は、前記多数の透明素子のそれぞれの1つに割り当てられ、前記光学構造の各々は、対応する前記透明素子と同じまたはより小さい横方向長さを有し、
A) 前記多数の透明素子の各々の垂直方向の広がりは、前記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに等しく、前記少なくとも1つの阻止部は、前記透明素子とともに、固体板状形状を示し、前記透明素子の各々は、平坦な2つの対向する側面を有し、
および/または、
B) 前記透明素子の各々は、垂直方向に直交する2つの対向する平坦な面を有し、前記2つの対向する平坦な面は、前記垂直方向に沿って測定される前記少なくとも1つの阻止部の厚みに等しい距離に配置され
前記透明素子および前記受動光学構成要素の各々は、それぞれ、前記能動光学構成要素の各々に割り当てられ、
第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である、方法。
【請求項2】
d)前記ウェハを製造するステップを備え、
ステップd)は、
d1)前記透明素子が位置することになる場所に開口を有する、前記非透明材料でできた前駆体ウェハを設けるステップと、
d2)前記開口を前記透明材料のうちの少なくとも1つで少なくとも部分的に充填するステップとを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
e)前記光学ウェハと1以上のさらなるウェハとを備えるウェハ積層体を準備するステップと、
f)前記ウェハ積層体を切離すことによって、各々が前記多数の受動光学構成要素のうちの少なくとも1つを備える多数の別々のモジュールを得るステップとを備える、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの透明素子と少なくとも1つの阻止部とを備える光学部材を備える光電子デバイスであって、前記透明素子は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して透過性を有する1つ以上の材料でできており、前記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、前記特定のスペクトル範囲の光に対して透過性をもたない1つ以上の材料でできており、前記透明素子は、少なくとも1つの受動光学構成要素と、少なくとも1つの能動光学構成要素とを備え、前記受動光学構成要素は、互いに分離しており、前記受動光学構成要素の各々は、
垂直方向に直交する2つの対向する平坦な面を有する前記透明素子と、
れぞれの前記透明素子取り付けられる1以上の光学構造とを含み、前記光学構造の各々は、対応する前記透明素子と同じまたはより小さい横方向長さを有し、
前記光学構造は、互いに分離しており、
A’) 前記透明素子の垂直方向の広がりは、前記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに等しく、前記少なくとも1つの阻止部は、前記透明素子とともに、固体板状形状を示し、
および/または、
B’) 前記2つの対向する平坦な面は、前記垂直方向に沿って測定される前記少なくとも1つの阻止部の厚みに等しい距離に配置され
前記透明素子および前記受動光学構成要素の各々は、それぞれ、前記能動光学構成要素の各々に割り当てられ、
第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である、デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの阻止部、前記透明素子、および少なくとも1つの前記光学構造は、硬化性材料の硬化物でできている、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記光学構造の各々は、レンズ素子を備える、請求項4または5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記受動光学構成要素とスペーサ部材によって設けられる機械的止め具との間に明確に規定された垂直方向距離を設けるように構造化され構成されたスペーサ部材であるさらなる部材を備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記デバイスは手持ち式の通信装置である、請求項4からのいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学分野に関し、より具体的には光学構成要素および光電子構成要素の製造に関する。本発明は、受動光学構成要素およびこれらを備えるデバイス、ならびにそれらの製造に関する。本発明は、特許請求の範囲に係る方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
US2011/0043923 A1には、複製によって受動光学構成要素をいかに製造できるかについて記載されている。当該明細書には、例えば複製によってレンズを一体型の部品として形成することについて記載されている。
【0003】
US2011/0050979 A1には、機能素子を有する電気光学デバイスのための光学モジュールが開示されている。モジュールの製造の際、レンズ素子が透明な基板上に生成される。機能素子の性能の向上を確実にするために、EMCシールドが設けられている。例えば、基板は、その面のうちの1つの面上に、レンズ素子のためのアパーチャを有する、導電性の非透明材料からなる層を備え得る。ウェハスケールでの複数のこのようなモジュールの製造についてもUS2011/0050979 A1に開示されている。
【0004】
WO2005/083789 A2は、受動光学素子と能動光電子部品との組合せに関する。能動光学構成要素を備える光電子ウェハは(マイクロ)光学構造を備え、当該光学構造は能動光学構成要素に割当てられる。光学構造は、複製を用いて製造される。
【0005】
用語の定義
「能動光学構成要素」:光検知構成要素または発光構成要素。例えばフォトダイオード、画像センサ、LED、OLED、レーザチップ。
【0006】
「受動光学構成要素」:レンズ、プリズム、ミラーまたは光学システムなどの、屈折および/または回折および/または反射によって光を再方向付けする光学構成要素であって、光学システムは、恐らくは開口絞り、画像スクリーン、ホルダなどの機械的素子も備えるこのような光学構成要素の集まりである。
【0007】
「光電子モジュール」:少なくとも1つの能動光学構成要素および少なくとも1つの受動光学構成要素が含まれる構成要素。
【0008】
「複製」:所与の構造またはそのネガを再現する技術。例えばエッチング、エンボス加工、成形。
【0009】
「ウェハ」:実質的に円盤状または板状の要素であって、一方向(z方向または垂直方向)へのその広がりは、他の二方向(xおよびy方向または横方向)へのその広がりに対して小さい。通常、(非ブランク)ウェハ上では、複数の同様の構造または要素が、一般に長方形の格子上に配置または設けられている。ウェハは開口または孔を有していてもよく、ウェハはその横方向領域の主要な部分には材料が無い場合さえあり得る。多くの文脈においてはウェハは一般に半導体材料でできていると理解されるが、本特許出願においては、明らかにこれに限定されるものではない。したがって、ウェハは一般に例えば半導体材料、ポリマー材料、金属およびポリマーまたはポリマーおよびガラス材料を含む複合材料でできていてもよい。特に、本発明に関連して、熱硬化性または紫外線硬化性ポリマーなどの固めることが可能な材料が、関心を引き付けるウェハ材料である。
【0010】
「横方向」:「ウェハ」参照。
「垂直方向」:「ウェハ」参照。
【0011】
「光」:最も一般的には電磁放射。より特定的には、電磁スペクトルの赤外部、可視部または紫外部の電磁放射。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、受動光学構成要素を製造するための改良された方法および少なくとも1つのこのような受動光学構成要素を備えるデバイスを創出することである。より一般的には、少なくとも1つの光学部材と少なくとも1つの受動光学構成要素とをそれぞれ備えるデバイスおよびデバイスの製造方法がクレームされている。なお、上記デバイスおよび上記受動光学構成要素はそれぞれ、上記デバイスおよび上記受動光学構成要素自体とそれぞれ同一のものであり得る。
【0013】
本発明の別の目的は、比較的簡単なこのようなデバイスの製造方法を提供すること、および、対応するデバイスを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、特に少ない数の製造工程を有する、特に多数のこのようなデバイスを製造する方法を提供すること、および、対応するデバイスを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、特に効率的なこのようなデバイスの製造方法を提供すること、および、対応するデバイスを提供することである。特に、組立が特に効率的になる。
【0016】
本発明の別の目的は、特に費用効果の高いこのようなデバイスの製造方法を提供すること、および、対応するデバイスを提供することである。特に、組立が特に費用効果が高くなる。
【0017】
本発明の別の目的は、特に時間節約的なこのようなデバイスの製造方法を提供すること、および、対応するデバイスを提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、特に小さな外のり寸法のデバイスを提供すること、および、対応する製造方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、集積化のレベルが特に高いデバイスを提供すること、および、対応する製造方法を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、特に少ない数の構成部材からなるデバイスを提供すること、および、対応する製造方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、デバイスに含まれる個々の光学構成要素の相対的位置決めが特に正確なデバイスを提供すること、および、対応する製造方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、特に優れた光学特性を有するデバイスを提供すること、および、対応する製造方法を提供することである。
【0023】
さらなる目的は、以下の説明および実施例から明らかになる。
これらの目的のうちの少なくとも1つは、少なくとも一部は、特許請求の範囲に係るデバイスおよび方法によって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0024】
少なくとも1つの受動光学構成要素を備えるデバイスの製造方法は、
a)少なくとも1つの阻止部と多数の透明素子とを備えるウェハを設けるステップを備え、
上記多数の透明素子の各々は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して実質的に透過性を有する材料でできており、上記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、上記特定のスペクトル範囲の光に対して実質的に透過性をもたない材料でできている。
【0025】
これは、以下の本文から明らかになるように、多くの局面および用途およびデバイスにおいて有用であり得る。例えば、ウェハレベルでの受動光学構成要素の効率的な製造はこのように達成可能であり、特に受動光学構成要素(特に、以下にさらに記載される光学構造)の少なくとも一部は、通常は阻止部によって形成される周囲のウェハ部の垂直方向の広がりを越えて垂直に延びている。
【0026】
一般に、上記デバイスは上記ウェハの少なくとも一部を備える。
上記ウェハの典型的な横方向寸法は、少なくとも5cmまたは10cmであって、30cmまたは40cmまたはさらには50cmまでであり、典型的な垂直方向寸法は、少なくとも0.2mmまたは0.4mmまたはさらには1mmであって、6mmまたは10mmまたはさらには20mmまでである。
【0027】
通常、上記受動光学構成要素は、影響を及ぼすように、特に光を誘導するように設けられる。
【0028】
1つの実施例において、上記多数の透明素子の各々は、上記少なくとも1つの阻止部に横方向に隣接している。
【0029】
上記の実施例と組合せられてもよい1つの実施例において、上記少なくとも1つの阻止部が上記多数の透明素子の各々を横方向に取囲んでいる。
【0030】
上記の実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記少なくとも1つの阻止領域は、厳密に1つの非透明材料で実質的にできている。
【0031】
上記の実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記多数の透明素子の各々の垂直方向の広がりは、上記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに少なくともほぼ等しい。
【0032】
上記の実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記多数の透明素子の各々は、垂直方向に実質的に直交する、2つの対向する少なくともほぼ平坦な面を有する。
【0033】
上記の実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、当該方法は、
d)上記ウェハを製造するステップを備え、
ステップd)は、
d1)上記透明素子が位置することになる場所に開口を有する、実質的に上記非透明材料でできた前駆体ウェハを設けるステップと、
d2)上記開口を上記透明材料のうちの少なくとも1つで少なくとも部分的に充填するステップとを備える。
【0034】
これは、特に効率的な上記ウェハの製造方法であり得る。
上記の実施例を参照する1つの実施例において、ステップd2)の間、上記透明材料は液体状態または粘性状態にあり、ステップd2)に続いて、
d3)上記透明材料を固めるステップ
が行われる。特に、上記固めるステップは硬化を含む。
【0035】
ステップd1)およびd2)を備える上記2つの実施例の一方または両方を参照する1つの実施例において、ステップd2)はディスペンサを用いて行われる。本明細書において、上記開口のうちの1つまたはいくつかは、一度に充填可能である。
【0036】
ディスペンサの使用の代替手段は、例えばスクリーン印刷プロセスにおいて用いられるようなスキージプロセスの使用である。
【0037】
ステップd1)およびd2)を備える上記の実施例のうちの1つ以上を参照する1つの実施例において、当該方法は、複製を用いて上記前駆体ウェハを製造するステップを備える。これは非常に効率的であり得る。固めるステップ、例えば硬化ステップが上記複製中に行われる場合、これはむしろ加熱によってなされる。なぜなら、阻止部の非透明材料の非透過性が、多くの場合、放射線硬化を達成するために用いられるであろう放射線の非透過性を伴う可能性があるためである。
【0038】
複製の代替手段は、孔あけもしくはエッチングによる上記開口の作製、または、成形を用いた前駆体ウェハの製造である。成形が用いられる場合、デュロプラスチック(duroplastic)射出成形が、さまざまな用途に特に適した方法であり得る。
【0039】
上記の実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、当該方法は、
c)上記少なくとも1つの受動光学構成要素を備える多数の受動光学構成要素を備える、光学ウェハと呼ばれるウェハを製造するステップを備え、
ステップc)は、
c1)上記多数の透明素子の各々の上に少なくとも1つの光学構造を生成することによって上記多数の受動光学構成要素を生成するステップを備える。
【0040】
通常、上記少なくとも1つの光学構造は、影響を及ぼすように、特に光を誘導するように、より特定的には光を再方向付けするように設けられる。
【0041】
上記デバイスが上記光学ウェハであるかもしくは上記光学ウェハを備える、またはその一部を備えると規定することができる。
【0042】
(ステップc)およびc1)を備える)上記の実施例を参照する1つの実施例において、上記少なくとも1つの光学構造は、少なくとも1つのレンズ素子を備える。
【0043】
これは、典型的な適用例である。上記レンズ素子は通常はレンズであり、当該レンズは、上記透明素子のうちの少なくとも1つをさらに備える複合レンズの構成部材である。
【0044】
レンズ素子自体および上記の複合レンズは、屈折および/または回折に基づいて動作し得る。
【0045】
レンズ素子の代わりに(またはそれに加えて)、プリズム素子などの他の素子が光学構造に含まれていてもよい。そして、コーティングされた素子、例えば反射コーティングで
コーティングされた、ミラー素子としての役割を果たす透明部も好適であり得る。
【0046】
ステップc)およびc1)を備える上記の実施例のうちの1つ以上を参照する1つの実施例において、(ステップc1)に記載した)上記光学構造を生成する上記ステップは、複製を用いて行われる。これは、非常に効率的かつ正確な上記光学構造の生成方法である。
【0047】
通常、上記複製に用いられる複製材料は、(少なくとも複製材料が固まった状態にある時)上記特定のスペクトル範囲の光に対して実質的に透過性を有する。多くの用途に適した複製を行う方法は、エンボス加工を含む。
【0048】
上記の実施例を参照する1つの実施例において、複製を用いて上記光学構造を生成する上記ステップは、
r1)複製材料を上記多数の透明素子の各々に塗布するステップと、
r2)構造化面を上記複製材料に複製するステップと、
r3)上記複製材料を固めるステップと、
r4)上記構造化面を除去するステップとを備える。
【0049】
通常、ステップr1)〜r4)は、引用された順序でまたはr2、r1、r3、r4の順序で、後に行われる。
【0050】
複製材料は、紫外線放射または加熱を用いて固めることが可能な材料、一般に硬化性の材料、特にそれぞれ固めることが可能でありかつ硬化性の材料である。好適な複製材料は、例えばエポキシ樹脂などのポリマーであり得る。
【0051】
複製を用いて上記光学構造を生成する上記ステップは、全ての上記光学構造に対して1回の複製プロセスで同時に行われると規定することができる。しかし、複製を用いて上記光学構造を生成する上記ステップは、多数の複製プロセス、一般に上記光学構造の各々に対して1回の複製プロセスであるが、恐らくは全ての上記光学構造の一部に対して1回の単一の複製プロセスを後に行うことによって行われると規定することもできる。
【0052】
ステップr1)〜r4)を備える上記の実施例を参照する1つの実施例において、ステップr2)に記載した上記複製は、位置合わせされた態様で、より具体的には上記構造化面が、上記多数の透明素子のうちの少なくとも1つに対して、明確に規定された態様で位置合わせされるように、行われる。
【0053】
ステップc)およびc1)を備える上記の実施例のうちの1つ以上を参照する1つの実施例において、当該方法は、
e)上記光学ウェハと少なくとも1つのさらなるウェハとを備えるウェハ積層体を準備するステップと、
f)上記ウェハ積層体を切離すことによって、各々が上記多数の受動光学構成要素のうちの少なくとも1つを備える多数の別々のモジュールを得るステップとを備える。
【0054】
(ステップe)およびf)を備える)上記の実施例を参照する1つの実施例において、ステップe)は、例えば熱硬化性エポキシ樹脂を用いて、例えば接着によって上記ウェハ積層体のウェハを互いに対して固定する、特に接合するステップを備える。
【0055】
ステップe)およびf)を備える上記の実施例のうちの1つ以上を参照する1つの実施例において、ステップe)は、特に上記ウェハ積層体のウェハを互いに対して固定した時に上記ウェハ積層体のウェハが好適に位置合わせされるように上記ウェハ積層体のウェハ
を互いに対して位置合わせするステップを備える。
【0056】
ステップe)およびf)を備える上記の実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記さらなるウェハのうちの少なくとも1つは、多数の能動光学構成要素を備え、上記別々のモジュールは各々、上記多数の能動光学構成要素のうちの少なくとも1つを備える。本明細書において、通常は、上記透明素子および受動光学構成要素の各々は、それぞれ、上記多数の能動光学構成要素のうちの少なくとも1つに割当てられ、これは通常、それに応じて上記ウェハを位置合わせすることによって製造中になされる。
【0057】
ステップe)およびf)を備える上記の実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記さらなるウェハのうちの少なくとも1つは、上記受動光学構成要素とスペーサウェハによって設けられる機械的止め具との間に明確に規定された垂直方向距離を設けるように構造化され構成されたスペーサウェハである。
【0058】
上記デバイスが上記ウェハ積層体であるかもしくは上記ウェハ積層体を備える、またはその一部を備えると規定することができる。
【0059】
上記デバイスが上記モジュールのうちの1つもしくは少なくとも1つであるか、または、上記モジュールのうちの1つもしくは少なくとも1つを備えると規定することができる。
【0060】
上記の方法に加えて、本発明はデバイスも含む。
当該デバイスは、少なくとも1つの透明部と少なくとも1つの阻止部とを備える少なくとも1つの光学部材を備え、
上記少なくとも1つの透明部は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して実質的に透過性を有する1つ以上の材料でできており、上記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、上記特定のスペクトル範囲の光に対して実質的に透過性をもたない1つ以上の材料でできており、
上記透明部は、少なくとも1つの受動光学構成要素を備え、
上記少なくとも1つの受動光学構成要素は、透明素子と少なくとも1つの光学構造とを備え、上記透明素子は、垂直方向に実質的に直交しかつ上記透明素子に取付けられた2つの対向する少なくともほぼ平坦な面を有する。
【0061】
本発明は、本発明に係る対応する方法の特徴を有するデバイスを含み、逆に、本発明に係る対応するデバイスの特徴を有する方法も含む。
【0062】
当該デバイスの利点は基本的には対応する方法の利点に対応し、逆に、当該方法の利点は基本的には対応するデバイスの利点に対応する。
【0063】
1つの実施例において、上記透明素子は一体型の部品である。
上記の実施例と組合せられてもよい1つの実施例において、上記受動光学構成要素は一体型の部品ではない。それは、少なくとも2つの構成部材、通常は2つまたは3つの構成部材を備える。これらは、通常、上記透明素子および上記少なくとも1つの光学構造である。
【0064】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記2つの対向する少なくともほぼ平坦な面は、上記垂直方向に沿って測定される上記少なくとも1つの阻止部の厚みに少なくともほぼ等しい距離に配置される。
【0065】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記透明部の各々の各構成部材は1つの(単一の)透明材料でできており、これらは、上記透明部の各々の構成部材のうちの1つ以上と同一である場合もあれば、異なっている場合もある。
【0066】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記少なくとも1つの透明部は、上記少なくとも1つの受動光学構成要素と同一である。
【0067】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記少なくとも1つの光学構造を持たない上記光学部材は、概して平面的である。
【0068】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記少なくとも1つの光学構造を持たない上記光学部材は、概してブロック状または板状の形状を有する。
【0069】
当該デバイスが1つのこのような光学部材であると規定することができる。
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記少なくとも1つの阻止部は、固まった固めることが可能な材料、特に硬化した硬化性の材料でできている。
【0070】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記少なくとも1つの阻止部は複製を用いて製造される。代替的な方法は、ブランクウェハから出発して孔あけもしくはエッチングを用いるというもの、または、少なくとも1つの阻止部を製造するために成形を用いるというものであろう。
【0071】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記透明素子は、固まった固めることが可能な材料、特に硬化した硬化性の材料でできている。上記透明素子がディスペンシングを用いて製造される場合には、固まった固めることが可能なディスペンシング可能な材料が通常用いられる。上記透明素子がスキージプロセスを用いて製造される場合には、スキージプロセスにおいて適用可能な固まった固めることが可能な材料が通常用いられる。
【0072】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記少なくとも1つの光学構造は、固まった固めることが可能な材料、特に硬化した硬化性の材料でできている。
【0073】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、上記受動光学構成要素は、上記対向する面の各々に取付けられた少なくとも1つの光学構造を備え、特にそれは、対向する面につき厳密に1つの光学構造を備える。
【0074】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、当該デバイスは、上記少なくとも1つの光学部材が含まれる光電子モジュールを備える。
【0075】
上記の実施例を参照する1つの実施例において、上記光電子モジュールは少なくとも1つの能動光学構成要素を備え、特に上記光電子モジュール内で、上記少なくとも1つの能動光学構成要素および上記少なくとも1つの光学部材は互いに対して固定される。例えば、上記光電子モジュールは、パッケージングされた構成要素であり得る。
【0076】
最後に記載した2つの実施例の一方または両方を参照する1つの実施例において、上記デバイスは上記光電子モジュールである。
【0077】
上記光電子モジュールを備える上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、当該デバイスは、上記光電子モジュールが実装されるプリント回路基板を備える。特に、上記デバイスは電子デバイスである。
【0078】
上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、当該デバイスは、光学ウェハと呼ばれるウェハを備え、上記光学ウェハは多数の上記光学部材を備え、特に上記光学部材は(横方向に)互いに隣接して配置される。
【0079】
上記デバイスが上記光学ウェハであるか、または上記光学ウェハを備えると規定することができる。
【0080】
上記の実施例を参照する1つの実施例において、当該デバイスは、上記光学ウェハが含まれるウェハ積層体を備える。上記デバイスが上記ウェハ積層体であるか、または上記ウェハ積層体を備えると規定することができる。
【0081】
上記光電子モジュールを備える上記のデバイスの実施例のうちの1つ以上と組合せられてもよい1つの実施例において、当該デバイスは、多数の上記光電子モジュールが含まれるウェハ積層体を備え、特に上記光電子モジュールは(横方向に)互いに隣接して配置される。上記デバイスが上記ウェハ積層体であるか、または上記ウェハ積層体を備えると規定することができる。
【0082】
さらなる実施例および利点は、従属請求項および図面から明らかになる。
以下、例および含まれている図面を用いて本発明についてより詳細に説明する。
【0083】
図面で用いられている参照記号およびそれらの意味は、参照記号の一覧に要約されている。記載している実施例は例であるように意図されており、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】受動光学構成要素であるデバイスの断面の概略図である。
図2図1のデバイスの上面図の概略図である。
図3】製造工程の概略断面図である。
図4】製造工程の概略断面図である。
図5】製造工程の概略断面図である。
図6】光学ウェハであるデバイスの断面の概略図である。
図7】光学ウェハであるデバイスの断面の概略図である。
図8】製造工程を示す断面の概略図である。
図9】製造工程を示す断面の概略図である。
図10】断面図の詳細の概略図である。
図11】断面図の詳細の概略図である。
図12】電子デバイスであるデバイスを示す、光電子モジュールであるデバイスの断面の概略図である。
図13図12の多数のモジュールを製造するためのウェハ積層体を形成するためのウェハの断面図である。
図14図12の多数のモジュールを製造するためのウェハ積層体であるデバイスの断面図である。
図15】半完成品であるデバイスの断面の概略図である。
図16】半完成品であるデバイスの断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
発明の詳細な説明
図1は、受動光学構成要素Oであるデバイスの断面の図式化された概略図である。図2は、図1のデバイスの上面図の図式化された概略図である。受動光学構成要素Oは、光学部材Oとも呼ぶことができ、そのように呼ぶことにする。
【0086】
x方向とともに垂直(z)方向が図1に示されている。図2に示される方向(x‐y平面における方向)を横方向と呼ぶ。
【0087】
光学部材Oは、阻止部bと、2つの透明部tとを備える。実際、光学部材Oは、阻止部bと2つの透明部tとからなっている。阻止部bは、特定のスペクトル範囲(波長または波長範囲)の光に対して実質的に透過性をもたない材料、一般にポリマー材料でできているのに対して、透明部tは、少なくとも上記特定のスペクトル範囲の光に対して実質的に透過性を有する材料でできている。このように、阻止部bは、透明部tの各々のためのアパーチャとして機能し、また透明部tを固定(または保持)する。そして、後でより明らかになるように(図12参照)、阻止領域bは、上記特定のスペクトル範囲の光を実質的に減衰させるまたは阻止することによって望ましくない光から保護するためのシールドとして機能し得る。
【0088】
透明部tの各々は少なくとも2つの部分を備え、図1および図2の例においては、それは、2つのレンズ素子5(またはより一般的には、光学構造5)および透明素子6の3つの部分である。これらはともにレンズ部材L(またはより一般的には、受動光学構成要素)を形成する。光学構造5は、阻止部bによって示される面から突き出ている。言い換えると、それらは、阻止部bによって示される平面を越えて垂直に延びている。光学構造5が少なくとも1つの頂点を有するレンズ素子(例えば、凹レンズ、または図1に示されるように凸レンズ)である場合、これらの頂点は光学部材Oの垂直方向断面の外側に位置する(図1)。
【0089】
阻止部bは、透明素子6とともに、(完璧に近い)固体板状形状を示す。光学構造5はそこから突き出ている。透明素子6の各々は、実質的に平坦な2つの対向する側面、すなわち実質的にx‐y平面に位置する2つの面を有している。
【0090】
光学部材Oの外形は概して板状または円盤状であり、長方形の側壁を有している。
特に興味深いのは、光学部材Oおよび本発明に係る他のデバイスの製造可能性である。特に、ウェハレベルでの製造が可能である。これについては、図3図14を参照して説明する。
【0091】
図3図7は、製造工程の図式化された概略断面図である。図3は、多数の孔または開口11を有する、非透明材料でできた前駆体ウェハ8を概略的に示す。一般に、これらのうちの1つ以上が長方形の格子上に配置される。製造すべき図1および図2の光学部材Oが2つの透明部tを備えるので、これら2つが長方形の格子上に配置される。
【0092】
前駆体ウェハ8は、例えばエンボス加工または成形を用いて複製によって製造可能である。または、ブランクウェハは、孔あけまたはエッチングによって開口11を備えることができる。
【0093】
なお、前駆体ウェハ8の開口11の形状は、当然のことながら、図1図3に示される円筒形状とは異なっていてもよい。孔11は垂直軸を有する角柱である必要はなく、横方
向断面は円形である必要はない。例えば、楕円形状が可能であり、横方向断面における形状は垂直方向に沿ってさまざまであってもよく、横方向断面において孔11によって示される領域は垂直方向に沿ってさまざまであってもよい。
【0094】
次のステップ(図4参照)において、透明素子6は、開口11を好適な透明材料Tで充填することによって形成される。充填中、透明材料T、一般にポリマーは、液体または粘性である。スクリーン印刷から公知のものに似たスキージプロセスを用いることができ、または、例えば半導体産業から公知でありアンダーフィルのために用いられるようなディスペンサを用いることができる。ディスペンシングは1つずつ行うことができ、または、例えば透明材料Tを出力するいくつかの中空針を用いることによっていくつかの開口が同時に充填される。
【0095】
充填中、前駆体ウェハ8は、例えばポリジメチルシロキサンなどのシリコーンでできた支持層12上に位置する。支持層12は、機械的安定性のために剛性の支持基板13、例えばガラス板によって支持されている。
【0096】
透明材料Tの充填中、材料Tに気泡または空洞が形成されないように注意しなければならない。なぜなら、透明素子6がその構成部材であるために、これによって、生成すべき受動光学構成要素Lの光学特性が劣化する可能性があるからである。例えば材料Tを出力する中空針を前駆体ウェハ8および下にある支持層12によって形成される端縁付近に好適に誘導することによって、ウェハ材料の湿潤がこのような端縁からまたはこのような端縁付近の場所で始まるように、例えばディスペンシングを行うことができる。これは図8および図9に視覚化されており、図8および図9はこの製造工程を示すための断面の図式化された概略図である。前駆体ウェハ8の材料および支持層1の材料のうち、関連する材料の特性、より特定的には透明材料Tの表面張力によって、孔11に充填されている間に材料Tによって示される形状は、さまざまであり得て、恐らくは図8および図9にそれぞれ概略的に示されているものと類似している。破線は、充填される材料Tの量の増加に伴う形状の時間的進化を示しており、図8および図9は、さまざまな湿潤角度に対するさまざまな挙動を示している。
【0097】
充填は、十分な材料Tが充填されると中止される。次の段階に移る前に、充填された透明材料Tは、例えば熱または紫外線放射を用いて、例えばそれを硬化させることによって固められる。そのようにして得られた透明素子は、2つの(ほぼ)完璧に平面的な側面を有し、特にそれらの面は前駆体ウェハ8の周囲(阻止)部と共通の平面を(ほぼ)完璧に形成する。しかし、恐らくは、スキージを用いてもしくはディスペンシングによって達成されるかまたは異なったように達成される充填は、それほど完璧ではない可能性がある。その例が図10および図11に示されており、図10および図11は断面図の詳細の図式化された概略図である。例えば、図10に示されるように凹面が形成されてもよく、または図11に示されるように凸面が形成されてもよい。凸面の場合、次の製造工程を続ける前に研磨ステップを設けることが有利であり得る。研磨によって、突出部を少なくとも部分的に取外すことを実現することができる。また、研磨により、溢れた透明材料、すなわち充填中に所望の場所に堆積されなかった材料、例えば透明素子上に堆積されなかったが例えばわずかにそれに隣接して堆積された材料を除去することができる。
【0098】
代替的に、仕上げステップを伴うかまたは仕上げステップを伴わない異なる態様での透明素子6の形成を達成することもできる。支持層12によって、ウェハのその側に透明材料Tからなるいくぶん平面的な面を確保することが可能であり得るが、これを達成する他の方法も用いられてもよい。
【0099】
開口11の各々が適量の固まった透明材料Tを含む場合、光学構造5はそこに設けられ
る(図5および図6参照)。これは、例えばWO2005/083789 A2またはUS2011/0050979 A1に記載されている当該技術分野において公知の方法において、例えば複製によって達成可能である。例えば、生成すべき光学構造5のネガを示す構造化面を有する型に好適な量の複製材料が供給され、次いで、構造化面を有する型をウェハの方に移動させ、その結果、複製材料を透明素子6と適切に接触させる。その後、例えば加熱または(紫外線などの)光による照射によって複製材料を固め、例えば硬化させ、型を除去する。(複製による、または、異なった態様での)光学構造5の形成は、一度に1つずつもしくはいくつか(しかしウェハの一方の面上の全てのうちの一部のみ)について達成されてもよく、またはウェハの一方の面上の全てについて同時に達成されてもよい。
【0100】
光学構造5は、ウェハの一方の面または両方の面に形成可能である(図5および図6参照)。光学構造5の横方向の広がりは、透明素子6の横方向の広がりよりも大きい場合もあれば小さい場合もあり、または図5および図6に示されるように実質的に同一である場合もある。光学構造5は、屈折および/または回折レンズ素子にせよプリズム素子などにせよ、事実上任意の形状のレンズ素子であり得る。多くの用途において、レンズ素子が好適な選択肢である。
【0101】
そのようにして得られた光学ウェハOW(図6参照)は、デバイス自体であり得て、例えばさらなる製品を生成するために使用可能である。
【0102】
例えばダイシングによって、このような光学ウェハOWを、図1および図2に示されるもののような多数の光学部材に切離すこともできる。光学ウェハOWであるデバイスの断面の図式化された概略図を示す図7において、細い破線の長方形は、切離しを行うことができる場所を示している。
【0103】
図12は、電子デバイス10であるデバイスも示す、光電子モジュール1であるデバイスの断面の図式化された概略図であり、電子デバイス10のプリント回路基板9上に実装されたこのような光電子モジュール1を備える。電子デバイス10は、例えばスマートフォンなどの手持ち式の電子通信装置、または、フォトカメラもしくはビデオカメラなどの写真装置であり得る。
【0104】
光電子モジュール1は、図1および図2に示される光学部材Oを備え、検出器D(例えばフォトダイオード)および発光体E(例えば発光ダイオード)などの少なくとも1つの能動光学構成要素も備える。能動光学構成要素D,Eは、はんだボール7を備える基板P上に実装される。とりわけ能動光学構成要素D,Eと受動光学構成要素Lとの間に好適な距離を確保するために、基板Pと光学部材Oとの間に、開口4を有する分離部材S(またはスペーサ部材S)が配置されている。その上に、バッフルとして機能する、透明領域3を有するバッフル部材Bが配置されている。
【0105】
上記基板P、上記光学部材O、上記バッフル部材Bおよび上記分離部材Sは、概してブロック状または板状の形状を有する(少なくとも上記分離部材Sおよび上記バッフル部材Bは、各々少なくとも1つの孔を有する)。このように、特に優れた製造可能性を実現することができる。
【0106】
受動光学構成要素L、したがって透明材料Tおよび(材料Tと同一である場合もあれば、異なっている場合もある)光学構造5を構成する材料が透過性を有するが、阻止部bを構成する材料が透過性をもたない特定の波長範囲が存在する。
【0107】
例えば光電子モジュール1が近接センサである場合、発光体Eによって放出可能な光の
波長範囲と光検出器Dによって検出可能な光の波長範囲との重複波長範囲が存在する。少なくともその重複波長範囲において阻止部bは透過性をもたず、少なくとも上記重複波長範囲の一部において透明部tは透過性を有する。なお、波長範囲という用語は、連続していることを暗に意味するものではない。上記重複波長範囲は、電磁スペクトルの赤外部、より具体的には近赤外部にあり得る。これは、近接センサに特に有用であり得る。
【0108】
図12に示される光電子モジュール1は、ウェハスケールで十分に製造可能である。本明細書においては、図6に示されるような光学ウェハを用いることができる。
【0109】
図13は、図12の多数のモジュール1を製造するためのウェハ積層体2(図14参照)を形成するためのウェハの概略断面図である。
【0110】
図12に示される多数のモジュール1を製造するのに、基板ウェハPW、スペーサウェハSW、(図6に示されるような)光学ウェハOWおよびバッフルウェハBWの4つのウェハで十分である。各ウェハは、対応するモジュール1(図12参照)に含まれる多数の対応する部材を備え、当該部材は、一般にウェハ切離しステップのために互いに小さな距離をあけて、通常長方形の格子上に配置されている。
【0111】
基板ウェハPWは、一方の側にはんだボール7を備え、他方の側にはんだ付けされた能動光学構成要素(EおよびD)を備える、標準的なPCB材料からなるプリント回路基板(printed circuit board:PCB)であり得る。後者は、標準的なピックアンドプレー
ス機を用いてピックアンドプレースによって基板ウェハPW上に設置されることができる。
【0112】
光学ウェハOWを製造する方法については上で説明済みである。
望ましくない光の検出から最大限保護するために、全てのウェハPW、SW、OW、BWは、当然のことながら透明部tおよび透明領域3を除いて、検出部材Dによって検出可能な光に対して実質的に透過性をもたない材料で実質的に作られることができる。
【0113】
ウェハSWおよびBW、ならびに恐らくはウェハOWの全てまたは一部も、複製によって生成可能である。前駆体ウェハ8または透明素子6を製造するためにも用いられることができる例示的な複製プロセスにおいて、構造化面を、液体材料、粘性材料または塑性変形可能な材料にエンボス加工し、次いで例えば紫外線放射または加熱を用いた硬化によって材料を固め、次いで構造化面を除去する。このようにして、構造化面のレプリカ(この場合はネガレプリカ)が得られる。複製に適した材料は、例えば固めることが可能な(より特定的には硬化性の)ポリマー材料または他の複製材料、すなわち固めるステップ(より特定的には硬化ステップ)において液体状態、粘性状態または塑性変形可能状態から固体状態に変換可能な材料である。複製は公知の技術であり、これに関するさらなる詳細については例えばWO2005/083789 A2またはUS2011/0050979
A1を参照されたい。
【0114】
図14は、図12の多数のモジュール1を製造するためのウェハ積層体2であるデバイスの概略断面図である。
【0115】
ウェハ積層体2を形成するために、ウェハBW、OW、SW、PWを位置合わせし、例えば熱硬化性エポキシ樹脂を用いて貼り合わせる。位置合わせするステップは、上記検出部材Dの各々が上記透明部tのうちの少なくとも1つに対して位置合わせされるように上記基板ウェハPWおよび上記光学ウェハOWを位置合わせするステップを備え、特に上記検出部材Dの各々は、上記透明部tの各々1つに同様に位置合わせされ、同様のことが発光体Eにも当てはまる。
【0116】
細い破線の長方形は、例えばダイシングソーによって切離しが行われる場所を示している。
【0117】
図3図7図13および図14は3つのモジュール1のための構成を示しているにすぎないが、通常1つのウェハ積層体の中に、各々横方向に、少なくとも10個のモジュール、それどころか少なくとも30個のモジュール、またはさらには50個以上のモジュールのための構成がある。
【0118】
なお、光電子モジュール1に含まれない光学部材Oを備えるデバイスについて考えることが可能である。
【0119】
なお、さらに、上記の態様で得られる受動光学構成要素Lは一体型の部品ではない。それらは、そこに取付けられた少なくとも2つ、通常2つまたは3つの構成部材、すなわち透明素子6および光学構造5を備える。しかし、透明素子6は通常は一体型の部品である。
【0120】
前駆体ウェハ8に透明素子6を設けることによって得られる半完成品(特定の見方では、本発明に係るデバイスでもあり得る)は、通常、ウェハを貫通する孔をもたない(または、少なくとも透明部tがある領域においてウェハを貫通する孔をもたない)平坦な円盤状ウェハである。
【0121】
半完成品は、それらの領域に浅い表面波形を事実上もたない場合もあれば、浅い表面波形のみを有する場合もあり、このような表面波形は、存在する場合には、通常凹状である(図10参照)。すなわち、このような表面波形は、少なくとも1つの阻止部bによって示されるウェハ面を越えて延びていない。恐らく形成される凸状メニスカスは、研磨によって例えば上記のように平坦化可能であり、その結果、ウェハ厚みに調整された平行な面を有する透明素子6が得られ、恐らくはウェハ厚みも調整(低減)することができる。
【0122】
しかし、代替的に、半完成品は、一方の面または両方の面に、特に透明部tがあるそれらの領域に、構造化面を有していてもよい。阻止部bには望ましい波形が存在し得る。特に、(記載した光学ウェハOWなどの)光学ウェハと(記載したスペーサウェハSWなどの)スペーサウェハとの組合せであるウェハ、すなわち「結合光学ウェハ」を設けることができる。したがって、その場合、スペーサウェハは任意であり、その特性および機能は、それに応じて構造化され構成される光学ウェハ(「結合光学ウェハ」)によって実現される。これは、例えばスペーサウェハSWとして上記したものと少なくとも1つの阻止部bとして上記したものとを一体型の部品として製造することによって達成可能である。対応する光学ウェハ(「結合光学ウェハ」)は、図14におけるウェハOWおよびSWを1つの単一の部品として見ると容易に視覚化可能である。好適な半完成品、すなわち「結合半完成品」から出発して、「結合光学ウェハ」は、例えばディスペンシングによって、例えば上記のように光学構造をその上に(「結合半完成品」の透明部上に)生成することによって得ることができる。
【0123】
「結合半完成品」の別の例(ow’として参照される)が図16に示されているのに対して、図3図7および図12図14に関連して説明したものにより密接に対応する半完成品owが図15に示されている。
【0124】
さらに、(記載した光学ウェハOWなどの)光学ウェハと(記載したバッフルウェハBWなどの)バッフルウェハとの組合せである光学ウェハ(「結合光学ウェハ」)を設けることができる。したがって、その場合、バッフルウェハは任意であり、その特性および機
能は、それに応じて構造化され構成される光学ウェハ(「結合光学ウェハ」)によって実現される。これは、例えばバッフルウェハBWとして上記したものと少なくとも1つの阻止部bとして上記したものとを一体型の部品として製造することによって達成可能である。対応する光学ウェハは、図14におけるウェハOWおよびBWを1つの単一の部品として見ると容易に視覚化可能である。好適な「結合半完成品」は、図16に示されるものと類似していてもよい。
【0125】
当然のことながら、例えば図14の実施例においてバッフルウェハBWおよびスペーサウェハSWを旧式化するように、光学ウェハ(「結合光学ウェハ」)の両面を構造化することもできる。
【0126】
(半完成品を得るために)透明素子6を形成するために片面または両面が構造化された前駆体ウェハに透明材料Tを充填することは、図4に示されるもの(および図16において支持層12によって示唆されるもの)と同様に達成可能であり、図16においては、「結合半完成品」ow’の構造化されていない側が支持層12に対向している。代替的に、充填された材料が前駆体ウェハの開口を(過剰に激しく)流れることを回避するために、透明素子6を形成している間、構造化された支持層12を用いることができる。後者の処理は、両面に構造化面を有する前駆体ウェハが透明素子6を備えている場合に特に有用であり得る。
【0127】
ウェハについて今しがた行った説明に対応して、「結合光学部材」も設けることができる。光学部材の阻止部は、構造化面、特に「結合光学部材」の透明素子の面を越えて垂直に突き出る突出部を有する面を有し得る。上記の光学部材と上記の分離部材との組合せ(または記載した光学部材と記載したバッフル部材との組合せ、または3つ全ての組合せ)である部材(「結合光学部材」)を設けることができる。したがって、その場合、分離部材(および/またはバッフル部材)は任意であり、その特性および機能は、それに応じて構造化され構成される光学部材によって実現される。これは、例えば分離部材Sとして上記したもの(および/またはバッフル部材Bとして上記したもの)と少なくとも1つの阻止部bとして上記したものとを一体型の部品として製造することによって達成可能である。
【0128】
このような「結合光学部材」または「結合光学ウェハ」を設けることの通常の結果は、(モジュール1などの構造化すべき要素の)部品の数および組立工程の数が低減されて、通常は位置合わせ誤差がそれほど起こらなくなることである。
【0129】
図15に戻って、そこに示される半完成品owは、一方の面または両方の面に研磨ステップが施されることができる。研磨ステップは、例えばウェハowを薄くして(厳密に)所望の厚みにするように、および/または、(少なくとも透明素子6の)光学特性を向上させるように達成可能である。当然のことながら、片面が構造化された半完成品も、少なくともその平坦な(構造化されていない)側を研磨することができる。
【0130】
なお、さらに、前駆体ウェハは、一方の面または両方の面において、少なくとも少なくとも一方の平坦な側を研磨することができる。そのようにすることは、前駆体ウェハのより平坦なおよび/またはより平らな面に貢献する可能性があるだけでなく、前駆体ウェハの厚みを所望の厚みに減少させることを可能にし得て、これは見込まれるその後の製造工程で役立ち得る。
【0131】
(「結合半完成品」であろうと、そうでなかろうと)半完成品自体がデバイスであり、透明素子6上に光学構造を生成することなく用いられる場合、光学グレード面(optical grade surface)を実現するように一方の面または両方の面を研磨することが有用であり
得て、特に面は、特に平面であり、特に小さな表面粗さを有する。
【0132】
光学ウェハを得るために、透明材料Tからなる凹状メニスカスが存在する光学構造5が(例えば複製によって)半完成品に設けられる場合、複製はこれらのメニスカス上で行われることができ、適用される複製材料の量はそれに応じて調整されなければならないかもしれない。対応する半完成品が研磨されれば、明確に規定された平坦な面を得ることができ、その後の複製ステップにおいてそれほどばらつきがみられなくなる。したがって、複製がより容易に行われるものと考えられ、および/または、より安定した(および再現可能な)プロセスをもたらし、恐らくはより優れた精度をもたらし得る。
【0133】
上記のどこかに記載した製造プロセス中に固められる、特に硬化する材料は、一般に、エポキシ樹脂などのポリマーベースの材料である。
【0134】
ウェハレベルでの製造のために、大半の位置合わせステップはウェハレベルで行われ、これにより、かなり簡単かつ非常に速い態様で(特に受動光学構成要素Lに対する部材DおよびEの)非常に優れた位置合わせを実現することが可能になる。製造プロセス全体は、非常に速く正確である。ウェハスケールでの製造のために、多数のモジュール1および/または多数の光学部材Oを製造するのに非常に少ない数の生成工程しか必要とされない。
【0135】
光学部材O(および同様に上記の他のデバイス)は多くの用途、特にアパーチャが適用される用途および/または光からの保護が求められる用途および/または大量生産が必要な用途および/または特に小さな光学部材(または受動光学構成要素)が必要とされる用途において有用であり得る。
【符号の説明】
【0136】
1 デバイス,光電子モジュール、2 デバイス,ウェハ積層体、3 透明領域、4 開口、5 光学構造,レンズ素子、6 透明素子、7 はんだボール、8 前駆体ウェハ、9 プリント回路基板、10 デバイス,電子デバイス,スマートフォン、11 孔,開口、12 支持層、13 支持基板、b 阻止部,非透明部、B バッフル部材、BW
バッフルウェハ、D 検出器,光検出器,フォトダイオード、E 発光体,発光ダイオード、L 受動光学構成要素,レンズ部材、O デバイス,光学部材、ow デバイス,半完成品、ow’ デバイス,半完成品,「結合半完成品」、OW デバイス,光学ウェハ、P 基板、PW 基板ウェハ、S 分離部材、SW スペーサウェハ、t 透明部、T 透明材料。
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