(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターボ冷凍機に用いられる多段遠心圧縮機は、ターボ冷凍機の用途に応じて、中間流路から冷媒を外部に吐出する吐出流路を有するものや、中間流路へと冷媒を外部から吸い込む吸込流路を有するものがある。多段遠心圧縮機の効率の観点からは、吐出流路は冷媒を吐出する際に低圧損となるように設計されており、吸込流路は冷媒を吸い込む際に低圧損となるように設計されている。
【0005】
ここで、ターボ冷凍機の冷凍プロセスによっては、運転の途中で冷媒の吐出、吸込を切り替える場合がある。そのため、多段遠心圧縮機のケーシングに吐出流路及び吸込流路を個別に設ける必要があり、構造の複雑化を招いてしまっていた。
また、上記問題はターボ冷凍機に限られず、多段遠心圧縮機を用いた他のシステムの運転プロセスでも同様に起こり得る。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、構造の複雑化を回避しながら、種々の運転プロセスに対応し、かつ、低圧損を維持することができる多段遠心圧縮機及びターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用している。
即ち、本発明の第一態様に係る遠心圧縮機は、軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸に前記軸線方向に複数段が配列されて、前記軸線方向一方側の入り口から流入する流体を径方向外側に圧送するインペラと、前記回転軸及び前記インペラを囲い、互いに隣り合う前記インペラのうち前段側の前記インペラから排出される流体を後段側の前記インペラに導入する中間流路と、該中間流路と外部とを接続する吸込兼吐出流路とを有するケーシングと、を備え、前記吸込兼吐出流路は、前記軸線の周方向に前記軸線を中心とした円弧状に延びて、前記周方向にわたって前記中間流路に連通する周方向流路と、該周方向流路の周方向の両端に接続されて外部と連通する外部連通路と、を備え、前記周方向流路は、流路断面積が周方向にわたって一様とされ、前記周方向流路の外周側壁面と前記外部連通路の内壁面との間に、前記軸線方向から見て前記外部連通路の内壁面に連続する凸曲面状をなす凸曲面を有し、前記軸線方向から見た前記凸曲面の曲率半径をRとし、前記周方向流路の前記径方向の寸法をWとした場合に、W≦R≦3Wの関係が成立する。
【0008】
上記構成によって、前段側のインペラと後段側とのインペラとの間の中間流路から吸込兼吐出流路を介して作動流体を外部に吐出することができる。また、中間流路へと吸込兼吐出流路を介して作動流体を外部から吸い込むことができる。即ち、吸込兼吐出流路は、冷媒の吐出用、吸込用の両方に用いられる。そのため、吐出用と吸込用との流路を個別に設ける場合に比べて、簡易な構造とすることができる。
【0009】
ここで、一般的な吐出流路は、中間流路の作動流体が周方向全域から導入されつつ、回転軸の回転方向前方側に向かうに従って流路断面積が増大し外部に連通する構成とされている。そのため、中間流路から作動流体を吐出する際には、回転方向前方側に向かうに従っての作動流体の流量増加に伴って流路断面積が増大するため、低圧損とすることができる。
しかしながら、当該吐出流路を介して外部からの作動流体の吸込みを試みた場合、当該作動流体が進行するに従って吐出流路内での流路断面積が小さくなることになる。そのため、外部からの作動流体が進行するにともなって圧損が大きくなるため、周方向全域から中間流路へと作動流体を吸い込むことができず、周方向位置での吸込量に偏りが生じる。その結果圧損がより大きくなってしまう。
【0010】
これに対して本態様では、吸込兼吐出流路における中間流路に連通する周方向流路は、流路断面積が一様とされている。そのため、中間流路から作動流体を吐出する際に圧損が大きく増加してしまうことを抑制しながら、中間流路へと作動流体を吸い込む際の圧損を減少させることができる。
即ち、吸込兼吐出流路を吐出用として用いる場合には、例えば周方向流路の流路断面積が回転方向前方側に向かうにしたがって小さくなる場合に比べて圧損は小さい。よって、作動流体を吐出する際の圧損の増加を抑制することができる。
一方、吸込兼吐出流路を吸込み用として用いる場合には、外部からの作動流体の進行に伴って周方向流路の流路断面積が小さくなることはないため、周方向位置での吸込量の偏りを抑制することができる。
【0011】
ここで、吸込兼吐出流路における外部連通路と周方向流路とが軸線方向から見て鋭角をなして接続されている場合には、外部から作動流体を吸い込む際に、外部連通路から周方向流路への作動流体の流入を接続箇所が妨げてしまう。その結果、圧損が増加してしまう。本実施形態では、外部連通部と周方向流路との接続箇所が、凸曲面とされているため、作動流体を吸い込む場合における圧損を低下させることができる。
また、特に本態様では、凸曲面の曲率半径Rと周方向流路の前記径方向の寸法Wとの間にW≦R≦3Wの関係が成立しており、即ち、凸曲面の曲率の値が抑えられている。これによって、外部連通路から周方向流路へと作動流体を滑らかに導入することができる。即ち、接続箇所が作動流体の妨げになることをより一層抑制することができ、吸込時の圧損を効果的に抑えることができる。
【0012】
上記態様では、前記周方向流路の流路断面積をAとし、前記吸込兼吐出流路における前記凸曲面が接する流路の最小の流路断面積であるスロート面積をBとした場合に、2A≦B≦5Aの関係が成立することが好ましい。
【0013】
ここで、凸曲面が存在する箇所は、外部連通路と周方向流路との合流部となる。吸込兼吐出流路を吸込用として用いる場合には、当該合流部での流路断面積を出来る限り大きくすることが好ましい。これにより、外部連通路を経た作動流体の動圧を低下させることができる結果、外部連通路の周方向両側に作動流体を導き易くなり、周方向での吸込量の偏りを抑制できる。
本態様では、凸曲面が接する合流部で最も流路断面積が小さいスロート面積Bと流方向流路の流路断面積Aとの間に上記関係が成立している。これにより、合流部での流路断面積が大きく確保されている。そのため、外部から導入される作動流体の動圧を効果的に低下させることができる。
【0014】
上記態様では、前記中間流路は、前段側の前記インペラから径方向外側に延びるディフューザ流路と、該ディフューザ流路の下流側に接続されて径方向内側に向かって湾曲する
リターンベンド部と、該
リターンベンド部の下流側に接続されて径方向内側に向かって延びるストレート流路と、を有し、前記周方向流路の内周側壁面が、前記周方向にわたって前記ストレート流路に接続されていてもよい。
【0015】
仮に周方向流路の内周側壁面がストレート流路に接続されている場合、外部から吸い込んだ作動流体がストレート流路に導入されることで、混合損失は大きなものとなる。即ち、ストレート流路内を流通する作動流体と周方向流路を流通する作動流体とは速度成分が大きく異なるため、これら作動流体が互いに衝突することによる混合損失が大きくなる。
本態様では、周方向流路の内周側壁面が、周方向流路を流通する作動流体との速度成分が比較的小さい作動流体が流通するストレート流路に接続されているため、混合損失を小さく抑えることができる。
【0016】
上記態様では、前記外部連通路は、前記外部連通路は、前記周方向流路の両端の間から前記回転軸の回転方向前方側かつ前記周方向流路の接線に沿って延びており、前記凸曲面は、前記周方向流路の前記外周側壁面と、前記外部連通路における前記回転方向前方側の内壁面との間に形成されていてもよい。
【0017】
このような態様の場合、吐出時と吸込時との双方の圧損を低下させながら、特に吐出時の圧損を大きく低下させることができる。
【0018】
上記態様では、前記外部連通路は、前記周方向流路の両端の間から前記
回転軸の回転方向後方側かつ前記周方向流路の接線に沿って延びており、前記凸曲面は、前記周方向流路の前記外周側壁面と、前記外部連通路における前記回転方向後方側の内壁面との間に形成されていてもよい。
【0019】
このような態様の場合、吐出時と吸込時との双方の圧損を低下させながら、特に吸込時の圧損を大きく低下させることができる。
【0020】
上記態様では、前記外部連通路は、前記周方向流路の両端の間から径方向外側に向かって延びており、前記凸曲面は、前記周方向流路の前記外周側壁面と前記外部連通路における前記回転方向前方側の内壁面との間、及び、前記周方向流路の前記外周側壁面と前記外部連通路における前記回転方向後方側の内壁面との間に形成されていてもよい。
【0021】
このような態様の場合、吐出時と吸込時との双方の圧損を効果的に低下させることができる。
【0022】
本発明の第二態様に係るターボ冷凍機は、上記いずれかの遠心圧縮機を有する。
これにより、冷凍プロセスに応じて、中間流路からの作動流体の吐出及び中間流路への作動流体の吸い込みを可能としながら、吐出、吸込みの際の圧損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の多段遠心圧縮機及びターボ冷凍機によれば、構造の複雑化を回避しながら、種々の運転プロセスに対応し、かつ、低圧損を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第一実施形態に係る遠心圧縮機について図面を参照して説明する。
図1に示すように、遠心圧縮機100は、軸線回りに回転する回転軸1と、この回転軸1の周囲を覆うことで流路2を形成するケーシング3と、回転軸1に設けられた複数のインペラ4と、ケーシング3内に設けられたリターンベーン28と、を備えている。本実施形態では、ケーシング3に吸込兼吐出流路30が形成されている。
【0026】
ケーシング3は、軸線Oに沿って延びる円筒状をなしている。回転軸1は、このケーシング3の内部を軸線Oに沿って貫通するように延びている。軸線O方向におけるケーシング3の両端部には、それぞれジャーナル軸受5及びスラスト軸受6が設けられている。回転軸1は、これらジャーナル軸受5とスラスト軸受6とによって軸線O回りに回転可能に支持されている。
【0027】
ケーシング3の軸線O方向一方側には、外部から作動流体としての空気を取り入れるための吸気口7が設けられている。さらに、ケーシング3の軸線O方向他方側には、ケーシング3内部で圧縮された作動流体が排気される排気口8が設けられている。
【0028】
ケーシング3の内側には、これら吸気口7と排気口8とを連通し、縮径と拡径を繰り返す内部空間が形成されている。この内部空間は、複数のインペラ4を収容するとともに、上記の流路2の一部をなしている。なお、以降の説明では、この流路2上における吸気口7が位置する側を上流側と呼び、排気口8が位置する側を下流側と呼ぶ。
【0029】
回転軸1には、その外周面上で軸線O方向に間隔を空けて複数(6つ)のインペラ4が設けられている。各インペラ4は、
図2に示すように、軸線O方向から見て略円形の断面を有するディスク4aと、このディスク4aの上流側の面に設けられた複数のブレード4bと、これら複数のブレード4bを上流側から覆うカバー4cと、を有している。
【0030】
ディスク4aは、軸線Oと交差する方向から見て、該軸線O方向の一方側から他方側に向かうに従って、径方向の寸法が次第に拡大するように形成されることで、概形円錐状をなしている。
【0031】
ブレード4bは、上記のディスク4aの軸線O方向における両面のうち、上流側を向く円錐面上で、軸線Oを中心として径方向外側に向かって放射状に複数配列されている。より詳しくは、これらブレードは、ディスク4aの上流側の面から上流側に向かって立設された薄板によって形成されている。これら複数のブレード4bは、軸線O方向から見た場合、周方向の一方側から他方側に向かうように湾曲している。
【0032】
ブレード4bの上流側の端縁には、カバー4cが設けられている。言い換えると、上記複数のブレード4bは、このカバー4cとディスク4aとによって軸線O方向から挟持されている。これにより、カバー4c、ディスク4a、及び互いに隣り合う一対のブレード4b同士の間には空間が形成される。この空間は、流路2の一部(圧縮流路22)をなしている。
【0033】
流路2は、上記のように構成されたインペラ4と、ケーシング3の内部空間を連通する空間である。本実施形態では、1つのインペラ4ごと(1つの圧縮段ごと)に1つの流路2が形成されているものとして説明を行う。即ち、遠心圧縮機100では、最後段のインペラ4を除く5つのインペラ4に対応して、上流側から下流側に向かって連続する5つの流路2が形成されている。
【0034】
それぞれの流路2は、吸込流路21と、圧縮流路22と、中間流路23とを有している。
図2は、流路2及びインペラ4のうち、1段目から3段目のインペラ4を主として示している。
【0035】
1段目のインペラ4では、吸込流路21は上記の吸気口7と直接接続されている。この吸込流路21によって、外部の空気が流路2上の各流路に作動流体として取り込まれる。より具体的には、この吸込流路21は、上流側から下流側に向かうにしたがって、軸線O方向から径方向外側に向かって次第に湾曲している。
【0036】
2段目以降のインペラ4における吸込流路21は、前段(1段目)の流路2における中間流路23の下流端と連通されている。即ち、中間流路23を通過した作動流体は、上記と同様に、軸線Oに沿って下流側を向くように、その流れ方向が変更される。
【0037】
圧縮流路22は、ディスク4aの上流側の面、カバー4cの下流側の面、及び周方向に隣り合う一対のブレード4bによって囲まれた流路である。より詳しくは、この圧縮流路22は、径方向内側から外側に向かうに従って、その断面積が次第に減少している。これにより、インペラ4が回転している状態で圧縮流路22中を流通する作動流体は、徐々に圧縮されて高圧流体となる。
【0038】
中間流路23は、ディフューザ流路24と、リターン流路25とを有している。ディフューザ流路24は、軸線Oの径方向内側から外側に向かって延びる流路である。このディフューザ流路24における径方向内側の端部は、上記圧縮流路22の径方向外側の端部に連通されている。
【0039】
リターン流路25は、リターンベンド部26とストレート流路27とを有している。
リターンベンド部26は、径方向外側に向かう作動流体を径方向内側に向かって転向させる湾曲形状をなしている。リターンベンド部26は、ディフューザ流路24を経て、径方向の内側から外側に向かって流通した作動流体の流れ方向を径方向内側に向かって反転させる。リターンベンド部26の一端側(上流側)は、上記ディフューザ流路24に連通され、他端側(下流側)は、ストレート流路27に連通されている。リターンベンド部26の中途において、径方向の最も外側に位置する部分は、頂部とされている。この頂部の近傍では、リターンベンド部26の湾曲の内側の部分を形成する内側曲面26aと該リターンベンド部26の湾曲の外側の部分を形成する外側曲面26bとは、3次元曲面をなすことで、作動流体の流動を妨げないようになっている。
【0040】
ストレート流路27は、リターンベンド部26の下流側の端部から径方向内側に向かって延びている。ストレート流路27の径方向外側の端部は、上記のリターンベンド部26と連通されている。ストレート流路27の径方向内側の端部は、上述のように後段の流路2における吸込流路21に連通されている。ストレート流路27は、軸線O方向一方側の第一壁面27aと軸線方向O他方側の第二壁面27bとによって区画形成されている。第一壁面27aは、軸線O方向一方側に向かうにしたがって徐々に縮径するテーパ状をなしている。第二壁面27bは、軸線Oに直交する平面状をなしている。
【0041】
リターンベーン28は、ストレート流路27に複数が設けられている。具体的には、複数のリターンベーン28は、ストレート流路27中で、軸線Oを中心として放射状に配列されている。言い換えると、これらリターンベーン28は、軸線Oの周囲で周方向に間隔を空けて配列されている。リターンベーン28は、軸線O方向の両端が、ストレート流路27を形成するケーシング3、即ち、第一壁面27a及び第二壁面27bに接している。
【0042】
次に吸込兼吐出流路30について説明する。吸込兼吐出流路30は、
図3に示すように、周方向流路40と、外部連通路50と、接続流路60と、を有している。
【0043】
周方向流路40は、
図3及び
図4に示すように、軸線Oを中心として該軸線Oの周方向に延びている。周方向流路40は、周方向の所定角度(軸線Oを中心とした角度θ1の範囲)にわたって円弧状に延びている。本実施形態では、角度θ1は、270°〜330°とされており、より好ましくは285°〜315とされている。本実施形態では、角度θ1は例えば300°に設定されている。
【0044】
周方向流路40は、第一内周側壁面41、外周側壁面42及び軸方向円弧壁面43によって画成されている。
第一内周側壁面41は、周方向流路40の径方向内側の端部を画成している。外周側壁面42は、周方向流路40の径方向外側の端部を画成している。第一内周側壁面41及び外周側壁面42はそれぞれ軸線Oを中心とした円筒面状をなすように、上記角度θ1の範囲にわたって円弧状に延びている。第一内周側壁面41の外径は、外周側壁面42の内径よりも小さい。即ち、これら第一内周側壁面41の外径と外周側壁面42の内径との差によって周方向流路40の径方向の寸法が定められている。
【0045】
軸方向円弧壁面43は、周方向流路40の軸線O方向他方側の端部を画成している。軸方向円弧壁面43は、軸線Oに直交する平面状をなしており、上記角度θ1の範囲にわたって軸線Oを中心とした周方向に延びている。軸方向円弧壁面43の径方向内側の端部は第一内周側壁面41の軸線O方向他方側の端部に接続されている。軸方向円弧壁面43の径方向外側の端部は、外周側壁面42の軸線O方向一方側の端部に接続されている。
【0046】
周方向流路40は、周方向の全域で中間流路23に連通するように接続されている。本実施形態では、
図2に示すように、周方向流路40は、二段目のインペラ4と三段目のインペラ4との間の中間流路23に接続されている。より具体的には、周方向流路40は、軸線O方向一方側が中間流路23におけるリターン流路25に対して周方向流路40の上記角度θ1にわたって開口している。当該開口箇所は、円弧状開口部44とされている。
【0047】
周方向流路40の径方向内側の端部、即ち、内径部分を画成する第一内周側壁面41は、軸線O方向一方側の端部が、ストレート流路27の軸線O方向他方側を画成する第二壁面27bに接続されている。本実施形態では、周方向流路40の第一内周側壁面41は、リターン流路25に配置されたリターンベーン28の上流側の端部よりも径方向内側に位置している。
【0048】
周方向流路40の径方向外側の端部、即ち、外径部分を画成する外周側壁面42は、軸線O方向一方側の端部がリターンベンド部26の湾曲の外側を画成する外側曲面26bに接続されている。本実施形態では、周方向流路40の外周側壁面42は、リターン流路25に配置されたリターンベーン28の上流側の端部よりも径方向外側に位置している。したがって、周方向流路40の径方向位置の範囲内にリターンベーン28の上流側の端部が位置することになる。
【0049】
外部連通路50は、周方向流路40の周方向の両端に接続されるとともに、ケーシング3の外部に連通している。本実施形態では、外部連通路50は、接続流路60を介して周方向流路40の周方向の両端に接続されている。
【0050】
外部連通路50は、ケーシング3の一部として形成された外部連通管3a内の流路として形成されている。外部連通管3aは、
図3に示すように、ケーシング3の外周面から突出するように設けられている。外部連通管3a及び該外部連通管3a内に形成された外部連通路50は、周方向流路40の両端の間の部分、即ち、周方向流路40が形成される角度θ1の領域以外の周方向位置から、回転軸1の回転方向P前方側、かつ、周方向流路40の接線に沿って延びている。本実施形態では、軸線O方向一方側から見て、左下の部分に外部連通管3a及び外部連通路50が設けられている。
【0051】
外部連通路50は、周方向流路40側から外部に向かうにしたがって徐々に拡径している。本実施形態では、軸線O方向から見た際に、回転方向P後方側に位置する第一内壁面51と回転方向P他方側に位置する第二内壁面52とを有している。これら第一内壁面51と第二内壁面52とはそれぞれ平面状をなしている。第一内壁面51と第二内壁面52とは、外部連通路50の周方向流路40側から外部に向かうにしたがって互いに離間している。これによって、軸線O方向から見た際に、外部連通路50は、周方向流路40から外部に向かうに従って徐々に拡径している。なお、外部連通路50の軸線O方向両側の壁面53は、それぞれ第一内壁面51及び第二内壁面52に接続されている。これら壁面53は互いに平行に配置されている。
【0052】
接続流路60は、詳しくは
図3に示すように、周方向流路40と外部連通路50とを接続する流路であってケーシング3内に形成されている。接続流路60は、周方向流路40の両端に挟まれるように、該両端に接続されている。接続流路60は、周方向の両側で周方向流路40に連通している。接続流路60は、周方向流路40の形成範囲である角度θ1を除く角度θ2(θ2=360°−θ)の範囲に形周方向にわたって成されている。接続流路60は、外周側で外部連通路50の周方向流路40側の端部と互いに連通するように接続されている。
【0053】
接続流路60は、第二内周側壁面61、第一接続面62、第二接続面63、凸曲面64及び一対の軸方向壁面65によって画成されている。
第二内周側壁面61は、接続流路60の径方向内側の端部を画成している。第二内周側壁面61は、軸線Oを中心とした円筒面状をなすように、上記角度θ2の範囲にわたって円弧状に延びている。本実施形態では、第二内周側壁面61は、第一内周側壁面41と同一の外径、かつ、互いに連続している。即ち、第一内周側壁面41と第二内周側壁面61とによって、周方向全域にわたって延びることで円形をなす内周側壁面31が形成されている。第一内周側壁面41、第二内周側壁面61は、内周側壁面31の一部となる。
【0054】
第一接続面62は、周方向流路40を画成する外周側壁面42における一方側の端部(周方向流路40の一対の端部のうちの角度θ2の領域を基準として回転方向P後方側の端部)に接続されている。該第一接続面62は、軸線Oに平行な平面状をなしている。第一接続面62は、外周側壁面42の一方側の端部から該外周側壁面42の接線に一致しながら、かつ、回転方向P前方側に向かって延びている。第一接続面62は、外部連通路50を画成する第一内壁面51に面一に接続されている。即ち、第一接続面62は、外周側壁面42と第一内壁面51とを、軸線O方向から見て直線状かつ連続するように接続している。
【0055】
第二接続面63は、周方向流路40を画成する外周側壁面42における他方側の端部(周方向流路40の一対の端部のうちの角度θ2の領域を基準として回転方向P前方側の端部)に接続されている。該第二接続面63は、軸線Oに平行な平面状をなしている。第二接続面63は、外周側壁面42の他方側の端部から該外周側壁面42の接線に一致しながら、かつ、回転方向P後方側に向かって延びている。
【0056】
凸曲面64は、第二接続面63と外部連通路50を画成する第二壁面27bとを接続する。凸曲面64は、軸線O方向から見て第二接続面63と第二壁面27bとを滑らかに接続する凸曲面状をなしている。軸線O方向から見た際、凸曲面64の曲率半径Rは、本実施形態では、第二接続面63との接続箇所から第二壁面27bとの接続箇所にわたって一定とされている。即ち、凸曲面64は、軸線O方向から見て円弧状をなして、その両端が第二接続面63及び外部連通路50の第二壁面27bに連続するように接続されている。
【0057】
一対の軸方向壁面65は、接続流路60の軸線O方向の端部を画成する。一対の軸方向壁面65のうちの軸線O方向一方側の軸方向壁面65には、周方向流路40のリターン流路25への開口と同様の径方向寸法で円弧状に開口するスリット66が形成されている。周方向流路40の円弧状開口部44と当該スリット66によって、周方向全域にわたって環状をなす円形開口部32が形成されている。
【0058】
本実施形態では、周方向流路40を画成する軸方向円弧壁面43、接続流路60を画成する軸線O方向他方側の軸方向壁面65及び外部連通路50の軸線O方向他方側の壁面53は、それぞれ軸線Oに直交する平面状に位置しており、互いに面一とされている。また、接続流路60を画成する軸線O方向一方側の軸方向壁面65及び外部連通路50の軸線O方向一方側の壁面53は、それぞれ軸線Oに直交する平面状に位置しており、互いに面一とされている。これによって、吸込兼吐出流路30における流路断面形状は、いずれの部分であっても矩形状をなしている。
【0059】
本実施形態では、周方向流路40の径方向の寸法をWとした場合、接続流路60の凸曲面64の曲率半径Rとの間に下記(1)式が成立する。
W≦R≦3W …(1)
即ち、凸曲面64の曲率半径Rは、周方向流路40の径方向の寸法Wの1倍以上3倍以下とされている。
【0060】
ここで、周方向流路40の流路断面積、即ち、周方向流路40の延在方向である周方向に直交する断面(径方向を含む断面)の流路断面積をAとする。また、接続流路60における凸曲面64が接する最小の流路断面積であるスロート面積をBとする。ここでスロート面積は、
図4に示すように軸線O方向から見て、凸曲面64に接し、かつ、流路内に収まる直径の円を描いた際に、最小となる直径を含む流路断面積を意味する。換言すれば、軸線Oに平行な仮想面であって当該円の直径を含む仮想面上の流路面積がスロート面積となる。
本実施形態では吸込兼吐出流路30の流路断面は矩形であるため、当該円の直径と流路の軸線O方向の寸法との積がスロート面積となる。
【0061】
本実施形態では、上記のような周方向流路40の流路断面積Aと凸曲面64が接するスロート面積Bとの間には、下記(2)式が成立する。
2A≦B≦5
即ち、スロート面積Bは、周方向流路40の流路断面積Aの2倍以上5倍以下とされている。
【0062】
上記構成の遠心圧縮機100は、ターボ冷凍機の圧縮機として使用される。ターボ冷凍機は、作動流体としての冷媒が流通する圧縮機、蒸発器、膨張弁、凝縮器が順次接続された冷凍サイクルを有する。
このようなターボ冷凍機の運転プロセスによっては、運転の途中で中間流路23から作動流体を外部に吐出する状態と、中間流路23へと外部から作動流体を吸い込む状態との切り替えが必要となる場合がある。
【0063】
本実施形態の遠心圧縮機100では、上記構成により、前段側のインペラ4と後段側とのインペラ4との間の中間流路23か、ら吸込兼吐出流路30を介して作動流体を外部に吐出することができる。
また、中間流路23へと吸込兼吐出流路30を介して作動流体を外部から吸い込むことができる。即ち、吸込兼吐出流路30は、冷媒の吐出用、吸込用の両方に用いられる。そのため、吐出用と吸込用との流路を個別に設ける場合に比べて、簡易な構造とすることができる。
【0064】
ここで、一般的な吐出流路は、中間流路23の作動流体が周方向全域から導入されつつ、回転軸1の回転方向P前方側に向かうに従って流路断面積が増大し、その後、外部に連通する構成とされている。そのため、中間流路23から作動流体を吐出する際には、回転方向P前方側に向かうに従っての作動流体の流量増加に伴って、流路断面積が増大するため、低圧損とすることができる。
【0065】
しかしながら、当該吐出流路を吸込流路として転用することを試みた場合、即ち、吐出流路を介しての外部からの作動流体の吸い込みを試みた場合には、当該作動流体が進行するに従って吐出流路内での流路断面積が小さくなることになる。
そのため、外部からの作動流体が進行するにともなって圧損が大きくなるため、周方向全域から中間流路23へと作動流体を吸い込むことができない。その結果、周方向位置での吸込量に偏りが生じ、圧損の増大を招いてしまう。
【0066】
これに対して本実施形態では、吸込兼吐出流路30における中間流路23に連通する周方向流路40は、流路断面積が一様とされている。そのため、中間流路23から作動流体を吐出する際に、圧損が大きく増加してしまうことを抑制しながら、中間流路23へと作動流体を吸い込む際の圧損を減少させることができる。
【0067】
即ち、吸込兼吐出流路30を吐出用として用いる場合には、例えば周方向流路40の流路断面積が回転方向P前方側に向かうにしたがって小さくなる場合に比べて圧損は小さい。よって、作動流体を吐出する際の圧損の増加を抑制することができる。
一方、吸込兼吐出流路30を吸込み用として用いる場合には、外部からの作動流体の進行に伴って周方向流路40の流路断面積が小さくなることはないため、周方向位置での吸込量の偏りを抑制することができる。
したがって、吸込兼吐出流路30を採用することによって、中間流路23からの作動流体の吐出、中間流路23への作動流体の吸い込みの双方の圧損を低く抑えることができる。
【0068】
ここで、吸込兼吐出流路30における外部連通路50と周方向流路40とが軸線O方向から見て鋭角をなして接続されている場合には、外部から作動流体を吸い込む際に、外部連通路50から周方向流路40への作動流体の流入を接続箇所が妨げてしまう。その結果、圧損が増加してしまう。本実施形態では、外部連通部と周方向流路40との接続箇所が、凸曲面64とされているため、作動流体を吸い込む場合における圧損を低下させることができる。
【0069】
また、特に本態様では、凸曲面64の曲率半径Rと周方向流路40の径方向の寸法Wとの間にW≦R≦3Wの関係が成立しており、即ち、凸曲面64の曲率の値が抑えられている。これによって、外部連通路50から周方向流路40へと作動流体を滑らかに導入することができる。
即ち、接続箇所が作動流体の妨げになることをより一層抑制することができ、吸込時の圧損を効果的に抑えることができる。
【0070】
ここで、凸曲面64が存在する箇所は、外部連通路50と周方向流路40との合流箇所となる。吸込兼吐出流路30を吸込用として用いる場合には、当該合流部での流路断面積を出来る限り大きくすることが好ましい。これにより、外部連通路50を経た作動流体の動圧を低下させることができる結果、外部連通路50の周方向両側に作動流体を導き易くなり、周方向での吸込量の偏りを抑制できる。
【0071】
本実施形態では、凸曲面64が接する合流部で最も流路断面積が小さいスロート面積Bと流方向流路の流路断面積Aとの間に上記関係が成立している。これにより、合流箇所での流路断面積が大きく確保されている。そのため、外部から導入される作動流体の動圧を当該合流箇所で効果的に低下させることができる。
【0072】
ここで、仮に周方向流路40の内周側壁面31がストレート流路27に接続されている場合、外部から吸い込んだ作動流体がストレート流路27に導入されることで、混合損失は大きなものとなる。即ち、ストレート流路27内を流通する作動流体と周方向流路40を流通する作動流体とは速度成分が大きく異なるため、これら作動流体が互いに衝突することによる混合損失が大きくなる。
本実施形態では、周方向流路40の内周側壁面31が、周方向流路40を流通する作動流体との速度成分が比較的小さい作動流体が流通するストレート流路27に接続されているため、混合損失を小さく抑えることができる。
【0073】
また、本実施形態では、外部連通路50は周方向流路40の両端の間から回転方向P前方側かつ前記周方向流路40の接線に沿って延びている。そのため、特に中間流路23から吐出されて周方向流路40を回転方向Pに従って流通する作動流体を外部に排出し易い。即ち、本実施形態では、吐出及び吸込みのうち、特に作動流体を吐出する際の圧損を低下させることができる。したがって、作動流体の吸込みよりも吐出する頻度の高い運転プロセスに対して好適である。
【0074】
次に、本発明第二実施形態について
図5を参照して説明する。第二実施形態では第一実施形態と同様の構成要素には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
第二実施形態の遠心圧縮機200の吸込兼吐出流路30では、軸線O方向一方側から見て左下に設けられていた外部連通路50及び接続流路60が、軸線O方向一方側から見て右下に設けられている。即ち、第二実施形態の吸込兼吐出流路30は、第一実施形態の吸込兼吐出流路30に対して、軸線Oに直交する断面視にて、軸線Oを通る鉛直線を対称線として線対称の構造をなしている。換言すれば、第一実施形態の吸込兼吐出流路30と第二実施形態の吸込兼吐出流路30は、互いに左右対称の構造とされている。
【0075】
周方向流路40が存在する周方向の角度θ1は、例えば270°〜350°とされており、好ましくは、300°〜340°とされている。本実施形態では、角度θ1は、330°に設定されている。接続流路60が存在する角度θ2は、360°から上記角度θ1を引いた値である。
【0076】
これによって、第二実施形態の外部連通路50は、周方向流路40の両端の間から回転方向P後方側かつ周方向流路40の接線方向に延びている。そのため、特に外部連通管3aを介して外部から吸い込まれて周方向流路40を回転方向Pに従って流通する作動流体を内部に取り込み易くなる。そのため、吐出及び吸込みのうち、特に作動流体を吸い込む際の圧損を低下させることができる。したがって、作動流体の吐出よりも吸込みを行う頻度の高い運転プロセスに対して好適である。
【0077】
次に、本発明第三実施形態について
図6を参照して説明する。第三実施形態では第一実施形態、第二実施形態と同様の構成要素には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
第三実施形態の遠心圧縮機100の吸込兼吐出流路30では外部連通路50が軸線Oの下方に設けられている。即ち、軸線Oに直交する断面における外部連通路50の中心軸線Oは、鉛直方向に一致し、かつ、軸線Oを通過する。また、外部連通路50の一対の内壁面52,52の双方に凸曲面64が連続するように接続されている。
【0078】
そのため、第三実施形態では、外部連通路50を介して吸い込まれる作動流体は、周方向両側の凸曲面64にしたがって周方向両側に低圧損で導かれる。これによって、作動流体の吸込みを周方向にわたってより均一的に行うことができる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば実施形態では、周方向流路40と外部連通路50との間に接続流路60を設けたが、このような接続流路60を介することなく、周方向流路40と外部連通路50とが直接的に接続されていてもよい。この場合であっても、両者の接続箇所には凸曲面64が設けられていることが好ましい。
【0080】
実施形態では、吸込兼吐出流路30の周方向流路40を二段目のインペラ4と三段目のインペラ4との間の中間流路23に接続したが、他の中管流路に接続してもよく、各中間流路23に接続されていてもよい。
【0081】
また、周方向流路40は、少なくとも第一内周側壁面41がストレート流路27に接続されていればよい。実施形態では外周側壁面42がリターンベンド部26に接続されていたが、当該外周側壁面42もストレート流路27に接続されていてもよい。