特許第6763833号(P6763833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763833無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763833
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/22 20060101AFI20200917BHJP
   B01J 2/16 20060101ALI20200917BHJP
   C01B 13/34 20060101ALI20200917BHJP
   F23D 14/78 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   F23D14/22 C
   B01J2/16
   C01B13/34
   F23D14/78 A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-138841(P2017-138841)
(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公開番号】特開2019-20044(P2019-20044A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年3月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】萩原 義之
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−107828(JP,A)
【文献】 特開平07−048118(JP,A)
【文献】 特開2000−007307(JP,A)
【文献】 特開2001−021113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/22
B01J 2/16
C01B 13/34
F23D 14/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎形成方向における先端側が拡径するように開口した有底円錐形状の燃焼室を有する無機質球状化粒子製造用バーナであって、
前記燃焼室の底部に開口するとともに、前記無機質球状化粒子製造用バーナの中心軸上に配置され、原料供給管から供給される原料粒子及び燃料を含む原料流体を前記燃焼室内に向けて噴出する原料流体噴出孔と、
前記燃焼室の側壁に、平面視で前記原料流体噴出孔を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に対する直交方向の面内で旋回流を形成させながら支燃性ガスを噴出するように開口した第1支燃性ガス噴出孔と、
前記燃焼室の側壁における前記第1支燃性ガス噴出孔よりも前記先端側の位置で、平面視で前記原料流体噴出孔及び前記複数の第1支燃性ガス噴出孔を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に沿った方向で支燃性ガスを噴出するように開口した第2支燃性ガス噴出孔と、
水溶液と可燃性油とを、水滴が油中に分散したエマルジョンとなるように混合して前記原料流体とし、該原料流体を前記原料供給管へ供給するための混合供給部と、
前記原料供給管に接続され、前記原料流体を前記燃焼室に向けて噴霧するための噴霧ガスを供給する噴霧ガス供給管と、を有し、
前記原料供給管は、前記噴霧ガス供給管の接続部と前記原料流体噴出孔との間に、前記原料流体と前記噴霧ガスとを混合するための混合室を有する無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項2】
前記燃焼室の側壁が前記中心軸に対してなす角度をα、前記原料流体噴出孔から噴出する前記原料流体の前記中心軸に対する最大噴出角度をβ、前記第1支燃性ガス噴出孔の、前記中心軸に対して垂直な方向に対する、前記側壁に沿った傾斜角度をγとしたとき、前記α,β,及びγが下記(1)、(2)式で表される関係を満たす請求項1に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
β−15°≦ α ≦ β+15° ・・・・・(1)
0 ≦ γ ≦ min(α+5°,90°−α) ・・・・・(2)
但し、上記(2)式における{min(α+5°,90°−α)}とは、α+5°又は90°−αのうちの何れか小さな角度であることを示す。
【請求項3】
さらに、前記燃焼室の底部における前記原料流体噴出孔の周囲を取り囲むように設けられ、該原料流体噴出孔から噴出される前記原料流体に向けて前記支燃性ガスを供給するように開口した第3支燃性ガス噴出孔を有する請求項1又は請求項2に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項4】
前記燃焼室の外側に、冷却水を流通させるための冷却水用管路を有する請求項1〜請求項の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項5】
請求項1〜請求項の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナを用いた無機質球状化粒子の製造方法であって、
互いに不溶な水溶液と可燃性油とを混合することで、水滴が油中に分散したエマルジョン状の原料流体を調整して前記燃焼室に噴出させ、
前記燃焼室において、前記原料流体中の前記可燃性油と支燃性ガスとを燃焼させて火炎を形成し、前記原料流体中の水滴を蒸発させることで微粒子形成を行う無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項6】
前記支燃性ガスとして、酸素又は酸素富化空気の少なくとも何れかを用いる請求項に記載の無機質球状化粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無機質球状化粒子を製造する方法として、例えば、無機質原料粉体を火炎中に通過させて表面を溶融し、球状化する方法が採用されている。
このような方法で無機質球状化粒子を製造する場合、製品粒子となる無機質球状化粒子の粒径は原料粉体の粒径に依存し、概ね原料粉体に近い粒径の製品粒子が製造される。
一方、上記方法では、解砕性や原料搬送の観点から、一般に数ミクロン程度以下の製品粒子を製造することは困難である。
【0003】
そこで、原料となる金属塩を水溶液中に溶解させ、これを火炎中等の高温雰囲気に噴霧することで無機質球状化粒子を製造する方法が提案されている。これは、一般に噴霧熱分解と呼ばれる方法であり、このような方法によってサブミクロンオーダーの均一な粒子が製造可能である。
しかしながら、上記の噴霧熱分解による方法においては、噴霧液滴が高温雰囲気で凝集することにより、得られる粉末に凝集粒子が多く含まれるという欠点がある。
【0004】
このような問題を解決するため、下記特許文献1においては、所謂エマルジョン燃焼法と呼ばれる方法を用いて酸化物を得る方法が提案されている。このエマルジョン燃焼法は、可燃性の油中に微小な水滴を分散させた油中水型エマルジョン(W/O型エマルジョン)、あるいは、可燃性の油中に粉体を懸濁させたサスペンジョンを原料として用いる方法である。このように、原料にエマルジョンを用いた場合、水滴中に予め金属塩を溶解させておくことで、原料の燃焼に伴って水が蒸発し、金属塩が酸化・析出することで無機質球状化粒子が得られる。このような方法を用いることで、凝集の少ないサブミクロンオーダーの均一な粒子が製造可能となる。
【0005】
特許文献1に記載の方法においては、原料エマルジョンをアトマイザ等の噴霧装置によって噴霧した後、パイロットバーナ等の加熱装置を用いて着火することで微小水滴を蒸発させ、微粒子合成を行う。この際、合成される微粒子の特性を制御するためには、燃焼場を均一に制御することが重要になる。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、燃焼場の制御は困難であるという問題がある。
【0006】
即ち、特許文献1に記載の方法では、例えば、原料噴霧量が少なすぎる場合には、原料(油及び水滴)の蒸発抜熱が大きいために燃焼が不安定化する。また、原料噴霧量が多すぎる場合には、原料中の油の蒸発量が低下して着火性が劣化することから、燃焼が不安定化する。また、仮に、燃焼が安定した場合であっても、火炎の温度ムラが生じやすく、均一な微粒子製造が困難であるという問題があった。
【0007】
上記のような問題を解決するため、例えば、特許文献2には、液噴霧ノズルの後段に予熱室を設け、噴霧後の原料を予熱することにより、原料噴霧量を増加させた場合においても燃焼を安定化させる方法が提案されている。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、原料を瞬間的に予熱するため、エマルジョンの安定性が低下し、水滴が崩壊・合一することで合成粒子にばらつきが生じる可能性が懸念される。また、原料供給量を多くするほど大きな予熱室が必要になることから、設備コストが増大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−81905号公報
【特許文献2】特開2002−20120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく、燃焼場を均一に制御でき、サブミクロンオーダーの均一な粒子が製造可能な無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
即ち、請求項1に係る発明は、火炎形成方向における先端側が拡径するように開口した有底円錐形状の燃焼室を有する無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記燃焼室の底部に開口するとともに、前記無機質球状化粒子製造用バーナの中心軸上に配置され、原料供給管から供給される原料粒子及び燃料を含む原料流体を前記燃焼室内に向けて噴出する原料流体噴出孔と、前記燃焼室の側壁に、平面視で前記原料流体噴出孔を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に対する直交方向の面内で旋回流を形成させながら支燃性ガスを噴出するように開口した第1支燃性ガス噴出孔と、前記燃焼室の側壁における前記第1支燃性ガス噴出孔よりも前記先端側の位置で、平面視で前記原料流体噴出孔及び前記複数の第1支燃性ガス噴出孔を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に沿った方向で支燃性ガスを噴出するように開口した第2支燃性ガス噴出孔と、水溶液と可燃性油とを、水滴が油中に分散したエマルジョンとなるように混合して前記原料流体とし、該原料流体を前記原料供給管へ供給するための混合供給部と、前記原料供給管に接続され、前記原料流体を前記燃焼室に向けて噴霧するための噴霧ガスを供給する噴霧ガス供給管と、を有し、前記原料供給管は、前記噴霧ガス供給管の接続部と前記原料流体噴出孔との間に、前記原料流体と前記噴霧ガスとを混合するための混合室を有する無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0011】
本発明によれば、燃焼室の側壁に、旋回流を形成させながら支燃性ガスを噴出する複数の第1支燃性ガス噴出孔を有することで、原料流体中に含まれる燃料と支燃性ガスとが適切に混合されるので、良好な保炎状態を保持することが可能になる。さらに、第1支燃性ガス噴出孔よりも先端側に、中心軸に沿った方向で支燃性ガスを噴出する複数の第2支燃性ガス噴出孔を有することで、原料流体中の燃料と2方向から供給する支燃性ガスとによって燃焼室内に均一な火炎を形成し、原料粒子の表面を溶融させ、サブミクロンオーダーの均一な微粒子を効率的に合成できる。また、原料流体中の燃料及び支燃性ガスの供給量を個別に調整することで、微粒子を合成する燃焼場を均一に制御することができるので、合成される粒子の特性を任意に制御しながら無機質球状化粒子を製造することが可能になる。さらに、水溶液と可燃性油とのエマルジョンからなる原料流体を供給する混合供給部を有することで、燃焼場を均一に制御しながら、凝集の少ないサブミクロンオーダーの均一な無機質球状化粒子を製造することが可能になる。また、噴霧ガス供給管を有することで、原料流体の供給量を変更する場合においても、噴霧ガスの作用により、原料流体噴出孔からの噴出状態を良好に維持できる。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記燃焼室の側壁が前記中心軸に対してなす角度をα、前記原料流体噴出孔から噴出する前記原料流体の前記中心軸に対する最大噴出角度をβ、前記第1支燃性ガス噴出孔の、前記中心軸に対して垂直な方向に対する、前記側壁に沿った傾斜角度をγとしたとき、前記α,β,及びγが下記(1)、(2)式で表される関係を満たす無機質球状化粒子製造用バーナである。
β−15°≦ α ≦ β+15° ・・・・・(1)
0 ≦ γ ≦ min(α+5°,90°−α) ・・・・・(2)
但し、上記(2)式における{min(α+5°,90°−α)}とは、α+5°又は90°−αのうちの何れか小さな角度であることを示す。
【0013】
本発明によれば、燃焼室の側壁の角度α、原料流体の最大噴出角度β、及び、第1支燃性ガス噴出孔の側壁に沿った傾斜角度γの各々が上記関係であることで、支燃性ガスによる良好な旋回流を形成させながら、原料流体中の燃料と支燃性ガスとを適切に混合でき、良好な保炎状態を確保できるので、高い製造効率で無機質球状化粒子を合成・製造できる。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、さらに、前記燃焼室の底部における前記原料流体噴出孔の周囲を取り囲むように設けられ、該原料流体噴出孔から噴出される前記原料流体に向けて前記支燃性ガスを供給するように開口した第3支燃性ガス噴出孔を有する無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0015】
本発明によれば、さらに、第3支燃性ガス噴出孔を有することで、原料流体噴出孔の近傍において火炎をより安定的に形成することが可能となり、良好な燃焼状態を得ることができる
【0018】
また、請求項に係る発明は、請求項1〜請求項の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記燃焼室の外側に、冷却水を流通させるための冷却水用管路を有する無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0019】
本発明によれば、燃焼室の外側に冷却水用管路が備えられることで、火炎による高温雰囲気や輻射熱から無機質球状化粒子製造用バーナの各構成部品を保護するとともに、燃焼室内における過渡な加熱が抑制され、燃焼場をより均一に制御しながら無機質球状化粒子を合成させることが可能になる。
【0020】
また、請求項に係る発明は、請求項1〜請求項の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナを用いた無機質球状化粒子の製造方法であって、互いに不溶な水溶液と可燃性油とを混合することで、水滴が油中に分散したエマルジョン状の原料流体を調整して前記燃焼室に噴出させ、前記燃焼室において、前記原料流体中の前記可燃性油と支燃性ガスとを燃焼させて火炎を形成し、前記原料流体中の水滴を蒸発させることで微粒子形成を行う無機質球状化粒子の製造方法である。
【0021】
本発明によれば、上記構成を有した本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナを用いて、エマルジョン状の原料流体を燃焼室に噴出し、原料流体中の可燃性油と支燃性ガスとを燃焼させて火炎を形成して原料流体中の水滴を蒸発させることで微粒子形成を行い、無機質球状化粒子を製造する方法なので、上記同様、良好な保炎状態が保持され、燃焼室内に均一な火炎を形成し、原料粒子からサブミクロンオーダーの均一な微粒子を効率的に合成できる。また、微粒子を合成する燃焼場を均一に制御することができ、合成される粒子の特性を任意に制御しながら、無機質球状化粒子を製造することが可能になる。
【0022】
また、請求項に係る発明は、請求項に記載の無機質球状化粒子の製造方法であって、前記支燃性ガスとして、酸素又は酸素富化空気の少なくとも何れかを用いる無機質球状化粒子の製造方法である。

【0023】
本発明によれば、支燃性ガスとして、酸素又は酸素富化空気の少なくとも何れかを用いることで、良好で安定した火炎を形成できるので、サブミクロンオーダーの均一な無機質球状化粒子をより効率的に製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナによれば、燃焼室の側壁に、旋回流を形成させながら支燃性ガスを噴出する複数の第1支燃性ガス噴出孔と、第1支燃性ガス噴出孔よりも先端側に、中心軸に沿った方向で支燃性ガスを噴出する複数の第2支燃性ガス噴出孔とを有した構成を採用している。これにより、原料流体中に含まれる燃料と支燃性ガスとが適切に混合されるので、良好な保炎状態を保持することができ、さらに、原料流体中の燃料と2方向から供給する支燃性ガスとによって燃焼室内に均一な火炎が形成されるので、原料粒子からサブミクロンオーダーの均一な微粒子を効率的に合成できる。また、原料流体中の燃料及び支燃性ガスの供給量を個別に調整することで、微粒子を合成する燃焼場を均一に制御することができるので、合成される無機質球状化粒子の特性を任意に制御することが可能になる。
従って、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく、サブミクロンオーダーの均一な無機質球状化粒子を製造することが可能になる。
【0025】
また、本発明に係る無機質球状化粒子の製造方法によれば、上記構成を有した本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナを用いて、エマルジョン状の原料流体を燃焼室に噴出し、原料流体中の可燃性油と支燃性ガスとを燃焼させて火炎を形成して原料流体中の水滴を蒸発させることで微粒子形成を行い、無機質球状化粒子を製造する方法を採用している。これにより、上記同様、良好な保炎状態を保持して、燃焼室内に均一な火炎を形成し、原料粒子からサブミクロンオーダーの均一な微粒子を効率的に合成できる。また、微粒子を合成する燃焼場を均一に制御できるので、合成される無機質球状化粒子の特性を任意に制御することが可能になる。
従って、製造設備の増設等に伴うコストアップを招くことなく、サブミクロンオーダーの均一な無機質球状化粒子を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナを模式的に説明する図であり、火炎の噴出側から中心軸に沿ってバーナを見た平面図である。
図2】本発明の一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナを模式的に説明する図であり、図1に示したバーナのA−A断面図である。
図3】本発明の他の実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナを模式的に説明する図であり、火炎の噴出側から中心軸に沿ってバーナを見た平面図である。
図4】本発明の他の実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナを模式的に説明する図であり、図3に示したバーナのB−B断面図である。
図5】本発明の一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナを模式的に説明する図であり、有底円錐形状とされた燃焼室内における、側壁が中心軸に対してなす角度α、及び、中心軸に対する原料流体の最大噴出角度βを示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナを模式的に説明する図であり、有底円錐形状とされた燃焼室内における、第1支燃性ガス噴出孔の、中心軸に対して垂直な方向に対する傾斜角度γを示す概略図である。
図7】本発明の一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法の実施例について説明する図であり、有底円錐形状とされた燃焼室内における、側壁が中心軸に対してなす角度αを変化させ、且つ、中心軸に対する原料流体の最大噴出角度βを一定とした場合の、角度αと製造効率(%)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法について、図1図6を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0028】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナ1(以下、単にバーナ1と略称する場合がある)及び無機質球状化粒子の製造方法について説明する。
【0029】
[無機質球状化粒子製造用バーナ]
図1は、本実施形態のバーナ1を、図示略の火炎の噴出側から中心軸Jに沿って見た平面図であり、図2は、図1中に示したA−A断面図である。なお、図2においては、所定の方向に延在するバーナ1全体を図示することは困難なので、バーナ1の先端部分のみを図示している。また、図2においては、説明の都合上、バーナ1の先端部分のみを断面図として図示している。
【0030】
図1及び図2に示すように、本実施形態のバーナ1は、火炎形成方向における先端1A側が拡径するように開口した有底円錐形状の燃焼室2を有する、無機質球状化粒子の製造に用いられるバーナである。本実施形態のバーナ1は、燃焼室2内において、原料流体G1に含まれる粒子原料が火炎による高温雰囲気中に曝され、原料流体G1中の水滴を蒸発させることで、サブミクロンオーダーの微粒子からなる無機質球状化粒子を製造するものである。
【0031】
また、図2の断面図に示すように、バーナ1は、中心軸J上に、原料流体G1を供給するための原料流体供給管3が配置され、その外側に支燃性ガス(第1支燃性ガス)G2を供給するための第1支燃性ガス供給管4が配置されている。さらに、その外側には、支燃性ガス(第2支燃性ガス)を供給するための第2支燃性ガス供給管5が配置されている。
【0032】
そして、これら原料流体供給管3、第1支燃性ガス供給管4、及び第2支燃性ガス供給管5は、先端1A側に向かって拡径した燃焼室2内に、それぞれ、原料流体噴出孔31、第1支燃性ガス供給孔41、第2支燃性ガス供給孔51として開口している。即ち、本実施形態のバーナ1は、燃焼室2の底部21に開口し、原料供給管3から供給される原料流体G1を燃焼室2内に向けて噴出する原料流体噴出孔31と、燃焼室2の側壁22に複数で設けられ、旋回流を形成させながら支燃性ガス(第1支燃性ガス)G2を噴出するように開口した第1支燃性ガス噴出孔41と、燃焼室2の側壁22における第1支燃性ガス噴出孔41よりも先端1A側の位置で複数設けられ、中心軸Jに沿った方向で支燃性ガス(第2支燃性ガス)G3を噴出するように開口した第2支燃性ガス噴出孔51と、を有して概略構成される。
【0033】
燃焼室2は、図1及び図2に示すように、先端1A側が拡径するように開口し、有底円錐形状に形成された凹部であり、図2中においては縦断面で略台形状とされる。本実施形態のバーナ1は、上述したように、この燃焼室2内において、原料流体G1中の水滴を火炎による高温雰囲気中で蒸発させることで、原料粒子からサブミクロンオーダーの微粒子を合成させる。
【0034】
なお、燃焼室2は、基端側の底部21から先端(符号1A参照)側までの側壁22の勾配角度αを一定としても良いが、図2に示すように、バーナ1の1A側の一部が円筒形状とされていることが、安定した保炎確保の観点から、より好ましい。
【0035】
原料供給管3は、バーナ1の中心軸J上に配置される。
そして、原料供給管3の開口部である原料流体噴出孔31は、燃焼室2の底部21に開口するとともに中心軸J上に配置され、原料供給管3から供給される原料粒子及び燃料を含む原料流体G1を、燃焼室2内に向けて噴出するように開口して設けられる。
【0036】
なお、本実施形態においては、図示例のように、原料流体噴出孔31を単孔の構成で説明しているが、これには限定されない。例えば、原料供給管3に対して複数の原料流体噴出孔31が連通され、複数の原料流体噴出孔31から原料流体G1が噴出される構成を採用しても構わない。
【0037】
第1支燃性ガス供給管4は、中心軸J上に配置された原料供給管3の外側に、この原料供給管3を取り囲むように複数で平行に配置される。
そして、第1支燃性ガス供給管4の開口部である第1支燃性ガス噴出孔41は、第1支燃性ガス供給管4の配置位置に対応して、燃焼室2の側壁22に、平面視(図1参照)で原料流体噴出孔31を取り囲むように複数で設けられ、図示例では計6箇所で、それぞれ円周上に均等に配置するように設けられている。また、第1支燃性ガス噴出孔41は、燃焼室2の側壁22において、中心軸Jに対する直交方向の面内で旋回流を形成させながら支燃性ガス(第1支燃性ガス)G2を噴出するように開口している。即ち、第1支燃性ガス噴出孔41は、図示例のように、燃焼室2の側壁22において、中心軸Jに対して直交する方向で開口するように設けられている。
【0038】
なお、第1支燃性ガス噴出孔41は、燃焼室2の側壁部22において、中心軸Jに対して旋回流を形成するような位置に開口していれば、原料流体噴出孔から31の距離や孔数、形状等は特に限定されず、任意に設定可能である。
【0039】
第2支燃性ガス供給管5は、上記のように、複数の第1支燃性ガス供給管4の外側に、これら第1支燃性ガス供給管4を取り囲むように複数で平行に配置される。
そして、第2支燃性ガス供給管5の開口部である第2支燃性ガス噴出孔51は、第2支燃性ガス供給管5の配置位置に対応して、燃焼室2の側壁22における第1支燃性ガス噴出孔41よりも先端1A側の位置で、平面視で原料流体噴出孔31及び複数の第1支燃性ガス噴出孔41を取り囲むように複数で設けられ、図示例では計16箇所で、それぞれ円周上に均等に配置するように設けられている。また、第2支燃性ガス噴出孔51は、燃焼室2の側壁22において、中心軸Jに沿った方向で支燃性ガス(第2支燃性ガス)G3を噴出するように開口している。
【0040】
なお、第2支燃性ガス噴出孔51についても、上述した第1支燃性ガス噴出孔41の場合と同様、燃焼室2の側壁部22において、第1支燃性ガス噴出孔41よりも先端1A側であって、中心軸Jに沿った方向に第2支燃性ガスG3を噴出するような位置で開口していれば、原料流体噴出孔31からの距離や孔数、形状等は特に限定されず、任意に設定可能である。
【0041】
また、図2に示す例のバーナ1には、燃焼室2の外側に、冷却水Wを流通させるための冷却水用管路6が備えられている。この冷却水用管路6は、先端61が燃焼室2と隣接するように配置されている。また、図示例の冷却水用管路6は、2本の流路6a,6bが、先端61で折り返すように連通された構成とされており、バーナ1の後端1B側から2本の流路6a,6bの何れか一方に供給された冷却水Wが、先端61で折り返して、他方の流路から後端1B側に還流されるように構成されている。
【0042】
冷却水用管路6の配置数及び位置としては、特に限定されず、第1支燃性ガス供給管4や第2支燃性ガス供給管5と同様、複数で配置されていても構わないが、例えば、バーナ1の平面視における全周に渡って円環状に形成されていても構わない。
【0043】
本実施形態においては、燃焼室2の外側に冷却水用管路6が備えられることで、火炎による高温雰囲気や輻射熱からバーナ1の各構成部品を保護するとともに、燃焼室2内における過渡な加熱が抑制され、燃焼場をより均一に制御しながら無機質球状化粒子を合成させることが可能になる。
【0044】
また、本実施形態のバーナ1においては、図5及び図6中に示した、燃焼室2の側壁22が中心軸Jに対してなす角度α、原料流体噴出孔31から噴出する原料流体G1の中心軸Jに対する最大噴出角度β、及び、第1支燃性ガス噴出孔41の、中心軸Jに対して垂直な方向に対する、前記側壁に沿った傾斜角度γの、各々の関係が下記(1)、(2)式で表される関係を満たすことが好ましい。
β−15°≦ α ≦ β+15° ・・・・・(1)
0 ≦ γ ≦ min(α+5°,90°−α) ・・・・・(2)
但し、上記(2)式における{min(α+5°,90°−α)}とは、α+5°又は90°−αのうちの何れか小さな角度であることを示す。
【0045】
ここで、上記(1)式における角度α及びβの規定は、燃焼室2の側壁22の勾配角度αが、燃料の最大噴出角度βに対し、一定範囲に収まることが好ましいことを示す。なお、燃料の最大噴出角度βは、原料流体噴出孔31におけるノズル構造を変更することで調整することが可能である。
【0046】
上記(1)式において、角度αがβ−15°よりも小さい場合、燃焼室2に噴出させた原料流体G1が、燃焼室2の側壁22に付着してしまい、製造効率が低下する場合がある。また、上記(1)式において、角度αがβ+15°を超えると、原料流体G1と、旋回流を形成する第1支燃性ガスG2との相互作用が弱まり、原料流体G1が第1支燃性ガス噴出孔41から吹き飛びやすくなるので、安定した保炎が困難になる。
【0047】
また、上記(2)式における角度α及びγの規定は、第1支燃性ガスG2による適切な旋回流を形成するために、第1支燃性ガスG2の噴出方向を規定するものである。
角度γを上記(2)式で規定される範囲内とすることで、燃焼室2内において第1支燃性ガスG2が良好な旋回流を形成し、原料流体G1中に含まれる燃料と第1支燃性ガスG2とが適切に混合されるので、良好な保炎状態を保持することが可能となる。
【0048】
上記(2)式において、角度γが0未満だと、第1支燃性ガスG2が十分に旋回流を形成できない。その結果、原料流体G1が原料流体噴出孔31から吹き飛びやすくなり、安定した保炎が困難になる。
また、上記(2)式に示すように、傾斜角度γの上限として、α+5°及び90°−αのうち、何れか小さい角度を上限とすることが好ましい。これは、燃焼室2の側壁22の勾配角度αが大きくなってゆくと、α+5°が大きくなりすぎ、原料流体G1が原料流体噴出孔31からさらに吹き飛びやすくなるためである。ここで、側壁22の開き角度が90°、即ち角度α=45°である場合には、傾斜角度γは最大45°まで可能である。
【0049】
本実施形態においては、上記各角度α、β、γを上記(1)、(2)式で表される関係を満たすように構成することにより、第1支燃性ガスG2による良好な旋回流を形成させながら、原料流体G1中の燃料と支燃性ガスとを適切に混合でき、良好な保炎状態を確保できる。従って、高い製造効率で無機質球状化粒子を合成・製造できる。
【0050】
本実施形態のバーナ1によれば、上記構成を備えることにより、原料流体G1中の燃料と、2方向から供給する支燃性ガス(第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3)とによって燃焼室2内に均一な火炎を形成し、原料粒子の表面を溶融させることで、サブミクロンオーダーの均一な微粒子を効率的に合成できる。また、原料流体G1中の燃料及び第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3の供給量を個別に調整することで、微粒子を合成する燃焼場を均一に制御することができるので、合成される粒子の特性を任意に制御しながら無機質球状化粒子を製造することが可能になる。
【0051】
なお、本実施形態のバーナ1においては、上記構成に加え、さらに、互いに不溶な水溶液と可燃性油とを、水滴が油中に分散したエマルジョン状になるように混合して原料流体G1とし、この原料流体G1を原料供給管3へ供給するための、図示略の混合供給部を有する構成を採用してもよい。本実施形態のバーナ1は、上記の混合供給部を有することで、原料流体G1として、例えば、無機質球状化粒子を形成するための金属塩を含む水溶液を、燃料となる灯油や軽油等に分散させ、油中水型エマルジョン(W/O型エマルジョン)として用いることができる。
【0052】
混合供給部の構造、種類は、特に限定されないが、分散される水滴径が5μm以下となるような混合器を用いることが好ましい。この水滴径が5μmを超えると、エマルジョン中で水滴が沈降しやすくなり、原料流体G1が燃焼室2へ供給されるまでの間に水滴の分散が不均一となり、失火の可能性がある。
【0053】
また、原料流体G1の水滴中に溶解する金属塩としては、燃焼・酸化後に酸化物が形成される金属塩を任意に用いることができる。この際、エマルジョン状の原料流体G1中の水分率は20%以下とすることが好ましい。これは、原料流体G1中の水分率が増加するのに伴い、安定火炎の保持が困難になるためである。
【0054】
また、原料流体G1中の燃料となる油の種類としては、特に限定されないが、可燃性であること、水に不溶であること、及び単位体積当たりの発熱量が大きいこと等の条件を満たすもの、例えば、ヘキサン、オクタン、ケロシン、又はガソリン等の炭化水素系の油が好ましい。なお、本明細書で説明する「水に不溶である」とは、金属塩水溶液とエマルジョンを形成できる程度に不溶であることを示す。
【0055】
また、原料流体G1におけるエマルジョン状態を安定化するため、分散剤を使用することも好ましい。このような分散剤の種類としては、特に限定されないが、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はノニオン性界面活性剤等を、所望の水滴径を得ることを目的として使用可能である。
【0056】
本実施形態のバーナ1は、さらに、水溶液と可燃性油とのエマルジョンからなる原料流体G1を供給する混合供給部を有することで、上記のような、燃焼場を均一に制御しながら、凝集の少ないサブミクロンオーダーの均一な無機質球状化粒子を製造できる効果がより顕著に得られる。
【0057】
なお、本実施形態においては、第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3として、同じ種類の支燃性ガスを用いてもよいが、それぞれ異なる種類の支燃性ガスを用いても構わない。また、これら支燃性ガスの種類としても、酸素、酸素富化空気等、適宜採用することができる。
【0058】
[無機質球状化粒子の製造方法]
本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法は、上記構成とされた本実施形態のバーナ1を用いて無機質球状化粒子を製造する方法である。
即ち、本実施形態の製造方法においては、まず、互いに不溶な水溶液と可燃性油とを混合することで、水滴が油中に分散したエマルジョン状の原料流体G1を調整して燃焼室2に噴出する。次いで、燃焼室2において原料流体G1中の可燃性油と支燃性ガス(第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3)とを燃焼させて火炎を形成し、原料流体G1中の水滴を蒸発させることで微粒子形成を行い、無機質球状化粒子を製造する方法である。
【0059】
上記のような方法で無機質球状化粒子を製造する装置としては、例えば、本実施形態のバーナ1に加えて、それぞれ図示を省略するが、原料粒子を供給して原料流体G1に混合するための原料フィーダ、燃料供給源、及びキャリアガス供給源、並びに、第1及び第2支燃性ガスG2,G3を供給するための支燃性ガス供給源を備え、さらに、各流体の流量を調整する流量制御部等を備えたものを用いることができる。
【0060】
具体的には、本実施形態の製造方法においては、まず、上記したような組成を有する、互いに不溶な水溶液と可燃性油とを混合し、水滴が油中に分散したエマルジョン状の原料流体G1を調整する。この際、上述した図示略の混合供給部を用いて、原料流体G1を調整することができ、例えば、可燃性油は上記の燃料供給源から供給し、原料粒子は上記の原料フィーダから供給して混合することができる。また、原料粒子としては、目的とする無機質球状化粒子の種類に応じたものを用い、例えば、シリカやアルミナの他、ガラス原料粉末等を用いることができる。
【0061】
次いで、調整された原料流体1を、バーナ1の原料供給管3に供給するとともに、第1支燃性ガス供給管4及び第2支燃性ガス供給管5に、それぞれ第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3を供給する。この際、原料流体G1を、上記のキャリアガス供給源から供給されるキャリアガスと混合した状態で、原料供給管3に供給する。この際、各流体の供給量は、例えば、マスフローメーターや自動弁等から構成された図示略の流量制御部によって調整することができる。
【0062】
また、第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3としては、例えば、酸素(酸素ガス)又は酸素富化空気等を用いることができる。また、第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3は、同種の支燃性ガスを用いてもよいが、それぞれ異なる支燃性ガスを用いても構わない。支燃性ガスとして、酸素又は酸素富化空気の少なくとも何れかを用いることで、良好で安定した火炎を形成できる。
【0063】
その後、燃焼室2内に向けて、原料流体噴出孔31から原料流体G1が噴出されるとともに、それぞれ複数で設けられた第1支燃性ガス供給孔41及び第2支燃性ガス供給孔51から、それぞれ第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3が噴出される。これら、原料流体G1と各支燃性ガスG2,G3とを燃焼させることで、燃焼室2内において図示略の火炎を形成する。
【0064】
この際、複数の第1支燃性ガス供給孔41から噴出した第1支燃性ガスG2は、中心軸Jに対して垂直な方向の面内に旋回流を形成しながら原料流体G1と混合し、燃焼に供される。このように、第1支燃性ガスG2が旋回流を形成することで、原料流体G1中に含まれる燃料と第1支燃性ガスG2とが適切に混合されるので、良好な保炎状態を保持することが可能になる。
【0065】
そして、火炎を形成して原料流体G1中の水滴を蒸発させ、また、原料粒子の表面を溶融させることで、所定の粒径の範囲、即ち、サブミクロンオーダーの均一な微粒子を合成し、無機質球状化粒子を製造することができる。その後、製造された無機質球状化粒子は、所定の捕集手段等によって回収することで製品粒子とする。
【0066】
また、本実施形態の製造方法においては、さらに、得られた無機質球状化粒子を、所定の分級手段を用いて分級することで、所望の特定粒径分布を有する無機質球状化粒子を製品粒子とすることができる。
【0067】
本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法によれば、上記構成を有した本実施形態のバーナ1を用いて無機質球状化粒子を製造する方法なので、上記同様、燃焼室2内に均一な火炎を形成し、原料粒子からサブミクロンオーダーの均一な微粒子を効率的に合成できる。また、微粒子を合成する燃焼場を均一に制御することができ、合成される粒子の特性を任意に制御しながら、無機質球状化粒子を製造することが可能になる。
【0068】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナ10(以下、単にバーナ10と略称する場合がある)について説明する。
なお、以下のバーナ10の説明においては、上述した第1の実施形態のバーナ1と同じ構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
【0069】
図3は、本実施形態のバーナ10を、図示略の火炎の噴出側から中心軸Jに沿って見た平面図であり、図4は、図3中に示したB−B断面図である。
図3及び図4に示すように、本実施形態のバーナ10は、先端1A側が拡径するように開口した有底円錐形状の燃焼室2、原料流体供給管3、第1支燃性ガス供給管4及び第2支燃性ガス供給管5を備え、燃焼室2内に、それぞれ、原料流体噴出孔31、第1支燃性ガス供給孔41、第2支燃性ガス供給孔51として開口している点で、第1の実施形態のバーナ1と同様の構成を有している。
【0070】
一方、本実施形態のバーナ10は、図3及び図4に示すように、バーナ1に備えられた上記各構成に加え、さらに、燃焼室2の底部21における原料流体噴出孔31の周囲を取り囲むように設けられ、この原料流体噴出孔31から噴出される原料流体G1に向けて支燃性ガス(第3支燃性ガスG4)を供給するように開口した第3支燃性ガス噴出孔71と、原料供給管3に接続され、原料流体G1を燃焼室2に向けて噴霧するための噴霧ガス(ガス)G5を供給する噴霧ガス供給管8と、を有する点で、第1の実施形態におけるバーナ1とは異なる。
【0071】
図3及び図4に示すように、第3支燃性ガス噴出孔71は、原料流体噴出孔31の周囲を取り囲むように、環状の噴出孔として形成されている。また、この第3支燃性ガス噴出孔71は、第3支燃性ガス供給管7の開口部として燃焼室の底部21に開口するものであり、第3支燃性ガス供給管7から供給される第3支燃性ガスG4を、中心軸Jに沿った方向で噴出するように構成される。
【0072】
本実施形態のバーナ10は、上記のような第3支燃性ガス噴出孔71が備えられることで、原料流体噴出孔31の近傍において、火炎をより安定的に形成することが可能となり、良好な燃焼状態を得ることができる。
第3支燃性ガスG4の種類としては特に限定されず、第1支燃性ガスG2や第2支燃性ガスG3と同様、酸素又は酸素富化空気の少なくとも何れかを用いれば良いが、火炎を安定化する観点からは酸素を用いることがより好ましい。
【0073】
噴霧ガス供給管8は、原料供給管3に接続され、図示例においては、原料供給管3における原料流体噴出孔31近傍に接続されている。また、図示例では、原料供給管3における噴霧ガス供給管8の接続部よりも原料流体噴出孔31寄りの部分が、他の部分よりも拡径しており、この部分が、原料流体G1と噴霧ガスG5とを混合するための混合室32として構成されている。
また、噴霧ガスG5の種類としても特に限定されないが、上記の各支燃性ガスと同様、酸素又は酸素富化空気の少なくとも何れかを用いれば良い。
【0074】
本実施形態のバーナ10は、上記のような噴霧ガス供給管8を設け、原料流体噴出孔31を2流体噴霧型ノズルとして構成することで、原料流体G1の供給量を変更する場合においても、噴霧ガスG5の作用により、原料流体噴出孔31からの噴出状態を良好に維持できる。
【0075】
本実施形態のバーナ10によれば、上記構成を備えることにより、原料流体G1中の燃料と、3方向から供給する支燃性ガス(第1支燃性ガスG2、第2支燃性ガスG3及び第3支燃性ガスG4)とによって燃焼室2内に均一な火炎を形成できる。さらに、原料流体噴出孔31からの原料流体G1の噴出状態を良好に維持できるので、より安定化を図った火炎の形成が可能になり、原料粒子からサブミクロンオーダーの均一な無機質球状化粒子を効率的に合成できる。
【0076】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の無機質球状化粒子製造用バーナ1によれば、燃焼室2の側壁22に、旋回流を形成させながら第1支燃性ガスG2を噴出する複数の第1支燃性ガス噴出孔41と、第1支燃性ガス噴出孔41よりも先端1A側に、中心軸Jに沿った方向で第2支燃性ガスG3を噴出する複数の第2支燃性ガス噴出孔51とを有した構成を採用している。これにより、原料流体G1中に含まれる燃料と第1支燃性ガスG2とが適切に混合されるので、良好な保炎状態を保持することができ、さらに、原料流体G1中の燃料と2方向から供給する第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3とによって、燃焼室2内に均一な火炎が形成されるので、原料粒子からサブミクロンオーダーの均一な微粒子を効率的に合成できる。また、原料流体G1中の燃料、第1支燃性ガスG2及の供給量を個別に調整することで、微粒子を合成する燃焼場を均一に制御することができるので、合成される無機質球状化粒子の特性を任意に制御することが可能になる。従って、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく、サブミクロンオーダーの均一な無機質球状化粒子を製造することが可能になる。
【0077】
また、本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法によれば、上記構成を有した本実施形態のバーナ1を用いて、エマルジョン状の原料流体G1を燃焼室2に噴出し、原料流体G1中の可燃性油と第1支燃性ガスG2及び第2支燃性ガスG3とを燃焼させて火炎を形成して原料流体G1中の水滴を蒸発させることで微粒子形成を行い、無機質球状化粒子を製造する方法を採用している。これにより、上記同様、良好な保炎状態を保持して、燃焼室2内に均一な火炎を形成し、原料粒子からサブミクロンオーダーの均一な微粒子を効率的に合成できる。また、微粒子を合成する燃焼場を均一に制御できるので、合成される無機質球状化粒子の特性を任意に制御することが可能になる。従って、製造設備の増設等に伴うコストアップを招くことなく、サブミクロンオーダーの均一な無機質球状化粒子を製造することが可能になる。
【0078】
<本発明の他の形態>
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は上記のような特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により、本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<無機質球状化粒子製造用バーナ>
本実施例においては、図3及び図4に示すような、燃焼室2、原料流体供給管3、第1支燃性ガス供給管4、第2支燃性ガス供給管5、冷却水用管路6,第3支燃性ガス供給管7及び噴霧ガス供給管8を備え、燃焼室2内に、原料流体噴出孔31、第1支燃性ガス供給孔41、第2支燃性ガス供給孔51、第3支燃性ガス供給孔71が開口した構成のバーナ、即ち、上述した本発明に係る第2の実施形態で説明したバーナ10を用いて無機質球状化粒子を製造した。
【0081】
<無機質球状化粒子の製造条件>
まず、原料流体G1として、水相に0.01M硝酸アルミニウム水溶液、油相に灯油、分散剤にSpan20(東京化成工業株式会社製:登録商標)とTween85(同:登録商標)とを50:50(質量比)で混合したものを用いた、油中水型エマルジョン(W/O型エマルジョン)を調整した。
この際、水相:油相の比を10:90(体積比)とし、水相と油相とを混合した液全量に対して1体積%の分散剤を添加した後、ホモジナイザーを用いて、回転数:10000rpm、時間:10minで撹拌することで原料流体G1を得た。
また、第1〜第3支燃性ガスG2,G3,G4及び噴霧ガスG5として、酸素ガスを用いた。
【0082】
また、バーナ10を用いた燃焼条件としては、原料流体G1:5L/h、噴霧ガスG5:0.4Nm/h、第3支燃性ガスG4:0.6Nm/hとし、第1支燃性ガスG2と第2支燃性ガスG3の合計流量が9Nm/h、且つ、次式{Q=(第1支燃性ガスG2の流量)/(第1支燃性ガスG2の流量+第2支燃性ガスG3の流量)}で表される流量比Qが0.3となるように流量調整を行った。
【0083】
<評価項目>
本実施例においては、図5及び図6中に示した、燃焼室2の側壁22が中心軸Jに対してなす角度α、及び、原料流体噴出孔31から噴出する原料流体G1の中心軸Jに対する最大噴出角度βを変化させた場合の、製造効率への影響について確認を行った。
このとき、原料流体噴出孔31から噴出する原料流体G1の中心軸Jに対する最大噴出角度βを22.5°に固定した場合においても確認を行った。
【0084】
そして、本実施例においては、上記の各角度α,βを変化させたときの、形成された微粒子の粒子歩留まり(製造効率)について確認、評価した。
【0085】
<評価結果>
下記表1に、各製造条件における製造効率及び保炎状態の結果を示すとともに、図7のグラフに、角度αを変化させ、且つ、最大噴出角度βを一定(β=22.5°)とした場合の、角度αと製造効率(%)との関係を示す(図7においてはγ=0の例で比較)。この際の製造効率(粒子歩留まり)の定義は、次式{製造効率=(粉体回収装置を用いて実際に回収した質量)/(原料粒子が全て微粒子化した際の質量)とした。そして、製造効率が最大となる条件から、概ね半分を下回ってしまう条件について、「製造効率が低下する」と定義し、結果を下記表1及び図7のグラフに示した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1及び図7のグラフに示すように、αが次式{β−15°≦α≦β+15°}で表される関係を満たす場合、即ち、表1中においてα=7.5°〜30°であり、且つ、γが次式{0≦γ≦min(α+5°,90°−α)}を満たす場合には、保炎状態が良好であるとともに、製造効率にも優れていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法は、設備の増設等を必要とすることなく、燃焼場を均一に制御でき、サブミクロンオーダーの均一な粒子が製造可能なものなので、火炎中において無機質粉体原料を溶融させ、無機質球状化粒子を製造する用途において非常に好適である。
【符号の説明】
【0089】
1,10…無機質球状化粒子製造用バーナ(バーナ)
1A…先端(バーナ)
1B…後端
2…燃焼室
21…底部
22…側壁
3…原料供給管
31…原料流体噴出孔
32…混合室
4…第1支燃性ガス供給管
41…第1支燃性ガス噴出孔
5…第2支燃性ガス供給管
51…第2支燃性ガス噴出孔
6…冷却水用管路
6a,6b…流路
61…先端(冷却水用管路)
7…第3支燃性ガス供給管
71…第3支燃性ガス噴出孔
8…噴霧ガス供給管
G1…原料流体
G2…第1支燃性ガス
G3…第2支燃性ガス
G4…第3支燃性ガス
G5…噴霧ガス
W…冷却水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7