特許第6763835号(P6763835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763835熱エネルギー回収システム及び検知ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763835
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】熱エネルギー回収システム及び検知ユニット
(51)【国際特許分類】
   F01K 23/02 20060101AFI20200917BHJP
   F02G 5/00 20060101ALI20200917BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20200917BHJP
   F02B 29/04 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   F01K23/02 P
   F02G5/00 C
   F02B37/00 302B
   F02B29/04 N
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-145234(P2017-145234)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-189075(P2018-189075A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-93496(P2017-93496)
(32)【優先日】2017年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】足立 成人
(72)【発明者】
【氏名】西村 和真
(72)【発明者】
【氏名】長平良 綾香
(72)【発明者】
【氏名】成川 裕
(72)【発明者】
【氏名】荒平 一也
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−214922(JP,A)
【文献】 特開2008−255923(JP,A)
【文献】 特開2017−066917(JP,A)
【文献】 特開2015−215144(JP,A)
【文献】 特開2015−200181(JP,A)
【文献】 特開2014−190216(JP,A)
【文献】 特開2014−152613(JP,A)
【文献】 特開2013−122173(JP,A)
【文献】 特開2008−255822(JP,A)
【文献】 特開2008−144995(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/023320(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0322821(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0285102(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0128111(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012221153(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011117054(DE,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0119306(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00−23/10
F02G 5/00− 5/04
F01P 3/20− 3/22
F02B 29/04,37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、
前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、
前記蒸発器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、
前記蒸発器内で前記作動媒体が漏れたことを検知可能な検知ユニットと、を備え、
前記検知ユニットは、
前記蒸発器と前記エンジンとの間において前記過給空気の一部を抜き出す抜出流路と、
前記抜出流路に設けられており、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップと、
前記抜出流路のうち前記ドレントラップよりも上流側の部位に設けられており、前記作動媒体を検知可能なセンサと、を有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記センサは、前記ドレントラップよりも上方に配置されている、熱エネルギー回収システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記抜出流路は、
前記ドレントラップが設けられた主流路と、
前記主流路から分岐しており、前記センサが設けられた分岐流路と、を有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項4】
請求項3に記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記検知ユニットは、前記主流路と前記分岐流路との接続部に設けられており前記過給空気に含まれる水分を除去するドライヤをさらに有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記センサは、
水分、前記作動媒体、一酸化炭素、硫化水素及びアンモニアを検知可能な半導体センサと、
水分、前記作動媒体、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び窒素酸化物を検知可能な赤外線センサと、を含む、熱エネルギー回収システム。
【請求項6】
請求項に記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記検知ユニットは、前記抜出流路のうち前記ドライヤと前記センサとの間の部位に設けられており一酸化炭素を除去可能な一酸化炭素除去部をさらに有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項7】
エンジンと、
前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続
されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、
前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、
前記蒸発器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、
前記蒸発器内で前記作動媒体が漏れたことを検知可能な検知ユニットと、を備え、
前記検知ユニットは、
前記蒸発器と前記エンジンとの間において前記過給空気の一部を抜き出す抜出流路と、
前記抜出流路に設けられており、前記抜出流路に流入した過給空気に含まれる水分を除去する水分除去機構と、
前記抜出流路のうち前記水分除去機構よりも下流側の部位に設けられており、前記作動媒体を検知可能なセンサと、を有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項8】
請求項7に記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記水分除去機構は、前記過給空気に含まれる水分を除去するドライヤを有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項9】
請求項8に記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記検知ユニットは、
前記ドライヤで除去された水分を排出する排出流路と、
前記排出流路に設けられており、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップと、をさらに有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかに記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記センサは、
水分、前記作動媒体、一酸化炭素、硫化水素及びアンモニアを検知可能な半導体センサと、
水分、前記作動媒体、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び窒素酸化物を検知可能な赤外線センサと、を含む、熱エネルギー回収システム。
【請求項11】
請求項10に記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記検知ユニットは、前記抜出流路のうち前記水分除去機構と前記センサとの間の部位に設けられており一酸化炭素を除去可能な一酸化炭素除去部をさらに有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記抜出流路は、前記抜出流路の上流側の端部から前記センサへ向かう前記過給空気の流れを形成するための穴を有する、熱エネルギー回収システム。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の熱エネルギー回収システムにおいて、
前記循環流路のうち前記凝縮器と前記蒸発器との間の部位に設けられた第1開閉弁と、
前記循環流路のうち前記蒸発器と前記膨張機との間の部位に設けられた第2開閉弁と、
前記センサが前記作動媒体を検知したときに前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を閉じる制御部と、をさらに備える、熱エネルギー回収システム。
【請求項14】
過給機からエンジンに供給される過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって当該作動媒体を蒸発させる蒸発器内で前記作動媒体が漏れたことを検知可能な検知ユニットであって、
前記蒸発器と前記エンジンとの間において前記過給空気の一部を抜き出す抜出流路と、
前記抜出流路に設けられており、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップと、
前記抜出流路のうち前記ドレントラップよりも上流側に設けられており、前記作動媒体を検知可能なセンサと、を有する、検知ユニット。
【請求項15】
過給機からエンジンに供給される過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって当該作動媒体を蒸発させる蒸発器内で前記作動媒体が漏れたことを検知可能な検知ユニットであって、
前記蒸発器と前記エンジンとの間において前記過給空気の一部を抜き出す抜出流路と、
前記抜出流路に設けられており、前記抜出流路に流入した水分を除去する水分除去機構と、
前記抜出流路のうち前記水分除去機構が設けられた部位よりも下流側の部位に設けられており、前記作動媒体を検知可能なセンサと、を有する、検知ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過給機からエンジンへ供給される過給空気の熱を回収する熱エネルギー回収システムが知られている。例えば、特許文献1には、エンジンと、タービン及びコンプレッサーを有する過給機と、過給機からエンジンに供給される過給空気の熱を回収する排熱回収装置と、を備える排熱回収システム(熱エネルギー回収システム)が開示されている。タービンは、エンジンから排出された排ガスによって駆動される。コンプレッサーは、タービンに接続されており、前記過給空気を吐出する。排熱回収装置は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、膨張機と、動力回収機と、凝縮器と、ポンプと、を備えている。蒸発器は、過給機のコンプレッサーとエンジンとを接続する吸気ラインに設けられている。つまり、排熱回収装置では、蒸発器において、エンジンに供給される前の過給空気から作動媒体が熱を受け取り、この熱エネルギーが膨張機を介して動力回収機によって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−200182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような熱エネルギー回収システムでは、蒸発器としていわゆるフィンチューブ形式のものが用いられた場合、蒸発器において作動媒体が伝熱管(チューブ)から漏出すると、その作動媒体がエンジンに流入する。この漏出を検出するために、蒸発器における作動媒体の漏出を検出可能なセンサを設けることが考えられる。しかしながら、蒸発器ではドレンが生じ、このドレンには、作動媒体以外の成分(コンプレッサーに吸い込まれた排ガスに含まれる硫黄成分等)が含まれるため、センサがドレンに接触することにより、センサの誤検知や腐食の発生が懸念される。
【0005】
本発明の目的は、作動媒体を検知可能なセンサの誤検知及び腐食の発生を抑制可能な熱エネルギー回収システム及び検知ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、エンジンと、前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収機と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、前記蒸発器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、前記蒸発器内で前記作動媒体が漏れたことを検知可能な検知ユニットと、を備え、前記検知ユニットは、前記蒸発器と前記エンジンとの間において前記過給空気の一部を抜き出す抜出流路と、前記抜出流路に設けられており、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップと、前記抜出流路のうち前記ドレントラップよりも上流側の部位に設けられており、前記作動媒体を検知可能なセンサと、を有する、熱エネルギー回収システムを提供する。
【0007】
本熱エネルギー回収システムでは、抜出流路のうちドレントラップよりも上流側の部位にセンサが設けられているので、当該センサに作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。よって、センサの誤検知や腐食の発生が抑制される。
【0008】
この場合において、前記センサは、前記ドレントラップよりも上方に配置されていることが好ましい。
【0009】
このようにすれば、抜出流路のうちドレントラップとセンサとの間の部位に一定量(濃度)の作動媒体が蓄積したときにセンサによりそのことが検知されるので、誤検知がより確実に抑制される。
【0010】
また、前記抜出流路は、前記ドレントラップが設けられた主流路と、前記主流路から分岐しており、前記センサが設けられた分岐流路と、を有することが好ましい。
【0011】
このようにすれば、分岐流路には水分が除去された過給空気が流入するので、センサの誤検知や腐食の発生がより確実に抑制される。
【0012】
この場合において、前記検知ユニットは、前記主流路と前記分岐流路との接続部に設けられており前記過給空気に含まれる水分を除去するドライヤをさらに有することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、センサに作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することがより確実に抑制される。
【0014】
また、前記センサは、水分、前記作動媒体、一酸化炭素、硫化水素及びアンモニアを検知可能な半導体センサと、水分、前記作動媒体、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び窒素酸化物を検知可能な赤外線センサと、を含むことが好ましい。
【0015】
この態様では、作動媒体の検知精度が高まる。具体的に、半導体センサ及び赤外線センサはともに水分を検知するものの、この水分はドレントラップにより実質的に除去されているので、半導体センサ及び赤外線センサの双方から検出信号が出力された場合、これらのセンサで検知されたガスは作動媒体であると判断することができる。
【0016】
ここで、半導体センサ及び赤外線センサは、ともに一酸化炭素を検知する。このため、前記検知ユニットは、前記抜出流路のうち前記ドライヤと前記センサとの間の部位に設けられており一酸化炭素を除去可能な一酸化炭素除去部をさらに有することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、センサによる作動媒体の検知精度が一層高まる。
【0018】
また、本発明は、エンジンと、前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収機と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、前記蒸発器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、前記蒸発器内で前記作動媒体が漏れたことを検知可能な検知ユニットと、を備え、前記検知ユニットは、前記蒸発器と前記エンジンとの間において前記過給空気の一部を抜き出す抜出流路と、前記抜出流路に設けられており、前記抜出流路に流入した過給空気に含まれる水分を除去する水分除去機構と、前記抜出流路のうち前記水分除去機構よりも下流側の部位に設けられており、前記作動媒体を検知可能なセンサと、を有する、熱エネルギー回収システムを提供する。
【0019】
本熱エネルギー回収システムでは、抜出流路のうち水分除去機構よりも下流側の部位にセンサが設けられているので、当該センサに作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。よって、センサの誤検知や腐食の発生が抑制される。
【0020】
具体的に、前記水分除去機構は、前記過給空気に含まれる水分を除去するドライヤを有することが好ましい。
【0021】
このようにすれば、ドライヤで有効に水分が除去される。
【0022】
この場合において、前記検知ユニットは、前記ドライヤで除去された水分を排出する排出流路と、前記排出流路に設けられており、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップと、をさらに有することが好ましい。
【0023】
このようにすれば、ドライヤで除去された水分が排出流路を通じてドライヤから排出されるので、熱エネルギー回収システムの継続運転が可能となる。
【0024】
また、前記センサは、水分、前記作動媒体、一酸化炭素、硫化水素及びアンモニアを検知可能な半導体センサと、水分、前記作動媒体、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び窒素酸化物を検知可能な赤外線センサと、を含むことが好ましい。
【0025】
この場合において、前記検知ユニットは、前記抜出流路のうち前記水分除去機構と前記センサとの間の部位に設けられており一酸化炭素を除去可能な一酸化炭素除去部をさらに有することが好ましい。
【0026】
また、前記熱エネルギー回収システムにおいて、前記抜出流路は、前記抜出流路の上流側の端部から前記センサへ向かう前記過給空気の流れを形成するための穴を有することが好ましい。
【0027】
このようにすれば、抜出流路の上流側の端部からセンサへ向かう過給空気の流れが形成されるので、センサによる検知精度が高まる。
【0028】
また、前記熱エネルギー回収システムにおいて、前記循環流路のうち前記凝縮器と前記蒸発器との間の部位に設けられた第1開閉弁と、前記循環流路のうち前記蒸発器と前記膨張機との間の部位に設けられた第2開閉弁と、前記センサが前記作動媒体を検知したときに前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を閉じる制御部と、をさらに備えることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、センサにより作動媒体の漏れが検知されたときに、循環流路から蒸発器が切り離されるので、蒸発器からの作動媒体の漏出が抑制される。
【0030】
また、本発明は、過給機からエンジンに供給される過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって当該作動媒体を蒸発させる蒸発器内で前記作動媒体が漏れたことを検知可能な検知ユニットであって、前記蒸発器と前記エンジンとの間において前記過給空気の一部を抜き出す抜出流路と、前記抜出流路に設けられており、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップと、前記抜出流路のうち前記ドレントラップよりも上流側に設けられており、前記作動媒体を検知可能なセンサと、を有する、検知ユニットを提供する。
【0031】
本検知ユニットは、蒸発器とエンジンとの間に連結されることにより、蒸発器で作動媒体が漏れたことを検知でき、しかも、当該検知ユニットでは、抜出流路のうちドレントラップよりも上流側にセンサが設けられているので、当該センサに作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。よって、センサの誤検知や腐食の発生が抑制される。
【0032】
また、本発明は、過給機からエンジンに供給される過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって当該作動媒体を蒸発させる蒸発器内で前記作動媒体が漏れたことを検知可能な検知ユニットであって、前記蒸発器と前記エンジンとの間において前記過給空気の一部を抜き出す抜出流路と、前記抜出流路に設けられており、前記抜出流路に流入した水分を除去する水分除去機構と、前記抜出流路のうち前記水分除去機構が設けられた部位よりも下流側の部位に設けられており、前記作動媒体を検知可能なセンサと、を有する、検知ユニットを提供する。
【0033】
本検知ユニットにおいても、上記と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、作動媒体を検知可能なセンサの誤検知及び腐食の発生を抑制可能な熱エネルギー回収システム及び検知ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1実施形態の熱エネルギー回収システムの構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の第2実施形態の熱エネルギー回収システムの構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の第2実施形態の熱エネルギー回収システムの変形例を概略的に示す図である。
図4本発明の第1実施形態の熱エネルギー回収システムの変形例を概略的に示す図である。
図5】本発明の第3実施形態の熱エネルギー回収システムの構成を概略的に示す図である。
図6】本発明の第4実施形態の熱エネルギー回収システムの構成を概略的に示す図である。
図7】本発明の第4実施形態の熱エネルギー回収システムの変形例を概略的に示す図である。
図8】水分除去機構の変形例を概略的に示す図である。
図9】検知ユニットの連結位置の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の好ましい実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0037】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の熱エネルギー回収システムについて、図1を参照しながら説明する。この熱エネルギー回収システムは、エンジン10と、過給機20と、熱エネルギー回収ユニット30と、検知ユニット40と、を備えている。
【0038】
過給機20は、エンジン10から排出された排ガスによって駆動されるタービン21と、タービン21に接続されておりエンジン10に供給するための過給空気を吐出するコンプレッサー22と、を有する。コンプレッサー22から吐出された過給空気は、コンプレッサー22とエンジンとを接続する吸気ライン11を通じてエンジンに供給される。エンジン10から排出された排ガスは、エンジン10とタービン21とを接続する排気ライン12を通じてタービン21に供給される。
【0039】
本実施形態では、吸気ライン11にエアクーラ15が設けられている。エアクーラ15は、エンジン10に供給される過給空気を冷却媒体(海水等)によって冷却する。本実施形態では、エアクーラ15として、いわゆるフィンチューブ形式のものが用いられている。
【0040】
熱エネルギー回収ユニット30は、蒸発器31と、膨張機32と、動力回収機33と、凝縮器34と、ポンプ35と、蒸発器31、膨張機32、凝縮器34及びポンプ35をこの順に接続する循環流路36と、第1開閉弁V1と、第2開閉弁V2と、制御部38と、を備えている。
【0041】
蒸発器31は、吸気ライン11のうちコンプレッサー22とエアクーラ15との間の部位に設けられている。蒸発器31は、コンプレッサー22から吐出された(エンジン10に供給される)過給空気と、空気の沸点よりも低い沸点を有しかつ空気の比重よりも大きな比重を有する作動媒体(例えばR245fa)と、を熱交換させることによって作動媒体を蒸発させる。本実施形態では、蒸発器31として、いわゆるフィンチューブ形式のものが用いられている。すなわち、蒸発器31は、作動媒体が流れる伝熱管31aと、伝熱管31aを収容するケーシング31bと、を有している。この蒸発器31では、コンプレッサー22から吐出された過給空気がケーシング31b内を通過する過程で伝熱管31a内の作動媒体を蒸発させる。
【0042】
膨張機32は、循環流路36のうち蒸発器31の下流側の部位に設けられている。膨張機32は、蒸発器31から流出した気相の作動媒体を膨張させる。本実施形態では、膨張機32として、気相の作動媒体の膨張エネルギーにより回転駆動されるロータを有する容積式のスクリュ膨張機が用いられている。
【0043】
動力回収機33は、膨張機32に接続されている。動力回収機33は、膨張機32の駆動に伴って回転することにより作動媒体から動力を回収する。本実施形態では、動力回収機33として発電機が用いられている。なお、動力回収機33として、圧縮機等が用いられてもよい。
【0044】
凝縮器34は、循環流路36のうち膨張機32の下流側の部位に設けられている。凝縮器34は、膨張機32から流出した作動媒体と冷却媒体(海水等)とを熱交換させることによって作動媒体を凝縮させる。
【0045】
ポンプ35は、循環流路36のうち凝縮器34の下流側の部位(凝縮器34と蒸発器31との間の部位)に設けられている。ポンプ35は、凝縮器34から流出した液相の作動媒体を蒸発器31に送る。
【0046】
第1開閉弁V1は、循環流路36のうち凝縮器34と蒸発器31との間の部位に設けられている。より具体的には、第1開閉弁V1は、循環流路36のうち凝縮器34とポンプ35との間の部位に設けられている。第2開閉弁V2は、循環流路36のうち蒸発器31と膨張機32との間の部位に設けられている。各開閉弁V1,V2は、開閉可能に構成されている。
【0047】
制御部38は、第1開閉弁V1の開閉、第2開閉弁V2の開閉、及び、ポンプ35を制御する。制御部38の制御内容については後述する。
【0048】
検知ユニット40は、蒸発器31内で作動媒体が漏れたことを検知可能なユニットである。検知ユニット40は、抜出流路41と、ドレントラップ44と、センサ45と、を有する。
【0049】
抜出流路41は、蒸発器31とエンジン10との間において過給空気の一部を抜き出す流路である。抜出流路41の一端には、連結部42aが設けられている。この連結部42aは、蒸発器31のケーシング31bの下部に連結されている。抜出流路41は、その一端(上流側の端部)に連結部42aが形成された主流路42と、主流路42の中間部から分岐した分岐流路43と、を有している。主流路42の下流側の端部は、主流路42の上流側の端部よりも下方に位置している。分岐流路43の下流側の端部は、主流路42の下流側の端部よりも上方に位置している。分岐流路43の下流側の端部には、主流路42から分岐流路43の下流側の端部へ向かう過給空気の流れを形成するための穴43hが設けられている。
【0050】
ドレントラップ44は、抜出流路41に設けられている。具体的には、ドレントラップ44は、主流路42のうち当該主流路42と分岐流路43との接続部よりも下流側の部位に設けられている。ドレントラップ44は、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止する。
【0051】
センサ45は、作動媒体を検知可能である。このセンサ45は、抜出流路41のうちドレントラップ44よりも上流側に設けられている。具体的に、センサ45は、分岐流路43の下流側の端部に設けられている。センサ45は、ドレントラップ44よりも上方に設けられている。センサ45は、作動媒体の濃度に応じた検出値を出力する。
【0052】
ここで、制御部38について説明する。制御部38は、センサ45が作動媒体を検知したときに第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じる。より詳細には、制御部38は、センサ45の検出値が閾値以上となったとき(蒸発器31の伝熱管31aから漏出した作動媒体の濃度が基準値以上になったとき)に第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じる。制御部38は、各開閉弁V1,V2を閉じるとともにポンプ35を停止してもよい。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態の熱エネルギー回収システムでは、抜出流路41のうちドレントラップ44よりも上流側の部位にセンサ45が設けられているので、当該センサ45に作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。よって、センサ45の誤検知や腐食の発生が抑制される。
【0054】
また、センサ45は、ドレントラップ44よりも上方に配置されているので、抜出流路41のうちドレントラップ44とセンサ45との間の部位に一定量(濃度)の作動媒体が蓄積したときにセンサ45によりそのことが検知される。よって、誤検知がより確実に抑制される。
【0055】
また、分岐流路43が穴43hを有するので、主流路42からセンサ45へ向かう過給空気の流れが形成される。よって、センサ45による検知精度が高まる。
【0056】
また、制御部38は、センサ45の検出値が閾値以上となったときに第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じるので、つまり、循環流路36から蒸発器31が切り離されるので、蒸発器31からの作動媒体の漏出が抑制される。
【0057】
(第2実施形態)
次に、図2を参照しながら、本発明の第2実施形態の熱エネルギー回収システムについて説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0058】
本実施形態では、検知ユニット40の構成が第1実施形態のそれと異なる。具体的に、本実施形態の検知ユニット40は、抜出流路41と、センサ45と、水分除去機構46と、を有している。本実施形態では、水分除去機構46として、ドライヤ(以下、「ドライヤ46」と表記する。)が採用されている。
【0059】
抜出流路41は、吸気ライン11のうち蒸発器31とエアクーラ15との間の部位に連結されている。
【0060】
ドライヤ46は、抜出流路41に設けられている。ドライヤ46は、抜出流路41を流れる過給空気に含まれる水分を除去する。ドライヤ46としては、いわゆるエアドライヤ、メンブレンドライヤ、吸着式ドライヤ等が挙げられる。エアドライヤは、過給空気を冷却することによって生じた水分を除去した後、過給空気を常温程度に戻す装置である。メンブレンドライヤは、高分子からなる中空糸膜を有する装置である。中空糸膜は、当該中空糸膜内に流入した過給空気に含まれる水分を当該中空糸膜外へ透過させるとともに、過給空気の通過を許容する。吸着式ドライヤは、シリカゲル等の多孔質媒体中に過給空気を通すことにより、過給空気に含まれる水分を除去する装置である。
【0061】
センサ45は、抜出流路41のうちドライヤ46よりも下流側の部位に設けられている。
【0062】
以上のように、本実施形態の熱エネルギー回収システムでは、抜出流路41のうちドライヤ46よりも下流側の部位にセンサ45が設けられているので、当該センサ45に作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。よって、本実施形態においても、センサ45の誤検知や腐食の発生が抑制される。
【0063】
また、検知ユニット40は、図3に示されるように、ドライヤ46で除去された水分を排出する排出流路47と、排出流路47に設けられたドレントラップ48と、をさらに有していてもよい。
【0064】
この態様では、ドライヤ46で除去された水分が排出流路47を通じてドライヤ46から排出されるので、熱エネルギー回収システムの継続運転が可能となる。
【0065】
(第3実施形態)
次に、図5を参照しながら、本発明の第3実施形態の熱エネルギー回収システムについて説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0066】
本実施形態では、センサ45は、半導体センサ45aと、赤外線センサ45bと、を含んでいる。半導体センサ45a及び赤外線センサ45bは、分岐流路43のうち穴43hよりも上流側の部位に設けられている。半導体センサ45aは、金属酸化物半導体がガスと接触したときに生じる抵抗値の変化をガスの濃度として検知する。この半導体センサ45aは、作動媒体に加え、水分、一酸化炭素、硫化水素及びアンモニアを検知する。赤外線センサ45bは、発光部(光源)から受光部に向けて照射された赤外線が発光部及び受光部間に存在するガスによって吸収される量に基づいてガスの濃度を検知する。この赤外線センサ45bは、作動媒体に加え、水分、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び窒素酸化物を検知する。
【0067】
半導体センサ45a及び赤外線センサ45bは、ともに水分を検知するものの、本実施形態では、ドレントラップ44により水分は実質的に除去されているので、半導体センサ45a及び赤外線センサ45bの双方から検出信号が出力された場合、これらのセンサ45a,45bで検知されたガスは作動媒体であると判断することができる。よって、本実施形態では、作動媒体の検知精度が高まる。なお、半導体センサ45a及び赤外線センサ45bは、ともに一酸化炭素を検知するものの、過給空気中の一酸化炭素の濃度は非常に低いため、誤検知のおそれは無視可能である。
【0068】
このため、本実施形態では、制御部38は、半導体センサ45a及び赤外線センサ45bの双方から検出信号を受信したときに、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じる。
【0069】
(第4実施形態)
次に、図6を参照しながら、本発明の第4実施形態の熱エネルギー回収システムについて説明する。なお、第4実施形態では、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0070】
本実施形態においても、センサ45は、半導体センサ45aと、赤外線センサ45bと、を含んでいる。半導体センサ45a及び赤外線センサ45bは、抜出流路4のうち穴43hよりも上流側の部位に設けられている。このため、本実施形態では、第2実施形態に比べて作動媒体の検知精度が高まる。
【0071】
なお、本実施形態においても、第3実施形態と同様に、制御部38は、半導体センサ45a及び赤外線センサ45bの双方から検出信号を受信したときに、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じる。
【0072】
また、図7に示されるように、検知ユニット40は、抜出流路41のうちドライヤ46とセンサ45との間の部位に設けられており一酸化炭素を除去可能な一酸化炭素除去部49をさらに有していてもよい。この態様では、センサ45による作動媒体の検知精度が一層高まる。なお、一酸化炭素除去部49は、第3実施形態において、抜出流路4のうち各センサ45a,45bよりも上流側の部位に設けられてもよい。一酸化炭素除去部49には、ドレン水が含まれている場合にそれを回収する目的でドレントラップが取り付けられてもよい。
【0073】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0074】
例えば、第1実施形態において、図4に示されるように、主流路42と分岐流路43との接続部にドライヤ46が設けられてもよい。
【0075】
また、第4実施形態において、図8に示されるように、水分除去機構46は、抜出流路41から下方に向かって延びるように分岐しており抜出流路41から下向きに水分(液体)を排出可能な液抜流路であってもよい。このことは、図2及び図3に示される形態についても同様である。
【0076】
また、図9に示されるように、抜出流路41の上流側の端部は、吸気ライン11のうちエアクーラ15とエンジン10との間の部位に連結されてもよい。あるいは、抜出流路41の上流側の端部は、エアクーラ15のケーシングの下部や、吸気ライン11のうち蒸発器31とエアクーラ15との間の部位に連結されてもよい。
【0077】
また、第1開閉弁V1は、循環流路36のうちポンプ35と蒸発器31との間の部位に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 エンジン
20 過給機
21 タービン
22 コンプレッサー
30 熱エネルギー回収ユニット
31 蒸発器
31a 伝熱管
31b ケーシング
32 膨張機
33 動力回収機
34 凝縮器
35 ポンプ
36 循環流路
38 制御部
40 検知ユニット
41 抜出流路
42 主流路
42a 連結部
43 分岐流路
43h 穴
44 ドレントラップ
45 センサ
45a 半導体センサ
45b 赤外線センサ
46 水分除去機構(ドライヤ、液抜流路)
47 排出流路
48 ドレントラップ
49 一酸化炭素除去部
V1 第1開閉弁
V2 第2開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9