(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸収性生体適合性繊維管状構造体は、血液と接触状態に置かれると、血液を吸い上げるよう互いに間隔を置いて配置された複数のヤーンを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の血管グラフト。
前記複数のヤーンは各々、複数の繊維で形成され、前記繊維は、血液と接触状態に置かれると、血液を吸い上げるよう互いに間隔を置いて配置されている、請求項5記載の血管グラフト。
前記吸収性生体適合性繊維管状構造体は、可撓性を増大させるよう壁の表面に沿って一連の山部と谷部を形成するようクリンプ加工されている、請求項1〜6のいずれか1項記載の血管グラフト。
前記血管グラフトは、送達のための実質的に直線状の形態に動くことができ、そして前記血管系内への配置のための非直線状螺旋形態に戻る、請求項1〜8のいずれか1項記載の血管グラフト。
前記生体適合性繊維管状構造体は、遠位側から近位側の方向に延びる長手方向軸線を有し、前記吸収性生体適合性繊維管状構造体は、前記吸収性生体適合性繊維管状構造体の可撓性を増大させるために前記ヤーンの形状を変更して前記ヤーンによって構成された第1の一連の山部および前記ヤーン相互間に形成された第1の一連の谷部ならびに前記吸収性生体適合性繊維管状構造体内に長手方向に形成された第2の一連の山部および第2の一連の谷部を提供するようクリンプ加工されている、請求項1〜10のいずれか1項記載の血管グラフト。
前記複数のヤーンの各々は、複数のポリマーフィラメントで形成され、前記複数のフィラメント相互間には、第1の毛管効果を作るために血液を吸収するための第1の組をなす細孔が設けられ、前記複数のヤーン相互間には、第2の毛管効果を創り出すために血液を吸収するための第2の組をなす細孔が設けられている、請求項11記載の血管グラフト。
前記血管グラフトは、送達要素を受け入れるために該血管グラフトに取り付けられている保持構造体を有し、前記送達要素は、血管系を通して該送達要素によって挿入中に前記血管グラフトを保持するように前記保持構造体と協働する係合構造体を有する、請求項1〜12のいずれか1項記載の血管グラフト。
前記コア要素は、長さに沿って前記吸収性生体適合性繊維管状構造体と接触しており、前記吸収性生体適合性繊維管状構造体は、前記管の外面に取り付けられており、かつ、前記管の外面上に載っている、請求項3記載の血管グラフト。
前記吸収性生体適合性繊維管状構造体は、編組体を含み、前記編組体は、前記管に取り付けられており、前記管は、送達部材を受け入れるための開口部を有する、請求項15に記載の血管グラフト。
前記吸収性生体適合性繊維管状構造体は、前記コア要素の近位端および遠位端を覆うように長さに沿って延びている、請求項1〜17のいずれか1項記載の血管グラフト。
【背景技術】
【0003】
動脈瘤は、任意の血管の壁ならびに心臓内でおこる場合のある局所化された血液充填バルーン様の膨らみである。動脈瘤の血管内治療の一オプションは、人工血管またはステント‐グラフトを用いて損傷した血管の完全な再建である。ステント‐グラフトは、2つの部分、すなわち、ステントとグラフトで構成された植え込み可能な管状構造体である。ステントは、グラフトを支持するための足場として機能する金属または合金で作られたメッシュ状構造体である。グラフトは、典型的には、血流に対して不浸透性でありかつステントを内張りする合成ファブリックである。ステント‐グラフトは、脳機能にとって致命的であると言える栄養補給血管に対する血流を遮断する恐れがあるので、頭蓋内動脈瘤のための治療オプションではない。ステント‐グラフトはまた、硬く、送達/引っ込みが困難であり、しかも患者の血管内で高い血栓形成性を示す場合があり、これら全ては、頭蓋内動脈瘤の治療にとって望ましくない特徴である。その結果、頭蓋内動脈瘤の血管内治療の中心は、高い充填又は詰め込み密度を達成して血液の循環を止めるために動脈瘤に物質または器具を詰め込みまたは充填することにおかれているが、血液の循環を止めることにより、経時的に血栓の形成および動脈瘤の閉鎖が生じる。
【0004】
頭蓋内動脈瘤の嚢を充填するために記載された様々な物質および器具、例えば注入可能な流体、マイクロフィブリルコラーゲン、ポリマーフォームおよびビーズが存在する。ポリマー樹脂、例えばシアノアクリレートもまた用いられている。これら両方とも、典型的には、視覚化を助けるための放射線不透過性樹脂と混ぜ合わされる。これら物質は、不適切にまたは過度に運ばれた場合、分散を制御する上での困難さおよびこれらを回収する際の困難さに起因して相当大きなリスクをもたらす。
【0005】
機械的血流閉塞器具は、動脈瘤を充填するための別のオプションである。動脈瘤の嚢内に配置可能な機械的血流閉塞器具の一形式は、バルーンである。バルーンは、カテーテルの端に位置した状態で血管部位まで運ばれ、そして適当な流体、例えば重合可能な樹脂でインフレートされ、そしてカテーテルから放出される。バルーンの主要な利点は、バルーンが動脈瘤嚢を効果的に充填することができるということにある。しかしながら、バルーンは、回収するのが困難であり、造影剤で満たされていなければ視覚化できず、破損の恐れがあり、しかも様々な動脈瘤形状に適合しない。
【0006】
機械的血流閉塞器具の他の形式は、金属または合金および例えば生体適合性繊維で構成される。一般に、これら材料は、管状構造体、例えば螺旋コイルの状態に形成される。最も初期の繊維質コイルの1つは、Gianturcoコイル(クック・メディカル(Cook Medical)社製)であった。このコイルは、5cm長さの0.036インチ(0.914mm)ガイドワイヤ(内側コアを除く)で作られており、血栓形成を促進するためにコイルの一方の先端部に取り付けられたウールの4本の2インチ(5.08cm)のストランドを備えていた。この器具は、直径が3mm未満の曲がりくねった血管部位中に導入するのが困難であった。これは、一般的に、コイルが硬くて嵩張っており、しかも高い摩擦係数を有していたからである。
【0007】
チー等(Chee et al )(米国特許第5,226,911号明細書)は、コイル本体の長さに直接取り付けられた繊維を有する送達性の高い繊維質コイルを導入した。このコイルは、コイルとともに送られる血栓形成物質の量を減少させることによって曲がりくねった解剖学的構造向きに設計されていた。コイルの他の例は、リットチャート等(Ritchart et al.)に付与された米国特許第4,994,069号明細書、両方ともグリエルミ等(Guglielmi et al.)に付与された米国特許第5,354,295号明細書およびその親出願である米国特許第5,122,136号明細書である。
【0008】
材料はまた、管/ストリング/編組縫合糸(これについては、例えば、ボオック(Boock)に付与された米国特許第6,312,421号明細書、セペトゥカ等(Sepetka et al.)名義の米国特許出願第11/229,044号明細書、リーズ(Rees)名義の米国特許出願第13/887,777号明細書、両方ともウー等(Wu et al.)名義の米国特許出願第13/552,616号明細書および同第10/593,023号明細書を参照されたい)、ケーブル(これについては、例えば、クルツ等(Kurz et al.)に付与された米国特許第6,306,153号明細書を参照されたい)、または組物の状態に形成される場合がある。金属コイルはまた。フロイデンタール(Freudenthal)名義の米国特許出願第12/673,770号明細書およびウォレス等(Wallace et al.)に付与された米国特許第6,280,457号明細書に記載されているような血栓形成繊維で巻回によって覆われる場合がある。
【0009】
他の管状構造体とは異なり、編組またはポリマーコイルは、非拡張型および自己拡張型器具に更に分割される場合がある。これら器具は、例えばテキスタイル、ポリマー、金属または複合材から公知の織成、編成、および編組技術および機器を用いて作られる場合がある。ウィーブまたは仕上げ状態の組物中には、追加の特徴または効果(例えば、放射線不透過性および血栓形成性)を付与するよう製造されたオプションとしてのモノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維が含まれる場合がある。
【0010】
非拡張型組物(これについては、例えば、ベレンスタイン等(Berenstein et al.)に付与された米国特許第5,690,666号明細書、エンゲルソン等(Engelson et al.)に付与された米国特許第5,423,849号明細書、およびホー(Ho)に付与された米国特許第5,964,797号明細書を参照されたい)がインプラントとして働くことができ、そして主として、金属性であり、ポリマー製でありまたは金属とポリマーの組み合わせである場合がある。かかる設計例では、組物は、フィラメント(組物ストランド)相互間にある程度の最小限の空間を有し、その結果、連続気泡設計が得られている。加うるに、かかる設計例を採用した密な大抵の場合金属の組物の結果として、カテーテルを経て追跡するのが困難であり、または血管系に対する外傷をもたらす恐れがある硬い構造体が生じる。また、金属編組構造体は、被覆されなければまたは更に処理されなければ触るとざらざらしている場合がある。
【0011】
これら組物は、二次形状物、例えば固有の二次形状がほとんどなくまたは全くない状態に形成される場合があり、これら組物は、動脈瘤の壁に係合するよう寸法決め可能でありまたはこれら組物は、他の形状(例えば、ランダムな形状、「花」形状または三次元形状)を有する場合がある。これら構造体はまた、血液凝固を助けるために薬剤が注入された天然繊維または熱可塑性樹脂で作られている内部コア内に繊維の束を有する場合がありまたはかかる内部コア内に設けられまたはこれから突き出た繊維束を更に有する場合がある(これについては、例えば、エンゲルソン等(Engelson et al.)に付与された米国特許第5,423,849号明細書およびホートン(Horton)に付与された米国特許第5,645,558号明細書を参照されたい)。コイル状組物には生体活性または他の表面被膜付きで供給される場合がある(これについては、例えば、エーダー等(Eder et al. )に付与された米国特許第6,299,627号明細書を参照されたい)。
【0012】
非拡張型組物はまた、コアまたは一次構造体、例えばコイルまたは他の組物を覆っている場合がある(これについては、例えば、フェルプス等(Phelps et al.)に付与された米国特許第5,382,259号明細書、ベレンスタイン等(Berenstein et al.)に付与された米国特許第5,690,666号明細書、ビラール等(Villar et al.)に付与された米国特許第5,935,145号明細書、およびランジプア等(Ramzipoor et al.)に付与された米国特許第8,002,789号明細書を参照されたい)。上述の編組構造体に良く似たこれらのカバーは、連続気泡設計を有する(例えば、内側コイル構造体は、組物越しに見える)。
【0013】
形態の如何を問わず、これらの器具により高い充填密度および急な流れの淀みを達成することが困難であり、というのは、これら器具がこの壁を通る少なくとも幾分かの血流を可能にし、適切に圧縮することができず、しかも/あるいは制限された曲げ半径を有する場合がある連続気泡構造を有するからである。動脈瘤嚢が血流を溜めまたは遅くするよう十分には詰め込まれない場合、動脈瘤の頸を通る流れは、鬱血を防ぎまたはコイルコンパクションを生じさせる場合があり、それにより動脈瘤の再開通が得られる。これとは逆に、大きなまたは巨大な動脈瘤内の金属コイルの緊密な充填は、隣接の脳の実質および脳神経に対する増大した質量効果(近くの組織の圧迫および動脈瘤嚢の引き伸ばし)を生じさせる場合がある。親血管中へのコイル脱出または移動は、特に広口動脈瘤において非拡張型器具についてもう1つの考えられる問題である。
【0014】
組物はまた、自己拡張型である場合があり、かかる組物を種々の形態、例えばボール、コイル、および組み合わせ型組物‐ステントの状態に形作られる場合がある。自己拡張型器具の例は、以下の特許文献、すなわち、ロスクエタ等(Rosqueta et al.)に付与された米国特許第8,142,456号明細書、アダムス(Adams )に付与された米国特許第8,361,138号明細書、アボイテス等(Aboytes et al.)名義の米国特許出願第13/727,029号明細書、ウォレス等(Wallace et al.)名義の米国特許出願第14/289,567号明細書、マルシャン等(Marchand et al.)名義の米国特許出願第13/771,632号明細書、およびグリーンハウシュ(Greenhalgh)名義の米国特許出願第11/148,601号明細書に開示されている。
【0015】
自己拡張型組物は、頸のところの流れを遮るとともに/あるいは塞栓形成を促進するよう動脈瘤の容積の全てまたは実質的に全てを占めることが見込まれる。これら設計例の大きな問題は、寸法決めである。インプラントは、拡張時にこれが動脈瘤全体、すなわちドームから頸までを充填するのに十分な容積を占めるよう正確に寸法決めされなければならない。器具が小さめであると、上述したように充填が不十分となり、これに対し、大きめであれば動脈瘤の破裂または親血管の閉塞の恐れがある。
【0016】
頸ブリッジは、頭蓋内動脈瘤を治療する更に別の方式である。頸ブリッジは、2つのカテゴリー、すなわち、コイル塊状体が親血管中に移動しないようにするための支持体(コイルリテーナ)として作用する頸ブリッジと動脈瘤中への流れを妨げるよう頸をまたぐ頸ブリッジに分類可能である。コイル塊状体を支持する頸ブリッジは、花弁/花の形に作られて動脈瘤の頸をまたぎまたは親血管と動脈瘤嚢との間に配置される傾向がある。コイル塊状体を支持する頸ブリッジの例が次の特許文献、すなわち、ケン等(Ken et al.)に付与された米国特許第6,193,708号明細書、ビラール等(Villar et al.)に付与された米国特許第5,935,148号明細書、マーフィ等(Murphy et al.)に付与された米国特許第7,410,482号明細書、エーダー(Eder)に付与された米国特許第6,063,070号明細書、テオ(Teoh)名義の米国特許出願第10/990,163号明細書、およびジョーンズ等(Jones et al.)に付与された米国特許第6,802,85号明細書に開示されている。
【0017】
動脈瘤頸を通る流れを妨げる頸ブリッジを動脈瘤の内部か外部かのいずれかに配備することができ、かかる頸ブリッジは、塞栓コイルの配備を必要としない場合がある。配備が動脈瘤嚢の底部のところで行われ、コンポーネントが頸中に延びる動脈瘤内頸ブリッジの例がウォレス(Wallace)に付与された米国特許第6,454,780号明細書、アベラネット等(Avellanet et al.)に付与された米国特許第7,083,632号明細書、ムルシー(Morsi )に付与された米国特許第8,292,914号明細書、およびエスクリッジ等(Eskridge et al.)に付与された米国特許第8,545,530号明細書に開示されている。動脈瘤の外部(親血管内)に配備される頸ブリッジの例がボオック(Boock)に付与された米国特許第6,309,367号明細書、サラマン等(Thramann et al.)に付与された米国特許第7,241,301号明細書、レイマー(Ramer )に付与された米国特許第7,232,461号明細書、コックス(Cox)に付与された米国特許第7,572,288号明細書、ハインズ(Hines )名義の米国特許出願第11/366,082号明細書、コックス等(Cox et al.)名義の米国特許出願第14/044,349号明細書、バーク(Burke)に付与された米国特許第8,715,312号明細書、コナー(Connor)に付与された米国特許第8,425,548号明細書、およびダッガール等(Duggal et al.)に付与された米国特許第8,470,013号明細書に開示されている。頸ブリッジは、レイモンド等(Raymond et al.)に付与された米国特許第6,626,928号明細書に開示されているように新生内膜形成を促進するための表面処理剤を更に有するのが良い。設計の如何を問わず、頸ブリッジは、頭蓋内動脈瘤を治療する際に幾つかの問題を提起する。第1の主要な難題は、これら器具の配備であり、かかる配備では、ブリッジを操作して多くの場合動脈瘤頸上に再位置決めして完全な被覆を補償する必要がある。第2に、再開通が起こった場合、動脈瘤の次の再処置は、接近が頸ブリッジまたはそのコンポーネントのうちの1つによって制限されているので妨げられる。
【0018】
ステントおよびフローダイバータは、機能の面で頸ブリッジに類似しているが、親血管再建向きであり、したがって動脈瘤の遠位側から近位側に延びて頸を覆う。かかる器具は、親血管内に配備されて嚢塞栓形成を誘起させ、塞栓コイルを安定化し、そしてコイル突出および/または移動を阻止するための物理的な血流バリヤとして働くようになっている。フローダイバータのポロシティが比較的低いので(高い被覆率)フローダイバータをコイルとともにまたはコイルなしで使用することができ、かかるフローダイバータは、動脈瘤嚢中への血流を制限することによって血栓形成を促進することが判明している。しかしながら、例えば再開通、遅延ステント血栓症、遅延動脈瘤破裂、およびステント移動のような合併症もまた観察されている。ステントの一例は、リヴェリ(Rivelli)に付与された米国特許第6,746,475号明細書に開示され、フローダイバータは、ベレーズ等(Berez et al.)に付与された米国特許第8,398,701号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の方法は、低侵襲法で頭蓋内動脈瘤を治療しようとするものであるが、現行の器具の欠点なしで動脈瘤嚢内の血流を遮断する高い応従性のかつ血栓形成性のフィラーが要望されている。例えば、曲がりくねった血管系を通って脳血管系中への前進を可能にするのに十分な可撓性を達成するとともに高濃度の血栓形成物質を維持しながら高い充填または詰め込み密度を達成する器具を提供することが有利である。また、有効性を犠牲にしないで構造が単純でありかつ製造が簡単なかかる器具を提供することが有利である。さらにまた、この器具は、低侵襲挿入向きに設計されているので、かかる器具は、頭蓋内部位のところに送って配備するのが容易であるとともに頭蓋内血管系内での使用に足るほど小さなサイズで製造可能であることが必要である。この要望の全ては、迅速な凝固を促進するとともに質量効果を減少させた状態で頭蓋内動脈瘤の治癒を促進しながら嚢または他の組織を損傷させないで動脈瘤を効果的に詰め込む構成で達成される必要がある。今日まで、これら全ての目的を効果的に達成する器具が存在せず、現行の器具は、せいぜい1つの目的を達成するが他の目的を犠牲にしている。
【0021】
本発明は、動脈瘤、特に頭蓋内動脈瘤を治療する際の上述の問題点および欠点を解決する動脈瘤内マイクログラフトを提供する。本発明はまた、マイクログラフトを頭蓋内動脈瘤まで送達する頭蓋内マイクログラフト用デリバリ(送達)システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一観点によれば、本発明は、患者の血管系を閉塞するよう構成された血管グラフトであって、
吸収性生体適合性構造体と、
コア要素とを有し、コア要素は、近位端、遠位端およびコア要素内のルーメンを有し、コア要素は、生体適合性構造体内に位置決めされるとともに生体適合性構造体に取り付けられ、
生体適合性構造体が血液に露出されると、血管グラフト内に毛管効果が創り出され、その結果、血液が近位側の方向に血管グラフトを通って運ばれ、血管グラフト内で血液が凝固することを特徴とする血管グラフトを提供する。
【0023】
幾つかの実施形態では、コア要素内のルーメンは、血液を近位側の方向に運ぶよう寸法決めされている。
【0024】
幾つかの実施形態では、血管グラフトは、非自己拡張型である。幾つかの実施形態では、コア要素は、コイル状構造を有し、血管グラフトは、コイル状構造のコイル内に位置決めされた管を更に有する。幾つかの実施形態では、血管グラフトは、0.027インチ(0.686mm)未満の外径を有する。
【0025】
幾つかの実施形態では、生体適合性構造体は、血液と接触状態に置かれると、血液を吸い上げるよう互いに間隔を置いて配置された複数のヤーンを含む繊維構造体である。複数のヤーンは各々、複数の繊維で形成され、繊維は、血液と接触状態に置かれると、血液を吸い上げるよう互いに間隔を置いて配置されている。
【0026】
幾つかの実施形態では、ポリマー構造体は、可撓性を増大させるよう壁の表面に沿って一連の山部と谷部を形成するようクリンプ加工されている。
【0027】
血管グラフトは、血管グラフト内に設けられた放射線不透過性要素を有するのが良い。幾つかの実施形態では、血管グラフトは、これが送達のための実質的に直線状の形態に動くことができる非直線状形態に形状設定され、そして血管系内への配置のための同一または異なる非直線状形態に戻る。
【0028】
幾つかの実施形態では、コア要素は、放射線不透過性材料で作られている。幾つかの実施形態では、コア要素は、開放ピッチ螺旋コイルの状態に巻かれている。
【0029】
本発明の別の観点によれば、患者の頭蓋内動脈瘤を治療する閉塞器具であって、この閉塞器具が複数のヤーンおよび遠位側から近位側の方向に延びる長手方向軸線を備えた細長い管状構造体を有する。管状構造体は、管状構造体の可撓性を増大させるためにヤーンの形状を変更してヤーンによって構成された第1の一連の山部およびヤーン相互間に形成された第1の一連の谷部ならびに管状構造体内に長手方向に形成された第2の一連の山部および第2の一連の谷部を提供するようクリンプ加工されている。
【0030】
幾つかの実施形態では、複数のヤーンの各々は、複数のポリマーフィラメントで形成され、複数のフィラメント相互間には、第1の毛管効果を作るために血液を吸収するための第1の組をなす細孔(毛管作用空間)が設けられ、複数のヤーン相互間には、第2の毛管効果を創り出すために血液を吸収するための第2の組をなす細孔(毛管作用空間)が設けられている。幾つかの実施形態では、複数のヤーンおよび複数のフィラメントは、血液を吸い上げ、閉塞器具は、該閉塞器具を貫通して設けられていて第3の毛管効果を創り出すために血液を流入挿通させることができるルーメンを更に有する。ルーメンは、血液のための遠位開口部を有するのが良い。幾つかの実施形態では、閉塞器具は、非直線状形態に形状設定されている。
【0031】
本発明の別の観点によれば、患者の血管系を閉塞するシステムであって、このシステムが血管マイクログラフトを含み、血管マイクログラフトが吸収性繊維構造体、血液を血管マイクログラフト中で通すルーメン、外壁、および血管マイクログラフトに取り付けられた保持構造体を有することを特徴とするシステムが提供される。送達要素が血管系中への送達要素による挿入中、血管マイクログラフトを保持するよう保持構造体と協働する係合構造体を有する。
【0032】
幾つかの実施形態では、保持構造体は、血管マイクログラフトの内側部分内に位置決めされた放射線不透過性マーカバンドを含み、係合構造体は、送達要素に設けられていて、血管マイクログラフトの近位部分に摩擦係合するテーパ部を含む。他の実施形態では、係合構造体は、保持構造体を把持するよう第1の拡張位置から第2の把持位置に動くことができる複数の部材を含む。幾つかの実施形態では、保持構造体は、第1の係合位置と第2の非係合位置との間で動くことができるタブを含む。
【0033】
この閉塞システムは、プッシャカテーテル(部材)を更に含み、送達要素は、プッシャカテーテルを貫通して延び、マイクログラフトは、マイクロカテーテルを通って頭蓋内動脈瘤に送達可能な0.027インチ(0.686mm)未満の直径を有する。
【0034】
本発明の別の観点によれば、患者の血管内の動脈瘤を治療するシステムであって、
血管の管腔内に導入可能に構成された植え込み可能な閉塞器具を含み、閉塞器具は、血液を流入させる第1のルーメンを有し、
送達部材を含み、閉塞器具は、送達部材の一部分が閉塞器具の第1のルーメン中に延びるよう送達部材に取り付けられ、
第2のルーメンを備えたカテーテルを含み、送達部材は、第2のルーメンを貫通して延び、
送達部材の近位側への運動により、送達部材が第1のルーメンから近位側に引っ込められているときに血液が送達部材を押しのけると、毛管作用により血液を挿通させるために第1のルーメンが露出されることを特徴とするシステムが提供される。
【0035】
幾つかの実施形態では、送達部材は、動脈瘤への閉塞器具の送達中、送達器具を越えて遠位側に延びる。幾つかの実施形態では、閉塞器具は、多孔性外壁を有する。
【0036】
幾つかの実施形態では、送達部材の外周部と閉塞器具の内周部との間の間隙は、動脈瘤中への送達前では実質的に流体密であるが、閉塞器具に対する送達部材の摺動可能な運動を可能にするのに十分である。
【0037】
幾つかの実施形態では、送達部材は、0.027インチ(0.686mm)以下の直径を有するカテーテルを通って運搬可能に構成されている。
【0038】
幾つかの実施形態では、カテーテルは、閉塞器具を送達部材から離れて動脈瘤中に前進させるよう閉塞器具と当接状態にある遠位部分を有する。
【0039】
幾つかの実施形態では、閉塞器具は、ポリマー材料の多数のマルチフィラメントヤーンで構成された非拡張型組物として形成されたポリマー構造体である。幾つかの実施形態では、ポリマー構造体は、吸収性でありかつ毛管作用により遠位側から近位側の方向に血液を吸い上げる。
【0040】
幾つかの実施形態では、閉塞器具は、閉塞器具を送達部材に取り付けた状態に保持するよう送達部材の係合構造体と係合可能な保持構造体を有する。
【0041】
幾つかの実施形態では、閉塞器具は、非直線状形態に形状設定されており、閉塞器具は、送達部材上に同軸状に位置決めされた実質的に直線状の形態から動脈瘤内に配置される同一のまたは異なる非直線状形態に前進可能である。
【0042】
本発明の別の観点によれば、頭蓋内動脈瘤を治療する方法であって、
a)ルーメンが設けられている閉塞器具を用意するステップを含み、
b)送達部材を用意するステップを含み、
c)送達部材を閉塞器具とともに動脈瘤中に挿入するステップを含み、送達部材は、動脈瘤への閉塞器具の送達中、閉塞器具を保持し、
d)送達部材を閉塞器具のルーメン内に近位側に引っ込めて閉塞器具のルーメンを通る血液の流れのための隙間を提供するステップを含み、
e)次に、プッシャ部材を動かして閉塞器具を送達部材から離して前進させるステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0043】
好ましくは、送達部材を動脈瘤に送達可能にマイクロカテーテル中に挿入する。
【0044】
幾つかの実施形態では、閉塞器具は、繊維状構造体を形成する繊維で集成されている。
【0045】
幾つかの実施形態では、送達部材をマイクロカテーテルに通して動脈瘤まで前進させる前に送達部材をプッシャ部材中に挿入する。
【0046】
幾つかの実施形態では、送達部材を引っ込めるステップは、送達部材が閉塞器具に取り付けられたマーカバンドと整列するまで送達部材を引っ込めるステップを含む。
【0047】
幾つかの実施形態では、閉塞器具は、非直線状形態にあらかじめ設定されており、閉塞器具を動脈瘤中に前進させると、閉塞器具は、送達のために送達部材上に同軸状に位置決めされた実質的に直線状の形態から動脈瘤内に配置される同一または異なる非直線状の形態に戻る。
【0048】
幾つかの実施形態では、送達部材は、湾曲したまたは異形先端部を有するワイヤである。
【0049】
幾つかの実施形態では、送達部材を挿入するステップは、血管系中のステント内に位置決めされたカテーテルを通って送達部材を通過させるステップを含む。幾つかの実施形態では、閉塞器具は、送達部材によって動脈瘤内で案内可能である。
【0050】
本発明の別の観点によれば、血流閉塞器具を製造する方法であって、
a)一連のマルチフィラメントヤーンをマンドレル上で編組して近位部分、遠位部分、および長手方向軸線に沿って近位部分と遠位部分との間に延びるルーメンを有する同軸に整列したフィラメントの細長い本体を有する組物を形成するステップと、
b)細長い本体が座屈して細長い本体の長さにとって一連の山部と谷部を有する正弦波形状を作り、そしてヤーン内のマルチフィラメントの個々のフィラメントの束がマンドレルの長手方向軸線に対して実質的に横方向に向いて細長い本体の長さに沿って一連の小さい山部と小さい谷部を作るまで細長い本体をマンドレル上で長手方向に圧縮するステップと、
c)ステップ(b)の実施後、組物を加熱硬化させて山部および谷部を硬化させるステップと、
d)組物をオーブンから取り出すステップとを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0051】
幾つかの実施形態では、内部ストップ又は停止部が送達部材との協働のために器具の本体から延びている。幾つかの実施形態では、編組ステップは、一連のマルチフィラメントヤーン相互間に細孔を残す。
【0052】
本発明はまた、幾つかの観点において、血液または別の液体を動脈瘤内マイクログラフトに充填するとともに注入し、そしてこのマイクログラフトを頭蓋内動脈瘤まで送達する方法を提供する。
【0053】
本発明はまた、幾つかの観点において、頭蓋内マイクログラフトを粘稠度に基づいてカテーテル内に引っ込めて戻すシステムを提供する。
【0054】
一観点では、一連の貫通ルーメンを備えたテキスタイル構造を有する管状本体を備えた動脈瘤内マイクログラフトが提供され、この貫通ルーメンは、その長さを横切って長手方向に延びる一連の山部および谷部または波形プロフィール(壁厚に応じて)を有する。管状本体の各端のところには、オプションとして放射線不透過性であるのが良くかつ/あるいはデリバリシステムに結合するよう使用できるバンドが設けられるのが良い。構造の別の形態では、グラフトの一方の端または両方の端は、“J”もしくはカールまたは送達を助ける他の形状に形状設定されるのが良い。構造の更に別の形態では、送り出し(視覚化)、癌の治療および/または内皮細胞の成長を助けるための作用剤が管状本体の内周部または外周部に添加されるのが良い。
【0055】
幾つかの実施形態では、マイクログラフトは、二次形状を有するよう形状設定された可変スティフネス管状構造体、例えば螺旋コイルを有する。スティフネスの変化は、放射線不透過性マーカバンドまたは減少/圧縮区分によって示されるのが良い。幾つかの実施形態では、マイクログラフトの単一の端または両端は、同じ特徴を共有する他のマイクログラフトと結合するベルクロ状ロックを作るようほつれた状態であるのが良い。
【0056】
幾つかの実施形態では、マイクログラフト構造体は、血流によって方向性を示すよう形成される。マイクログラフトは、長手方向に切断されるとともに内面を露出するよう形状設定されるのが良くまたはマイクログラフトは、管状形態であるのが良い。加うるに、マイクログラフトは、穴またはスロットを有するのが良い。
【0057】
上述のうちの任意のものにおいて、編組マルチフィラメントポリエステル(例えばPET)ヤーンを用いてマイクログラフトを形成することができるが、マイクログラフトを他の可撓性モノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維、ヤーン、または繊維材料で形成できる。
【0058】
デリバリシステムの一実施形態では、1つまたは2つ以上のマイクログラフトがあらかじめ取り付けられたデリバリワイヤが貫通ルーメンを備えたオーバー・ザ・ワイヤ(over-the-wire )プッシャカテーテル中に挿入される。幾つかの実施形態では、デリバリワイヤは、1つまたは2つ以上のマイクログラフトがあらかじめ取り付けられたガイドワイヤである。さらに別の実施形態では、マイクログラフトは、手技中に用いられる一次ガイドワイヤ上に装填される。幾つかの実施形態では、プッシャカテーテルは、迅速交換カテーテルである。
【0059】
デリバリシステムの一実施形態では、バンド付きのグラスパアームを備えたプッシャワイヤがデリバリ管内のマイクログラフトの近位端に設けられたバンドまたは厚肉化区分に係合する。
【0060】
デリバリシステムの別の実施形態では、プッシュワイヤがステントまたはフローダイバータ器具に係合し、このステントまたはフローダイバータ器具は、デリバリ管内のマイクログラフトに係合する。
【0061】
デリバリシステムの別の変形実施形態では、マイクログラフトは、導入器管内に装填されてプッシャカテーテル(部材)を組み合わせて用いられる。
【0062】
本発明の一観点によれば、マイクログラフトを配置して配備する方法は、次の通りである。マイクログラフト付きの予備装填デリバリワイヤをプッシャカテーテル中に装填し(ワイヤの近位端をプッシャカテーテルの遠位端中に装填する)、ついには、プッシャの遠位端がマイクログラフトに接触するようにする。次にこのシステムを、意図した解剖学的部位のところにあらかじめ配置されているマイクロカテーテルに通して動脈瘤まで前進させる。デリバリワイヤおよびマイクログラフトの遠位端がいったんマイクロカテーテルの先端部に達すると、デリバリワイヤ先端部をロックの直ぐ遠位側でマイクログラフト内に引き戻す。ワイヤを引き戻しているとき、血液がマイクログラフト内のワイヤによって押しのけられた容積部を満たす。血液でいったん満たされると、デリバリシステムをマイクログラフトが配備されるまで前進させる。所望の位置に配置されると、マイクログラフトは、デリバリワイヤ先端部を引っ込めまたはプッシャカテーテルを更に前進させることによって離脱され、ついには、ワイヤの先端部がロックを通り抜けてプッシャ中に入り込む。この方法では、ワイヤ先端部がマイクログラフトロックの遠位側に位置している間、マイクログラフトを取り出すことができる。マイクログラフトがいったん配備されると、デリバリシステムを取り出し、必要ならば、別のあらかじめ装填されたデリバリワイヤを選択し、マイクログラフトを送達するプロセスを繰り返し実施し、ついには、動脈瘤をマイクログラフトで十分に充填するようにする。
【0063】
別の方法では、多数のマイクログラフトを単一のデリバリワイヤ上に装填する。幾つかの実施形態では、デリバリワイヤに代えて、手技中、標準型ガイドワイヤに本発明のマイクログラフトを装填し、マイクログラフトが装填された状態のガイドワイヤを一次アクセスワイヤとして使用することができる。変形実施形態では、プッシャカテーテルは、迅速交換カテーテルである。
【0064】
送達方法の幾つかの実施形態では、異形デリバリワイヤかマイクロカテーテル先端部かのいずれかを用いてマイクログラフトを動脈瘤内に配置可能に方向付ける。
【0065】
幾つかの実施形態では、マイクロカテーテルからいったん放出されるとマイクログラフトを血流によって方向付ける。
【0066】
送達方法の幾つかの実施形態では、プッシュワイヤから遠位側に延びていてローディング管を前進させることによって圧縮される一連のアームによってマイクログラフトの近位端をロックする。かかる方法では、マイクログラフトを送達するため、ローディング管の遠位端をマイクロカテーテルルアー中に挿入して回転式止血弁(RHV)で定位置にロックする。次に、マイクログラフト付きのプッシュワイヤをマイクロカテーテルに通して前進させ、ついには、プッシュワイヤがカテーテルの遠位先端部に達するようにする。プッシャワイヤのアームをマイクロカテーテルから押し出してこれらアームが拡張してマイクログラフトを放出することができるようにすることによってマイクログラフトを配備する。次に、プッシャアームを用いてマイクログラフトを動脈瘤内であちこちに動かしまたはマイクログラフトを掴んで取り出すことができる。先の方法と同様、このプロセスを繰り返して追加のマイクログラフトを挿入するのが良く、ついには、動脈瘤が高密度に詰め込まれるようになる。
【0067】
送達方法の幾つかの実施形態では、マイクログラフトをマイクロカテーテルに通してステントまたはフローダイバータと縦一列に並んで送達する。
【0068】
幾つかの実施形態では、マイクログラフトを、デリバリワイヤなしでマイクロカテーテルに通して動脈瘤中に押し込む。
【0069】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連して読むと十分に明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下の実施形態を、当業者が本発明を実施することができるようにするほど十分詳細に説明するが、理解されるように、構造的な変更は、本発明の範囲から逸脱することなく実施できる。したがって、以下の詳細な説明は、本発明を限定する意味にとられるべきではない。可能な場合、同一の参照符号は、図面全体を通じて、類似または同一のコンポーネントまたは特徴を意味するために用いられている。
【0072】
図1は、本発明の一実施形態としての頭蓋内動脈瘤中に挿入可能な動脈瘤内マイクログラフトの部分切除側面図である。全体を参照符号10で示されているこの実施形態のマイクログラフトは、剛性を減少させるとともに壁厚およびファブリック密度を増大させるようクリンプ加工された生体吸収性であるが非自己拡張型の吸収性編組ポリマーテキスタイル管状本体12を有する。マイクログラフト10は、以下に説明する利点を提供するのに十分な硬性ならびに十分な軟性を有する。マイクログラフトは、更に、以下にこれまた詳細に説明する血液凝固を促進する三重の毛管作用を実施可能にするよう構造化されている。マイクログラフトは、更に好ましくは、血液吸収量を増大させるための大きな表面積を有し、半径方向に変形可能であり、送達を容易にするために低摩擦性表面を有するとともに動脈瘤の詰め込みを促進するよう形状設定可能である。これらの特徴およびこれらの利点については以下に詳細に説明する。本発明のマイクログラフトは、動脈瘤を迅速に治療するために血液の淀みまたは凝血塊を生じさせるよう特別に設計されていることに注目されたい。マイクログラフトは、頭蓋内動脈瘤への送達が可能であるよう構成されているが、ただし、マイクログラフトは、身体の他の領域内の他の動脈瘤の閉塞ならびに他の血管領域または非血管領域内の閉塞を可能にするよう利用できる。
【0073】
オーバー・ザ・ワイヤ(over-the-wire)型デリバリシステムが本発明のマイクログラフトを動脈瘤に送達するために用意されている。本発明のこれらデリバリシステムの諸形態について以下に詳細に説明する。好ましくは、多数のマイクログラフトが動脈瘤嚢を高密度に詰め込むよう送達される。
【0074】
最初に本発明の生体適合性マイクログラフト(デリバリシステムについては後で説明する)を参照すると、マイクログラフト10の好ましい管状本体12は、実質的に100%の20デニール/18フィラメントポリエステル(例えば、PET)多フィラメント織編されたヤーンで構成されているが、デニールおよびフィラメントの他の組み合わせ、例えば10デニール/16フィラメントヤーンまたは15デニール/16フィラメントヤーンで構成されても良い。すなわち、以下に説明する理由で、各ヤーンは、細孔または空間を間に有する複数のポリエステルフィラメントで構成され、複数のヤーンもまた、これらの間に細孔または空間を有する。管状本体は、近位端14および遠位端16を有し、「近位」という用語は、ユーザの近くに位置するものとして定義され、「遠位」という用語は、ユーザから遠くに位置するものとして定義され、したがって、遠位端が最初に動脈瘤中に挿入される。次に、血液がマイクログラフト10を通って遠位側から近位側の方向に流れる。管状本体12の好ましい内径は、約0.001インチ(0.025mm)から約0.068インチ(1.727mm)までの範囲にあり、より狭くは約0.006インチ(0.152mm)から約0.040インチ(1.016mm)までの範囲にあり、例えば、約0.008インチ(0.203mm)である。管状本体の長さは、約2mmから最大約150cmまでの範囲にあるとともにその好ましい外径は、約0.002インチ(0.051mm)から約0.069インチ(1.753mm)までの範囲、より狭くは約0.010インチ(0.254mm)から約0.041インチ(1.041mm)までの範囲、例えば約0.010インチ(0.254mm)から約0.020インチ(0.508mm)までの範囲にある。これらの範囲および寸法は、好ましい範囲および寸法であるが、他の範囲および他の寸法もまた想定されることに注目されたい。これらの寸法は、マイクログラフトを頭蓋血管内に配置可能に頭蓋血管系までナビゲートしてこれらの中に入れることができるほど十分小さなサイズのマイクログラフトを提供する。
【0075】
マルチフィラメントヤーンの各々は、多数の湿潤可能なマイクロフィラメントまたは繊維をこれらの間に繊維間空間または細孔と呼ばれる空間(細孔)が設けられた状態で組み立てたものである。細孔は、液体と接触したときに毛管作用を生じさせるのに十分に寸法決めされており、その結果、多孔性ヤーンに沿う液体の自発的な流れ(すなわち、吸い上げ)が生じる。ヤーン内の繊維の間(繊維間)のこの毛管現象は、「マイクロキャピラリー」作用と呼ばれている。その結果、十分に湿潤可能でありかつ多孔性のヤーンは、高い吸い上げ性を有するとともにその長さに沿って液体を運ぶ。多数のフィラメントはまた、大きな表面積を提供し、これら多数のフィラメントは、親水性であっても良く疎水性であっても良い。
【0076】
透過性構造体(例えば、テキスタイル)への2本または3本以上の吸い上げ可能なマルチフィラメントヤーンのこの集成の結果として、「マクロキャピラリー」作用が得られ、すなわち、液体がヤーン相互間でかつこの構造体全体を通じて運ばれる。かかるヤーンおよび/または繊維は、表面模様付けされていても良く、平坦であっても良く、撚り合わされていても良く、湿潤可能であっても良く、非湿潤可能であっても良く、種々の断面(トリローバル(三葉状)、マルチローバル、中空丸形など)のビード付きであっても良く、改質表面で被覆されていてもよくまたは改質表面を有していても良く、複合材であっても良く、多孔性であっても良く、あらかじめ収縮されていて良く、クリンプ加工されていても良くまたは同様な熱処理または化学プロセスを用いてまたは改質されていても良い。
【0077】
編組機または他のテキスタイル製造機器および方法を用いてマルチフィラメントヤーンをテキスタイル管状構造体の状態に集成することができる。一般的に言って、編組機は、プログラムまたはレシピ、マルチフィラメントヤーンのスプールおよびオプションとしてのブレードオーバーすべきコアマンドレルを備えた状態でセットアップされるのが良い。所望の最終の構造的特性、例えば密度、1インチ当たりのピック(PPI)、ポロシティ、コンプライアンスなどに応じてマルチフィラメントヤーンの約8本から約288本までのうちのいずれかの本数のストランドを用いて管を形成することができる。所望ならば、コイルワインダと組み合わせて多数の編組機または1つの編組機を同時に稼動させてブレードオーバーブレードまたはブレードオーバーコイル設計を形成することができる。
【0078】
マイクログラフト10を編組の内径(ID)を設定するコアマンドレル上に編組する。コアマンドレルは、様々な材料、例えば金属、ワイヤ、ポリマーまたは他のテキスタイル繊維で作られるのが良い。コアマンドレルは、製造中、取り外しを助けるよう引き伸ばし可能な材料で形成されても良い。
【0079】
マイクログラフト10は、例えば、以下に説明する
図4Aの実施形態に示されている永続的なコア要素を更に有するのが良い。コア要素は、種々の材料で構成でき、コア要素はそれ自体、1本または2本以上のフィラメントで作られるのが良く、オプションとして、被覆されるのが良い。一実施形態では、コア要素は、ルーメンが設けられた金属コイルで形成される。コア要素は、白金‐イリジウムまたは他の材料で構成されても良い。編組およびコイルは、編組を損傷させずまたは壊変させない温度で加熱硬化されるのが良い。
【0080】
編組プロセスは、テンティング(それ自体の上に自己編組またはオーバーラップ)なしで密に織編された高密度の組物を製作するよう可能な限り最も高いPPIに合わせて調節可能である。しかしながら、幾つかの場合、使用可能な特徴、例えばロックまたは壁厚肉化のための組物バルジまたはリングを生じさせるためにテンティングが望ましい場合がある。組物は、コアマンドレルに依然として取り付けられたままの状態で、PPIを含む組物構造体を硬化させるとともに編組中に生じるフィラメント応力を除去するために製造後に熱処理されるのが良い。
【0081】
例えば編組されたままの状態の治療効果のある構造体のための好ましいPPIは、例えば、約16ストランド組物について約80から約200PPIまでの範囲、より狭くは、約120から約180PPIまでの範囲にあるのがよく、好ましくは約167PPIである。PPIは、編組するために用いられるストランドの本数、組物角度、および組物直径で決まり、したがって、120PPIおよび16ストランドを有する所与の直径の編組管は、同一直径で8ストランドを用いて編組されたときに60のPPIを有することになる(変数の全てを一定であると仮定する)。好ましいPPIは、コアが引き伸ばし可能でない場合、高密度織編パターンを作るのに足るほど高くあるべきであるが、コアマンドレル取り外しを邪魔するほど高くあってはならない。クリンプ加工を用いてこの場合もまた最終の構造的要件に応じてPPI(および編組角度)を増大させるために使用されるのが良く、このクリンプ加工については、後で詳細に説明する。
【0082】
本発明の比較的高いPPIと組み合わせてマルチフィラメントヤーンを用いる結果として、幾分剛性であって比較的小さくまたは閉じられたセル(高いピック密度)の編組管が得られる。上述したように、結果として繊維間空間に起因した多孔性ヤーンに沿う液体の吸い上げを生じさせるマイクロキャピラリー効果と、ヤーン相互間および湿潤可能なマルチフィラメントヤーンの使用と関連したヤーン間ポロシティに起因したテキスタイル壁全体を通じる液体の流れを生じさせるマクロキャピラリー効果が存在する。製造された管の比較的小さな内径および十分に高密度の織編組物パターン(すなわち、流体を保持するのに十分に小さな細孔サイズを備えたフィラメント状壁構造体)に起因して第3のキャピラリー効果が作られる。適正に寸法決めされた場合、この第3のキャピラリー効果は、近位側の方向におけるマイクログラフトルーメン内の、例えば組物のルーメン内の液体の自発的な流れを生じさせる働きを持つ。液体はまた、これが吸収されるときに他の方向に広がることができる。かくして、この構造の結果として、吸収性壁を有する軟質毛管(キャピラリーチューブ)が得られる。この三重のキャピラリー効果は、ヤーン、繊維状壁、およびマイクログラフトルーメンが血管で飽和状態になることができるということによって血流閉塞器具にとって有益である。マイクログラフトによって吸収される血液がこの構造体内に補足されるので、マイクログラフトは、血液が淀んだ状態になって迅速に血栓を形成しまたは凝血塊を形成する。
【0083】
キャピラリー特性および凝固特性を達成するため、マイクログラフト10は、同一構造体内にポロシティと流体閉じ込めの最適なバランスを達成する。これは、血液の吸い上げおよび細胞内方成長を可能にする微孔性ヤーンの制御された織編によって達成される。例えば十分に高いPPIおよび張力をもって編組された場合、多孔質ヤーンは、ある程度の透過性を維持する流体バリヤを形成することができる。結果として得られる構造体(テキスタイル管)は、流体密管による毛管現象を生じさせるのに十分な密度で織編されるのが良い微孔性ヤーンの集成体である。ヤーンのこの織編またはフィラメントの集成は、テキスタイル製造プロセス、例えば織成、編成、またはエレクトロスピニング(electrospinning)を用いて達成できる。多孔質または半多孔質フィラメントもまた、所望の吸収性を達成するためにマルチフィラメントヤーンに代えて使用できる。加うるに、マイクログラフト構造体は、毛管現象を維持するために明確に規定された内側ルーメン、例えば組物またはコア要素の壁内に形成された規定されたルーメンを含む必要なく、別法として、液体の輸送を可能にするのに十分に互いに間隔を置いて配置された繊維の多孔性集成体(液体を吸い上げる縫合糸またはストリングに極めて良く似ている)または多孔性スカフォールドもしくは生体適合性連続気泡フォームであっても良い。
【0084】
上述したように形成される半多孔性マイクログラフト10は、血栓生成を助けるという所望の作用効果を有するが、このマイクログラフトは、フィラメントが上述したように密に詰め込まれまたは緊密に編組された結果として比較的剛性でもある。剛性の高密度組物の一利点は、これが低いPPI(密度が低い)組物と比較して、その非線形熱硬化形状を維持することができるということにある。これは、動脈瘤周囲の初期充填のために用いられるフレーミング型器具としての剛性で密度の高い3D形状のマイクログラフトの使用を容易にすることができ、この場合、軟質のかつ応従性の高いマイクログラフトを塞栓形成手順の終わりに向かってフィラーまたは「仕上げ」器具として使用できる。例えば、高密度(または高いPPI)2×2(ツー・オーバー・ツー)形態の組物を初期の「フレーミング」器具として用いることができ、これに対し、低いPPIの1×2(ワン・オーバー・ツー・アンダー2)形態を有するこれよりも軟質のかつ応従性の高い組物を次に用いると、最初の器具内にフレーミングされた空間を充填することができる。しかしながら、例えフレーミング器具として用いられた場合でも、過度の剛性は、マイクロカテーテル送達にとって望ましくない機械的性質であり、というのは、過度に剛性の器具は、送達中にマイクロカテーテル先端部の望ましくない動きを生じさせる場合があり、これは、曲がりくねった血管系中の前進中にマイクロカテーテルのナビゲーションに悪影響を及ぼす場合がありまたは血管を損傷させる場合があるからである。過度の剛性はまた、剛性の器具が動脈瘤嚢の形態へのコンフォーマブルが少なく、かくして効果的な動脈瘤詰め込みを阻止するので、望ましくない特性である。
【0085】
したがって、送達および動脈瘤嚢の詰め込みを助けるよう剛性を減少させるため、マイクログラフト管状本体(組物)12を製造中、クリンプ加工し、すなわち長手方向に圧縮して熱硬化させる。組物12を圧縮しているとき、編組ストランドの軸方向配向を緩和し、それにより管状本体の長手方向軸線に対する組物角度を増大させ、それによりコイル状にしたときに可撓性の高い形態をとる真っ直ぐなワイヤに非常に良く似た構造体の全体的剛性に対するこれらの影響を減少させる。クリンプ加工はまた、構造体およびフィラメントの束を軸方向に圧縮することによって組物のPPI、壁厚、および線形密度を効果的に像対させる。この圧縮により、外方への半径方向膨張および管の壁厚の増大が生じる。結果的に得られる組物は、組物構造および加えられた圧縮力に応じて、極めて高い偏向性を示し、減少した曲げ半径を有し、高い密度を有するとともに最高2倍から3倍以上のPPIの増大を示す。
【0086】
この軸方向圧縮はまた、組物構造体が
図1に示されているように「蛇行し」または螺旋波状形態を生じさせるようにし、これは、横から見て、正弦波形状の「マクロクリンプ」と呼ばれる一連のマクロ山部と谷部である。正弦波状起伏部(マクロクリンプ)は、代表的には、壁厚と全体的組物直径の比が大きい(すなわち、全体的直径が減少する)組物構造体において顕著である。十分なクリンプ加工もまた、個々のヤーン繊維束を最も平たくされた(長手方向に組織化された断面)状態から圧縮(横方向に組織化された断面)状態に再配向させることができる。これにより、組物の表面の不均一さが増大し、その理由は、個々のヤーンが外方に膨らんで「マイクロクリンプ」(例えば
図4B参照)と呼ばれる組物表面上にマイクロ山部および谷部を生じさせるからであり、山部17は、ヤーンの最も高いところに位置し、谷部19は、隣り合うヤーン相互間に位置する。
【0087】
組物は、一連の同軸整列状態のフィラメントを有するのが良く、この組物は、フィラメントが実質的に横方向に(マンドレルの長手方向軸線に対して)配向するよう圧縮されるのが良い。
【0088】
種々の組物パターン(例えば、1×1、1×2、または2×2など)はまた、クリンプ加工されると、様々な結果を生じさせる場合がある。例えば、1×1組物構造体は、一様な管状形状を有するとともに特異性の少ないマクロクリンプパターンを有する傾向があり、これに対し、1×2組物構造体は、個々の繊維束のマイクロ山部および谷部(マイクロクリンプ)に加えて、正弦波状(マクロ山部および谷部)のクリンプ加工された構造体を生じさせる。これら構造的変化の結果として、
図1Aの正弦波形状に示されているようにマクロ山部18および谷部20を備えた超高偏向性で密度が増大した波形壁構造体が得られる。
【0089】
編組可撓性、PPIおよび/または壁厚の増大の他に、様々なクリンプ加工量は、潜在的に望ましい特徴、例えば耐キンク性、耐圧潰性、曲げ半径の減少ならびに壁のアコーディオン状圧縮(すなわち、山部および谷部の形成)による単位長さ当たりの表面積の増大をもたらす。クリンプ加工の山部および谷部の不均一なテキスチャはまた、局所化された血行力学的乱流および流れの淀みを生じさせるのを助け、その結果、血栓形成が向上する。クリンプは、器具を応従性にし、容易に偏向性にし、しかもコンフォーマブルにし、それにより血管系中の限定された空間または空所、例えば動脈瘤の詰め込みを容易にする。クリンプ加工はまた、テキスタイル壁の吸い上げ性および透過性を変化させるためにも使用でき、その理由は、クリンプ加工によりファブリックポロシティが減少するとともにヤーンの屈曲度が増大するからである。
【0090】
クリップ加工の配置場所、量および大きさを制御すると、互いに異なる大きさの可撓性および伸長度を構造体に与えてその所望の特性を達成することができる。例えば、過度のクリンプ加工は、各ヤーン束内の個々の繊維が一緒になってそれ以上圧縮することができないようになるまで圧縮するよう利用することができ、それにより組物にある程度の剛性を与えるとともにマイクロカテーテルルーメン中への押し通し性を向上させることができる。クリンプ加工およびその結果として得られる長手方向パターンに影響を及ぼす他の要因は、繊維直径、繊維のこし(スチフネス)、編組中におけるヤーン張力、壁厚、壁ポロシティ(PPI)、フィラメントの本数およびマンドレルの直径である。
【0091】
例えば、大径で薄肉の、すなわち低い壁厚と外径の比を持つ管状本体(組物)は、小径の厚肉クリンプ加工管よりも密度が高くかつ視認性の高いマクロ山部および谷部を呈することができる。
図2A〜
図2Cは、山部が互いに近く位置するにつれてクリンプ加工が正弦波形態よりもアコーディオン状の折り目またはひだ構造体を形成することができるかかる大径薄肉の管の一例を示している。小径の組物(高い壁厚と外径の比を備えた組物)をクリンプ加工することにより、代表的には、全体的直径と比較して大きな波状の正弦波長手方向(マクロ)輪郭が生じるとともに、
図16Aに示されているように構造体の壁厚が増大する。注目されるべきこととして、正弦波状輪郭は、形態が代表的には三次元(螺旋状)であり、組物全ての側から見える。クリンプ加工中、管状本体の端もまた、互いに対して回転/より合わせを行うのが良く、次に、別の方法として熱硬化させると、偏向性が管状本体に与えられる。
【0092】
組物10は、組物角度またはPPIを変化させることにより、ヤーン張力を減少させることにより、切れ目/スリットを追加し、ヤーンまたはストランドの本数を変え、またはその長さに沿って繰り返しパターン(例えば、平坦な区分またはキンク)を熱硬化させることによってより可撓性に作ることも可能である。剛性の高い管が望まれる場合、高密度ヤーンおよび/または組物パターンを用いるのが良くまたはクリンプ加工度を減少させる。加うるに、マイクログラフト構造体は、特に細デニールテキスタイルを用いた場合に同軸構造(すなわち、グラフト内にグラフトを有する)またはマルチプライもしくはマルチルーメン壁設計を有することができる。ルーメン内組物インサート、例えば上述のコイルもまた、キャピラリー効果を促進するよう高い湿潤性/親水性の材料で構成されるのが良くまたは覆われるのが良い。例えば、マイクログラフトは、治療効果のある外面を維持しながら高い親水性かつ/あるいは放射線不透過性の二次組物または内部コイル構造体と同軸状に集成するのが良い。
【0093】
管状本体12は、モノフィラメントヤーン、マルチ不ラメントヤーン、ストランド、縫合糸、マイクロファイバ、または剛性、半剛性、天然または熱可塑性であるワイヤから部分的にまたは完全に編組され、織成され、または編成されるのが良い。かかる材料としては、ダクロン(Dacron)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリプロピレン、オレフィンポリマー、芳香族ポリマー、例えば液晶ポリマー、ポリエチレン、HDPE(高密度ポリエチレン)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPEまたはUHMW)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ePTFE、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ナイロン、PEBAX、TECOFLEX、PVC、ポリウレタン、サーモプラスチック、FEP、シルク、およびシリコーン、生体吸収性ポリマー、例えばポリグリコール酸(PGA)、ポリ‐L‐グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ‐L‐乳酸(PLLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリジオキサノン(PDS)および疑似ポラミノ(pseudo-polamino)型のチロシンを主成分とする酸、押し出しコラーゲンが挙げられるが、これらには限定されない。また、金属材料、金属合金材料または放射線不透過性材料が含まれるのが良い。かかる材料は、ストランドまたはフィラメントの形態をしているのが良く、かかる材料としては、例えば、白金、白金合金(例えば、白金‐イリジウムまたは白金‐金)、単一ステンレス鋼合金、多ステンレス鋼合金、ニッケルチタン合金(例えば、ニチノール)、硫酸バリウム、酸化亜鉛、チタン、ステンレス鋼、タングステン、タンタル、金、モリブデン合金、コバルトクロミウム、タングステンレニウム合金が挙げられる。
【0094】
管状本体を構成するための種々の製造方法または種々の材料の使用は、上述したキャピラリー効果に影響を及ぼす場合がある。例えば、材料または構成方法の変更の結果として、壁ではなく管の内側ルーメンにのみ毛管流が制限された単一の毛管を得ることができる。当業者には理解されるべきこととして、ストランドまたはフィラメントを編組し、織り合わせ、編成しまたは違ったやり方で組み合わせてファブリックまたはテキスタイル構造体を形成することができる。
【0095】
次に本発明のマイクログラフトの例示の実施形態を示す図面を参照すると、
図1のマイクログラフト10は、上述したように、近位端14および遠位端16を備えた管状本体12を有する。
【0096】
器具がX線透視(X線)下で見ることができるよう放射線不透過性をもたらすため、マイクログラフト10は、マイクログラフト10の端中に挿入された放射線不透過性マーカバンド22を有するのが良い。
図17は、かかるマーカバンドを備えたマイクログラフト10の端の絵画図である。コイルの形態をしていても良いマーカバンドは、タンタル、白金、白金合金(例えば、白金‐イリジウム合金)、金、タングステン、または任意適当な放射線不透過性材料、例えば放射線不透過性ポリマーで作られるのが良い。マーカバンド22は、好ましくは、長さが約1mm以下であり、これらマーカバンドは、管状本体12上でこれに沿って摺動するのに十分な内径のものであるか管状本体12内に嵌まるよう小さな直径かのいずれかのものであるのが良い。
図1は、管状本体の内側に嵌め込まれたマーカバンド22の一例を示しており、マーカバンド22は、組物を領域24のところでバンド(溶融繊維)上で溶融させることによって固定されても良くまたは接着によって取り付けられても良い。バンド22はまた、これらバンドをスウェージ加工しまたは管状本体12の外部上に折り重ねることができるよう寸法が小さめでありかつ長さ方向にスライスされるのが良く、あるいは、寸法が小さめのバンド22を管状本体12に取り付けるために寸法が小さめのバンドを延伸/圧縮長さにわたって摺動させることができるよう管状本体12を延伸させるのが良い。変形実施形態では、バンドは、一端がラッパ状に広げられているのが良い。
【0097】
2つのマーカバンドが図示されているが、変形実施形態では、1本または3本以上のバンドが放射線不透過性を向上させるようその長さの幾つかの部分に沿って管状本体周りに配置されても良い。長さに沿って位置決めされたバンドは、一端のところに設けられたマーカバンドまたは両端のところに位置するマーカバンドに替えてまたはこれらに加えて設けられるのが良い。放射線不透過性繊維を利用すると、これらのバンドを連結することができ、放射線不透過性繊維がテキスタイル構造体中に組み込まれても良くまたは管内に配置されても良い。これらのバンドは、金属で構成されるのが良くまたは変形例として非金属材料、例えば放射線不透過性収縮チューブまたはポリマーで構成されても良い。
【0098】
マーカバンドは、接着剤を用いて、管状本体上への直接的なスウェージ加工または巻回によって機械的に、あるいは材料のうちの1つを過熱し(可能な場合)、そして溶融させることによって管状本体12に取り付けられるのが良い。バンドは、変形例として、以下に説明するようにコア要素、例えば螺旋状コア要素に螺着されまたは螺入されることにより取り付けられても良い。
【0099】
マーカバンドに代えてまたはこれに加えて、マイクログラフトを放射性不透過性物質、例えば造影剤溶液またはナノ粒子で被覆し、湿潤させ、染色し、または含浸させることによって放射線不透過性を得ることができる。これは、製造の際にまたは臨床手技の一部として手術室内で実施できる。繊維またはヤーンはこれら自体、上述したように放射線不透過性物質でドープされもしくは含浸されまたは被覆されるのが良い。マイクログラフトは、その長さに沿って一連の等間隔を置いて配置された放射線不透過性インサートを更に有するのが良く、その結果、臨床的セッティングにおいて視覚化にとって十分であると言える間欠的な放射線不透過性が得られる。
【0100】
放射線不透過性を提供することに加えて、バンド22は、マイクログラフトの送達について以下の説明で良好に理解されるように、すり減りを制御するための手段としてまたはデリバリシステムの一体部分(例えば、ストップカラー)として管状本体12内に構造的変化を指示するためにも使用できる。
【0101】
バンドの別の変形例として、漸増する放射線不透過性を示すよう作られているレーザカットされたニチノール構造体を利用しても良い。これら構造体を内周部か外周部かのいずれかについてマイクログラフトの近位端および/または遠位端に接着し、これら上に溶融させ、縫い付けまたは違ったやり方で取り付けるとともに/あるいは管状本体の長さに沿って取り付けるのが良い。マイクログラフトの幾つかの区分または編組ポリマーの溶融可能/融解可能スリーブもまた過熱してこれらを用いてバンドまたは他の放射線不透過性構造体(コンポーネント)をマイクログラフトに接着させるのが良い。変形例として、バンドまたは他の放射線不透過性コンポーネントを組物内のコイル巻線中への螺入によって取り付けても良い。バンドまたは他の放射線不透過性コンポーネントは、自己拡張性か非自己拡張性かのいずれであっても良い。以下に説明する送達ワイヤおよびプッシャカテーテルと結合されると、これらバンドまたは他の放射線不透過性コンポーネントは、ワイヤに対するマイクログラフトの直線運動を制御するのに役立ちうる。
【0102】
放射線不透過性を提供するバンドの変形例として、上述したような放射線不透剤を利用することができ、かかる放射線不透剤は、グラフトの全長の完全視覚化を可能にする。視覚化を提供する別の手法は、マイクログラフトの内側ルーメンの全長を横切って放射線不透過性コイルまたはインサートを設けることである。しかしながら、好ましくは、かかるコイルが構造体の半径方向スティフネスの望ましくない増大を追加するのを回避するためにかかるコイルの追加によりグラフトを全長にわたって放射線不透過性にし、また、X線視認性を最大にしながらかかるスティフネスを最小限に抑えるために、かかるコイルは、一般的にはX線透視法によっては見えない極めて細いワイヤを用いて巻回されるのが良いが、十分に小さいピッチ(各ループ相互間の間隔)でコイル状にされると、かかるコイルは、密度および視認性が漸増するようになる。コイルのピッチはまた、幾つかの区分を他の区分よりも高い放射線不透過性または可撓性にするよう変化しても良い。コイルは、例えば白金、白金‐イリジウム、タンタル、金、銀または医療器具視覚化に用いられる他の放射線不透過性物質のような材料で作られるのが良い。コイルは、使用に応じて、その長さに沿って連続直径または変化する直径を有するのが良い。コイルは、放射線不透過性バンド、被膜と組み合わせてまたはスタンドアローン型放射線不透過性溶液として使用されても良い。マイクログラフト内へのかかるコイルの挿入はまた、コイルと組物の半径方向並置状態に応じて、所望ならばクリンプ加工中に形成されるマイクロクリンプの大きさを減少させることも可能である。また注目されるべきこととして、コイルまたは他の内部インサートは、クリンプ加工の大きさに応じて、組物壁越しに部分的に視認できるのが良い。
【0103】
必要ならば、単純な“J”形状を管状本体12中に熱硬化させて動脈瘤中への導入を助けるのが良い。また、送達および/または内皮細胞成長を助けるよう作用剤を管に添加するのが良い。例えば、親水性被膜を管状本体12の表面に被着させると、マイクロカテーテルを通る送達を助けることができまたは薬剤が注入された膨潤可能なヒドロゲルを追加すると、動脈瘤の薬剤治療および追加の充填をもたらすことができる。別の例は、凝固プロセスを遅らせるかまたは阻止するかのいずれかを行いあるいは凝血塊形成を促進するために追加されるのが良い凝固剤である。生体吸収性および生体適合性繊維状要素、例えばダクロン(ポリエチレンテレフタレート)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、フルオロポリマー(ポリテトラフルオロエチレン)、ナイロン(ポリアミド)またはシルクを組物中に組み込みまたは表面に被着させると、管状本体12が血管系内の空間を埋める能力を促進させて凝血塊形成および組織成長を容易にすることができる。同様に、特定の使用(例えば、塞栓化学療法)に応じて、ヒドロゲル、薬剤、化学療法ビーズおよび/または繊維を管状本体12の内周部に添加しても良くあるいは壁、ヤーン、または繊維中に注入しても良い。マイクログラフトの仕上げ側(近位端)では、マイクロコイル(図示せず)を追加して動脈瘤嚢と親血管との間にバリヤをもたらすのが良い。
図1は、以下に説明する同様な特徴または機能を含むことができる。
【0104】
図2A〜
図2Cは、大きな直径および薄い壁を有することを除き
図1のマイクログラフト10とほぼ同じマイクログラフトを示している。
図2Aは、山部および谷部を形成するよう上述したプロセスでクリンプ加工された薄肉マイクログラフト25を示しており、その結果、円周方向波形部または折り目が作られている。
図2Bは、管状本体を延伸することによって山部と谷部を強調するために例示目的で提供されている。
図2Cは、曲げ位置にあるマイクログラフト25の一部分を示している。幾つかの実施形態では、マイクログラフトは、動脈瘤嚢内への積み込み具合を向上させるようこの曲り部の状態に、例えばU字形形態にあらかじめ設定されている。図示のように、マイクログラフトの構造に起因して、マイクログラフトは、曲げられると、曲がりコイルとほぼ同じ仕方でその半径またはアールを維持する。(マイクログラフトは、以下に説明するように実質的に直線位置で運ばれる)。図示のように、圧縮および熱硬化(クリンプ加工)プロセスは、山部18′および谷部20′を備えた「アコーディオン状」構造を作る。
図2A〜
図2Cでは、マイクログラフト25の壁は、きめの細かい組物またはテキスタイル構造体であり、かかる壁は、直接的な血流中に配置されると中実構造体に近くなり、高い流れの妨害度を生じさせる。グラフトの別の特徴は、その色が白色であるということであり、これは、PET形成および処理に応じて様々であって良い。所望ならば、白色以外の色を用いて例えば互いに異なる本体直径または機械的特性または治療特性の移り変わりを示すことができる。
【0105】
図4A、
図4B、
図4Dおよび
図4Eは、変形実施形態としてのマイクログラフト10′を示している。マイクログラフト10′は、これが編組管12′で作られていて管12と同一の特徴および機能を有するとともに本明細書において説明する別の構成のうちの任意のものを有することができるので、マイクログラフト10とほぼ同じである。かくして、本明細書におけるフィラメント、ヤーン、キャピラリー効果、形状設定などの種々の説明は、
図4Aのマイクログラフト10′に完全に当てはまる。しかしながら、マイクログラフト10′は、好ましくは螺旋コイルで作られていて上述のキャピラリー効果において血流のためのルーメンを有するコア要素27を有している。好ましくはニチノールで構成された管29(ただし、他の材料を利用することができる)が管29の近位側コイル内に嵌め込まれ、好ましくは、螺旋コア要素27の螺旋巻線中にねじ込まれまたは加撚状態で入れられている。組物は、管29への取り付けのために管29に融着され、領域24は、融解状態の繊維を示している。管29は、偏向可能なタブ29aおよび送達方法と関連して以下に説明するように送達ワイヤを受け入れる窓29bを有している。タブ29aは、
図4Bの整列位置に付勢され、このタブは、窓29bを通ってワイヤを受け入れる傾斜位置まで動かされ、タブ29aは、以下に説明するデリバリシステムのワイヤと係合可能な係合/保持構造体を提供している。編組管または組物12′は、各々が多数の繊維33を含むヤーン31で構成されている。編組機から取り出されると、管12′のヤーン31は、繊維33が水平に束ねられていて互いに間隔を置いて配置された状態で比較的平らな状態に置かれる(これについては、マンドレル35に嵌めた状態で配置された管12′を示す
図4Dを参照されたい)。
図4Eは、
図4Aの構造体への形成に先立ってクリンプ加工された編組管12′を作るためにマンドレル35上にクリンプ加工された編組管12′を示している。組物が1つまたは2つ以上の箇所でマンドレル35に固定され、長手方向力が組物に加えられると、ヤーン31中の繊維33は、互いに近づいて束となり、普段長さに沿ってそれによりマイクロ山部17およびマイクロ谷部19(山部17相互間)ならびに対応のマクロ山部18およびマクロ谷部20を垂直に作り、それにより正弦波形状(
図4E)を作る。(本明細書において開示した
図1の実施形態の山部および谷部を同様の仕方で形成することができる)。山部および谷部の広がりは、加えられる力の大きさおよび軟度の所望の大きさで決まる。管は、完全にクリンプ加工されても良くまたはその長さに沿って間隔を置いて選択的にクリンプ加工されても良い。
【0106】
図4Cの変形実施形態では、ロックタブに代えて、マーカバンド22′が送達ワイヤに取り付けられている構造体に係合するための保持構造体を提供するよう管に取り付けられている。他の全ての観点では、
図4Cのマイクログラフトは、
図4Aのマイクログラフト10′と同一であり、したがって、
図4Cのマイクログラフトは、同一の参照符号でラベル表示されている。
【0107】
図3Aは、動脈瘤内マイクログラフトの別の実施形態を示している。管状本体28を備えた可変スティフネス型マイクログラフト26が
図1を参照して上述したのと同一の特徴および機能を有しまたは、その変形例、例えばマルチフィラメントヤーン、キャピラリー効果などを有する。しかしながら、この実施形態では、マイクログラフト26は、形成およびクリンプ加工後、図示のように二次コイル形状を形成するようマンドレルに巻き付けられる。これは、
図16Bにも示されており、
図16Bでは、マイクログラフト26は、編組およびクリンプ加工後(依然として真っ直ぐである)およびマイクログラフトがかかる編組およびクリンプ加工構造体の形成後にコイルの状態に巻かれた後の両方の状態で図示されている。本明細書において説明する様々な特徴を備えた本発明において説明する他のマイクログラフトもまた巻いて所望ならば
図3Aのコイル形状にすることができる。マイクログラフト26の管状本体28は、近位剛性区分30および遠位可撓性区分32をそなえた可変スティフネス型組物で構成され、漸変スティフネスは、上述した仕方で達成される。管状本体28はまた、一次直径Dを有する。放射線不透過性バンド36がX線透視下における視覚化を可能にするよう提供されるのが良く、この放射線不透過性バンドは、組物のスティフネスが移行する組物のほぼ中心に位置した状態で示されている。変形例として、放射線不透過性バンド36を他の場所に配置しても良く、多数のバンドを提供しても良い。変形例として、放射線不透過性を上述した種々の仕方で達成しても良い。
【0108】
器具26は、
図3A(および
図16B)のあらかじめ付勢された(二次)螺旋形状の状態に熱により形状設定されている。これは、器具26の送達後の形状設定形態である。この器具は、二次形状を形成するのに必要な延伸、曲げおよび過熱に起因して、マイクログラフト10のような顕著な山部および谷部を備えなくても良い。しかしながら、もとのクリンプ加工作業により、所望の特性が得られるとともにマイクログラフトがより応従性になる。また、クリンプ加工の部分延伸または部分復元の結果として、編組ルーメンは、積み込み具合の向上のために半径方向により応従性になる。
【0109】
図示のように、螺旋形状の状態で示されているが、器具26は、任意の複雑な三次元形態に形状設定でき、かかる形態としては、クローバー形、8の字形、花の形、渦形、卵形、不規則形状、または実質的に球形の形状が挙げられるが、これらには限定されない。上述したように、視覚化を助けるために軟質の開放ピッチコイルを組物の内周部に追加するのが良い。かかる金属コイルのスティフネスが十分に低い場合、ポリマー組物の二次形状設定は、器具の全体的形状の実現を促進することになる。換言すると、組物の二次形状は、通常、ポリマーのガラス繊維温度よりも極めて高い温度で形状設定する形の定まっていない金属コイルを成形する。
【0110】
マイクログラフト26は、器具の一端のところに示されたほつれた状態の端部繊維38を更に有する。変形例として、これらばらばらのほつれた状態の繊維を所望ならば(本明細書において開示する他のマイクログラフトがかかるほつれた状態の端部を更に有する場合)、組物の両端のところに位置しても良い。これらほつれた端部が同一の特徴を備えた動脈瘤嚢内の別の組物と接触したとき、互いに結合する端部は、ベルクロ(Velcro)のように働き、それによりマイクログラフトがインターロックするとともに一緒に動くことができる。カテーテル中への送り込みおよび導入のため、器具26は、細長く、例えば実質的に直線状の形態に動かされ、そして一次直径Dを受け入れるのに十分なサイズの内径を備えたローディング管中に挿入される。オプションとしてのフィラメント(図示せず)が動脈瘤頸のところでの流れを妨げるよう放出時にステントまたはフローダイバータと親血管壁との間でのマイクログラフトのはさみ付け/固着を可能にするよう組物の近位端から延びるのが良い。包装および送達については以下に詳細に説明する。
【0111】
図3Bは、動脈瘤内マイクログラフトの別の実施形態を示している。スライスされた状態のマイクログラフト40が先の実施形態について説明したのと同一の特徴および機能、例えばマルチフィラメントヤーン、キャピラリー効果などを含むのが良い管状本体42を有している。管状本体42は、長手方向切れ目44を有し、この管状本体は、その内面46を露出するよう形状設定されており、それにより、ラッパ状に広がった遠位端部が提供されている。マイクログラフト40は、流動中の血液によって制限される表面積を最大にするとともに血流による運動を助けるために露出された内径の一部分を備えた状態で構成されている。器具40は、視覚化のために近位マーカバンド48(または変形例として、他の上述した放射線不透過性特徴部のうちの任意のもの)を有する。レーザカットまたは他の方法によって形成された穴50,52が血液との連通を可能にする。マイクログラフト40は、デリバリシステムによって手動か動脈瘤内の血流の循環による運動かのいずれかにより動脈瘤の頸のところへの配置に特に適している。動脈瘤へのマイクログラフト46の送達の結果として、マイクログラフトが既存の血流内に補足されて動脈瘤頸のところで堆積すると頸/ステントインターフェースのところで血液凝固が生じる場合がある。この構造は、丸形の管、平たい管、または血流によって容易に動かされる他の形状物であっても良い。
【0112】
上記実施形態の管状本体は、クリンプ加工された編組管を説明したが、かかる管は、他の製造方法、例えば織成、編成、押し出し、またはエレクトロスピニングを用いて製作できる。構造体はまた、様々な直径または様々な断面が交互に位置した状態で、例えば、扁平な状態から丸形の状態に製造されても良い。加うるに、管は、所望の管状または実質的に円筒形の構造体の状態に形成されるロールドシートまたは他の材料で作られるのが良い。次に、例えばクリンプ加工か選択的レーザ切断かのいずれかによって構造的可撓性を調節するのが良い。所望ならば、管状本体もまた、薄肉テープを作るために平たくされても良くまたは卵形の区分を形成するよう熱圧されても良い。
【0113】
また、クリンプまたは山部および谷部を作るためにクリンプ加工または軸方向/長手方向圧縮および熱の使用を説明されたが、山部と谷部を構成する他の製造方法を利用しても同様の効果を達成することができる。例えば、ワイヤをマンドレル上に配置された組物にしっかりと巻き付けても良い。巻線相互間の隙間は、山部を作り、集成体をヒートセットし(長手方向圧縮によりまたはこれを用いないで)ワイヤを取り外すと、ワイヤが組物を圧縮した場所に谷部が作られ、組物を露出させたところに山部が形成される。
【0114】
図16A〜
図16Cおよび
図17は、20デニール/18フィラメントポリエステルヤーンで構成されたマイクログラフト10の管状本体12の一部分を示している。
図16Aは、形成されたマクロ山部および谷部を示すためにクリンプ加工されたマイクログラフト10の管状本体12の傍らに位置する非クリンプ加工管状本体171の例を示している。
図16Bは、
図3Aと類似したポストクリンプ加工状態の螺旋コイル172の状態に形状設定された管状本体の傍らに位置するクリンプ加工された状態の管状本体を示している。
図16Cは、上述したキャピラリー作用によりマイクログラフト中に引き込まれた流体174を有するマイクログラフト10を示している。
図17は、
図1の場合と同様に本体に取り付けられたマーカバンド(ストップカラー)22を備えた管状本体を示している。
【0115】
次にマイクログラフトの送達に注目すると、本発明のデリバリシステムの幾つかの実施形態が開示される。デリバリシステムのうちの多くは、カテーテル内でのマイクログラフトの蛇行を最小限に抑えるとともに長い長さのマイクログラフトの送達を可能にするオーバー・ザ・ワイヤ型挿入を可能にする。デリバリシステムはまた、部分配備後における、幾つかの実施形態では完全配備後においてであってもマイクログラフトの再取り出しを可能にする。
【0116】
第1の実施形態を参照するとともに
図5A〜
図5Dを参照すると、動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムが示されており、このデリバリシステムは、全体が参照符号54で指示されている。マイクログラフト10を送達するデリバリシステムについて以下に説明するが、理解されるべきこととして、このデリバリシステム(ならびに本明細書において説明する他のデリバリシステム)は、本明細書において開示するマイクログラフトのうちの任意のものを送達するために使用できる。デリバリシステム54は、マイクログラフトおよびプッシャカテーテル58を運ぶためのあらかじめ装填された(予備装填状態の)デリバリワイヤ62を有し、あらかじめ装填された状態のデリバリワイヤ62は、プッシャカテーテル58内に配置されている。オプションとして、このシステムは、以下に説明する
図7のローディングシースとほぼ同じローディングシースを有するのが良く、このシステムは、マイクログラフトをデリバリワイヤ62に取り付けた状態に保持するようこのローディングシステム上に位置決めされる。デリバリシステムの個々のコンポーネントをこの手技中に包装材から取り出すことができ、そしてデリバリワイヤ62を、カテーテル58を通って近位側に挿入することによって集成することができ、それによりマイクログラフト10の近位端およびプッシャカテーテル58の遠位端のところに接合部57が作られる。変形例として、これらをデリバリワイヤ62がプッシャカテーテル58内に既に位置決めされるとともに
図7のローディングシーストほぼ同じ保護ローディングシースがマイクログラフト10をデリバリワイヤ62に取り付けた状態で保持するようデリバリワイヤ上に位置決めされた状態であらかじめ包装されても良い。このデリバリシステムは、標的解剖学的構造に接近するためのスタンドアローン型デリバリシステムとして使用できまたは以下に説明するようにマイクロカテーテルと併用できる。任意の必要なフラッシングまたはコーティング活性化を患者の体内中への挿入に先立って医師の決定により実施できる。
【0117】
デリバリワイヤ62には領域56のところでマイクログラフト10が取り付けられている。デリバリワイヤ62は、近位端64から遠位端66まで延びる長さを備えた本体を有し、この長さは、約20cmから約400cmまでの範囲にあり、特に約100cmから約300cmまでの範囲にあるのが良く、特に約200cmであるのが良い。デリバリワイヤ62の適当な直径は、約0.0025インチ(0.064mm)から約0.040インチ(1.016mm)までの範囲にあるのが良く、より狭くは約0.002インチ(0.051mm)から約0.035インチ(0.889mm)までの範囲になるのが良い。デリバリワイヤの外径は、連続しているのが良く、例えば約0.014インチ(0.356mm)であるのが良く、または、ワイヤは、近位側の方向から遠位側の方向にテーパしているのが良く、例えば約0.007インチ(0.178mm)から約0.003インチ(0.076mm)までテーパしているのが良い。他のサイズもまた、手技に用いられるプッシャカテーテルおよび/またはマイクロカテーテルIDに応じて想定される。
【0118】
デリバリワイヤ62の遠位部分68は、コイルを有するのが良く、デリバリワイヤ62のまさしく遠位側の先端部66は、球形であって良く、増大した直径のものであって良く、あるいはマーカバンドまたはコイルを備えるのが良い。デリバリワイヤの遠位部分68は、放射線不透過性であるのが良くかつ追跡、血管選択、および動脈瘤内操作を助けるよう形状設定可能であるのが良い。例えば、遠位部分は、以下に説明する
図11Aの場合のようにJ字形に形状設定されるのが良い。デリバリワイヤ62はまた、親水性被膜で被覆されるのが良い。デリバリワイヤ62は、マイクログラフト10をデリバリワイヤに取り付けた状態に保持するのを助ける保持構造体、例えばテーパ付き領域を有する。変形実施形態では、保持を更に助けるためまたはかかる保持構造体、例えば標準型ガイドワイヤを備えていないデリバリワイヤが利用される場合、保護ローディングシースを利用するのが良い。別の実施形態では、マイクログラフトは、
図9を参照して以下に説明するマイクログラフト導入器システム136を用いて取り付けられるのが良い。
【0119】
デリバリワイヤ62は、マイクログラフト10を取り付けるための係合構造体を形成するテーパ付き領域70(
図5C)を有する。近位ストップカラー22がテーパ付き領域70に嵌められるのが良い。ストップカラー22は、デリバリワイヤ62に取り付けられるのが良く、または変形例としてかつ好ましくは、マイクログラフト10の内側部分に取り付けられた保持特徴部を形成するのが良い。いずれの場合においても、マイクログラフト10の近位端は、デリバリワイヤ62と摩擦係合してこれによって保持される。マイクログラフト10は、ワイヤ遠位先端部66から距離Lのところでワイヤ62に同軸状に(かつ摺動可能に)取り付けられている。距離Lは、
図5Cに示されているようにワイヤテーパ部70と相互作用する近位ストップカラー22によってまたはワイヤに取り付けられた他のハードストップ(例えば、マーカバンド)およびマイクログラフトの全長によって設定される。例えば、長いマイクログラフトは、短い距離Lを有するのが良い。幾つかの実施形態では、距離Lは、ゼロであっても良く、ハードストップは、デリバリワイヤ62がグラフトの遠位端を通過するのを阻止するようデリバリワイヤ62の遠位端に設けられた膨らみ、球部または頭部(例えば、以下に説明する
図5Eの頭部184)と相互作用するようマイクログラフト10の遠位端上に、遠位端内にまたはこの近くに設けられるのが良い。この場合、マイクログラフト10の遠位先端部は、
図5Eの実施形態の場合と同様にデリバリワイヤ62の遠位端に隣接して位置する。
【0120】
図5Cは、マイクログラフト10の近位端の拡大断面図であり、ストップカラー22は、デリバリワイヤ62のテーパ付き領域70に係合している。図示のストップカラー222は、視覚化のための放射線不透過性を提供するためのマーカバンドの形態をしている。ワイヤテーパ部70は、ワイヤ62上でこれに沿うマイクログラフト70の近位側への運動を阻止するための近位ストップとして働く。
【0121】
マイクログラフトとデリバリワイヤ62を結合しまたは組み合わせる他の手法もまた想定される。上述したように、近位側および遠位側のニチノール部品をストップとしてマイクログラフトに追加することができまたは他の部品および/または特徴部(例えば、白金マーカバンド、切欠き、膨らみなど)をストップとして働くようデリバリワイヤに追加することができる。幾つかの場合、ストップカラーが設けられなくても良く、ストップは、組物の遠位端に設けられても良く(上述したように)、プッシャカテーテルが近位ストップとして働くことができまたはマイクログラフト10は、デリバリワイヤの全長にわたって近位側から遠位側に自由に摺動することができるよう寸法決めされても良い。
【0122】
予備装填デリバリワイヤ62を保護カバー、例えば
図7のカバー92で覆われた1つまたは2つ以上のマイクログラフト付きで供給するのが良い。このカバー92は、マイクロカテーテルまたはそのコンポーネントのルーメン中に導入可能な小さな外寸までテーパしたテーパ付き先端部を有する。
【0123】
幾つかの実施形態では、2つ以上のマイクログラフトをデリバリワイヤに取り付けた状態で装填することができる。これらは、
図3を参照して上述したほつれた状態のベルクロ状端部38のうちの1つを用いて送達可能にデリバリワイヤ上で互いに連係させることができまたはこれらマイクログラフトを通って延びる同軸デリバリワイヤの助けにより直ぐに連結されても良い。すなわち、この器具は、幾つかの実施形態では、複数のマイクログラフトがデリバリワイヤに沿って一列に並んであらかじめ包装された状態で供給されても良い。
【0124】
上述したように、デリバリシステム54は、デリバリワイヤ62を挿通させるルーメンを有するプッシャカテーテル58を含む。プッシャカテーテル58は、カテーテル本体72およびルアー(Luer)ロック74を有する。カテーテル本体72は、好ましくは、硬い近位区分、軟らかい中間区分、および更に軟らかい遠位区分を備えた可変スティフネス構造のものである。カテーテルの個々の区分は、近位側から遠位側までスティフネスを制御するよう様々なデュロメータを有するポリマー管類で構成されるのが良い。本体は、例えばステンレス合金またはニチノールで作られた可変スティフネスのレーザカットされた管で作られても良い。ポリマー管が用いられる場合、カテーテルは、楕円化しないようにするために補強された組物またはコイルであるのが良い。例えばPTFE、ePTFEまたはFEPのような材料で作られた滑らかなライナもまたこの構造体に追加されるのが良い。
【0125】
プッシャカテーテル58の外径は、約0.008インチ(0.203mm)から約0.070インチ(1.778mm)までの範囲にある内径を備えたマイクロカテーテル内で自由に摺動するよう寸法決めされている。カテーテル本体72は、減摩性が得られるようその外周部上に被着された親水性被膜を有するのが良い。カテーテル本体72の長さは好ましくは、1つのマイクログラフト(または多数のマイクログラフト)が遠位端に取り付けて装填している間、デリバリワイヤ62への近位側からの接近を可能にし、すなわちワイヤ62を保護するようデリバリワイヤ62よりも僅かに短い。プッシャカテーテル本体72または遠位端の内周部は、デリバリワイヤ62の遠位側への前進または近位側への引っ張り中にマイクログラフト10をカテーテル本体72内に押し込むことができないように寸法決めされるとともに形作られている。プッシャカテーテル58内への装填時、デリバリワイヤ62は、好ましくは、自由に回転することができるとともにプッシャカテーテル58に対して直線状の(前後の)運動状態で自由に動くことができる。加うるに、プッシャカテーテル58は、標的解剖学的構造へのステントもしくは他の器具または流体の送り出しを許容するよう設計されているのが良い。幾つかの実施形態では、送達部材の外寸と閉塞器具の内寸との間の間隙は、動脈瘤中への送り出し前には実質的に流体密であるが、閉塞器具に対する送達部材の摺動可能な運動を可能にするほど十分である。
【0126】
プッシャカテーテル本体72の遠位端のところまたはその近くには、放射線不透過性マーカバンド76が設けられ、この放射線不透過性マーカバンドは、白金/イリジウムで作られるのが良く、そして接着剤、熱収縮チューブ、スウェージ加工プロセス、または他の公知の方法で取り付けられるのが良い。変形例として、マーカバンドは、デリバリワイヤ62がマーカバンドを通過した状態でプッシャカテーテル58内に配置されても良い。マーカバンド76の他の適当な放射線不透過性物質としては、例えば、金、銀、および放射線不透過性収縮チューブまたは金属コイルが挙げられる。ルアーロック74がカテーテル58の近位端のところに位置決めされるのが良く、プッシャカテーテル58の内周部を通る生理的食塩水、薬剤、造影剤または他の流体の導入を可能にするための回転止血弁(RHV)78がルアーロック74に取り付けられている。RHV78はまた、RHV78がワイヤ上に締め付けられると(これにクランプされると)、プッシャカテーテル58と予備装填デリバリワイヤ62との相対運動を停止させるためのロックとしての役目を果たす。幾つかの実施形態では、プッシャカテーテル58をアクセサリとしてRHV付きであらかじめ包装状態でかつ無菌状態で送り出すことができる。同軸カテーテルステントデリバリシステムが用いられる実施形態では、ステントデリバリカテーテルによるステント配備後の場合のようにプッシャカテーテルを必要としない場合があり、マイクログラフト装填デリバリワイヤをステントデリバリカテーテル中に挿入してマイクログラフトを配備することができる。
【0127】
上述したように、デリバリワイヤ62を従来型ガイドワイヤの場合のように一次アクセスワイヤとして使用することができる。
図6は、オーバー・ザ・ワイヤ型プッシャカテーテルの別の設計例を示しており、このプッシャカテーテルは、全体が参照符号80で示されている迅速交換式プッシャカテーテルである。迅速交換(RX)プッシャカテーテル80は、遠位端にマーカバンド76を備えたカテーテル本体82および硬いプッシャワイヤ84を有する。カテーテル本体82は、上述したカテーテル本体72の中間区分および遠位区分と同じ特徴のうちの多くを共有しており、かかる特徴としては皮膜が挙げられる。テーパしているのが良い硬いプッシャワイヤ84は、ステンレス鋼合金、ニチノール、または他の適当な材料で作られるのが良い。プッシャワイヤ84は、変形例として、レーザ切断が行われまたは行われていないハイポチューブまたは非丸形断面を特徴とするワイヤであっても良い。器具は、あらかじめ包装状態でかつ無菌状態で供給されるのが良い。使用にあたり、RXカテーテルを動脈瘤にワイヤで接近する前または接近した後において、デリバリワイヤまたはガイドワイヤ上でこれに沿って挿入するのが良い。
【0128】
図5E〜
図5Gは、
図4Aのマイクログラフト10′を送達するデリバリシステム180を示している。デリバリシステムは、プッシャ部材186および拡大頭部184を備えたデリバリワイヤ182を含む。
図5Eの初期位置では、マイクログラフト10′のタブ29aは、下方に曲げられており、デリバリワイヤ182は、窓29bを貫通している。デリバリワイヤ182は、マイクログラフト10′内でマイクログラフト10′の遠位端まで延びている。この位置では、頭部184は、マイクログラフト10′に設けられたストップ22、例えば遠位マーカバンド22の近位縁に係合している。
【0129】
プッシャ部材またはカテーテル186は、その遠位端のところに設けられていてマイクログラフト10′を押すのを助けるとともにプッシャ部材の内周部中へのマイクログラフト10′の運動を阻止する内部ストップ188を有している。プッシャカテーテル186は、一例としてルアー取り付け部なしで示されている。プッシャカテーテル186とデリバリワイヤ182の両方は、上述したように構成されるのが良い。加うるに、図示されていないが、システム180は、
図7のローディングシース92に類似していてマイクログラフトの運動を制限するとともにマイクロカテーテル中へのマイクログラフトの導入を助ける保護導入器シースを含むのが良い。
【0130】
初期位置では、マイクログラフト10′のタブ29aは、下方に曲げられ、デリバリワイヤ182は、窓29bを貫通している(
図5E)。デリバリワイヤ182は、上述したように、拡大頭部184がストップ22の近位縁に接触するようマイクログラフト10′内で延びている。ストップ22は、開放したものとして示されているが、このストップは、完全に閉じることができるということに注目されたい。また、ストップを省いても良く、組物は、ワイヤ182が出るのを阻止するよう組物の遠位端を狭くしまたは閉じるよう融解されるのが良い。また、遠位ストップの使用により、マイクログラフト10′を引っ張り状態に保つ目的が達成され、これにより、マイクログラフト10′の外周部を引き伸ばすとともにその外径を減少させることによって送達が助けられる。
【0131】
タブ29aは、マイクログラフト10′をワイヤ182に取り付けた状態に保持するようデリバリワイヤ182に対して力をもたらす。送達時、ワイヤ182を
図5Fの位置まで引っ込め、この位置では、デリバリワイヤの拡大先端部184は、タブ29aに係合する。この位置まで、マイクログラフト10′を動脈瘤から引っ込めるとともに/あるいはこの中で操作することができる。次に、プッシャカテーテル186を前進させて(または、ワイヤ先端部を引っ込めて)タブ29aを
図5Gの位置まで押しやり、したがって、窓29bを通るデリバリワイヤ182の拡大頭部184の完全引っ込みを可能にし、それによりマイクログラフト10′をデリバリワイヤ182から解除することができる。
図5Hは、タブ29aがデリバリシステムの引っ込み後にマイクログラフト10′と長手方向に整列したその元の位置に戻された状態を示している。
【0132】
図7は、全体が参照符号86で示された動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムの別の実施形態を示している。デリバリシステム86は、プッシャワイヤ88およびローディング管92を含む。プッシャワイヤ88は、ステンレス鋼で作られるのが良く、または変形例としてニチノール、プラスチックまたは不活性もしくは生体適合性材料またはこれらの組み合わせで作ることができる細長いテーパ付きの軟性ワイヤを含む。ワイヤとして図示されているが、プッシャワイヤは、変形例として、ルアーロック付きのハイポチューブであっても良い。
【0133】
プッシャワイヤ88の遠位端のところには、拡張型グラスパ(把持)部材またはアーム94,98が設けられている。4つのグラスパアームがこの設計例において設けられているが、5本以上または3本以下のアームを使用することができる。アーム94,98は、形状記憶材料、例えばニチノール、ばね焼戻しステンレス鋼、放射線不透過性金属、または他の適当な材料で構成されるのが良い。アーム94,98は、変形例として、偏向可能なアームを作るようレーザカットされた金属または弾性管で製作されても良い。グラスパアームのうちの1つまたは2つ以上の遠位端には放射線不透過性バンド(バンド102,106,108として示されており、第4のバンドは図示されておらず、というのは、第4のアームが図示されていないからである)が取り付けられている。バンドは、グルー、はんだ、または他の方法で取り付けられるのが良い。アームの近位端は、コイル110によってプッシャワイヤ88に取り付けられ、コイル110は、例えば巻きステンレス鋼または白金‐イリジウムで作られるのが良い。取り付け方法としては、接着、溶接、またははんだ付けが挙げられる。把持アームの使用は、マイクログラフトの取り出し/取り外しを行いまたは動脈瘤内でのマイクログラフトの操作/再位置決めを行うよう完全配備後にマイクログラフトの把持を可能にするという利点を有し、これについては、以下に説明する。
【0134】
プッシャアーム88は、約20cmから約400cmまで、より狭くは約100cmから約300cmまでの範囲にあり、例えば約200cmの長さ(アームを含む)を有する。プッシャワイヤ88の適当な直径は、約0.006インチ(0.152mm)から約0.040インチ(1.016mm)までの範囲にあり、より狭くは約0.008インチ(0.203mm)から約0.035インチ(0.889mm)までの範囲にあるのが良い。プッシャワイヤ88の全体的直径は、近位側から遠位側までテーパしているのが良く、例えば、約0.014インチ(0.356mm)から約0.003インチ(0.076mm)までテーパしている。プッシャワイヤ88は、一部か全体かのいずれかが減摩性が得られるよう親水性またはPTFE被膜で被覆されるのが良い。
【0135】
トーディング管92は、金属かプラスチックかのいずれかで作られ、好ましくは、マイクロカテーテルルアーテーパ部と結合するための遠位テーパ部112を有する。ローディング管92は、好ましくは、マイクログラフト90全体およびコイル110の少なくとも一部分を覆うのに十分な長さを有する。ローディング管92の内径は、好ましくは、これが結合するマイクロカテーテルの内径に近い。内径の範囲は、約0.008インチ(0.203mm)から約0.070インチ(1.778mm)までであるのが良い。ローディング管は、プッシャワイヤ88に対する相対運度を阻止するようクリンプまたは他の固定手段を有するのが良い。近位端にルアーまたは他の取り付け部が設けられた構造体に用いられる場合、導入器は、取り外し(すなわち、剥離)を助けるよう長さ方向スリットを有するのが良い。
【0136】
近位バンド114、例えばマーカバンドを有するマイクログラフト90を装填する一手法は、ローディング管92を2対のグラスパアーム94,98のすぐ近位側でプッシャワイヤ88上に位置決めしてこれらグラスパアームがこれらの通常の拡張位置にあるようにすることである。次に、マイクログラフト90に取り付けられているバンド114をバンド102,104(アーム94の各アームに1つずつ)と、アーム98のバンド106,108との間に位置決めする。軸方向に間隔を置いたバンドの配置を達成するためには、アーム94は、アーム98よりも短いのが良く、その結果、バンド102,104は、バンド106,108の近位側に位置しまたは変形例としてアーム94,98は、同一サイズのものであるのが良く、バンド102,104は、バンド106,108をアーム98の遠位端またはより遠位側の位置に配置することができる間、アーム94のより近位側の位置(遠位端から間隔を置いて位置する)上に配置するのが良いことに注目されたい。次に、ローディング管92を前方に(遠位側に)前進させ、それによりプッシャアーム94,98を圧縮して押し潰しまたは圧縮位置に至らせ、それによりバンド114に係合して(これを把持して)マイクログラフト90を定位置に保持する。かくして、バンド114は、マイクログラフト90をワイヤ88に取り付けた状態に保持するようプッシャ(デリバリ)ワイヤ88と係合可能な係合または保持構造体を形成する。
【0137】
マイクログラフト90は、編組構造体の一部分周りに位置決めされている近位バンド114を除き、マイクログラフト10とほぼ同じであることに注目されたい。
【0138】
変形例として、単一の近位マーカバンドを有するマイクログラフトに代えて、マイクログラフトが2つの近位バンドを有しても良く、この場合、プッシャワイヤのバンドがローディング管のルーメン内で圧縮されたときにロックを生じさせるよう着座することに注目されたい。変形例として、内部コイルを備えたマイクログラフトは、プッシャワイヤのバンドによる半径方向圧縮および把持を可能にする隙間を有するよう互いに間隔を置いて配置された近位コイル巻線を有するのが良い。
【0139】
図8は、全体が参照符号116で示された動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムの更に別の実施形態を示している。デリバリシステム116は、神経血管用ステント‐グラフトキットであり、この神経血管用ステント‐グラフトキットは、遠位バンド120を備えたプッシャワイヤ118、バンド124,126を備えた近位アームおよびバンド128,130を備えた遠位アームを有するステントまたはフローダイバータ122、近位バンド134を備えたマイクログラフト132、およびローディング管133を含む。マイクログラフト132は、ステント122、ステントバンド128,130およびローディング管133によって近位側にロックされる。ステントまたはフローダイバータ122は、バンド124,126がバンド120によって制止されるという技術と同様なロック技術を用いてプッシャワイヤ118に対してロックされる。両方のロックシステムのためのアームの本数は、3本以上または1本以下であるよう様々であって良い。デリバリシステム116はまた、ガイドワイヤ運搬のための貫通ルーメンを有するよう構成されているのが良い。
【0140】
デリバリシステム116は、神経血管用ステント‐グラフトを形成するよう現場で組み合わせることができるマイクログラフトとステントを送達することができる単一のデリバリシステムを提供する。変形例として、ステントは、プッシャワイヤに永続的に取り付けられても良く、このステントは、グラフトを動脈瘤中に押し込む仮のステントとして働く。
【0141】
図9は、医療手技前または医療手技中、マイクログラフトをデリバリワイヤまたはガイドワイヤに取り付けるために用いることができるマイクログラフト導入器システム136を示している。マイクログラフトローダ導入器システム136は、マイクログラフト10が装填された導入器シース138を含む。導入器シースは、管状本体140、ルアーロック142、およびストップ管144を有する。管状本体140は、金属、プラスチックまたはこれら材料の組み合わせで構成でき、この管状本体は、約0.008インチ(0.203mm)から約0.070インチ(1.778mm)までの範囲にある内径およびマイクログラフト10の全てまたは実質的に全てを覆う長さを有する状態で寸法決めされている。管状本体140の遠位先端部は、真っ直ぐであっても良くまたはマイクログラフトの導入および取り扱いを助けるようテーパしていても良い。ルアーロックは、流体、例えば生理的食塩水または造影剤、ガイドワイヤまたはデリバリワイヤおよびプッシャカテーテルの導入を可能にするRHV、例えば
図5DのRHV78に取り付けられるのが良い。オプションであるストップ管144は、貫通ルーメンを有し、このストップ管は、プラスチックまたは金属で作られるのが良く、しかも近位側から遠位側へのテーパ部を有するのが良い。ストップ管の目的は、ローディングに先立ってマイクログラフトが管状本体140から出るのを阻止するとともに管状本体を挿入に先立って取り出すことができるようにすることにある。
【0142】
図9は、たった1つのマイクログラフトを示しているが、多数のグラフトを単一の導入器シース内に入れた状態で送達することができる。これらマイクログラフトは、互いに対して自由に動くことができ、または、例えば上述したようにほつれた端部による方法を利用して互いに連係させることができる。二次形状を有するマイクログラフトは、一般に、導入器シース内に装填されるときには全体として直線状でありまたは真っ直ぐであり、したがって、これらマイクログラフトは、同心である。
【0143】
導入器シース136は、あらかじめ包装された状態でかつ無菌状態で運搬される。いったん開かれると、RHVおよび注射器をルアーに取り付けて流体を導入するのが良い。デリバリワイヤまたはガイドワイヤを導入器シール138内に押し込んでマイクログラフトをワイヤに取り付けるのが良く、または、変形例として導入器シース138をマイクロカテーテルの近位端と結合して、ワイヤが付いたまたはワイヤなしのプッシャカテーテルを用いまたは市販のプッシャワイヤを用いてマイクログラフトをシース138中に通してマイクロカテーテル中に近位側に押し込むのが良い。
【0144】
本明細書において開示されるマイクログラフトは、非線形形態にあらかじめ設定されているのが良く、そしてこれらマイクログラフトを実質的に直線状の形態で動脈瘤まで前進させるのが良く、次に動脈瘤内の空間において、動脈瘤中に送り込まれたときに同じ非線形形態または異なる非線形形態に戻るのが良い。
【0145】
図10〜
図11Fは、
図5Aの動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステム54を用いて
図1のマイクログラフト10を配備する好ましい方法を示している。(本明細書において説明する他のマイクログラフトを同様な仕方で挿入することができる)。マイクログラフト送達方法ならびに「粘稠度又は粘稠性ロック」機能(以下において説明する)は、
図18および
図19に流れ図の形態で示されている。植え込み前に、デリバリシステムを上述したように患者挿入に先立ってまたは医師によって好ましいように準備するのが良い。
【0146】
典型的な頭蓋内動脈瘤への接近には、ガイドワイヤを大腿動脈中に挿入し、次に動脈瘤部位に達するまで血管系を通って一次ガイドワイヤと組み合わせてマイクロカテーテルを追跡することが必要である。動脈瘤部位にいったん位置すると、一次ガイドワイヤを取り出し、これに代えて塞栓形成システムを用いる。
図10は、
図5Aのマイクログラフトデリバリシステム54がユニットとしてマイクロカテーテル146(RHV148が取り付けられた状態)の近位端内に挿入されている状態を示しており、マイクロカテーテル146は、ガイドカテーテルを通って投入され、そして動脈瘤部位まで送り進められ、一次ガイドワイヤが抜去されている。
【0147】
図11Aは、動脈瘤150内に位置決めされ、そして「拘留」ステント留置法を用いて定位置に保持されているマイクロカテーテル146を出たデリバリワイヤ62の遠位先端部66が血液152によって包囲された状態を示している。拘留は、マイクロカテーテルの遠位先端部を親血管内膜とステントまたはフローダイバータ154との間にピン留めしてマイクロカテーテル先端部が動脈瘤内に保持され、そして送り出された閉塞器具、例えばマイクログラフト10が親血管管腔から閉め出されたままにするようなステントまたはフローダイバータ154の使用を意味している。拘留に代えて用いることができる他の技術としては、一次的ステント留置およびバルーンリモデリングが挙げられる。また、かかる親血管支持(ステントまたはフローダイバータ)器具を用いないで本発明のマイクログラフトを配備することが想定される。
【0148】
システムが
図11Aに示されているようにいったん定位置に位置すると、図示のようにあらかじめ曲げられた曲線を有する露出状態のデリバリワイヤ先端部66をゆっくりとマイクログラフト10中に引っ込める。引っ込めは、数センチメートルの小刻みなステップで行われるのが良くまたはこれがプッシャ/マイクログラフト接合部57(
図5A参照)のところまたはその近くの場所に達するまで完全に行われるのが良い。デリバリワイヤ62を接合部57に向かって近位側に引っ込めているとき、血液152がマイクログラフトの内側ルーメン内に引き込まれて
図11Bおよび
図11Cに示されているようにデリバリワイヤ62によって先に占められていた容積部を充填する。この充填作用は、上述したマイクログラフトの特有の内部キャピラリー特徴部の組み合わせによりかつ引っ込み中のワイヤの注射器状「ピストン」効果に起因して起こる。
【0149】
デリバリワイヤ62が引き戻されるとともに幾つかの実施形態では、
図5Fの実施形態の場合のようにタブ21aに当たるロック位置まで引き戻された状態で、プッシャカテーテル58(
図5A)を遠位側に前進させてこれがマイクログラフト10の近位端に係合しているときにプッシャカテーテル58を用いてマイクログラフト10をワイヤ62から離して
図11Dに示されているように動脈瘤中に前方に押し込むのが良い。デリバリシステムがプッシャカテーテル58またはデリバリワイヤ62をマイクログラフト10に物理的に連結する機械的ロックを備えていない場合、マイクログラフト10は、いったん粘稠な液体(例えば、血液)によって包囲された状態でデリバリシステムコンポーネントとマイクログラフトとの間でマイクロカテーテル146内に形成される「粘稠度ロック」(以下において説明する)に起因して依然として、回収可能である。このロックにより、所望の配置状態が達成されるまでマイクログラフト10をマイクログラフト10の近位端がマイクロカテーテル146のルーメン内に位置したままの状態で前進させたり引っ込めたりすることができる。
【0150】
ワイヤ62が既に接合部57のところに位置決めされていない場合、マイクログラフト10をプッシャカテーテル58によって前方に押し、そしてワイヤ62を接合部57まで更に近位側に引くのが良い。ワイヤ62が接合部57にいったん達すると、マイクログラフト10の内側ルーメンは、ワイヤ62に取って代わった血液152および存在しているなんらかの液体(例えば、造影剤)で完全に満たされる。今や血液がマイクログラフト10の内側ルーメンを満たし、そして上述のキャピラリー作用により編組壁に浸透しているので、飽和状態の器具は、一部が患者の血液で構成される。血液が送達後のマイクログラフト(インプラント)内に補足されて淀んだ状態になっているときに血栓形成および微孔性ヤーンを通る細胞内方成長が促進される。
【0151】
血液が編組構造体を通って吸収されているときに血液がルーメンの遠位開口部をとおってかつ/あるいは遠位端から間隔を置いて位置するルーメンの他の中間または近位領域を通ってマイクログラフト10のルーメンに入ることができることに注目されたい。血液がかかる中間または近位領域に入っているときに、血液は、種々の寸法方向に広がるとともに上述のキャピラリー作用に起因して近位側に差し向けられる。
【0152】
マイクログラフト10が動脈瘤中に配備されているとき、このマイクログラフトは、
図11Dおよび
図11Eに示されているように動脈瘤壁またはステント/フローダイバータ154との接触に起因して任意のあらかじめ設定された二次形状およびランダムな形状を取る。すなわち、これらの図では、マイクログラフト10は、図示のようにあらかじめ設定されたU字形を有するが、この形状は、マイクログラフトが動脈瘤壁および/またはステント154に接触しているときに変化することができる。マイクログラフト10の近位端がマイクロカテーテル内に位置したままであれば、マイクログラフト10を上述したような完全配備に先立つ任意の時点で引っ込めて再位置決めすることができる。マイクログラフト10は、プッシャカテーテル58の遠位先端部がマイクロカテーテル146の遠位端にいったん達しまたはこれを出ると、完全に配備され、そしてこのマイクログラフトはデリバリシステムから離脱することになる。
図11Eは、
図11Dの完全に配備されたあらかじめ形作られている血液充填マイクログラフト10の拡大断面を示している。
【0153】
第1のマイクログラフト10を配備した後、デリバリワイヤ62およびプッシャカテーテル58を抜去し、そして必要ならば、別のマイクログラフト10をワイヤ62上に装填しまたは新たなデリバリシステムを開き、そして配備プロセスを上述したように繰り返す。上述のステップを繰り返すことによって多数のマイクログラフトを配備するのが良く、ついには、動脈瘤が
図11Fに示されているように十分に詰め込まれるようになる(医師の判断により)。必要ならば、マイクロカテーテル先端部またはデリバリワイヤ62を詰め込み相互間または詰め込み中に用いてマイクログラフトを動脈瘤内で動かしまたは圧縮する。動脈瘤をいったん十分に詰め込むと、マイクロカテーテルを抜去し、ステントまたはフローダイバータ154は、引き続き拡張して動脈瘤158の頸を覆い、それにより動脈瘤嚢からマイクログラフト10が出るのを制止する。マイクログラフト10とステントまたはフローダイバータ154は一緒になって、
図11Fに示されているように神経血管ステント‐グラフト160を形成する。
【0154】
上述したように、デリバリシステム54は、マイクロカテーテル内に一次的液体シールまたは「粘稠度ロック」効果を生じさせることを特徴としており、それにより、配置中、マイクログラフトの限定された回収性(プッシュ/プル)を可能にする。ロックの「プル」は、プッシャカテーテル58の先端部によって生じ、それにより、流体充填マイクロカテーテル146内に注射器状「ピストン」を生じさせる。このロックの機能性は、マイクロカテーテルルーメンと近位マイクログラフト10本体、隣接のプッシャ58の先端部、デリバリワイヤ62相互間の間隙ならびに流体媒体の粘性および粘稠性と粘着性で決まる。
【0155】
図19の流れ図は、粘稠度ロック機能のステップを記載しており、これらステップは、次の通りである。
1)動脈瘤内においてデリバリワイヤ62の先端部をマイクログラフト10の遠位端に整列させる。
2)ワイヤ62を引っ込めて血液をプッシャ接合部57までマイクログラフトルーメン内に引き込む。
3)デリバリシステム(プッシャ58+ワイヤ62)を押してマイクログラフト10を前進させてこれをカテーテル146から出す。
4)マイクログラフト10の近位端をカテーテル146内に維持した状態で、デリバリシステムを引いてマイクログラフト10を引っ込める。
5)いったん再位置決めされると、デリバリシステムを押すことによってマイクログラフト10を再配備する。
6)マイクログラフト10の近位端をカテーテル146から押し出すことによって血液充填マイクログラフト10を解除する。
7)プロセスを繰り返して別のマイクログラフト10を送達しまたはデリバリシステムを抜去し、追加のマイクログラフト10を遠位ワイヤ先端部上に装填する。
【0156】
粘稠度ロックが働くようにするためには、粘稠性液体(すなわち、血液)は、マイクログラフト/プッシャ接合部を越えてマイクロカテーテルを充填しなければならない。粘稠性流体がマイクログラフト10をマイクログラフト10およびプッシャ接合部57の隙間をいったん満たすと、粘稠性流体は、押しのけ中(すなわち、プッシャを引っ込めているとき)、プッシャ/マイクログラフト接合部57の周りの「ガスケット」またはシールとして作用する。プッシャ58(すなわち、ピストン)をマイクログラフトの近位端に隣接したところに引く作用により、今や、低圧容積部が作られる。これにより、血液中に浮遊状態のマイクログラフト10は、吸引された状態になってマイクロカテーテル146内に引っ込む。
【0157】
マイクログラフト10はまた、デリバリワイヤ遠位先端部66をプッシャ58の遠位先端部の近位側に引き戻しまたは完全に抜去すると、引っ込み可能である。高い摩擦力または耐引っ張り性は、「粘稠性ロック」を壊す可能性が多分にあり、したがって、この回収方法の好ましい用途は、短い低摩擦器具を用いる場合または関与する屈曲度および抵抗力が最小限の場合である。
【0158】
マイクログラフトデリバリシステムの幾つかの実施形態では、プッシャワイヤまたはデリバリワイヤは、マイクログラフトルーメン内に存在していない場合があり、そして血液によるマイクログラフトの内部充填が患者の循環系からの圧力によってまたは毛管力によって引き起こされることになる。毛管現象は、上述したように、マイクログラフトが適当に寸法決めされた内径または細孔を有することによって達成できる。それ故、
図11Cに示されているマイクログラフト中への血液の吸収は、デリバリワイヤまたは外力が血液を引き込むのに用いられない場合であっても血液との接触時に起こることができる。
【0159】
図12A〜
図12Cは、頭蓋内動脈瘤内への
図1のマイクログラフト10の方向付けられた送達の仕方を示している。本明細書において説明する他のマイクログラフトを同様の仕方で送達することができる。上述の
図10および
図11A〜
図11Fに記載されたマイクログラフト送達とは異なり、
図12Aおよび
図12Bの実施形態では、異形デリバリワイヤ62′は、動脈瘤内に位置したままであり、したがって、マイクログラフト配備を動脈瘤嚢内の標的場所(頸)に差し向けることができるようになっている。
図12Aは、“J”の状態に形状設定されるとともに“J”が動脈瘤の頸を覆っているステントまたはフローダイバータ154に向くように配備されたデリバリワイヤ62′の遠位先端部66′を示している。プッシャカテーテル58を遠位側に前進させているとき、マイクログラフト10の配備が行われ、このマイクログラフトは、そしてステントまたはフローダイバータ154に向かう矢印162によって示された方向にデリバリワイヤ62′に沿って続く。
【0160】
図12Bは、“J”を有する状態に形状設定されて動脈瘤の円蓋中に送り進められたデリバリワイヤ62′を示している。マイクログラフト10を前進させているときに、マイクログラフトは、矢印164によって示された方向でワイヤ62′の曲率をたどる。
【0161】
図12Cは、マイクロカテーテル146を用いて動脈瘤内へのマイクログラフトの配備を方向付けることができることを示している。デリバリワイヤは、動脈瘤158の頸内に嵌め込まれたマイクロカテーテル146中に引き戻されている。マイクログラフト10を前進させているときに、このマイクログラフトは、矢印166によって示された方向をたどる。マイクロカテーテル146の先端部は、マイクログラフト10を方向付けるよう湾曲しているのが良い。マイクログラフト10が障害物、例えば動脈瘤壁に当たると、マイクログラフトは、図示のように方向を容易に変えるであろう。
【0162】
図13は、頭蓋内マイクログラフトデリバリシステム54を用いた流れにより方向付けられたマイクログラフト168の配備状態を示しており、デリバリシステム54は、その先端部のところに“J”形状を有するとともにマイクロカテーテル146から延びるデリバリワイヤ62′を含む。マイクログラフト168は、本明細書において説明した他のマイクログラフトと同一の構造を有するのが良い。流れにより方向付けられるマイクログラフト168は、任意の長さのものであって良いが、この実施形態では、血流と一緒に動くよう例えば約2mm〜約5mmの短い長さが利用される。流れにより方向付けられるマイクログラフト168は、動脈瘤を満たすよう構成されたマイクログラフトよりも短い傾向があるので、多くのより流れにより方向付けられるマイクログラフトをデリバリワイヤ上に装填して
図13に示されているように連続的に配備することができる。マイクログラフト168は、“C”字形に形状設定されているが、上述したように他の形状もまた想定される。
【0163】
各マイクログラフト168をデリバリワイヤ62′から離して遠位側に前進させているとき、このマイクログラフトは、動脈瘤の頸から出ている血流内に補足されることになる。ステントまたはフローダイバータ154が頸158を閉塞するので、マイクログラフト168は、親血管170中に出るのが制限されることになる。十分な量のマイクログラフト168が動脈瘤中に導入されると、マイクログラフトは、積み重なってステント/フローダイバータと頸のインターフェースのところを詰まらせまたはかかるインターフェースのところに局所化グラフトを作ることになる。経時的に、血栓が詰まり部の上方に生じて動脈瘤の閉塞を助ける。小さくて短いマイクログラフトが動脈瘤頸のところに完全な閉塞部をもたらしまたは動脈瘤頸のところの空所を満たすようになっている。
【0164】
図14は、親血管170内に位置決めされたマイクロカテーテル146を示している。この実施形態では、ステント154と親血管170との間の空間内に延びるのではなく、マイクロカテーテル146がステントまたはフローダイバータ154のストラットまたは細孔を貫通する点において先の実施形態とは異なっている。他の全ての点においては、このシステムは、上述のシステムの点と同じである。マイクログラフト10がマイクロカテーテル146を出て動脈瘤中に入っている状態で示されている。長さの長いまたは長さの短いマイクログラフトを送り出すことができる。
【0165】
上述したように、デリバリワイヤ62は、ガイドワイヤであるのが良い。したがって、所望ならば、ガイドワイヤを備えたマイクログラフトデリバリシステムをカテーテル配置に先立ってマイクロカテーテル中に装填するのが良い。次に、デリバリシステムのガイドワイヤを一次追跡ワイヤとして用いて、組立体、マイクロカテーテルおよびマイクログラフトデリバリシステム全体を動脈瘤部位まで追跡するのが良い。変形例として、ガイドワイヤおよびマイクロカテーテルを動脈瘤部位まで追跡し、そして
図6の迅速交換カテーテル、例えばプッシャカテーテル80をその後に前進させるのが良い。
【0166】
図15は、マイクログラフト90を配備する
図7の動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステム86の遠位端を示している。マイクログラフト90をアーム94,98から解除し、このマイクログラフトは、あらかじめ付勢された(あらかじめ設定された)形状を取っている。上述したように、マイクログラフトを様々な形態にあらかじめ設定することができ、図示の形状は、例示として提供されている。所望ならば、マイクログラフト90は、構造体の一部分をアーム94,98相互間に補足し、マイクロカテーテル146をアーム上でこれに沿って前進させてアームを圧縮することによって回収されるのが良い。変形例として、デリバリアーム94,98を用いてマイクログラフトを圧縮しまたはマイクログラフトを動脈瘤の周りに動かして詰め込みを助けるのが良い。
【0167】
図18Aは、本発明のマイクログラフトを配置する一方法の流れ図を提供している。この方法は、
図5Aおよび
図5Cのデリバリシステムを利用している。方法ステップは次の通りである。
1)マイクログラフトをデリバリワイヤ62の遠位端上でこれに沿って挿入し、ついにはマイクログラフトがストッパまたはワイヤテーパ部70上に位置するようにする。
2)デリバリワイヤ62をプッシャカテーテル58中に挿入する。
3)デリバリシステムをマイクロカテーテルのRHV78中に挿入する。
4)デリバリシステムを追跡してついにはワイヤ先端部66が動脈瘤に達するようにする。
5)ワイヤ66を引き戻して動脈瘤内のマイクログラフトの遠位マーカバンドと整列させる。
6)ワイヤ先端部66をマイクログラフト中に引っ込めることによってマイクログラフトを血液で満たす。
7)プッシャ58を前進させることによってマイクログラフトを配備する。近位端が依然としてマイクロカテーテルにあれば、器具を引っ込める。
8)デリバリシステムをマイクロカテーテルから取り外す。
9)必要ならば、上述のステップを繰り返して追加のマイクログラフトを配備する。
【0168】
図18Bは、本発明のマイクログラフトを配置する別の方法の流れ図を提供している。この方法は、
図5E〜
図5Hと同じデリバリシステムを利用している。方法ステップは、次の通りである。
1)器具を包装材から取り出して取り扱い説明書(IFU)に従って準備する。
2)デリバリシステムをマイクログラフトとともにマイクロカテーテルRHV中に挿入する。
3)マイクログラフトがマイクロカテーテル内にいったん位置すると、存在していれば導入器シースを取り出す。
4)デリバリシステムを追跡し、ついには、ワイヤ先端部184およびマイクログラフトの遠位端が治療部位に達するようにする。
5)ワイヤ先端部184をマイクログラフトロック(タブ29a)の直ぐ遠位側に小刻みに引っ込めることによってマイクログラフトを血液で満たす。
6)デリバリシステム(プッシャ186およびワイヤ182)を前進させることによってマイクログラフトを配備する。デリバリシステムを引いてマイクログラフトを必要ならば引っ込める。
7)マイクロカテーテルからいったん出ると、ワイヤ182を引っ込めて(またはプッシャを前進させて)ついにはワイヤ球部184がマイクログラフトロック(タブ29a)を抜けてプッシャ186中に入ることによってマイクログラフトを離脱させる。
8)デリバリシステムをマイクロカテーテルから取り外す。
9)必要ならば、ステップを繰り返して追加のマイクログラフトを配備する。
【0169】
本明細書において開示したデリバリシステムおよび閉塞器具(マイクログラフト)は、頭蓋内動脈瘤の治療に用いるために説明したことに注目されたい。理解されるべきこととして、デリバリシステムおよび閉塞器具(マイクログラフト)は、身体の他の領域内の動脈瘤を治療するためもしくは他の血管系を治療するためまたは非血管疾患を治療するためにも利用できる。
【0170】
本明細書において開示したデリバリシステムを利用すると捕明細書において開示した種々のマイクログラフトを送達することができそして特定のデリバリシステムと関連して説明した特定のマイクログラフトは例示として提供されていることに注目されたい。
【0171】
上述したデリバリシステムおよび技術的思想は、動脈瘤内マイクログラフトを送達する好ましいやり方である。しかしながら、変形例として、マイクログラフトは、計時されかつ制御された放出を提供する他のマイクロコイルデリバリシステム、例えば両方ともグリエルミ等(Guglielmi et al.)に付与された米国特許第5,354,295号明細書およびその親出願である米国特許第5,122,136号明細書に記載されている電解質取り外し方式、エンゲルソン(Engelson)に付与された米国特許第5,261,916号明細書に記載されているようなインターロックボール・キー方式、およびトワイフォード等(Twyford et al.)に付与された米国特許第5,304,195号明細書に記載されているような番関係をなすボール形態を備えたプッシャと組み合わせ連係するよう構成されても良い。
【0172】
幾つかの用途では、動脈瘤を閉塞するために、他の血管閉塞器具、例えば白金マイクロコイルを本発明のマイクログラフトと組み合わせて使用することができる。
【0173】
上述の説明は、多くの細部を含むが、これらの細部は、本発明の範囲に対する限定として解されるべきではなく、本発明の好ましい実施形態の例示として解されるべきである。当業者であれば、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲および精神に含まれる他の多くの考えられる変形例を想到するであろう。