(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763869
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】1以上の空間方向特徴により変換器の空間方向を検出する方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/26 20060101AFI20200917BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20200917BHJP
G01L 5/16 20200101ALI20200917BHJP
【FI】
G01B11/26 H
G01P15/18
G01L5/16
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-544881(P2017-544881)
(86)(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公表番号】特表2018-513962(P2018-513962A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】EP2016053871
(87)【国際公開番号】WO2016135198
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年2月19日
(31)【優先権主張番号】15156792.2
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515352799
【氏名又は名称】ブリュール アンド ケーア サウンド アンド バイブレーション メジャーメント アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング カベル
(72)【発明者】
【氏名】ニルス−ヤアアン ヤコブスン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン クビスト オールスン
【審査官】
九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−261755(JP,A)
【文献】
特開2014−219393(JP,A)
【文献】
特開2011−227081(JP,A)
【文献】
特開2012−221261(JP,A)
【文献】
特開平07−225242(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0363030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/26
G01L 5/16
G01P 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型光学スキャン機器により変換器の空間方向を検出する方法であって、
a)前記変換器の少なくとも第1外側筐体表面に第1空間方向特徴を提供するステップであって、前記第1空間方向特徴は、加速度、音圧、力といった前記変換器により測定される物理量に対する前記変換器の第1感度軸を示す、ステップと、
b)前記第1空間方向特徴が視界に入るよう、携帯型光学スキャン機器を前記変換器の前記第1外側筐体表面に対して選択された空間方向に向けるステップと、
c)前記携帯型光学スキャン機器により前記第1空間方向特徴を識別するステップと、
d)前記第1空間方向特徴の識別にあたり、所定の座標参照系での前記携帯型光学スキャン機器の空間方向を、前記携帯型光学スキャン機器の方向センサにより検出するステップと、
e)前記第1空間方向特徴および前記携帯型光学スキャン機器の前記検出された空間方向に基づいて、前記所定の座標参照系における前記変換器の空間方向を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1空間方向特徴は、前記変換器の前記第1外側筐体表面の突起またはくぼみを含む、請求項1に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項3】
前記第1空間方向特徴は、前記変換器の前記第1感度軸を示す第1機械可読コードを含む第1方向タグを含む、請求項1または2に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項4】
戦記第1機械可読コードは、シリアル番号、ロット番号、タイプ番号、較正データ等といった追加変換器情報を含む、請求項3に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項5】
前記第1機械可読コードは、バーコード、QRコード(登録商標)、文字、数字、またはこれらの組み合わせのうち1以上を含む、請求項4に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項6】
前記第1方向タグは、
前記変換器の前記第1感度軸に対して実質的に垂直に延びる前記変換器の第2感度軸を示す第2機械可読コードを含み、
前記変換器の前記第1および第2感度軸のそれぞれに対して実質的に垂直に延びる変換器の第3感度軸を示す第3機械可読コードを含んでもよい、
請求項4または5に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項7】
前記第1方向タグの前記第1および第2機械可読コードは、回転非対称なパターンにより前記第1外側筐体表面の面上に形成される、請求項6に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項8】
前記変換器の第2外側筐体表面に第2空間方向特徴を提供するステップであって、前記第2空間方向特徴は前記測定される物理量に対する前記変換器の第2感度軸を示す、ステップをさらに含み、
前記第2外側筐体表面は、前記変換器の前記第1外側筐体表面に対して実質的に垂直である、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項9】
請求項1のステップa)における前記変換器の製造において、前記変換器の第1外側筐体表面に前記第1方向タグを取り付けるステップを含む、請求項3ないし8のいずれか1項に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項10】
試験対象への前記変換器の搭載にあたり、前記変換器の第1外側筐体表面に前記第1方向タグを取り付けるステップを含む、請求項3ないし8のいずれか1項に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項11】
前記携帯型光学スキャン機器は、前記第1空間方向特徴の画像を記録するよう構成されたカメラを備える、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項12】
f)前記携帯型光学スキャン機器により、前記所定の座標参照系における決定された前記変換器の方向を記述する方向データを、無線または有線データ通信リンクを介して遠隔測定システムに送信するステップであって、前記遠隔測定システムは、測定された前記物理量の成分を表す変換器信号を受信するために前記変換器の出力に接続されている、ステップ
をさらに含む、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の、変換器の空間方向を検出する方法。
【請求項13】
少なくとも第1外側筐体表面を備える変換器筐体の中に搭載される変換部と、
測定された物理量の成分を示す変換器信号を供給するため前記変換部に接続される変換部出力と、
前記第1外側筐体表面に取り付けられる第1方向タグであって、前記第1方向タグは、加速度、音圧、力といった物理量に対する前記変換部の第1感度軸を示す第1機械可読コードを含む、第1方向タグと、
を備え、
装置によって検出される所定の座標参照系における前記変換器の空間方向は、前記装置によって識別された前記第1方向タグに対する前記変換部の前記第1感度軸と、前記所定の座標参照系における前記装置の空間方向とに基づいて、決定される、
変換器。
【請求項14】
前記第1方向タグは、
前記変換器の前記第1感度軸に対して実質的に垂直に延びる前記変換器の第2感度軸を示す第2機械可読コードを含み、
前記変換器の前記第1および第2感度軸のそれぞれに対して実質的に垂直に延びる変換器の第3感度軸を示す第3機械可読コードを含んでもよい、
請求項13に記載の変換器。
【請求項15】
前記第1方向タグの前記第1機械可読コードは、バーコード、QRコード、文字、数字、またはこれらの組み合わせのうち1以上を含む、請求項13または14に記載の変換器。
【請求項16】
変換器の製造方法であって、
第1外側筐体表面を備える変換器筐体を製造するステップと、
加速度、音圧、力といった物理量に反応する変換部を、前記変換器筐体の1以上の内側表面に取り付けるステップと、
前記物理量の少なくとも1つの成分を表す少なくとも1つの変換器信号を供給するために、前記変換部の少なくとも1つの電気出力を前記変換器の外部からアクセス可能なコネクタの端子またはピンに接続するステップと、
i)第1方向タグを、前記変換器の第1外側筐体表面に取り付けるステップであって、前記第1方向タグは、前記物理量に対する前記変換部の第1感度軸を示す第1機械可読コードを含む、ステップ、および、
ii)前記変換器の前記第1外側筐体表面の上に、前記第1機械可読コードを、印刷、彫り込み、または押印するステップ、のうち少なくとも1つと、
を含み、
装置によって検出される所定の座標参照系における前記変換器の空間方向は、前記装置によって識別された前記第1方向タグに対する前記変換部の前記第1感度軸と、前記所定の座標参照系における前記装置の空間方向とに基づいて、決定される、
変換器の製造方法。
【請求項17】
変換器および装置を備え、
前記変換器は、
少なくとも第1外側筐体表面を備える変換器筐体の中に搭載される変換部と、
測定された物理量の成分を示す変換器信号を供給するため前記変換部に接続される変換部出力と、
前記第1外側筐体表面に取り付けられる第1方向タグであって、前記第1方向タグは、加速度、音圧、力といった物理量に対する前記変換部の第1感度軸を示す第1機械可読コードを含む、第1方向タグと、を備え、
前記装置は、
前記第1方向タグに対応する、前記変換器の前記第1感度軸を識別するための識別手段と、
前記所定の座標参照系における前記変換器の空間方向所定の座標参照系における前記装置の空間方向を検出するための検出手段と、を備え、
前記所定の座標参照系における前記変換器の空間方向は、前記検出手段によって検出された前記空間方向と、前記識別手段によって識別された前記第1感度軸とに基づいて決定される、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のある態様は、携帯型光学スキャン機器により変換器の空間方向を検出する方法に関する。方法は、変換器の少なくとも第1外側筐体表面に第1空間方向特徴を提供するステップと、第1空間方向特徴が視界に入るよう携帯型光学スキャン機器を変換器筐体の第1外側表面に対して選択された空間方向に向けるステップと、を含む。方法は、さらに、第1空間方向特徴を識別するステップと、所定の座標参照系での携帯型光学スキャン機器の空間方向を検出するステップと、所定の座標参照系における変換器の空間方向を決定するステップと、を含む。
【背景技術】
【0002】
大規模測定機構の多数の変換器またはセンサの、機能、配置、および空間方向の検査および検証は、音と振動の測定の種々の応用、例えば自動車の検査または風力タービンの監視または検査において、依然としてかなりの課題である。検査対象物の寸法が大きくなると、検査対象物の測定箇所が増加する。そして、通常、測定機構に含まれる変換器の数もこれに対応して増加する。その結果、配置誤り、入れ違い、または不作動の変換器といった、測定機構における間違いや誤りの発生が起きやすくなる。近年、不揮発半導体メモリを備えたいわゆる「スマートセンサ」が発達してきている。半導体メモリは、シリアル番号、較正値、および位置といった様々な種類の有益な変換器情報を、IEEE−P1451.4標準で規定される標準化された形式で電子的に保存することができる。後者のフォーマットは、現在、変換器電子データシート(Transducer Electronic Data Sheet;TEDS)に指定されている。TEDS準拠の変換器は、保存した変換器情報を遠隔測定システムまたは装置に、標準化された通信プロトコルで送信することができる。遠隔測定システムは、変換器情報を自動的に、測定システムの機構の記述またはファイルに直接読み込んでよい。この機能により、変換器のデータの測定システムへの手入力に関連するヒューマンエラーを減少させることができる。
【0003】
しかし、このような測定機構の個々の変換器の空間方向の検査および検証は、依然として顕著な課題である。変換器が適切な空間方向にあることは、対象部品の、例えば音圧、音の強度、加速度、または他の物理量を、変換器またはセンサにより測定するような、多種多様の音響および振動測定において重要である。変換器の空間方向を検出する本発明の方法は、光学スキャン機器で変換器筐体の少なくとも第1空間方向特徴を読み取り認識して変換器の空間方向を識別することにより、この問題に取り組み解決する。第1空間方向特徴は、音圧、力、加速度といった変換器が測定する物理量に対する変換器の感度の第1の軸を示す。光学スキャン機器は、スマートフォン、携帯電話、タブレットといった携帯端末に統合されていてよく、そうすると携帯端末の既存のスキャン用ハードウェアおよびソフトウェア要素を利用することができ、そして変換器の方向の検出を行う低コストで柔軟な可搬機器を提供することができる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様は、携帯型光学スキャン機器により変換器の空間方向を検出する方法に関する。方法は、
a)変換器の少なくとも第1外側筐体表面に第1空間方向特徴を提供するステップであって、第1空間方向特徴は、加速度、音圧、力といった変換器により測定される物理量に対する変換器の第1感度軸を示す、ステップと、
【0005】
b)第1空間方向特徴が視界に入るよう、携帯型光学スキャン機器を変換器筐体の第1外側筐体表面に対して選択された空間方向に向けるステップと、
【0006】
c)携帯型光学スキャン機器により第1空間方向特徴を識別するステップと、
【0007】
d)第1空間方向特徴の識別にあたり、所定の座標参照系での携帯型光学スキャン機器の空間方向を、携帯型光学スキャン機器の方向センサにより識別するステップと、
【0008】
e)第1空間方向特徴および光学スキャン機器の検出された空間方向に基づいて、所定の座標参照系における変換器の空間方向を決定するステップと、を含む。
【0009】
携帯型、または可搬の光学スキャン機器は、スマートフォン、携帯電話、タブレットまたは同様の携帯型のソフトウェア駆動コンピューティング機器に統合され、またはその一部をなしてよい。それにより、携帯端末の既存のカメラハードウェア、方向センサ、光学センサなどを利用することができ、変換器の空間方向検出のための低コストで柔軟な携帯型、または可搬のスキャン機器を提供することができる。同様に、携帯端末のグラフィカルユーザインタフェース(GUI)機能、メモリ保存容量および画像処理のハードウェアおよびソフトウェア要素を、本発明のステップc)、d)およびe)のうち1以上といった様々なステップの実行または実装に用いることができる。よって、本方法のある実施形態は、
【0010】
ソフトウェアでプログラム可能な携帯端末のプロセッサで実行される第1アプリケーションプログラムにより、第1空間方向特徴を認識または識別するステップと、
【0011】
ソフトウェアでプログラム可能なプロセッサで実行される第2アプリケーションプログラムにより、変換器の空間方向を検出するステップと、を有し、
【0012】
第1および第2のアプリケーションプログラムは、それぞれ実行可能なプログラム命令のセットを含む。携帯端末は、{スマートフォン、携帯電話、タブレット}から選択されるスキャン機器であると好ましい。ソフトウェアでプログラム可能なプロセッサは、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)といったマイクロプロセッサであってよい。
【0013】
変換器は、音響変換器、力もしくは歪変換器、または、1軸もしくは3軸加速度計であってよい。音響変換器はマイクロフォンまたはスピーカであってよい。第1空間方向特徴は、変換器の第1外側筐体表面の様々な物理的な属性であってよい。本発明のある実施形態で、第1空間方向特徴は、変換器の第1外側筐体表面の突起またはくぼみといった、既知で機械により認識可能な変換器の物理的特徴であってよい。ある典型的な実施形態で、第1空間方向特徴は、添付図面を参照して以下で詳細に説明するように、変換器筐体から突出する接続プラグの所定の形状および方向であってよい。本発明の他の実施形態で、第1空間方向特徴は、変換器の第1感度軸を示す第1の機械可読コードを含む第1方向タグであってよい。機械可読コードは、バーコード、QRコード(登録商標)、またはDataMatrixコード、文字、数字、矢印またはこれらの記号の組み合わせといった1以上の記号で構成されてよい。第1の機械可読コードは、シリアル番号、ロット番号、タイプ指標または番号、較正データ等といった追加変換器情報またはデータを含んでよい。追加変換器情報があると、携帯型スキャン機器は、所定の座標参照系における個々のあるいは複数の変換器の空間方向の検出に加えて、特定の音響および振動測定機構の個々のあるいは複数の変換器についてのさまざまな有用情報を記録することができる。変換器の空間方向および追加変換器情報は、以下の詳細に説明するように、無線データ通信インタフェースを介して携帯型スキャン機器により遠隔測定システムに送信されてよい。
【0014】
本発明のある実施形態で、第1方向タグは、変換器の第2感度軸を示す第2機械可読コードを含んでよい。ここで、第2感度軸は、変換器の第1感度軸に実質的に垂直である。また、変換器の第1および第2感度軸のそれぞれに対して実質的に垂直な変換器の第3感度軸を示す第3機械可読コードを含んでもよい。
【0015】
本方法の好ましい実施形態では、携帯型スキャン機器は、第1空間方向特徴の画像を記録するよう構成されたカメラを備える。携帯型スキャン機器で実行される適切に構成されたプログラムルーチンまたはアプリケーションプログラムは、第1外側筐体表面の第1方向タグを認識し、第1方向タグのいずれかの機械可読コードを認識してデコードしてよい。第1方向タグの第1および第2の機械可読コードは、例えば、第1外側筐体表面の面上に回転非対称のパターンを形成する、上述したDataMatrixコードまたはパターンを含む。DataMatrixコードまたはパターンの一般的な形状またはパターンは携帯型光学スキャン機器が事前に知っているので、取得した第1方向タグの画像または像におけるDataMatrixコードの形状を分析するよう、スキャン機器の適切な補償プログラムまたはルーチンを構成することができる。取得した画像におけるDataMatrixコードの所定の独自要素の、第1方向タグにおける同じ独自要素の既知の位置に対する位置が、変換器筐体表面の所定の2次元平面での変換器の回転を計算して決定されてよい。そして、単一の方向タグの識別に基づいて、直交する少なくとも2つの感度軸方向における変換器の方向を、有利なやり方で決定することができる。
【0016】
本発明のある実施形態において単一の方向タグから変換器の直交する少なくとも2つの感度軸方向を決定することができるが、変換器は、第2外側筐体表面の第2空間方向特徴を備えてよい。後者の方法の実行には以下のステップが含まれる:
【0017】
変換器の第2外側筐体表面の第2空間方向特徴を提供するステップであって、第2空間方向特徴は、測定される物理量に対する変換器の第2感度軸を示し、
【0018】
第2外側筐体表面は、変換器の第1外側筐体表面と実質的に垂直である。第1方向タグがいくつかの感度の軸を示す実施形態では、第2空間方向特徴は、重複した方向情報を提供する場合がある。
【0019】
しかし、変換器の外側筐体表面の方向情報が見掛け上重複していると、大変便利な場合がある。なぜなら、一旦変換器が測定装置に搭載され、またはアレイ配置に置かれると、どの外部筐体表面が見えて携帯型スキャン機器でスキャンし画像取得できるかを予め知ることは一般にはできないからである。そして、重複した方向情報を含む変換器の外側筐体表面の2以上の方向タグが与えられると、測定操作者はスキャン作業をより早くより予測どおりに行うことができる。
【0020】
上述のステップa)に従った少なくとも第1外側筐体表面の第1方向タグを提供するステップは、本発明の方法の異なる実施形態では異なった方法で実行可能である。第1方向タグは、変換器の製造時に変換器の第1外側筐体表面に取り付けられ、または、接着されてよい。別の実施形態では、第1方向タグは、変換器の製造後、例えば変換器の使用者または顧客により、第1外側筐体表面に取り付けられ、または、接着されてよい。使用者または顧客は、例えば、変換器の測定対象への搭載にあたり、第1外側筐体表面に第1空間方向タグを取り付けまたは接着してよい。第1方向タグ、および、変換器筐体表面にあるその他の方向タグは、外側に面する表面に第1の、そして場合によっては第2の、機械可読マーカまたはコードが表示された、紙、金属、または樹脂シートといった適切な材料からなる平らな部材といった、別体のステッカーやラベルであってよい。第1方向タグは、例えば筐体表面の材料に対し良好な接着特性を有する接着剤を用いた接着により、第1外側筐体表面に取り付けられてよい。接着剤は、少なくとも試験が行われている間、方向タグを関連する筐体表面に固定する程度に強力であると好ましい。これは、試験の種類によっては些細な課題ではない。振動試験には、多くの場合、熱、振動、湿度などといった悪環境条件への強暴露が含まれる。
【0021】
方向タグとして別体のステッカーやラベルを用いる代わりに、タグの適切な機械可読コードを変換器の外側筐体表面に彫り込み、または埋め込んで、変換器の実質的に永久なマーキングを形成してもよい。これは、変換器の製造時に行われると好ましい。適切な機械可読コードは、印刷、押印、または他の適切な印象形成技術により、変換器の外側筐体表面に直接形成されてよい。
【0022】
方法のある好適な実施形態は、以下のステップを含む:
【0023】
f)携帯型光学スキャン機器により、所定の座標参照系における決定された変換器の方向を記述する方向データを、無線または有線データ通信リンクを介して遠隔測定システムに送信するステップ。遠隔測定システムは、測定された物理量の成分を表す変換器信号を受信するために変換器の出力に接続されている。遠隔測定システムは、本発明の第3の態様について後述するように、多数の変換器に接続され、それぞれの変換器から変換器出力信号を供給される、多数の測定チャネルを備えてよい。
【0024】
本発明の第2の態様は、以下の構成を備えた変換器に関する:
【0025】
少なくとも第1外側筐体表面を備える変換器筐体の中に搭載された変換部と、
【0026】
測定された物理量の成分を示す変換器信号を供給するため変換部に接続される変換器出力と、
【0027】
第1外側筐体表面に取り付けられる第1方向タグであって、加速度、音圧、力等といった物理量に対する変換部の第1感度軸を示す第1機械可読コードを含む、第1方向タグ。第1方向タグおよび第1機械可読コードの属性は上述のとおりであり、変換器筐体への第1方向タグの組込みおよび取り付けの異なる方法に適用される。変換器は、上述の理由で、変換器の他の外側筐体表面、例えば第1筐体表面に対し実質的に直交して配置される第2筐体表面に取り付けられる、他の方向タグをさらに含んでよい。変換器のある実施形態で、第1方向タグは、変換器の第1感度軸に対し実質的に垂直に延びる変換器の第2感度軸を示す第2機械可読コードを含んでよい。また、以下を含んでもよい:
【0028】
変換器の第1および第2感度軸のそれぞれに対して実質的に垂直に延びる変換器の第3感度軸を示す第3機械可読コード。変換器の変換部は、1軸加速度計、2軸もしくは3軸加速度計、またはマイク部を備えてよい。変換器は、測定された物理量の成分を示す変換器信号出力を提供する接続部を備えてよい。接続部は、例えば電気ケーブルまたは光ケーブルを介して、遠隔測定システムに接続可能である。変換器信号出力は、変換器の感度の第1の軸に沿って変換器に作用して測定される、例えば加速度、力、または歪みの成分を示してよい。変換器がアクチュエータ、例えばスピーカまたは超音波発振器のとき、接続部はアクチュエータの入力信号または励起信号を受信するよう構成されてよい。アクチュエータは、着脱可能な振動板を備えてよい。
【0029】
本発明の第3の態様は、以下のステップを有する変換器の製造方法に関する:
【0030】
第1外側筐体表面を備える変換器筐体を製造するステップと、
【0031】
加速度、音圧、力等といった物理量に反応する変換部を、変換器筐体の1以上の内側表面に取り付けるステップと、
【0032】
物理量の少なくとも1つの成分を示す少なくとも1つの変換器信号を供給するために、変換部の少なくとも1つの電気出力を変換器の外部からアクセス可能なコネクタの端子またはピンに接続するステップと、
【0033】
i)第1空間方向タグを変換器の第1外側筐体表面に取り付けるステップであって、第1空間方向タグは、物理量に対する変換部の第1感度軸を示す第1機械可読コードを含む、ステップ
【0034】
ii)変換器の第1外側筐体表面の上に、第1機械可読コードを印刷、彫り込み、または押印するステップ、のうち少なくとも1つのステップ。
【0035】
本発明の第4の態様は、上述した実施形態に従った複数の変換器を備えた変換器測定システムに関する。複数の変換器は、検査対象の周囲の所定の複数の測定点に搭載される。変換器測定システムは、上述の遠隔測定システムをさらに備える。遠隔測定システムは、少なくとも以下を備える:
【0036】
それぞれ無線または有線の信号接続を介して対応する複数の変換器の変換器出力信号に接続される複数の入力チャネル、
【0037】
無線または有線データ通信リンクを介して光学スキャン機器から複数の変換器の方向データを受信するよう構成される無線データ通信インタフェース。
【0038】
遠隔測定システムは、複数の信号入力チャネルに接続された複数の変換器のそれぞれの空間方向を表示するディスプレイを備えてよい。遠隔測定システムは、検査対象または検査構造体と同じ部屋に配置されてよく、この場合、携帯型スキャン機器から遠隔測定システムへの方向データの有線送信も無線送信も現実的である。検査操作者は、例えば、検査対象に搭載された複数の変換器のそれぞれに、本発明の方法の上述のb)、c)、d)およびe)のステップの実行を進めてよい。この過程で、すべての変換器のそれぞれの方向データが集められ、携帯型スキャン機器のメモリに一時記憶され、無線または有線データ通信リンクを介した単一のデータ送信セッションで、遠隔測定システムに送信される。
【0039】
変換器測定システムは、検査対象のそれぞれの測定点近傍に取り付けられた、複数の機械可読位置マーカを備えてよく、それぞれの機械可読位置マーカは検査対象の特定の位置または場所を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の好適な実施形態を、次の図面を参照して以下詳細に説明する。
【
図1A】本発明の第1の実施形態による、加速度計のそれぞれの外側筐体表面に取り付けられた第1、第2、および第3の空間方向タグを備えた3軸加速度計としての典型的な変換器の模式斜視図である。
【
図1B】本発明の第1の実施形態による、加速度計のそれぞれの外側筐体表面に取り付けられた第1、第2、および第3の空間方向タグを備えた3軸加速度計としての典型的な変換器の模式斜視図である。
【
図2】本発明の3軸加速度計の空間方向を検出する方法の第1の典型的な実施形態による、
図1に示す変換器筐体に搭載された方向タグの1つの、典型的な携帯型光学スキャン機器による読み取りの模式的斜視図である。
【
図3】本発明の3軸加速度計の空間方向を検出する方法の第2の典型的な実施形態による、
図1に示す変換器筐体に搭載された方向タグの1つの、典型的な携帯型光学スキャン機器による読み取りの模式的斜視図である。
【
図4】本発明の3軸加速度計の空間方向を検出する方法の第3の典型的な実施形態による、
図1に示す変換器筐体に搭載された特定の方向タグの、典型的な携帯型光学スキャン機器による読み取りの模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1Aおよび
図1Bは、本発明による加速度計の空間方向を携帯型光学スキャン機器により検出する方法での使用に適した、典型的な3軸加速度計の模式斜視図である。典型的な3軸加速度計100は、3軸加速度計100のそれぞれ垂直な第1および第2外側筐体表面101および103に取り付けられた、第1および第2方向タグ102、104を備える。3軸加速度計100は、第1および第2外側筐体表面101、103のそれぞれに対して垂直な第3外側筐体表面105に取り付けられた第3方向タグを備えてもよい。第1および第2方向タグ102、104は、3軸加速度計100の第1および第2空間方向特徴として機能する。加速度計の他の実施形態または他の形式の変換器が、第1および/または第2外側筐体表面上の突起またはくぼみといった加速度計または変換器の所定の既知で機械認識可能な物理的特徴に依存して加速度計または変換器の空間方向の認識を行うことができることを、当業者は理解するだろう。第1および第2空間方向特徴は、例えばコネクタプラグ121の形状を含む。3軸加速度計100は、例えばデンマーク国ネーロムのブリュール アンド ケーア サウンド アンド バイブレーション メジャーメント社製3軸圧電加速度計の4524、4524−Bまたは4504であってよい。もちろん、これに代えて他社製の1軸または多軸加速度計も、本発明の実施に用いることができる。加速度計の構造詳細に依存して、しばしばx、y、z軸方向で指定される3つの直交する空間軸方向のうち特定の軸方向の加速度に反応して、その特定の軸方向の加速度に比例する電圧または電流を生成する1以上の圧電変換部(不図示)が、変換器筐体107の内側に搭載されてよい。同様に、低雑音増幅器、フィルタ、ADコンバータ、電源などといった様々な電子信号調整回路および/またはメモリ素子が、変換器筐体107の内部の適切な荷台上に搭載されてよい。電子信号調整回路は、1以上の圧電変換部のそれぞれの出力端子に接続され、x、y、zのそれぞれの感度軸方向についての加速度計100の低インピーダンスで場合によっては周波数整形された出力信号を提供してよい。加速度計筐体107は、例えば湿度、機械的衝撃、埃、光、熱などの様々な有害環境汚染物質から変換部を保護するため、金属化合物、または、チタンといった金属で構成されてよい。金属の加速度計筐体107は、電磁妨害保護目的でも有益なことがある。加速度計筐体107は、取り付けのためのクリップの搭載や加速度計100の異なる複数の検査対象への適合をサポートする、複数のオプションスロット109a、109bを備える。加速度計筐体107の下方の実質的に平らな外側筐体表面(斜視図では隠れており、外側筐体表面101に対向して配置される)は、検査構造体と、直接または間接に(例えば適切な接着剤または接着層を介して)接触する。したがって、加速度計筐体107の下方の実質的に平らな外側筐体表面は、検査構造体に対する連接面または接合面として働く。
【0042】
3軸加速度計100は、共通アース端子と、3軸加速度計100の変換部の第1、第2、第3の直交する感度軸をそれぞれ示す加速度計のx、y、z成分の出力信号が通る3つの個別の出力信号端子と、を含む4ピンコネクタを備えてよい。第1、第2方向タグ102、104は、3軸加速度計100の、それぞれ例えばxとyの感度軸方向を示す。第4空間方向タグ106は、第2方向タグ104が置かれた第2外側筐体表面103に対向する表面に搭載され、これらのタグ104、106が3軸加速度計100の同一の感度の軸を示すように、同一の空間方向を有する。しかし、このような感度のy軸方向を示す方向タグの見掛け上の重複は有用である。なぜなら、3軸加速度計100が検査構造体に搭載されると、3軸加速度計100のどの外側筐体表面がスキャン/画像取得のために見える状態になるかは、どの検査手順でも事前に知ることは概してわからないためである。
【0043】
x成分の出力信号は、平らな第1外側筐体表面101から垂直に突出する加速度計の所定のx軸方向への加速度計100の加速度を示す。yおよびz成分の出力信号も同様にy軸およびz軸に沿った加速度をそれぞれ示し、これにより対応する検査対象または検査構造体の振動の3軸加速度測定を行うことができる。後者(検査構造体)は、例えば自動車の車体、航空機の構造体、列車の構造体、風力タービンの構造体、衛星構造体などが含まれる。電気コネクタ120は、適切なケーブル、例えば低雑音シールドケーブルを介してx、y、z成分の出力信号を遠隔測定システムに接続するために用いられてよい。実際の測定機構には、多数の、例えば20以上、あるいは100以上の、適切な電気ケーブルを介して遠隔測定システムに接続された個別の3軸加速度計100が含まれる場合があることを、当業者は理解するだろう。遠隔測定システムは、パーソナルコンピュータまたは他の計算機ハードウェア装置で実行される様々な種類のデータ収集ソフトウェアとともに、適切な加速度計計測システムを備えてよい。遠隔測定システムは、それぞれの加速度計の識別および状態情報、例えばシリアル番号とともに、それぞれの測定チャネルの状態と識別子とを視覚的に表示するよう構成されたディスプレイを備えてよい。多数の3軸加速度計のそれぞれは、遠隔測定システムの特定の測定チャネルに接続されてよい。
【0044】
3軸加速度計100の金属筐体107は、上述のように、3つの実質的に平らで互いに垂直に向いた外側筐体表面101、103、105を有する。これらの外側筐体表面のうち2つまたは3つには、それぞれの上に方向タグがしっかりと取り付けられ、好ましくは、以下で
図2、3および4を参照して詳細に説明するように、3軸加速度計100の感度のx、y、zのそれぞれの軸が変換器の空間方向を検出する本発明の方法の適用により所定の座標/空間参照系において一意に識別できるよう、少なくとも3つの機械可読コードを備えてよい。本発明の方法は、慣性またはジャイロ測定システムを独自に備え、適切に構成またはプログラムされた、携帯型光学スキャン機器(
図2の201)を用いる。各々の方向タグの機械可読コードは、コードパターンの所定の属性により、3軸加速度計100の感度の軸の1つ、例えば方向タグの設けられた筐体表面から垂直に突出する軸を示してよく、また、3軸加速度計100の2または3の直交する感度の軸を示してもよい。3軸加速度計100の本実施形態では、第1および第2方向タグ102、104のそれぞれは、例えばECC000−ECC200標準に従って、DataMatrixまたはQRコードを備える。方向タグ102、104のそれぞれに、他の形式の多数の機械可読コードを適用可能であることを、当業者は理解するだろう。ある実施形態で、それぞれの機械可読コードは、バーコード、英数字、または英数字の組み合わせで構成されてよい。それぞれの方向タグの機械可読コードは、例えば単に「X」または「Y」または「Z」の文字を矢印とともに表示し、通常の加速度計の用語法に従って軸方向を示してよい。方向タグ102、104(そしてタグ106も)のそれぞれの機械可読コードは、好ましくは、シリアル番号、ロット番号、タイプ番号、較正データ、加速度計形式識別子等といった追加または補足変換器情報を含んでよい。方向タグ102、104の1つまたは両方の機械可読コードは、3軸加速度計100の感度のx軸および感度のy軸を示す第1および第2機械可読コードの両方を含んでよい。これは、第1外側筐体表面101において、第1方向タグ102の第1および第2機械可読コードを含むDataMatrixコードの回転非対称属性により実装される。第2外側筐体表面103に取り付けられた第2方向タグ104のDataMatrixコードも同様に、第2機械可読コードと第3機械可読コードとを含んでよい。第3機械可読コードは、3軸加速度計100の感度のz軸を示してよい。方向タグ102、104のDataMatrixコードに回転対称性がないため、
図2、3および4を参照して以下に詳述するように、第1または第2外側筐体表面101、103の平面における3軸加速度計100の回転角を、携帯型光学スキャン機器により検出することができることになる。
【0045】
本発明のある実施形態で、方向タグ102、104、106のそれぞれは、外側の面に適切な機械可読マーカまたはコードを設けた個別のステッカー、例えば、紙または樹脂シートといった材料の比較的平らな小片で構成される。適切な機械可読マーカまたはコードは、筐体表面に、印刷、押印、または他の適切な印象形成技術によって形成されてよい。方向タグは、対象の変換器筐体表面に、例えば筐体表面の材料への接着特性の良好な接着剤を用いた接着により、取り付けられてよい。接着剤は、少なくとも振動試験が行われる間方向タグを対応する筐体表面に固定できる程度に強力であると好ましい。多くの振動試験には熱、振動、湿度などといった悪環境条件への強暴露が含まれるため、これは小さな課題ではない。後者の実施形態で、第1および第2方向タグ102、104(そして場合によっては第3方向タグ106)は、例えば振動試験および試験対象の準備にあたり、既存の加速度計のそれぞれの外側筐体表面に後付けされてよい。第1および第2空間方向タグ102、104は、3軸加速度計100が試験対象に搭載される前、もしくは3軸加速度計が試験対象に搭載された後であって、振動試験が開始される前に、それぞれの外側筐体表面に取り付けられてよい。これに代えて、上述した形式の方向タグは、製造時点で加速度計のそれぞれの外側筐体表面に取り付けられてよい。本発明の他の実施形態で、方向タグは、加速度計100のそれぞれの外側筐体表面に彫り込まれ、または埋め込まれて、加速度計筐体107に実質的に永久のマーキングを形成してもよい。各方向タグは、例えば、加速度計筐体107の製造にあたり、押印、彫り込み、金型成形、エッチング、印刷、レーザーマーキングなどといった既知の刻印技術により作成または形成することができる。
【0046】
図2は、本発明の3軸加速度計100の空間方向を検出する方法の第1の実施形態による、加速度計筐体107の第1外側筐体表面101に搭載された、DataMatrixにエンコードされた第1方向タグ102の形態である第1空間方向特徴(
図1参照)の、典型的な携帯型光学スキャン機器201による読み取りの模式的斜視図である。加速度計筐体107は、加速度計筐体107の上述した接合面を介して、試験対象筐体212に対しその要求される位置にしっかりと取り付けられる。典型的な携帯型光学スキャン機器201は、本発明の第1の実施形態では、スマートフォンのデジタルカメラ部として実装される。スマートフォンは、本発明の方法の実行をサポートする多数の有用な機能、具体的にはデジタルカメラ、画像の記憶・操作アプリケーション、そして無線通信リンクを提供し、方向タグ102、104に関する様々な種類の情報を記憶、表示、処理等のためにリモートコンピューティングシステムまたはプラットフォームにアップロードすることが可能になることを、当業者は理解するだろう。
【0047】
DataMatrixにエンコードされた第1方向タグ102の読み取りは、試験操作者がスマートフォン201を手で持って、スマートフォン筐体の実質的に平らな外側後方表面205と、3軸加速度計100の実質的に平らな第1外側筐体表面101とを、図示されたz軸方向、および、紙面の前後方向に延びるy軸方向に沿ってこれらが並ぶように配置することにより開始する。これにより、スマートフォン筐体の平らな後方表面205は、3軸加速度計100の実質的に平らな第2外側筐体表面103に対して垂直に配置される。
図3および
図4を参照して後述するように、本発明の方法の他の実施形態では、第1方向タグ102の読み取り中に、3軸加速度計100の外側筐体表面101とスマートフォン筐体とが、別の空間方向関係を有してもよい。スマートフォン201のカメラレンズ(不図示)から加速度計100への視線が、感度のx軸に沿って延びる光線路208により模式的に示されている。スマートフォンカメラのCCDチップの感度面(不図示)がスマートフォンの実質的に平らな外側後方表面205に並んでいるとの仮定に基づくと、第1方向タグ102の画像は、CCDチップの感度面および3軸加速度計100の外側筐体表面101に対して0度の角度で記録または取得され、第1方向タグ102の特徴および形状がCCDチップに大きく(空間的に)ゆがむことなく投影される。スマートフォン筐体と3軸加速度計100の筐体107との間が求められる空間方向となり、第1タグ102の機械可読コード上にカメラの焦点が合ったことに試験操作者が気づくと、試験操作者は方向タグ102の写真を撮影して読み取る。このようにして、方向タグ102のデジタル画像がスマートフォンのメモリに記憶される。光線路208内に記載されたDataMatrixコードを有する方向タグ102は、説明のためのものである。
【0048】
方向タグ102の写真を撮影したのと実質的に同時に、スマートフォン201のソフトウェアプログラム可能なマイクロプロセッサ(不図示)は、対応するスマートフォン201の空間方向を検出するため、スマートフォンの組み込み方向センサまたは慣性航行システムに問い合わせまたはアクセスを行う。この動作は、本発明のある実施形態では、方向センサから3次元方向を読み取るよう構成された、スマートフォンのオペレーティングシステムの1以上の既存のプログラムルーチンまたはアプリケーションプログラムの読み出しおよび実行により比較的単純なやり方で行うことができることを、当業者は理解するだろう。方向センサは、MEMSベースのジャイロスコープを備えてよい。そして、組み込み方向センサは、第1方向タグ102の読み取りの間、所定の座標参照系におけるスマートフォン201の空間方向を示す3次元方向データを出力する。スマートフォンのマイクロプロセッサは、次に、第1方向タグ102上に保持されたDataMatrixでエンコードされた機械可読コードをデコードすることにより、加速度計100の感度軸方向を検出する。DataMatrixでエンコードされた機械可読コードのデコードが、取得されたデジタル画像からDataMatrixコードをデコードするよう構成されたスマートフォンのオペレーティングシステムの既存のプログラムルーチンを呼び出し実行するという比較的単純なやり方で行うことができることを、当業者は理解するだろう。プログラムルーチンは、次に、第1方向タグ102のDataMatrixでエンコードされた機械可読コードに示される感度の軸および検出されたスマートフォン201の空間方向に基づいて、所定の座標参照系における3軸加速度計100の方向を決定する。3軸加速度計100の平らな第1外側筐体表面101(第1方向タグ102を保持する)とCCDチップの感度面との相対的空間方向または配置は、上述した理由でわかっているので、スマートフォン201の方向センサを用いて3軸加速度計100の所定の座標参照系における空間方向を判断するのは容易である。第1外側筐体表面101の面上で、DataMatrixコードでエンコードされた機械可読コードは、上述したように回転非対称属性を有しているので、プログラムルーチンは、スマートフォン筐体の実質的に平らな外側後方表面205と3軸加速度計100の平らな第1外側筐体表面101とが感度のy軸(紙面の前後方向)沿って並ぶ相対的位置関係を検出することができる。この検出は、図面の第1方向タグにおいてDataMatrixパターンまたはコードのz−y平面での回転角を検出することにより可能となる。
【0049】
一方、第1方向タグ102の機械可読コードが回転非対称属性を有していない場合、ここまでに概説した第1方向タグ102の読み取りと認識手順を、第2方向タグ104に対して繰り返し、感度のy軸に沿った3軸加速度計100の空間方向を決定してよい。
【0050】
スマートフォン201のソフトウェアでプログラム可能なマイクロプロセッサは、第1方向タグ102のDataMatrixでエンコードされた機械可読コードにエンコードされた追加変換器情報を読み、デコードするよう、あわせて構成されると好ましい。
【0051】
その結果、所定の座標参照系で表現された3軸加速度計100の空間方向、および、追加変換器情報は、手順が完了した後にスマートフォン201の所定の記憶領域に保存される。3次元方向情報および追加変換器情報は、その後、適切な無線データ通信リンクまたはチャネルを介して遠隔測定システムに送信される。データ送信の開始は、自動で行われてもよく、試験操作者の手動操作により行われてもよい。手動で行う実施形態で、試験操作者は、例えば、スマートフォン201で動作する専用アプリケーションの適切なグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して、送信手順を制御してよい。データ通信リンクまたはチャネルは、好ましくはスマートフォンの既存の無線通信インタフェースのハードウェア要素とソフトウェア要素に基づき、GSM(登録商標)、GRPS、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等といった異なる形式の無線データ通信の標準化プロトコルを含んでよい。このようにして、3軸加速度計100の3次元空間方向データおよび追加変換器情報/データは遠隔測定システムに送信され、その適切な記憶領域に保存される。遠隔測定システムは、受信した3軸加速度計100の3次元方向データおよびそのシリアル番号を、試験構造体上の3軸加速度計100の加速度のx、y、z軸をそれぞれ示す、加速度計のx、y、z出力信号の1つにそれぞれ(4ピンコネクタ120を通して)接続される特定の測定チャネルと、関連づけ、または接続する。
【0052】
最後に、3軸加速度計100の空間方向を空間方向タグ102に基づいて検出する上述の方法は、好ましくは測定機構の残りの加速度計のそれぞれについて繰り返される。その後、測定システムのそれぞれの測定チャネルは、その測定チャネルに接続された加速度計の3次元方向およびシリアル番号を示す変換器情報に関連付けられる。
【0053】
図3は、本発明の3軸加速度計100の空間方向を検出する方法の第2の実施形態による、変換器筐体107の第1外側筐体表面101に取り付けられた(
図1参照)、DataMatrixでエンコードされた第1方向タグ102の、上述の典型的な携帯型光学スキャン機器による読み取りの模式的斜視図である。
図2に関連して上述した第1の実施形態および本実施形態に対応する特徴には、対比が容易となるよう対応する参照符号を付してある。全体として、3軸加速度計100の空間方向データを取得して遠隔測定システムに送信するため、本方法は上述のステップを繰り返す。しかし、本実施形態では試験操作者303はスマートフォン301を、そしてその結果CCDチップの感度面を、3軸加速度計100の平らな第1外側筐体表面101に対し、所定の事前に不明の回転角、例えば約45度、z−x平面で回転させる。スマートフォン301と加速度計100の平らな第1外側筐体表面101とをz−x平面および/またはz−y平面に揃えることなく、第1方向タグ102の機械可読コードを読み、3軸加速度計100の空間方向を決定できるのは、多くの実用測定場面において有利な特徴となる。試験対象表面312の形や大きさによる物理的な制限のため、z−x平面および/またはz−y平面で適切な配置とすることができない、または時間がかかることがしばしばある。したがって、このような配置の条件が緩和されると、操作者に必要な時間を顕著に削減することができる。既知のDataMatrixコードの一般的形状に関連して第1方向タグ102のDataMatrixコードが回転対称性を有していないため、スマートフォン301のソフトウェアでプログラム可能なマイクロプロセッサ上で適切な補償プログラムまたはルーチンを実行し、取得した画像または像における機械可読コードの回転を決定することができる。DataMatrixコードが例えばコードの所定の位置に特徴的な形状や要素を有していれば、取得したDataMatrixコードの像におけるこの特徴的な形状または要素の回転量を解析し、第1外側筐体表面101とスマートフォン301とのz−x平面における回転角を決定することができる。回転角が決定されると、補償プログラムは、スマートフォン301の方向センサから取得した3次元方向データを決定された回転角と結合させ、所定の座標参照系における3軸加速度計100の実際の方向を、スマートフォン301を用いて決定することができる。
【0054】
図4は、本発明の3軸加速度計100の空間方向を検出する方法の第3の実施形態による、変換器筐体107の第1外側筐体表面101に取り付けられた(
図1参照)、DataMatrixでエンコードされた第1方向タグ102の、上述の典型的な携帯型光学スキャン機器による読み取りの模式的斜視図である。
図2に関連して上述した第1の実施形態および本実施形態に対応する特徴には、対比が容易となるよう対応する参照符号を付してある。全体として、3軸加速度計100の空間方向データを取得して遠隔測定システムに送信するため、本方法は上述のステップを繰り返す。しかし、本実施形態では試験操作者403は、スマートフォン401のCCDチップの感度面と、第1方向タグ102の設けられる加速度計100の平らな第1外側筐体表面101とを、上述のようにz軸に沿って0度をなすように配置する必要はない。図示された光線路408および並び線403a、403bに示すように、試験操作者403はスマートフォン401を回転させ、そしてCCDチップの感度面を、x−z平面において所定の事前に不明の傾斜角αをなすようにする。そして、第1方向タグ102の機械可読コードに用いられるパターンによっては、これらの機械可読コードは、記録されたカメラ画像において、空間的な歪みの大小が生じ得る。しかし、機械可読マーカまたはコードの一般的な形状またはパターンは事前にわかっているので、マイクロプロセッサは、取り込まれた画像または像のデータ上の第1方向タグの機械可読コードの形状を分析する適切な補償プログラムまたはルーチンを含んでよい。機械可読コードが例えば第1方向タグ102の既知の位置に四角い要素を含んでいれば、補償プログラムルーチンは取り込まれた画像中の四角い要素の幾何変形量を分析して傾斜角αを決定することができる。傾斜角が決定されると、マイクロプロセッサは、スマートフォン401の方向センサから取得した3次元方向データと決定された傾斜角とを結合し、所定の座標参照系における第1外側筐体表面101の修正方向を、スマートフォン401を用いて決定することができる。
【0055】
本発明の別の態様によると、測定機構は、試験対象の、例えば加速度計が搭載される測定点の近傍に取り付けられる複数の機械可読地点マーカを備えてもよい。測定地点マーカは、測定地点が試験対象のどの位置にあるのかを、例えば「翼端」「基部の垂下翼端」といった記述的単語を用いて、または、試験対象にわたって広がる所定の座標系における座標の数値セットにより、示してよい。そして、試験操作者は、上述した3軸加速度計のそれぞれの機械可読QRタグの読み取りおよびデコード手順にあたり、例えばその前または後に、スマートフォンの光学スキャン機器を用いて、測定位置マーカをスキャンしてよい。このようにして、加速度計の位置情報と加速度計の方向データとが試験対象の一度の全体スキャン手順により取得可能となる。位置情報が3次元方向情報および追加変換器情報/変換器データとともに遠隔測定システムに送信されてよいことは、当業者には十分理解できるだろう。