(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763876
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】二相ステンレス鋼管の製造方法
(51)【国際特許分類】
C21D 8/10 20060101AFI20200917BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20200917BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
C21D8/10 D
C22C38/00 302H
C22C38/58
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-552813(P2017-552813)
(86)(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公表番号】特表2018-513917(P2018-513917A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】EP2016057831
(87)【国際公開番号】WO2016162525
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年2月8日
(31)【優先権主張番号】15163187.6
(32)【優先日】2015年4月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ポンスィルオマ, ヤリ
(72)【発明者】
【氏名】ヒンドラム, マリア
(72)【発明者】
【氏名】エイドハーゲン, ヨセフィン
(72)【発明者】
【氏名】パーション, カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, ラッセル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ラーション, オーサ
【審査官】
鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−100613(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/082395(WO,A1)
【文献】
特開2012−139693(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/119895(WO,A1)
【文献】
特開2012−207295(JP,A)
【文献】
特開2013−216963(JP,A)
【文献】
国際公開第96/018751(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/10
C22C 38/00 − 38/60
C21D 1/76
B21B 21/00 − 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、以下の組成:
C 最大0.06;
Cr 21〜24.5;
Ni 2.0〜5.5;
Si 最大1.5;
Mo 0.01〜1.0;
Cu 0.01〜1.0;
Mn 最大2.0;
N 0.05〜0.3;
P 最大0.04;
S 最大0.03;
任意選択的に、Al、V、Nb、Ti、O、Zr、Hf、Ta、Mg、Ca、La、Ce、Y及びBからなる群から選択される1種以上の元素 1.0以下;並びに
残部のFe及び不可避的不純物
からなり、
少なくとも23.0のPRE値を有する
二相ステンレス鋼の管を製造する方法であって、
以下の工程:
a) 二相ステンレス鋼の溶融物を提供すること;
b) その溶融物から二相ステンレス鋼の本体を鋳造すること;
c) 本体の棒を形成すること;
d) 棒の管を、その中に穴を生成することにより、形成すること;
e) 熱間押出しによって、管の直径及び/又は壁厚を減少させること;
f) 冷間変形によって、管の直径及び/又は壁厚をさらに減少させること;及び
g) 冷間変形された管をアニールすること
を含み、
工程g)の後、得られた管の二相ステンレス鋼が40〜60%のオーステナイトと40〜60%のフェライトとからなり、ここで工程g)が、前記管を950℃〜1060℃の範囲の温度に0.3〜10分間供することと、1〜6vol%の窒素ガスを含み、残部がH2又は不活性ガスであるガス混合物からなる雰囲気に供することとを含む方法。
【請求項2】
前記温度範囲が970℃〜1040℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度範囲が1000℃〜1040℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アニール工程が前記管を前記温度に0.5〜5分間供することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性ガスがアルゴン若しくはヘリウム又はそれらの混合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガス混合物中の窒素ガスの含有量が4vol%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス混合物中の窒素ガスの含有量が1.5vol%以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程eが、管を1100℃〜1200℃の範囲の温度で前記熱間押出しに供することと、断面積の92〜98%減少に供することとを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程fが、管を予熱なしに冷間変形に供することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程fが、管を50〜95%の範囲における断面積減少に供することを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
冷間変形がピルガリングである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ピルガリング工程において、管の壁厚減少と外径縮小の関係が、以下のQ値:
Q値=(Wallh-Wallt)*(Odh-Wallh)/Wallh((Odh-Wallh)-(Odt-Wallt))
[上式中、
Wallh=中空壁=ピルガリング前の壁厚
Wallt=管壁=ピルガリング後の壁厚
Odh=中空OD=ピルガリング前の管の直径
Odt=管OD=ピルガリング後の管の直径]
として表され、Qは0.5〜2.5の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Qが0.9〜1.1の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記二相ステンレス鋼が、重量%で、
C 0.01〜0.025;
Si 0.35〜0.6;
Mn 0.8〜1.5;
Cr 21〜23.5;
Ni 3.0〜5.5;
Mo 0.10〜1.0;
Cu 0.15〜0.70;
N 0.090〜0.25;
P 0.035以下;
S 0.003以下;
任意選択的に、Al、V、Nb、Ti、O、Zr、Hf、Ta、Mg、Ca、La、Ce、Y及びBからなる群から選択される1種以上の元素 1.0以下;並びに
残部のFe及び不可避的不純物
からなる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
管が内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射システムにおける燃料の導通のための管である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二相ステンレス鋼、特に内燃機関の燃焼室への燃料の噴射のための燃料噴射システムにおける使用に適した二相ステンレス鋼の管を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業用のガソリン直噴(GDI)システムの設計に関連して、内燃機関の燃焼室内に燃料を導通させるために使用されるレールに二相ステンレス鋼を使用することが提案されてきている。
【0003】
GDIレールとして用いられる管の要件は、いくつかあり、そのような用途に使用する二相ステンレス鋼を設計する際に考慮される必要がある。よって、適切に選択された管製造プロセスとの組み合わせで、所定のオーステナイト/フェライト比、要求される耐食性(一般的な腐食及び孔食に対する耐性)、実質的に中間相、特にシグマ相及び窒化クロムがない微細構造、所定の衝撃靱性、所定の引張強度、及び所定の疲労強度をもたらす二相ステンレス鋼の化学組成を選択することが重要である。さらに、この二相鋼(duplex steel)の機械的特性は、得られる管が、管壁の厚みが比較的小さい場合でも、想定される用途にとって十分に高い、所定の破裂圧力(すなわち破損までの内圧)を示すようなものでなければならず、それにより、小型軽量を要するGDIレールを可能にする。腐食疲労特性は、経時的な管の耐久性を保証するものでなければならない。
【0004】
したがって、二相ステンレス鋼の設計及び、GDIレールの要件を満たすと想定される二相ステンレス鋼の管を製造するプロセスは、複雑な作業である。選択した化学組成及び製造プロセスパラメータを互いに調整しなければならない。その結果、二相ステンレス鋼の名目化学組成が決定されると、それに関する製造プロセスパラメータも選択されなければならない。二相ステンレス鋼の化学組成はまた、費用効率の高い製造プロセスを促進するものでなければならない。換言すれば、化学組成は、過度に複雑でエネルギー又は時間を多く消費する製造工程を必要とするようなものであってはならない。
【0005】
本開示の態様は、二相ステンレス鋼の管を製造する方法であって、前記二相ステンレス鋼の管の製造によって、耐食性(一般的な腐食及び孔食に対する耐性)に対する高度な要件並びに所定の衝撃靱性、所定の引張強度及び所定の疲労強度が存在するような用途に適した特性を管が示すようになる方法を提供する。
【0006】
そのような用途の1つは、内燃機関の燃焼室内に噴射される燃料を導通させるためのGDIレールである。前記管の二相ステンレス鋼は、実質的に中間相、特にシグマ相及び窒化クロムがない微細構造を呈していなければならない。二相ステンレス鋼の化学組成は、コスト効率の高いプロセス工程の使用を促進する見地から、その管のコスト効率の高い製造を可能にするものでなければならない。
【発明の概要】
【0007】
上記の態様は、以下の組成:
C 最大0.06;
Cr 21〜24.5;
Ni 2.0〜5.5;
Si 最大1.5;
Mo 0.01〜1.0;
Cu 0.01〜1.0;
Mn 最大2.0;
N 0.05〜0.3;
P 最大0.04;
S 最大0.03;並びに
残部のFe及び不可避的不純物
を重量%(wt%)で含み、少なくとも23.0のPRE値を有する二相ステンレス鋼管の製造方法であって、
以下の工程:
a) 二相ステンレス鋼の溶融物を提供すること;
b) その溶融物から二相ステンレス鋼の本体を鋳造すること;
c) 本体の棒を形成すること;
d) 棒の管を、その中に穴を生成することにより、形成すること;
e) 熱間押出しによって、管の直径及び/又は壁厚を減少させること;
f) 冷間変形によって、管の直径及び/又は壁厚をさらに減少させること;及び
g) 冷間変形された管をアニールすること
を含み、
工程g)の後、得られた管の二相ステンレス鋼が40〜60%のオーステナイトと40〜60%のフェライトとからなり、ここで工程g)が、前記管を950℃〜1060℃の範囲の温度に0.3〜10分間供することと、1〜6vol%の窒素ガスを含み、H
2又は不活性ガスである残部とを含むガス混合物からなる雰囲気に供することとを含む方法
を提供する本開示によって、達成される。
【0008】
したがって、最適な材料特性に到達するための、アニーリング温度、アニール時間及びアニーリング雰囲気が判明した。アニーリング温度は950から1060℃の範囲でなければならず、雰囲気は1〜6vol%の窒素と、H
2又は不活性ガスから選択される残部とからなるガス混合物を含んでいる必要があり、アニーリングは0.3〜10分で実施されなければならないことが判明した。
【0009】
より低いアニーリング温度を用いると、中間相のような望ましくない析出物を形成するおそれがある。さらに、再結晶化が遅くなり、よって再結晶化を完了させるための浸漬時間を増やさなければならなくなり、生産性に悪影響を与える。
原則として、アニール工程の上限温度は、二相ステンレス鋼が溶融し始める温度に設定される。しかし、アニーリング温度をさらに制限するのには実用的な理由もある。指定された間隔よりも高い温度では、二相ステンレス鋼はより軟質になり、アニール工程中の損傷のリスクが高くなるだろう。また、高温では、結晶粒成長が増すことにより、良好なプロセス及び粒度調整を得ることがより困難になる。
【0010】
相分率のバランスを取るアニーリング温度を用いることも非常に重要で、温度が低すぎるとフェライトの含有量が低くなりすぎ、温度が高すぎるとフェライトの含有量が高くなりすぎる。また、アニール工程の温度はフェライト及びオーステナイト相の化学組成にも影響を与えるため、化学組成とアニーリング温度のバランスも一緒に取り、これら両相が良好な耐食性を有することを確かにする必要がある。
【0011】
管がアニーリング温度に供される時間は、0.3から10分、例えば0.3から5分、例えば0.3から2.5分である。この時間は、完全な再結晶を保証するのに十分な長さである必要がある。しかし、前記時間が長すぎると、得られる管は機械的特性に悪影響を与える粗構造を有することになる。管壁の厚さが厚いほど、アニール時間は長くなる。約1mmから約5mmまでの壁厚が考えられる。
【0012】
さらに、アニール工程の雰囲気も非常に重要である。窒素を含む雰囲気は、二相ステンレス鋼の表面の窒素含有量に影響を与える。したがって、雰囲気中の窒素の役割は、材料の表面の窒素含有量を維持することである。本方法のアニーリング温度では、窒素は材料の中へ、及び中から外へ拡散する。窒素含有量は、表面の窒素含有量が維持されるように選択されるべきである。アニーリングが行われる雰囲気中の窒素含有量が低すぎると、表面における窒素の正味の低下(net loss)を招き、先又は以下に記載の二相ステンレス鋼の耐食性及び機械的特性に悪影響を及ぼすことが分かった。アニーリングが行われる雰囲気中の窒素レベルが高すぎると、アニーリング中に材料表面の窒素の増加を招き、窒素は強いオーステナイト形成剤であるため、窒素含有量の変化が相バランスに影響し得る。よって、雰囲気中の窒素含有量が高いと、表面にオーステナイトが形成される。材料表面の窒素含有量はまた、窒化クロムなどの析出物形成感受性に対する構造安定性にも影響を与える。析出物の形成は、先又は以下に記載の二相ステンレス鋼の耐食性に悪影響を与える。
【0013】
孔食指数PREは、PRE=Cr(wt%)+3.3Mo(wt%)+16N(wt%)
と定義される。少なくとも約23.0のPREは、上記の組成ではクロム、モリブデン及び窒素の3つすべてが同時に最小限度にはなれないが、この規定のPRE値が得られるように、これらを組み合わせる必要があることを示している。別の実施態様によれば、PRE値は、少なくとも約24.0である。上記及び下記で使用される「約」という用語は、整数の+/−10%を示す。
【0014】
一実施態様によれば、アニール工程(工程g)の温度範囲は、970℃から1040℃である。さらに別の実施態様によれば、前記温度範囲は、1000℃から1040℃である。
【0015】
一実施態様によれば、前記アニール工程は、前記管を前記温度に0.5〜5分間、例えば0.5〜1.5分間供することを含む。
【0016】
一実施態様によれば、不活性ガスは、アルゴン若しくはヘリウム又はそれらの混合物である。
【0017】
一実施態様によれば、ガス混合物中の窒素ガスの含有量は、4vol%以下である。別の実施態様によれば、前記ガス混合物中の窒素ガスの含有量は、3vol%以下である。さらに一実施態様によれば、前記ガス混合物中の窒素ガスの含有量は、1.5vol%以上である。
【0018】
一実施態様によれば、前記熱間押出し工程(工程e)は、前記管を1100℃〜1200℃の範囲の温度で熱間押出しに供すること、及びその断面積の92〜98%の減少を含む。一実施態様によれば、前記熱間押出し工程(工程e)は、前記管を1100℃〜1170℃の範囲の温度で熱間押出しに供すること、及びその断面積の92〜98%の減少を含む。断面積の減少は、(管の)(押出前の断面積−押出後の断面積)/(押出前の断面積)と定義される。押出温度及び変形度は、二相ステンレス鋼の微細構造に有害な影響を及ぼさないように、又はその中に最終製品の機械的特性に有害な亀裂などが生じないように、二相ステンレス鋼の化学組成に関連して選択される。
【0019】
一実施態様によれば、冷間変形工程(工程f)は、管を予熱することなく、管を冷間変形に供することを含む。一実施態様によれば、前記冷間変形工程(工程f)は、前記管の断面積を50〜90%減少させることを含む。断面積の減少は、(管の)(ピルガリング前の断面積−ピルガリング後の断面積)/(ピルガリング前の断面積)と定義される。二相ステンレス鋼の化学組成は、材料中の望ましくない亀裂発生又は材料の微細構造に対する有害なマイナス効果なしに、該ステンレス鋼のかかる冷間変形を可能にするように選択される。
【0020】
上記又は下記の方法の一実施態様によれば、冷間変形は、ピルガリングか冷間引抜きのいずれかである。
【0021】
一実施態様によれば、冷間変形がピルガリングである場合、管の壁厚減少と外径縮小の関係は、以下のQ値として表される。
Q値=(Wallh-Wallt)*(Odh-Wallh)/Wallh((Odh-Wallh)-(Odt-Wallt))
上式中、
Wallh=中空壁=ピルガリング前の壁厚
Wallt=管壁=ピルガリング後の壁厚
Odh=中空OD=ピルガリング前の管の直径
Odt=管OD=ピルガリング後の管の直径
であり、Qは、0.5〜2.5の範囲である。面積の減少が大きすぎると、力が強すぎて材料が割れる可能性がある。
【0022】
さらに別の実施態様によれば、Qは、0.9〜1.1の範囲である。
【0023】
一実施態様によれば、前記二相ステンレス鋼は、以下の組成を有する(単位:重量%)。
C 0.01〜0.025;
Si 0.35〜0.6;
Mn 0.8〜1.5;
Cr 21〜23.5;
Ni 3.0〜5.5;
Mo 0.10〜1.0;
Cu 0.15〜0.70;
N 0.090〜0.25;
P 0.035以下;
P 0.003以下;
残部のFe及び不可避的不純物。
【0024】
この化学組成を有する二相ステンレス鋼は、上述のプロセスパラメータを用いて上述のプロセス工程に供するのに特に適している。換言すれば、先又は以下に記載のプロセス工程及びパラメータは、この化学組成を有する二相ステンレス鋼に対して特に好適であるように、また、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射システムにおける燃料の導通のためのGDIレールの用途での特に適した特性を有する管をもたらすように選択される。
【0025】
別の実施態様によれば、この管は、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射システムにおける燃料の導通のための管である。あるいは、本開示は、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射システムにおける燃料導体を製造する方法として定義することができ、前記方法は、二相ステンレス鋼の管を製造するための、先及び/又は以下に記載の方法を含む。そのような方法は、二相ステンレス鋼の管を前記内燃機関のさらなる構造部材にろう付けによって取り付けることを含む。さらなる構造部材は、金属、典型的にはオーステナイト又は二相鋼とすることができる。二相ステンレス鋼の化学組成の選択を含む管の製造方法はまた、有利なろう付け特性、特に液体金属浸透(liquid metal penetration)によって生じる液体金属誘起脆化(liquid metal induced embrittlement)(LMIE)に対する低い感受性を達成することを目的とする。ろう付けは場合によって、1100℃〜1140℃の範囲の温度の連続炉内での銅ろう付けを含む。
【0026】
一実施態様によれば、管は、前記ピルガリング工程後に15〜35mmの範囲の外径を有する。一実施態様によれば、管は、内燃機関の燃焼室内に噴射される燃料を導通させるための燃料噴射システム内でGDIレールとして使用される。
【0027】
別の実施態様によれば、管は、前記ピルガリング工程後に7〜10mmの外径を有する。一実施態様によれば、この管は、内燃機関の燃焼室内に噴射される燃料を導通させるための燃料噴射システム内で燃料ラインとして使用される。
【0028】
先及び以下に記載の二相ステンレス鋼の必須合金元素の機能及び効果を以下の段落に示す。各合金化元素の機能及び効果のリストは完全であると見なされるべきではなく、さらなる機能及び効果が存在し得る。しかし、該リストは、二相ステンレス鋼及び前記二相ステンレス鋼の管、特に内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射システム内での燃料の導通を目的とした二相ステンレス鋼管の製造方法のプロセスパラメータを設計する際に考慮すべき基礎知識の概観を提供する。
【0029】
炭素(C)は、オーステナイト安定化効果を与え、二相ステンレス鋼の変形時にオーステナイトからマルテンサイト組織への変態を妨げる。Cは、二相ステンレス鋼の強度にプラスの効果を与える。したがって、Cの含有量は、0.01wt%以上とする。しかしながら、高すぎるレベルでは、炭素は他の合金元素と共に望ましくない炭化物を形成する傾向がある。したがって、Cの含有量は、0.06wt%を超えてはならない。一実施態様によれば、Cの含有量は、0.025wt%を超えてはならない。
【0030】
クロム(Cr)は、二相ステンレス鋼の耐食性、特に孔食に強い影響を与える。本開示によれば、PRE値は23.0を上回る。さらに、Crは降伏強度を改善し、二相ステンレス鋼の変形時にオーステナイト組織からマルテンサイト組織への変態を妨げる。したがって、Crの含有量は、21.0wt%以上とする。高レベルでは、Crの含有量が増加すると、望ましくない安定したシグマ相のために温度が高くなり、シグマ相がより迅速に生成される。したがって、Crの含有量は、24.5wt%以下である。Crはまた、二相ステンレス鋼にフェライト安定化効果を与える。一実施態様によれば、Crの含有量は、23.5wt%以下である。
【0031】
ニッケル(Ni)は、一般的な腐食に対する耐性にプラスの効果を与える。また、Niは、強いオーステナイト安定化効果を与え、二相ステンレス鋼の変形時にオーステナイトからマルテンサイト組織への変態を妨げる。したがって、Niの含有量は、2.0wt%以上である。別の実施態様によれば、Niの含有量は、3.5wt%以上である。Niのオーステナイト安定化効果は、Cr含有量を調整することによって、ある程度平衡させることができる。しかし、Niの含有量は5.5wt%以上であってはならない。
【0032】
ケイ素(Si)は、鋼溶融物の脱酸に使用された可能性があるため、二相ステンレス鋼中に存在することが多い。Siは、フェライト安定剤であるが、二相ステンレス鋼の変形に関連するオーステナイトからマルテンサイトへの変態を妨げもする。Siはまた、環境によっては耐食性が向上することもある。しかし、Siは、窒素と炭素の溶解度を低下させ、高すぎるレベルで存在する場合には望ましくないケイ化物を形成する可能性がある。したがって、一実施態様によれば、二相ステンレス鋼中のSiの含有量は、1.5wt%以下である。一実施態様によれば、二相ステンレス鋼中のSiの含有量は、0.6wt%以下である。一実施態様によれば、Siの含有量は、約0wt%でもよい。一実施態様によれば、Siの含有量は、0.35wt%以上とする。
【0033】
モリブデン(Mo)は、二相ステンレス鋼の耐食性に強い影響を及ぼす。それは、そのPREに大きく影響する。Moを0.01wt%以上の量で添加する。Moはまた、二相ステンレス鋼にフェライト安定化効果を与える。一実施態様によれば、Moの含有量は、0.10wt%を超える。また、Moは、望ましくないシグマ相が安定である温度を上昇させ、その生成速度を促進する。Moは、比較的高価な合金元素でもある。したがって、Moの含有量は、1.0wt%以下とする。
【0034】
銅(Cu)は、耐食性にプラスの効果を与える。Cuはまた、二相ステンレス鋼.の変形時にオーステナイトからマルテンサイトへの変態を妨げる。ゆえに、二相ステンレス鋼に意図的にCuを添加することは、任意選択である。Cuは、鋼の製造のために使用されるスクラップの中にしばしば存在し、中程度のレベルなら鋼中にとどまることが許容される。一実施態様によれば、Cuの含有量は、0.01wt%以上とすることができる。別の実施態様によれば、Cuの含有量は、0.15wt%以上である。一実施態様によれば、Cuの含有量は、1.0wt%以下である。別の実施態様によれば、Cuの含有量は、0.7wt%以下である。
【0035】
マンガン(Mn)は、二相ステンレス鋼変形硬化効果を与え、二相ステンレス鋼の変形時にオーステナイトからマルテンサイト組織への変態を妨げる。Mnは、オーステナイト安定化効果ももたらす。一実施態様によれば、二相ステンレス鋼中のMnの含有量は、0.8wt%以上とする。しかし、Mnは、酸及び塩化物含有環境における耐食性に悪影響を及ぼし、中間相の生成傾向を増加させる。したがって、Mnの最大含有量は、2.0wt%を超えてはならない。一実施態様によれば、Mnの含有量は、1.0wt%以下である。
【0036】
窒素(N)は、二相ステンレス鋼の耐食性にプラスの効果を与え、変形硬化にも資する。窒素は、孔食指数PREにも強い効果をもたらす。窒素はまた、強いオーステナイト安定化効果をもたらし、二相ステンレス鋼の塑性変形時のオーステナイト組織からマルテンサイト組織への変態を妨げるため、0.05wt%以上の量で添加する。一実施態様によれば、Nの含有量は、0.090wt%.以上である。高すぎるレベルでは、Nは、二相ステンレス鋼中に窒化クロムを生成する傾向があり、これは延性及び耐食性にマイナス効果を与えるため、避けるべきである。したがって、Nの含有量は、0.3wt%以下とする。一実施態様によれば、Nの含有量は、0.25wt%以下である。
【0037】
リン(P)は、二相ステンレス鋼に含まれる不純物であり、熱間加工性にマイナスの影響を及ぼすことがよく知られている。したがって、Pの含有量は、0.03wt%以下とする。
【0038】
硫黄(S)は、オーステナイト系ステンレス鋼に含まれる不純物であり、熱間加工性を劣化させる。したがって、Sの許容可能な含有量は、0.03wt%以下、例えば0.005wt%以下である。
【0039】
先又は以下に記載の二相ステンレス鋼は、Al、V、Nb、Ti、O、Zr、Hf、Ta、Mg、Ca、La、Ce、Y及びBの群から選択される1種以上の元素を場合によって含んでいてもよい。これらの元素は、例えば脱酸性、耐食性、熱間延性又は機械加工性を高めるために、製造プロセス中に添加される。しかし、当該技術分野で知られているように、これらの元素の添加は、どの元素が存在するかによって制限されなければならない。したがって、これらの元素が添加される場合の合計含有量は、1.0wt%以下である。
【0040】
ここでいう「不純物」とは、二相ステンレス鋼を工業的に製造する際に、鉱石及びスクラップなどの原材料、その他製造プロセス上の種々の要因によって混入する物質を意味し、先又は以下に記載の二相ステンレス鋼に悪影響を及ぼさない範囲内で混入が許容される。
【実施例】
【0041】
以下の非限定的な実施例によって、本開示をさらに説明する。
【0042】
実施例
以下の組成を有する2つの溶融物を作製した(双方とも、Feは残部)。
その後、得られた溶融物を以下のように適宜処理加工した。
連続鋳造を用い、これらを本体へと鋳造した。
その後、鍛造によって丸棒を形成し、その中に穴を開けることによって管を形成した。その後、1120℃〜1150℃の範囲の温度で熱間押出しを用いることによって管の直径を小さくし、得られた管は、断面積が96〜98%減少していた。熱間押出しに続いてピックリングを行い、ガラスビーズを除去した。
ピルガリングによって直径をさらに小さくし、管の断面積を80〜86%の範囲で減少させた。
その後、窒素約2%と残部のアルゴンガスとを含むガス混合物からなる雰囲気中でピルガリングした管をアニールし、管を約1分間、約1030℃に温度に供した。
【0043】
ピルガリング工程では、Qは、約1.0である。
【0044】
アニール後、得られた管を矯正工程に供した。矯正は、曲げ加工と楕円加工を組み合わせたロール矯正機で行った。一連の傾斜のあるローラーに管を通して管を回転させ、管に一連の屈曲動作を加えた。矯正中、直管を得るための永続的な形状変化を獲得するために、降伏強度を超えた。
【0045】
得られた管は30mmの外径を有したので、管は、内燃機関の燃焼室内に噴射される燃料を導通させるための燃料噴射システム内でGDIレールとして使用することができる。
【0046】
溶融物1の1つの追加の管も、上に開示の方法に従って製造された。この管は、ピルガリング工程後に8mmからの外径を有した。この管もまた、内燃機関の燃焼室内に噴射される燃料を導通させるための燃料噴射システム内で燃料ラインとして使用された。