特許第6763882号(P6763882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763882磁気共鳴システムを用いた画像診断の造影剤濃度の時間プロファイルの事前決定を最適化する方法及び磁気共鳴システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763882
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】磁気共鳴システムを用いた画像診断の造影剤濃度の時間プロファイルの事前決定を最適化する方法及び磁気共鳴システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   A61B5/055 383
   A61B5/055 376
【請求項の数】18
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-559018(P2017-559018)
(86)(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公表番号】特表2018-514337(P2018-514337A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016060371
(87)【国際公開番号】WO2016180799
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】15167568.3
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514298139
【氏名又は名称】バイエル・ファルマ・アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ローラー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・ヨスト
(72)【発明者】
【氏名】フーベルトゥス・ピーチュ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス−ペーター・ライジンガー
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト・クラマー
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−223726(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0281829(US,A1)
【文献】 特開2014−176747(JP,A)
【文献】 G.R. Moran et al.,Myocardial Viability Imaging Using Gd-DTPA:Physiological Modeling of Infarcted Myocardium, and Impact on Injection Strategy and Imaging Time,Magnetic Resonance in Medicine,2002年11月,vol.48, no.5,p.791-800
【文献】 Costas Strouthos et al.,Indicator Dilution Models for the Quantification of Microvascular Blood Flow With Bolus Administration of Ultrasound Contrast Agents,IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control,2010年 6月,vol.57, no.6,p.1296-1310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 8/00−8/15
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心領域に位置する血管内への造影剤の最初の流入フェーズ中のみにおける前記関心領域の造影剤増強磁気共鳴(MR)画像法に関連して、患者の血管内のある位置で、造影剤濃度の時間プロファイルを予め決定する方法であって、前記方法が、
式ΔW=W2−W1によって、造影剤ボーラスプロファイルB(t)の予想される広がりを確立するステップであって、式中、W1が前記患者の所定の第1の血管位置での造影剤ボーラスプロファイルB(t)の第1の幅であり、W2が前記患者の前記関心領域に位置する所定の第2の血管位置での造影剤濃度プロファイルK(t)の第2の幅である、ステップを含み、
第3の血管位置での前記患者の少なくとも1つの血流特性に依存し、前記造影剤ボーラスプロファイルB(t)の前記予想される広がりと相関する、少なくとも1つの流量パラメータを決定することによって、前記予想される広がりが確立されるようにし、
前記W1がボーラス投与幅であり、
前記少なくとも1つの血流特性が、位相コントラスト磁気共鳴測定によって造影剤の存在なしに確立され、前記少なくとも1つの血流特性から、記憶された探索表を使用することによって、前記予想される広がりが推定される、方法。
【請求項2】
前記関心領域、およびその中の前記所定の第2の血管位置の少なくとも1つが、その中の血流に関して前記患者の心肺血管の下流に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関心領域、およびその中の前記所定の第2の血管位置の少なくとも1つが、前記患者の末梢領域、特にその肢部に位置する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予想された広がり(ΔW=W2−W1)が、コンピュータによるさらなる使用のために電子メモリ内に記憶される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の第1の血管位置と前記所定の第2の血管位置との間で、ボーラス伝達時間およびボーラス到達時間の少なくとも1つが追加的に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の第2の血管位置での前記造影剤濃度プロファイル(K(t))が、前記予想される広がり(ΔW=W2−W1)並びに、前記ボーラス伝達時間および前記ボーラス到達時間の少なくとも1つから決定される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
患者に対して実施される造影剤増強磁気共鳴(MR)画像法手順に関連して、患者(P)の関心領域内の血管内のある位置における、造影剤濃度の時間プロファイルを予め決定する方法であって、前記方法が、
第1の血管位置(P1)で第1の幅(W1)を含む少なくとも1つの造影剤ボーラスプロファイル(B(t))の、第2の血管位置(P2)で第2の幅(W2)を含む造影剤濃度プロファイル(K(t))に対する広がり(ΔW=W2−W1)の相関を確立するステップであって、前記相関が、その第3の血管位置(P3)で、患者(P)の少なくとも血流特性(f)に依存する流量パラメータ(P)を使用して確立され、かつ検査される患者集団の少なくとも1つの患者パラメータ(P)を考慮に入れて確立されるステップと、
患者(P)から、現在代表するその少なくとも1つの流量パラメータ(PPa)を決定するステップと、
第2の血管位置(P2)で達成される所望の造影剤濃度プロファイル(K(t))を選択し、前記相関を使用して、そのために必要な造影剤ボーラスプロファイル(B(t))を決定し、前記患者(P)の少なくとも1つの患者パラメータ(P)を考慮するステップと、
造影剤増強MR検査で使用するために、必要な造影剤ボーラスプロファイル(B(t))を注入装置から選択可能であるか、または注入装置に伝達可能であるかの一方であることを可能にするステップと
を含み、
前記W1がボーラス投与幅であり、
前記第3の血管位置(P3)での前記患者の前記血流特性(f)が、前記患者(P)の血液循環中に造影剤が存在することなく行われる位相コントラスト磁気共鳴検査によって決定され、
前記広がり(ΔW=W2−W1)と前記流量パラメータ(P)との間の前記相関が、記憶された探索表から収集される、方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの患者パラメータ(P)として、以下の変数、性別、体重、身長、年齢、心拍数、体格指数、外見のタイプ、および血管位置間の距離の少なくとも1つが使用される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記血流特性(f)として、以下の特性
(a)血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流速度(v)と、
(b)所与の心臓またはパルス位相での前記血管位置での前記血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流速度(v)と、
(c)所定の測定期間にわたる所与の心臓またはパルス位相での前記血管位置における前記血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流速度(v)と、
(d)前記血管位置での前記血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流量と、
(e)所与の心臓またはパルス位相における前記血管位置での前記血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流量と、
(f)所定の測定期間にわたる所与の心臓またはパルス位相における前記血管位置での前記血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流量と、
(g)前記血管位置での前記血管の断面にわたる速度プロファイルの幾何学的特性と、
(h)所定期間にわたる、または心拍当たりの正味排出量と
の少なくとも1つが使用される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記血流特性(f)自体が、前記流量パラメータ(P)として使用される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
第4の血管位置(P4)での同じタイプの前記血流特性(f)に関連する前記第3の血管位置(P3)での前記血流特性(f)との絶対的相違または相違率が、前記流量パラメータ(P)として使用される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の血管位置(P1)が、以下の位置または条件、
(a)前記第1の血管位置(P1)が、静脈血管内に位置すること、
(b)前記第1の血管位置(P1)が、腕静脈内に位置すること、
(c)前記第1の血管位置(P1)が、手の甲に位置すること、
(d)前記第1の血管位置(P1)が、中心静脈カテーテルに位置すること、
(e)前記第1の血管位置(P1)が、手の甲と腋窩静脈との間に位置すること、
(f)前記第1の血管位置(P1)が、足と大伏在静脈との間に位置すること、
(g)前記第1の血管位置(P1)が、中心静脈血管内に位置すること
の少なくとも1つを満たす、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の血管位置(P2)が、以下の位置または条件、
(a)前記第2の血管位置(P2)が、動脈血管内に位置すること、
(b)前記第2の血管位置(P2)が、脚の動脈に位置すること、
(c)前記第2の血管位置(P2)が、前記第3の血管位置(P3)の下流に位置すること、
(d)前記第2の血管位置(P2)が、大動脈の分岐部の下流に位置すること、
(e)前記第2の血管位置(P2)が、膝領域の末梢動脈に位置すること、
(f)前記第2の血管位置(P2)が、腕領域内に位置すること、
(g)前記第2の血管位置(P2)が、頸部領域内に位置すること
の少なくとも1つを満たす、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記第3の血管位置(P3)が、以下の位置または条件、
(a)前記第3の血管位置(P3)が、前記第2の血管位置(P2)であること、
(b)前記第3の血管位置(P3)が、胸郭大動脈に位置すること、
(c)前記第3の血管位置(P3)が、腹部大動脈に位置すること、
(d)前記第3の血管位置(P3)が、胸郭大動脈と(P2)との間に位置すること、
(e)前記第3の血管位置(P3)が、大動脈の分岐部の上流に位置すること、
(f)前記第3の血管位置(P3)が、分岐点と第2の血管位置(P2)との間に位置すること
の少なくとも1つを満たす、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記第4の血管位置(P4)が、以下の位置または条件、
(a)前記第4の血管位置(P4)が、前記第3の血管位置(P3)の上流に位置すること、
(b)前記第4の血管位置(P4)が、前記第3の血管位置(P3)と前記第2の血管位置(P2)との間の下流に位置すること、
(c)前記第4の血管位置(P4)が、第2の血管位置(P2)の下流に位置すること
の少なくとも1つを満たす、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記造影剤ボーラスプロファイルの幅(B(t))が1〜20秒の範囲内にある、請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記記憶された探索表が、基準測定値から予め決定され、前記少なくとも1つの患者パラメータ(P)として、以下のパラメータ、性別、体重、身長、年齢、心拍数、体格指数、外見のタイプ、および血管位置間の距離の少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項18】
コンピュータによって制御される造影剤注入器を含む磁気共鳴システムであって、その中にプログラムを記憶するためのメモリを含むコンピュータを備え、前記プログラムが、関心領域に位置する血管内への造影剤の最初の流入フェーズ中のみにおける前記関心領域の造影剤増強磁気共鳴画像法に関連して、患者の血管内のある位置で、造影剤濃度の時間プロファイルを予め決定する方法を含み、前記方法が、前記コンピュータによって実行される場合、以下のステップ、
式ΔW=W2−W1によって、造影剤ボーラスプロファイルB(t)の予想される広がりを確立するステップであって、式中、W1が前記患者の所定の第1の血管位置での造影剤ボーラスプロファイルB(t)の第1の幅であり、W2が前記患者の前記関心領域に位置する所定の第2の血管位置での造影剤濃度プロファイルK(t)の第2の幅である、ステップを含み、
第3の血管位置での前記患者の少なくとも1つの血流特性に依存し、かつ前記造影剤ボーラスプロファイルB(t)の前記予想される広がりと相関する少なくとも1つの流量パラメータを決定することによって、前記予想される広がりが確立されるようにし、
前記少なくとも1つの血流特性から、記憶された探索表を使用することによって、前記予想される広がりが推定される、磁気共鳴システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤の第1の流入フェーズ中のみにおける患者の造影剤増強磁気共鳴(MR)画像法の場合に、関心領域内の血管位置における造影剤濃度の時間プロファイルの事前決定を最適化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像(MRI)法は、診断画像法において周知である。造影剤は、磁気共鳴血管造影(MRA)において特に血管を表示するために、残りの組織に対して血管系を強調するために用いられることが多い。そのような方法は、造影増強MR血管造影(CE−MRA)と呼ばれる。MRIスキャンが末梢血管、例えば脚動脈からなされる場合、これは造影増強末梢MR血管造影(CE−pMRA)と呼ばれる。
【0003】
造影剤によって増強されていない他の画像技術と比較して、CE−MRAは、多くの臨床的事例において放射線を含まない非侵襲性血管診断のための好ましい技術を構成する。約20年前に初めて実施されたこの技術は、そのとき以来連続的に改善され、今日ではほとんどの国で高度な診断標準方法を構成する。
【0004】
ほとんどの事例で、臨床上の問題は、周囲の組織に対して可能な限り高いコントラストを有する動脈血管系の視覚化を必要とするが、静脈血管系の同時視覚化は、一般に干渉重畳であると考えられている。したがって、本明細書に記載の本発明による方法は、造影剤の第1の流入フェーズのみが画像のために使用される造影増強MR検査、すなわちいわゆる「第1のパス」MR検査にのみに関連し、技術的な手段および最適化によって静脈の重畳を回避するか、あるいはこれらをできる限り軽微に保つことが不可欠である。
【0005】
原則的に、この目的にとって重要なことは、造影剤によって利用可能な造影増強を使用し、かつ静脈血管系内に造影剤がその後復帰流動する前に留まることの両方を完全に可能にするために、第2にできる限りの精度まで、造影剤がデータ収集の開始と共に標的領域の血管系内に流入することの同期化である。したがって、被検領域の血管に約25〜50秒の典型的な範囲の造影剤が流入されたコンピュータ断層撮影法(CT:Computed Tomography)、またはCT血管造影における造影剤の投与とは対照的に、造影剤が、約3〜15秒の典型的な範囲内の実質的により短い時間にわたって投与される。
【0006】
さらに、造影剤増強蛍光透視X線またはCT検査と比較して、造影剤増強MR検査で指摘されるべきことは、より少量が考慮され、原則的に異なり、かつk空間取得およびフーリエ変換における特異性を含む獲得技術、測定中の造影剤濃度に関する異なる測定時間および要件、ならびに検査領域における局所造影剤濃度の関数としての非線形信号強度が存在することである。したがって、造影剤投与中のCT内の状態をMRIにおける状態への直接伝達することは、一般に不可能である。
【0007】
CE−MRA(ボーラスタイミング)内で投与された造影剤ボーラスを同期させるための複数の異なるプロセスが知られている。
【0008】
(i)注入された造影剤ボーラスが静脈内注入部位から体内の標的領域へ移動するのに必要な予想持続時間の予測決定のために試験ボーラスを使用すること(ボーラス移動時間=BTT、ボーラス到達時間=BAT、関心領域=ROI)。
【0009】
本明細書において、BTTは、実際のCE−MRAの前に試験ボーラスによって測定される。本明細書において、試験ボーラスは、典型的には、実際の造影剤の体積の約10%〜15%である。検査には通常、先行する手順が含まれており、これは、以前に慎重に設定された標的領域内の取得ウィンドウの時間分解2D測定から構成される。本明細書において、静脈内に注入された試験ボーラスによって影響を受ける信号強度(SI)は、通常は大動脈分岐部(例えば、腸骨動脈、膝窩動脈)より下の大きな動脈内で定量的に測定される。SIは、試験ボーラス注入の時間から典型的には1秒の時間分解能で時間の関数として測定される。原則として、注入の開始は開始時間としてカウントされる。一般に、実際の造影剤注入(例えば、1ml/s)のために提供されるのと同じ注入速度で試験ボーラス注入が行われ、続いて生理食塩水注入が行われる。選択された身体領域内の試験ボーラスの測定された流入曲線から、BTT、およびさらに標的領域におけるボーラスの広がりが、収集され得る。
【0010】
このような方法は、極めて堅牢であり、十分に確立されている。経験豊富なスタッフによる正しい投与の場合、ほとんどの場合、良好な結果につながる。しかし、この方法は、試験ボーラスの測定および評価に数分が失われるため、時間がかかる。
【0011】
全体投与の少なくとも小さいパーセント(1桁の数字)において、経験のあるユーザでも、正確な試験ボーラスの検出が非常に困難であり、または不可能であるという事実に関する問題を報告している。この理由は、一意的には分かっていない。可能性のある理由は、ボーラスの分散が強すぎ、特定の心血管の状態に起因して、菲薄化効果が強すぎることである。この方法のさらなる欠点には、追加の造影剤の使用、または以前に投与された試験ボーラスを補償するための実際の造影剤検査中の投与量が少なすぎることが含まれる。さらに、検査前に投与された試験ボーラスは、実際の検査中に、試験ボーラスからの造影剤が既に間質に位置しているので、望ましくないバックグラウンド効果につながる可能性がある。
【0012】
(ii)事前にBTTを測定することなく、ROIに造影剤流入を直接的に決定するための「蛍光透視法」方法。
【0013】
上記の(a)による試験ボーラスの動的測定と同様に、適切に選択された二次元画像表現を用いて、標的領域に到達する直前にリアルタイムで、実際の造影剤ボーラスの流入を観察することもできる。本明細書において重要なことは、流入が確実に、かつ時間通りに識別されるように、流量に関して実際のROIのすぐ上流の少なくとも1秒の領域内における時間分解能で、適切な領域が観察されることである。ボーラスの流入が検出されるとすぐに、時間分解された二次元取得から、高い空間分解能を有する所望の一般的な三次元取得まで非常に短い時間内に、測定プログラムは切り替えられなければならない。この目的のために、様々な、部分的に製造者に特有な自動化されたデータ取得方法が知られている。
【0014】
本明細書において有利なことに、試験ボーラス測定の必要がないので、時間および造影剤を失うことなく、実施することができる。しかしながら、不都合なことに、時間分解された2Dボーラス検出から、高い空間分解能を有するROIの3D取得まで切り替えるために数秒間の技術的に必要とされる期間をやはり確保するために、造影剤流入が、常に標的領域の真上で観察される必要があるので、原則的には、標的領域内の実際のBATの不正確さが依然として残っている。この残っている未知の期間は、経験値および経験則に置き換えられなければならないが、このことにより、部分的に非常に強い個々の生理学的および心血管病理のために、少なくとも個々の症例において結果が劣化する原因になる。
【0015】
(iii)ボーラス到達時間の事前の決定なしに、かつ造影剤ボーラスによる測定の特定の誘発なしに、「4D」データを取得すること。
【0016】
この方法では、取得された画像データの空間分解能と時間分解能との間の妥協は、例えば各場合で3〜5秒以内で、三次元標的領域の動的に繰り返される取得によって、造影剤流入が達成されることによって、原則として受け入れられる。しかしながら、これらの短い測定時間では、空間分解能は制限され、典型的には少なくとも2mm〜3mmである。例えば全空間方向で1mm、またはそれ以上の高い空間分解能による3D取得の場合、測定時間は通常約15秒である。動的に繰り返される測定の結果として、造影剤ボーラスは、通常は複数の3Dデータ記録においても確実に記録される。したがって、ボーラスの同期化は不必要である。この方法では、造影剤流入の追加的に得られた動的情報は有利であるが、しかし空間分解能が悪化するため不利である。
【0017】
近年の重要な技術的進歩にもかかわらず、標的領域におけるボーラス造影剤の理想的な時間同期化(ボーラスタイミング)および注入された造影剤ボーラスの理想的な使用は、多くの経験および技術的に複雑なMRI法の基本的な物理的理解が要求されるので、スタッフにとって依然として難題が残る。
【0018】
例えば、下肢の末梢動脈閉塞性疾患、心血管疾患または「喫煙者の脚」など、糖尿病によって引き起こされる血管疾患を同定するために、血管診断において重要である、特に末梢血管造影は、依然として、アーチファクトに冒された、非診断の検査結果の望ましくない高い比率につながる。
【0019】
全体として、患者の血管系の一点でボーラスを投与した後、時間と共に造影剤の濃度プロファイルを可能な限り正確に予測できる必要があるが、しかしながら、検査前に投与された試験ボーラスの使用をしないで済ますことが意図されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の目的は、患者の血液循環中に磁気共鳴システムを用いた画像診断中に、循環血液中の所定の位置で造影剤プロファイルを決定する方法を改善する目的で、ボーラスの広がりの予測を可能にすることであって、その方法では検査を受ける患者に試験ボーラスの投与なしで済ます。
【0021】
この目的は、独立した特許請求の範囲の特徴によって達成される。本発明の有利な発展は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、時間の点で比較的長いCT検査中の造影剤投与とは対照的に、流入持続時間に関してボーラスの小さな広がり(分散)がほとんど役割を果たさず、造影剤増強MR画像法、特に動脈血管の場合に、可能な限り正確に造影剤プロファイルを予測することができるようにするためには、短い造影剤投与の広がりの効果を特に数秒の範囲内で知り、考慮に入れることが必要であることを認識した。さらに、本発明者らは、広がりの変動と、選択された場所での血管系における血液の、または2つの選択された位置の間の速度差の、例えば流速または体積流量のような血流特性との間に、評価可能な相関があることを確認しており、この相関によって、造影剤ボーラスの広がりの発生を予測することが可能になることを確認した。可能な限り意味のある相関値を得るためには、相関値を確立する場合に可能な限り比較可能な患者構成がさらに使用されるならば、すなわち、検査される患者に適合する性別、身長、体重などのパラメータが使用されるならば、本明細書では特に有利である。
【0023】
位相コントラスト磁気共鳴測定によって、造影剤を投与することなく、血管系内の所定の位置で相関する流速または血流および他の血流特性を決定することが可能であるので、検査の直前に実施される、造影剤なしの血流特性の決定の助けを借りて、所定の血管位置で予想される造影剤ボーラスの広がりを推測することが可能になる。
【0024】
したがって、投与された造影剤ボーラスの広がりと、血管系内で測定された血流特性、またはそれから得られるパラメータとの相関を、比較可能な患者集団に対する前述の可能な造影剤増強検査によって、決定することが可能である。患者の造影剤増強検査の場合には、造影剤が存在しない状態で、対応する血流特性またはそれに依存するパラメータを決定することが最初に可能であり、これから、例えば探索表(LUT)を使用することによって、ボーラスの予想される広がりを推定することが可能である。ボーラスの移動時間もまた、存在する流速または体積流量に依存することが知られているので、そのようなLUTはボーラス移動時間(BTT)を決定するために生成されることができ、または、ここではBTTを予測するために、異なる既知のプロセスが使用され得る。両方の情報項目を使用して、次いで投与されたボーラスの実際の予想される開始および終了時間を予測し、これを造影剤増強MRI測定を用いて投与されたボーラスの時間同期化に使用することが可能である。
【0025】
このために必要とされるすべての情報は、造影剤の存在なしに位相コントラストMRI検査の助けを借りて、患者の現在の検査の中で確立され得る。背景雑音の増加、すなわち信号対雑音比の悪化、したがって画像結果の悪化を招く可能性のある他の以前に投与された造影剤が、測定中に患者の体内に存在しないので、さらに画質の向上につながる。このことは、特に、本発明による方法は、MR検査が「第1のパス」、すなわち観察されたROIの領域内で投与された造影剤の第1の流入フェーズで実施されるMR検査にのみ関連するので、したがって撮影の間「背景」内に造影剤がまったく存在しない。
【0026】
従来技術における現在の限界が、造影剤検査の直前に存在する患者の個々の心血管状態に関して、ユーザの不正確な、または不完全な知識に定常的に基づいているので、上述の方法は、下肢の末梢(CE−pMRA)の表示に特に適している。流速が画像造影剤検査の直前に決定される結果として、関心領域内の患者の現在のストレスレベルもやはり自動的に考慮されるので、患者の個々の心血管状態について以前から従来通りであった知識よりも、より正確で、かつより包括的な知識が、特に現在には存在する。
【0027】
造影剤注入の開始時間、またはボーラス伝達時間(BTT)後の秒単位のボーラス到達時間(BAT)のような、単一の個々のスカラーパラメータの正確な知識に基づく、以前に実施された方法は、必要であるが、しかしすべての検査事例において診断的に最適化されたCE−pMRAにとって十分条件ではない。予想される造影剤濃度プロファイルは、注入部位から標的領域(ROI)までの経路上の造影剤ボーラスの広がりのさらなる予測および知識に起因して、より正確に理解され、かつ決定されることがここで可能になる。
【0028】
したがって、本発明によれば、動脈血管系の異なる位置で血流測定を行うことが可能であり、これにより、仮定され、初めてボーラス分散と様々な血液流量パラメータとの間の証明された相関に基づいて、急性および患者特有の心血管状態に関する知識を得ることができ、所望の造影剤濃度プロファイルを達成するために必要な造影剤ボーラスおよびMR検査の実施に対するタイミングが、改善された信頼性によって正確に選択され得るようにする。
【0029】
したがって、本発明者らは、造影剤の第1の流入フェーズ(第1のパス)中のみにおける患者の造影剤増強MR画像法の場合に、関心領域内の血管位置での造影剤濃度の時間プロファイルの事前決定を最適化する方法を提案しており、その方法では、関心領域内に配置される所定の第2の血管位置で第2の幅を有する造影剤濃度プロファイルに関連して、患者の所定の第1の血管位置での第1の幅を有する造影剤ボーラスプロファイルの広がりが、第3の血管位置での少なくとも1つの血流特性に依存し、かつ広がりと相関する少なくとも1つの流量パラメータを決定することによって確立される。
【0030】
造影剤濃度プロファイルという用語は、血液中の造影剤の実際の濃度のプロファイルを意味するだけでなく、MR検査中に造影剤が引き起こすMR信号の増加のプロファイルもまた意味すると理解すべきであるという事実を参照されたい。さらに、本方法は、流れに対して心肺血管の下流に配置された、すなわち動脈に関して心臓の後ろに配置された血管位置に対して造影剤ボーラスプロファイルを決定するために特に提供され、特に、これは、患者の末梢領域、特に手足の1つに位置する周辺血管位置および/または関心領域を意味すると理解すべきである。
【0031】
したがって、所定の血管位置で経時的に造影剤濃度プロファイルを事前決定するために予想される確立された広がりは、追加の使用のために利用可能にすることができ、記憶は、好ましくはコンピュータによる追加の使用のために電子メモリ内で実行される。
【0032】
特に、少なくとも1つの血流特性は、位相コントラスト磁気共鳴測定によって造影剤の存在なしに確立され得る。そのような測定は、実際のMR検査の直前に実施されることが可能であり、有利なことに、このような測定が、検査される患者の現在の実際の構成および状態を考慮し、したがって理想的には実際のMR検査に調整される。
【0033】
原則的には、本発明によるボーラスの広がりの決定と、ボーラス伝達時間BTTまたはボーラス到達時間BATの決定とを組み合わせることが可能であり、これは、造影剤濃度プロファイルを全体的に予測するために先行技術において知られているように、試験ボーラスを任意でやはり使用する。しかしながら、第1の血管位置と第2の血管位置との間で追加的に決定されたボーラス伝達時間、またはボーラス到達時間もまた、造影剤なしで測定された血流特性との所定の相関に基づいて決定されることが特に有利である。
【0034】
患者の造影剤増強MR画像法の場合に、関心領域内の血管位置での造影剤濃度の時間プロファイルの事前決定を最適化する目的でさらに提案されるものは、以下の方法ステップ、
第2の血管位置で第2の幅を含む造影剤濃度プロファイルに対する、第1の血管位置に存在し、第1の幅を含む少なくとも1つの造影剤ボーラスプロファイルの広がりの相関を確立するステップであって、第3の血管位置で、少なくとも血流特性に依存する流量パラメータを使用して、検査される患者集団の少なくとも1つの患者パラメータを考慮に入れて確立するステップと、
患者の現在の少なくとも1つの流量パラメータを決定するステップと、
第2の血管位置で所望の造影剤濃度プロファイルを選択し、事前に確立された相関から、患者の少なくとも1つの患者パラメータを考慮して、そのために必要な造影剤ボーラスプロファイルを確立するステップと、
造影剤増強MR検査、特にMR血管造影で使用するために、造影剤注入装置で必要な造影剤ボーラスプロファイルを選択し、または必要な造影剤ボーラスプロファイルを造影剤注入装置へ伝達するステップと
を実行することである。
【0035】
本発明に従ってさらに提案されていることは、患者の少なくとも第3の血管位置での血流特性の決定が位相コントラスト磁気共鳴検査によって実施されることである。特に、血流特性を決定するための位相コントラスト磁気共鳴検査は、造影剤が患者の血液循環中に存在することなく、本明細書では実施され得る。
【0036】
その結果、可能であれば、確立された広がりが現在の患者にできるだけ特徴的であるように存在する予備検査のデータプールもやはり、検査される現在の患者のために用いられる。広がりに関する予備試験のデータが由来する患者集団は、現在検査されている患者とできる限り類似するべきである。これは、広がりに関連する予備試験のデータが由来する現在の患者および関連する患者集団が、できるだけ多くの患者パラメータに関して一致するという事実によって保証され得る。特に、循環および血管構造に対する解剖学的、生理学的および医学的関連性を有する患者パラメータはここで考慮されるべきである。特に、これによれば、以下の変数、性別、体重、身長、年齢、心拍数および/または体格指数(BMI)の少なくとも1つが、少なくとも1つの患者パラメータとして使用され得る。
【0037】
さらに、上述の患者パラメータに加えて、造影剤自体が、広がりを特徴付ける追加的なパラメータとして導入され得るという事実もまた参照されたい。したがって、提案されたLUTは、本発明の範囲から逸脱することなく、採用される造影剤を典型的に表すために、この造影剤パラメータによって拡張され得る。
【0038】
考慮される血流特性に関して、ボーラスの広がりと相関を有する非常に異なる流量特性が使用され得る。本明細書において留意すべきことは、よく知られているように、血管を通る血流は、血管横断面にわたって、パルス位相にわたって、および比較的長期間、一定である単一の直接測定可能な変数によって一般に定義することができないということである。したがって、血管位置での血管を通る血流は、cm/s単位の速度またはml/s単位の血流によってばかりでなく、時間および空間において変化するプロファイルによってもまた特徴付けられる。それにもかかわらず、または正確にはこのために、ボーラスの広がりと良好な相関を有する、例えば、速度および流量の最小値、最大値または平均値など、血流の特徴的な特性を適切な測定によって表すことが可能である。
【0039】
したがって、本発明者らは、以下の特性の少なくとも1つが、少なくとも1つの血流特性として使用されることを提案しており、以下の特性は、
血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置での最大、最小または平均血流速度と、
所与の心臓またはパルス位相での血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置での最大、最小または平均血流速度と、
所定の測定期間にわたる、所与の心臓またはパルス位相での血管位置における血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置での最大、最小または平均血流速度と、
血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置での最大、最小または平均血流量と、
所与の心臓またはパルス位相での血管位置における血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置での最大、最小または平均血流量と、
所定の測定期間にわたる、所与の心臓またはパルス位相における血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置での最大、最小または平均血流量と、
血管位置での血管の断面にわたる速度プロファイルの幾何学的特性と、
所定期間または心拍当たりの正味排出量と
であり、リスト自体の中の個々の項目それ自体は、再び、それ自体で使用可能な複数の特性を含んでいる。
【0040】
本発明による方法の特に簡単な実施形態の変形形態では、血流特性それ自体が、流量パラメータとして使用され得る。
【0041】
原則的には、1つの血管位置での血流特性の測定を実施することも可能であるばかりでなく、異なる血管位置でこれらの特性を確立することも可能であり、それによって血管地点間の経路の特性について、従って血管特性についてもやはり特に強い記述を得ることができ、その記述は、血管経路にわたるボーラスの広がりと特に互いに関連付けられる。
【0042】
したがって、少なくとも1つの第4の血管位置で血流特性を測定し、好ましくは、流量パラメータとして少なくとも1つの第4の血管位置での同じ血流特性に対する第3の血管位置での血流特性の絶対的相違、または相違率を使用することが、同様に提案される。
【0043】
実施される測定のための特に有利な血管位置に関して、本発明者らは以下の提案を行う。
【0044】
したがって、第1の血管位置が、以下の位置または条件、
第1の血管位置が、静脈血管内に位置すること、
第1の血管位置が、腕静脈内に位置すること、
第1の血管位置が手の甲に位置すること、
第1の血管位置が、中心静脈カテーテルに位置すること、
第1の血管位置が、手の甲と腋窩静脈との間に位置すること、
第1の血管位置が、足と大伏在静脈との間に位置すること、
第1の血管位置が、中心静脈血管内に位置すること
の少なくとも1つを満たすことができる。
【0045】
第2の血管位置が、以下の位置または条件、
第2の血管位置が、動脈血管内に位置すること、
第2の血管位置が、脚動脈内に位置すること、
第2の血管位置が、第3の血管位置の下流に位置すること、
第2の血管位置が、大動脈の分岐部の下流に位置すること、
第2の血管位置が、好適には、膝領域の末梢動脈に位置すること、
第2の血管位置が、腕領域内に位置すること、
第2の血管位置が、頸部領域内に位置すること
の少なくとも1つを満たすべきである。
【0046】
第3の血管位置に関して、第3の血管位置が、以下の位置または条件、
第3の血管位置が、第2の血管位置であること、
第3の血管位置が、胸郭大動脈内に位置すること、
第3の血管位置が、腹部大動脈内に位置すること、
第3の血管位置が、胸郭大動脈の間に位置すること、
第3の血管位置が、分岐部の上流に位置すること、
第3の血管位置が、分岐点と第2の血管位置との間に位置すること
の少なくとも1つを満たすことが提案される。
【0047】
第4の血管位置における測定が使用される場合、本発明者らは、第4の血管位置が以下の位置または条件、
第4の血管位置が、第3の血管位置の上流に位置すること、
第4の血管位置が、第3の血管位置と第2の血管位置との間の下流に位置すること、
第4の血管位置が、第2の血管位置の下流に位置すること
の少なくとも1つを満たすべきであることを提案する。
【0048】
本発明による方法は、造影剤増強MR検査のみに関連し、CT検査には関係しない。上記に提示したように、これから生じる特異性は、ボーラス投与の期間が特に短くなければならないということである。したがって、造影剤ボーラスプロファイルの幅に関して、本発明者らは、前者が1〜20秒、好ましくは3〜15秒の範囲にあることを提案する。当然のことながら、それぞれ現在の広がりを考慮すると、血管系における造影剤濃度プロファイルの幅は、同様の時間枠内にある。造影剤ボーラスプロファイルの幅は、その急勾配の縁部に起因して、一意的に決定されるが、造影剤濃度プロファイルの幅の定義にある程度の曖昧さが存在する。したがって、当業者は、一般に、造影剤濃度の半値全幅、または造影剤によって生成された信号の半値全幅であるように幅を設定し、あるいは幅を定義するために、所定の信号値の到達、またはそれによって生成された信号レベルの到達を使用する。しかし、患者のMR検査において、予備検査のデータと現在の測定データとの間に比較可能な記述を得るためには、各場合に、幅の同様の定義が使用されるべきである。
【0049】
原則的には、予想される広がりと、それぞれ考慮される流量パラメータとの間に予め確立された相関は、本発明の範囲内で、例えば数学的に記載された関数関係を使用することによっても所望されるように表されることができる。しかし、「探索」表(LUT)の適用は、特に有利であり、簡単であって、流量パラメータと広がりの相関が、好ましくは電子的に記憶された表から集められるようにする。本明細書において、基準測定値からあらかじめ決定された表は、前述の患者パラメータの少なくとも1つもまた含むことができる。別法として、流量パラメータと広がりの相関は、基準測定値からあらかじめ決定された関数によって計算することができ、基準測定値からあらかじめ決定された関数もまた、少なくとも1つの患者パラメータを変数として含むことができる。
【0050】
上述の方法に加えて、本発明の範囲は、動作中に実行されるプログラムのためのメモリを少なくとも含むコンピュータも含み、本明細書において開示された特徴の組み合わせに従って本発明による方法を実行するプログラムが、そこに記憶される。
【0051】
さらに、本発明の範囲は、コンピュータによって制御される造影剤注入器を含む造影剤増強MR画像法またはMR血管描写を生成するための磁気共鳴システムも含み、そのコンピュータは、動作中に実行されるプログラムのためのメモリを備え、本発明による方法を実行するプログラムがその中に記憶される。
【0052】
関連する態様では、本発明は、関心領域内に位置する血管の中への造影剤の最初の流入フェーズ中のみにおける関心領域の造影剤増強磁気共鳴(MR)画像法に関連して、患者の血管内のある位置での造影剤濃度の時間プロファイルを予め決定する方法を提供する。この方法は、式ΔW=W2−W1に従って造影剤ボーラスプロファイルB(t)の予想される広がりを確立するステップを含み、式中、W1は、患者の所定の第1の血管位置での造影剤ボーラスプロファイルB(t)の第1の幅であり、W2は、患者の関心領域に位置する所定の第2の血管位置での造影剤濃度プロファイルK(t)の第2の幅である。予想される広がりは、第3の血管位置での患者の少なくとも1つの血流特性に依存し、かつ造影剤ボーラスプロファイルB(t)の予想される広がりと相関する少なくとも1つの流量パラメータを決定することによって確立される。
【0053】
上述の方法の特定の限定しない実施形態では、関心領域および/またはその中の所定の第2の血管位置は、その中の血液の流れに関して患者の心肺血管の下流に位置する。関心領域および/または所定の第2の血管位置は、手足の1つなどの患者の末梢領域に位置する。予想される広がりは、コンピュータによってさらに使用されるために電子メモリに記憶され得る。少なくとも1つの血流特性は、位相コントラスト磁気共鳴測定によって造影剤の存在なしに確立され得る。この方法はまた、所定の第1の血管位置と所定の第2の血管位置との間のボーラス伝達時間および/またはボーラス到達時間を決定するためにも使用され得る。第2の血管位置での造影剤濃度プロファイル(K(t))は、予想される広がり、およびボーラス伝達時間またはボーラス到達時間のいずれか、あるいはその両方から決定され得る。
【0054】
別の態様では、本発明は、患者に対して実行される造影剤増強磁気共鳴(MR)画像法手法に関連して、患者(P)の関心領域における血管内の位置での造影剤濃度の時間プロファイルを予め決定する方法を提供する。この方法は、コントラストに関して、第2の血管位置(P2)で第2の幅(W2)を有する造影剤濃度プロファイル(K(t))に対する、第1の血管位置(P1)で第1の幅(W1)を有する少なくとも1つの造影剤ボーラスプロファイル(B(t))の広がり(ΔW=W2−W1)の相関を確立するステップを含み、その相関が、第3の血管位置(P3)での患者(P)の少なくとも血流特性(f)に依存する流量パラメータ(P)を使用し、検査される患者集団の少なくとも1つの患者パラメータ(P)を考慮に入れて確立される。本方法はさらに、患者(P)から現在その代表である少なくとも1つの流量パラメータ(PPa)を決定するステップと、第2の血管位置(P2)で達成される所望の造影剤濃度プロファイル(K(t))を選択するステップと、相関を用いるステップと、そのために必要な造影剤ボーラスプロファイル(B(t))を決定するステップと、患者(P)の少なくとも1つの患者パラメータ(P)を考慮するステップと、MR血管造影などの造影剤増強MR検査で使用するために、必要な造影剤ボーラスプロフィール(B(t))を注入装置から選択可能であるか、または注入装置に伝達可能であるかの一方であることを可能にするステップとを含む。
【0055】
前述の方法の特定の限定しない実施形態では、第3の血管位置(P3)での患者の血流特性(f)は、位相コントラスト磁気共鳴検査によって決定される。造影剤が患者(P)の血液循環内に存在することなく、血流特性(f)を決定するための位相コントラスト磁気共鳴検査が実施され得る。少なくとも1つの患者パラメータ(P)として、以下の変数、性別、体重、身長、年齢、心拍数、体格指数、外見のタイプ、および血管位置間の距離の少なくとも1つが使用され得る。
【0056】
上述の方法の特定の限定しない実施形態では、以下の特性、
(a)血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流速度(v)と、
(b)所与の心臓またはパルス位相での血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流速度(v)と、
(c)所定の測定期間にわたる所与の心臓またはパルス位相での血管位置における血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流速度(v)と、
(d)血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流量と、
(e)所与の心臓またはパルス位相における血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流量と、
(f)所定の測定期間にわたる所与の心臓またはパルス位相における血管位置での血管の断面内の少なくとも1つの所定の位置における最大、最小または平均血流量と、
(g)血管位置での血管の断面にわたる速度プロファイルの幾何学的特性と、
(h)所定期間または心拍当たりの正味排出量と
の少なくとも1つが血流特性(f)として使用されうる。
【0057】
上述の方法の特定の限定しない実施形態では、血流特性(f)自体が、流量パラメータ(P)として使用され得る。流量パラメータ(P)はまた、第4の血管位置(P4)での同じタイプの血流特性(f)に対する、第3の血管位置(P3)での血流特性(f)の絶対的相違または相違率であることができる。
【0058】
上記の方法の特定の限定しない実施形態では、第1の血管位置(P1)は、以下の位置または条件、
(a)第1の血管位置(P1)が、静脈血管内に位置すること、(b)第1の血管位置(P1)が、腕静脈内に位置すること、
(c)第1の血管位置(P1)が手の甲に位置すること、(d)第1の血管位置(P1)が、中心静脈カテーテルに位置すること、
(e)第1の血管位置(P1)が、手の甲と腋窩静脈との間に位置すること、
(f)第1の血管位置(P1)が、足と大伏在静脈との間に位置すること、(g)第1の血管位置(P1)が、中心静脈血管内に位置すること
の少なくとも1つを満たす。第2の血管位置(P2)が、以下の位置または条件、
(a)第2の血管位置(P2)が、動脈血管内に位置すること、(b)第2の血管位置(P2)が、脚動脈に位置すること、
(c)第2の血管位置(P2)が、第3の血管位置(P3)の下流に位置すること、
(d)第2の血管位置(P2)が、大動脈の分岐部の下流に位置すること、(e)第2の血管位置(P2)が、膝領域の末梢動脈内に位置すること、
(f)第2の血管位置(P2)が、腕領域内に位置すること、(g)第2の血管位置(P2)が、頸部領域内に位置すること
の少なくとも1つを満たす。第3の血管位置(P3)が、以下の位置または条件、
(a)第3の血管位置(P3)が、第2の血管位置(P2)であること、
(b)第3の血管位置(P3)が、胸郭大動脈内に位置すること、
(c)第3の血管位置(P3)が、腹部大動脈内に位置すること、
(d)第3の血管位置(P3)が、胸郭大動脈と(P2)との間に位置すること、
(e)第3の血管位置(P3)が、大動脈の分岐部の上流に位置すること、
(f)第3の容器位置(P3)が、分岐点と第2の血管位置(P2)との間に位置すること
の少なくとも1つを満たす。第4の血管位置(P4)が、以下の位置または条件、
(a)第4の血管位置(P4)が、第3の血管位置(P3)の上流に位置すること、(b)第4の血管位置(P4)が、第3の血管位置(P3)と第2の血管位置(P2)との間の下流に位置すること、(c)第4の血管位置(P4)が、第2の血管位置(P2)の下流に位置すること
の少なくとも1つを満たす。
【0059】
上記の方法の特定の限定しない実施形態では、造影剤ボーラスプロファイル(B(t))の幅は、好ましくは3〜15秒の範囲にあるが、1〜20秒の範囲外ではない。広がり(ΔW=W2−W1)と流量パラメータ(P)との間の相関は、記憶された探索表から収集することができる。記憶された探索表は、基準測定値から予め決定され、少なくとも1つの患者パラメータ(P)として、以下のパラメータ、性別、体重、身長、年齢、心拍数、体格指数、外見のタイプ、および血管間の距離の少なくとも1つを含む。別法として、広がり(ΔW=W2−W1)と流量パラメータ(P)との間の相関が、基準測定値から予め定められた関数(f(P、P))によって計算され得る。関数(f(P、P))が、少なくとも1つの患者パラメータ(P)として、以下のパラメータ、性別、体重、身長、年齢、心拍数、体格指数、外見のタイプ、および血管位置間の距離の少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0060】
別の態様では、本発明は、コンピュータによって制御される造影剤注入器を含む磁気共鳴システムを提供する。コンピュータは、その中にプログラムを記憶するためのメモリを備えていることが好ましい。このプログラムは、関心領域内に位置する血管の中への造影剤の最初の流入フェーズ中のみにおける関心領域の造影剤増強磁気共鳴画像法に関連して、患者の血管内のある位置での造影剤濃度の時間プロファイルを予め決定する方法を少なくとも一部分において含む。コンピュータによって実行される場合、この方法は、式ΔW=W2−W1に従って造影剤ボーラスプロファイルB(t)の予想される広がりを少なくとも確立することができ、式中、W1は、患者の所定の第1の血管位置での造影剤ボーラスプロファイルB(t)の第1の幅であり、W2は、患者の関心領域に位置する所定の第2の血管位置での造影剤濃度プロファイルK(t)の第2の幅である。予想される広がりは、第3の血管位置での患者の少なくとも1つの血流特性に依存し、かつ造影剤ボーラスプロファイルB(t)の予想される広がりと相関する少なくとも1つの流量パラメータを決定することによって確立され得る。
【0061】
さらに、ボーラスの広がりを決定する代わりに、またはそれに加えて、ボーラス伝達時間と本明細書に記載の流量パラメータの少なくとも1つとの間の相関が、経験的に、場合によっては患者のパラメータに依存する方法で、同じ方法で確立され、対応して記憶されて、直前の造影剤なしの位相コントラストMR検査によって、患者の現在の検査について、BTTについても同様に、少なくとも1つの必要な流量パラメータが決定され、予想されるボーラス伝達時間が、確立された相関に基づいて予測される。
【0062】
続いて、図面に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明の理解に必要な特徴のみが示されている。詳細には:
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明によるMRIシステムを示す図である。
図2】患者の循環を示す図である。
図3】第2の血管位置における造影剤濃度プロファイルの幅に対する第1の血管位置における造影剤ボーラスプロファイルの幅の変化を示す図である。
図4】ADで33ml/sの流れの場合、実験動物(E639、ミニチュアピッグ)の場合の、大静脈および下行大動脈(AD)血管位置での造影剤増強MR検査における測定された信号強度の図である。
図5】ADで23ml/sの流れの場合、実験動物(E639、ミニチュアピッグ)の場合の、大静脈および下行大動脈(AD)血管位置における造影剤増強MR検査における測定された信号強度の図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、磁気共鳴画像法システム(MRIシステム)1を概略的に示す。このMRIシステム1では、強い主磁場を発生させるための磁気コイル2が、ハウジング6内に配置されている。磁場の結果として、患者7の体内の水素核は、そのスピンに応じて、磁力線に平行または逆平行に位置合わせされる。交番する電磁場により共鳴周波数で原子核を励起することによって、原子核が共鳴する。励起周波数を切った後、原子核は励起されていない状態に戻り、電磁放射エネルギーの形でエネルギーを放出し、電磁放射エネルギーは、可能であれば、患者7上で観察されるROI近傍に配置される受信コイル3の助けを借りて測定される。定義された磁場勾配を有する追加的な磁場は、追加の磁気コイル4によって生成され、その結果、核によって放出された信号は、それによって放出された信号の位置が定義可能である空間情報を含む。制御およびコンピュータユニット8は、このシステム1を制御し、測定信号を評価し、そのメモリの中に、制御および画像計算に加えて、本発明による方法も実行するプログラム9を有する。
【0065】
血管の改善された描写のために、造影剤によって患者の血液循環を短時間強化することが時には必要であり、その目的のために、造影剤注入器5を使用するのが通常であり、電子制御下で、コンピュータユニット8によって、または異なる別個のコンピュータユニットによって、測定のために投与される造影剤の体積流量を生成する。
【0066】
このようなMRIシステムの助けにより、複数の受信アンテナを使用する場合であっても、造影剤の投与なしに、例えば流速、速度プロファイル、または体積流量などの血流情報を得ることが可能である。この点で、米国特許出願公開第2014/0285194号A1明細書、およびこれに対応する独国特許出願公開第102013204994号A1明細書を単に例として参照されたい。
【0067】
本発明の改善された理解のために、図2は、患者の血液循環の概略図を示す。この閉鎖循環は、静脈循環(破線)と動脈循環(実線)とに分けられ、実質的に心臓のポンプ作用によって作動する。肺循環においては、残りの循環とは対照的に、動脈血は低い酸素含有量を有し、静脈血は高い酸素含有量を有する。このような自然なプロファイルと、例えば腕または手の静脈でのような静脈領域内での比較的容易に生成可能かつ利用可能なアクセスとに従って、造影剤は、自動的に制御される造影剤注入器の助けを借りて、通常そのようなアクセスを介して投与される。したがって、そこに配置されたボーラスは、最初は右心室を通過し(詳細は図示せず)、肺の血管によって心臓の左心室に導かれ(同様に図示せず)、そこから、MR画像法で描写されることを意図され、かつ本発明に関して対象である体の領域に到達し、特に、そのボーラスは末梢血管領域にも到達する。
【0068】
図2の概略図では、重要な血管位置P1〜P4および画像化される関心領域ROIは、例示的および典型的な位置で示される。上述のように、この投与は、通常、例えば腕または手の静脈の末梢血管でプロットされた血管位置P1に相当する静脈循環領域内で発生する。画像法によって検査される関心領域ROIは、本明細書においてプロットされているように、例えば脚の動脈の領域に位置することができ、そのとき血管位置P2もまた、脚の動脈の領域に位置することができる。次いで、血流特性が決定されるさらなる測定位置は、一般に、心臓の左心房とROIとの間の動脈血管系内に位置する。しかしながら、流れ方向に見て、ROIまたはP2の下流に配置される血管位置で測定点の位置決めもまた可能であるという事実を参照されたい。
【0069】
第1の血管位置P1に投与される造影剤ボーラスは、通常、図3の上部にプロットされたボーラスプロファイルB(t)を有する。そこで、ボーラスBの体積流量は、経過時間tにわたってプロットされる。このようなボーラスプロファイルは、ここに描かれているように、長方形のプロファイルを想定できるが、造影剤注入器の適切な設定によって任意の関数B(t)を再現することもできる。そのような体積流量Bは、描写される血管内の検査位置で所望の造影剤濃度を達成するために、使用される造影剤(例えば、Gadovist(登録商標)またはMagnevist(登録商標))および特定の患者特性に依存して選択される。図2に示すように、静脈血管領域に投与した後、そのようなボーラスは、少なくとも心臓を2回通過し、その間に血管の有意な分岐を有する肺を通過する。特に、その結果として、付加的な乱ればかりでなく、血管横断面にわたる、非層流および速度差、ならびに静脈系内の菲薄化効果に起因して、これは投与される造影剤ボーラスのより強い、またはより弱い分散を生成し、広がった造影剤濃度プロファイルK(t)をもたらす。図3の下部には、血管位置P2でのそのような造影剤濃度プロファイルK(t)が例示的に示されている。投与されたボーラスの幅W1が、位置P1とP2との間の移動した血管経路にわたって実質的に広がったことを識別することは容易であり、本明細書において半値全幅を考慮して、幅W2が存在する。次いで、広がりΔWは、ΔW=W2−W1として計算される。
【0070】
本発明によれば、そのような広がりの大きさは、造影剤なしで、造影剤の運搬経路上で、測定可能な血流特性と、またはそこから導出可能な流量パラメータとの独特な相関を直接有するという仮定がなされており、投与されるボーラスの流れに依存した広がりは、この流れパラメータを確立することによって、特に造影剤を含まない血流特性の測定値を用いることによって、決定され、したがって予測され得るようにする。次に、ボーラス伝達時間BTTおよび/またはボーラス到達時間BATを同時に確立する場合、血管で、特に末梢に位置する血管での造影剤濃度の時間プロファイルを決定することが可能であり、したがって、投与されたボーラスの知識によって、これを予測することが可能である。したがって、これにより当然ながら、所望の造影剤濃度プロファイルが得られるようにし、そのため、ROIにおけるMR測定の場合にも所望の信号プロファイルをもたらすボーラス投与の必要なプロファイルの遡及的決定がさらに可能になる。
【0071】
図4および図5から明らかなように、そのような相関は、造影剤なしで測定された体積流量の形態の簡単な流量パラメータと、動物試験の中でも、この場合はミニチュアピッグを使用して生成された広がりとの間で確認することができる。
【0072】
図4は、W1=1sのボーラス投与幅に相当する、菱形形状の測定点および下行大動脈(AD)でのMR測定の信号プロファイルを用いて、部位(耳介静脈)に投与直後に測定された、MR測定の測定された信号プロファイルを示す。示された実施例では33ml/sであった、下行大動脈での平均体積流量v(AD)が、血流特性として決定されたが、これは直接に流量パラメータとしても使用される。信号プロファイルの半値全幅に対する測定幅は、4.5秒である。したがって、1秒のボーラス幅W1に対する広がりは、ΔW=W2−W1=4.5s−1.0s=3.5sであった。
【0073】
比較目的のために、図5は、同様のボーラス投与幅W1=1sを用いて、菱形形状の測定点および下行大動脈(AD)でのMR測定の信号プロファイルを使用して、部位(耳介静脈)に投与直後に測定された、MR測定の測定された信号プロファイルを示す。しかしながら、この測定では、下行大動脈内の平均体積流量v(AD)は23ml/sであった。信号プロファイルの半値全幅に対する測定幅は、7.5秒である。したがって、1秒のボーラス幅W1に関する広がりは、ΔW=W2−W1=7.5s−1.0s=6.5sであった。
【0074】
したがって、さらなる実験結果によっても確認されたように、下行大動脈での測定血流体積v(AD)と広がりΔWの大きさとの間に相関関係があることは明らかである。
【0075】
本発明によれば、そのような関係は、コンピュータメモリに記憶され、かつボーラスの広がりを予め決定するのに役立ち得る探索表(LUT)の形態で提供され得る。
【0076】
広がりを事前決定するためのそのような探索表(LUT)の実施例は、したがって以下の通りである。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示されるLUT1は、ボーラスの広がりΔW=W2−W1を、ボーラス投与幅W1および流量パラメータPの関数として説明する。本明細書においては、2つの入力パラメータW1およびPをボーラス投与幅W1、およびこの例では単一の測定パラメータPの関数として使用して、それと相関する経験的に予め定められたボーラスの広がりΔWが利用可能となる。流量パラメータPは、例えば、血管位置P3=下行大動脈v(AD)で測定された血液体積流量を表すことができる。上付きの添え字は、行ヘッダまたは列ヘッダ内のパラメータの異なる値の範囲を示す。中間値は、必要に応じて、補間法によって得ることができる。
【0079】
相補的または独立した方法で、好ましくは造影剤なしで測定された流量パラメータとBTTまたはBATとの間の相関を決定し、表すことが同じ方法でやはり可能である。したがって、適切なLUTは、以下のように設計され得る。
【0080】
【表2】
【0081】
表2は、PG=v(AP)/v(AB)を用いて、ROIから選択された典型的な血管位置の距離d(ROI)と、測定された特定の血流特性v(AP)およびv(AB)から確立された流量パラメータPとの関数としてボーラス移動時間(
【0082】
【数1】
【0083】
)のための値を読み取ることができる例示的なLUT2を示しており、本明細書において原則として、BTTは、下行大動脈での流速v(AD)、移動距離d(ROI)および流量パラメータ依存補正係数
【0084】
【数2】
【0085】
から得られ、流速は、
【0086】
【数3】
【0087】
の式から得られる。各場合における上付きの添え字は、行ヘッダまたは列ヘッダ内の各パラメータの異なる値の範囲を示す。中間値は、必要に応じて、補間法によって得ることができる。
【0088】
このLUT2では、特定の患者パラメータおよび現在の流量パラメータの両方が、ボーラス移動時間(BTT)を決定するための入力パラメータとして使用され、患者パラメータは、距離d(ROI)の形態で特定され、本明細書においては、流量パラメータrflが測定される血管位置P3と、標的領域ROIの領域内の血管位置P2との間の差をcmで構成する。さらに、異なる血管位置での現在の血流速度流量パラメータv(AD)、v(AB)およびv(AP)が入力パラメータとして表される。例示的な方法で膝窩大動脈の領域における血流速度を表す血流速度v(AP)と、例示的な方法で分岐部領域における血流速度を表す血流速度v(AB)とが、この場合、商および補正係数としてLUTに含まれ、したがって、平均流速、したがってBTTを決定する患者特有の係数をマッピングすることができる。血流速度v(AD)は、下行大動脈の領域内で測定された血流速度を再び例示的方法で表している。
【0089】
したがって、異なる血流および患者パラメータの造影剤なしの決定による造影剤ボーラス投与のタイミングは、それに応じて適合されたLUT1およびLUT2の相互作用によって決定され得る。
【0090】
本発明は、好ましい例示的な実施形態によって詳細に図示され、説明されたが、本発明は、開示された実施例によって限定されるものではなく、それら実施例から、当業者は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、他の変形形態を得ることができる。特に、本発明は、本明細書で特定された特徴の組み合わせに限定されず、開示された特徴から当業者によって明らかに再現可能な他の組み合わせおよび部分的な組み合わせを形成することも可能である。さらに、本発明は、特許請求の範囲の中で使用される請求項のカテゴリーに限定されるものではなく、すべてのさらなる請求項のカテゴリーと組み合わせて、開示された特徴を含む。
【0091】
したがって、全体として、本発明は、造影剤の第1の流入フェーズ中のみにおける患者(P)の造影剤増強されたMR画像の場合、関心領域(ROI)内の血管位置における造影剤濃度の時間プロファイルの事前決定を最適化する目的で、2つの血管位置間の造影剤ボーラスの広がり、および/またはボーラス伝達時間と、少なくとも1つの流動特性の関数を構成する少なくとも1つの流動パラメータとの相関が、実行されるべき患者のMR検査の前に、患者集団の血液循環において予め決定されて、これらの流量パラメータが、広がりおよび/またはボーラス伝達時間に関して事前に知られている相関によって、造影剤なしの位相コントラストMR検査によって決定され、予想される造影剤濃度プロファイルが、検査領域内の血管位置で決定される。
【符号の説明】
【0092】
1 磁気共鳴画像法システム
2 磁気コイル
3 受信コイル
4 磁気コイル
5 造影剤注入器
6 ハウジング
7 患者
8 コンピュータユニット
9 コンピュータプログラム
AA 上行大動脈
AD 下行大動脈
AP 膝窩大動脈
B ボーラス
BAT ボーラス到達時間
BMI 体格指数
Bt 経時的なボーラスプロファイル
BTT ボーラス伝達時間(ボーラス移動時間)
(ROI) 関心領域の距離
E639 実験動物
血流特性
f(P,P) 関数
K 造影剤濃度
K(t) 経時的な造影剤の濃度プロファイル
LUT 探索表
MR 造影剤増強磁気共鳴
MRI 磁気共鳴画像法
P 患者
P1 第1の血管位置
P2 第2の血管位置
P3 第3の血管位置
P4 第4の血管位置
流量パラメータ
患者パラメータ
Pa 流量パラメータ
ROI 関心領域
SI 信号強度
t 時間
VC 大静脈
(AD) 下行大動脈内の血流速度
平均血流速度
(AB) 血流速度パラメータ
(AD) 血流速度パラメータ
(AP) 血流特性
W1 第1のボーラス幅=ボーラス持続時間
W2 第2の幅=造影剤濃度プロファイルの持続時間
X 造影剤増強透視
Δcm 距離
ΔW 広がり
図1
図2
図3
図4
図5