(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763883
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】細胞培養のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-559606(P2017-559606)
(86)(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公表番号】特表2018-515111(P2018-515111A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2016060937
(87)【国際公開番号】WO2016188781
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年3月19日
(31)【優先権主張番号】1509193.7
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ランドグレン,ビョルン・ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】マセド,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】マグナソン,アン−クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ,レナ・マリア
【審査官】
坂井田 京
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/110512(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/139234(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101298285(CN,A)
【文献】
特開平06−269274(JP,A)
【文献】
特表平05−500898(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3117061(JP,U)
【文献】
特開平02−312583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/00
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養のための乾燥材料(1)をバイオリアクタに無菌的に移送するための方法であって、乾燥材料(1)を収容する第1の容器(2)から前記乾燥材料(1)を、前記第1の容器(2)をバイオリアクタに接続する移送管(3)を介して細胞培養のために前記バイオリアクタに移送することを含み、前記移送は、前記第1の容器(2)に挿入された浸漬管(5)を含む通気管(4)を介して前記第1の容器(2)に供給された加圧空気またはガスで達成され、前記乾燥材料が、細胞培養のためのマイクロキャリアである、方法。
【請求項2】
第2の容器(2A)に設けられた乾燥材料(1A)の供給源から乾燥材料(1)を、前記第2の容器(2A)に挿入された浸漬管(5A)を含む通気管(4A)を介して前記第2の容器(2A)に供給された加圧空気またはガスで前記容器(2,2A)間の移送管(3A)を介して前記第1の容器(2)に移送し、次いで加圧空気またはガスで前記乾燥材料(1)を前記第1の容器(2)から前記バイオリアクタに移送することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乾燥材料(1)が前記第2の容器(2A)内の前記乾燥材料(1A)の供給源から前記第1の容器(2)に移送され、次いで前記バイオリアクタに移送される、
という手順が繰り返される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の容器(2)に移送された前記乾燥材料(1)が、前記バイオリアクタに移送される前に前記第1の容器(2)内で計量される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
加圧空気またはガスによる前記乾燥材料(1,1A)の移送の前に前記容器(2,2A)を上下逆さにすることを含み、前記乾燥材料(1,1A)が、前記容器(2,2A)の底部にあり、前記浸漬管(5,5A)が、前記乾燥材料(1,1A)のレベルより上に到達する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
乾燥材料(1,1A)を保持する1つまたは複数の剛性容器(2,2A)と、乾燥材料(1,1A)を前記容器(2)からバイオリアクタに、または第2の容器(2A)から第1の容器(2)に移送するための1つまたは複数の可撓性移送管(3,3A)と、前記容器(2,2A)に挿入され、加圧空気またはガスの供給源に接続された浸漬管(5,5A)を含む1つまたは複数の可撓性通気管(4,4A)とを含み、前記乾燥材料が、細胞培養のためのマイクロキャリアである、移送システム。
【請求項7】
前記容器(2,2A)が、ボトル形状であり、前記管(3,3A,4,4A)が前記容器(2,2A)に取り付けられる上側ポートキャップ(7)が設けられる、請求項6に記載の移送システム。
【請求項8】
前記バイオリアクタに接続される前記容器(2)が、スケール(8)上に置かれる、請求項6または7に記載の移送システム。
【請求項9】
前記管(3,3A,4,4A)には、バルブおよびコネクタが設けられる、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の移送システム。
【請求項10】
ガンマ線によって滅菌される、請求項6乃至9のいずれか1項に記載の移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵容器からバイオリアクタへの無菌的材料移送のための方法およびシステムに関する。より具体的には、本発明は、細胞培養のためのマイクロキャリアのような乾燥材料をバイオリアクタに無菌的に移送するための方法およびシステムに関し、乾燥材料を収容する第1の容器から前記材料を、第1の容器をバイオリアクタに接続する移送管を介して細胞培養のためにバイオリアクタに移送することを含み、移送は、容器に供給された加圧空気またはガスで達成される。
【背景技術】
【0002】
細胞培養技術は、動物細胞の構造、機能および分化の研究ならびに遺伝子治療のためのウイルスワクチン、酵素、ホルモン、抗体、インターフェロン、核酸およびウイルスベクターのような多くの重要な生物学的材料の生産にとって不可欠となっている。さらに、細胞培養および細胞増殖は、細胞治療において非常に重要なステップである。多くの細胞培養法では、細胞培養物を小さな細胞集団から大きな細胞集団に増殖させることが望ましい。
【0003】
細胞培養のためには、大部分の哺乳動物細胞および特定の他の細胞が成長することができるように足場依存性であるので、細胞接着表面上で細胞を成長させることが慣習的である。組織培養処理ボトルまたは他のバイアル中の従来の細胞培養は、利用可能な表面積が小さいために、足場依存性細胞の収量が限られる。
【0004】
マイクロキャリア培養は、新たな可能性をもたらし、足場依存性細胞の実用的な高収量培養を初めて可能にする。マイクロキャリア培養では、細胞は、緩やかに撹拌することによって培養培地中に通常浮遊している小さな球の表面上に単層として成長する。単純な懸濁培養系でマイクロキャリアを使用することにより、ミリリットル当たり数百万個の細胞の収量を達成することが可能であり、システムは容易に拡張可能である。
【0005】
マイクロキャリア法では、細胞培養は、通常、スピナーフラスコ中のビーズまたはカラムに充填されたビーズで行われる(灌流培養)。最近では、可撓性バッグなどの使い捨てバイオリアクタでマイクロキャリアを用いた細胞培養が行われている。マイクロキャリアは、たとえば、デキストラン、セルロースまたはポリエチレンベースの製品である。
【0006】
細胞培養を行うためには、乾燥培養培地およびマイクロキャリアなどの滅菌細胞培養材料を有することが必要である。マイクロキャリアを滅菌する従来の方法は、バイオリアクタの外側または蒸気滅菌によるバイオリアクタの内側のオートクレーブによるものである。一回使用バイオリアクタの導入により、バイオリアクタ内の蒸気を介して滅菌を行うことはもはや不可能である。したがって、無菌状態を損なうことなく、無菌的にバイオリアクタ内に導入することができる予め滅菌したマイクロキャリアを提供することが必要である。
【0007】
米国特許出願公開第2014/0196791号明細書には、マイクロキャリア容器と、バイオリアクタベッセルとを含む一回使用バイオリアクタが記載されており、マイクロキャリアは、重力または流体での洗浄によってベッセルに移送される。重力による移送は完全ではなく、すなわち、マイクロキャリアの一部が容器の壁に付着し、バイオリアクタベッセルに移送されない。これを改善するために、たとえば細胞培養培地による容器の洗浄を提案する。
【0008】
当技術分野で知られている多くのバイオリアクタにもかかわらず、マイクロキャリアのような乾燥材料のバイオリアクタへの無菌的移送のための改良された方法およびシステムの必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2014/110512A1号パンフレット
【発明の概要】
【0010】
本発明は、乾燥材料、好ましくはマイクロキャリアのバイオリアクタへの無菌的移送のための方法およびシステムを提供する。システムは、あらゆるタイプまたはサイズのバイオリアクタに有用であり、大規模な一回使用バイオリアクタに特に有用である。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、細胞培養のための乾燥材料をバイオリアクタに無菌的に移送するための方法に関し、乾燥材料を収容する第1の容器から前記材料を、第1の容器をバイオリアクタに接続する移送管を介して細胞培養のためにバイオリアクタに移送することを含み、移送は、容器に挿入された浸漬管を含む通気管を介して容器に供給された加圧空気またはガスで達成される。浸漬管は、空気またはガス流の導入中に乾燥材料の回りを旋回することを防止する。
【0012】
一実施形態では、方法は、第2の容器に設けられた乾燥材料の供給源から乾燥材料の部分を容器間の移送管を介して第1の容器に移送することによって、複数の容器から乾燥材料を投与することを含む。移送は、第2の容器に挿入された浸漬管を含む通気管を介して第2の容器に供給された加圧空気またはガスで行われる。その後、第1の容器内にある乾燥材料の前記部分は、加圧空気またはガスでバイオリアクタに移送される。
【0013】
乾燥材料のいくつかの部分、好ましくは少なくとも2つの部分は、第2の容器から第1の容器に別々に移送することができ、次いで各部分は、別々にバイオリアクタに移送される。このようにして、より多くの乾燥材料が細胞培養のために必要とされるときに、新たな容器をバイオリアクタに接続する必要はない。これにより、細胞培養の汚染のリスクをさらに最小限に抑えることができる。
【0014】
さらなる実施形態では、第1の容器に移送された乾燥材料の前記部分は、バイオリアクタに移送される前に第1の容器内で計量される。これは、正確な量の乾燥材料がバイオリアクタに移送されるようにするためである。各部分は、たとえば、バイオリアクタおよび容器のサイズに応じて、非常に柔軟な投与範囲を与える1g〜10kgの乾燥材料を含むことができる。
【0015】
容器は、加圧空気またはガスによる乾燥材料の移送の前に上下逆さにすることが好ましく、乾燥材料は、容器の底部にあり、浸漬管は、乾燥材料のレベルより上に到達する。
【0016】
乾燥材料は、たとえば、マイクロキャリア、乾燥または粉末細胞培養培地などの乾燥培地、または任意の他の粉末もしくは塩であり得る。
【0017】
第2の態様では、本発明は、乾燥材料を保持する1つまたは複数の剛性容器と、マイクロキャリアなどの任意の乾燥材料を容器からバイオリアクタに、または第2の容器から第1の容器に移送するための1つまたは複数の可撓性移送管と、容器に挿入され、加圧空気またはガスの供給源に接続された浸漬管を含む1つまたは複数の可撓性通気管とを含む移送システムに関する。好ましくは、管には、管をバイオリアクタおよび/またはさらなる容器に接続するためのバルブおよびコネクタが設けられる。好ましくは、通気管には、滅菌通気フィルタが設けられる。あるいは、滅菌ガスまたは空気が使用される。好ましくは、容器はボトル形状であり、管が容器に取り付けられる上側ポートキャップが設けられる。容器またはボトルおよびその乾燥材料の内容物は、バイオリアクタのサイズおよび細胞培養の必要性に応じて、任意の適切なサイズを有することができる。容器のサイズの例は、100mL〜5Lであり、バイオリアクタのサイズの例は、1L〜10000Lである。1つ以上の容器が移送システムで使用される場合、それらは同じまたは異なるサイズであり得る。
【0018】
好ましくは、移送システムは、任意のタイプの滅菌によって、最も好ましくはガンマ線によって滅菌される。
【0019】
一実施形態では、バイオリアクタに接続される容器は、以下の詳細なセクションでより詳細に説明するバイオリアクタに移送された乾燥材料の量を計量するためのスケール上に置くことができる。
【0020】
第3の態様では、本発明は、細胞培養プロセスにおける上記移送システムの使用に関し、マイクロキャリアは、プロセスにおける任意の所望の時点でバイオリアクタに供給される。マイクロキャリアは、プロセスの開始時およびプロセスの終了前の任意の時点および任意の数で供給される。一実施形態では、移送システムは、好ましくは、プロセス全体で、特にプロセス中にさらに多くのマイクロキャリアを添加する必要がある場合に、バイオリアクタに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】使用準備ができている、すなわち、第1の容器からバイオリアクタに乾燥材料を移送するために容器が上下逆さになっている位置にある本発明の移送システムの概略図である。
【
図2】乾燥材料の全量の部分を第1の容器から第2の容器に移送するための位置にある本発明の移送システムの概略図であり、第2の容器は、スケール上に置かれ、移送は、乾燥材料の所望の重量が第2の容器で得られるまで継続される。
【
図3】
図2の第2の容器が、上下逆さになっており、移送システムが、加圧空気またはガスを介して第2の容器からバイオリアクタに乾燥材料を移送するための使用準備ができている、移送システムの位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の移送システムおよびその使用方法を、添付の図面に関連してより詳細に説明する。方法および移送システムは、任意のタイプの乾燥材料を移送するのに適しているが、以下の詳細な説明は、乾燥材料としての細胞培養のためのマイクロキャリアに関連して説明される。
【0023】
本発明は、マイクロキャリアのような乾燥材料のバイオリアクタへの無菌的移送のための方法および移送システムに関する。移送システムは、バイオリアクタとは別々のユニットであり、あらゆるタイプのバイオリアクタと共に任意の規模で使用することができる。本発明で使用されるマイクロキャリアは、マイクロキャリアビーズを無菌的にバイオリアクタに直接移送することを可能にする特別に設計された容器中で滅菌状態に保たれる。これは、マイクロキャリアビーズを膨潤させ、緩衝液で洗浄してオートクレーブしてから細胞培養ベッセル(バイオリアクタ)に添加し、次いで細胞培養培地で洗浄する、製薬産業で実施される冗長で時間のかかる予備滅菌を回避するので、現在の手順を大きく改善するであろう。
【0024】
図1を参照すると、移送システムは、容器2内に収容された乾燥マイクロキャリア1を含み、これは、移送管3および通気管4が容器2に接続されるポートキャップ7を有するボトルのような形状であることが好ましい。
図1において、容器またはボトル2は、上下逆さになっている位置に示されており、マイクロキャリア1は、キャップ7に最も近い容器の底部に位置し、浸漬管5は、マイクロキャリアのレベルより上に到達し、
図2に示すように、マイクロキャリアを移送ライン3を介してバイオリアクタ(図示せず)に、またはさらなる容器2Aから容器2に効果的に移送する容器のこの空間への加圧空気またはガスの流入を可能にする。
【0025】
図2は、好ましい実施形態を示し、乾燥マイクロキャリア1Aは、上下逆さに配置された第2の容器2Aから、加圧空気またはガスの供給源を通気フィルタ6Aに接続することによって第1の容器2に移送される。この実施形態では、第2の容器2Aからのすべてのマイクロキャリアが容器2に同時に移送されるわけではない。反対に、マイクロキャリア1Aの別々の部分または用量は、細胞培養手順の必要性に応じて容器2を介してバイオリアクタに移送される。正確な量のマイクロキャリアが容器2Aから容器2に、次にバイオリアクタに確実に移送され、容器2は、スケール8上に置かれる。これにより、バイオリアクタ内の細胞培養物へのマイクロキャリアの新たな添加が必要となるたびに、新たな容器2をバイオリアクタに接続する必要性が回避される。
【0026】
本発明で使用されるマイクロキャリア1,1Aは、好ましくはCytodex(商標)(GE Healthcare Bio−Sciences AB)マイクロキャリアであるが、任意のタイプのマイクロキャリアを使用してもよい。
【0027】
図3は、容器2Aから容器2へのマイクロキャリアの所望の部分の移送が完了した後の、容器2,2Aの配置を示す。この位置では、容器2Aはその直立位置に戻され、容器2は上下逆さにされる。加圧空気またはガスが容器2に供給されると、容器2内の計量されたマイクロキャリアが容器2からバイオリアクタ(図示せず)に移送される。この手順、すなわち、
図2による容器2Aから容器2へのマイクロキャリアの充填、および次の
図3によるバイオリアクタへの移送は、任意の回数繰り返すことができる。
【0028】
本発明の方法では、滅菌容器2,2Aは、マイクロキャリアビーズをバイオリアクタに移送するための接続を提供するために、無菌コネクタまたは溶接接続を用いて管を介してバイオリアクタに容易に接続される。容器を上下逆さにした後、専用のポートを介して容器に導入された滅菌空気または窒素のわずかな過圧を使用することにより、移送が達成される。
【0029】
滅菌マイクロキャリアビーズと直接接触する移送システムに使用されるすべての材料は、USPクラスVI要件(プラスチックの生物学的試験)に適合する。マイクロキャリアビーズを含む本発明の移送システムは、好ましくは、少なくとも40KGyの最大ガンマ線照射線量に耐える。
【0030】
本発明で使用されるマイクロキャリアは、好ましくは、PET容器などの剛性プラスチック容器内に供給される。各容器は、好ましくは、適切な3ポートキャップ7と、TPE(熱可塑性エラストマ)管などの適切な長さの管3,3Aが取り付けられた2つの移送ポートとを備える。一実施形態では、1つの移送管は、残りの端部にReadyMate(商標)無菌コネクタ(ReadyMate無菌接続用)を備えてもよく、第2の移送管は、次の溶接接続のために二重シールされる。別の実施形態では、両方の移送ラインが二重シールされる。第3のポートは、マイクロキャリアのバイオリアクタへの移送用にわずかに圧縮された空気または窒素(最大0.5バール)を導入するために、0.2μmの通気フィルタのような通気フィルタが取り付けられたケイ素通気管などの通気管4,4Aを備える。
【0031】
2つの移送ポート3,3Aは、前回の操作後に容器が完全に空にならない場合に、他のバイオリアクタへの同時の複数の無菌接続、またはその後の無菌接続を、たとえば溶接によって可能にする。3ポートキャップはまた、外部通気ポートに直接接続された内部スピゴットを備える。このスピゴットには、ポリマー浸漬管が取り付けられ、(容器が上下逆さになると)わずかに圧縮された空気または窒素をマイクロキャリアのレベルにわたって運び、それによって材料を大きな乱気流なしに容器から押し出す(
図2〜3)。
【0032】
本発明の容器システムは、ReadyMateなどの任意の接続を介して、または無菌接続のみを溶接することによって、バイオリアクタに容易に接続することができる。容器を上下逆さにした後、接続を開き、わずかな空気または不活性ガスの過圧を導入することによってマイクロキャリアを移送する(
図2)。
【0033】
必要であれば、容器およびバイオリアクタが直径が一致する同じ種類の管を有する場合、無菌接続も溶接によって達成することができる。
【0034】
1つの容器内のマイクロキャリアの内容物が十分でない場合、以下に記載された手順に従って、余分な材料を無菌的にバイオリアクタに移送することが可能である(
図2〜3参照):
−空の第1の容器2を天秤に置く。
【0035】
−空の容器2(
図2)で利用可能な残りの管3にマイクロキャリアの供給で満たされた第2の容器2Aの管3Aを、たとえば溶接によって接続する。
【0036】
−第2の容器2Aを上下逆さにして、新たな容器またはパックの滅菌通気管を介して導入された空気または窒素のわずかな過圧を使用して容器2Aから容器2に所望の量のマイクロキャリアを移送/計量する。
【0037】
−必要な量の材料が計量された後、新たな容器2Aとバイオリアクタ(接続された容器2)との間の接続が閉じられ、そして後者が上下逆さにされる。次いで、新たに計量した材料を、バイオリアクタに直接接続された容器の通気管を介して導入したわずかな空気または不活性ガスの過圧を使用して、バイオリアクタに移送する(
図3)。
【0038】
マイクロキャリア容器をバイオリアクタに接続するための選択された方法が溶接である場合、バイオリアクタには、マイクロキャリア容器と同じ直径の同じ種類の管が設けられなければならない。マイクロキャリア容器とバイオリアクタとの間の接続がReadyMate(商標)無菌コネクタを介して達成される場合、バイオリアクタ管でReadyMate(商標)コネクタが利用可能でなければならない。
【0039】
移送および通気管の両方は、ピンチバルブなどのバルブを備え、移送操作の下での選択的な開/閉を可能にする。バルブは、好ましくはガンマ線照射に耐える材料で作られる。
【0040】
本発明の容器システムは、バイオバーデンが制御された環境において、マイクロキャリア、好ましくはCytodex(商標)マイクロキャリアで充填される。ポートキャップを充填して閉じた後、容器システムは二重プラスチックフィルム保護(二次/三次包装)で封入/シールされ、段ボール箱に詰め込まれる。その内容物が入った段ボール箱はガンマ滅菌され、保存期間は30℃で少なくとも2年間である。
【符号の説明】
【0041】
1 乾燥マイクロキャリア
1A 乾燥マイクロキャリア
2 第1の容器、滅菌容器、ボトル
2A 第2の容器
3 移送管、移送ライン、移送ポート
3A 管、移送ポート
4 通気管
4A 通気管
5 浸漬管
5A 浸漬管
6A 通気フィルタ
7 3ポートキャップ
8 スケール