【実施例1】
【0015】
実施例1に係るアキュムレータにつき、
図1から
図6を参照して説明する。以下、
図1紙面上下をアキュムレータの上下として説明する。
【0016】
アキュムレータ1は、ベローズとして金属ベローズ6を用いる金属ベローズ型アキュムレータであって、ハウジング2、金属ベローズ6、ベローズキャップ10、ステー30から主に構成されている。また、ハウジング2内は、常時、金属ベローズ6及びベローズキャップ10により高圧ガス(例えば窒素ガス)が封入されるガス室Gと液体(例えばブレーキフルード)が供給される液室Mとに仕切られている。
液室Mは、図示しない圧力配管内の液圧の低下時に、ベローズキャップ10及びステー30により密閉液室Mcと開放液室Moとに仕切られる。
【0017】
以下、詳説する。ハウジング2は、図示しない圧力配管に接続されるオイルポート5が設けられた蓋体4が、有底円筒状のシェル3の開口部に固定(溶接)されて構成されている。ハウジング2は本構造に限定されるものではなく、例えば蓋体4とシェル3は一体であっても良く、シェル3の底部はシェル3と別体のエンドカバーであっても良く、何れにしてもシェル3の底部又はこれに相当する部品に、ガス室Gにガスを注入するためのガス注入口3aが設けられ、ガス注入後、ガスプラグ3bで閉じられている。
【0018】
金属ベローズ6は、その固定端6aが蓋体4の内面に固定(溶接)されるとともにその遊動端6bに円盤状のベローズキャップ10が固定(溶接)されており、当該アキュムレータ1は金属ベローズ6の外周側にガス室Gが設けられた外ガスタイプのアキュムレータとされている。ベローズキャップ10の外周部にはシェル3の内面に対し金属ベローズ6及びベローズキャップ10が接触しないようガイド7が取り付けられている。なお、このガイド7はシール作用を奏するものではなく、ガイド7の上下方向にガスを連通可能となっている。
【0019】
ベローズキャップ10は、金属により円盤状に形成され、その外周縁12が上述した金属ベローズ6の遊動端6bに密封固定され、金属ベローズ6とベローズキャップ10によりガス室Gと液室Mを密封した状態で仕切っている。シールホルダ13は、板金により形成され、筒状を呈する取付部13aの一端(下端)に径方向内方へ向けて内向きフランジ状の係合部13bが一体成形されており、取付部13aがベローズキャップ10の下面に取り付けられるとともに、内向きの係合部13bが弾発的にシール20をベローズキャップ10側に押圧して保持している。
【0020】
シール20は、金属、硬質樹脂等よりなる円盤状の剛性プレート21の外表面の全面に渡り、ゴム22(弾性体)が加硫接着により被覆されている。このシール20は、その外周縁部が、シールホルダ13の係合部13bにより保持されている。ゴム22の下側(オイルポート5側)には、下方に突出する環状突部23(弾性当接部)が形成されており、この環状突部23はステー30の着座面35に接離自在とされている。環状突部23は、径方向において最も外側に位置する外縁の平坦部29から連なる急な斜辺部24、径方向における最も内側に位置する中央の平坦な中央部28から連なるなだらかな斜辺部26、両斜辺部24、26を連結する平坦部25を有する断面形状とされている。なお、斜辺部24、26は、径方向内側がなだらか、径方向外側が急である例について説明しているがこのような角度とすることは必須ではない。斜辺部26には径方向に放射状に延び、等配に配置される8本の溝27が形成されている。溝27は、斜辺部26を横切り、その一部は中央部28まで延びている。なお、中央部28の下面及び平坦部29の下面は、同平面に属しているが、異なる平面に属するものでもよく、要するに両下面が環状突部23よりも低い高さに位置(
図5における上方の位置)すればよい。なお、溝の本数、幅、深さは適宜変更可能である。また、弾性体の素材はゴムに限られず弾性を有するもの例えば樹脂であってもよい。
【0021】
ステー30は、金属、硬質樹脂等よりなる略キャップ状の構造体であり、筒状を呈する立ち上がり部32と、底部34と、底部34の中央に設けられた貫通孔33とから主に構成され、ハウジング2内に略倒置状態で配置されている。立ち上がり部32の端部は蓋体4に液密に溶接により固定されている。液体は密閉液室Mcと開放液室Moとの間を貫通孔33を通して出入り可能とされている。また、底部34の上面は、シール20の環状突部23が着座する着座面35とされている。環状突部23が着座面35に着座したときにシール作用を奏して密閉液室Mcと開放液室Moとの間を液密に閉塞する。
【0022】
つぎに、アキュムレータ1の作動を説明する。
<定常作動時(運転時)の作動>
アキュムレータ1は、オイルポート5において図示しない機器の圧力配管に接続されている。この機器の定常作動時において、
図2に示されるように、この圧力配管から液室Mに高圧の流体が導入されるため、金属ベローズ6は伸張し、ベローズキャップ10はステー30から離間している。この状態では、貫通孔33を通してオイルポート5と密閉液室Mc、開放液室Moとが連通し、オイルポート5からそのときどきの圧力の液体が随時導入され、ベローズキャップ10は導入された液圧及びガス室Gに封入されたガス圧が均衡するよう随時移動する。
【0023】
<ゼロダウン時>
定常作動時の状態から機器の運転が停止する等して圧力配管の圧力が略ゼロとなるまで低下していわゆるゼロダウン状態になると、液室Mの液体がオイルポート5から徐々に排出され、これに伴って
図1、
図5、
図6に示されるように、ベローズキャップ10は金属ベローズ6の収縮に伴い下方へ移動し、ベローズキャップ10の環状突部23がステー30の着座面35に着座し、密閉液室Mcと開放液室Moとの間が仕切られる。詳細には、先ず、着座面35に環状突部23の半径方向長さL1のシール部である平坦部25が接触し(
図5A、
図6A)、その後、さらにベローズキャップ10はガス圧による押圧力Fを受け、環状突部23は押し潰され、平坦部25から連なる緩衝部である斜辺部24、斜辺部26の一部も弾性変形して着座面35に接触し、すなわち環状突部23は半径方向長さL2の部分において着座面35に接触する(
図5B、
図6B)。このようにして、環状突部23は、平坦部25がシール性を確保する機能を有するとともに、斜辺部24、26が、特に変形量の大きな斜辺部26が、変形により押圧力Fを分散させる緩衝部として作用し、環状突部23及び剛性プレート21を含むシール20、ベローズキャップ10並びにステー30の機械的損傷を抑制する機能を有する。
【0024】
また、上述のとおり、密閉液室Mcが閉塞され、密閉液室Mcに一部の液体(バックアップフルード)が閉じ込められるので、密閉液室Mcの更なる圧力低下が発生しなくなる。その結果、金属ベローズ6内外で液圧及びガス圧が均衡する。この圧力の均衡により金属ベローズ6の破損が防止されるとともに、ゼロダウンから定常作動への移行時に密閉液室Mcに保持された液圧がいわゆる与圧として作用し、ステー30からベローズキャップ10を迅速に離間させることに寄与する。
【0025】
<ゼロダウン状態から定常作動状態への移行時>
ゼロダウン状態が解消されて、図示しない機器の圧力配管の液体の圧力が上昇し、オイルポート5から液体が流入すると、この液体の圧力がシール20に作用してベローズキャップ10をステー30から離間させる(液体の導入直後の動作の詳細は後述する。)。引きつづき液体は密閉液室Mcに導入され、ベローズキャップ10を金属ベローズ6の伸長方向へ向け液圧及びガス圧が均衡する位置まで移動させる。したがって、
図2に示される定常作動状態に復帰することになる。
【0026】
図5B、
図6Bを参照して、オイルポート5から液体が導入されると、開放液室Moの液圧が上昇し、シール20の中央部28及び斜辺部26の一部、すなわちシール20の中心Oから半径L3により画定される円領域に作用する。同時に、液体は、溝27が開放液室Mo側に連通している(
図6B参照。)ため、着座面35と接触する斜辺部26に位置する導圧部27A(連通路)にも導入される。すなわち、液体の液圧は、上記円領域(L3に対応する領域)に加えて導圧部27Aにも作用する。
【0027】
この液圧の作用により、シール20は上方に持ち上げられるにつれて、斜辺部26は徐々に元の形に復元し、斜辺部26と着座面35との間に形成される楔状の空間が、ゼロダウン時の空間W1から、中間状態の空間W2、斜辺部26が着座面35から離れた直後の空間W3と大きくなり、言い換えると斜辺部26と着座面35との接触領域L4が徐々に減少し、シール20の持ち上げに寄与する受圧面積が大きくなる。同時に、シール20は上方に持ち上げられるにつれて、溝27が圧縮状態から開放されて徐々に元の形状に復元しその溝体積が増えるため、溝27に作用する液体も増加する。このように、空間W1、W2、W3や溝27の受圧面積が徐々に増加し、かつ、空間W1、W2、W3や溝27に流れ込む流体の流れVによる楔効果によって、環状突部23を着座面35から迅速に離間させることができる。このように、シール20をステー30から離間させるには、液体の圧力(衝撃力)と流体の流れによ
り生じる離間力が複合的に作用していると考えられる。上述した先行技術として説明したシール、すなわち、溝27が設けられず周方向に円滑に連続する斜辺部26を有するシールを用いる場合に比較し、シールをステーから離間させるのに必要な圧力が数%程度低下することが実験により確認された。
【0028】
また、ステー30に対して平坦部25(シール部)を保護するための緩衝作用を斜辺部26(緩衝部)に持たせたまま、圧力配管内の圧力上昇時に、溝27の導圧部27A(連通路)に存する液体に圧がかかり、ベローズキャップ10に押し上げ力が瞬時に作用することとなり、ガス圧により付勢されるベローズキャップ10をステー30から迅速に離間させることができる。さらに、導圧部27A(連通路)は、斜辺部26(緩衝部)に形成されているため、斜辺部26(緩衝部)は導圧部27A以外の部分でガス圧による緩衝作用を奏するとともに、圧力配管内の圧力上昇時に、導圧部27Aに存する液体に圧がかかり、ベローズキャップ10に押し上げ力を瞬時に作用させることができることとなる。
また、溝27はステー30の貫通孔33から放射方向に等配に配置されている。このため、押し上げ力が周方向に均等に作用するため、偏荷重によりベローズキャップ10が傾くことなく、ベローズキャップ10をステー30から円滑に離間させることができる。さらに、溝27はステー30の貫通孔33から直線状かつ放射状に平坦部25に向けて延設されているため、押し上げ力が径方向に渡って作用し、ベローズキャップをステーから円滑に離間させることができる。
【0029】
さらに、寒冷地における使用する場合に、ゼロダウン時にシール20の環状突部23が変形しにくい場合にあっても、上述した先行技術として説明したシールよりも、シール20をステー30から迅速に離間させることができる。これは、溝27を設けたことにより、液体が溝27に導入されやすくなっていることや溝27が脆弱部となって、斜辺部26が機械的に変形しやすくなっているためと考えられる。
【実施例6】
【0039】
次に、実施例6に係るアキュムレータにつき、
図11を参照して説明する。実施例6はシール20の平坦部25に環状溝を追加した点が実施例1とは異なっている。なお、実施例1と同一構成で重複する構成を省略する。
【0040】
図11に示されるように、平坦部25の下端側には、3本の環状溝50が設けられている。このように平坦部25に環状溝50を設けることにより、平坦部25と着座面35との接触面積が減るため、ゼロダウン状態から定常作動状態への移行時に、シール20をステー30から迅速に離間させることができる。なお、環状溝50の本数は3本に限られず、また、周方向に不連続な溝であってもよい。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
例えば、前記実施例1−2,4−5では、溝27、溝37、突条47により、ゼロダウン時に着座面35との間に貫通孔33側に連通する連通路が形成される例について説明したが、連通路以外に、実施例3のごとく、貫通孔側に連通しない、溝やディンプルを設けてもよい。このようにすると、ゼロダウン時に、当該溝やディンプルに閉塞された状態で液体が閉じ込められるため、この閉じ込められた液体の液圧により、シール20には、シール20を上方に離間させる方向の離間力が作用しており、シール20をステー30からより迅速に離間させることに寄与できる。
【0043】
また、環状突部23のシール部は、密封機能を奏すればよいため、その形状は必ずしも平坦である必要はなく、
図11に示されるように、環状溝50が形成される形状のみならず、断面が曲面であってもよい。
【0044】
さらに、弾性当接部として環状突部23を例に説明したが、弾性当接部はベローズキャップ10に設けられ、ガス圧からの力を緩衝する緩衝作用とシール機能を有するものであればよく、実施例1−6で説明したように、ゴム22が環状突部を有する形状に限定されるものではない。さらに、環状突部を有するものであっても、シール部の形状は平坦な形状に限られず、曲面状等他の形状であってよく、かつ緩衝部の形状は斜辺を有する形状に限られない。