特許第6763887号(P6763887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763887磁界に対する応答が改善されたスピンバルブ磁気抵抗効果素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763887
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】磁界に対する応答が改善されたスピンバルブ磁気抵抗効果素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/08 20060101AFI20200917BHJP
   H01L 43/12 20060101ALI20200917BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   H01L43/08 Z
   H01L43/12
   G01R33/09
【請求項の数】40
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-563135(P2017-563135)
(86)(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公表番号】特表2018-522404(P2018-522404A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】US2016034237
(87)【国際公開番号】WO2016196157
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月21日
(31)【優先権主張番号】62/171,532
(32)【優先日】2015年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】591150395
【氏名又は名称】コミサリア タ レネルジー アトミック エ オー エネルジー アルテルナティーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】フェルモン,クロード
(72)【発明者】
【氏名】カムピリオ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】カドゥガン,ブライアン
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0184918(US,A1)
【文献】 特開2003−008100(JP,A)
【文献】 特開2004−103730(JP,A)
【文献】 特表2009−527745(JP,A)
【文献】 特表2009−509357(JP,A)
【文献】 特表2007−504651(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0152859(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/08
H01L 43/12
G01R 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に堆積される磁気抵抗効果素子であって、
第1の自由層構造及び第2の自由層構造を備える偶数個の自由層構造と、
第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層を備える偶数個のスペーサ層と、
第1の固定層構造及び第2の固定層構造を備える偶数個の固定層構造と
を備え、前記偶数個の自由層構造、前記偶数個のスペーサ層及び前記偶数個の固定層構造が層のスタックで配置され、前記第1のスペーサ層が第1の厚さを有し、前記第1の厚さが、前記第1の固定層構造と前記第1の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第1の選択された結合になるように選択され、前記第2のスペーサ層が前記第1の厚さとは異なる第2の厚さを有し、前記第2の厚さが、前記第2の固定層構造と前記第2の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの前記第1の選択された結合とは異なる第2の選択された結合になるように選択され、
少なくとも第1の固定化層、第2の固定化層及び第3の固定化層を備える奇数個の固定化層であって、前記第1の固定化層及び第2の固定化層がそれぞれ前記第1の固定層構造及び第2の固定層構造に磁気的に結合され、前記第1の固定化層及び第2の固定化層の焼きなまし磁気方向が互いに平行であり、前記第3の固定化層の焼きなまし磁気方向が、前記第1の固定化層及び第2の固定化層の焼きなまし磁気方向と同じ方向にない、奇数個の固定化層
を備える磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記第1のスペーサ層及び前記第2のスペーサ層がそれぞれRuからなる、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記第1の厚さが、1.0nmから1.7nmの範囲であり、前記第2の厚さが、3.
0nmから3.7nmの範囲である、請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記第2の厚さが、1.0nmから1.7nmの範囲であり、前記第1の厚さが、3.0nmから3.7nmの範囲である、請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ1つの個々の固定層からなる、請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える、請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ1つの個々の固定層からなる、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項9】
前記偶数個の固定層構造が、第3の固定層構造及び第4の固定層構造をさらに備え、前記第3の固定化層が、前記第3の固定層構造及び第4の固定層構造の両方に磁気的に結合される共通固定化層である、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項10】
前記第1の固定化層及び前記第2の固定化層がそれぞれPtMnからなる、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項11】
前記第3の固定化層がPtMnからなる、請求項10に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項12】
前記第1の固定化層及び前記第2の固定化層の焼きなまし磁気方向が互いに平行であり、前記第3の固定化層の焼きなまし磁気方向が、前記第1の固定化層及び第2の固定化層の焼きなまし磁気方向に対して90度である、請求項11に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項13】
前記磁気抵抗効果素子の少なくとも一部がヨーク形状を有する、請求項9に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項14】
前記ヨーク形状の長さ(L)及び前記ヨーク形状の横方向のアームの長さ(d)が、それぞれ前記ヨーク形状の幅(w)の少なくとも3倍であり、前記ヨーク形状の前記幅(w)が1μmと20μmの間であり、前記長さ(L)が前記ヨーク形状の最も長い寸法である、請求項13に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項15】
磁気抵抗効果素子を製造する方法であって、
前記磁気抵抗効果素子を基板の上に堆積させるステップであって、前記磁気抵抗効果素子が、
第1の自由層構造及び第2の自由層構造を備える偶数個の自由層構造と、
第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層を備える偶数個のスペーサ層と、
第1の固定層構造及び第2の固定層構造を備える偶数個の固定層構造と
を備え、前記偶数個の自由層構造、前記偶数個のスペーサ層及び前記偶数個の固定層構造が層のスタックで配置され、前記第1のスペーサ層が第1の厚さを有し、前記第1の厚さが、前記第1の固定層構造と前記第1の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第1の選択された結合になるように選択され、前記第2のスペーサ層が前記第1の厚さとは異なる第2の厚さを有し、前記第2の厚さが、前記第2の固定層構造と前記第2の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの前記第1の選択
された結合とは異なる第2の選択された結合になるように選択され、前記磁気抵抗効果素子がさらに、
少なくとも第1の固定化層、第2の固定化層及び第3の固定化層を備える奇数個の固定化層であって、前記第1の固定化層及び第2の固定化層がそれぞれ前記第1の固定層構造及び第2の固定層構造に磁気的に結合される、奇数個の固定化層を備える、前記磁気抵抗効果素子を基板の上に堆積させるステップと、
前記磁気抵抗効果素子を焼きなますステップであって、
前記第1の固定化層及び第2の固定化層の磁気方向が互いに平行になるように焼きなますステップ、並びに、
前記第3の固定化層の磁気方向を、前記第1の固定化層及び第2の固定化層の焼きなまし磁気方向と同じ方向にないように焼きなますステップ
を含む、前記磁気抵抗効果素子を焼きなますステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層がRuからなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の厚さが、1.0nmから1.7nmの範囲であり、前記第2の厚さが、3.0nmから3.7nmの範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の厚さが、1.0nmから1.7nmの範囲であり、前記第1の厚さが、3.0nmから3.7nmの範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ1つの個々の固定層からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ1つの個々の固定層からなる、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記偶数個の固定層構造が、第3の固定層構造及び第4の固定層構造をさらに備え、前記第3の固定化層が、前記第3の固定層構造及び第4の固定層構造の両方に磁気的に結合される共通固定化層である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の固定化層及び前記第2の固定化層がそれぞれPtMnからなる、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記第3の固定化層がPtMnからなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第3の固定化層の磁気方向を焼きなますステップが、
前記第3の固定化層の磁気方向が前記第1の固定化層及び第2の固定化層の焼きなまし磁気方向に対して90度になるように焼きなますステップ
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ヨーク形状を有するよう前記磁気抵抗効果素子をパターン化するステップ
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記ヨーク形状の長さ(L)及び前記ヨーク形状の横方向のアームの長さ(d)が、それぞれ前記ヨーク形状の幅(w)の少なくとも3倍であり、前記ヨーク形状の前記幅(w)が1μmと20μmの間であり、前記長さ(L)が前記ヨーク形状の最も長い寸法である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
磁気抵抗効果素子であって、
基板と、
前記基板の上に配置される第1の固定層構造と、
前記第1の固定層構造の上に配置される第1のスペーサ層と、
前記第1のスペーサ層の上に配置される第1の自由層構造と、
前記第1の自由層構造の上に配置される反強磁性層と、
前記反強磁性層の上に配置される第2の自由層と、
前記第2の自由層の上に配置される第2のスペーサ層と、
前記第2のスペーサ層の上に配置される第2の固定層構造と
を備え、前記第1のスペーサ層が、前記第1の固定層構造と前記第1の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第1の選択された結合になるよう、第1の厚さを有し、前記第2のスペーサ層が、前記第2の固定層構造と前記第2の自由層の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの前記第1の選択された結合とは異なる第2の選択された結合になるよう、前記第1の厚さとは異なる第2の厚さを有し、前記第1の固定層構造及び第2の固定層構造の焼きなまし磁気方向が互いに平行であり、前記反強磁性層の焼きなまし磁気方向が、前記第1の固定層構造及び第2の固定層構造の焼きなまし磁気方向と平行でない、磁気抵抗効果素子。
【請求項30】
前記第1のスペーサ層及び前記第2のスペーサ層がそれぞれRuからなる、請求項29に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項31】
前記第1の厚さが、1.0nmから1.7nmの範囲であり、前記第2の厚さが、3.0nmから3.7nmの範囲である、請求項30に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項32】
前記第2の厚さが、1.0nmから1.7nmの範囲であり、前記第1の厚さが、3.0nmから3.7nmの範囲である、請求項30に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項33】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ1つの個々の固定層からなる、請求項30に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項34】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える、請求項30に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項35】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ1つの個々の固定層からなる、請求項29に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項36】
前記第1の固定層構造及び前記第2の固定層構造が、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える、請求項29に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項37】
基板の上に堆積される磁気抵抗効果素子であって、
第1の自由層構造及び第2の自由層構造を備える偶数個の自由層構造と、
第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層を備える偶数個のスペーサ層と、
第1の固定層構造及び第2の固定層構造を備える偶数個の固定層構造と
を備え、前記偶数個の自由層構造、前記偶数個のスペーサ層及び前記偶数個の固定層構造が層のスタックで配置され、前記第1のスペーサ層が第1の厚さを有し、前記第1の厚さが、前記第1の固定層構造と前記第1の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第1の選択された結合になるように選択され、前記第2のスペーサ層が前記第1の厚さとは異なる第2の厚さを有し、前記第2の厚さが、前記第2の固定層構造と前記第2の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの前記第1の選択された結合とは異なる第2の選択された結合になるように選択され、
少なくとも第1の固定化層、第2の固定化層及び第3の固定化層を備える奇数個の固定化層であって、前記第1の固定化層及び第2の固定化層がそれぞれ前記第1の固定層構造及び第2の固定層構造に磁気的に結合され、前記偶数個の固定層構造が第3の固定層構造及び第4の固定層構造をさらに備え、前記第3の固定化層は前記第3の固定層構造及び前記第4の固定層構造の両方に磁気的に結合される共通固定化層であり、前記第1の固定化層及び前記第2の固定化層はそれぞれPtMnからなる、奇数個の固定化層
を備える、磁気抵抗効果素子。
【請求項38】
前記第3の固定化層はPtMnからなる、請求項37に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項39】
磁気抵抗効果素子を製造する方法であって、
前記磁気抵抗効果素子を基板の上に堆積させるステップであって、前記磁気抵抗効果素子が、
第1の自由層構造及び第2の自由層構造を備える偶数個の自由層構造と、
第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層を備える偶数個のスペーサ層と、
第1の固定層構造及び第2の固定層構造を備える偶数個の固定層構造と
を備え、前記偶数個の自由層構造、前記偶数個のスペーサ層及び前記偶数個の固定層構造が層のスタックで配置され、前記第1のスペーサ層が第1の厚さを有し、前記第1の厚さが、前記第1の固定層構造と前記第1の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第1の選択された結合になるように選択され、前記第2のスペーサ層が前記第1の厚さとは異なる第2の厚さを有し、前記第2の厚さが、前記第2の固定層構造と前記第2の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの前記第1の選択された結合とは異なる第2の選択された結合になるように選択され、
少なくとも第1の固定化層、第2の固定化層及び第3の固定化層を備える奇数個の固定化層であって、前記第1の固定化層及び第2の固定化層がそれぞれ前記第1の固定層構造及び第2の固定層構造に磁気的に結合され、前記偶数個の固定層構造が第3の固定層構造及び第4の固定層構造をさらに備え、前記第3の固定化層は前記第3の固定層構造及び前記第4の固定層構造の両方に磁気的に結合される共通固定化層であり、前記第1の固定化層及び前記第2の固定化層はそれぞれPtMnからなる、奇数個の固定化層
を備える、前記磁気抵抗効果素子を基板の上に堆積させるステップと、
前記磁気抵抗効果素子を焼きなますステップと
を含む方法。
【請求項40】
前記第3の固定化層はPtMnからなる、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にスピンエレクトロニクス磁気抵抗効果素子に関し、より詳細には、磁界に対する改善された応答を提供するための、スピンバルブ巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magnetoresistance)素子及び2つ又はそれ以上の能動領域を有するスピンバルブトンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunnel Magnetoresistance)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において使用されるとき、「磁界知覚素子」という用語は、磁界を知覚することができる様々な電子素子を記述するために使用されている。このような磁界知覚素子の1つは磁気抵抗効果(MR)素子である。磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果素子によって遭遇される磁界に関連して変化する抵抗を有する。
【0003】
知られているように、異なるタイプの磁気抵抗効果素子が存在しており、例えばアンチモン化インジウム(InSb)などの半導体磁気抵抗効果素子、巨大磁気抵抗効果(GMR)素子、異方性磁気抵抗効果素子(AMR)、及び磁気トンネル接合(MTJ)素子とも呼ばれているトンネリング磁気抵抗効果(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子が存在している。
【0004】
これらの磁気抵抗効果素子のうち、GMR素子及びTMR素子は、スピンエレクトロニクス(すなわち電子スピン)を使用して動作し、抵抗は、非磁性層によって分離された異なる磁性層の磁気配向に関連付けられる。スピンバルブ構成の場合、抵抗は、別の層であるいわゆる「基準層」に対する、いわゆる「自由層」中の磁化の角方向に関連付けられる。自由層及び基準層については、以下でより完全に説明される。
【0005】
磁気抵抗効果素子は、単一の素子であっても、又は別法としては、様々な構成、例えば半ブリッジ又は全(ホイートストン)ブリッジで配置された2つ又はそれ以上の磁気抵抗効果素子を含むことも可能である。
【0006】
本明細書において使用されるとき、「磁界センサ」という用語は、磁界知覚素子を使用している、一般的には他の回路と組み合わせた回路を記述するために使用されている。典型的な磁界センサの場合、磁界知覚素子及び他の回路は、共通の基板の上に統合され得る。
【0007】
磁界センサは、それらに限定されないが、磁界の方向の角度を知覚する角度センサ、電流搬送導体によって搬送される電流によって生成される磁界を知覚する電流センサ、強磁性体の近接を知覚する磁気スイッチ、強磁性物品、例えば輪形磁石又は強磁性ターゲット(例えば歯車の歯)の磁気領域の通過を知覚する、磁界センサがバックバイアス磁石又は他の磁石と組み合わせて使用される回転検出器、及び磁界の磁界密度を知覚する磁界センサを始めとする様々な応用例で使用されている。
【0008】
様々なパラメータが、磁界センサ及び磁界知覚素子の性能を特性化している。磁界知覚素子に関しては、パラメータは、磁界知覚素子の出力信号が磁界に応答して変化する感度、及び磁界センサの出力信号が磁界に対して直線的に変化する(すなわち正比例する)度合である直線性を含む。
【0009】
GMR素子及びTMR素子は、例えばホール素子と比較すると、比較的高い感度を有することが知られている。また、GMR素子及びTMR素子は、適度に良好な直線性を有することも知られているが、磁界の限られた範囲にわたるものであり、ホール素子が動作することができる範囲よりもさらに範囲が限定されている。しかしながらGMR素子又はTMR素子の直線性は、磁界の範囲が限定されている上に、不規則性の問題を抱えていることが知られている。また、いくつかのGMR素子及びTMR素子には、高温貯蔵の後、挙動が変化する傾向があることも知られている。したがって、直線性不規則性が低減され、また、高温貯蔵の影響が小さいGMR素子又はTMR素子を提供することが望ましい。
【0010】
また、従来のGMR素子及びTMR素子、並びに具体的にはスピンバルブは、磁界測定又は電流測定におけるそれらの精度を低くする望ましくないヒステリシス挙動をも有することが知られている。したがってヒステリシスが小さいGMR素子又はTMR素子を提供することがやはり望ましい。
【0011】
また、従来のGMR素子及びTMR素子、並びに具体的にはスピンバルブは、出力信号のデューティサイクルを非50パーセントにし得る磁気非対称性を有することも知られている。したがって磁気対称性が改善されたGMR素子又はTMR素子を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、直線性不規則性が低減され、ヒステリシス挙動が著しく低減され、また、高温及び高磁界貯蔵状態の影響が小さいGMR素子又はTMR素子(あるいは任意のスピンエレクトロニクス磁気抵抗効果素子)を提供する。また、いくつかの実施形態では、本発明は、磁気対称性が改善されたGMR素子又はTMR素子(あるいは任意のスピンエレクトロニクス磁気抵抗効果素子)をも提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様を理解するために有用な例によれば、基板の上に堆積される磁気抵抗効果素子は、
第1の自由層構造及び第2の自由層構造を備える偶数個の自由層構造と、
第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層を備える偶数個のスペーサ層と、
第1の固定層構造及び第2の固定層構造を備える偶数個の固定層構造と
を含むことができ、偶数個の自由層構造、偶数個のスペーサ層及び偶数個の固定層構造は層のスタックで配置され、第1のスペーサ層は、第1の厚さを有する第1の材料からなり、第1の材料及び第1の厚さは、第1の固定層構造と第1の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第1の選択された結合になるように選択され、また、第2のスペーサ層は、第2の厚さを有する第2の材料からなり、第2の材料及び第2の厚さは、第2の固定層構造と第2の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第2の選択された結合になるように選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記磁気抵抗効果素子は、以下の態様のうちの1つ又は複数を任意の組合せで含むことができる。
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層はRuからなる。
【0015】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、選択される第1の厚さは、約1.0nmから約1.7nm又は約2.3nmから約3.0nmの範囲であり、また、選択される第2の厚さは、約1.7nmから約2.3nm又は約3.0nmから約3.7nmの範囲である。
【0016】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、選択される第2の厚さは、約1.0nmから約1.7nm又は約2.3nmから約3.0nmの範囲であり、また、選択される第1の厚さは、約1.7nmから約2.3nm又は約3.0nmから約3.7nmの範囲である。
【0017】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ1つの個々の固定層からなる。
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える。
【0018】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ1つの個々の固定層からなる。
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記磁気抵抗効果素子は、
少なくとも第1、第2及び第3の固定化層を備える奇数個の固定化層であって、第1の固定化層及び第2の固定化層がそれぞれ第1の固定層構造及び第2の固定層構造に磁気的に結合される奇数個の固定化層
を含むことができ、偶数個の固定層構造は、第3の固定層構造及び第4の固定層構造をさらに備え、第3の固定化層は、第3の固定層構造及び第4の固定層構造の両方に磁気的に結合される共通固定化層である。
【0020】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定化層及び第2の固定化層はPtMnからなる。
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第3の固定化層はPtMnからなる。
【0021】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定化層及び第2の固定化層の焼きなまし磁気方向は互いに平行であり、また、第3の固定化層の焼きなまし磁気方向は、第1の固定化層及び第2の固定化層の焼きなまし磁気方向に対して90度である。
【0022】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、磁気抵抗効果素子の少なくとも一部はヨーク形状を有する。
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、ヨーク形状の長さ(L)及びヨーク形状の横方向のアームの長さ(d)は、それぞれヨーク形状の幅(w)の少なくとも3倍であり、また、ヨーク形状の幅(w)は約1μmと約20μmの間であり、長さ(L)は、ヨーク形状の最も長い寸法である。
【0023】
本発明の態様を理解するために有用な別の例によれば、磁気抵抗効果素子を製造する方法は、
磁気抵抗効果素子であって、
第1の自由層構造及び第2の自由層構造を備える偶数個の自由層構造と、
第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層を備える偶数個のスペーサ層と、
第1の固定層構造及び第2の固定層構造を備える偶数個の固定層構造と
を備え、偶数個の自由層構造、偶数個のスペーサ層及び偶数個の固定層構造が層のスタックで配置され、第1のスペーサ層が第1の厚さを有する第1の材料からなり、第1の材料及び第1の厚さが、第1の固定層構造と第1の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第1の選択された結合になるように選択され、また、第2のスペーサ層が第2の厚さを有する第2の材料からなり、第2の材料及び第2の厚さが、第2の固定層構造と第2の自由層構造の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第2の選択された結合になるように選択される
磁気抵抗効果素子を基板の上に堆積させるステップ
を含むことができ、方法は、
磁気抵抗効果素子を焼きなますステップ
をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記方法は、以下の態様のうちの1つ又は複数を任意の組合せで含むことができる。
上記方法のいくつかの実施形態では、第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層はRuからなる。
【0025】
上記方法のいくつかの実施形態では、選択される第1の厚さは、約1.0nmから約1.7nm又は約2.3nmから約3.0nmの範囲であり、また、選択される第2の厚さは、約1.7nmから約2.3nm又は約3.0nmから約3.7nmの範囲である。
【0026】
上記方法のいくつかの実施形態では、選択される第2の厚さは、約1.0nmから約1.7nm又は約2.3nmから約3.0nmの範囲であり、また、選択される第1の厚さは、約1.7nmから約2.3nm又は約3.0nmから約3.7nmの範囲である。
【0027】
上記方法のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ1つの個々の固定層からなる。
上記方法のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える。
【0028】
上記方法のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ1つの個々の固定層からなる。
上記方法のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える。
【0029】
上記方法のいくつかの実施形態では、堆積される磁気抵抗効果素子は、
少なくとも第1、第2及び第3の固定化層を備える奇数個の固定化層であって、第1の固定化層及び第2の固定化層がそれぞれ第1の固定層構造及び第2の固定層構造に磁気的に結合される奇数個の固定化層
をさらに備え、偶数個の固定層構造は、第3の固定層構造及び第4の固定層構造をさらに備え、第3の固定化層は、第3の固定層構造及び第4の固定層構造の両方に磁気的に結合される共通固定化層である。
【0030】
上記方法のいくつかの実施形態では、第1の固定化層及び第2の固定化層はPtMnからなる。
上記方法のいくつかの実施形態では、第3の固定化層はPtMnからなる。
【0031】
上記方法のいくつかの実施形態では、焼きなますステップは、
第1の固定化層及び第2の固定化層の磁気方向が互いに平行になるように焼きなますステップと、
第3の固定化層の磁気方向が第1の固定化層及び第2の固定化層の焼きなまし磁気方向に対して90度になるように焼きなますステップと
を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記方法はヨーク形状を有するよう磁気抵抗効果素子をパターン化するステップをさらに含む。
上記方法のいくつかの実施形態では、ヨーク形状の長さ(L)及びヨーク形状の横方向のアームの長さ(d)は、それぞれヨーク形状の幅(w)の少なくとも3倍であり、また、ヨーク形状の幅(w)は約1μmと約20μmの間であり、長さ(L)は、ヨーク形状の最も長い寸法である。
【0033】
本発明の態様を理解するために有用な別の例によれば、磁気抵抗効果素子は、
基板と、
基板の上に配置される第1の固定層構造と、
第1の固定層構造の上に配置される第1のスペーサ層と、
第1のスペーサ層の上に配置される第1の自由層構造と、
第1の自由層構造の上に配置される反強磁性層と、
反強磁性層の上に配置される第2の自由層と、
第2の自由層構造の上に配置される第2のスペーサ層と、
第2のスペーサ層の上に配置される第2の固定層構造と
を含むことができ、第1のスペーサ層は、第1の固定層と第1の自由層の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第1の選択された結合になるよう、第1の選択された厚さを有する第1の選択された材料からなり、また、第2のスペーサ層は、第2の固定層と第2の自由層の間の結合が反強磁性結合又は強磁性結合のうちの第2の異なる結合になるよう、第2の異なる選択された厚さを有する第1の選択された材料からなる。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記磁気抵抗効果素子は、以下の態様のうちの1つ又は複数を任意の組合せで含むことができる。
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1のスペーサ層及び第2のスペーサ層はRuからなる。
【0035】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、選択される第1の厚さは、約1.0nmから約1.7nm又は約2.3nmから約3.0nmの範囲であり、また、選択される第2の厚さは、約1.7nmから約2.3nm又は約3.0nmから約3.7nmの範囲である。
【0036】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、選択される第2の厚さは、約1.0nmから約1.7nm又は約2.3nmから約3.0nmの範囲であり、また、選択される第1の厚さは、約1.7nmから約2.3nm又は約3.0nmから約3.7nmの範囲である。
【0037】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ1つの個々の固定層からなる。
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える。
【0038】
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ1つの個々の固定層からなる。
上記磁気抵抗効果素子のいくつかの実施形態では、第1の固定層構造及び第2の固定層構造は、それぞれ個々の合成反強磁性体(SAF)構造を備える。
【0039】
本発明の以上の特徴並びに本発明自体は、図面についての以下の詳細な説明からより完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】巨大磁気抵抗効果(GMR)素子の理想の伝達特性及び実際の伝達特性を示すグラフである。
図2】単一の固定構造を有する従来技術のGMR素子の層を示すブロック図である。
図3】二重固定構造を有する従来技術のGMR素子の層を示すブロック図である。
図4】特定の二重固定構造を有する磁気抵抗効果素子の例の層を示すブロック図である。
図5】いくつかの実施形態では、図4、10又は11の磁気抵抗効果素子の形状を表すことができるヨーク形状を有する磁界知覚素子の上面図である。
図6】回転速度測定のために磁気ターゲットの上に置かれた磁気抵抗効果素子磁界センサのブロック図である。
図7図4、5、10及び11の二重固定GMR素子を形成するために使用され得るプロセスステップの例を示すフローチャートである。
図8図4、5、10及び11の二重固定GMR素子を形成するために使用され得る代替プロセスステップの例を示すフローチャートである。
図9図4、5、10及び11の二重固定GMR素子を形成するために使用され得る代替プロセスステップの例を示すフローチャートである。
図10図4の構造とは概ね逆に積み重ねられた特定の二重固定構造を有する磁気抵抗効果素子の別の例の層を示すブロック図である。
図11】特定の二重固定構造を有する磁気抵抗効果素子のさらに別の例の層を示すブロック図である。
図12図11の構造とは概ね逆に積み重ねられた特定の二重固定構造を有する磁気抵抗効果素子の別の例の層を示すブロック図である。
図13】横方向の磁界と共に取った図4の磁気抵抗効果素子の代表的な伝達曲線を示すグラフである。
図14】縦方向の磁界と共に取った図4の磁気抵抗効果素子の代表的な伝達曲線を示すグラフである。
図15】概ね逆に積み重ねられた、図13に対して逆方向のバイアスの、横方向の磁界と共に取った図10の磁気抵抗効果素子の代表的な伝達曲線を示すグラフである。
図16】概ね逆に積み重ねられた、図14に対して逆方向のバイアスの、縦方向の磁界と共に取った図10の磁気抵抗効果素子の代表的な伝達曲線を示すグラフである。
図17】二重(デュアル)スピンバルブスタックを有する磁気抵抗効果素子の例の層を示すブロック図である。
図18】横方向の磁界と共に取った図17の磁気抵抗効果素子の代表的な伝達曲線を示すグラフである。
図19】縦方向の磁界と共に取った図17の磁気抵抗効果素子の代表的な伝達曲線を示すグラフである。
図20】異なる二重スピンバルブスタックを有する磁気抵抗効果素子の別の例の層を示すブロック図である。
図21】二重スピンバルブ構造を有する従来技術の磁気抵抗効果素子の層を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明を説明する前に、本明細書においては、特定の形状(例えばヨーク形)を有するGMR素子又はTMR素子が参照されることがあることに留意されたい。しかしながら本明細書において説明される技法は、様々な大きさ及び形状に適用することができることは当業者には理解されよう。
【0042】
本明細書において使用されるとき、「異方性」又は「異方性の」という用語は、特定の軸又は方向であって、追加外部磁界に遭遇しない場合、その特定の軸又は方向に対する強磁性層又はフェリ磁性層の磁化がある方向に向く傾向を示す特定の軸又は方向を意味している。軸方向異方性は、結晶性効果によって、又は形状異方性によって生成されることが可能であり、結晶性効果及び形状異方性は、いずれも磁界の2つの等価方向を許容する。また、方向異方性は、隣接する層の中にやはり生成されることが可能であり、例えば隣接する層内の特定の軸に沿った単一の磁界方向のみを許容する反強磁性層によって生成され得る。
【0043】
以上に鑑みて、磁性層内に異方性を導入することにより、外部磁界が存在しない場合のその異方性に沿って整列されるように磁性層の磁化を強制することができることは理解されよう。GMR素子又はTMR素子の場合、方向異方性は、例えば外部磁界に応答して磁性層内に磁界のコヒーレント回転を得る能力を提供し、この能力は、対応する素子のヒステリシス挙動を抑制する特性を有する。
【0044】
本明細書において使用されるとき、「磁界知覚素子」という用語は、磁界を知覚することができる様々な電子素子を記述するために使用されている。磁気抵抗効果素子は、このような磁界知覚素子の1つのタイプである。
【0045】
本明細書において使用されるとき、「磁界センサ」という用語は、磁界知覚素子を使用している、一般的には他の回路と組み合わせた回路を記述するために使用されている。磁界センサは、それらに限定されないが、磁界の方向の角度を知覚する角度センサ、電流搬送導体によって搬送される電流によって生成される磁界を知覚する電流センサ、強磁性体の近接を知覚する磁気スイッチ、強磁性物品、例えば輪形磁石の磁気領域の通過を知覚する回転検出器、及び磁界の磁界密度を知覚する磁界センサを始めとする様々な応用例で使用されている。
【0046】
本明細書において説明される構造及び方法は、GMR磁気抵抗効果素子及びTMR磁気抵抗効果素子の両方に適用する。しかしながら同じ又は同様の構造及び方法を、現在知られているものであれ、あるいは後に開発されるものであれ、他のスピンエレクトロニクス磁気抵抗効果素子に適用することができることを理解されたい。これは、具体的には、酸化物をベースとするスピンエレクトロニクス構造を含む。
【0047】
ここで図1を参照すると、グラフ100は、ミリテスラ(mT)の磁界単位のスケールを有する水平軸、及び任意の単位の抵抗単位のスケールを有する垂直軸を有する。
曲線102は、理想GMR素子の伝達関数、すなわちGMR素子によって遭遇される抵抗対磁界を表している。伝達関数102は、上側飽和点102bと下側飽和点102cの間に線形領域102aを有する。領域102d、102eは飽和領域である。線形領域102aは理想線形領域であることを理解されたい。さらに、理想GMR素子は、その磁気履歴に無関係に、所与の磁界に対して同じ抵抗を示す。
【0048】
ステップ、例えばステップ104は、GMR素子の実際の伝達関数を表している。飽和点102b、102cを越えると、ステップ104によって表されている実際の伝達関数は、飽和領域102d、102eと一体になる。
【0049】
ステップ104は望ましくない。ステップ104は、GMR素子内のいわゆる自由層内における磁気領域の磁気挙動によって生じる。自由層の挙動については、図2に関連して以下でより完全に説明される。
【0050】
ステップ104は、間隔が等しく、かつ、ステップの高さが等しい規則的ステップとして示されているが、ステップ104は、間隔が不等で、かつ、ステップの高さ(すなわち振幅)が不等の不規則ステップであってもよい。ステップは、通常、局部ヒステリシスに対応し、また、自由層の再現可能局所回転に相当する。
【0051】
次に図2を参照すると、従来技術のGMR素子200は、基板の上に配置された複数の層を含む。基板の上側の表面は、図2の一番下に、最も下側の線として示されている。
図2の左側に、個々の層が機能名称によって識別されている。図2の右側には、機能層を形成することができる副層の磁気特性が示されている。一般に、磁気材料は様々な磁気特性を有することができ、また、それらに限定されないが、強磁性、反強磁性及び非磁性を含む様々な用語によって分類され得る。様々なタイプの磁気材料についての説明は、本明細書においては詳細にはなされていない。しかしながら、ここでは、強磁性材料は、強磁性材料中の原子の磁気モーメントが、概して、平行で、かつ、同じ方向になるように整列する傾向があり、強磁性材料の非ゼロ正味磁気磁化をもたらす材料である、と言及しておくだけで十分であるとしておく。
【0052】
銅、銀及び金のようなほとんどの材料は、正味磁化を示さない反磁性材料である。これらの材料には、印加される(外部)磁界とは逆で、かつ、それに比例する極端に弱い磁化を示す傾向がある。反磁性材料は非磁気材料とも呼ばれる。
【0053】
反強磁性材料は、反強磁性材料中の磁気モーメントが、概して、平行で、かつ、反対方向になるように整列する傾向があり、ゼロ正味磁化をもたらす材料である。
示されているように、従来技術のGMR素子200は、基板の上に配置されたシード層202、シード層202の上に配置された反強磁性固定化層(pinning layer)204、及び反強磁性固定化層204の上に配置された固定層(pinned layer)206を含むことができる。固定層206は、第1の強磁性固定層206a、第2の強磁性固定層206c、及びそれらの間に配置されたスペーサ層206bからなり得る。
【0054】
また、従来のGMR素子200は、第2の強磁性固定層206cの上に配置されたスペーサ層208、及びスペーサ層208の上に配置された自由層210を含むことも可能である。スペーサ層206bは非磁性金属層である。また、スペーサ208も非磁性層であり、GMRの場合は金属層であり、あるいはTMRの場合は絶縁層であってもよい。自由層210は、第1の強磁性自由層210a及び第2の強磁性自由層210bからなり得る。
【0055】
キャップ層212は、GMR素子200を保護するために自由層210の上に配置され得る。
従来技術のGMR素子200の層の厚さの例は、ナノメートルの単位で示されている。従来技術のGMR素子の層の材料の例は、原子記号によって示されている。
【0056】
いくつかの層には、GMR素子200が外部磁界に遭遇しない場合の層の磁界方向の方向を示す矢印が示されている。ページから出ていく矢印は、円の中の点で示されており、また、ページの中に入る矢印は、円の中の十字で示されている。
【0057】
一番下から上に向かって層を取り上げると、シード層202は、上の層の結晶特性に影響を及ぼす基板の上に規則的な結晶構造を提供するために使用される。
反強磁性固定化層204に関して、反強磁性固定化層204内の副層(すなわち層部分)には、右矢印及び左矢印によって示されている異なる交互方向を指す磁界を有し、ゼロの正味磁界を有する反強磁性固定化層をもたらす傾向がある。反強磁性固定化層204の頂部表面には、1つの方向、ここでは左に向かって示されている方向を指す磁気モーメントを有する傾向がある。
【0058】
固定層206に関して、第1の強磁性固定層206aには、反強磁性固定化層204の頂部表面に結合する傾向があり、したがって第1の強磁性固定層206a内の磁界は、反強磁性固定化層204の頂部表面における、ここでは左に向かって示されている磁気モーメントに平行に整列され得る。
【0059】
第1の強磁性固定層206aと第2の強磁性固定層206cの間にスペーサ層206bが存在しているため、第2の強磁性固定層206cには、第1の強磁性固定層206aと反強磁性結合する傾向があり、したがって第2の強磁性固定層206cは、他の方向、ここでは右を指して示されている方向を指す磁界を有する。3つの層206a、206b、206cの組合せは、合成反強磁性構造又は層と呼ばれ得る。
【0060】
第1の自由層及び第2の自由層210a、210bは、外部磁界が存在しない場合、ページから出る方向を指すそれぞれの磁界を有する。この指示方向は、ページから出る方向指示に沿った特定の異方性を生成することによって達成され得る。その異方性は、GMR素子の形状によって生成され得る。例えば異方性は、ヨーク形状を有するようにGMR素子200(上面図)をパターン化することによって、又は結晶異方性又は磁気異方性によって生成され得る。ヨーク形状については、図5に関連して以下でより完全に説明される。ヨーク形状を生成したことにより、自由層210は優先軸(ヨーク軸)を有する。ヨーク軸が基準磁化に対して直角である場合、交差した異方性が達成され、それにより自由層異方性の次数の磁場拡張(field extension of the order of the free layer anisotropy)に対する線形応答が獲得され得る。
【0061】
動作時、従来のGMR素子200が矢印214の方向を指す外部磁界に露出されると、強磁性自由層210a、210b内の磁界は、右に向かって回転し、第2の強磁性固定層206c内の磁界指示方向とますます整列されるようになる(又は完全に整列され、すなわち右方向を指す)傾向を示す。しかしながら固定層206内の磁界は反強磁性固定化層によって固定され、回転しない。強磁性自由層210a、210b内の磁界が回転する量は、外部磁界の大きさで決まる。強磁性自由層210a、210b内の磁界と、第2の強磁性固定層206c内の磁界の方向が整列すればするほど、GMR素子200の抵抗が小さくなる傾向がある。具体的には、抵抗には、主として第1の自由層210a内、第2の(Cu)スペーサ層208内、及び第2の強磁性(例えばCoFe)固定層206c内で変化する傾向がある。
【0062】
逆に、GMR素子が矢印214とは逆の方向を指す外部磁界に露出されると、自由層210内の磁界は、左に向かって回転し、第2の強磁性固定層206c内の磁界指示方向とますます反整列される(anti−aligned)ようになる(又は完全に反整列され、すなわち左方向を指す)傾向を示す。回転する量は外部磁界の大きさで決まる。強磁性自由層210a、210b内の磁界と、第2の強磁性固定層206c内の磁界の方向が反整列すればするほど、GMR素子200の抵抗が大きくなる傾向がある。
【0063】
以上に鑑みて、図1を簡単に参照すると、外部磁界が存在しない場合、GMR素子200の抵抗は、線形領域102aの中心に存在しており、抵抗は、外部磁界214の方向に応じて、伝達特性曲線102上を右又は左へ移動することができる(すなわちより小さくなるか、又はより大きくなる)ことは理解されよう。層の全整列又は全反整列が達成されると、GMR素子200は、それぞれ下側飽和領域102e又は上側飽和領域102dに存在することになる。
【0064】
一般に、強磁性自由層210a、210bには、それらに限定されないが、磁界が第1の方向を指す第1の複数の磁気領域、及び磁界が1つ又は複数の他の方向を指す第2の複数の磁気領域を含む複数の磁気領域を自然に有する傾向がある。強磁性自由層210a、210b内の第1の複数の磁気領域は、GMR素子200が外部磁界に露出されない場合、ページから出ていくように示されている自由層210の正味磁界と整列される磁界指示方向を有するが、GMR素子200が磁界に露出されると回転することができる。上で説明したように、第1の複数の磁気領域の磁界指示方向は、外部磁界に応答して回転する。第2の複数の磁気領域には、1つ又は複数の他の方向を指す磁界指示方向を有する傾向がある。
【0065】
簡潔に言うと、図1のステップ104に関して、個々のステップは、強磁性自由層210a、210b内の正味磁界が外部磁界に応答してどこを指したとしても(すなわち回転したとしても)、第1の複数の磁気領域に存在しない(例えば第2の複数の磁気領域に存在する)磁気領域のうちの1つ又は複数、すなわち強磁性自由層210a、210b内の正味磁界の方向を指さない磁界を有する磁気領域のうちの1つ又は複数が、強磁性自由層210a、210b内の磁界の正味磁界指示方向と整列されるようになる方向に突然スナップする(すなわちジャンプする)と生成される。しかしながら、強磁性自由層210a、210b内の正味磁界の方向を指さない磁界を有する磁気領域のうちの1つ又は複数は、強磁性自由層210a、210b内の磁界の正味磁界指示方向と整列されるようになる方向によりゆっくり変化することも可能であり、その場合、図1のステップのうちの1つ又は複数の傾斜は、示されている傾斜より緩やかになるが、それでも依然として望ましくない。したがって自由層210内の正味磁界の方向以外の方向を指す自由層210内の磁気領域の数を少なくすること(すなわち第2の複数の磁気領域内の磁気領域の量を少なくすること)が望ましい。この低減により、ステップ104がより少なくなり、ステップ104がより小さくなり、又はステップ104が存在しなくなる。
【0066】
自由層の正味磁界の方向以外の方向を指す自由層210内の磁気領域の数を少なくするために、すなわちページから出る方向以外の方向を指す磁気領域の数を少なくするために、外部バイアス化磁石が使用され得る。代替として、いわゆる「二重固定」構造を使用してスタック内磁気バイアスを達成するために、複数の層が基本GMR素子200に加えられ得る。
【0067】
次に図3を参照すると、従来技術の二重固定GMR素子300は、非磁性シード層302、シード層302の上に配置された反強磁性固定化層304、固定化層304の上に配置された固定層306、固定層306の上に配置されたスペーサ層308、及びスペーサ層の上に配置された自由層310を含むことができる。いくつかの構造では、自由層310は、2つの強磁性自由層310a、310bからなり得る。いくつかの構造では、スペーサ層308は非磁性層である。
【0068】
二重固定GMR素子300は、自由層310の上に配置されたスペーサ層312、スペーサ層312の上に配置された第2の固定層314、第2の固定層314の上に配置された第2の固定化層316、及び第2の固定化層316の上に配置された非磁性キャップ層318をさらに含むことができる。いくつかの構造では、スペーサ層312は非磁性層である。
【0069】
GMR素子300の層の厚さの例は、ナノメートルの単位で示されている。GMR素子300の層の材料の例は、原子記号によって示されている。
先行技術の二重固定GMR素子300は、第2の固定層314によって生成される静磁界を達成する。第2の固定層314層は、第2の反強磁性固定化層316の底部表面に強磁性結合されており、したがって第2の固定層314内の磁界は、反強磁性固定化層316の底部表面における磁気モーメントと同じ方向、ここではページに入る方向を指して示されている方向を指す。
【0070】
第2の反強磁性固定化層316のために使用される材料は、第1の反強磁性固定化層304のために使用される材料とは異なっている。この方法によれば、2つの材料の異なる阻止温度(blocking temperatures)(IrMnの場合、230℃未満であり、また、PtMnの場合、250℃より十分に高い温度)を利用することにより、2つの層304、316の磁化が独立して操作され得る。
【0071】
第2の固定層314は、ここでは、第1の固定層306の磁界に対して直角になるように、ページに入る方向を指すように示されている方向に配向された磁界を有する。具体的には、第2の固定層314によって生成され、かつ、自由層310によって遭遇される磁界の指示方向は、自由層310の正味磁界の方向とは異なる方向を指す自由層310内の磁気領域の数の低減をもたらし、例えばページから出る方向とは異なる方向を指す磁気領域の数の低減をもたらす。
【0072】
スペーサ層312の厚さは、第2の固定層314と自由層310の間の所望の磁気結合強度を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、スペーサ層312のTaの厚さはわずか数オングストロームであり、また、結合は、スペーサ層312中のやはりピンホールを通して生じる。わずか数オングストロームの堆積の厚さは制御が困難であり、また、ピンホール密度も制御が困難であることは理解されよう。したがって第2の固定層314と自由層310の間の磁気結合の量は制御が困難である。
【0073】
GMR素子の場合、スペーサ308は金属非磁性層である(通常は銅)。TMR素子の場合、スペーサ308は絶縁非磁性層である(例えばAl2O3又はMgO)。さもなければGMR素子300は、匹敵するTMR素子と同じ、又は同様の層を有することができる。したがってTMR素子は明確には示されていない。
【0074】
次に図4を参照すると、二重固定GMR素子400の例は、基板の上に配置された複数の層を含む。基板の上側の表面は、図4の一番下に暗黒の線で示されている。
図4の左側に、個々の層が機能名称によって識別されている。図4の右側には、機能層を形成することができる副層の磁気特性が示されている。
【0075】
GMR素子400の層の厚さの例は、ナノメートルの単位で示されている。GMR素子400の層の材料の例は、原子記号によって示されている。
一般に、磁気材料は様々な磁気特性を有することができ、また、それらに限定されないが、強磁性、反強磁性及び非磁性を含む様々な用語によって分類され得る。これらのタイプの磁気材料の簡単な説明は、上で与えられている。
【0076】
示されているように、例示的GMR素子400は、図3の先行技術のGMR素子に対して上で説明した層と同じ層のいくつかを含むことができる。図3の先行技術のGMR素子と同様、例示的GMR素子400は、基板の上に配置されたシード層402、シード層402の上に配置された反強磁性固定化層404、及び反強磁性固定化層404の上に配置された固定層406を含むことができる。しかしながらいくつかの実施形態では、固定層406は、第1の強磁性固定層406a、第2の強磁性固定層406c、及びそれらの間に配置されたスペーサ層406bからなり得る。いくつかの実施形態では、スペーサ層406bは非磁気材料からなる。
【0077】
いくつかの他の実施形態では、固定層406は、上記の代わりに、図3の固定層306と同じ、又は同様の1つの固定層からなり得る。
第1の強磁性固定層406aと第2の強磁性固定層406cの間にスペーサ406bが存在しているため、第2の強磁性固定層406cには、第1の強磁性固定層406aと反強磁性結合する傾向があり、したがって第2の強磁性固定層406cは、他の方向、ここでは右を指して示されている方向を指す磁界を有する。上で説明したように、3つの層406a、406b、406cの組合せは、合成反強磁性構造又は層と呼ばれ得る。
【0078】
また、例示的GMR素子400は、第2の強磁性固定層406cの上に配置されたスペーサ層408、及びスペーサ層408の上に配置された自由層410をも含むことができる。いくつかの実施形態では、自由層410は、第2の強磁性自由層410bの下に配置された第1の強磁性自由層410aからなり得る。いくつかの実施形態では、スペーサ層408は、非磁気材料(例えばGMRの場合は導電性Cu、又はTMRの場合は絶縁材料)からなる。
【0079】
図3の先行技術のGMR素子300と同様、図4のGMR素子400は、第2の強磁性自由層410bの上に配置されたスペーサ層412、及びスペーサ層412の上に配置された第2の固定層414をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の固定層414は強磁性材料からなり得る。いくつかの実施形態では、スペーサ層412は非磁気材料(例えばRu)からなる。
【0080】
図4のGMR素子400は、第2の固定層414の上に配置された第2の反強磁性固定化層416をさらに含むことができる。
キャップ層418は、GMR素子400を保護するためにGMR素子400の頂部に配置され得る。
【0081】
いくつかの層には、GMR素子400が外部磁界に遭遇しない場合の層の磁界の方向を示す矢印が示されている。ページから出ていく矢印は、円の中の点で示されており、また、ページの中に入る矢印は、円の中の十字で示されている。
【0082】
いくつかの実施形態では、シード層402はRu又はTaからなり、また、第1の反強磁性固定化層404はPtMnからなる。いくつかの実施形態では、第1の固定層406は、CoFeからなる第1の強磁性固定層406aからなる。スペーサ層406bはRuからなり、また、第2の強磁性固定層406cはCoFeからなる。いくつかの実施形態では、スペーサ層408はCuからなる(又は別法としてはAu又はAgからなる)。いくつかの実施形態では、第1の強磁性自由層410aはCoFeからなり、また、第2の強磁性自由層410bはNiFeからなる。いくつかの実施形態では、スペーサ層412はRuからなり(又は別法としてはAu又はAgからなる)、第2の固定層414はCoFeからなり、第2の反強磁性固定化層416はPtMnからなり、また、キャップ層418はTaからなる。しかしながら他の材料も可能である。
【0083】
Ru(又はAu又はAg)からなるスペーサ層412は、スペーサ層412の実現可能な範囲の厚さを可能にし(以下で説明される)、それにより自由層420を部分的に固定することができる。部分固定化については、以下でより完全に説明される。
【0084】
いくつかの他の実施形態では、第1及び第2の反強磁性固定化層404及び416は、IrMn、FeMn又は任意の他のタイプの反強磁性材料からなり得る。図にはPtMn又はIrMnが示されており、また、以下の例にはPtMnが使用されている。いくつかの他の実施形態では、第2の固定層414は、そうではなく、第1の固定層406の副層と同じ、又は同様の複数の副層からなり得る。いくつかの他の実施形態では、スペーサ層408は、Ta又はCuからなり得る。
【0085】
スペーサ層412の厚さは、第2の固定層414と自由層410の間の所望の量の(すなわち部分)磁気結合を提供するように選択される。また、スペーサ層412の厚さは、第2の固定層414と自由層410の間の所望のタイプの磁気結合、すなわち強磁性結合又は反強磁性結合、あるいは強磁性と反強磁性の間の結合を提供するように選択される。ここでは結合は、強磁性結合になるように示されているが、結合は、スペーサ層412の厚さを選択することにより、反強磁性にすることも、あるいは強磁性と反強磁性の間の結合にすることも可能である。言い換えると、外部磁界が存在しない場合、スペーサ層412の選択された厚さに応じて、自由層410の磁界の方向を示されている方向(ページ外)又はページ中への方向のいずれかに回転させることが可能である。この特性は、図17及び20に関連して以下で説明される磁気抵抗効果素子に有用であることが示されるであろう。
【0086】
スペーサ層412がRuからなるいくつかの実施形態では、スペーサ層412の厚さは、約0.1nmから約4nmの範囲内になるように選択されるが、製造プロセスの頑丈性のためには約0.9nmと4.0nmの間であること、すなわち反復可能で、かつ、信頼性が高い厚さでスペーサ層412が堆積され得る十分な厚さであることが好ましい。いくつかの実施形態では、スペーサ層412の厚さは0.5nmより厚く、あるいは0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1.0nm又は2.0nmより厚く、すなわち図3の先行技術の二重固定GMR素子300のスペーサ層312の厚さより厚い。
【0087】
CoFe及びNiFeが同様の磁気特性を有すると見なすと、第1の強磁性自由層410aより上及び第1の強磁性自由層410aより下の材料の層は、同様であるが順序が逆であり、すなわちNiFe(又はCoFe)/Ru/CoFe/PtMnであることが認識されよう。しかしながらスペーサ層406bは、周囲の層の間の強力な結合を提供することが望ましく、したがってスペーサ層406bは薄いことが望ましく、一方、スペーサ層412は、周囲の層の間のそれほど強力ではない結合を提供することが望ましく、したがってスペーサ層412は、より厚いことが望ましい。
【0088】
Ruは、Ruの厚さに応じて、周囲の層の間の反強磁性結合又は強磁性結合(Ruderman Kittel Kasuya YoshidaすなわちRKKY結合とも呼ばれる)を可能にするため、スペーサ層412にうってつけである。本質的に、Ru材料は、その存在にもかかわらずRuを介した結合を許容する。これは、達成可能な厚さの値の範囲でより厚いRu層412を可能にし、それにより自由層410の所望の部分固定化を達成することができ、また、自由層410の所望の部分固定化を調整することができる。部分固定化については、上でより完全に説明されており、また、以下でより完全に説明される。
【0089】
それとは対称的に、図3のTaスペーサ層312は、非磁性スペーサ層としてのみ使用され、RKKY結合を提供しないことを理解されたい。本質的に、Taスペーサ層312は、自由層310を固定層314から減結合するだけである。しかしながら、上で説明したように、図4のRuスペーサ層412は、自由層410と固定層414の間のRKKY結合を提供する。
【0090】
いくつかの実施形態では、Ruスペーサ層412の厚さは、約−50mTと約50mTの間のRKKY結合を提供するように選択される。RKKY結合には、あり得るプロセス変動に関して安定になる傾向があり、すなわち結合の量には、製造プロセスの変化、等々によるRu層の約10パーセントの厚さ変化に対しても一定を維持し、かつ、安定を維持する傾向がある。
【0091】
層402〜410の動作については、図2及び3の同様の層に関連して上で説明されている。
自由層410内の磁界の指示方向と整列した固定磁界指示方向を有する第2の固定層414には、特定の挙動を自由層410内にもたらす傾向がある。具体的には、第2の固定層414内の磁界の指示方向は、自由層の正味磁界の方向以外の方向を指す自由層410内の磁気領域の数の低減、すなわち外部磁界が存在しない場合、ページから出る方向以外の方向を指す磁気領域の数の低減をもたらす。
【0092】
図2に関連して上で説明したように、一般に、強磁性自由層410a、410bには、それらに限定されないが、磁界が第1の方向を指す第1の複数の磁気領域、及び磁界が第1の方向とは異なる1つ又は複数の方向を指す第2の複数の磁気領域を含む複数の磁気領域を自然に有する傾向がある。上で説明した第1の方向は、自由層410の上側及び下側の表面に平行であってもよい。第1の複数の磁気領域は、GMR素子400が外部磁界に露出されない場合、ページから出ていくように示されている自由層410の正味磁界と整列される磁界指示方向を有するが、GMR素子400が磁界に露出されると回転することができる。上で説明したように、自由層410内の第1の複数の磁気領域の磁界指示方向は、外部磁界に応答して回転する。第2の複数の磁気領域には、第1の方向とは異なる1つ又は複数の方向を指す磁界指示方向を有する傾向がある。
【0093】
やはり図2に関連して上で説明したように、図1のステップ104に関して、個々のステップは、自由層410内の正味磁界が外部磁界に応答してどこを指したとしても(すなわち回転したとしても)、第1の複数の磁気領域に存在しない(例えば第2の複数の磁気領域に存在する)磁気領域のうちの1つ又は複数、すなわち自由層410内の正味磁界の方向を指さない磁界を有する磁気領域のうちの1つ又は複数が、自由層410内の正味磁界の磁界指示方向と整列されるようになる方向に突然スナップする(又はよりゆっくり回転する)と生成される。
【0094】
第2の固定層414は、第1の方向以外の方向、すなわち外部磁界が存在しない場合の自由層410内の正味磁界の方向以外の方向を指す自由層410内の磁気領域の数を少なくするために(すなわち第2の複数の磁気領域内の磁気領域の量を少なくするために)、スペーサ層412を介して自由層410に部分的に磁気結合するように動作することができる。この低減により、ステップ104がより少なくなり、ステップ104がより小さくなり、又はステップ104が存在しなくなる。この低減は、上記第2の複数の磁気領域内の磁気領域の量の低減を含むことができる。
【0095】
部分固定化とは、第2の固定層414と自由層410の間の磁気結合の方が、第1の固定層406と自由層410の間の磁気結合より少ないことを意味する。部分固定化の量は、部分的にはスペーサ層412の材料及び厚さによって決定される。
【0096】
PtMn第1及び第2の反強磁性固定化層404、416は、いずれも約300℃より高いネール温度及び阻止温度を有することができる。高温応用例、例えば自動車応用例におけるGMR素子400の磁気特性の損失を除去するためには、この高い温度が重要である。
【0097】
GMR素子の層は特定の順序で示されているが、他の実施形態では、層404、406(すなわち406a、406b、406c)及び408は、それぞれ層416、414、412と交換され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、図4に示されているすべての層は、シード層及びキャップ層を除き、図10に関連して以下で示されるように、一番下から一番上まで順序が逆にされ得る。
【0098】
結合強度、したがって異方性振幅は、自由層410と第2の固定層414の間の非磁性スペーサ層412によって制御される。図3の先行技術の構造では、極めて薄いTaスペーサ312が使用されている。製造においては、薄いTaスペーサ312の厚さを制御することは困難であり、したがって図3の第2の固定層314と自由層310の間の磁気結合の量を制御することは困難である。それとは対照的に、図4の構造は異なる非磁性スペーサ層412を使用し、第2の固定層414と自由層410の間の強力なRKKY結合を可能にしている。スペーサ層412には、Ru、Ag又はAuが使用され得る。
【0099】
RKKY結合は、固定層414と自由層410の間の距離が長くなるにつれて(すなわち非磁性スペーサ層412の厚さが厚くなるにつれて)小さくなり、最大反強磁性結合と最大強磁性結合の間を切り換える。結合の最小(結合の第2の最小と呼ばれる)は、これらの最大と最大の間に出現し、厚さの選択によって結合が調整され得る厚さの範囲で生じる。いくつかの実施形態では、スペーサ層412の材料は、結合の第2の最小(例えばRuの場合、1.3nm)近辺で選択されることが可能であり、それにより、単に厚さに応じて急激に結合が小さくなるだけの図2の薄いTaスペーサ312に現在使用されている堆積プロセスよりはるかに優れた再現可能堆積プロセスが得られる。
【0100】
GMR素子の場合、スペーサ層408は金属非磁性層である(通常は銅)。TMR素子の場合、スペーサ層408は絶縁非磁性層である(例えばAl2O3又はMgO)。さもなければGMR素子400は、匹敵するTMR素子と同じ、又は同様の層を有することができる。したがってTMR素子は明確には示されていない。
【0101】
次に、図4の素子と同様の素子が同様の参照名称で示されている図5を参照すると、特定の実施形態によれば、図4の磁気抵抗効果素子400、やはり図10及び11に関連して以下で説明される磁気抵抗効果素子は、ヨーク500の形状で形成され得る。断面線A−Aは、図4、10及び11の透視図を示す。
【0102】
ヨーク500は、主部分501、主部分501に結合された2つのアーム506、508、及びそれぞれ2つのアーム506、508に結合された2つの横方向アーム512、514を有する。いくつかの実施形態では、主部分501、2つのアーム506、508及び2つの横方向アーム512、514は、それぞれ幅(w)を有する。しかしながら他の実施形態では、幅は異なっていてもよい。
【0103】
ヨーク500の長さ(L)及びヨーク500の横方向アーム512、514の長さ(d)は、それぞれヨーク500の幅(w)の少なくともの3倍であり、また、ヨーク500の幅(w)は、約1μmと約20μmの間であってもよい。
【0104】
ヨーク寸法は、例えば以下の範囲内であってもよい。
− ヨーク500の主部分501の長さ(L)は、約10μmと約10ミリメートルの間であってもよい。
【0105】
− ヨーク500のアーム506、508の長さ(l)は、幅(w)の少なくとも3倍であってもよい。
− ヨーク500の幅(w)は、約1μmと約20μmの間であってもよい。
【0106】
ヨーク500のアーム506、508は、主部分501に平行で、全体の長さ(L)の約1/4と1/3の間である長さlを有する横方向アーム512、514に連結されている。
【0107】
一般に、ヨーク形状500を有する磁気抵抗効果素子400の感度は、幅(w)と共に鈍くなり、また、磁気抵抗効果素子400の低周波雑音は、幅(w)と共に大きくなる。
ヨーク形状は、主部分501の縦方向の中央領域により良好な磁気均質性を提供する。これは、主として主部分501に沿っているヨーク長の減磁界によるものであり、また、これは、ヨーク500の長さに沿ったゼロ磁界における磁化として理解され得る図4の自由層410の異方性を誘導する。固定層(例えば図4の406)がヨークに対して直角の磁界(例えば矢印502)を有する場合、矢印502の方向に外部磁界が印加されると、自由層410の磁化が一様に、すなわち領域をジャンプすることなく回転する。自由層410の磁化の均質な回転は、応答にステップがない応答曲線をもたらす(例えば図1参照)。
【0108】
GMR素子の場合、スタック全体がヨーク形状で設計され得るが、TMR素子の場合、いくつかの実施形態では、ヨーク形状を有することができるのは自由層のみである。
他の実施形態では、GMR素子又はTMR素子400は、ヨークの形では形成されず、その代わりに、例えば寸法L及びwを有する直線バーの形で形成され、寸法l及びdに関連する特徴は有していない。バー形GMR素子又はTMR素子の場合でも、依然として断面線A−Aは、図4のGMR素子400又は図10及び11の磁気抵抗効果素子の断面を表している。
【0109】
次に図6を参照すると、磁界センサ600は、1つ又は複数の磁気抵抗効果素子を含むことができる。ここでは、図4に関連して上で説明したタイプの素子であっても、又は図10、11、12、17又は20に関連して以下で説明されるタイプの素子であってもよい4つの磁気抵抗効果素子が共通基板の上に配置されている。4つの磁気抵抗効果素子は、ブリッジで配置され得る。他の電子構成要素(図示せず)、例えば増幅器及びプロセッサ、すなわち電子回路も共通基板の上に統合され得る。いくつかの実施形態では、電子回路は、対象、例えば602の運動、例えば回転を示す出力信号を生成することができる。
【0110】
取り囲んでいるパッケージ(図示せず)、例えばプラスチックパッケージは、磁界センサ600を取り囲むことができ、又は別の形で磁界センサ600と共に含まれ得る。また、リードフレーム(図示せず)も磁界センサ600に結合され得るか、又は別の形で磁界センサ600と共に含まれ得る。
【0111】
磁界センサ600は、可動磁気対象、例えば磁北極及び磁南極を交互に有する輪形磁石602の近傍に配置され得る。輪形磁石602は回転対象である。
磁界センサ600は、輪形磁石の少なくとも回転速度を表す出力信号を生成するように構成され得る。いくつかの構造では、輪形磁石602は、ターゲット対象、例えばエンジン内のカム軸に結合され、知覚された輪形磁石602の回転速度は、ターゲット対象の回転速度を表す。
【0112】
磁界センサ600は、回転検出器として使用されているが、他の同様の磁界センサ、例えば図4、10、11、12、17又は20の1つ又は複数の磁気抵抗効果素子を有する電流センサも実現され得ることを理解されたい。
【0113】
図7は、半導体製造設備を使用して実施されることになる、以下で企図されている技法に対応するフローチャートを示したものであることを理解されたい。本明細書においては「処理ブロック」を表す長方形の要素(図7の要素704によって代表される)は、プロセスステップを表している。
【0114】
別段本明細書に記されていない限り、説明されているブロックの特定のシーケンスは例示的なものにすぎず、本発明の精神から逸脱することなく変更され得ることは当業者には理解されよう。したがって別段言及されていない限り、以下で説明されるブロックは順序不定であり、可能である場合、ステップは、任意の好都合の順序又は望ましい順序で実行され得ることを意味している。
【0115】
ここで図7を参照すると、上記図4における二重固定GMR素子を製造するための例示的プロセス700はブロック702で始まり、図4の全スタック400、又は以下の図10又は11(図12、17、20も)の磁気抵抗効果素子が逐次堆積ステップで堆積される。この堆積は、ブロック704のパターン化プロセスによって継続され得る。パターン化により、例えば図5のヨーク形状を得ることができる。
【0116】
ブロック704のパターン化の後、ブロック706で、処理されたウェーハに第1の焼きなましが適用され、第1の固定層(例えば図4の406)内の磁界の方向、及びやはり第1の反強磁性層(例えば図4の404)内の方向が画定される。典型的には焼きなましは温度T1で実行され、磁界H1がウェーハに平行に、また、例えば図5の矢印502に平行に印加される。この焼きなましは、例えば295℃における1Tの磁界の下で1時間の継続期間を有することができるが、これらの値は、スタックの組成、すなわち層の材料に適合される。
【0117】
ブロック706のこの第1の焼きなましの後、ブロック708で、第2の固定層(例えば図4の414)及び第2の反強磁性層(例えば図4の416)の磁化を画定するために第2の焼きなましが実行され、この第2の焼きなましは、第1の固定層(例えば図4の406)内の磁界の方向、及び第1の反強磁性層(例えば図4の404)内の方向に対して直角に配向される第2の固定層内及びやはり第2の反強磁性層内に磁界を提供する。この焼きなましステップは、例えば、T1に等しくてもよい温度T2で、かつ、磁界H1より小さい磁界H2で1時間の継続期間を有することができる。磁界H2は、図5の矢印504に平行の方向に印加され得る。このステップは、第1の固定層(例えば図4の406)の磁化方向及び値を変えることなく、第2の固定層(例えば図4の414)の磁化を配向することを意味している。
【0118】
2つのPtMn固定化層404、416を有する図4の二重固定層構造に対する値の例及び値の範囲の例は、以下の表1に挙げられている。
【0119】
【表1】
【0120】
次に、図7の要素と同様の要素が同様の参照名称で示されている図8及び9を参照すると、同様のプロセス800、900が図7のステップに従ってやはり適用され得るが、示されているように順序が異なっている。
【0121】
プロセス700、800、900のすべてにおいて、第2の焼きなましの間に印加される磁界H2は、H1より小さく、また、別の方向、好ましくはH1に対して直角の方向に印加される。
【0122】
次に、図4の素子と同様の素子が同様の参照名称で示されている図10を参照すると、二重固定GMR素子1000は、図4の層404、406、408、412、414及び416を有するが、図4に関連して上で説明した順序とは逆に積み重ねられている。固定化層416はこの場合も、PtMn、IrMn、FeMn又は任意の他のタイプの反強磁性材料からなり得るが、図にはPtMn又はIrMnが示されており、また、以下の例にはIrMnが使用されている。(PtMnは、図4及び7〜9に関連する例に対して使用されている。)
図4の二重固定GMR素子400とは異なり、部分固定化のための上で説明した望ましい特性を提供する、上で説明した非磁性層412は、自由層412の上ではなく、自由層412の下に存在している。
【0123】
固定化層416がIrMnからなる場合、GMR素子1000の反転積重ねは、場合によっては好ましいことを理解されたい。図4のGMR素子400の場合、固定化層416にIrMnが使用されていると、固定化層416は、恐らくCoFe固定層414の上に堆積されていたことになり、それは望ましくない。IrMnは良好に成長しないこと、すなわち単独又は他の層と組み合わせたCoFe層の上で成長すると、規則的な結晶構造で成長しないことが識別されている。しかしながらIrMn層416は、シード層402の上では良好に成長する。
【0124】
それぞれ図4及び10の二重固定GMR素子400及び1000の場合、層406a、406b、406cは、層406a、406cが反強磁性結合される(すなわち逆方向の磁界を有する)いわゆる「合成反強磁性体」(SAF)構造を形成することを理解されたい。したがって固定層406はSAF構造を形成する。一方、固定層414は単一の層である。
【0125】
固定層として使用されるSAF構造は、単一の層として形成される固定層よりも安定であることが観察されている。具体的には、磁界(例えば180℃、0.2T)を有する極めて高い温度の貯蔵寿命(VTSL:Very high Temperature Storage Life)状態の下では、単層固定層には、VTSL状態が除去された後でも、外部磁界の方向と整列されるようになる傾向、すなわち外部磁界の方向に向かって回転する傾向があり、したがって最初に焼きなまされた方向から回転し得る。この望ましくない回転は、GMR素子の感度を鈍くすることがあり、さらにはその動作特性曲線の部分にわたってGMR素子が無感覚になることがある。
【0126】
それとは対照的に、固定層として使用されるSAF構造は、より安定であり、同じVTSL状態が存在してもそれほどには回転せず、より容易に元の位置に戻る(すなわちヒステリシスが小さい)傾向を示すことも観察されている。そのために、以下で説明される図11では、図4及び10の単層固定層414は、SAF構造に置換され得る。したがって自由層410は、2つの固定層として使用される2つのSAF構造で取り囲まれ得る。
【0127】
次に、図4及び10の素子と同様の素子が同様の参照名称で示されている図11を参照すると、二重固定GMR素子1100は、図10の単層固定層414がSAF構造1102に置換されていることを除き、図10の二重固定GMR素子1000と類似している。いくつかの実施形態では、SAF構造1102は、第1の強磁性固定層1102a、第2の強磁性固定層1102c、及びそれらの間に配置されたスペーサ層1102bからなり得る。いくつかの実施形態では、スペーサ層1102bは非磁気材料からなる。
【0128】
自由層410は、いずれもSAF構造である固定層406、1102によって取り囲まれていることを明確にされたい。スペーサ層412、408は、自由層410と、それぞれSAF構造1102、206の間に配置されている。
【0129】
また、反強磁性固定化層416の上側の表面は、図10の固定化層416の上側の表面とは逆の方向の磁界を有することをも明確にされたい。
2つのSAF構造内のスペーサ層406b、1102b(本明細書においては非磁性層とも呼ばれる)は、周囲の強磁性層406a、406bと1102a、1102bの間の強力な反強磁性結合をもたらすように選択される材料及び厚さを有する。
【0130】
二重固定GMR素子1100は、VTSL状態に関して、図10の二重固定GMR素子1000又は図4の二重固定GMR素子400より高い安定性を有することが観察されている。
【0131】
図10の二重固定GMR素子1000の場合と同様、部分固定化のための上で説明した望ましい特性を提供する、上で説明した非磁性層412は、自由層412の上ではなく、自由層412の下に存在している。しかしながら他の実施形態では、キャップ層418とシード層402の間のすべての層は、その位置が反転され得る。
【0132】
シード層402及びキャップ層418以外のすべての層の反転積重ねは、図4の二重固定GMR素子と同様ではあるが、様々な層が反転され、さらに図4の固定層414が図11のSAF構造1102に置換された二重固定GMR素子を提供することができることを明確にされたい。
【0133】
図4、10及び11には特定の層厚さが示されているが、いくつかの層の厚さは、より敏感な二重固定GMR素子を提供するために操作され得ることは理解されよう。
上記図7を簡単に参照すると、PtMn固定化層404及びPtMn固定化層416、すなわち2つのPtMn固定化層を有する図11の二重固定層構造を焼きなますための典型的な値が以下の表2に示されている。
【0134】
表2の場合、また、図11の二重固定GMR素子の場合、温度T1、磁界H1及び継続期間1は、PtMn反強磁性層404及びSAF構造406の焼きなましを意味している。温度T2、磁界H2及び継続期間2は、PtMn反強磁性層416及びSAF構造1102の焼きなましを意味している。
【0135】
【表2】
【0136】
上記図7をもう一度簡単に参照すると、PtMn固定化層404及びIrMn固定化層416を有する図4、10及び11の二重固定層構造を焼きなますための典型的な値が以下の表3に示されている。
【0137】
表3の場合、また、図4及び10の二重固定GMR素子の場合、温度T1、磁界H1及び継続期間1は、PtMn反強磁性層404及び固定層406の焼きなましを意味している。温度T2、磁界H2及び継続期間2は、IrMn反強磁性層416及び関連する固定層414の焼きなましを意味している。
【0138】
表3の場合、また、図11の二重固定GMR素子の場合、温度T1、磁界H1及び継続期間1は、PtMn反強磁性層404及び固定(SAF)構造406の焼きなましを意味している。温度T2、磁界H2及び継続期間2は、IrMn反強磁性層416及び固定(SAF)構造1102の焼きなましを意味している。
【0139】
【表3】
【0140】
上では二重固定GMR素子が説明されているが、二重固定構造は、追加固定化層及び/又は固定層を有する構造の一部であってもよいことを理解されたい。
次に、図4及び11と同様の要素は同様の参照名称で示されている図12を参照すると、二重固定GMR素子1200は、図11の層404、406、408、412、1102及び416を有するが、図11に関連して上で説明した順序とは逆の順序で積み重ねられている。固定化層416は、この場合もPtMn、IrMn、FeMn又は任意の他のタイプの反強磁性材料からなり得るが、図にはPtMn又はIrMnが示されており、また、以下の例にはIrMnが使用されている。(PtMnは、例えば図4及び7〜9に関連して使用されている)。
【0141】
図11の二重固定GMR素子1100とは異なり、部分固定化のための上で説明した望ましい特性を提供する、上で説明した非磁性層412は、自由層410の下ではなく、自由層410の上に存在している。
【0142】
固定化層416がIrMnからなる場合、GMR素子1100の非反転積重ねは、場合によっては好ましいことを理解されたい。図12の反転積重ねGMR素子1200の場合、固定化層416にIrMnが使用されていると、固定化層416は、恐らくCoFe固定層1102aの上に堆積されていたことになり、それは望ましくない。IrMnは良好に成長しないこと、すなわち単独又は他の層と組み合わせたCoFe層の上で成長すると、規則的な結晶構造で成長しないことが識別されている。しかしながらIrMn層416は、シード層402の上では良好に成長する。
【0143】
それぞれ図11及び12の二重固定GMR素子1100及び1200の場合、構造406、1102は、上で説明したいわゆる「合成反強磁性体」(SAF)構造を形成することを認識されたい。
【0144】
次に図13を参照すると、グラフ1300は、エルステッドの磁界単位のスケールを有する水平軸、及びオームの抵抗単位のスケールを有する垂直軸を有する。
本明細書において使用されるとき、磁気抵抗効果素子を参照する場合、「横」という用語は、例えば図5の矢印502の方向における図5のヨーク500のより長い寸法に対して直角の磁界を意味するために使用される。また、この方向は、自由層又は自由層構造420中の磁界の方向に対して概ね直角であってもよいが、上で説明した不整列の対象となり得る。
【0145】
本明細書において使用されるとき、磁気抵抗効果素子を参照する場合、「縦」という用語は、例えば図5の矢印504の方向における図5のヨーク500のより長い寸法に対して平行の磁界を意味するために使用される。また、この方向は、自由層又は自由層構造420中の磁界の方向に対して概ね平行であってもよいが、上で説明した不整列の対象ともなり得る。
【0146】
それぞれ「順」及び「逆」として識別されている2つの曲線1302、1304は、図4の磁気抵抗効果素子400に対して横方向の磁界の伝達曲線を表している。
横方向であれ、縦方向であれ、本明細書において、順方向に対して「順」及び「逆」として識別される曲線は、正の値から負の値まで磁界強度で掃引する磁界を示す。逆方向の場合、曲線は、本明細書における曲線によって表される横方向又は縦方向のいずれかの方向を維持しつつ、負の値から正の値まで磁界強度で掃引する磁界を示す。
【0147】
図13の順横伝達曲線及び逆横伝達曲線1302、1304は、ゼロエルステッドの磁界の周りに対称ではないことが分かる。通常、非対称は、図5のヨーク500の横方向との図4の固定層406の不整列によってもたらされ、延いては自由層構造410の不整列をもたらすことがある。
【0148】
次に図14を参照すると、グラフ1400は、エルステッドの磁界単位のスケールを有する水平軸、及びオームの抵抗単位のスケールを有する垂直軸を有する。
それぞれ「順」及び「逆」として識別されている2つの曲線1402、1404は、図4の磁気抵抗効果素子400に対して縦方向の磁界の伝達曲線を表している。2つの曲線1402、1404はピークを有する。
【0149】
図14の順縦伝達曲線及び逆縦伝達曲線は、ゼロエルステッドの磁界の周りに対称ではないこと、すなわちピークはゼロエルステッドには存在しないことが分かる。図14の縦伝達曲線の非対称性は、図4の二重固定構造400のスタック内磁気バイアスの存在によってもたらされることがあり、これは、同じ振幅を有する外部磁界が逆方向に印加されると相殺される。
【0150】
次に図15を参照すると、グラフ1500は、エルステッドの磁界単位のスケールを有する水平軸、及びオームの抵抗単位のスケールを有する垂直軸を有する。
それぞれ「順」及び「逆」として識別されている2つの曲線1502、1504は、図10の磁気抵抗効果素子1000、すなわち図4の磁気抵抗効果素子400に対して逆に積み重ねられた層に対して横方向の磁界の伝達曲線を表している。しかしながら図15の順横伝達曲線及び逆横伝達曲線1502、1504の場合、スペーサ層412は、磁気抵抗効果素子1000に対して示されている厚さとは異なる厚さであって、自由層構造410への固定層412の異なる結合、すなわち図10の磁気抵抗効果素子1000のページ中への方向における結合を達成するように選択される厚さを有する。選択された異なる厚さのスペーサ層412及び関連する異なる結合、すなわち強磁性又は反強磁性については、図4に関連して上で説明されている。スペーサ層412の厚さのさらなる詳細について、以下、図17及び20に関連して説明する。
【0151】
図15のそれぞれ順横伝達曲線及び逆横伝達曲線1502、1504は、ゼロエルステッドの磁界の周りに対称ではないことが分かる。また、図13の順横伝達曲線及び逆横伝達曲線1302、1304、及び図15の順横伝達曲線及び逆横伝達曲線1502、1504は、一方は左側へ、また、もう一方は右側へ、中心から反対方向にオフセットされていることが分かる。
【0152】
次に図16を参照すると、グラフ1600は、エルステッドの磁界単位のスケールを有する水平軸、及びオームの抵抗単位のスケールを有する垂直軸を有する。
それぞれ「順」及び「逆」として識別されている2つの曲線1602、1604は、図10の磁気抵抗効果素子1000、すなわち図4の磁気抵抗効果素子400に対して逆に積み重ねられた層に対して縦方向の磁界の伝達曲線を表している。しかしながら図15に関連して上で説明したように、順縦伝達曲線及び逆縦伝達曲線の場合、スペーサ層412は、自由層構造410への固定層412の異なる結合、すなわち図10の磁気抵抗効果素子1000のページ中への方向における結合を達成するように選択される厚さを有する。
【0153】
図16のそれぞれ順曲線及び逆曲線1602、1604は、ゼロエルステッドの磁界の周りに対称ではないこと、すなわちノッチはゼロエルステッドには存在しないことが分かる。また、図14の順縦伝達曲線及び逆縦伝達曲線1404、1404、及び図16の順横伝達曲線及び逆横伝達曲線1602、1604(1つはピーク、1つはノッチ)は、一方は左側へ、また、もう一方は右側へ、中心から反対方向にオフセットされていることが分かる。
【0154】
図13〜16の任意の伝達曲線の結果は、回転磁界(上の例に使用されている固定方向磁界ではなく)が存在する場合、電子回路に使用される場合における図4及び10の磁気抵抗効果素子400又は1000の抵抗、及び結果として得られる電圧は、無ひずみ正弦波特性に従わないことである。本質的には、結果として得られる電圧は、50パーセント以外のデューティサイクルを有することができる。
【0155】
伝達関数の同様の非対称性は、図11の二重SAF磁気抵抗効果素子1100及び図12の反転二重SAF磁気抵抗効果素子1200によってもたらされることがあることを理解されたい。
【0156】
非50パーセントデューティサイクルは望ましくないことがあり得る。50パーセントに近いより無矛盾のデューティサイクルを提供するために、いわゆる「デュアルスピンバルブ」磁気抵抗効果素子について、以下、図17及び20を参照して説明する。
【0157】
以下で説明されるデュアルスピンバルブは、図4、10及び11(また12)に関連して上で説明した他の利点をも有する。すなわちデュアルスピンバルブを、上で説明したRu層を有する特定の二重固定構造(例えば412)によって生成される部分固定と共に組み込むことにより、図1の伝達関数のステップの雑音が低減され、あるいは除去され得る。
【0158】
次に図17を参照すると、デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子1700は、図4の二重固定磁気抵抗効果素子400の部分(シード層402又はキャップ層418は含まない)のような部分1702、及び図10の反転二重固定磁気抵抗効果素子1000の部分(シード層402又はキャップ層418は含まない)のような部分1704をも含む。共通反強磁性固定化層1706は中央に置くことができる。
【0159】
デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子1700は、2つの自由層構造を有することができ、そのスペーサ層1708、1710は、これらの2つの自由層構造への結合が異なり、したがってこれらの2つの自由層構造が図に示されているように逆方向の磁界を有することになるように選択される異なる厚さを有する。これらの2つの自由層構造中の磁界の方向は、図に示されている方向とは逆にされ得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、スペーサ層1710は、2つの範囲例、例えば約1.0nmから約1.7nm又は約2.3nmから約3.0nmのうちのいずれかになり、したがってスペーサ層1710と隣接する下方の自由層構造との間が強磁性結合になり得る厚さを有する。
【0161】
いくつかの実施形態では、スペーサ層1708は、2つの範囲例、例えば約1.7nmから約2.3nm又は約3.0nmから約3.7nmのうちのいずれかになり、したがってスペーサ層1708と隣接する上方の自由層構造との間が反強磁性結合になり得る厚さを有する。
【0162】
いくつかの他の実施形態では、2つの範囲は、上記の代わりに約0.7nmから約1.0nm又は約3.0nmから約3.7nmであってもよい。
したがって2つの自由層構造は、公称方向が逆方向を指示する磁界を有することが認識されよう。これは、2つの個別の磁気抵抗効果素子(400及び修正された1000)に関連する図15及び16の伝達曲線と相俟った図13及び14の伝達曲線に類似している。
【0163】
さらに、2つのスペーサ層1708、1710の厚さを選択することにより、2つの結合、すなわち強磁性結合及び反強磁性結合は、逆方向のほぼ同じ大きさを有することができる。
【0164】
デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子1700の動作は、図4の磁気抵抗効果素子400及び図10の磁気抵抗効果素子1000の直列スタック組合せと極めてよく似た動作をするが、結果として得られる2つのスペーサ層1702、1704(図4及び10の412)は、下方の自由層構造に対しては強磁性結合であり、また、上方の自由層構造に対しては反強磁性結合になるように選択された厚さを有することをさらに認識されたい。
【0165】
いくつかの代替実施形態では、スペーサ層1708は、スペーサ層1710の厚さを有することができ、また、その逆についても真である。
デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子1700は、2つの合成反強磁性体(SAF)固定構造、また2つの他の固定層(すなわち単層固定層)を有することができる。
【0166】
2つの合成反強磁性体(SAF)固定構造、また2つの他の固定層は、本明細書においてはいずれも固定層構造と呼ばれている。
次に図18を参照すると、グラフ1800は、エルステッドの磁界単位のスケールを有する水平軸、及びオームの抵抗単位のスケールを有する垂直軸を有する。
【0167】
それぞれ「順」及び「逆」として識別されている2つの曲線1802、1804は、図17のデュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子1700に対して横方向の磁界の伝達曲線を表している。
【0168】
図18の順横伝達曲線及び逆横伝達曲線1802、1804は、ゼロエルステッドの磁界の周りに概ね対称であることが分かる。
次に図19を参照すると、グラフ1900は、エルステッドの磁界単位のスケールを有する水平軸、及びオームの抵抗単位のスケールを有する垂直軸を有する。
【0169】
それぞれ「順」及び「逆」として識別されている2つの曲線1902、1904は、図17のデュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子1700に対して縦方向の磁界の伝達曲線を表している。2つの曲線1902、1904は、ピーク及びノッチを有する。
【0170】
図19の順縦伝達曲線及び逆縦伝達曲線1902、1904は、ゼロエルステッドの磁界の周りに概ね対称であることが分かる。
図18及び19の横伝達曲線及び縦伝達曲線は、ゼロエルステッドの磁界の周りに概ね対称であるため、回転磁界が存在する場合、結果として得られる電子回路の抵抗特性及び電圧特性は、磁気抵抗効果素子400、1000の場合よりも、より対称性の正弦波形状及びより50パーセントに近いデューティサイクルを有することができる。
【0171】
また、上で説明したように、デュアルスピンバルブを、上で説明した特定のRu層1708、1710によって生成される部分固定と共に組み込むことにより、図1の伝達関数のステップの雑音が低減され、あるいは除去され得る。
【0172】
次に図20を参照すると、デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000は、図12の反転二重固定磁気抵抗効果素子1200の部分(シード層402又はキャップ層418は含まない)のような部分2002、及び図11の二重固定磁気抵抗効果素子1100の部分(シード層402又はキャップ層418は含まない)のような部分2004をも含む。共通反強磁性固定化層2006は中央に置くことができる。
【0173】
デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000は、2つの自由層構造を有することができ、そのスペーサ層2008、2010は、自由層構造への結合が異なり、したがってこれらの2つの自由層構造が図に示されているように逆方向の磁界を有することになるように選択される異なる厚さを有することができる。これらの2つの自由層構造中の磁界の方向は、図に示されている方向とは逆にされ得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、スペーサ層2010は、2つの範囲例、例えば約1.0nmから約1.7nm又は約2.3nmから約3.0nmのうちのいずれかになり、したがってスペーサ層2010と隣接する下方の自由層構造との間が強磁性結合になり得る厚さを有することができる。
【0175】
いくつかの実施形態では、スペーサ層2008は、2つの範囲例、例えば約1.7nmから約2.3nm又は約3.0nmから約3.7nmのうちのいずれかになり、したがってスペーサ層2009と隣接する上方の自由層構造との間が反強磁性結合になり得る厚さを有する。
【0176】
したがって2つの自由層構造は、逆方向の公称方向を有することが認識されよう。これは、図13及び15並びに図15及び16の伝達曲線の組合せに類似しているが、2つの個別の磁気抵抗効果素子(1000及び1100)に関連している。
【0177】
さらに、2つのスペーサ層2008、2010の厚さを選択することにより、2つの結合、すなわち反強磁性結合及び強磁性結合は、逆方向のほぼ同じ大きさを有することができる。
【0178】
デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000の動作は、図11の磁気抵抗効果素子1100及び図12の磁気抵抗効果素子1200の直列スタック組合せと極めてよく似た動作をするが、結果として得られる2つのスペーサ層2002、2004(図11及び12の412)は、下方の自由層構造に対しては強磁性結合であり、また、上方の自由層構造に対しては反強磁性結合になるように選択された厚さを有することをさらに認識されたい。
【0179】
いくつかの代替実施形態では、スペーサ層2010は、スペーサ層2008の厚さを有することができ、また、その逆についても真である。
デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000は、4つの合成反強磁性体(SAF)固定構造を有する。したがってデュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000には2つの二重固定構造が存在している。
【0180】
4つの合成反強磁性体(SAF)固定構造は、本明細書においては固定層構造と呼ばれている。
伝達曲線18、19は、デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000の動作を示している。図20のデュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000の利点については、図17に関連して上で説明されている。デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000を使用することによって他の利点が得られる。すなわち追加SAFを使用することにより、図11に関連して上で説明した様々な安定性改善がデュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子2000内でも得られる。
【0181】
それぞれ図17及び20の磁気抵抗効果素子1700及び2000の中に2つの自由層構造を使用することによってさらに他の利点が誘導される。すなわちより高い磁気抵抗比、すなわち磁界に対するより高い感度が達成される。
【0182】
図17及び20の構造から、上で説明した改善されたデューティサイクルを達成するために、任意の偶数個の自由層構造、任意の偶数個の固定層及び任意の偶数個の選択可能厚さスペーサ層、例えば1708、1710、2008、2010が存在し得ることを認識されたい。したがって本明細書において説明されている構造はデュアルスピンバルブ構造に限定されない。構造は、磁気抵抗効果素子を達成するために、クワッドスピンバルブ及びもっと多くのスピンバルブをスタック構造で含むことができる。
【0183】
図4、10、11、12、17及び20には層の特定の厚さが示されているが、いくつかの層の厚さは異なり得ることは理解されよう。
図4、10、11、12、17及び20には特定のシーケンスの層が示されているが、介在する他の層、例えば示されている任意の2つ又はそれ以上の層の間に他のスペーサ層が存在し得ることを認識されたい。また、図4、10、11、12、17及び20に示されている層の上又は下には他の層が存在し得る。
【0184】
互いの上に存在する層を説明する場合の「の上」という用語は、一連の層を示すために使用されており、必ずしも直接接触している層を示すために使用されているわけではない。互いの上に存在している層は、互いに介在する層を含むことができる。
【0185】
表1、2及び3による焼きなまし、及び図7、8及び9によるステップは、それぞれ図17及び20のデュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子1700及び2000にも適用され、また、スタック構造におけるもっと多くのスピンバルブにも適用される。これらの構造のすべてに対して、2つの焼きなましステップが、固定層構造中、及び互いに対して90度で配向されるデュアルスピンバルブ構造(又は積み重ねられたもっと多くのスピンバルブ)の個々の部分における周囲の固定化層に磁界を提供する。
【0186】
次に図21を参照すると、従来技術のデュアルスピンバルブ2100は、デュアルスピンバルブ磁気抵抗効果素子1700又は2000に対して上で説明した利点をそれほどには多く有していない。特に、従来技術のデュアルスピンバルブ2100は、共通の中央反強磁性固定化層(例えば図17及び20の1706、2006)を有しておらず、また、それぞれの自由層構造への異なる結合(強磁性及び反強磁性)を提供するスペーサ層(例えば1708、1710、2008、2010)を有していない。
【0187】
以下の特許出願、2014年8月6日に出願した米国特許出願第14/452783号、2014年10月31日に出願した米国特許出願第14/529564号及び2015年1月7日に出願した米国特許出願第14/591213号は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0188】
本明細書に記載されているすべての参考文献は、参照によりそれらのすべてが本明細書に組み込まれている。
以上、本特許の主題である様々な概念、構造及び技法を例示する働きをしている好ましい実施形態について説明したが、これらの概念、構造及び技法を組み込んだ他の実施形態が使用され得ることがもはや明らかであろう。したがって本特許の範囲は、説明されている実施形態に限定されてはならず、むしろ以下の特許請求の範囲の精神及び範囲によってのみ制限されるべきものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21