【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、独立請求項において、磁気共鳴撮像システム、方法およびコンピュータ・プログラム・プロダクトを提供する。実施形態は従属請求項において与えられる。
【0012】
当業者には理解されるであろうが、本発明の諸側面は装置、方法またはコンピュータ・プログラム・プロダクトとして具現されうる。よって、本発明の諸側面は完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)または本稿でみな一般に「回路」「モジュール」または「システム」として言及されうるソフトウェアおよびハードウェア側面を組み合わせた実施形態の形を取ることができる。さらに、本発明の諸側面は、コンピュータ実行可能なコードが具現されている一つまたは複数のコンピュータ可読媒体において具現されるコンピュータ・プログラム・プロダクトの形を取ることができる。
【0013】
一つまたは複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用されてもよい。コンピュータ可読媒体はコンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体でありうる。本稿で使われるところの「コンピュータ可読記憶媒体」は、コンピューティング装置のプロセッサによって実行可能な命令を記憶しうる任意の有体の記憶媒体を包含する。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読な非一時的な記憶媒体と称されることもある。コンピュータ可読記憶媒体は、有体なコンピュータ可読媒体と称されることもある。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピューティング装置のプロセッサによってアクセスされることができるデータを記憶できてもよい。コンピュータ可読記憶媒体の例は、フロッピーディスク、磁気ハードディスクドライブ、固体ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスクおよびプロセッサのレジスタ・ファイルを含むがこれに限られない。光ディスクの例は、コンパクトディスク(CD)およびデジタル多用途ディスク(DVD)、たとえばCD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RWまたはDVD-Rディスクを含む。コンピュータ可読記憶媒体の用語は、ネットワークまたは通信リンクを介してコンピュータ装置によってアクセスされることのできるさまざまな型の記録媒体をも指す。たとえば、データはモデムを通じて、インターネットを通じてまたはローカル・エリア・ネットワークを通じて取得されてもよい。コンピュータ可読媒体上に具現されるコンピュータ実行可能コードは、無線、有線、光ファイバーケーブル、RFなどを含むがそれに限られない任意の適切な媒体または上記の任意の好適な組み合わせを使って伝送されうる。
【0014】
コンピュータ可読信号媒体は、たとえばベースバンドにおいてまたは搬送波の一部としてコンピュータ実行可能コードが具現されている伝搬されるデータ信号を含みうる。そのような伝搬される信号は、電磁、光またはその任意の好適な組み合わせを含むがそれに限られない多様な形の任意のものを取りうる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置またはデバイスによってまたは命令実行システム、装置またはデバイスとの関連で使用されるためのプログラムを通信する、伝搬させるまたは転送することができる任意のコンピュータ可読媒体でありうる。
【0015】
「コンピュータ・メモリ」または「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の例である。コンピュータ・メモリは、プロセッサにとって直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータ記憶」または「記憶」はコンピュータ可読記憶媒体のさらなる例である。コンピュータ記憶は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。いくつかの実施形態では、コンピュータ記憶はコンピュータ・メモリであってもよいし、逆にコンピュータ・メモリがコンピュータ記憶であってもよい。
【0016】
本稿で用いるところの「プロセッサ」は、プログラムまたは機械実行可能な命令またはコンピュータ実行可能コードを実行できる電子コンポーネントを包含する。「プロセッサ」を有するコンピューティング装置への言及は、二つ以上のプロセッサまたは処理コアを含む可能性があると解釈されるべきである。プロセッサはたとえば、マルチコア・プロセッサであってもよい。プロセッサはまた、単一コンピュータ・システム内のまたは複数のコンピュータ・システムの間に分散されたプロセッサの集まりを指すこともある。コンピューティング装置という用語は、それぞれが単数または複数のプロセッサを有するコンピューティング装置の集合またはネットワークを指す可能性もあると解釈されるべきである。コンピュータ実行可能コードは、同じコンピューティング装置内にあってもよく、または複数のコンピューティング装置の間に分散されていてもよい複数のプロセッサによって実行されてもよい。
【0017】
コンピュータ実行可能コードは、プロセッサに本発明のある側面を実行させる機械実行可能な命令またはプログラムを含んでいてもよい。本発明の側面のための動作を実行するためのコンピュータ実行可能コードは、ジャバ、スモールトーク、C++などといったオブジェクト指向プログラミング言語および「C」プログラミング言語といった従来型の手続き型プログラミング言語または同様のプログラミング言語を含む、一つまたは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれてもよく、機械実行可能な命令にコンパイルされてもよい。いくつかの事例では、コンピュータ実行可能コードは高水準言語の形であっても、あるいは事前コンパイルされた形であってもよく、オンザフライで機械実行可能な命令を生成するインタープリターとの関連で使われてもよい。
【0018】
コンピュータ実行可能コードは、完全にユーザーのコンピュータ上で、部分的にユーザーのコンピュータ上で、スタンドアローンのソフトウェア・パッケージとして、部分的にはユーザーのコンピュータ上で部分的にはリモート・コンピュータ上で、あるいは完全にリモート・コンピュータまたはサーバー上で実行されうる。この最後のシナリオでは、リモート・コンピュータはユーザーのコンピュータに、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を含む任意の型のネットワークを通じて接続されてもよく、あるいは(たとえばインターネット・サービス・プロバイダーを使ってインターネットを通じて)外部コンピュータに接続がされてもよい。
【0019】
本発明の諸側面は、本発明の実施形態に基づく方法、装置(システム)およびコンピュータ・プログラム・プロダクトのフローチャート図および/またはブロック図を参照して記述される。フローチャート、図および/またはブロック図の各ブロックまたはブロックの一部は、適用可能な場合にはコンピュータ実行可能コードの形のコンピュータ・プログラム命令によって実装されることができることは理解される。さらに、背反でない場合には、異なるフローチャート、図および/またはブロック図におけるブロックの組み合わせが組み合わされてもよいことが理解される。これらのコンピュータ・プログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに与えられて、該コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサによって実行される該命令が前記フローチャートおよび/またはブロック図の単数または複数のブロックにおいて特定されている機能/工程を実装する手段を作り出すよう、機械を生成してもよい。
【0020】
これらのコンピュータ・プログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイスが特定の仕方で機能するよう指令することができるコンピュータ可読媒体に記憶され、それにより、該コンピュータ可読媒体に記憶される命令は、前記フローチャートおよび/またはブロック図の単数または複数のブロックにおいて特定されている機能/工程を実装する命令を含む製造物を作り出してもよい。
【0021】
コンピュータ・プログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイスにロードされて、該コンピュータ、他のプログラム可能な装置または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させて、前記コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行される前記命令が前記フローチャートおよび/またはブロック図の単数または複数のブロックにおいて特定されている機能/工程を実装するためのプロセスを提供するようなコンピュータ実装されたプロセスを作り出してもよい。
【0022】
本稿で用いるところの「ユーザー・インターフェース」は、ユーザーまたは操作者がコンピュータまたはコンピュータ・システムと対話することを許容するインターフェースである。「ユーザー・インターフェース」はまた、「ヒューマン・インターフェース装置」と称されてもよい。ユーザー・インターフェースは情報またはデータを操作者に提供し、および/または情報またはデータを操作者から受け取ってもよい。ユーザー・インターフェースは操作者からの入力がコンピュータによって受け取れるようにしてもよく、コンピュータからユーザーに出力を提供してもよい。換言すれば、ユーザー・インターフェースは操作者がコンピュータを制御もしくは操作することを許容してもよく、該インターフェースはコンピュータが操作者の制御または操作の効果を示すことを許容してもよい。データまたは情報のディスプレイまたはグラフィカル・ユーザー・インターフェース上への表示は、情報を操作者に提供することの例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティング・スティック、グラフィック・タブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカメラ、ヘッドセット、ペダル、ワイヤードグローブ、リモコンおよび加速度計を通じたデータの受領はみな、操作者からの情報またはデータの受領を可能にするユーザー・インターフェース・コンポーネントの例である。
【0023】
本稿で用いるところの「ハードウェア・インターフェース」は、コンピュータ・システムのプロセッサが外部のコンピューティング装置および/または装置と対話するおよび/またはこれを制御することを可能にするインターフェースを包含する。ハードウェア・インターフェースは、プロセッサが、制御信号または命令を外部のコンピューティング装置および/または装置に送ることを許容してもよい。ハードウェア・インターフェースは、プロセッサが、外部のコンピューティング装置および/または装置とデータを交換することを可能にしてもよい。ハードウェア・インターフェースの例は、これに限られないが、ユニバーサル・シリアル・バス、IEEE1394ポート、パラレル・ポート、IEEE1284ポート、シリアル・ポート、RS-232ポート、IEEE-488ポート、ブルートゥース(登録商標)接続、無線ローカル・エリア・ネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、制御電圧インターフェース、MIDIインターフェース、アナログ入力インターフェースおよびデジタル入力インターフェースを含む。
【0024】
本稿で用いるところの「ディスプレイ」または「表示装置」は、画像またはデータを表示するよう適応された出力装置またはユーザー・インターフェースを包含する。ディスプレイは視覚的、聴覚的およびまたは触覚的データを出力してもよい。ディスプレイの例は、コンピュータ・モニタ、テレビジョン画面、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字画面、陰極線管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクター・ディスプレイ、フラットパネル・ディスプレイ、真空蛍光(vacuum fluorescent)ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エネクトロルミネッセント・ディスプレイ(ELD: Electroluminescent display)、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード・ディスプレイ(OLED)、プロジェクターおよびヘッドマウント・ディスプレイを含むがこれに限られない。
【0025】
磁気共鳴(MR)データは本稿では、磁気共鳴撮像スキャンの間に、原子スピンによって放出された高周波信号の磁気共鳴装置のアンテナを使っての測定として定義される。磁気共鳴データは医療画像データの例である。磁気共鳴撮像(MRI)画像は本稿では、磁気共鳴撮像データ内に含まれる解剖学的データの再構成された二次元または三次元の視覚化として定義される。この視覚化はコンピュータを使って実行されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
ある側面では、本発明は、撮像ゾーンからディクソン磁気共鳴データを収集するための磁気共鳴撮像システムを提供する。ディクソン磁気共鳴データは、磁気共鳴撮像のためのディクソン技法またはプロトコルを使って収集された磁気共鳴データである。
【0027】
磁気共鳴撮像システムは、磁気共鳴撮像システムを制御するためのプロセッサを有する。磁気共鳴撮像システムは、ディクソン磁気共鳴撮像方法に従って磁気共鳴データを収集するための、機械実行可能命令およびパルス・シーケンス・コマンドを含んでいるメモリを有する。磁気共鳴データは、ディクソン磁気共鳴データ、第一の較正磁気共鳴データおよび第二の較正磁気共鳴データを含んでいてもよい。
【0028】
パルス・シーケンス・コマンドは、磁気共鳴撮像システムに、複数のパルス反復を実行させる。該複数のパルス反復のそれぞれが、磁気共鳴撮像システムに、読み出し方向に沿ったディクソン読み出し勾配を生成させる。該複数のパルス反復のそれぞれはさらに、磁気共鳴撮像システムに、該読み出し勾配の間にディクソン磁気共鳴データをサンプリングさせる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、プロセッサに、一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復を実行させる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、プロセッサに、一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復を実行させる。第一の修正されたパルス反復および第二の修正されたパルス反復というラベルは、第一の修正されたパルス反復が第二の修正されたパルス反復の前または後に実行されることを含意するものではない。
【0029】
前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復のそれぞれは、磁気共鳴撮像システムに、第一の修正された読み出し勾配を生成させる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、磁気共鳴撮像システムに、前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復のうちの少なくとも一つの間の第一の修正された読み出し勾配の間に、第一の較正磁気共鳴データを収集させる。第一の修正された読み出し勾配は、前記ディクソン読み出し勾配の振幅を所定の因子により低減したものである。前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復のそれぞれは、磁気共鳴撮像システムに、第二の修正された読み出し勾配を生成させる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、磁気共鳴撮像システムに、前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復のうちの少なくとも一つの間の第二の修正された読み出し勾配の間に、第二の較正磁気共鳴データを収集させる。第二の修正された読み出し勾配は、前記ディクソン読み出し勾配の振幅を前記所定の因子により低減したものである。前記第一または第二の修正された読み出し勾配は、前記ディクソン読み出し勾配および他方の修正された読み出し勾配に関して反転した極性をもつ。
【0030】
前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復および前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復は、読み出し方向における低減された勾配強度を使って測定値が収集されるプレパルスと考えられてもよい。いくつかの事例では、同じ所定の因子が、これらのプレパルスのそれぞれについて使われてもよく、他の例では、所定の因子はこれらのプレパルスのそれぞれについて異なっていてもよい。所定の因子が複数の反復のそれぞれについて同じである場合、このことは、渦電流に誘起される誤差が未修正のパルス反復におけるものとより似通っているという利点をもちうる。所定の因子が各プレパルスの間で変わる場合、それは、多様な異なる勾配強さについて較正データが収集され、それら複数の測定から最適な測定が選択できるという利点をもちうる。
【0031】
前記命令の実行は、プロセッサに、前記パルス・シーケンス・コマンドを用いて磁気共鳴撮像システムを制御することによって、ディクソン磁気共鳴データ、第一の較正磁気共鳴データおよび第二の較正磁気共鳴データを収集させる。第一の較正磁気共鳴データおよび第二の較正磁気共鳴データが収集される順序は指定されない。いくつかの場合には、第一の較正磁気共鳴データが先に収集され、他の場合には第二の較正磁気共鳴データが先に収集される。通常、第一および第二の較正磁気共鳴データは、ディクソン磁気共鳴データより前に収集される。第一および第二の較正磁気共鳴データは次いで、ディクソン磁気共鳴データの解析において使われる。だが、第一および第二の較正磁気共鳴データがディクソン磁気共鳴データがすでに収集された後に収集されることも可能である。
【0032】
前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、読み出し方向において第一の較正磁気共鳴データを変換することによって、第一のフーリエ変換されたデータを計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、読み出し方向において第二の較正磁気共鳴データを変換することによって、第二のフーリエ変換されたデータを計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第一のフーリエ変換されたデータと第二のフーリエ変換されたデータの間の位相差を計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、前記位相差を補間し、前記所定の因子を使ってスケーリングすることによって、補正された位相差を計算させる。補正された位相差の計算は、単純なスケーリングの問題ではない。読み出し勾配の強さを変えることは、関心領域を変化させるからである。よって、いくつかの場合には、データは関心領域の変化についても補正される。
【0033】
前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、ディクソン磁気共鳴データおよび補正された位相差を使って、補正されたディクソン磁気共鳴データを計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、補正されたディクソン磁気共鳴データから水信号および脂肪信号を計算させる。
【0034】
任意的な段階において、前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、水信号および脂肪信号から水画像および脂肪画像を計算させる。
【0035】
本稿で使われるところの読み出し勾配は、磁気共鳴撮像の間に加えられる勾配であって、撮像ゾーン内のスピンを位相再整列(re-phase)させ、高周波信号を放出させる。その高周波信号が測定される。これらの信号の測定が、測定された磁気共鳴データをなす。
【0036】
もう一つの実施形態では、前記所定の因子は2である。所定の因子を2に設定することは、この因子による読み出し勾配の振幅の低減が本質的には、補正された位相差の計算の間、位相差をスケーリングする必要性を回避するという利点をもちうる。それはまた、いかなるそのようなスケーリングの前にも位相復元〔位相アンラッピング〕(phase unwrapping)が要求されないという利点をももちうる。
【0037】
もう一つの実施形態では、前記所定の因子は1.8から2.2までの間である。
【0038】
もう一つの実施形態では、前記所定の因子は1.9から2.1までの間である。
【0039】
もう一つの実施形態では、前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第一および第二のフーリエ変換されたデータの位相の定数成分、線形成分および非線形成分を別個に計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、これらの定数、線形および非線形成分のうち一つまたは複数の成分の符号を修正させて、これらの成分が、逆の読み出し勾配極性をもって収集された第一および第二のフーリエ変換されたデータについて逆符号をもつようにさせる。これは、位相の折りたたみ〔位相ラッピング〕(phase wrapping)を解決する効果をもちうる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第一と第二のフーリエ変換されたデータの間の(修正された)位相差を計算させる。
【0040】
もう一つの実施形態では、前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復は、二つ以上の第一の修正されたパルス反復である。前記二つ以上の第一の修正されたパルス反復のそれぞれは、あらかじめ決定された因子の集合から選ばれる異なる所定の因子によって低減された前記第一の修正された読み出し勾配をもつ。前記所定の因子は、前記あらかじめ決定された因子の集合の要素である。前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復は、二つ以上の第二の修正されたパルス反復である。前記二つ以上の第一の修正されたパルス反復のそれぞれは、あらかじめ決定された因子の前記集合から選ばれる前記異なる所定の因子によって低減された前記第二の修正された読み出し勾配をもつ。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、前記あらかじめ決定された因子の集合の各因子について、第一と第二のフーリエ変換されたデータの間の位相差を計算させる。
【0041】
前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、前記あらかじめ決定された因子の集合のうち、位相差における潜在的な位相の折りたたみの検出につながらない最小の要素を見出させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、補正された位相差を計算させる。この計算は、少なくとも部分的には、前記あらかじめ決定された因子の集合のうち、位相差における潜在的な位相の折りたたみの検出につながらない前記最小の要素よりも小さい、前記あらかじめ決定された因子の集合の各要素について、前記第一のフーリエ変換されたデータおよび前記第二のフーリエ変換されたデータにおけるおよび/または前記位相差における位相の折りたたみを解決することによる。この目的のために、前記あらかじめ決定された因子の集合のうち、位相差における潜在的な位相の折りたたみの検出につながらない見出された最小の要素についての位相差が、たとえば、スケーリングされ、補間され、次いで、次の、より小さい要素についての位相差と比較されることができる。該次の、より小さい要素についての位相差における位相の折りたたみがあればそれをほどく(unwrap)ためである。この段階は、前記あらかじめ決定された因子の集合の最小の要素に到達するまで繰り返されることができる。前記あらかじめ決定された因子の集合の最小の要素についての位相差が、最終的に、補正された位相差を計算するために使われる。
【0042】
位相差における潜在的な位相の折りたたみは、たとえば、読み出し方向における距離の関数として位相を調べることによって検出されうる。位相はπと−πとの間で変わりうる。−πとπの間の急激なジャンプのような不連続は、潜在的な位相の折りたたみの一つの指標となろう。
【0043】
この実施形態において、前記第一の修正されたパルス反復および前記第二の修正されたパルス反復のそれぞれ二つ以上のプレパルスがある。異なる所定の因子がそれぞれのプレパルスについて使われてもよい。ここで、より高い所定の因子は読み出し勾配の、より低い振幅に対応し、よって、より小さな位相(および振幅)誤差に対応する。発想は、位相の折りたたみを生じない最も小さな所定の因子、すなわち最も大きな読み出し勾配振幅に基づいて、曖昧な位相の折りたたみを解決しようということである。ひとたび曖昧な位相の折りたたみが解決されたら、補正された位相差は、最も小さな所定の因子に基づいて、より高い精度で計算できる。
【0044】
もう一つの実施形態では、前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復は、複数の第一の修正されたパルス反復、あるいは二つ以上の第一の修正されたパルス反復である。前記複数の第一の修正されたパルス反復は、最後に実行される第一の修正されたパルス反復を含む。前記第一の較正磁気共鳴データは、この最後に実行される第一の修正されたパルス反復の間に収集される。
【0045】
もう一つの実施形態では、前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復は、複数の第二の修正されたパルス反復、あるいは二つ以上の第二の修正されたパルス反復である。前記複数の第二の修正されたパルス反復は、最後に実行される第二の修正されたパルス反復を含む。ここで、前記第二の較正磁気共鳴データは、この最後に実行される第二の修正されたパルス反復の間に収集される。
【0046】
前記最後に実行される第二の修正されたパルス反復および/または前記第一の修正されたパルス反復を使うことは、それ以前の反復を使った場合よりも、測定される磁化が、より安定である(定常状態にある)という利点をもちうる。
【0047】
もう一つの実施形態では、前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第一と第二のフーリエ変換されたデータの間の位相の差における潜在的な位相の折りたたみを検出させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、潜在的な位相の折りたたみが検出される場合に前記所定の因子を増大させる。これは、勾配強さを低減し、よって位相の折りたたみが発生する可能性を減らす結果となる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、前記所定の因子を増大させた後に前記パルス・シーケンス・コマンドを用いて磁気共鳴撮像システムを制御することによって、第一の較正磁気共鳴データおよび第二の較正磁気共鳴データを再収集させる。これはたとえば、ディクソン磁気共鳴データを収集する前に実行されることができる。たとえば、第一および第二のフーリエ変換されたデータが計算され、次いで、潜在的な位相の折りたたみがあるかどうかを見るために解析されることができる。もしなければ、本方法は先に進み、ディクソン磁気共鳴データを収集してもよい。もしあれば、第一および第二の較正磁気共鳴データが、補正された所定の因子を使って再収集されることができる。このプロセスは、第一および第二のフーリエ変換されたデータの間の位相差においてもはや潜在的な位相の折りたたみが検出されなくなるまで、繰り返して実行されることができる。
【0048】
前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第一の較正磁気共鳴データを再収集した後に読み出し方向において第一の較正磁気共鳴データをフーリエ変換することによって、第一のフーリエ変換されたデータを再計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第二の較正磁気共鳴データを再収集した後に読み出し方向において第二の較正磁気共鳴データをフーリエ変換することによって、第二のフーリエ変換されたデータを再計算させる。これらの段階はみな、第一と第二のフーリエ変換されたデータの間の位相の差にもはや潜在的な位相の折りたたみが検出されなくなるまで、繰り返されることができる。
【0049】
もう一つの実施形態では、読み出し勾配は、双極〔バイポーラー〕マルチエコー読み出し勾配である。この実施形態において、ディクソン法は双極マルチエコー・ディクソン撮像法であってもよい。
【0050】
もう一つの実施形態では、読み出し勾配は、双極デュアルエコー読み出し勾配である。この実施形態において、ディクソン法は双極デュアルエコー・ディクソン撮像法であってもよい。
【0051】
もう一つの実施形態では、前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第一のフーリエ変換されたデータの第一の振幅を決定させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第二のフーリエ変換されたデータの第二の振幅を決定させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第一の極性の読み出し勾配についての第一の有効コイル感度と、第二の極性の読み出し勾配についての第二の有効コイル感度との比を計算させる。第一の極性は第二の極性と逆である。比は正である。補正されたディクソン磁気共鳴データの計算は、この比を、補間し、前記所定の因子を使ってスケーリングして、それを補正されたディクソン磁気共鳴データの振幅に適用することを含む。換言すれば、この比は、補正されたディクソン磁気共鳴データの振幅を補正またはスケーリングするために使われる。磁気共鳴データが測定されるとき、測定が、高周波コイルおよびシステムの共鳴に関して、非対称的に行なわれる可能性が非常に高い。その結果、正の勾配および負の勾配について異なる有効コイル感度になることがある。
【0052】
一例では、ディクソン磁気共鳴データは、前記第一または第二のフーリエ変換されたデータの一方に、前記比の平方根を乗算し、次いで前記第一または第二のフーリエ変換されたデータの他方を、前記比の平方根で除算することによって補正される。どちらに前記比の平方根を乗算し、どちらを前記比の平方根で除算するかの選択は、前記振幅差を補正するように選ばれる。
【0053】
本発明は、撮像ゾーンからディクソン磁気共鳴データを収集するために磁気共鳴撮像システムを制御するプロセッサによって実行されるためのコンピュータ・プログラム・プロダクトにも関する。前記命令の実行は、プロセッサに:
・パルス・シーケンス・コマンドを用いて磁気共鳴撮像システムを制御することによって、ディクソン磁気共鳴データ、第一の較正磁気共鳴データおよび第二の較正磁気共鳴データを収集させる。ここで、パルス・シーケンス・コマンドは、磁気共鳴撮像システムに、ディクソン磁気共鳴撮像方法に従ってディクソン磁気共鳴データを収集させ、パルス・シーケンス・コマンドは、磁気共鳴撮像システムに、複数のパルス反復を実行させ、該複数のパルス反復のそれぞれが、磁気共鳴撮像システムに、読み出し方向に沿ったディクソン読み出し勾配を生成させる。
【0054】
本発明によれば、パルス・シーケンス・コマンドはさらに、プロセッサに、一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復を実行させる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、プロセッサに、一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復を実行させる。前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復のそれぞれは、磁気共鳴撮像システムに、第一の修正された読み出し勾配を生成させる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、磁気共鳴撮像システムに、前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復のうちの少なくとも一つの間の第一の修正された読み出し勾配の間に、第一の較正磁気共鳴データを収集させる。第一の修正された読み出し勾配は、所定の因子により低減された振幅をもつディクソン読み出し勾配である。前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復のそれぞれは、磁気共鳴撮像システムに、第二の修正された読み出し勾配を生成させる。
【0055】
パルス・シーケンス・コマンドはさらに、磁気共鳴撮像システムに、前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復のうちの少なくとも一つの間の第二の修正された読み出し勾配の間に、第二の較正磁気共鳴データを収集させる。第二の修正された読み出し勾配は、前記ディクソン読み出し勾配の振幅を前記所定の因子により低減したものである。前記第一または第二の修正された読み出し勾配は、前記ディクソン読み出し勾配および他方の修正された読み出し勾配に関して反転した極性をもつ。
【0056】
前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、読み出し方向において第一の較正磁気共鳴データをフーリエ変換することによって、第一のフーリエ変換されたデータを計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、読み出し方向において第二の較正磁気共鳴データをフーリエ変換することによって、第二のフーリエ変換されたデータを計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、第一と第二のフーリエ変換されたデータの間の位相差を計算させる。
【0057】
前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、前記位相差を補間し、前記所定の因子を使ってスケーリングすることによって、補正された位相差を計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、ディクソン磁気共鳴データおよび補正された位相差を使って、補正されたディクソン磁気共鳴データを計算させる。前記機械実行可能命令の実行はさらに、プロセッサに、補正されたディクソン磁気共鳴データから水信号および脂肪信号を計算させる。
【0058】
たとえば、読み出し勾配は単極読み出し勾配またはフライバック読み出し勾配である。
【0059】
もう一つの側面では、本発明は、撮像ゾーンから磁気共鳴データを収集するために磁気共鳴撮像システムを制御する方法を提供する。本方法は、パルス・シーケンス・コマンドを用いて磁気共鳴撮像システムを制御することによって、ディクソン磁気共鳴データ、第一の較正磁気共鳴データおよび第二の較正磁気共鳴データを収集する段階を含む。パルス・シーケンス・コマンドは、磁気共鳴撮像システムに、ディクソン磁気共鳴撮像方法に従って磁気共鳴データを収集させるコマンドである。パルス・シーケンス・コマンドは、磁気共鳴撮像システムに、複数のパルス反復を実行させる。該複数のパルス反復のそれぞれが、磁気共鳴撮像システムに、読み出し方向に沿ったディクソン読み出し勾配を生成させる。前記複数のパルス反復のそれぞれは、さらに、磁気共鳴撮像システムに、読み出し勾配の間にディクソン磁気共鳴データをサンプリングさせる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、プロセッサに、一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復を実行させる。
【0060】
パルス・シーケンス・コマンドはさらに、プロセッサに、一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復を実行させる。前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復のそれぞれは、磁気共鳴撮像システムに、第一の修正された読み出し勾配を生成させる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、磁気共鳴撮像システムに、前記一つまたは複数の第一の修正されたパルス反復のうちの少なくとも一つの間の第一の修正された読み出し勾配の間に、第一の較正磁気共鳴データを収集させる。第一の修正された読み出し勾配は、所定の因子により低減された振幅をもつディクソン読み出し勾配である。前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復のそれぞれは、磁気共鳴撮像システムに、第二の修正された読み出し勾配を生成させる。パルス・シーケンス・コマンドはさらに、磁気共鳴撮像システムに、前記一つまたは複数の第二の修正されたパルス反復のうちの少なくとも一つの間の第二の修正された読み出し勾配の間に、第二の較正磁気共鳴データを収集させる。第二の修正された読み出し勾配は、前記ディクソン読み出し勾配の振幅を前記所定の因子により低減したものである。前記第一または第二の修正された読み出し勾配は、前記ディクソン読み出し勾配および他方の修正された読み出し勾配に関して反転した極性をもつ。本方法はさらに、読み出し方向において第一の較正磁気共鳴データをフーリエ変換することによって、第一のフーリエ変換されたデータを計算することを含む。本方法はさらに、読み出し方向において第二の較正磁気共鳴データをフーリエ変換することによって、第二のフーリエ変換されたデータを計算することを含む。
【0061】
本方法はさらに、前記第一と第二のフーリエ変換されたデータの間の位相差を計算することを含む。本方法はさらに、前記位相差を補間し、前記所定の因子を使ってスケーリングすることによって、補正された位相差を計算することを含む。本方法はさらに、ディクソン磁気共鳴データおよび補正された位相差を使って、補正されたディクソン磁気共鳴データを計算することを含む。本方法はさらに、補正されたディクソン磁気共鳴データから水信号および脂肪信号を計算することを含む。
【0062】
組み合わされる実施形態が互いに背反でない限り、本発明の上述した実施形態の一つまたは複数が組み合わされてもよいことが理解される。