特許第6763896号(P6763896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763896
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/50 20060101AFI20200917BHJP
   H01R 13/56 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   H01R4/50 Z
   H01R13/56
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-25370(P2018-25370)
(22)【出願日】2018年2月15日
(65)【公開番号】特開2019-145209(P2019-145209A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 亘
(72)【発明者】
【氏名】美才治 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−056209(JP,A)
【文献】 実公昭15−000085(JP,Y1)
【文献】 実開昭49−098795(JP,U)
【文献】 米国特許第04413872(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/50
H01R 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の導体部が接触する端子と、
前記端子が収容されるハウジングと、
前記ハウジングに組み付けられ、前記端子に当接して前記端子の位置を保持する保持部材と、を備え、
前記端子は、端子本体を備え、
前記端子及び前記ハウジングのうちの少なくとも一方は、押圧によって前記導体部前記端子本体に接触させる押圧部が設けられる押圧部材を備え、前記押圧部による前記押圧の方向と前記押圧によって前記導体部が前記端子本体に接触する方向とは一致しているコネクタ。
【請求項2】
前記端子は、前記導体部に接触した状態で前記導体部を挟持する挟持部と、当該挟持部が前記導体部を挟持する方向に押圧し、前記挟持部とは別体の前記押圧部と、を備える請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記押圧部は、前記ハウジングと前記保持部材との間に挟まれて位置決めされている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジング及び前記保持部材の一方は、前記端子の位置を保持した状態で前記ハウジング及び前記保持部材の他方に本係止する本係止部と、前記端子の位置を保持しない状態で前記ハウジング及び前記保持部材の他方に仮係止する仮係止部と、を備える請求項2又は請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記端子は、前記保持部材が前記ハウジングに対して前記仮係止した状態で、治具を押し当て可能な治具当て部を備え、前記治具当て部に前記治具を押し当てて前記挟持部と前記押圧部との相対的位置をスライド移動可能とされている請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記保持部材は、前記端子に当接する本体と、
前記本体に対してヒンジ部を介して回動可能に接続され、前記電線を覆う蓋部と、
前記本体に対して前記蓋部側に延出されて前記電線が載置される載置部と、を備え、
前記蓋部は、前記載置部に載置された前記電線を前記載置部側に押さえる電線押さえ部を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、コネクタに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電線の端末部に接続された複数の端子をハウジングに収容して構成されたコネクタが知られている。特許文献1のコネクタは、電線が圧着された端子と、端子を収容する端子収容部を有するハウジングとを備えており、端子は、端子収容部の内壁から突出するランスによって抜け止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−9527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、コネクタが搭載される状況によっては、コネクタの更なる小型化が求められており、コネクタに収容される端子についても小型化されることが考えられる。ここで、例えば電線をワイヤバレルで圧着する端子を用いる場合には、圧着後の端子をハウジングの端子収容部に挿入することになるが、この場合、小型化された端子に細径の電線が接続されているため、端子を端子収容部に挿入する際に電線の座屈等の不具合が生じることが懸念される。
【0005】
本明細書に記載された技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の座屈等の不具合を抑制しつつ、小型化することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載されたコネクタは、電線の導体部が接触する端子と、前記端子が収容されるハウジングと、前記ハウジングに組み付けられ、前記端子に当接して前記端子の位置を保持する保持部材と、を備え、前記端子及び前記ハウジングのうちの少なくとも一方は、前記導体部が前記端子に接触する方向に押圧する押圧部を備える。
上記構成によれば、電線の導体部を端子上に配置した後に、押圧部が導体部に対して端子に接触する方向に押圧することにより、電線を端子に接続する作業を行うことが可能になるため、コネクタ及び端子を小型化した場合であっても電線の座屈等の不具合を抑制することが可能となる。ここで、上記したコネクタによれば、電線の座屈等の不具合を抑制しつつコネクタを小型化することが可能となる反面、押圧部により導体部が端子に接触する方向に押圧して導体部を端子に接続する構成であるため、導体部に対する押圧部の位置ずれによる端子と電線との接続不良が懸念される。上記構成によれば、ハウジングに組み付けられる保持部材は、端子に当接して端子の位置を保持するため、導体部と押圧部との間との間の位置ずれによる端子と電線との接続不良を抑制することが可能になる。
【0007】
本明細書に記載された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記端子は、前記導体部に接触した状態で前記導体部を挟持する挟持部と、当該挟持部が前記導体部を挟持する方向に押圧し、前記挟持部とは別体の前記押圧部と、を備える。
このようにすれば、挟持部と押圧部とをハウジングにセットした後に、挟持部と押圧部とを相対的に移動することで電線を端子に接続する作業を行うことが可能になるため、コネクタ及び端子を小型化した場合であっても電線の座屈等の不具合を抑制することが可能となる。
【0008】
前記押圧部は、前記ハウジングと前記保持部材との間に挟まれて位置決めされている。
このようにすれば、ハウジングと保持部材の間に位置決めされた押圧部を介して挟持部が電線の導体部を挟持した状態に保持することができるため、コネクタの構成を簡素化することが可能になる。
【0009】
前記ハウジング及び前記保持部材の一方は、前記端子の位置を保持した状態で前記ハウジング及び前記保持部材の他方に本係止する本係止部と、前記端子の位置を保持しない状態で前記ハウジング及び前記保持部材の他方に仮係止する仮係止部と、を備える。
このようにすれば、ハウジング及び保持部材が仮係止された状態から本係止された状態にすることができるため、コネクタの組み付け作業を簡素化することができる。
【0010】
前記端子は、前記保持部材が前記ハウジングに対して前記仮係止した状態で、治具を押し当て可能な治具当て部を備え、前記治具当て部に前記治具を押し当てて前記挟持部と前記押圧部との相対的位置をスライド移動可能とされている。
このようにすれば、押圧部と挟持部とを相対的に移動させる作業を容易に行うことができる。
【0011】
前記保持部材は、前記端子に当接する本体と、前記本体に対してヒンジ部を介して回動可能に接続され、前記電線を覆う蓋部と、前記本体に対して前記蓋部側に延出されて前記電線が載置される載置部と、を備え、前記蓋部は、前記載置部に載置された前記電線を前記載置部側に押さえる電線押さえ部を有する。
このようにすれば、電線に対して端子の抜け方向の力が生じたとしても電線押さえ部が電線を押さえて保持するため、電線と端子との接続部分に生じる応力を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に記載された技術によれば、電線の座屈等の不具合を抑制しつつ、コネクタを小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1のコネクタを示す斜視図
図2】コネクタを示す正面図
図3図2のA−A断面図
図4】コネクタのアウタハウジングを外した状態の前方側を拡大した断面図
図5】インナハウジングを示す斜視図
図6】一対の蓋部を開放した状態の保持部材を示す斜視図
図7】端子が収容された状態のインナハウジングに保持部材が仮係止された状態を示す斜視図
図8】端子が収容された状態のインナハウジングに保持部材が仮係止された状態を示す正面図
図9】端子が収容された状態のインナハウジングに保持部材が仮係止された状態を示す断面図
図10】インナハウジングに保持部材が仮係止されて電線が挿入された状態を示す側面図
図11】インナハウジングに対して保持部材が仮係止した状態で押圧部材の治具当て部に治具を押し当てる工程を拡大して示す図
図12】インナハウジングに対して保持部材が仮係止した状態で押圧部材の押圧部が端子本体の挟持部を押圧し、導体部が挟持部に挟持された状態を拡大して示す断面図
図13】インナハウジングに対して保持部材が本係止した状態を示す側面図
図14】インナハウジングに対して保持部材が本係止した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
実施形態1について図1図14を参照しつつ説明する。
本実施形態のコネクタ10は、例えば自動車等の車両に搭載され、電線端末部や機器等に接続された相手側コネクタと嵌合するものである。以下では、図1のX方向を前方、Y方向を左方、Z方向を上方として説明する。
【0015】
コネクタ10は、図3に示すように、電線11に接続される端子20と、インナハウジング41及びアウタハウジング50を有するハウジング40と、ハウジング40に組み付けられて端子20の位置を保持する保持部材60とを備える。電線11は、共に、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等からなる導体部12の周囲が絶縁性の被覆13で覆われている。
【0016】
端子20は、図4に示すように、端子本体21と、端子本体21とは別体の押圧部材30とを有する。端子本体21は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の雌端子であって、相手側の雄端子と接続される図示しない弾性接触片が内部に収容された角筒状の箱部22と、箱部22の後方に連なり電線11の導体部12を挟持する上下一対の挟持部26A,26Bとを備える。箱部22は、前後方向の中間部に上部側(インナハウジング41の外面側)が切り欠かれた切欠部23が形成されている。電線11が端子20に対して正規位置(図4の位置)まで挿通された状態では、切欠部23が箱部22を切り欠いた空間によりインナハウジング41の外面側から導体部12の先端部12Aを視認することができる。一対の挟持部26A,26Bは、一対の挟持片であって、箱部22の後端部における上壁と下壁のそれぞれから後方に長方形の板状に延びている。上側(一方)の挟持部26Aは、厚肉部27と、厚肉部27の後方に厚肉部27よりも厚み寸法が小さくされた薄肉部28とを備える。下側(他方)の挟持部26Bは、厚肉部27と、厚肉部27の前方に厚肉部27よりも厚み寸法が小さくされた薄肉部28とを備える。厚肉部27と薄肉部28との間には厚肉部27と薄肉部28とを段差状に連結する段差部が形成されている。一対の挟持部26A,26Bの対向面には、溝状に延びるセレーションが形成されている。各挟持部26A,26Bの基端部側には、押圧部材30の押圧により、塑性変形又は弾性変形した変形部24が形成されている。
【0017】
押圧部材30は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製、又は、硬質の合成樹脂製であって、端子本体21の後方側を挿通可能な角筒状とされている。押圧部材30の後方側には、一対の挟持部26A,26Bを押圧する上下一対の押圧部31A,31Bが設けられている。一対の押圧部31A,31Bは、押圧部材30の上壁30A及び下壁30Bを内方側に曲げて形成されており、前後方向において挟持部26A,26Bの長さに応じた範囲について上壁30Aと下壁30Bとの間の寸法が小さくなるように形成されている。押圧部材30の先端部の上部には、上方に突出する直方体状の突部33が形成されている。突部33は、押圧部材30の上壁30Aの全幅に亘って形成されており、上壁30Aの上面から段差状に起立する部分は、治具Jの押し当てが可能な治具当て部33Aとされている。端子本体21及び押圧部材30は、例えば、金属板材に対してプレス機により打ち抜き加工及び曲げ加工を施して形成することができる。
【0018】
ハウジング40は、図3に示すように、端子20が収容される合成樹脂製のインナハウジング41と、インナハウジング41に外嵌する合成樹脂製のアウタハウジング50とを備える。インナハウジング41は、図4図5に示すように、扁平な直方体状とされており、上下左右に多数(複数)の端子収容室42が並んで設けられている。上下段の端子収容室42は、千鳥状に配置されており、左右方向について、上段側の隣り合う端子収容室42間の中間部に下段の端子収容室42の幅方向の中間(軸心)が配置されている。各端子収容室42の天井壁43は、後方側が切り欠かれて端子20をインナハウジング41の外部に露出可能となるように開放されており、天井壁43の後端部には、後方に延びる前止まり片44が形成されている。前止まり片44には、下面側(端子収容室42の内方側)に押圧部材30の突部33が前止まり状態で当接する凹部44Aが形成されている。端子本体21及び押圧部材30は、インナハウジング41の後方側の天井壁43が切り欠かれた空間から挿入して端子収容室42の底面に載置可能とされている。
【0019】
各端子収容室42の側壁における外面側の端部には、図5に示すように、保持部材60の上下の対向壁65A,65Bを摺動可能な摺動部42Aが形成されている。摺動部42Aの前端部には段差状に立ち上がる前止まり部42Bが形成されている。前止まり部42Bは、保持部材60の対向壁65A,65Bの前端に当接可能とされている。インナハウジング41の前壁には、図示しない相手側コネクタの雄端子が挿入される端子挿入孔46が開口している。
【0020】
インナハウジング41の両側壁の外面における後方側には内方側に窪んだ窪み部41Aが形成されている。窪み部41Aには、本係止部48と仮係止部47とが前後に並んで突設されている。仮係止部47と本係止部48とは共に前方側が段差状に突出し、後方側は、傾斜状に突出寸法が小さくなる傾斜面を有する形状とされている。
【0021】
アウタハウジング50は、図1図3に示すように、インナハウジング41を後方側から嵌め入れて収容可能な角筒状の角筒部51と、角筒部51の前方側を閉鎖する前壁55とを備える。前壁55には、相手側コネクタの雄端子が挿入される端子挿入孔56が形成されている。角筒部51の上部には、相手側コネクタハウジングとの嵌合状態をロックするロックアーム52が形成されている。ロックアーム52は相手側コネクタハウジングに対して正規嵌合状態で係止するロック突部53が形成されている。角筒部51の後端部には、外方に鍔状に張り出す張出部54が形成されている。なお、角筒部51の内面には、インナハウジング41の外面に係止してインナハウジング41が角筒部51に収容された状態を保持する図示しない離脱規制部が形成されている。
【0022】
保持部材60は、絶縁性の合成樹脂製であって、図3図6に示すように、複数の電線11が挿通される複数の端子挿通孔63が並んで形成された扁平な直方体状の本体61と、本体61の後方側にヒンジ部73を介して回動可能に接続された一対の蓋部74A,74Bとを備える。ヒンジ部73は、薄肉の帯状で撓み変形可能に形成されている。本体61の前端部には、前方に突出する一対の対向壁65A,65Bが設けられるとともに、本体61の両側部には、一対の対向壁65A,65Bの両端部間を連結する左右一対の側壁61Aと、各側壁61Aの前方に延びる一対の係止枠72とが設けられている。
【0023】
本体61には、図8に示すように、複数の電線11を挿通可能な複数の端子挿通孔63が上下左右に並んで設けられている。上下段の端子挿通孔63は、千鳥状に配置されており、左右方向について、上段側の隣り合う端子挿通孔63間の中間部に下段の端子挿通孔63の幅方向の中間(軸心)が配置されている。
【0024】
一対の対向壁65A,65Bは、インナハウジング40の摺動部42Aに摺動するように対向して配されており、図4に示すように、対向壁65A,65Bの前端は、前止まり部42Bに当接することで本体61の前方への移動を規制する規制部65Cとされている。一対の対向壁65A,65Bの内面には、前後方向に延びる突条66が左右方向に並んで設けられている。突条66は、各端子20に対応して対向壁65A,65Bの厚み寸法が大きくされており、先端部は、先端側に向けて傾斜状に厚み寸法が小さくされている。突条66の後端部は、段差状に下方に延びる当接部67を介して端子挿通孔63に連なっている。当接部67は、押圧部材30の上壁30Aの後端部に当接する。押圧部材30の後端部が当接部67に当接し、前端部がインナハウジング41の前止まり片44の凹部44Aに前止まり状態で当接することにより、押圧部材30の押圧部31A,31Bが端子本体21の挟持部26A,26Bを挟持する正規位置に位置決めされる。一対の対向壁65A,65Bの間における端子挿通孔63の底面に連なる位置には、インナハウジング41の端子収容室42の底面に接触する突片68が前方に延びている。
【0025】
本体61の後方側には、図7に示すように、電線11が両面に載置される載置部70が延出されている。載置部70の上下の両面には、電線11の外周面に沿うように左右方向に波形状の複数の電線配索溝71が左右方向に並んで形成されている。複数の電線配索溝71は、各端子挿通孔63の後方に連なっており、載置部70の上下に千鳥状に配置されている。具体的には、左右方向について、載置部70の上面側の隣り合う電線配索溝71間の中間部に載置部70の下面側の電線配索溝71の幅方向の中間(軸心)が配置されている。一対の係止枠72は、左右方向に撓み変形可能とされており、長方形状の係止孔72Aが貫通形成されている。係止孔72Aの孔縁には、インナハウジング41の仮係止部47又は本係止部48が係止される。
【0026】
一対の蓋部74A,74Bには、載置部70の両面の電線配索溝71に載置された複数の電線11を押さえる電線押さえ部75が電線11側に突出して設けられている。電線押さえ部75は、先細状に突出しており、左右方向の全幅に亘って延びている。また、一方の蓋部74Aには、他方の蓋部74Bに係止する撓み変形可能な蓋部係止片76と、一対のスリット状の通し孔77とが形成されている。蓋部係止片76の先端部には係止爪部76Aが設けられている。一対の通し孔77には、複数の電線11を結束する結束部材としての合成樹脂製のタイバンド82(図1参照)を挿通可能とされ、テープ81を巻き付けた状態の複数の電線11をタイバンド82で結束して複数の電線11の位置を保持することができる。他方の蓋部74Bには、係止爪部76Aが係止する受け部78が設けられている。一方の蓋部74Aの側壁面には、撓み変形可能な蓋部被係止部79が枠状に延びている。他方の蓋部74Bの外壁面には、蓋部被係止部79に係止する蓋部係止部80が外方に突設されている。蓋部被係止部79は、蓋部係止部80に当接して撓み変形し、復元変形により蓋部被係止部79の蓋部被係止孔79Aの孔縁に係止されることで、一対の蓋部74A,74Bが閉じた状態に保持される。
【0027】
コネクタ10の製造工程について説明する。
図9に示すように、端子本体21の後端部に押圧部材30を外嵌した状態の端子20をインナハウジング41の端子収容室42にセットする。また、保持部材60の係止枠72をインナハウジング41の仮係止部47に係止させて保持部材60を仮係止状態に組み付ける(図10)。
【0028】
次に、保持部材60の端子挿通孔63に後方側から端末部の被覆13を剥ぎ取り導体部12を露出させた電線11を挿通し、一対の押圧部31A,31B及び一対の挟持部26A,26Bの間を通す。そして、図11に示すように、作業者は切欠部23の隙間及びインナハウジング41の上方から、電線11の導体部12の先端12Aを視認しながら、先端12Aを切欠部23の位置まで挿入する。次に、治具Jを押圧部材30の突部33の治具当て部33Aに押し当て、押圧部材30を端子本体21に対して前方側にスライドさせる。すると、図12に示すように、端子本体21が変形した変形部24が形成されて一対の押圧部31A,31Bは一対の挟持部26A,26Bを挟んで押圧するとともに、一対の挟持部26A,26Bが電線11の導体部12を挟持する。
【0029】
次に、インナハウジング41に対して保持部材60を前方に移動する。すると、仮係止部47への係止が解除され、本係止部48に当接した係止枠72が撓み変形して係止枠72が本係止部48に係止して本係止状態となる。そして、一対の蓋部74A,74Bの開放により生じたスペースを利用し、複数の電線11を束ねて複数の電線11の外周にテープ81を巻きつける(図13図14)。
【0030】
次に、一方の蓋部74Aを閉じる方向に回動させてタイバンド82を一対の通し孔77に通し、テープ81を巻きされた複数の電線11をタイバンド82により結束し、他方の蓋部74Bを閉じる方向に回動させて一方の蓋部74Aの蓋部被係止部79及び蓋部係止片76を他方の蓋部74Bの蓋部係止部80及び受け部78に係止させる(図1図7参照)。そして、インナハウジング41の前方側からアウタハウジング50を装着するとコネクタ10が形成される。
【0031】
本実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
コネクタ10は、電線11の導体部12が接触する端子20と、端子20が収容されるハウジング40と、ハウジング40に組み付けられ、端子20に当接して端子20の位置を保持する保持部材60と、を備え、端子20及びハウジング40のうちの少なくとも一方は、導体部12が端子20に接触する方向に押圧する押圧部31A,31Bを備える。
本実施形態によれば、電線11の導体部12を端子20上に配置した後に、押圧部31A,31Bが導体部12に対して端子20に接触する方向に押圧することにより、電線11を端子20に接続する作業を行うことが可能になる。これにより、例えば電線11の端末部に端子を圧着した後に端子をハウジングに挿入する構成と比較して、コネクタ10及び端子20を小型化した場合であっても電線11の座屈等の不具合を抑制することが可能となる。ここで、上記したコネクタ10によれば、電線11の座屈等の不具合を抑制しつつコネクタ10を小型化することが可能となる反面、押圧部31A,31Bにより導体部12が端子20に接触する方向に押圧して導体部12を端子20に接続する構成であるため、導体部12に対する押圧部31A,31Bの位置ずれによる端子20と電線11との接続不良が懸念される。本実施形態によれば、ハウジング40に組み付けられる保持部材60は、端子20に当接して端子20の位置を保持するため、導体部12と押圧部31A,31Bとの間との間の位置ずれによる端子20と電線11との接続不良を抑制することが可能になる。
【0032】
端子20は、導体部12に接触した状態で導体部12を挟持する挟持部26A,26Bと、当該挟持部26A,26Bが導体部12を挟持する方向に押圧し、挟持部26A,26Bとは別体の押圧部31A,31Bと、を備える。
このようにすれば、挟持部26A,26Bと押圧部31A,31Bとをハウジング40にセットした後に、挟持部26A,26Bと押圧部31A,31Bとを相対的に移動することで電線11を端子20に接続する作業を行うことが可能になるため、コネクタ10及び端子20を小型化した場合であっても電線11の座屈等の不具合を抑制することが可能となる。
【0033】
また、押圧部31A,31Bを有する押圧部材30は、ハウジング40と保持部材60との間に挟まれて位置決めされている。
このようにすれば、ハウジング40と保持部材60の間に押圧部材30を位置決めすることにより、押圧部材30を介して挟持部26A,26Bが電線11の導体部12を挟持した状態に保持することができるため、コネクタ10の構成を簡素化することが可能になる。
【0034】
また、ハウジング40及び保持部材60の一方は、挟持部26A,26B及び押圧部31A,31Bの位置を保持した状態でハウジング40及び保持部材60の他方に本係止する本係止部48と、挟持部26A,26B及び押圧部31A,31Bの位置を保持しない状態でハウジング40及び保持部材60の他方に仮係止する仮係止部47と、を備える。
このようにすれば、ハウジング40及び保持部材60が仮係止された状態から本係止された状態にすることができるため、コネクタ10の組み付け作業を簡素化することができる。
【0035】
また、端子本体21及び押圧部材30の一方は、保持部材60がハウジング40に対して仮係止した状態で、治具Jを押し当て可能な治具当て部33Aを備え、治具当て部33Aに治具Jを押し当てて端子本体21と押圧部材30との相対的位置をスライド移動可能とされている。
このようにすれば、端子本体21と押圧部材30とを相対的に移動させる作業を容易に行うことができる。
【0036】
また、保持部材60は、端子本体21及び押圧部材30の少なくとも一方に当接する本体61と、本体61に対してヒンジ部73を介して回動可能に接続され、電線11を覆う蓋部74A,74Bと、本体61に対して蓋部74A,74B側に延出されて電線11が載置される載置部70と、を備え、蓋部74A,74Bは、載置部70に載置された電線11を載置部70側に押さえる電線押さえ部75を有する。
このようにすれば、電線11に対して端子20の抜け方向の力が生じたとしても電線押さえ部75が電線11を押さえて保持するため、電線11と端子20との接続部分に生じる応力を抑制することができる。
【0037】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、インナハウジング41とアウタハウジング50を備える構成としたが、これに限られない。例えば、インナハウジングとアウタハウジングを一体化した一つのハウジングとしたり、アウタハウジング50を備えず、インナハウジング41のみでハウジングを構成としてもよい。
【0038】
(2)保持部材60は、押圧部材30に当接して押圧部材30を介して端子本体21の位置を保持する構成としたが、これに限られず、端子本体21に当接して端子本体21及び押圧部材30の位置を保持する構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、端子本体21が相手側の雄端子と接続される箱部22を備える構成とたが、これに限られず、押圧部材が箱部22を備える構成としてもよい。
【0039】
(4)保持部材60は、蓋部74A,74Bを備える構成としたが、保持部材が蓋部74A,74Bを備えない構成としてもよい。
(5)挟持部26A,26Bを押圧する押圧部31A,31Bを端子20に設けたが、これ限られない。例えば、端子20を収容するハウジングに挟持部26A,26Bを押圧する構成と設けてもよい。また、ハウジングに導体部12に直接接触して端子側に押圧する構成を設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10: コネクタ
11: 電線
12: 導体部
13: 被覆
20: 端子
21: 端子本体
23: 切欠部
26A,26B: 挟持部
30: 押圧部材
31A,31B: 押圧部
33A: 治具当て部
40: ハウジング
41: インナハウジング
42: 端子収容室
44: 前止まり片
47: 仮係止部
48: 本係止部
50: アウタハウジング
60: 保持部材
61: 本体
65A,65B: 対向壁
66: 突条
67: 当接部
68: 突片
70: 載置部
71: 電線配索溝
72: 係止枠
72A: 係止孔
73: ヒンジ部
74A,74B: 蓋部
75: 電線押さえ部
J: 治具
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