(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763927
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】酸性染料組成物、酸性染料組成物の使用、および、酸性染料組成物を用いたナイロン繊維の染色方法
(51)【国際特許分類】
C09B 67/00 20060101AFI20200917BHJP
D06P 1/39 20060101ALI20200917BHJP
D06P 3/24 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
C09B67/00 Z
D06P1/39
D06P3/24 Z
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-199841(P2018-199841)
(22)【出願日】2018年10月24日
(65)【公開番号】特開2019-77868(P2019-77868A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2018年10月24日
(31)【優先権主張番号】106136665
(32)【優先日】2017年10月25日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512227421
【氏名又は名称】臺湾永光化▲学▼工業股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲ライ▼寶昆
(72)【発明者】
【氏名】宋徳欽
(72)【発明者】
【氏名】潘垣賓
【審査官】
池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭44−020515(JP,B1)
【文献】
特開2009−299249(JP,A)
【文献】
特開2014−194105(JP,A)
【文献】
特開昭51−040482(JP,A)
【文献】
特表2018−512486(JP,A)
【文献】
特開2015−038264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 1/39
D06P 3/24
D06P 3/06
C09B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン繊維を染色するための酸性染料組成物であって、
該酸性染料組成物は、
酸性染料と、
水溶性Ca2+化合物と、
を含み、
前記水溶性Ca2+化合物の溶解度が、20℃の水100g当たり20gより大きく、
前記酸性染料の総重量を100重量部としたとき、前記水溶性Ca2+化合物の含有量が0.1重量部〜50重量部の範囲であり、
前記酸性染料組成物の形態が固体である、
酸性染料組成物。
【請求項2】
前記水溶性Ca2+化合物が、CaCl2、Ca(C2H3O2)2、またはそれらの組み合わせである、
請求項1に記載の酸性染料組成物。
【請求項3】
前記水溶性Ca2+化合物が、CaCl2である、
請求項2に記載の酸性染料組成物。
【請求項4】
前記水溶性Ca2+化合物の含有量が、5重量部〜30重量部である、
請求項1に記載の酸性染料組成物。
【請求項5】
前記酸性染料が、Acid Black 172、Acid Black ACE、Acid Yellow 220、Acid Red 315、Acid Blue 317、Acid Blue 113、または、それらの組み合わせである、
請求項1に記載の酸性染料組成物。
【請求項6】
ナイロン繊維を染色するための酸性染料組成物の使用であって、
前記酸性染料組成物は、
酸性染料と、
水溶性Ca2+化合物と、
を含み、
前記水溶性Ca2+化合物の溶解度が、20℃の水100g当たり20gより大きく、
前記酸性染料の総重量を100重量部としたとき、前記水溶性Ca2+化合物の含有量が0.1重量部〜50重量部の範囲であり、
前記酸性染料組成物の形態が固体である、
酸性染料組成物の使用。
【請求項7】
前記水溶性Ca2+化合物が、CaCl2、Ca(C2H3O2)2、または、それらの組み合わせである、
請求項6に記載の酸性染料組成物の使用。
【請求項8】
前記水溶性Ca2+化合物の含有量が、5重量部〜30重量部である、
請求項6に記載の酸性染料組成物の使用。
【請求項9】
前記酸性染料が、Acid Black 172、Acid Black ACE、Acid Yellow 220、Acid Red 315、Acid Blue 317、Acid Blue 113、または、それらの組み合わせである、
請求項6に記載の酸性染料組成物の使用。
【請求項10】
100重量部のナイロン繊維に対して、前記酸性染料の使用量が0.1重量部〜10重量部である、
請求項6に記載の酸性染料組成物の使用。
【請求項11】
前記ナイロン繊維が、ナイロン超極細繊維である、
請求項6に記載の酸性染料組成物の使用。
【請求項12】
ナイロン繊維の染色方法であって、
前記染色方法は、
酸性染料と水溶性Ca2+化合物とを混合して、酸性染料組成物を形成する工程、
形成した前記酸性染料組成物を使用してナイロン繊維を染色する染色工程、
を含み、
前記酸性染料組成物の形態が固体であり、
前記酸性染料組成物は、
前記水溶性Ca2+化合物の溶解度が、20℃の水100g当たり20gより大きく、
前記酸性染料の総重量を100重量部としたとき、前記水溶性Ca2+化合物の含有量が0.1重量部〜50重量部の範囲である、
染色方法。
【請求項13】
前記水溶性Ca2+化合物が、CaCl2、Ca(C2H3O2)2、または、それらの組み合わせである、
請求項12に記載の染色方法。
【請求項14】
前記水溶性Ca2+化合物の含有量が、5重量部〜30重量部である、
請求項12に記載の染色方法。
【請求項15】
前記酸性染料が、Acid Black 172、Acid Black ACE、Acid Yellow 220、Acid Red 315、Acid Blue 317、Acid Blue 113、または、それらの組み合わせである、
請求項12に記載の染色方法。
【請求項16】
100重量部のナイロン繊維に対して、前記酸性染料の使用量が0.1重量部〜10重量部である、
請求項12に記載の染色方法。
【請求項17】
前記ナイロン繊維が、ナイロン超極細繊維である、
請求項12に記載の染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸性染料組成物(acid dye composition)、その使用、および、それを用いる方法に関する。より詳細には、本開示は、酸性染料組成物、その使用、および、酸性染料組成物を用いたナイロン繊維(nylon textiles)の染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護への高い関心から、繊維染色後に発生する染料廃液(dyeing effluent)の基準が厳しくなっている。したがって、染色された繊維の染色濃度(dyeing depth)を変えることなく、染料廃液中の染料濃度を低下させることが望ましい。
【0003】
しかしながら、ナイロン繊維を従来の酸性染料(特に濃い色合い)で染色すると、ナイロンの染色箇所が限られているため染料の利用率が低い。その結果、大量の染料廃液が生成され、染料の取り込み率は低くなる。特に、ナイロン超極細繊維(nylon microfiber textiles)を従来の酸性染料で染色すると、染色されたナイロン超極細繊維の視覚的濃さ(visual depth)は、比表面積およびナイロン超極細繊維の屈折のため、十分な強さが得られない。そのため、ナイロン超極細繊維を染色するためには、多量の酸性染料を消費しなければならない。従って、洗浄工程後の排水中の染料濃度は増加し、染色されたナイロン超極細繊維の洗浄には、より多くの水を使用しなければならない。残存染料濃度が高い染料廃液および大量の排水は環境汚染の原因となり、環境保護と安全衛生の目的を達成することができない。
【0004】
したがって、染色工程や染色性を変えることなく、染料廃液中の染料濃度を低下させて排水量を低減することができる酸性染料組成物を提供することが望まれている。それにより、現在のグリーンケミストリーにおける環境保護の目的を達成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、酸性染料組成物を提供することである。酸性染料組成物をナイロン繊維の染色に用いると、染料廃液を大幅に減少できる。更に、本開示は、酸性染料組成物の使用、および、酸性染料組成物を用いたナイロン繊維の染色方法を提供する。
【0006】
本開示の酸性染料組成物は、酸性染料、および、水溶性Ca
2+化合物を含む。ここで、酸性染料の総重量を100重量部としたとき、水溶性Ca
2+化合物の含有量は、0.1重量部〜50重量部の範囲とすることができる。また、本開示は、ナイロン繊維を染色するための前記酸性染料組成物の使用を提供する。さらに、本開示は、前記酸性染料組成物でナイロン繊維を染色する染色工程を含む、ナイロン繊維の染色方法を提供する。
【0007】
本開示の酸性染料組成物において、酸性染料および水溶性Ca
2+化合物は、染色工程の前に混合される。したがって、酸性染料組成物中の水溶性Ca
2+化合物の含有量を正確に制御することができる。本開示では、予め酸性染料と水溶性Ca
2+化合物を混合しておき、酸性染料組成物中の水溶性Ca
2+化合物に対する酸性染料の割合を固定しているので、水溶性Ca
2+化合物は、本開示の酸性染料組成物が使用される時に、染色工程中に追加的に添加されることはない。故に、染色工程は簡単に実行することができ、水溶性Ca
2+化合物に対する酸性染料比率のアンバランスの問題を防止できる。さらに、本開示の酸性染料組成物に水溶性Ca
2+化合物を追加しても、水溶性Ca
2+化合物を含む酸性染料組成物の性質は、水溶性Ca
2+化合物を含まない酸性染料組成物の性質と同様であることから、染色工程を調整する必要はない。さらに、本開示の酸性染料組成物を使用してナイロン繊維を染色する場合、水溶性Ca
2+化合物を含まない酸性染料組成物を用いてナイロン繊維を染色する染色方法と比較して、染料廃液中の染料濃度を大幅に低下できる。それにより、現在のグリーンケミストリーにおける環境保護の目的を達成することができる。
【0008】
本開示において、水溶性Ca
2+化合物の種類は、水溶性Ca
2+化合物が水溶液中で一定の溶解性を有すれば特に限定はない。例えば、水溶性Ca
2+化合物の溶解度は、20℃の水100g当たり20gより大きい。水溶性Ca
2+化合物の具体例としては、CaCl
2、Ca(C
2H
3O
2)
2、CaSO
4、または、それらの組み合わせが挙げられる。本開示の一つの実施形態では、水溶性Ca
2+化合物は、CaCl
2である。
【0009】
本開示では、酸性染料の総重量を100重量部としたとき、水溶性Ca
2+化合物の含有量は、0.1重量部〜50重量部の範囲とすることができる。例えば、酸性染料の総重量を100重量部としたとき、水溶性Ca
2+化合物の含有量は、5重量部〜30重量部、5重量部〜20重量部、8重量部〜20重量部、または、8重量部〜10重量部である。換言すると、水溶性Ca
2+化合物の酸性染料に対する重量比は、5%〜30%、5%〜20%、8%〜20%、または、8%〜10%の範囲とすることができる。
【0010】
本開示において、酸性染料の種類は、ナイロン繊維を染色するのに適したものであれば特に制限はない。例えば、酸性染料は、Acid Black 172、Acid Black ACE、Acid Yellow 220、Acid Red 315、Acid Blue 317、Acid Blue 113、または、それらの組み合わせが挙げられる。本開示の一つの実施形態では、酸性染料は、Acid Black 172、Acid Black ACE、または、それらの組み合わせである。
【0011】
本開示において、酸性染料組成物の形態は特に限定されず、固体(例えば、粉末)または溶液であってもよい。
【0012】
本開示において、酸性染料組成物の使用量は、特に限定されず、所望の染色濃度(dyeing depth)および/または染色されるナイロン繊維の種類に応じて調整することができる。例えば、濃色染色されたナイロン繊維が望まれる場合、100重量部のナイロン繊維に対して、酸性染料の使用量は、0.1重量部〜10重量部、1重量部〜8重量部、4重量部〜8重量部、または、4重量部〜6重量部の範囲とすることができる。換言すると、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比(すなわち繊維の重量に対して(on the weight of the fiber,o.w.f.))は、0.1%〜10%、1%〜8%、4%〜8%、または、4%〜6%とすることができる。
【0013】
本開示において、ナイロン繊維は、通常のナイロン繊維、ナイロン超極細繊維(ナイロンマイクロファイバー基板、a nylon microfiber substrate)、または、ダブルジャージーナイロン繊維(double jersey nylon textiles)であってもよい。特に、ナイロン超極細繊維が、水溶性Ca
2+化合物を含有する酸性染料組成物で染色されない場合、染色されたナイロン超極細繊維の視覚的濃さ(visual depth)は、比表面積およびナイロン超極細繊維の屈折のため、十分な強さが得られない。そのため、ナイロン超極細繊維を染色するためには、多量の酸性染料を消費しなければならず、環境汚染を引き起こす。しかしながら、ナイロン超極細繊維を本開示の酸性染料組成物で染色すると、酸性染料の使用量を増やすことなく所望の染色濃度を達成することができる。また、染料廃液中の染料濃度が低く、酸性染料分子の利用率が高くなり、環境保護の目的を達成することができる。
【0014】
本発明の他の新規な特徴は、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施形態は、本開示の上記及び他の技術内容、特徴及び/又は効果を明確に示すためのものである。特定の実施形態による説明を通して、当業者は、上記の目的を達成するために本開示が採用する技術的な手段および効果をさらに理解することができる。さらに、本明細書に開示される内容は、当業者にとって容易に理解および実施され得るので、本開示の概念から逸脱しない同等のすべての変更または設計変更は、添付の特許請求の範囲に包含されるべきである。
【0016】
本開示の以下の実施形態では、ナイロン超極細繊維(nylon microfiber textiles)は、様々な酸性染料組成物で染色される。以下、染色工程(dyeing process)、洗浄工程(washing off process)、および、検査工程(examination process)の工程を簡単に説明する。
【0017】
<染色工程>
染色するナイロン繊維(% o.w.f.)に対応する重量%の酸性染料、および、pH5の緩衝液を染色ポットに入れた。次に、染色ポットに水を加え、添加する水の量を染色するナイロン繊維の重量の20倍(浴比1:20)とした。染浴を98℃にゆっくりと加熱(加熱速度=1.0〜1.5℃/分)し、温度を30分間維持した。次に、ナイロン繊維を染浴から取り出し、染料廃液の吸光度を検出し、染色されたナイロン繊維を洗浄した。
【0018】
<洗浄工程>
染色工程後、染色されたナイロン繊維を染浴から取り出した。染色されたナイロン繊維のピックアップ率(pick−up rate)は200%であった。次いで、染色されたナイロン繊維を、一定量の水を含むポットに入れた。なお、水の量と染色されたナイロン繊維比は1:20であった。染色されたナイロン繊維を、室温で10分間洗浄した。洗浄工程は、3回繰り返した。
【0019】
<検査工程>
染料廃液を石英管(幅1cm)に入れ、可視光吸光度をUV/VIS分光光度計で測定した。可視光バンド(400nm〜700nm)を走査し、ピーク吸光度を記録した。
【0020】
<化学的酸素要求量(COD)試験>
過剰量の重クロム酸カリウム(potassium dichromate)溶液を水試料に加え、続いて硫酸溶液(約50重量%)中で還流した。残りの重クロム酸カリウムを硫酸第一鉄アンモニウム溶液で滴定した。化学的酸素要求量(COD)は、重クロム酸カリウムの消費量によって決定することができ、CODは、水試料中で酸化され得る有機分子の量を表す。
【0021】
<American dye manufacturers institute(ADMI)の価値テスト>
真の色(true color)は、濁度を除去した後の水サンプルの色を意味する。590nm、540nm及び438nmにおける水試料の透過率を分光光度計で測定した。三刺激値(Tristimulus value)およびマンセル値(Munsell values)を透過率から計算し、次いで、Adams−Nickersonの色彩値式(Adams−Nickerson chromatic value formula)によって、DE値(デルタE、デルタ誤差(Delta Error)とも呼ばれる。)を決定した。DE値は、光強度の計算された値であり、市販品で許容される最大色差を1単位として計算される。DE値を較正曲線と比較して、水サンプルのADMI値を得た。
【0022】
<実施例1>
Acid Black 172およびCaCl
2を混合して、ナイロン超極細繊維とダブルジャージーナイロン繊維を染色した。本実施形態では、添加する水の量は、ナイロン繊維の重量の10倍(浴比=1:10)とした。ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は5%であった。結果を以下の表1に示す。
【0024】
表1に示す結果から、ナイロン超極細繊維を染色する際に、CaCl
2および酸性染料を共用すると、染料廃液の吸光度を著しく低下することができた。
【0025】
<実施例2>
Acid Black 172およびCa(CH
3COO)
2は、ナイロン超極細繊維とダブルジャージーナイロン繊維の染色に適していた。本実施形態では、添加する水の量は、ナイロン繊維の重量の10倍(浴比=1:10)とした。ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は5%であった。結果を以下の表2に示す。
【0027】
表2に示す結果から、ナイロン超極細繊維を染色する際に、Ca(CH
3COO)
2および酸性染料を共用すると、染料廃液の吸光度を著しく低下することができた。
【0028】
<実施例3>
Acid Black 172およびCaCl
2を混合して、ナイロン超極細繊維を染色した。ここで、CaCl
2を含まない対照群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は9.5%であった。一方、CaCl
2を用いた群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は6%であり、酸性染料に対するCaCl
2の重量比は8%であった。CaCl
2を含む群のナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は、CaCl
2を含まない対照群の重量比よりも低いが、同程度の染色強度が得られた。結果を以下の表3に示す。
【0030】
表3に示す結果から、ナイロン超極細繊維を染色する際に、CaCl
2および酸性染料を共用すると、酸性染料の使用量を減らすことができ、染料廃液の吸光度が低く、ナイロン超極細繊維の染色濃度が大幅に改善された。
【0031】
また、本実施形態では、染料廃液のCODおよびAMDI値、並びに、3回の洗浄工程後の全洗浄排水(overall effluent)のCODおよびAMDI値を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0033】
表4に示す結果から、CaCl
2および酸性染料を共用してナイロン超極細繊維を染色すると、染料廃液および洗浄工程後の全洗浄排水のCODおよびADMI値を大幅に低下できるので、現在のグリーンケミストリーにおける環境保護の目的を達成することができる。
【0034】
<実施例4>
Acid Yellow 220(Y−220)およびCaCl
2を混合して、ナイロン超極細繊維を染色した。ここで、CaCl
2を含まない対照群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は1%および4%であった。一方、CaCl
2を用いた群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は1%および4%であり、酸性染料に対するCaCl
2の重量比は8%であった。結果を以下の表5に示す。
【0036】
<実施例5>
Acid Red 315(R−315)およびCaCl
2を混合して、ナイロン超極細繊維を染色した。ここで、CaCl
2を含まない対照群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は1%および4%であった。一方、CaCl
2を用いた群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は1%および4%であり、酸性染料に対するCaCl
2の重量比は8%であった。結果を以下の表6に示す。
【0038】
<実施例6>
Acid Blue 317(B−317)およびCaCl
2を混合して、ナイロン超極細繊維を染色した。ここで、CaCl
2を含まない対照群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は1%および4%であった。一方、CaCl
2を用いた群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は1%および4%であり、酸性染料に対するCaCl
2の重量比は8%であった。結果を以下の表7に示す。
【0040】
<実施例7>
Acid Blue 113(B−113)およびCaCl
2を混合して、ナイロン超極細繊維を染色した。ここで、CaCl
2を含まない対照群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は1%および4%であった。一方、CaCl
2を用いた群では、ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は1%および4%であり、酸性染料に対するCaCl
2の重量比は8%であった。結果を以下の表8に示す。
【0042】
表5〜表8に示す結果から、CaCl
2および酸性染料を共用してナイロン超極細繊維を染色し、ナイロン超極細繊維に対する酸性染料の重量比を4%とした場合、染料廃液の吸光度を低減することができた。また、洗浄工程後の廃液中の染料濃度を低減することができ、洗浄工程中に発生する排水量を大幅に低減することができる。
【0043】
<実施例8>
Acid Black 172を、CaCl
2とCaSO
4それぞれに混合して、ナイロン超極細繊維を染色した。ナイロン繊維に対する酸性染料の重量比は6%だった。酸性染料に対するCaCl
2の重量比は8%であった。酸性染料に対するCaSO
4の重量比は7.37%であった。結果を以下の表9に示す。
【0045】
表9に示す結果から、Ca
2+当量濃度が同じ場合、CaCl
2およびCaSO
4の群では、染料廃液および洗浄工程後の排水中の染料の減少効果は類似していたが、当実験では、CaCl
2を含む群がより良好な効果を示した。
【0046】
以上の結果より、本開示の酸性染料組成物に水溶性Ca
2+化合物を添加すると、濃色染色をする際に、染料廃液中の残存染料濃度を低減することができる。また、洗浄工程で発生する排水を大幅に削減することができ、現在のグリーンケミストリーにおける環境保護の目的を達成することができる。
【0047】
本開示は、その実施形態に関連して説明されたが、以下の特許請求の範囲として開示される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、多くの他の可能な修正および変形がなされ得ることが理解されるべきである。
【0048】
本出願は、2017年10月25日に出願された台湾特許出願第106136665号に基づく優先権を主張し、当該台湾特許出願に開示された事項は、参照により、本出願に組み込まれる。