(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面において、同様の参照数字は全体を通して同様の要素を指し、種々の特徴は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。用語「結合する(couple)」または「結合される(coupled)」は、間接的もしくは直接的な電気もしくは機械接続、または、それらの組み合わせを含むことが意図される。例えば、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する、または、結合される場合、そうした接続は、直接的な電気接続を介するもの、または、一つまたは複数の介在デバイスおよび接続を介した間接的な電気接続を介するものであり得る。
【0009】
スイッチングコンバータは、これまで、単相DC−ACコンバータに対し約5W/立方インチなど、不十分な電力密度となってしまい、多くのサーバ電力供給が、25W/立方インチのみの電力密度しか有していない。DC−ACコンバータまたはAC−DCコンバータの電力密度を改善するために、例示的な実施形態は、DCバス回路においてリップル電圧をレギュレートまたは制御するためのリップルフィルタ回路要素および制御方法を提供する。説明される例は、選択的に、リップルエネルギーをDCバスコンデンサから蓄積コンデンサに蓄積し、または伝送し、その後、制御された方式で蓄積コンデンサからDCバスコンデンサにリップルエネルギーを伝送する。幾つかの例が、DCバスコンデンサと蓄積コンデンサとの間のリップルエネルギーの伝送の間、第1の値と第2の一層高い値との間のリップルフィルタインダクタ電流のヒステリシス制御を提供するリップルフィルタスイッチング制御回路要素を含む。また、幾つかの例は、蓄積コンデンサ電圧がDCバス電圧を越えるとき、蓄積コンデンサからDCバスに電流を導通させるためにダイオード接続を、および、蓄積コンデンサ電圧が負であるとき、蓄積コンデンサから電流を導通させるために第2のダイオードを提供する。このようにして、説明される例は、リップルフィルタ回路の蓄積コンデンサ上の潜在的な過電圧ストレスを緩和または回避する。
【0010】
例示的な実施形態の幾つかの概念が、複雑な閉ループ制御およびパラメータ推定を要する他のリップルポート方法に対して利点を提供し、蓄積コンデンサの最大限の使用を促進し得る。また、幾つかの制御回路の例において、位相レグにおける関連する寄生インダクタンス増加においてスイッチ電流の感知を要することなく、リップルフィルタインダクタを流れる電流を表す信号と共に、通常スイッチングコンバータ閉ループ動作にも利用可能なDCバス電圧フィードバックシグナリングを用いる。また、幾つかの説明される例は、他のリップルポートアプローチに関連する不連続電流モードまたは不連続伝導モード(DCM)動作と関連した電流ストレスを回避する。説明される例は、有利にも、所与のスイッチング電力コンバータ設計において、DC静電容量の低減または最小化を促進し、これが、潜在的に大規模な電力密度の増加につながる。また、開示される概念により、無電解コンデンサの使用が、電力密度を高めつつDCバス静電容量を提供することを可能にし、それにより、電解コンデンサに関連する故障の問題が回避される。また、説明される例は、(例えば、AC−DCコンバータアプリケーションのための)DC負荷の駆動に用いるための、または、DC−ACコンバータアプリケーションにおけるAC負荷を駆動するように、スイッチングインバータに平滑DC入力を提供するための、平滑DCバス電圧の提供を促進するために、DC側ダブルACリップルのレギュレートまたは制御を分割する。
【0011】
図1はスイッチング電力コンバータ100を図示し、これは、異なるアプリケーションにおけるAC−DCコンバータまたはDC−ACコンバータであり得る。電力コンバータ100は、第1の(例えば、正の)DCバスノード112と、第2のDCバスノード114とを備えるDCバス回路を含む。一例において、第2のDCバスノード114は、接地接続またはその他の参照電圧であり得る、システム共通接続COMである。また、DCバス回路は、第1のDCバスノード112と第2のDCバスノード114との間に接続されるDCバスコンデンサC2を含む。一例において、DCバス回路は、約400V DCなど、特定の範囲のDCバス電圧向けに設計される。例示的な実施形態の概念は、任意の公称DCバス電圧レベルまたは予期されるDCバス電圧レベルを有するスイッチング電力コンバータシステムと関連して用いられ得、説明される例に限定されない。一例において、DCバス端子112および114は、DC電源130(例えば、DC−ACコンバータ)からDC入力電力を受けるために結合される。その他の例において、DCバスは、DC負荷130(例えば、AC−DCコンバータ)を駆動するために接続される。DCバスノード112および114は、DCバス回路を、AC負荷またはAC電源150とインターフェースするために、スイッチングデバイスを含むスイッチング回路140にも接続される。
図4および
図5は、用いられ得るスイッチング回路140の二つの例を図示する。動作において、DC電源130またはアクティブ整流器140が、DCバスノード112とDCバスノード114との間にバス電圧を提供する。説明される例において、DCバス電圧は、第2のDCバスノード114に対して、第1のDCバスノード112において正である。
【0012】
また、スイッチング電力コンバータ100は、DCバスノード112および114に接続されるリップルフィルタ回路110を含む。動作において、リップルフィルタ回路110は、蓄積コンデンサC1と、第1のスイッチS1および第2のスイッチS2によって形成されるハーフブリッジスイッチング回路レグと、インダクタL1とを用いて、DCバス回路からリップルエネルギーを蓄積する。スイッチS1およびS2は、DCバスノード112および114間のDCバス電圧を表す電圧センサ信号VDC、および、インダクタL1を流れる電流IL1を表すインダクタ電流信号など、一つまたは複数のフィードバック信号に従って、制御回路120によって動作される。一例においてリップルフィルタ回路110は、インダクタ電流IL1を測定するためにインダクタL1に直列に結合される、電流センサ128を含む。電圧信号を提供する誘導性センサまたは感知レジスタを含み、任意の適切な電流センサが用いられ得る。センサ128は、制御回路120に信号IL1を提供するために出力126を有する。第1の(上側)スイッチS1は、
図1に示す方向に流れる電流IL1を用いてコンデンサC1を充電するために、コンデンサをインダクタL1を介して第1のDCバスノード112に選択的に接続し、これにより、DCバス回路から蓄積コンデンサC1へリップルエネルギーが伝送される。第2の(下側)スイッチS2は、インダクタL1を介してコンデンサC1を放電するために、蓄積コンデンサC1の上側端子を第2のDCバスノード114に選択的に接続するように動作し、これにより、蓄積コンデンサC1からDCバス回路へエネルギーが伝送される。
【0013】
第1のスイッチS1は、第1のDCバスノード112に接続される第1の(上側)端子、および、スイッチングノード116に接続される第2の端子を含む。スイッチS1の第1の制御端子122が、制御回路120から第1のスイッチング制御信号SC1を受け取るために結合される。第2のスイッチS2は、スイッチングノード116に接続される第1の端子、第2のDCバスノード114に接続される第2の端子、および、制御回路120から第2のスイッチング制御信号SC2を受け取るために結合される第2の制御端子124を含む。第1および第2のスイッチS1およびS2は、スイッチングノード116がスイッチS1およびS2を接合する状態で、DCバスノード112とDCバスノード114との間にハーフブリッジスイッチングレグを形成する。インダクタL1は、スイッチングノード116に接続される第1の端子、および、第2のノード118に接続される第2の端子を含む。蓄積コンデンサC1は、第2のノード118に接続される第1の(上側)端子、および、第2のDCバスノード114に接続される第2の(下側)端子を含む。その他の例において、蓄積コンデンサの第2の端子C1は、第1のDCバスノード112に接続される。
【0014】
DCバス回路のリップル電圧をレギュレートするため、交互に、蓄積コンデンサC1における蓄積のためにDCバスコンデンサC2からインダクタL1を介してリップルエネルギーを伝送し、その後、蓄積コンデンサC1からDCバスコンデンサC2にリップルエネルギーを伝送するために、制御回路120は、それぞれ、スイッチング制御信号SC1およびSC2を制御端子122および124に提供することによってスイッチS1およびS2を動作させる。この動作は、
図1に示すような蓄積コンデンサC1の電圧を表す電圧信号VC1を制御する。蓄積コンデンサC1の交互の蓄積(例えば、充電)および放電は、DCバス回路のリップル電圧の量を制御またはレギュレートする。これは、DCバスコンデンサC2に必要とされる静電容量の量を緩和する。一層低い静電容量要件は、電解DCバスコンデンサの必要性を緩和し、有利にも、スイッチング電力コンバータ100の電力密度の潜在的に著しい増加を可能にする。幾つかの例において、DCバスコンデンサC2は無電解である。また、C1およびC2は単一コンデンサ構成要素として図示されるが、DCバスコンデンサC2および/または蓄積コンデンサC1は、任意の適切な直列および/または並列構成で接続される二つ以上のコンデンサ構成要素であってもよい。
【0015】
また、リップルフィルタ回路110は、第2のノード118に接続されるアノードと、第1のDCバスノード112に接続されるカソードとを備える第1のダイオードD1を含む。動作において、蓄積コンデンサC1の正電圧VC1が、第1のDCバスノード112と第2のDCバスノード114の間のDCバス電圧VDCを超えるとき、ダイオードD1は、蓄積コンデンサC1からDCバスコンデンサC2に電流を導通させる。リップルフィルタ回路110は、第2のDCバスノード114に接続されるアノードと、第2のノード118に接続されるカソードとを備える第2のダイオードD2を含む。蓄積コンデンサC1の電圧VC1が負であるとき、ダイオードD2は、蓄積コンデンサC1の第2の端子から電流を導通させる。このようにして、リップルフィルタ回路110は、ダイオードD1およびD2が、蓄積コンデンサC1上の過電圧ストレスを緩和または防止し、(例えば、DCバス電圧VDCに近い電圧VC1を一時的に蓄積するために)蓄積コンデンサC1の蓄積容量の全てまたは大部分を有利に利用し得る。
【0016】
図2は、ヒステリシス電流制御回路240および電圧制御回路250を提供する、例示的な制御回路120を示す。回路120は、リップルフィルタ回路スイッチS1およびS2を動作させるため、および、リップル電圧をレギュレートするため、および、
図1のコンバータにおけるインダクタ電流IL1を制御するために、電圧および電流制御ループを実装する。この例において、電圧制御回路250はフィルタ回路を含み、フィルタ回路は、第1および第2のローパスフィルタ回路200および202、ならびに、加算回路204として図示される。フィルタ回路200、202、204は、第1のDCバスノード112のDCバス電圧VDCを表す第1の信号VDCをフィルタして、DCバス回路のリップル電圧を表す第2の信号VRを提供する。この例において、第1のローパスフィルタ回路200(図においてLPF1)は、一層高い周波数スイッチングノイズ構成要素を除去するために5〜10kHzの遮断周波数を有し、出力201で第1のフィルタ出力信号VDを提供する。第2のローパスフィルタ回路202は、約10Hzなど、AC負荷または電源150の基本AC周波数を下回る遮断周波数を有する。第2のフィルタ回路202は、DCバス回路のDC電圧を表す第2のフィルタ信号VFを提供する出力203を有する。加算回路204は、VD信号からVF信号を減算して、出力ノード205で第2の信号VRを提供する。信号VRは、DCバス回路のリップル電圧を表す。
【0017】
図2における電圧制御回路250は、VR信号に従ってDCバス回路のリップル電圧をレギュレートするように電圧制御ループを実装するため、二つのコンパレータ回路、二つの基準回路、論理ゲート、および、ドライバ回路を含む。信号VRを受け取るために、第1のコンパレータ206が、第1のレジスタR1を介して加算回路出力ノード205に接続される非反転入力(+)を有する。第2のレジスタR2およびコンデンサC3の並列接続が、非反転入力とコンパレータ206の出力207との間に接続される。第1のコンパレータ出力207は、頂部側スイッチイネーブル信号ENTを提供する。コンパレータ206の反転入力(−)が、第1の閾値として用いられる基準電圧TH1を提供する第1の電圧基準208に接続される。リップル電圧信号VRが第1の閾値TH1を超えるとき、コンパレータ206は、第1の(例えば、ハイ)状態またはレベルでイネーブル信号ENTを提供する。VR信号を受け取るために、第2のコンパレータ220が、加算回路出力ノード205に接続される反転入力を含む。第2のコンパレータ220の非反転入力が、第2の電圧基準220から第2の閾値電圧TH2を受け取るために、レジスタR3を介して接続される。レジスタR4およびコンデンサC4によって形成される並列フィードバック回路が、底部側イネーブル信号ENBを提供するために、非反転入力と第2のコンパレータ220の出力221との間に接続される。リップル電圧信号VRが第2の閾値電圧TH2より低いとき、コンパレータ220は、底部側イネーブル信号ENBをアサートする(アクティブハイ)。
【0018】
図1および
図2を参照すると、電圧制御回路250は、ドライバ回路要素および論理ゲートを含み、ドライバ回路要素および論理ゲートは、スイッチング制御信号SC1を第1のスイッチS1の制御端子122に提供し、第2のスイッチング制御信号SC2を第2のスイッチS2の制御端子124に提供する。電圧制御回路250は、リップルフィルタ回路110におけるインダクタ電流IL1のヒステリシス電流制御を促進するために、電流制御回路240から、第1および第2の駆動イネーブル信号DRおよびDRNを受け取る。頂部側スイッチイネーブル信号ENTは、ANDゲート210に入力として提供される。ANDゲート210の第2の入力が、電流制御回路240からDR信号を受け取る。ANDゲート210の出力は、ORゲート214に入力を提供する。ORゲートの出力は、リップルフィルタ回路110の上側の第1のスイッチS1の制御端子122に接続される。
図1の例において、スイッチS1およびS2は、NMOSトランジスタである。その他の実装が、異なるタイプのトランジスタ(例えば、バイポーラまたはIGBT)を用いて可能である。また、その他の例が、PMOSトランジスタまたはNMOSおよびPMOSトランジスタの組み合せを用いて成されてもよく、その場合、電圧制御回路250におけるドライバ回路要素の論理は、アクティブロースイッチング制御信号SC1および/またはSC2を提供するように改変される。
【0019】
図2の例において、ANDゲート210は、ENTおよびDR信号がいずれもハイのとき、第1のスイッチング制御信号SC1を選択的に提供するために、ORゲート214に論理ハイ出力信号を提供する。これは、正のリップル電圧をアドレスするために電流制御回路240が正常極性を選択したこと、および、電圧制御回路250の第1のコンパレータ206が、第2の信号VRが第1の閾値TH1を越えることを検出したこと、を示す。第2のコンパレータ220の出力221は、底部側イネーブル信号ENBを入力としてANDゲート224に提供し、ANDゲート224の第2の入力は、電流制御回路240から駆動イネーブル信号DRを受け取る。ANDゲート224の出力は、第2のORゲート228に入力として接続される。リップルフィルタ回路110の第2のスイッチS2の動作を制御するために、ORゲート228の出力124が、第2のスイッチング制御信号SC2を提供する。ORゲート228の他方の入力は、ENTおよびDRN信号を入力として受け取る別のANDゲート226によって提供される。一例において電圧制御回路250はさらに、コンパレータ出力207および221に接続される入力を備える別のORゲート216を含む。ORゲート216はインバータ218に信号を提供し、インバータ218はイネーブル信号ENを生成する。イネーブル信号ENは、ENT或いはENB信号がハイのとき、アクティブローであり、スイッチング回路140の動作を制御するために、または、スイッチングコンバータシステム100内のその他の制御目的で、ホストシステムによって用いられ得る。その他の例において、電流および電圧制御回路240、250の論理の全て又は一部が、ファームウェアおよび/またはソフトウェアプログラムコードまたは命令を介して、マイクロコントローラまたはコンピュータなどのプログラム可能またはプログラムされたデバイスにおいて実装され得る。
【0020】
一例において、第1の閾値TH1は、公称DCバス電圧を約3V上回る第1のリップル電圧閾値VTH1(
図3)を表す。例えば、DCバスが、第1のDCバス端子112と第2のDCバス端子114との間に、400V DCの電圧を有する場合、第1のDCバス端子112の電圧が、第2のDCバス端子114の電圧を上回る約403Vであるとき、検出器206はENT信号をアサートする(アクティブハイ)。第2のANDゲート212が、第1のスイッチング制御信号SC1を選択的にイネーブルするために、ORゲート214に第2の入力を提供する。ANDゲート212は、電流制御回路240から反転駆動イネーブル信号DRNを、および、第2のコンパレータ220からENB信号を受け取るために入力を有する。リップル電圧信号VRが第2の閾値電圧TH2を下回るとき、ENB信号は、第2のコンパレータ220によってアサートされる(アクティブハイ)。例えば、電圧基準222は、公称DCバス電圧を約3V下回る第2のリップル電圧閾値VTH2(
図3)を表すレベルの第2の閾値電圧TH2を提供する。第1および第2の閾値TH1およびTH2により、電圧制御回路250は、DCバスコンデンサC2のための管理可能な静電容量要件を提供する範囲内(例えば、397V〜403V)でDCバス回路リップル電圧を効果的にレギュレートすることが可能となる。これにより、スイッチング電力コンバータ100の電力密度の改善をもたらすために、無電解コンデンサC2の使用、および、場合によっては、DCバスコンデンサC2の全体の物理的サイズの著しい縮小が促進される。
【0021】
ORゲート214は、電流制御回路240からの駆動イネーブル信号DRおよびDRNに応じた第1の閾値TH1または第2の閾値TH2に従って、および、電圧閾値比較に基づくENTおよびENB信号に従って、第1のスイッチS1を制御するために、第1のスイッチング制御信号SC1を選択的にイネーブルする。ORゲート228は、DRおよびDRN信号に基づく閾値TH1およびTH2のうちの他方に従って第2のスイッチS2を制御するために、第2のスイッチング制御信号SC2を選択的にイネーブルする。例示の例において、ドライバ回路要素と電圧制御回路250の論理とは、DCバス回路のリップル電圧をレギュレートするために、信号VRが第1の閾値TH1を超えることに応答して、スイッチング制御信号SC1またはSC2のうちの一方を選択的にイネーブルし、信号VRが第2の閾値TH2より低くなることに応答して、第1および第2のスイッチング制御信号SC1、SC2のうちの他方を選択的にイネーブルする。
図3に関連して下記でさらに図示および説明されるように、DCバス電圧VDCが上側閾値VTH1を超えることに応答して、DCバスコンデンサC2から蓄積コンデンサにC1リップルエネルギーを選択的に伝送するために、電圧制御回路250は、第1および第2のスイッチング制御信号SC1およびSC2を選択的に提供することによってDCバス回路のリップル電圧を制御する。また、電圧制御回路250は、DCバス電圧VDCが下側閾値VTH2より低くなることに応答して、蓄積コンデンサC1からDCバスコンデンサC2にリップルエネルギーを選択的に伝送するために、信号SC1およびSC2を制御する。
【0022】
図2にさらに示すように、電流制御回路240は、電流制御ループを実装する。インダクタL1を流れるインダクタ電流IL1の絶対値を表す信号|IL1|に従って、任意の所与の時間に、第1のスイッチング制御信号SC1または第2のスイッチング制御信号SC2を選択的にイネーブルするために、電流制御回路240は、電圧制御回路250に駆動イネーブル信号DRおよびDRNを選択的に提供する。電流制御回路240は、DCバスコンデンサC2と蓄積コンデンサC1との間のリップルエネルギーの伝送の間、第1の値ITH1と一層高い第2の値ITH2との間のインダクタ電流IL1の絶対値のヒステリシス制御を提供する。この例では、正常駆動信号DRは、S−Rフリップフロップ238のQ出力から電圧制御回路250に提供され、反転駆動信号DRNは、フリップフロップ238のQ’出力によって提供される。
【0023】
電流制御回路240は、インダクタ電流センサ信号IL1を受け取り、絶対電流値信号|IL1|を提供する、絶対値回路242を含む。一例において整流器など、任意の適切な絶対値回路242が用いられ得る。信号|IL1|は、第3の電圧基準232からの第3の閾値TH3との比較のために、第3のコンパレータ230の反転入力に提供される。電圧基準232は、
図3における第1の電流レベルITH1(例えば、10A)に対応する閾値TH3をセットする。コンパレータ230の出力231が、フリップフロップ238にセット(S)入力を提供する。絶対電流値信号|IL1|が閾値TH3より低くなるとき、フリップフロップ238は、電圧制御回路250のANDゲート210および224をイネーブルするために、DR信号をハイにセットする。この状態において、コンパレータ206が、閾値TH1を超えるリップル電圧信号VRによって信号ENTをアサートするとき、第1のスイッチング制御信号SC1がイネーブルされる(S1がオンにされ得る)。また、この状態において、コンパレータ220が、閾値TH2を下回って下がるリップル電圧信号VRによって信号ENBをアサートするとき、第2のスイッチング制御信号SC2がイネーブルされる(S2がオンにされ得る)。
【0024】
また、電流制御回路240は、非反転入力で信号|IL1|を受け取り、反転入力で第4の電圧基準236から第4の閾値TH4を受け取る、別のコンパレータ234を含む。コンパレータ234の出力235が、フリップフロップ238にリセット(R)入力を提供する。電圧基準236は、
図3における第2の一層高い電流レベルITH2(例えば、13A)に対応する閾値TH4をセットする。絶対電流値信号|IL1|が閾値TH4を超えるとき、フリップフロップ238は、電圧制御回路250のANDゲート212および226をイネーブルするために、DRN信号をハイにセットする。この状態において、コンパレータ220が、閾値TH2を下回って下がるリップル電圧信号VRによって信号ENBをアサートするとき、第1のスイッチング制御信号SC1がイネーブルされる(S1がオンにされ得る)。また、この状態において、コンパレータ206が、閾値TH1を超えるリップル電圧信号VRによって信号ENTをアサートするとき、第2のスイッチング制御信号SC2がイネーブルされる(S2がオンにされ得る)。
【0025】
制御回路120は、リップル電圧をレギュレートするためにデュアルループ制御を実装し、DCバス回路における、一層低い静電容量の無電解コンデンサC2の使用を可能にする。電圧制御回路250は、DCバス電圧を交互に支えるために、リップルレベルを小さくするようにDCバスコンデンサC2から蓄積コンデンサC1にリップルエネルギーを伝送し、その後、蓄積コンデンサC1からDCバスコンデンサC2にリップルエネルギーを伝送するために、(
図3における電圧閾値VTH1およびVTH2に対応する)電圧基準208および222によって規定される範囲においてDCバス回路のリップル電圧をレギュレートするように電圧制御ループを実装する。電圧制御回路250による蓄積コンデンサC1の交互の充電および放電の間、電流制御回路240は、第1の値ITH1と一層高い第2の値ITH2との間のインダクタ電流IL1の絶対値を制御するために、ヒステリシスを有する電流制御ループを実装する。このヒステリシス電流制御は、リップルフィルタインダクタL1に対するストレスを緩和する。また、
図1におけるダイオードD1およびD2は、負または過度に正のコンデンサ電圧を防止するために、蓄積コンデンサC1に対する過電圧ストレスを抑制する。リップルフィルタ回路110のこれらの利点は、特に、DCバスコンデンサC2の物理的サイズおよび静電容量を縮小する際に、著しい空間節約を促進し、それにより、スイッチング電力コンバータ電力密度が高まる。
【0026】
図3は、スイッチングインバータ140の安定状態動作の間、DC−ACコンバータ実装のケースの場合の
図1および
図2のリップルフィルタ回路110およびコンバータ100における種々の信号を図示する波形
図300を示す。この例では、AC出力電圧曲線302およびAC出力電流曲線304が、AC負荷150を駆動するためのスイッチングインバータ140の概ね正弦波の出力を図示する。DCバス回路は、DC入力電力をインバータ140に提供する。インバータ140のスイッチング動作が、曲線308として示す、DCバス電圧VDCにおけるリップル電圧をつくる。リップルフィルタ回路110は、一般に、感知されたVDCおよびIL1信号に従ってインバータスイッチングとは独立して動作する。リップルフィルタ回路110は、スイッチング回路140が、DCバス回路においてリップル電圧をつくるアクティブ整流器である、AC−DCコンバータ実装と同様である。
【0027】
図3は、頂部側イネーブル信号ENTを曲線310として示し、底部側イネーブル信号EBは曲線312として示される。DCバス電圧VDCが電圧制御閾値VTH1およびVTH2の外に遷移するとき、電圧制御回路250は、スイッチS1およびS2の作動を選択的にイネーブルする。上側閾値VTH1を上回る(例えば、403Vを上回る)遷移では、回路110は、蓄積コンデンサC1を充電するためにDCバス回路からエネルギーを伝送し、これは、蓄積コンデンサ電圧曲線312(
図1におけるVC1)の上昇部分として示される。VDCが下側閾値VTH2より低く(例えば、397Vより低く)遷移するとき、スイッチS1およびS2は、蓄積コンデンサC1からDCバスコンデンサC2にエネルギーを伝送するように動作され、これは、VC1曲線314の減少部分として示される。DCバス電流曲線306(
図1におけるIDC)は、S1およびS2をオンおよびオフにすることに応答して遷移される。
【0028】
図3における曲線316は、インダクタL1を流れるリップルフィルタ回路インダクタ電流IL1を示す。この例では、蓄積コンデンサC1を充電するために、正電流がスイッチングノード118からインダクタL1を介して流れる。これがバス電圧VDCを減少させ、T0とT1との間、T3とT4との間、および、さらにT7とT8との間の曲線308の減少として示される。電圧制御回路250は、負電流IL1を導通させるためにスイッチS1およびS2を動作させることによって、蓄積コンデンサC1からDCバスコンデンサC2にエネルギーを伝送する。これが、蓄積コンデンサ電圧VC1(曲線314)の減少を引き起こし、DCバス電圧VDC(曲線308)を増加させ、これらは、
図3においてT1とT2との間、T5とT6との間、および、さらにT9の後に示される。VDCが閾値VTH1と閾値VTH2との間のレギュレート範囲にある介在期間の間、電圧制御回路250はスイッチング制御信号SC1およびSC2をディセーブルし、これは、
図3において、T2とT3との間、T4とT5との間、T6とT7との間、および、さらにT8とT9との間に示される。
【0029】
電流制御回路240は、C1を充電するために+ITH1〜+ITH2の正の閾値範囲内で、または、C1を放電するため−ITH1〜−ITH2の負の閾値範囲内でインダクタ電流IL1をレギュレートするように、スイッチング制御信号SC1およびSC2のイネーブルを選択的に制御するために、フリップフロップ238からDRおよびDRN信号を提供する。図示される例では、ITH1は10Aであり、ITH2は13Aである。図示される例では、電流制御回路240は、SC1をイネーブルして、電流IL1が+10Aから+13Aまで上昇するように電流を導通させ、その後、信号DRおよびDRNを反転させてSC2をイネーブルして、インダクタ電流を+13Aから+10Aまで減少させるためにS2を介して正電流を導通させる(例えば、
図3における、T0とT1との間、T3とT4との間、および、さらにT7とT8との間)。
図3におけるT1とT2との間、T5とT6との間、および、さらにT9の後の負電流レギュレートでは、電流制御回路240は、SC2をイネーブルして、負電流IL1が−10Aから−13Aまで増加するように電流を導通させ、その後、信号DRおよびDRNを反転させてSC1をイネーブルして、インダクタ電流を−13Aから−10Aまで減少させるためにS1を介して負電流を導通させる。その他の電流レギュレート範囲が用いられてもよく、正および負の範囲は、図示するものと同じであってもよく、または、他の例において異なってもよい。インダクタ電流IL1を制御すると、インダクタのサイズの最小化が促進され、それゆえさらに、コンバータ電力密度を増加させるのに役立つ。
【0030】
図4および
図5を参照すると、開示されるリップルフィルタ回路110は、様々な異なるスイッチング回路140の組み合せにおいて用いられ得る。その他のインバータ/整流器回路が用いられてもよく、本開示は、図示される例に限定されない。
図4は、DCバス回路を単相AC負荷またはAC電源150とインターフェースするために
図1のコンバータにおいて用いられ得る、例示のフルHブリッジスイッチングインバータまたはアクティブ整流器回路140を示す。この場合におけるスイッチング回路140は、DCバスノード112とDCバスノード114との間に接続されるハーフブリッジスイッチング回路レグを形成するスイッチングデバイスS3およびS4を含み、スイッチングノードが、出力インダクタL2を介して、AC電源またはAC負荷150の第1のAC接続に接続されている。他方のAC端子は、第2のハーフブリッジスイッチングレグ回路におけるスイッチングデバイスS5およびS6を接合するスイッチングノードに接続される。
図5は、単相DC−ACスイッチング電力コンバータにおける例示的な6デバイスのスイッチングインバータ回路140、および、上述したようなリップルフィルタ回路110を示す。この例におけるスイッチング回路140は、DC電源の出力から変換された電力を用いてAC負荷150を駆動するようにDCバス回路からの電力を変換するためのスイッチングインバータである。この例示のインバータ140は、六つのスイッチングデバイスS7〜S12を含み、DCバスノード112とDCバスノード114との間で、S7、S12、およびS10は、第1のレグ回路において接続され、S8、S9、およびS11は、第2のレグ回路において接続されている。各レグ回路は、対応する出力インダクタL3またはL4を介してAC負荷150に接続される上側スイッチングノード、および、対応するダイオードD3またはD4によって他方の上側スイッチングノードに接続される下側スイッチングノードを有する。また、
図5における例示のインバータ140は、出力フィルタコンデンサC5を含む。
【0031】
例示的な実施形態のさらなる態様が、スイッチング電力コンバータのDCバス回路におけるリップル電圧を制御するための方法を提供する。一例において、この方法は、第1および第2のスイッチを、DCバス回路の第1のDCバスノード及び第2のDCバスノード間で互いに直列に接続すること、第1および第2のスイッチを接合するスイッチングノードにインダクタの第1の端子を接続すること、インダクタの第2の端子とDCバスノードの一つとの間に蓄積コンデンサを接続すること、および、DCバス回路のリップル電圧をレギュレートするため、交互に、DCバス回路のDCバスコンデンサからインダクタを介して蓄積コンデンサにリップルエネルギーを伝送し、その後、蓄積コンデンサからインダクタを介してDCバスコンデンサにリップルエネルギーを伝送するためにスイッチを制御することを含む。この方法はさらに、DCバスコンデンサと蓄積コンデンサとの間のリップルエネルギーの伝送の間、第1の値と一層高い第2の値との間のインダクタ電流の絶対値のヒステリシス制御を提供するために、インダクタを流れるインダクタ電流の絶対値を表す信号に従って、第1および第2のスイッチの動作を選択的にイネーブルすることを含む。幾つかの例において、この方法はさらに、DCバス回路のリップル電圧を表す第2の信号を提供するために、DCバス回路のDCバス電圧を表す第1の信号をフィルタすること、ならびに、DCバス回路のリップル電圧をレギュレートするために、第2の信号が第1の閾値を越えることに応答して第1および第2のスイッチのうちの一方を選択的に動作させることと、第2の信号が第2の閾値を下まわって下がることに応答して第1および第2のスイッチのうちの他方を選択的に動作させることを含む。
【0032】
特許請求の範囲内で、説明される実施形態における改変が可能であり、他の実施形態が可能である。