特許第6763986号(P6763986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763986
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】頭蓋クランプの開閉器具および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/14 20160101AFI20200917BHJP
【FI】
   A61B90/14
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-20328(P2019-20328)
(22)【出願日】2019年2月7日
(62)【分割の表示】特願2018-744(P2018-744)の分割
【原出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2019-122779(P2019-122779A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2019年2月22日
(31)【優先権主張番号】61/844,382
(32)【優先日】2013年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/724,845
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515047150
【氏名又は名称】プロ メッド インストルメンツ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PRO MED INSTRUMENTS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シューレ,マティアス,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ガントナー,ベルンハルド
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−524131(JP,A)
【文献】 特表2011−522607(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0249780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋クランプにおいて:
(a)第1のアームと;
(b)第2のアームと;
(c)前記第1のアームと第2のアームとの互いに対する相対的な位置を変更する開閉器具であって、当該開閉器具が:
(i)アクチュエータであって、当該アクチュエータの一部が頭蓋クランプの前記第1のアームの直立部分に配置され、当該アクチュエータの一部を押すことで前記第1のアームと第2のアームとの互いに対する相対的な位置を調整するように構成されているアクチュエータ;および
(ii)前記アクチュエータに連結されたロック部材であって、当該ロック部材が前記頭蓋クランプの第2のアームと係合しており、前記アクチュエータの一部を押すことで前記ロック部材と前記頭蓋クランプの第2のアームとの間の係合が解除されて、前記頭蓋クランプの第1および第2のアームの互いに対する選択的な位置の調整が可能となるロック部材;
を有する開閉器具と;を具えることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項2】
請求項1に記載の頭蓋クランプにおいて、前記アクチュエータの一部が、前記第1のアームのピンホルダアセンブリの近くに配置されていることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の頭蓋クランプにおいて、前記アクチュエータの一部が、解放されることで前記第1のアームと第2のアームとの互いに対する相対的な位置を固定するように構成されていることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の頭蓋クランプにおいて、前記アクチュエータが、前記頭蓋クランプの第1のアームの直立部分に対して移動するように構成されていることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の頭蓋クランプにおいて、前記開閉器具の一部が、前記アクチュエータに関連した前記頭蓋クランプの第1のアームの中に配置されていることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の頭蓋クランプにおいて、前記ロック部材が第1のロック部材を具え、当該第1のロック部材が、頭蓋クランプの第2のロック部材と係合して前記第1のアームと第2のアームとの互いに対する相対的な位置を固定するように構成され、前記第1のロック部材が、さらに、前記第2のロック部材から解放されて前記第1のアームと第2のアームとの互いに対する相対的な位置を調整するように構成されていることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項7】
請求項に記載の頭蓋クランプにおいて、前記第1のロック部材が前記第1のアームの横向きの部分に沿って配置され、前記第2のロック部材が前記第2のアームの横向きの部分に沿って配置されていることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項8】
頭蓋クランプの第1のアームの中に配置されて、前記第1のアームを前記頭蓋クランプの第2のアームに選択的な固定方式で係合するように構成された開閉器具において、
前記開閉器具が、前記頭蓋クランプの第1のアームの直立部分に沿って配置された押すことができる部分と、前記押すことができる部分と連結しているとともに前記頭蓋クランプの第2のアームと係合しているロック部分と、を具え、前記押すことができる部分が、前記ロック部分と前記頭蓋クランプの第2のアームとの間の係合を解除して、前記第1のアームと第2のアームとの互いに対する相対的な位置を調整することができるように構成されていることを特徴とする開閉器具。
【請求項9】
頭蓋クランプにおいて:
(a)第1のアームと;
(b)第2のアームと;を具え、前記第1および第2のアームが、当該第1および第2のアームの互いに対する相対的な位置を変更するように構成されており、
前記頭蓋クランプが、さらに:
(c)前記第1のアームに対して配置されて前記第1および第2のアームを選択的な固定方式でともに固定する開閉器具であって、前記開閉器具の第1の部分前記第1のアームの直立部分に沿って配置されており、前記開閉器具の第2の部分が前記第2のアームと係合しており、前記開閉器具の第1の部分が、前記直立部分に対して押されて前記第2のアームを解放することにより、前記第1のアームと第2のアームとの互いに対する相対的な位置を調整するように構成されている開閉器具;を具えることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項10】
請求項に記載の頭蓋クランプにおいて、前記開閉器具の第1の部分が前記直立部分に対して解放されることで、前記開閉器具を前記第2のアームと再係合させて、前記第1のアームと第2のアームとの互いに対する相対的な位置を固定することを可能とするように構成されていることを特徴とする頭蓋クランプ。
【請求項11】
請求項9または10に記載の頭蓋クランプにおいて、前記開閉器具の第2の部分が、前記頭蓋クランプの第1のアームの横向きの部分に沿って配置されていることを特徴とする頭蓋クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2012年11月9日に出願され、「頭蓋クランプの開閉器具および方法」と表題された米国仮特許出願第61/724,845号、および2013年7月9日に出願され、「頭蓋クランプの開閉器具および方法」と表題された米国仮特許出願第61/844,382号の優先権を主張し、これらの開示は参照により本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
患者の頭部および/または首を安定化させる必要がある医療処置では、頭部固定器具が用いられる。このような安定化のために用いられる頭部固定器具の1つの種類は、頭蓋クランプである。頭蓋クランプは、一般的にU字形であり、U字形の各上端にピン保持具を具えるよう設計されている。ピン保持具は、患者の頭部および/または首を安定させるために患者の頭部に係合するピンを保持する。いくつかの頭蓋クランプでは、選択的に互いに結合して頭蓋クランプのU字形を形成する、2つの調整可能なアームが存在する。これらのアームの調整能力は、頭蓋クランプを、様々な頭部のサイズを有する患者に適合するような大きさにすることができる。頭蓋クランプの患者への適用と調整を促進するため、いくつかの頭蓋クランプは、開閉器具や、ロックおよびロック解除器具、または解放器具を具える。
【0003】
様々な頭部の固定器具、特に頭蓋クランプが製作され使用されてきたが、本発明者よりも前には、誰も本書に記載したような発明の製作や使用をしていないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本発明は、同じ参照番号が同じ要素を示している添付図面と併せて、特定の実施例の以下の説明からよりよく理解できるであろう。
【0005】
図1図1は、例示的な開閉器具を有する例示的な頭蓋クランプの斜視図であり、開位置にあるアクチュエータの一部を示す。
図2図2は、開閉器具を有する図1の頭蓋クランプの斜視図であり、閉位置にあるアクチュエータの一部を示す。
図3図3Aは、図1の頭蓋クランプの第1のアームの斜視図であり、開閉器具とピンホルダアセンブリとが取り除かれている。図3Bは、図3Aに示す線3B−3Bに沿った、図1の頭蓋クランプの取付機構の底部断面図である。
図4図4は、図1の頭蓋クランプの第1のアームの断面を示す側面図であり、開位置にある開閉器具を示す。
図5図5は、図1の頭蓋クランプの第1アームの断面を示す別の側面図であり、閉位置にある開閉器具を示す。
図6図6は、図1の開閉器具の斜視からの分解図を示す。
図7図7は、図1の開閉器具の斜視からの別の分解図を示す。
図8図8は、開閉器具に係合した、図1の頭蓋クランプの第2のアームの斜視図である。
図9図9は、開閉器具から離脱した、図1の頭蓋クランプの第2のアームの別の斜視図である。
図10図10は、例示的な開閉器具を有する、例示的で代替的な頭蓋クランプの斜視図であり、開位置にあるアクチュエータの一部を示す。
図11図11は、開閉器具を有する、図10の頭蓋クランプの別の斜視図であり、開位置にあるアクチュエータの一部を示す。
図12図12は、図10の頭蓋クランプの底面図を示す。
図13図13は、図10の頭蓋クランプの、第1のアームおよび開閉器具の斜視図であり、閉位置にある開閉器具のアクチュエータの一部を示す。
図14図14は、図10の頭蓋クランプの部分的な分解斜視図である。
図15図15は、図10の開閉器具の斜視図である。
図16図16は、図10の開閉器具の側面図である。
図17図17は、図10の開閉器具の別の側面図である。
図18図18は、図10の開閉器具のさらに別の側面図である。
図19図19は、図10の開閉器具の上面図である。
図20図20は、図10の開閉器具の底面図である。
図21図21は、図10の開閉器具の分解斜視図である。
図22図22は、図10の頭蓋クランプの、第1のアームおよび開閉器具の側面図であり、開位置にある開閉器具のアクチュエータの一部を示す。
図23図23は、図10の頭蓋クランプの、第1のアームおよび開閉器具の断面図であり、開位置にある開閉器具のアクチュエータの一部を示す。
図24A図24Aは、図10の頭蓋クランプの、第2のアームおよび開閉器具の側面図であり、第2のアームに係合した開閉器具を示す。
図24B図24Bは、図10の頭蓋クランプの、第2のアームおよび開閉器具の側面図であり、第2のアームから離脱した開閉器具を示す。
図25図25は、図10の線25−25に沿った、図10の頭蓋クランプの断面図である。
図26図26は、図10の線26−26に沿った、図10の頭蓋クランプの断面図である。
図27図27は、図10の線27−27に沿った、図10の頭蓋クランプの断面図である。
【0006】
図面は決して限定するように意図しておらず、本発明の様々な実施例は、必ずしも図面に示されていない様々な他の方法で実施できるように意図している。明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付図面は、本発明のいくつかの態様を示し、その明細書と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。しかしながら、本発明は示したとおりの構成に限定されないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の特定の実施例の以下の記載は、本発明の範囲を限定するために使用すべきでない。本発明の他の実施例、特徴、態様、実施形態、および利点は、以下の記載から当業者に明らかになるであろう。理解されるように、本発明は、本発明からまったく外れることなく、他の異なる自明な態様が可能である。したがって、図面および明細書は、本来例示的であり限定的でないとみなすべきである。
【0008】
I.第1の例示的な頭蓋クランプと開閉器具
図1−2は、例示的な開閉器具(110)を組み込んだ例示的な頭蓋クランプ(100)を示す。頭蓋クランプは、第1のアーム(160)と第2のアーム(180)とを具え、その各々がほぼ直立の部分(162、182)と、ほぼ横向きの部分(164、184)とを有する。第2のアーム(180)の横向きの部分(184)は、複数の歯(186)を具え、これは上向きに、または患者の頭部が設置される場所に向かって配置されている。図3Aで最もよく見えるように、第1のアーム(160)の横向きの部分(164)は、横向きのスロット(166)を具え、これは第2のアーム(180)の横向きの部分(184)を受容するように構成されている。開閉器具(110)は、ほぼ第1のアーム(160)の中に配置されている。以下により具体的に示すように、頭蓋クランプ(100)を形成するためのアーム(160、180)の組立時の所望の配置を実現するために、一対の隆起ガイド(168A、168B)が、第1のアーム(160)の各内側側面から延びており、第2のアーム(180)の横向きの部分(184)の各外側側面に形成された対応する一対の凹部スロット(188A、188B)と係合する。図4、5、8および9から理解できるように、開閉器具(110)は、第2のアーム(180)の歯(186)と係合して、選択的なロック方式でアーム(160、180)を互いにに係合するように機能する。これらの態様は、以下でより詳細に説明される。
【0009】
図1−2に示すように、各アーム(160、180)の直立部分(162、182)の頂部には、ピンホルダアセンブリ(170、190)がある。第2のアーム(180)には、単一のピン(図示せず)を保持する単一のピンホルダアセンブリ(190)がある。第1のアーム(160)には、2つのピン(図示せず)を保持するデュアルピンホルダアセンブリ(170)がある。上述のように、これらのピンが患者の頭部と係合して安定を作り出す。
【0010】
図1−3Bに示すように、頭蓋クランプ(100)は、第1のアーム(160)の横向き部分(164)に位置する取付機構(172)も具える。本実施例では、取付機構(172)は、第1および第2の星形部(171、173)を具えて構成されている。星形部(171、173)の1つにおいて、頭蓋クランプ(100)は、例えば1以上の調整具を介して手術台などの他の構造に取り付けることができる。星形部(171、173)のもう一方においては、例えば器具ホルダ、開創器(retractor devices)、または本書の教示から当業者に明らかになるであろう他の付属品などを、頭蓋クランプ(100)に取り付けることができる。本実施例では、取付機構(172)の星形部(171、173)は、互いに横方向にずらされ、反対向きに配置されている。この構成において、各星形部(171、173)のねじ孔(175、177)は、孔(175、177)の重複部分がないようにずらされている。この構成により、取付機構(172)は、対向する星形部の孔が一直線に並んだ取付装置に比べて、サイズを小さくして質量を少なくすることができる。対向する星形部の孔が一直線に並んだ設計では、付属品が各星形部に取り付けられる場合にねじ孔に連結するねじ棒が互いに衝突や干渉しないように、取付機構は十分に大きくなくてはならない。ねじ孔(175、177)がずらされるように星形部(171、173)がずらされる構成を用いることで、付属品が星形部(171、173)に同時に取り付けられたときでも、付属品のねじ棒どうしが衝突や干渉しないため、取付機構(172)全体のサイズと質量を軽減することができる。他のいくつかのバージョンでは、横方向にずらす代わりに、垂直方向や斜め方向にずらしてもよい。
【0011】
図4−5は、開閉器具(110)を具える頭蓋クランプ(100)の第1のアーム(160)の断面図である。図6および7にも示すように、開閉器具(110)は、開閉器具(110)の頂部に配置されたアクチュエータ(112)を具える。アクチュエータ(112)のトリガ(117)は、アクチュエータ(112)が開位置にあるときに、第1のアーム(160)の直立部分(162)から離れて延びる。トリガ(117)は、アクチュエータ(112)が閉位置にあるときに、第1のアーム(160)内に形成された凹状の空間(163)の中に収まるように設置可能である。アクチュエータ(112)が開位置にあるときに、頭蓋クランプ(100)を開くように、および/または調整するように開閉器具(110)を操作できるように、トリガ(117)はユーザが容易にアクセス可能である。この開放や調整により、アーム(160、180)の互いに対する相対的な位置の変更が可能となる。アクチュエータ(112)が閉位置にあり、トリガ(117)が凹状空間(163)内に位置するときは、頭蓋クランプ(100)を開くように、および/または調整するように開閉器具(110)を操作できないように、トリガ(117)はユーザが容易にアクセスできない。凹状空間(163)内でトリガ(117)を確実に保持することは、アクチュエータ(112)と、したがって開閉器具(110)とが誤って操作されないように、安全装置として機能する。図示されたバージョンに示すように、開閉器具(110)は、頭蓋クランプ(100)の第1のアーム(160)の直立部分(162)に沿った位置から、より具体的には直立部分(162)に沿ったピンホルダアセンブリ(170)の近く、近接位置、またはすぐ下から、頭蓋クランプ(100)を開放、閉鎖または調整するために作動され、または作動可能である。いくつかのバージョンでは、アクチュエータのトリガ(117)とピンホルダアセンブリ(170)との間の近接距離は、10センチメートル未満である。他のいくつかのバージョンでは、この距離は7.5センチメートル未満である。さらに他のいくつかのバージョンでは、この距離は、5センチメートル未満である。
【0012】
図3−5は、第1のアーム(160)内に規定された空間を示し、ここでは開閉器具(110)がスライド可能かつ回転可能に配置されている。第1のアーム(160)の横向きのスロット(166)は、延びて直立の開口(167)とつながっており、この直立の開口は、第1のアーム(160)の直立部分(162)の下部に沿って延びている。直立の開口(167)は、第1のアーム(160)の直立部分(162)と平行な垂直軸(VA1)を規定する。凹部(165)が、第1のアーム(160)の直立部分(162)の表面に形成されている。直立の開口(167)は、延びて凹部(165)とつながっている。直立の開口(167)、横向きのスロット(166)、および凹部(165)が、その中に開閉器具(110)が配置される空間を効果的に画定する。
【0013】
図4−7に示すように、開閉器具(110)は、アクチュエータ(112)と、ロッド(140)と、レバー(150)とを具える。アクチュエータ(112)は、第1の部材(114)と、第2の部材(120)と、第3の部材(124)と、ピン(134、136)と、ねじ(130)と、ばね(138)とを具える。第1の部材(114)は、第1の部分(115)と第2の部分(116)とを具える。第1の部材(114)の第1の部分(115)は、上述のようなトリガ(117)を具える。第1の部材(114)の第2の部分(116)は、開口(118)を有する。アクチュエータ(112)の第2の部材(120)は、縦方向のスロット(121)と開口(122)とを具える。アクチュエータ(112)の第3の部材(124)は、一対の縦方向のスロット(125、126)と、縦方向の開口(127)と、縦方向のスロット(125)を画定する一対の壁部(129A、129B)に形成された横方向の開口(128)とを具える。ねじ(130)の先端にはねじ状の部分(131)が設けてある。図3−5に示すように、第1のアーム(160)の凹部(165)には、ねじ孔(169)が設けてある。ねじ(130)は、第2の部材(120)の開口(122)と、次いで第3の部材(124)の縦方向の開口(127)とを貫通し、第2の部材(120)は第1のアーム(160)に対して静的に連結するが、一方で第3の部材(124)は第2の部材(120)と第1のアーム(160)との間でスライド可能に連結するように、ねじ孔(169)の中に嵌るようねじ込まれる。この位置で、第3の部材(124)は、上部から下部まで直立の開口(167)により画定された垂直軸(VA1)とほぼ平行な方向にスライド可能である。クリップ(133)が、第3の部材(124)を、第2の部材(120)と第1のアーム(160)とに対してよりよく固定するために、第3の部材(124)と第1のアーム(160)の凹部(165)の表面との間で、ねじ(130)の外側に形成された環状溝(132)の内側で固定されてもよい。
【0014】
図6−7に示すように、第2の部材(120)はさらに突出部(123)を具える。第2の部材(120)と第3の部材(124)とが組み立てられたときに、突出部(123)は、第3の部材(124)の縦方向のスロット(126)内に配置される。ばね(138)が、第3の部材(124)の縦方向のスロット(126)内で、縦方向のスロット(126)の上面と第2の部材(120)の突出部(123)との間に配置される。ばね(138)は、第3の部材(124)が上方の位置に付勢されるように、縦方向のスロット(126)の上面を圧迫している。
【0015】
第2の部材(120)と第3の部材(124)とは、第2の部材(120)の縦方向のスロット(121)と第3の部材(124)の縦方向のスロット(125)とが、アクチュエータ(112)の頂部でほぼ位置が合うように組み立てられる。第1の部材(114)の第2の部分(116)は、第2の部材(120)の縦方向のスロット(121)内でスライド可能かつ回転可能に配置され、第3の部材(124)の縦方向のスロット(125)内で回転可能に配置されている。第1の部材(114)と第3の部材(124)がともに回転可能に連結するように、ピン(134)が、第3の部材(124)の壁部(129A、129B)の開口(128)と、第1の部材(114)の開口(118)とを通して、第3の部材(124)の縦方向のスロット(125)内を貫通している。したがって、第1の部材(114)は、閉位置から開位置まで、およびこの逆に、縦方向のスロット(121、125)内でピン(134)の周りを選択的に回転可能である。以下により具体的に示すように、回転可能としたことにより、第1の部材(114)は、開閉器具(110)の操作と固定のための上述の2つのポジションに位置することができる。また、縦方向のスロット(121)内での第1の部材(114)、特にトリガ(117)の下方への移動が、第3の部材(124)の下方への移動をもたらす。
【0016】
ピン(136)は弾性先端部(137)を具える。ピン(136)は、ピン(136)と弾性先端部(137)とが、第3の部材(124)の縦方向のスロット(125)内で内側に延びるように、第3の部材(124)の中に通される。第1の部材(114)の第2の部分(116)には、第1の部材(114)を特定の位置で選択的に固定するために、ピン(136)の弾性先端部(137)を受けて係合するように構成された一対の戻り止め(detent)(119A、119B)が設けてある。第1の戻り止め(119A)は閉位置と一致しており、第1の部材(114)が閉位置に回転したときに、弾性先端部(137)が第1の戻り止め(119A)内で受けられる。第2の戻り止め(119B)は開位置と一致しており、第1の部材(114)が開位置に回転したときに、弾性先端部(137)が第2の戻り止め(119B)内で受けられる。したがって、第1の部材(114)が縦方向のスロット(121、125)内で回転すると、ピン(136)の弾性先端部(137)が戻り止め(119A、119B)と係合して、第1の部材(114)を閉位置と開位置で選択的に固定する。
【0017】
図4−5に最もよく見えるように、ロッド(140)が垂直軸(VA1)に対して上方位置から下方位置までスライド可能であるように、ロッド(140)は凹部(165)および直立の開口(167)の中にスライド可能に配置されている。ロッド(140)の上面にはねじ孔(142)が設けてある。係合部材(144)は、開口(146)を具える。ロッド(140)と結合部材(144)とが互いに結合するように、ねじ(148)が、係合部材(144)の開口(146)を貫通し、ロッド(140)のねじ孔(142)の中にねじ込まれる。係合部材(144)は、第2の部材(120)に形成された凹部(149)と、第1のアーム(160)の凹部(165)とにより画定された空間内にスライド可能に配置されている。第3の部材(124)の下端は、係合部材(144)の上面と接している。したがって、第3の部材(124)が下方に移動すると、ロッド(140)も同様に下方に動かされる。ばね(141)がロッド(140)の周りの、係合部材(144)の底面と、直立開口(167)の開口の周りの凹部(165)の底面との間に配置されており、ばね(141)が係合部材(144)の底面を圧迫して、係合部材(144)とロッド(140)が上方の位置に付勢されるようにしている。この上方へのバイアスにより、第3の部材(124)の下端が係合部材(144)の上面に接したままとなる。係合部材(144)の上方への移動は、突出部(123)により制限される。
【0018】
ロッド(140)の基底において、ロッド(140)はレバー(150)と連結している。特に、ロッド(140)の底面にはねじ孔(143)が設けてある。ピン(151)は、ピン(151)の対称な平坦面に形成された開口(152)を具える。ロッド(140)とピン(151)が互いに結合するように、ねじ(147)が、ピン(151)の開口(152)を貫通し、ロッド(140)のねじ孔(143)の中にねじ込まれている。ピン(151)の両端は、レバー(150)の第1の端部(153)内に形成された、一対の開口(155A、155B)の中に配置されている。したがって、ロッド(140)が上方や下方に動かされると、レバー(150)の第1の端部(153)も同様にそれぞれ上方や下方に動かされる。
【0019】
図4−5から最もよく理解できるように、組み立てられた際に、レバー(150)は、第1のアーム(160)の横向きのスロット(166)の内部に形成された一対の孔(174)の中に配置されたピン(157)を介して、第1のアーム(160)の横向きのスロット(166)内で回転可能に連結されている。レバー(150)がスロット(166)内でピン(157)の周りを回転できるように、ピン(157)が旋回軸を形成し、その周りをレバー(150)が回転することができる。レバー(150)の第2の端部(154)は、下向きに、または患者の頭部が設置される場所から離れる方向に配置された歯(156)を具える。歯(156)は、第2のアーム(180)の歯(186)と係合可能である。レバー(150)の第1の端部(153)が下方に動かされると、レバー(150)の第2の端部(154)が上方に動かされ、レバー(150)の第1の端部(153)が上方に動かされると、レバー(150)の第2の端部(154)が下方に動かされるように、第1の端部(153)と第2の端部(154)がピン(157)の周囲の反対側のレバー(150)の両端に配置されている。
【0020】
図8および9は、開閉器具(110)の特徴と操作性をさらに示す他の図である。図8は、第1のアーム(160)を示さない図であり、開閉器具(110)がどのように第2のアーム(180)の歯(186)と係合するかを示す。図8では、アーム(160、180)が互いに対して動かないように、開閉器具(110)が歯(186)と係合している。図9は同様の図であるが、アーム(160、180)が互いに対して移動できるように、開閉器具(110)は歯(186)と係合していない。この動きを実現するために、ユーザは、最初に開閉器具(110)のアクチュエータ(112)のトリガ(117)を下方に回転させ、トリガ(117)が容易にアクセス可能となるように、これを閉位置から外して開位置に入れる。次いで、ユーザはトリガ(117)を下方に押すことができる。この下方への動きは、同様にロッド(140)を下方に移動させる。ロッド(140)のレバー(150)への連結と、旋回軸を規定するピン(157)および孔(174)とにより、レバー(150)の第1の端部(153)が下方へ動くと、一方でレバー(150)の第2の端部(154)は上方へ動く。レバー(150)の第2の端部(154)の上方への動きは、同様に歯(156)を持ち上げて、レバー(150)の歯(156)が第2のアーム(180)の歯(186)から解放される位置まで、第2のアーム(180)の歯(186)から離れる。このような解放により、アーム(160、180)は互いに対して調整することができ、頭蓋クランプ(100)を開いたり閉じたりできる。調整が完了すると、ユーザはトリガ(117)にかけていた下向きの力を外すことができ、開閉器具(110)は逆の動きをたどる。ばね(141)が係合部材(144)に上方へ付勢し、こうして第3の部材(124)と、ロッド(140)と、したがってレバー(150)の第1の端部(153)とを上方に動かす。また、ばね(138)が第3の部材(124)に上方へ付勢する。このレバー(150)の第1の端部(153)の上方への動きにより、第2の端部(154)とレバー(150)の歯(156)とが下方に動かされ、こうして第2のアーム(180)の歯(186)に係合する。このような係合により、アーム(160、180)は互いに対してより広がった位置に調整することが不可能となる。
【0021】
頭蓋クランプ(100)の一つの例示的な使用では、一人のユーザが、他の人間の助けなしに頭蓋クランプ(100)の開放や調整をすることができる。例えば、ユーザは、各アーム(160、180)の直立部分(162、182)を彼らの手でつかむ。このポジションにおいて、ユーザは親指を用いて開閉器具(110)のアクチュエータ(112)のトリガ(117)を下方に回転することができ、これにより開閉器具(110)は操作可能となる。この時点で、ユーザは親指を用いて、開閉器具(110)のトリガ(117)に下方の力や圧力をかけることができる。上述のように、この作用が、レバー(150)の歯(156)を第2のアーム(180)の歯(186)から解放させる。この時点で、ユーザはアーム(160、180)に外側への力や圧力をかけて、頭蓋クランプ(100)を全開にするか、頭蓋クランプ(100)をより大きな位置やサイズに調整するために、アーム(160、180)の間の距離を増やすことができる。ユーザは、このプロセスを用いて、頭蓋クランプ(100)を閉じたり、頭蓋クランプ(100)をより小さな位置やサイズに調整することもできる。しかしながら、回転させ押し下げるトリガ(117)は、頭蓋クランプ(100)を閉じたり、頭蓋クランプ(100)をより小さな位置やサイズに調整するためには、すべてのバージョンに必要とされない。いったん頭蓋クランプ(100)が所望の位置や大きさにされると、ユーザはトリガ(117)への下向きの力を解放して、さらなる移動からアーム(160、180)を固定するために、レバー(150)の歯(156)が再び第2のアーム(180)の歯(186)と係合する。
【0022】
すべてのバージョンに必要ではないが、頭蓋クランプ(100)のこのバージョンでは、第2のアーム(180)の歯(186)と、レバー(150)の歯(156)との方向によって、アクチュエータ(112)のトリガ(117)を下に折った位置や開位置まで回転させたり、トリガ(117)を押す必要もなく、ユーザがアーム(160、180)を互いに近くに動かすことが可能である。この実施例では、歯(156、186)の方向および傾斜と、歯(156、186)の間の接触とにより、アーム(160、180)が互いに近づくと、レバー(150)の第2の端部(154)が上方に動く。これは、アクチュエータ(112)のトリガ(117)を、下に折った位置や開位置まで回転させたり、トリガ(117)を押さなくてもよい。このアーム(160、180)が互いに近づくように動くと、頭蓋クランプ(100)を小さくできるように(すなわち、アーム(160、180)の直立部分(162、182)の間の距離が近づいて、頭蓋クランプ(100)が小さくなるように)、レバー(150)の歯(156)が第2のアーム(180)の歯(186)から十分に解放される。そのうえ、ばね(138)とばね(141)がレバー(150)の第2の端部(154)を下方に付勢しており、ユーザが、上記のようにアーム(160、180)をより近い位置に変えたり、さらに上記のようにアクチュエータ(112)のトリガ(117)を押すなどして、ばねのバイアスを十分に上回らない限り歯(156、186)は係合している。本書の教示を考慮して、頭蓋クランプ(100)のいくつかのバージョンにおいて、歯(186)と歯(156)、および/または他の特徴が、アーム(160、180)を互いに近づけるために、ユーザが開閉器具(110)のアクチュエータ(112)のトリガ(117)を押さなければならないように構成されてもよいことが理解されるであろう。
【0023】
頭蓋クランプ(100)は、使用と使用の間に、洗浄および/または殺菌することができる。本書の教示を考慮して、頭蓋クランプ(100)の使用に適した様々な種類の洗浄と殺菌が、当業者に明らかになるであろう。この実施例では、洗浄と、洗浄を達成する容易さとを改良または向上させるために、特定の部品は頭蓋クランプ(100)から取り外すことができる。例えば、ピンホルダアセンブリ(170、190)は洗浄のために取り外し可能である。また、徹底的な洗浄のために、第1のアーム(160)と第2のアーム(180)は上述のように分解することができる。また本実施例では、頭蓋クランプ(100)の洗浄や殺菌時に、ねじ(130)を外すことで、第2の部材(120)を第1のアーム(160)から取り外すことができる。すべてのバージョンに必要ではないが、いくつかのバージョンでは、洗浄用に取り外し可能な第2の部材(120)に加えて、第3の部材(124)と、連結されている第1の部材(114)とも、洗浄のために第1のアーム(160)から取り外されてもよい。さらに他のバージョンでは、第2の部材(120)が洗浄および/または殺菌のために取り外されたときでも、第3の部材(124)と、連結されている第1の部材(114)とは、頭蓋クランプ(100)に連結されたままである。
【0024】
II.第2の例示的な頭蓋クランプと開閉器具
図10は、例示的な開閉器具(210)を組み込んだ例示的な頭蓋クランプ(200)を示す。頭蓋クランプ(200)は、第1のアーム(260)と第2のアーム(280)とを具え、その各々がほぼ直立の部分(262、282)と、ほぼ横向きの部分(264、284)とを有する。第2のアーム(280)の横向きの部分(284)は、複数の歯(286)を具え、これは上向きに、または患者の頭部が設置される場所に向かって配置されている。図13で最もよく見えるように、第1のアーム(260)の横向きの部分(264)は、横向きのスロット(266)を具え、これは第2のアーム(280)の横向きの部分(284)を受容するように構成されている。開閉器具(210)は、ほぼ第1のアーム(260)の中に配置されている。以下により具体的に示すように、頭蓋クランプ(200)を形成するためのアーム(260、280)の組立時の所望の配置を実現するために、一対の隆起ガイド(268A、268B)が、第1のアーム(260)の各内側側面から延びており、第2のアーム(280)の横向きの部分(284)の各外側側面に形成された対応する一対の凹部スロット(288A、288B)と係合する。図23−24Bから理解できるように、開閉器具(281)は、第2のアーム(280)の歯(286)と係合して、選択的なロック方式でアーム(260、280)を互いに係合するように機能する。これらの態様は、以下でより詳細に説明される。
【0025】
図10に示すように、各アーム(260、280)の直立部分(262、282)の頂部には、ピンホルダアセンブリ(270、290)がある。第2のアーム(280)には、単一のピン(図示せず)を保持する単一のピンホルダアセンブリ(290)がある。第1のアーム(260)には、2つのピン(図示せず)を保持するデュアルピンホルダアセンブリ(270)がある。上述のように、これらのピンが患者の頭部と係合して安定を作り出す。
【0026】
図10−12に示すように、頭蓋クランプ(200)は、第1アーム(260)の横向き部分(264)に位置する取付機構(272)も具える。この実施例では、取付機構(272)は星形部として構成され、ここで頭蓋クランプ(200)は、例えば1以上の調整具を介して手術台などの他の構造に取り付けることができる。
【0027】
図12は、頭蓋クランプ(200)の底面図を示す。このバージョンでは、第1アーム(260)の横向きのスロット(266)は底面側に開口しており、第2のアーム(280)は底面から見ることができる。いくつかの他のバージョンでは、第1アーム(260)の横向きのスロット(266)は、部分的にまたは完全に閉じることも可能である。他の図面の中でもとりわけ図12に示すように、組み立てられた頭蓋クランプ(200)の底面は、底面から下方に延びる突出部はなく、ほぼ滑らかであるか平坦である。
【0028】
図11に部分的に示すように、頭蓋クランプ(200)の開閉器具(210)は、開閉器具(210)の頂部かつ第1のアーム(260)の直立部分(262)の内部に配置されたアクチュエータ(212)を具える。したがって、頭蓋クランプ(200)は開閉器具(210)を具え、これは頭蓋クランプ(200)の第1のアーム(260)の直立部分(262)に沿った位置から、より具体的には直立部分(262)に沿ったピンホルダアセンブリ(270)の近く、またはすぐ下の位置から、頭蓋クランプ(200)の開放、閉鎖、または調整のために作動し、または作動可能である。アクチュエータ(212)のトリガ(214)は、開位置と閉位置との間で旋回するように構成されている。図11において、開閉器具(210)のアクチュエータ(212)のトリガ(214)は、アクチュエータ(212)が開位置にあるときに、第1のアーム(260)の直立部分(262)から離れて延びる。図13に示すように、開閉器具(210)のアクチュエータ(212)のトリガ(214)は、トリガ(214)が閉位置にあるときに、第1のアーム(260)の直立部分(262)の内面に形成された凹状の空間(263)に収まるように構成されている。アクチュエータ(212)のトリガ(214)が開位置にあるときに、頭蓋クランプ(200)を開くように、および/または調整するように開閉装置(210)を操作できるように、トリガ(214)はユーザが容易にアクセス可能である。この開放や調整により、アーム(260、280)の互いに対する相対的な位置の変更が可能となる。アクチュエータ(212)のトリガ(214)が閉位置にあり、トリガ(214)が凹状の空間(263)内に位置するときは、トリガ(214)はユーザがアクセスできず、したがって開閉装置(210)は、頭蓋クランプ(200)を開くように、および/またはより大きなサイズに調整するようには操作できない。また閉位置では、トリガ(214)は、トリガ(214)の第1の部材(218)の周りに設置された1以上のOリング(215、216)と、第1のアーム(260)の凹状の空間(263)の1以上の部分との間の接触により、しっかりと凹状の空間(263)内に保持されている。凹状空間(263)内でトリガ(214)を確実に保持することは、アクチュエータ(212)と、したがって開閉器具(210)とが誤って操作されないように、安全装置として機能する。
【0029】
図14は、頭蓋クランプ(200)の特定の部品の、つまり第1のアーム(260)と、第2のアーム(280)と、開閉器具(210)との部分的な分解図を示す。他の図と組み合わせて図14から理解できるように、開閉器具(210)は、第1のアーム(260)内に規定された空間の中に収まる。第1のアーム(260)の横向きのスロット(266)は、延びて直立のスロット(267)の底面部とつながっており、この直立のスロットは、第1のアーム(260)の直立部分(262)の外面の中に、第1のアーム(260)の直立部分(262)の下部に沿って形成されている。図23に示すように、横向きの開口(269)は第1のアーム(260)の直立部分(262)を貫通し、第1のアーム(260)の直立部分(262)の外面に形成された直立のスロット(267)の頂部と、第1のアーム(260)の直立部分(262)の内面に形成された凹状の空間(263)とを連結している。直立のスロット(267)は、第1のアーム(260)の直立部分(262)と平行な垂直軸(VA2)を規定する。横向きのスロット(266)、直立のスロット(267)、横向きの開口(269)、および凹状の空間(263)が、中に開閉器具(210)が配置される空間を効果的に画定する。図23は、第1のアーム(260)の断面図を含み、この領域と、中に設置された開閉器具(210)とを示している。
【0030】
図15−20は、開閉器具(210)の他の図であり、図21は、開閉器具(210)の分解図である。これらの図からわかるように、開閉器具(210)は、アクチュエータ(212)と、レバー(226)と、一対のばね(232、236)と、ねじ(230)と、ピン(228)と、ロック部材(234)とを具える。
【0031】
アクチュエータ(212)は、トリガ(214)とロッド(225)とを具える。トリガ(214)は、第1の部材(218)と、第2の部材(220)と、第3の部材(222)と、一対のOリング(215、216)と、ねじ(223)と、ピン(224)とを具える。ロッド(225)が上方の位置と下方の位置との間を垂直方向に移動可能であるように、ロッド(225)は、直立スロット(267)内にスライド可能に配置されている。ロッド(225)の上部が、横向きの開口(269)の中に延びている。トリガ(214)の第3の部材(222)が、第1のアーム(260)の横向きの開口(269)の中に配置されている。第3の部材(222)は、ロッド(225)の上部に配置されたねじ山(225A)とねじ式に係合するように構成されたねじ孔(222A)を具える。ロッド(225)の上部のねじ山(225A)は、ねじ(223)を受けるために構成されたねじ孔(225B)も具える。ねじ(223)は、第3の部材(222)のねじ孔(222A)を通して延び、第3の部材(222)がロッド(225)から外れるのを防止する。第2の部材(220)は、ピン(224)により規定された軸の周りを回転できるように構成されている。第3の部材(222)とロッド(225)との間のねじ式の連結により、ロッド(225)の上端は、第2の部材(220)の回転に応じて横方向に移動する。図22に示すように、ロッド(225)の横方向の移動は、第1のアーム(260)の直立のスロット(267)内により空いた空間を作り出し、頭蓋クランプ(200)とその部品の洗浄や殺菌の際に役立つ。
【0032】
トリガ(214)の第1の部材(218)は、第2の部材(220)と連結している。上述のようにOリング(215、216)が第1の部材(218)の周りに設置されており、トリガ(214)が閉位置にあるときに、トリガ(214)を安全な位置や格納位置に保持するために、Oリング(215、216)が第1のアーム(260)の凹状の空間(263)の一部と接する。第2の部材(220)が第3の部材(222)に対してピン(224)の周りを回転するように、第2の部材(220)は、ピン(224)を介して第3の部材(222)と回動可能に連結している。この回動式連結により、トリガ(214)は、上述のように開閉器具(210)を操作し固定するために、開位置と閉位置に位置することが可能となる。図15に示すように、トリガ(214)が開位置にあるときに、トリガ(214)はほぼ水平の向きであるように、トリガ(214)の回転は制限されてもよいことを理解すべきである。第3の部材(222)とロッド(225)との間のねじ式の連結のために、トリガ(214)の垂直方向の移動が、直立のスロット(267)内での上方の位置と下方の位置との間のロッド(225)の垂直方向の移動をもたらすことを理解すべきである。
【0033】
ロッド(225)の垂直方向の移動がレバー(226)の第1の端部の垂直方向の移動をもたらし、レバー(226)の第1の端部の垂直方向の移動がロッド(225)の垂直方向の移動をもたらすように、ロッド(225)の基底で、ロッド(225)はレバー(226)の第1の端部と連結している。レバー(226)の第2の端部は、二股のプロング部材(two−prong member)(227)を具える。二股のプロング部材(227)は、第1のプロング(227A)と第2のプロング(227B)とを具える。ロック部材(234)は、二股のプロング部材(227)の第1のプロング(227A)と第2のプロング(227B)との間に収まる大きさである。ロック部材(234)は、ロック部材(234)の反対側に延びる一対の突出部(234A、234B)を具える。ロック部材(234)の突出部(234A、234B)は、二股のプロング部材(227)が、ロック部材(234)を第1のプロング(227A)と第2のプロング(227B)との間で保持するように、各プロング(227A、227B)の上面に載っている。ロック部材(234)の下面には、第2のアーム(280)の複数の歯(286)に係合するように構成された、複数の歯(239)が設けてある。ロック部材(234)の上面には、部分的にロック部材(234)を貫通している円形の孔(235)が設けてある。ばね(236)が、ロック部材(234)の孔(235)の中に配置されている。ロック部材(234)のばね(236)は、図25に示すように、上側を第1のアーム(260)の横向きのスロット(266)の内側の上面に結合されている。ばね(236)の構成は、ロック部材(234)と、したがってレバー(226)の第2の端部とを、二股のプロング部材(227)を介して下方に付勢する。下記の論考からわかるように、この下方への付勢により、ロック部材(234)の複数の歯(239)は、第2のアーム(280)の複数の歯(286)に係合する。
【0034】
図27に示すように、ピン(228)が、横向きのスロット(266)を含む第1のアーム(260)の横向きの部分(264)を貫通している。ピン(228)の一部は、横向きのスロット(266)内で露出している。頭蓋クランプ(200)が組み立てられたときに、レバー(226)の下面は、横向きのスロット(266)内で露出しているピン(228)の一部の上に載っている。以下にさらに論じるように、ピン(228)は旋回軸を形成し、その周りをレバー(226)が回転することができる。孔(231)が、レバー(226)の第2の端部とピン(228)との間の、レバー(226)の一部に形成されている。ねじ(230)が孔(231)を貫通して設置され、第1のアーム(260)のねじ孔と連結している。図26に示すように、ばね(232)が、その上側を第1のアーム(260)の内側の上面に結合されるように第1のアーム(260)と連結する前に、ばね(232)は、ねじ(230)の周りに配置される。ばね(232)の構成は、レバー(226)の第2の端部を下方に付勢する。
【0035】
図24−27は、開閉器具(210)の特徴と操作性とをさらに示す他の図である。図24は、第1のアーム(260)を省いてある図であり、開閉器具(210)がどのように第2のアーム(280)と係合するかを示す。図24Aでは、アーム(260、280)が開いたり、互いからさらに離れて動かないように、開閉器具(210)が複数の歯(286)と係合している。図24Bは同様の図であるが、今回は、アーム(260、280)が開いたり互いからさらに離れて動くように、開閉器具(210)は複数の歯(286)と係合していない。この開放を達成するために、ユーザは最初に、アクチュエータ(212)のトリガ(214)を下方に開位置へと回転させて、これを第1のアーム(260)の凹状の空間(263)内の安全な位置から外す。次いで、ユーザはトリガ(214)を下方に押すことができる。この下方への垂直方向の移動により、同様にロッド(225)が垂直方向に下方に移動する。ロッド(225)とレバー(226)の第1の端部との間の連結によって、ロッド(225)の下方への垂直方向の移動により、レバー(226)の第1の端部が下方へ動かされる。レバー(226)の第1の端部の下方への動きにより、レバー(226)の第2の端部が上方へ動くように、ピン(228)の周りでレバー(226)が時計回りに回転する。レバー(226)の第2の端部の上方への動きにより、同様にロック部材(234)が持ち上げられて、ロック部材(234)の複数の歯(239)が第2のアーム(280)の複数の歯(286)から解放される位置まで、第2のアーム(280)の複数の歯(286)から離れる。このような解放により、アーム(260、280)は開くことができ、および/また互いに対して調整することができる。開放や調整が完了すると、ユーザは、トリガ(214)にかけていた下方の力を外すことができ、レバー(226)の第2の端部上のばね(236、232)からの下方のバイアスのために、開閉器具(210)は逆の動きをたどる。図27に示すように、開閉器具(210)が操作されるときに、レバー(226)が上方に旋回できるように、開閉器具(210)が係合してアーム(260、280)を固定しているときに、第1のアーム(260)内のレバー(226)の上方には空間がある。
【0036】
頭蓋クランプ(200)の1つの例示的な使用では、一人のユーザが、他の人間の助けなしに頭蓋クランプの開放や調整をすることができる。例えば、ユーザは、各アーム(260、280)の直立部分(262、282)を彼らの手でつかむ。このポジションにおいて、ユーザは親指を用いて開閉器具(210)のアクチュエータ(212)のトリガ(214)を下方に回転することができ、これにより開閉器具(210)は操作可能となる。この時点で、ユーザは親指を用いて、開閉器具(210)のアクチュエータ(212)のトリガ(214)に、下方の力や圧力をかけることができる。上述のように、この作用によって、ロック部材(234)の複数の歯(239)は、第2のアーム(280)の複数の歯(286)から解放される。この時点で、ユーザはアーム(260、280)に外側への力や圧力をかけて、頭蓋クランプ(200)を全開にするか、頭蓋クランプ(200)をより大きな位置やサイズに調整するために、アームの間の距離を増やすことができる。ユーザは、その代わりに、アーム(260、280)に内側への力や圧力をかけて、アーム(260、280)の間の距離を減らしたり近づけてもよい。いったん頭蓋クランプ(200)が所望の位置や大きさにされると、ユーザはアクチュエータ(212)のトリガ(214)への下向きの力を解放して、さらなる外側への動きからアーム(260、280)を固定するために、ロック部材(234)の複数の歯(239)が、第2のアーム(280)の複数の歯(286)と再度係合する。
【0037】
第2のアーム(280)が第1のアーム(260)内をスライドするように、最初にアーム(260、280)を配置するときに、または一般的にアーム(260、280)を閉じる(またはアーム間の距離を短くしたり減らすとも言及される)ときに、特定の機構が、開閉器具(210)の特定の部品の位置を保持する。図からわかるように、第2のアーム(280)の複数の歯(286)と、ロック部材(234)の複数の歯(239)との方向により、ユーザは、開閉器具(210)のアクチュエータ(212)のトリガ(214)を使用する必要なしに、アームを互いに近づけて移動させることができる。この作用では、第2のアーム(280)の複数の歯(286)と、ロック部材(234)の複数の歯(239)との方向および傾斜によって、ロック部材(234)が上方へ動かされる。このロック部材(234)の複数の歯(239)の第2のアーム(280)の複数の歯(286)からの解放は、頭蓋クランプ(200)を小さくできるように(すなわち、アーム(260、280)の直立部分(262、282)の間の距離が近づいて、頭蓋クランプ(200)が小さくなるように)するのに十分である。レバー(226)とロック部材(234)との間の連結の構成と、第1のアーム(260)の構成とにより、閉じる動作のときに、レバー(226)や開閉器具(210)の他のほとんどの部品はほぼ静止したままで、ロック部材(234)を動かすことが可能である。より具体的には、図15、16および18に示すように、レバー(226)の二股のプロング部材(227)が、ロック部材(234)の突出部(234A、234B)に沿って、ロック部材(234)に嵌まっている。ロック部材(234)の複数の歯(239)は、レバー(226)の二股のプロング部材(227)の下方に延びている。また、図25に示すように、第1のアーム(260)の内側の上面と、ロック部材(234)の上面との間には空間が存在する。こうして、アーム(260、280)を互いに近づける動きによって、ロック部材(234)が上方に動かされ、図25に示すばね(236)を圧縮する。同時に、レバー(226)は、ほぼ、または完全に静止したままである。さらに、図26に示すばね(232)は、下方の位置にレバー(226)を付勢して、ばね(236、232)のバイアスを十分に上回らない限り、レバー(226)をこの下方の位置に保持するのを支援する。
【0038】
本発明の様々な実施形態を示し記載してきたように、本書に記載した方法とシステムのさらなる修正は、本発明の範囲から外れることなく当業者の適切な変更によって達成することができる。そのような可能性のある変更のいくつかを言及してきたので、他の変更が当業者に明らかであろう。例えば、上記で論じた実施例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程等は例示的であり、要求されない。したがって、本発明の範囲は、以下の請求項の観点で考慮すべきであり、明細書および図面に示し記載した構造および動作の具体例に限定されないと理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図22
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図24A
図24B
図25
図26
図27