特許第6764319号(P6764319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6764319
(24)【登録日】2020年9月15日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】薬剤注入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20200917BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20200917BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   A61M5/142 520
   A61M5/20
   A61M5/24
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-223162(P2016-223162)
(22)【出願日】2016年11月16日
(65)【公開番号】特開2018-79060(P2018-79060A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(72)【発明者】
【氏名】安井 伸一
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0106018(US,A1)
【文献】 特表2004−516107(JP,A)
【文献】 特開2009−183772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に注射針挿入部、後端内側にガスケットを有する薬剤シリンジを装着する薬剤シリンジ装着部と、
前記薬剤シリンジ装着部に装着された前記薬剤シリンジ内の前記ガスケットを前記注射針挿入部側に押し込むピストンと、
前記ピストンを移動させるピストン移動機構と、
前記ピストンに接続され、前記ピストンを前記薬剤シリンジの軸周りに回転させる回転用モータと、
前記ピストンの前記ガスケット側に設けられ、前記ガスケットに回転力を伝達する回転力伝達部と、を備え
前記ピストン移動機構は、前記ピストンを前記薬剤シリンジの軸に沿って移動させる移動用モータと、前記移動用モータにより駆動され、前記回転用モータと前記ピストンを保持する移動台とを含む、薬剤注入装置。
【請求項2】
前記ピストンを回転自在に支持する回転軸受けをさらに設けた、
請求項1に記載の薬剤注入装置。
【請求項3】
前記ピストンに設けた前記回転力伝達部は、前記ガスケットに向けて突出する凸部である、
請求項1または2に記載の薬剤注入装置。
【請求項4】
前記凸部は、ブレードによって構成されている、
請求項に記載の薬剤注入装置。
【請求項5】
前記ピストンは、前記回転モータによって回転した状態で前記ピストン移動機構によって前記シリンジの前記注射針挿入部側に移動される、
請求項1からのいずれか一つに記載の薬剤注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、インスリンや成長ホルモンなどの薬剤を注入する薬剤注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の薬剤注入装置の構成は、以下のようになっていた。
【0003】
すなわち、先端側に注射針挿入部、後端内側にガスケットを有する薬剤シリンジを装着する薬剤シリンジ装着部と、前記薬剤シリンジ装着部に装着された前記薬剤シリンジ内の前記ガスケットを前記注射針挿入部側に押し込むピストンと、前記ピストンを移動させるピストン移動機構と、を備えた構成となっていた(例えば、下記特許文献1)。
【0004】
そして、ピストンが移動して薬剤シリンジ内のガスケットを注射針挿入部側に押し込むと、薬剤シリンジ内の薬剤が注射針挿入部の注射針を介して吐出され、これにより患者に薬剤が投与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−516107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例における課題は、適切な薬剤投与ができない惧れがあることであった。
【0007】
すなわち、上記従来例の構成においては、ピストンが薬剤シリンジ内のガスケットを注射針挿入部側に押し込んで薬剤を吐出する。
【0008】
このとき、ガスケットと薬剤シリンジ内面の接触面で、接触面の摩擦力により、スティック(付着)とスリップ(すべり)を繰り返す、いわゆるスティックスリップ現象が発生する事がある。このスティックスリップ現象が発生すると、ガスケットは、急激な移動と静止を繰り返しながら移動することとなり、薬剤の急激の吐出と非吐出が繰り返される状態となる。このため、意図した薬剤の量を投与することが難しく、その結果として、適切な薬剤投与ができない惧れがあった。
【0009】
そこで、本開示は、適切な薬剤投与を行うことが可能な薬剤注入装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の薬剤注入装置は、先端側に注射針挿入部、後端内側にガスケットを有する薬剤シリンジを装着する薬剤シリンジ装着部と、前記薬剤シリンジ装着部に装着された前記薬剤シリンジ内の前記ガスケットを前記注射針挿入部側に押し込むピストンと、前記ピストンを移動させるピストン移動機構と、前記ピストンに接続され、前記ピストンを前記薬剤シリンジの軸周りに回転させるピストン回転機構と、前記ピストンの前記ガスケット側に設けられ、前記ガスケットに回転力を伝達する回転力伝達部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の薬剤注入装置によれば、ピストン回転機構がピストンを薬剤シリンジの軸周りに回転させると、この回転は回転力伝達部を介してガスケットに伝達され、ガスケットを軸周りに回転させることができる。つまり、ガスケットを回転させることで、ガスケットと薬剤シリンジ内面の接触面をスティック(付着)が無い状態にできる。
【0012】
そして、回転するガスケットを注射針挿入部側に押し込むと、スティック(付着)が無いので、スティックスリップ現象は発生しない。
【0013】
したがって、ガスケットが一定速度で移動するので薬剤は安定的に吐出され、意図した薬剤の量を投与することができる。その結果として、適切な薬剤投与ができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態にかかる薬剤注入装置を示す斜視図である。
図2図1に示す薬剤注入装置の斜視図である。
図3図1に示す薬剤注入装置の断面図である。
図4図1に示す薬剤注入装置の電気的な接続を示す制御ブロック図である。
図5】課題の発生状態を説明する図である。
図6図1に示す薬剤注入装置における要部の拡大斜視図である。
図7図1に示す薬剤注入装置における要部の断面図である。
図8図1に示す薬剤注入装置における要部の断面図である。
図9図1に示す薬剤注入装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1図2は、本実施形態の薬剤注入装置1を示し、薬剤注入装置1は、ほぼ直方体形状の本体ケース2を備えている。本体ケース2の前端側(図1における下側)には、注射針装着部3が設けられており、この注射針装着部3には、図2の注射針4が装着される。
【0017】
本体ケース2の後端側(図1における上側)には、注射を実施する注射ボタン5が設けられ、本体ケース2の表面には、注射の表示案内を行う表示部6と、薬剤注入装置1に電源を投入する電源ボタン7が設けられている。
【0018】
本体ケースの前端側には、薬剤シリンジ装着部8が、図1図2に示すように、開閉自在に設けられている。この薬剤シリンジ装着部8に、図1のように薬剤シリンジ9を挿入し、図2のように薬剤シリンジ装着部8を閉めると、薬剤シリンジ9は薬剤シリンジ装着部8の所定の位置に装着され、以後の薬剤投与動作が可能となる。
【0019】
図3は、薬剤注入装置1の内部を示す断面図で、本体ケース2の先端側(図3における左側)に、薬剤シリンジ9が装着されている。薬剤シリンジ9は、円筒形状で、先端側にゴム(弾性体の一例)でできた注射針挿入部10、後端内側にゴム(弾性体の一例)でできたガスケット11を有している。薬剤シリンジ9の内部には、薬剤12が、注射針挿入部10とガスケット11に栓をされた状態で封入されている。薬剤シリンジ9内には、例えば4回分の薬剤12が封入される。
【0020】
装着された薬剤シリンジ9のガスケット11の後方側には、円柱形状の細長いピストン13が、その軸(中心軸)を薬剤シリンジ9の軸(中心軸)に一致させた状態で、薬剤シリンジ9の内部を摺動自在に設けられている。このため、ピストン13が前方のガスケット11側(図3のA方向)に移動すると、ピストン13の先端が前方のガスケット11に当接し薬剤シリンジ9内のガスケット11を注射針挿入部10側に押し込んでいく。
【0021】
本体ケース2内には、ピストン13を移動させる移動用モータ14が設けられ、この移動用モータ14にスクリュー15が接続されている。スクリュー15はナット16に組み合わされ、このナット16が長方形状の移動台17に固定されている。移動台17上にはピストン13を薬剤シリンジ9の軸周りに回動させる回転用モータ(ピストン回転機構の一例)18が設けられ、ピストン13が回転用モータ18に接続されている。つまり、移動台17が回転用モータ18とピストン13を保持する構成となっている。また、移動台17の両端は、2本の支持軸19によって、前後方向(薬剤シリンジ9の軸に沿った方向)に対して、摺動自在に支持されている。
【0022】
この構成で、移動用モータ14を回転させると、スクリュー15、ナット16を介して、移動台17が前方へと移動(図3の矢印A方向)する。移動台17に保持されたピストン13は、回転用モータ18と共に、薬剤シリンジ9の軸に沿って前方側へと移動し、薬剤シリンジ9内のガスケット11を注射針挿入部10側に押し込んでいく。つまり、移動用モータ14、スクリュー15、ナット16、移動台17は、ピストン13を移動させるピストン移動機構を構成する。
【0023】
なお、ピストン13の前方側は、ピストン保持部(回転軸受け)20で保持されている。ピストン保持部20は、ピストン13を、薬剤シリンジ9の軸に沿って摺動自在に保持すると共に、薬剤シリンジ9の軸周りに回転自在に保持している。このため、ピストン13は、安定した摺動(移動)および回転ができる。
【0024】
また、本体ケース2内には、電池21が設けられており、電池21によって各部に電気が供給される。
【0025】
図4は、各部の電気的な接続状態を示している。
【0026】
制御部22には、移動用モータ14、回転用モータ18、電池21、電源ボタン7、注射ボタン5、表示部6が電気的に接続されている。さらに、制御部22には、薬剤シリンジ9が薬剤シリンジ装着部8に装着されたことを検出する薬剤シリンジ装着検出部23、制御部22が各種制御を行うための制御プログラムが収納されている記憶部24が接続されている。
【0027】
なお、電池21は制御部22にだけに接続された状態としているが、この図4に示す各部に電源を供給する構成となっている。また、制御部22、記憶部24は、それぞれが電気回路で構成され、本体ケース2内の制御基板(図示せず)上に設けられている。
【0028】
そして使用者が、図1の注射ボタン5を押すと、制御部22が注射動作を開始し、移動用モータ14を回転させる。そして、図5に示すように、ピストン13が前方のガスケット11側(図5のA方向)に移動すると、ピストン13の先端が前方のガスケット11に当接し薬剤シリンジ9内のガスケット11を注射針挿入部10側に押し込んでいく。
【0029】
この時、ガスケット11と薬剤シリンジ9内面の接触面で、接触面の摩擦力により、スティック(付着)とスリップ(すべり)を繰り返す、いわゆるスティックスリップ現象が発生する事がある。
【0030】
スティックスリップ現象はよく知られた現象であるので、この図5を用いて簡単に説明する。
【0031】
薬剤シリンジ9内に例えば4回分の薬剤12が封入されている時、1回目の注射動作においては、ピストン13がガスケット11を一回目の注射終了位置P1まで押し込み、薬剤12を4分の1だけ吐出する。
【0032】
具体的には、ピストン13をガスケット11方向に移動させ(図5のa)ガスケット11の後端面に当接させた後(図5のb)、ピストン13でガスケット11を注射針挿入部10側に押し込んでいく。この時、ガスケット11と薬剤シリンジ内面の接触面は摩擦力によってスティック(付着)した状態なので、ゴムでできたガスケット11はピストン13に押されて弾性変形するがすぐには移動しない(図5のc)。さらにピストン13を押し込むと、ガスケット11と薬剤シリンジ内面は剥離し、ガスケット11は急激に前方に向かってスリップ(すべり)し、再びガスケット11と薬剤シリンジ内面の接触面がスティック(付着)する(図5のd)。
【0033】
このようなスティックスリップ現象が発生すると、ガスケット11は、所定の注射終了位置P1まで急激な移動と静止を繰り返しながら移動することとなる。
【0034】
つまり、ガスケット11の先端面が、図5cから図5dのごとく、急激な移動と静止を繰り返すので、薬剤12の急激な吐出と非吐出が繰り返される状態となり、この状態では意図した薬剤の量を投与することが難しくなる。例えば、ピストン13が所定の注射終了位置に移動したとしても、スティックが発生していると、ガスケット11の先端面は所定の注射終了位置P1にまで到達しておらず、すなわち、意図した薬剤の量が投与できていない状態となる。その結果として、適切な薬剤投与ができない惧れがあった。
【0035】
そこで、本実施形態においては、図3に示すように、ピストン13の後方側に、このピストン13を薬剤シリンジ9の軸周りに回転させる回転用モータ18(ピストン回転機構の一例)を接続して設けている。このため、回転用モータ18を回転させると、ピストン13は、薬剤シリンジ9の軸周りに回転する。
【0036】
そしてこの回転力をガスケット11に伝達するために、ピストン13のガスケット11側に、ガスケット11に回転力を伝達する回転力伝達部としてブレード25(回転力伝達部の一例)を設けている。ブレード25の代わりに針を設けてもよい。また、ガスケット11に凹部が設けられており、ピストン13のガスケット11側に凹部に対応する凸部を設けてもよい。
【0037】
図6は、ブレード25部分の拡大斜視図で、ピストン13のガスケット11側の端部には、ガスケット11を押し込む押込面26が設けられると共に、ガスケット11に向けて突出する2枚(複数枚)のブレード(凸部の一例)25を設けている。ブレード25は1枚でもよいが、複数設けるほうがより確実に回転力を伝達することができる。2枚のブレード25は、その刃先をガスケット11に向けてピストン13の中心軸(回転軸)に対して軸対称で設けられている。ブレード25は押込面26よりもガスケット11側に突出させている。
【0038】
このブレード25は、図7に示すように、ゴムでできたガスケット11に差し込まれ、係合することによってピストン13の回転力をガスケット11に伝達するので、ガスケット11を軸周りに回転させることができる。
【0039】
つまり、薬剤投与時に、ガスケット11を軸周りに回転させることで、ガスケット11と薬剤シリンジ9内面の接触面で、スティック(付着)が無い状態にしている。
【0040】
そして、回転するガスケット11を注射針挿入部10側に押し込むと、スティック(付着)が無いので、スティックスリップ現象は発生しない。
【0041】
この時の動作について、図4図7図9を用いて、さらに説明する。
【0042】
なお、図7図8は、薬剤投与の動作を説明するための図で、図9は、制御部22の制御フローチャートとなっている。
【0043】
使用者によって図1の電源ボタン7がONされると、制御部22が起動する(図9のS1)。
【0044】
制御部22は、図4の薬剤シリンジ装着検出部23を用いて新しい薬剤シリンジ9が薬剤シリンジ装着部8に装着されたか否かを検出する。薬剤シリンジ装着検出部23が新しい薬剤シリンジ9が装着されたことを検出した時には、制御部22は、移動用モータ14を回転させ、ピストン13を、図3の状態からガスケット11に向けて(図3のA方向)移動させる。
【0045】
すると、図7に示すように、ピストン13のブレード25がゴムでできたガスケット11に差し込まれ、ピストン13とガスケット11は一体的に連結される。なお、この連結は、薬剤シリンジ9に注射針4が装着されていない状態で行われるので、薬剤シリンジ9内に充填された薬剤12が吐出されることはない。つまり、薬剤12が非吐出状態で存在するので、ガスケット11が動いてしまうことはなく、ブレード25をガスケット11にしっかりと差し込むことができる。このように、ピストン13を、ガスケット11を押し込む初期位置まで移動させる(図9のS2)。
【0046】
その後、使用者によって、本体ケース2の注射針装着部3に注射針4が装着されると、図7のように、注射針4の針本体27が薬剤シリンジ9の注射針挿入部10に挿入される。
【0047】
この状態で、使用者が本体ケース2を持って注射針4の針本体27を使用者の注射位置に刺す。そして、使用者が、図1の注射ボタン5を押すと、制御部22は、注射動作を開始する(図9のS3)。
【0048】
先ず、制御部22は、回転用モータ18を回転させてピストン13を回転させる(図7のB方向)。すると、ブレード25によってピストン13とガスケット11は一体的に連結されているので、ピストン13の回転はブレード25を介してガスケット11に伝達され、ガスケット11は、ピストン13内でピストン13の軸周りに回転する(図9のS4)。
【0049】
このように、ガスケット11を回転させることで、ガスケット11と薬剤シリンジ9内面の接触面で、スティック(付着)が無い状態にできる。
【0050】
次に、制御部22は、ピストン13を回転させた状態で移動用モータ14を回転させ、ピストン13をガスケット11方向の所定位置(薬剤投与の終了位置)まで移動させる。これにより、ガスケット11に押された薬剤12が針本体27を介して吐出され、薬剤の投与が行われる(図9のS5)。
【0051】
すなわち、本実施形態においては、ガスケット11を回転させてスティック(付着)が無い状態とし、このスティック(付着)が無い状態で(ガスケット11を回転させながら)ガスケット11を移動させるので、スティックスリップ現象は発生しない。
【0052】
したがって、ガスケット11が一定速度で移動するので薬剤12は安定的に吐出され、意図した薬剤の量を投与することができる。その結果として、適切な薬剤投与ができるものとなる。
【0053】
予定した薬剤12の投与が終わると、制御部22は、表示部6に注射が完了した旨を表示させ(図9のS6)、注射動作を終了する(図9のS7)。
【0054】
使用者は、表示部6の表示を見て注射完了を認識し、本体ケース2を動かして、針本体27を注射部位から引き抜くこととなる。これで、1回の注射が終了する。
【0055】
以上説明したごとく、本実施形態においては、ピストン13に、このピストン13を薬剤シリンジ9の軸周りに回転させるピストン回転機構を接続すると共に、このピストン13のガスケット11側には、ガスケット11に回転力を伝達する回転力伝達部を設けた、ものである。
【0056】
このため、ピストン回転機構がピストン13を薬剤シリンジ9の軸周りに回転させると、この回転は回転力伝達部を介してガスケット11に伝達され、ガスケット11を軸周りに回転させることができる。つまり、ガスケット11を回転させることで、ガスケット11と薬剤シリンジ9内面の接触面をスティック(付着)が無い状態にできる。
【0057】
そして、回転するガスケット11を注射針挿入部10側に押し込むと、スティック(付着)が無いので、スティックスリップ現象は発生しない。
【0058】
したがって、ガスケット11が一定速度で移動するので薬剤12は安定的に吐出され、意図した薬剤12の量を投与することができる。その結果として、適切な薬剤投与ができるものとなる。
【0059】
また、ピストン回転機構とピストン移動機構とを独立して備えるため、ガスケット11の移動と独立してガスケット11を回転させることができる。したがって、例えば、ガスケット11の回転速度を一定に保ちながら、薬剤シリンジ9内へガスケット11を挿入する速度を変化させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の薬剤注入装置は、例えば、インスリンや成長ホルモンなどの薬剤を注入する薬剤注入装置としての活用が期待される。
【符号の説明】
【0061】
1 薬剤注入装置
2 本体ケース
3 注射針装着部
4 注射針
5 注射ボタン
6 表示部
7 電源ボタン
8 薬剤シリンジ装着部
9 薬剤シリンジ
10 注射針挿入部
11 ガスケット
12 薬剤
13 ピストン
14 移動用モータ
15 スクリュー
16 ナット
17 移動台
18 回転用モータ
19 支持軸
20 ピストン保持部
21 電池
22 制御部
23 薬剤シリンジ装着検出部
24 記憶部
25 ブレード
26 押込面
27 針本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9