特許第6764516号(P6764516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6764516
(24)【登録日】2020年9月15日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】工作機械および表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/02 20190101AFI20200917BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20200917BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20200917BHJP
   B23Q 17/12 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   G01M13/02
   B29C45/76
   B23Q17/00 A
   B23Q17/12
   B23Q17/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-202985(P2019-202985)
(22)【出願日】2019年11月8日
【審査請求日】2020年4月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100133639
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 卓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 努
(72)【発明者】
【氏名】國木 晋之介
(72)【発明者】
【氏名】城下 了輔
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−096977(JP,A)
【文献】 特開2000−238106(JP,A)
【文献】 特開2006−258535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールねじの動作を伴う暖機運転中においてボールねじを駆動するために印加される電流検知値として検知する検知部と、
前記検知値を複数のデータに分解し、前記複数のデータの次元を圧縮して2次元の第1算出量と第2算出量とを算出する算出部と、
前記第1算出量に係る数値を第1軸とし前記第2算出量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された第1境界線及び第2境界線と、を表示する表示部と、
を備え
前記第2境界線は、前記第1境界線を囲むように前記表示部に表示される工作機械。
【請求項2】
前記境界線の形状の補正を行う補正部をさらに備えた請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
ボールねじの動作を伴う暖機運転中においてボールねじを駆動するために印加される電流を検知値として検知する検知部と、
前記検知値を複数のデータに分解し、前記複数のデータの次元を圧縮して2次元の第1算出量と第2算出量とを算出する算出部と、
前記第1算出量に係る数値を第1軸とし前記第2算出量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記境界線の線を選択し、選択した線の形状を変更する補正を行う補正部と、
を備えた工作機械。
【請求項4】
前記表示部は、前記プロットした点を選択すると、前記プロットした点に関連した情報を表示する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
ボールねじの動作を伴う暖機運転中においてボールねじを駆動するために印加される電流検知値として検知する検知部を有する工作機械から検出された検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出し、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表示する表示装置であって、
前記検知値を複数のデータに分解し、前記複数のデータの次元を圧縮して2次元の第1算出量と第2算出量とを算出し、前記第1算出量に係る数値を第1軸とし前記第2算出量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された第1境界線及び第2境界線と、を表示する際に、前記第2境界線を、前記第1境界線を囲むように表示する表示装置。
【請求項6】
ボールねじの動作を伴う暖機運転中においてボールねじを駆動するために印加される電流を検知値として検知する検知部を有する工作機械から検出された検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出し、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表示する表示装置であって、
前記検知値を複数のデータに分解し、前記複数のデータの次元を圧縮して2次元の第1算出量と第2算出量とを算出し、前記第1算出量に係る数値を第1軸とし前記第2算出量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記境界線の線を選択し、選択した線の形状を変更する補正を行う補正部と、
を備えた表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、ボールねじに加わる総エネルギー値Aが、寿命エネルギー値Bを越えた際に(A≧B)、ボールねじの寿命の限界と判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−238106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、ボールねじの状態を分かり易く視覚化することが難しかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、
ボールねじの動作を伴う暖機運転中においてボールねじを駆動するために印加される電流検知値として検知する検知部と、
前記検知値を複数のデータに分解し、前記複数のデータの次元を圧縮して2次元の第1算出量と第2算出量とを算出する算出部と、
前記第1算出量に係る数値を第1軸とし前記第2算出量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された第1境界線及び第2境界線と、を表示する表示部と、
を備え
前記第2境界線は、前記第1境界線を囲むように前記表示部に表示される工作機械である。
上記目的を達成するため、本発明に係る他の工作機械は、
ボールねじの動作を伴う暖機運転中においてボールねじを駆動するために印加される電流を検知値として検知する検知部と、
前記検知値を複数のデータに分解し、前記複数のデータの次元を圧縮して2次元の第1算出量と第2算出量とを算出する算出部と、
前記第1算出量に係る数値を第1軸とし前記第2算出量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記少なくとも2つの境界線のうち、選択された前記境界線の形状を変更する補正を行う補正部と、
を備えた工作機械である。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る表示装置は、
ボールねじの動作を伴う暖機運転中においてボールねじを駆動するために印加される電流検知値として検知する検知部を有する工作機械から検出された検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出し、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表示する表示装置であって、
前記検知値を複数のデータに分解し、前記複数のデータの次元を圧縮して2次元の第1算出量と第2算出量とを算出し、前記第1算出量に係る数値を第1軸とし前記第2算出量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された第1境界線及び第2境界線と、を表示する際に、前記第2境界線を、前記第1境界線を囲むように表示する表示装置である。
上記目的を達成するため、本発明に係る他の表示装置は、
ボールねじの動作を伴う暖機運転中においてボールねじを駆動するために印加される電流を検知値として検知する検知部を有する工作機械から検出された検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出し、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表示する表示装置であって、
前記検知値を複数のデータに分解し、前記複数のデータの次元を圧縮して2次元の第1算出量と第2算出量とを算出し、前記第1算出量に係る数値を第1軸とし前記第2算出量に係る数値を第2軸とした平面上に、前記検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記境界線の線を選択し、選択した線の形状を変更する補正を行う補正部と、
を備えた表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ボールねじの状態を分かり易く視覚化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る工作機械の構成を示す図である。
図2】第2実施形態に係る工作機械の外観およびボールねじを説明するための図である。
図3A】第2実施形態に係る工作機械の前提技術による1次元グラフの一例を示す参考図である。
図3B】第2実施形態に係る工作機械の内部構成を示す図である。
図3C】第2実施形態に係る工作機械の補正部による補正前後の2次元マップの変化の様子を説明する図である
図3D】第2実施形態に係る工作機械の特徴量抽出部による特徴量の抽出について説明するための図である。
図4】2次元マップにおける点の軌跡を説明するための図である。
図5】第2実施形態に係る工作機械が有するテーブルの一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る工作機械の処理手順を説明するフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る工作機械の表示部について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての工作機械100について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る工作機械100の構成を説明するための図である。
【0012】
図1に示すように、工作機械100は、検知部101、特徴量抽出部102および表示部103を含む。検知部101は、暖機運転中の振動、音、ボールねじ110を駆動するために印加される電流、熱、光および動力値の少なくともいずれか一つの検知値を検知する。特徴量抽出部102は、検知部101で検知した検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出する。表示部103は、第1特徴量に係る数値を第1軸134とし第2特徴量に係る数値を第2軸135とした平面上に、検知値をプロットした点(図中、T1〜T16)と、ボールねじ110に異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線132,133と、を表示する。
【0013】
表示部103に表示された第1境界線132の内側に表示された点(図中、T1〜T10)は、ボールねじ110が正常に動作していることを示している。また、境界線132および境界線133の間に表示された点(T11〜T14)は、正常に稼働しているが、加工に影響のない軽微な異常(ボールねじ破損による精度低下の予兆と考えられる異常)が発生する可能性があることを示している。さらに、境界線133の外側に表示された点(T15〜T16)は、加工精度に影響がある異常が発生する可能性があることを示している。ここで示した境界は、任意に設定できる。そのため、正常に稼働していることを示している領域を複数の境界線で区切って表示し、一番外側に位置する領域を異常が発生することを示すような境界の設定でもよい。
【0014】
本発明における工作機械100は、図1に示す形態に限らず、材料を付着することで加工する付加加工(Additive Manufacturing)の機械、材料を除去する除去加工(Subtractive Manufacturing)の機械、レーザなどの光を照射して加工する機械でもよい。具体的には、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、歯切り盤、研削盤、多軸加工機、レーザ加工機、積層加工機等が含まれる。これらは、金属、木材、石材、樹脂等のワークに対して、旋削、切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、折り曲げ、成形、微細加工、積層加工等の各種の加工を施すものである。これらの加工を組み合わせた複合機も含まれる。
【0015】
本実施形態によれば、ボールねじに異常が発生する可能性を2次元マップとして表示するので、ボールねじの状態を分かり易く視覚化することができる。また、ボールねじに異常が発生する可能性を的確に判断することができるので、ボールねじの破損等を未然に防ぐことができ、例えば、ボールねじの交換による生産性の低下を防止できる。
【0016】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る工作機械について、図2乃至図5を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る工作機械の外観およびボールねじを説明するための図である。第2実施形態の工作機械200について、複合機を用いて説明する。工作機械200は、ボールねじ210、ステージ211およびモータ212を有する。モータ212の回転がボールねじ210に伝わり、ボールねじ210の回転駆動力によりステージ211が往復移動する。ステージ211を往復移動させることにより、ステージ211に載置された工作対象物を所望の位置へと移動させることができる。ボールねじ210とは、ねじ軸、ナット、ボールなどから構成される機械要素部品のひとつであり、直線運動を回転運動に変換、または回転運動を直線運動に変換するためのものである。
【0017】
図3Aは、本実施形態の前提技術としての1次元グラフの一例を示す図である。図3Aには、縦軸356にモータ212に印加された電流値、横軸357に時間T1〜T16を設定したグラフ351が表示されている。このようなグラフを用いる場合、破損のタイミングをT16とすると、実際にはT15のタイミングが、適正なアラートのタイミングである。しかし、T15のタイミングを検出しようとすると、閾値358をあらかじめ定める必要がある。そうすると、閾値358を超えたT9のタイミングで、ボールねじ210の交換を促すことになる。このため、まだボールねじ210を使用できるのにも関わらず、ボールねじ210を交換することになり、T9〜T15の時間分だけ、無駄が生じてしまう。つまり、ボールねじ210の交換頻度が多くなるため、生産性が低下する。
【0018】
図3Bは、本実施形態に係る工作機械200の内部構成を示す図である。工作機械200は、検知部301、特徴量抽出部302、表示部303、補正部304、操作部305、境界データ保持部306、異常判定部308および境界データ生成部309を有する。工作機械200は、検知部301が検知した検知値に基づいて、表示部303において、ボールねじに異常が発生する可能性を判断するための2次元マップ331を表示する。
【0019】
検知部301は、工作機械200の暖機運転において、モータ212を回転させるために印加される電流値を検知し、検知値(sensed value)として出力する。検知部301は、具体的には、三相交流のUVW相に設けられた電流センサと計測した電流値をデジタルデータに変換するADコンバータとを含む。例えば、ADコンバータのサンプリング周波数を2kHzとして、16bitの信号に変換する。このとき、256点の時系列データを取得でき、128msecごとに入力データとすることができる。
【0020】
ここで、暖機運転とは、機械を始動した直後などに低負荷での運転を一定時間行うことをいう。暖機運転は、低負荷での運転により機械の構成部品同士の馴染みを促がし、各部の働きを滑らか、かつ確実にするために行われる。低回転、低負荷の運転により、潤滑油を各部へ行き渡らせ、機械が本来の性能を発揮できる状態になるように部品同士の間隙(クリアランス)を適正な状態へ導くことができる。
【0021】
検知部301は、ADコンバータから出力されたデジタル電流値に対し、式(1)の変換式を用いて、Q軸電流iqとD軸電流idとを算出する。
【数1】
上の式において、Q軸電流iqは実効電流、D軸電流idは無効電流である。検知部301は、Q軸電流iqを検知値として特徴量抽出部302に送る。
【0022】
特徴量抽出部302は、周波数分解部321、正規化部322および次元圧縮部323を有する。周波数分解部321は、例えば、フーリエ変換などを用いて、検知部301から受け取った検知値から周波数成分を抽出する。正規化部322は、周波数分解された後のデータを正規化する。次元圧縮部323は、正規化されたデータの次元を圧縮して2次元の特徴量(第1特徴量成分と第2特徴量成分とを有するデータ)を生成する。特徴量抽出部302は、所定のプログラムを実行するためのプロセッサである。
【0023】
表示部303は、次元圧縮部323で抽出した2次元の特徴量データに基づいて、ボールねじ210に異常が発生する可能性を表す2次元マップ331を表示する。2次元マップ331は、次元圧縮部323で生成される第1特徴量を第1軸332とし、第2特徴量を第2軸333とした平面を含む。その平面上に、検知値の特徴量をプロットする(T1〜T16)。さらに表示部303は、ボールねじ210に異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された境界線(この例では3つの境界線334〜336)を画面に表示する。本実施形態で「異常」とは、ボールねじ210の破損を意味する。
【0024】
2次元マップ331は、プロットされる検知値の特徴量が、最も内側の境界線334の中心から外側に遠ざかれば遠ざかるほど異常が発生する可能性が高くなることを示している。
【0025】
例えば、境界線334の内側にプロットされた検知値の特徴量(T1,T8,T9・・・)は、異常が発生する可能性が極めて低いため正常な動作状態であると判断できる。つまり、2次元マップ331を見たユーザは、境界線334の内部にのみ検知値の特徴量を表す点が表示されていれば、安心して工作機械200を稼働させられる。
【0026】
検知値の特徴量を表わす点が、境界線334および境界線335の間にあれば、ユーザは異常が発生する可能性は低いが所定値以上ある動作状態と判断し、注意深く工作機械200を稼働させればよい。例えば、工作機械の内部の切り屑を清掃することや、潤滑油の確認・注入を行うこと、モータ212の回転数をボールねじ210の破損の発生し難い回転数に設定することができる。また、ユーザは、境界線334および境界線335の間に検知値の特徴量があれば、ボールねじ210の交換などを検討し始めるべきである。
【0027】
例えば、2次元マップ331を参照すると、T11〜T14は境界線334の外側の点であるため、工作機械200の稼働中に異常が発生する予兆である可能性が高い。点T15は、境界線335の外側であるため、即座にボールねじ210の交換が必要であることが分かる。このように、2次元マップ331を表示することにより、グラフ351よりも正確に、実際に切削精度の低下が現れる前にボールねじ210の交換のタイミングを判断できる。
【0028】
また、点の軌跡を見ることにより、工作機械200に長期的に発生する可能性のある異常の兆候などを容易に把握することができるので、ユーザは工作機械200の中長期的なメンテナンス計画や消耗品の調達計画を立てることができる。
【0029】
さらに、例えば、検知値の特徴量が、境界線336の外側にプロットされていれば、即座にボールねじ210の破損が発生する可能性が高いと考えられるため、ボールねじ210の交換を迅速に行なうべきである。
【0030】
表示部303は、検知部301が検知値を検知する度に、検知値の特徴をプロットした点を追加的に表示し、同時に正常異常の判定基準となる境界線を表示する。
【0031】
表示部303は、例えば工作機械200の一部として設けられたディスプレイでもよいし、工作機械200の外部にあるディスプレイでもよい。また、プロジェクタを用いてスクリーンに2次元マップ331を投影してもよい。この場合、表示装置は、暖機運転中の検知値として検知された振動、音、ボールねじ210または主軸に印加される電流、熱、光および動力値の少なくとも一つから抽出された特徴量に基づいて、ボールねじ210に異常が発生する可能性を2次元マップ331として表示する。2次元マップ331に関する情報は、表示装置側が保持していてもよい。
【0032】
補正部304は、ユーザからの指示に従い表示部303により表示された2次元マップ331の補正を行う。具体的には、図3Cに示したように、補正部304は、左下側に広げる方向に、2次元マップ331の境界線334の形状の補正を行う。ユーザは、境界線334を広げることにより、正常な検知値の範囲を広くすることができる。正常、異常の判定ができるベテランユーザなどが境界線334の形状を補正することにより、その機械を使う他のユーザが、ベテランユーザの判断に準ずることができる。図3Cの例では、点T12〜T14が境界線334の内部に収まるように、境界線334を広げるように補正した例を示している。
【0033】
工作機械200の工場出荷時に取得した検知値と、工作機械200をユーザの工場などに配置した状態で取得した検知値とでは、描画される2次元マップ331の境界線334〜336に違いが生じる場合がある。すなわち、工作機械200による動作条件が常に同じになるとは限らない。
【0034】
例えば、工作対象物の重量はそれぞれ異なるため、どの工作対象物を工作するかにより、ボールねじ210の破損の可能性を示す2次元マップ331の境界線334〜336の形状が異なる。そこで、描画された2次元マップ331の境界線334〜336の形状に補正を加えることができる構成とすることにより、ユーザの使用環境に合わせた2次元マップ331を表示できる。
【0035】
なお、補正の方法は、例えば、ユーザが、マウスなどの操作部305を用いて、境界線334〜336の一部をドラッグして、境界線334〜336の形状を変更させてもよい。また、キーボードなどの操作部305を用いて、数値を入力することにより境界線334〜336の形状を変更させてもよい。また、補正後の境界線に関するデータをクラウド上に保存して、他の工作機械と共有してもよい。
【0036】
異常判定部308は、特徴量抽出部302が抽出した検知値の特徴に基づいて、異常であるか否かを判定する。異常判定部308は、判定結果を境界データ生成部309に渡す。
【0037】
境界データ生成部309は、異常判定部308において、正常と判定された点と、異常と判定された点との間に境界線を生成する。
【0038】
境界データ保持部306は、表示部303に表示される2次元マップ331の境界線334〜336のデータを保持している。補正部304は、境界データ保持部306が保持する境界線334〜336のデータを変更することで、境界線334〜336の形状の補正を行う。
【0039】
(特徴量抽出処理)
ここで、図3Dを参照して、特徴量抽出部302による特徴量の抽出方法について詳細に説明する。周波数分解部(図中FFT)321は、工作機械200による暖機運転中に検知部301が検知した電流値の周波数成分を抽出して、周波数スペクトルを生成する。周波数分解は、例えば、FFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)により行われるが、これには限定されない。
【0040】
一般に任意の周期的な時系列データytは、様々な周期の三角関数の和として考えることができる。これをフーリエ級数展開と呼び、基本周期がT0[s]の観測値ytのフーリエ級数は、複素数を用いると式(2)のように表せる。
【数2】
【0041】
ここで、ω0=2πf0[rad/s]は基本角周波数、f0=1/T0[Hz]は基本周波数である。複素フーリエ係数cnは、以下の式(3)で求められる。
【数3】
【0042】
電流データのサンプリングタイムをd、ウインドウ長さをnとしたとき、最大周波数fmaxと周波数分解能Δfは、以下の式(4)および(5)で表される。
【数4】
【数5】
【0043】
例えば、サンプリング周波数が2kHzでウインドウ長さが256点の場合、FFT後の最大周波数fmaxは、1kHzとなり、周波数分解能Δfは、7.8125Hzとなる。つまり、256点の時系列データは、FFTすると128点のベクトルで表現することができ、このベクトルが次のオートエンコーダに対する入力となる。なお、128点のベクトルは、正規化部322において、正規化され、次元圧縮部323へ送られる。
【0044】
次元圧縮部323は、オートエンコーダ361、PCA(Principal Component Analysis、主成分分析)362を用いて、次元圧縮を行う。オートエンコーダ361は、機械学習におけるニューラルネットワークを使用した次元圧縮のためのアルゴリズムであり、入力サンプルの次元数よりも圧倒的に少ない次元数の特徴を抽出することができるアルゴリズムである。
【0045】
本実施形態では、印加電流値を周波数分解部321により、複数次元のベクトル(ここでは、128次元)で表現したデータに周波数分解する。そして、周波数分解された複数次元のベクトル(128次元)を次元圧縮部323の入力としている。次元圧縮部323のオートエンコーダ361の中間層を低次元に設定することで、複数次元のベクトル入力を低次元に次元圧縮している。オートエンコーダ361は、一般的に、3層ニューラルネットにおいて、入力層と出力層に同じデータを用いて、入力層から中間層に圧縮した後、出力層に復元することを繰り返し、再現率の高い中間層を導き出すものである。ここでは、中間層を64次元に設定している。つまり、次元圧縮部323に入力された128次元のベクトルは、特徴をできるだけ維持したまま64次元に圧縮される。例えば、FFT後のベクトルが128次元の場合、オートエンコーダ361により64次元や10次元にすることができる。以下にオートエンコーダ361の学習と学習済みのモデルとを用いた処理について説明する。
【0046】
(i)オートエンコーダの学習
実験番号βの印加電流波形のFFTデータxβは、以下の式(6)のようにR次元のベクトルの集合で表される。
【数6】
ここで、
は、実験番号βのr番目の区間、Rは区間総数である。
【0047】
すると、エンコーダ部は、以下の式(7)で表される。
【数7】
また、デコーダ部は、以下の式(8)で表される。
【数8】
ここで、W’は、Wの転置行列であるため、求めるパラメータは、W、b、b’の3つとなる。
【0048】
このように、
は、元信号
に類似したものとなる。
【0049】
例えば、最適化手法にAdam(Adaptive moment estimation)を用いると、直前のステップt−1までの勾配の2乗の移動平均νt=E[g2tと勾配の移動平均mt=E[g]tは、以下の式(9)のように表すことができる。
【数9】
ここで、β1、β2∈[0,1)はハイパーパラメータであり、例えば、Adamの推奨値である下記の値を用いてもよいが、推奨値を基準に調整してもよい。
【0050】
β1=0.9
β2=0.999
ここで、ν0=0で初期化したとすると、以下の式(10)が得られる。
【数10】
【0051】
つまり、2次モーメントνtの移動平均E[νt]と真の2次モーメントE[g2t]の関係性は、以下の式(11)で表される。
【数11】
【0052】
ここで、ζ=0と近似できるようにハイパーパラメータの値を設定すれば、
【数12】
が求められる。以上より、
【数13】
がパラメータ更新式となる。バイアスのb、b’においても同様の手順で導出することが可能である。
【0053】
(ii)オートエンコーダの処理
学習したオートエンコーダのエンコーダを次元圧縮に用いる。
【数14】
例えば、FFT後のベクトルが128次元の場合で、中間層を64次元に設定してオートエンコーダを学習させた場合、128次元の入力
から次元圧縮された64次元の
が出力される。
【0054】
PCA(Principal Component Analysis;主成分分析)は、主成分を用いてデータをより低い次元で表現する手法である。入力を任意の次元数のデータに次元圧縮して出力することが可能である。
【0055】
(i)学習
入力のデータ行列をX、単一のデータ点を含む列ベクトルをxとする。データの分散最大化問題を定式化すると、
【数15】
と表される。この式(15)を行列とベクトルとの形式で書き直すと、
【数16】
となる。つまり、wのノルムが1となる拘束条件を満たした上で、出力Xwが最大になるwを求める。その答えはXの特異値分解にある。k次元の主成分をV、w、データ行列をWとすると、
W=V
である。ここで、kは、主成分Vに含まれる相関のない変数群の個数である。よって、次元圧縮後のベクトルをZとすると、射影座標のベクトルは、
Z=XV
と表される。
【0056】
(ii)処理
学習により求めた主成分Vを用いて、次元圧縮を行う。例えば、オートエンコーダ処理後のベクトル次元が64次元の場合、64次元の入力X64を2次元のベクトルZ2に次元圧縮するように設定できる。
【0057】
2=X642
より、64次元のX64を入力すると主成分V2により2次元ベクトルZ2が出力される。ベクトルZ2の2つのベクトル成分が第1特徴量および第2特徴量に相当する。ベクトルZ2の2つの成分を第1軸および第2軸として2次元マップへプロットする。
【0058】
SVM(Support Vector Machine)363は、本来2クラス分類を目的としたパターン認識手法であり、SVM363ではマージンを最大化する最適な分離超平面を求める。ここで、マージンとは分離超平面に最も近いサンプルと分離超平面との距離である。最大化されたマージン(距離)は、f(x)で表わされる。
【0059】
SVM363は、One Class SVM(One Class SVM)であり、通常のSVMを拡張したもので、正常データを非負値に、異常データを負値に写像するモデルを構築する。すなわち、One Class SVMは、大多数が正常であるようなデータの集合をもとに学習をおこない、未知のデータが正常であるのか、異常であるのかを判定する手法である。一般には正常に作られた製品や正常な状態のデータは多く入手できても、異常な製品や異常な状態のデータはあまり入手できない。そのようなケースに対してOne Class SVMを適用することが可能である。
【0060】
(i)学習
モデル構築用データが線型分離不可能な場合、SVMでは非線形関数を用いてモデル構築用データを高次元空間に写像し、高次元空間内で分離超平面を求める。これは、オリジナルの低次元空間において、非線形な分離境界を求めることに等しい。高次元空間へはカーネル関数Kを用いて写像される。
【数17】
ここで、xiが第1特徴量であり、xjが第2特徴量である。また、φは非線形関数である。SVMモデルによって決まる距離f(x)は以下の式(18)で表される。
【数18】
【0061】
ここで、wは重みベクトルであり、bはバイアスである。ここで新しいサンプルxは、f(x)の符号によって識別することができる。One Class SVMにおけるモデル構築は、モデル構築用の正常データを同一クラスに、そして原点を他方のクラスとみなした場合のSVMとして定式化される。つまり、One Class SVMにおけるマージンとは、原点と原点に最も近いサンプルとの距離として定義され、そのマージン最大化問題は以下の式(19)のように定式化される。
【数19】
【0062】
ここでξi(i=1,・・・,N)は、スラック変数であり、ν∈(0,1)は構築したOne Class SVMモデルでモデル構築用データを識別した場合のエラー率である。ここで、Lagrange乗数αi≧0およびηi≧0を導入すると、この最適化問題は、以下の式(20)のように書き直される。
【数20】
【0063】
Lagrangeの未定乗数法により、以下の式(21)を導くことができる。
【数21】
【0064】
整理すると、この問題は以下のような双対形式の式(22)で表現できる。
【数22】
【0065】
この最適化問題は標準的な2次計画問題として解くことができる。最終的にOne Class SVMモデルによって決まる距離f(x)は、以下の式(23)で表される。
【数23】
【0066】
通常、異常検知モデルのような識別モデルを構築するには、正常データと異常データとの両方が必要である。しかし、One Class SVMでは、上記式(23)で分かるとおり、正常データのみから識別モデルを構築できる。
【0067】
上述したようにOne Class SVMは、超平面との距離f(x)を出力する。距離f(x)に基づいて、正常、異常を判定できる。距離f(x)は異常なデータほど負に大きな値をとり、正常なデータほど正に大きな値をとる。
【0068】
ここで、境界データ生成部309は、距離f(x)が小さいデータ、つまり、異常なデータを外れ値とし、境界線を生成する。
【0069】
例えば、学習データの中に0.2%の異常値が含まれると仮定した場合、異常判定部308は、距離f(x)の小さい順に上位0.2%を外れ値とし、正常範囲を作成することができる。
【0070】
(ii)処理
学習させたOne Class SVMにPCAで次元圧縮したデータを入力することで、上記の式(23)より、出力f(x)が得られる。
【0071】
異常判定部308は、異常度スコアg(x)として、出力f(x)を正負逆転させたものを用いており、
g(x)=−f(x)
と表される。つまり、異常判定部308は、異常度スコアg(x)が負の値の場合は正常、0以上の場合は異常と判定する。
【0072】
境界データ生成部309は、異常度スコアg(x)により正常と判定された点と、異常と判定された点との間に境界線を生成し、境界データとして、境界データ保持部306に保存する。
【0073】
このように、本実施形態においては、検知した検知値の次元を一旦圧縮して(128次元→64次元→2次元)、正常か異常かを判断し易くして、正常と異常との線引きをしている。もちろんこれに限定されるものではなく、128次元のデータをもとにOne Class SVMを用いて、正常か異常かの判断をさせ、それとは別に次元の圧縮(128次元→64次元→2次元)をして2次元平面にプロットしてもよい。この場合、処理時間がかかるが正常か異常かの判断は、2次元データを用いるよりも精度がよくなる。
【0074】
また、次元圧縮の手法として、PCA362を用いたが、PCA362の代わりに、例えば、VAE(Variational Auto Encoder)を用いてもよい。また、PCA362を用いないでオートエンコーダ361のみを用いて2次元まで圧縮してもよい。
【0075】
なお、次元圧縮の手法はここに示した手法には限定されず、様々な手法を組み合わせて用いてもよい。また、ここに示した例は、ボールねじ210の破損についての2次元マップ331の作成についての例であるが、ベアリングの破損についても、最初に取得する検知値が異なっているだけで、その後の処理は、同様に行うことができ、同様の2次元マップ331を作成できる。例えば、ベアリングの破損の予兆を捉えたい場合には、暖機運転中に発生する音や振動のデータを検知値として取得すればよい。
【0076】
図4は、2次元マップ331における点の軌跡を説明するための図である。上、中、下、いずれの2次元マップ331も、正常範囲内に点が存在しているが、軌跡411、421に比べて、軌跡431は、徐々に境界線の中心から離れる方向に移動しているため注意が必要である。すなわち、2次元マップ331によれば、従来の1次元の表示に比べて、ボールねじの動作状態の変化をより正確に把握することが可能となる。
【0077】
図5は、本実施形態に係る工作機械200が有するテーブル501の一例を示す図である。テーブル501は、2次元マップ331としてマッピングしたいマッピング対象511に関連付けて検知値512を記憶する。ボールねじ破損、ベアリング破損のそれぞれについて、取得分析すべき検知値512として、モータ212に印加される電流や、音や、振動や、トルクなどが記憶されている。工作機械200は、テーブル501を参照して2次元マップ331を表示するために取得すべきデータを判定する。
【0078】
以上説明したような工作機械200は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびストレージを有する。工作機械200は、RAMに本実施形態の実現に必要なデータを読み出し、CPUにより実行する。ストレージには、データベースや各種のパラメータ、データ、プログラム、モジュールが記憶される。
【0079】
図6は、本実施形態に係る工作機械200の処理手順を説明するフローチャートである。このフローチャートに従ったプログラムを、CPUが実行することにより、図3Bに示した各機能構成が実現される。
【0080】
ステップS601において、検知部301は、暖機運転中の検知値として、振動、音、モータ212または主軸に印加される電流、熱、光および動力値の少なくともいずれか一つの検知値を検知する。ステップS603において、特徴量抽出部302は、検知した検知値の特徴量の次元を減らし、第1特徴量と第2特徴量とを抽出する。ステップS605において、表示部303は、第1特徴量を第1軸332とし、第2特徴量を第2軸333とした平面上に、検知値をプロットした2次元マップ331の画面を生成する。さらに、表示部303は、ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された3つの境界線334〜336を生成する。
【0081】
ステップS607において、表示部303は、作成された2次元マップ331をディスプレイに表示する。ステップS609において、補正部304は、境界線形状の補正を行うか否かを判断する。境界線形状の補正を行わない場合(ステップS609のNO)、工作機械200は、処理を終了する。境界線形状の補正を行う場合(ステップS609のYES)、ステップS611へ進む。ステップS611において、表示部303は、境界線形状を補正した2次元マップ331を表示する。
【0082】
なお、本実施形態の説明においては、検知部301が、電流値を検知する例で説明したが、検知部301が検知するのは電流値には限定されず、例えば、振動、音、熱、光および加工時に発生する動力のそれぞれの値であってもよい。
【0083】
本実施形態によれば、暖機運転中の検知値を検知して、2次元マップを表示するので、工作機械の現在の状態を視覚的に容易に把握できる。また、工作機械の工場出荷時の状態の検知値を検知しておけば、出荷時の状態から、今現在どの段階まで工作機械の状態が進行しているかを視覚的に把握できる。例えば、工作機械のサービスマンは、定期点検などのタイミングで、ユーザに対して、2次元マップを見せながら、ボールねじの交換のタイミングを提案することができる。また、サービスマンは、ユーザに対して、ボールねじの劣化の状態を見せることができる。そして、ボールねじの劣化の原因が、切りくずの詰まりによるものなのか、傷によるものなのかなども分かるので、サービスマンは、ユーザに対してより適切な提案をすることができる。
【0084】
また、例えば、工作機械に何かをぶつけることにより、ボールねじの状態が劣化し、加工精度が低下することがあるが、工場出荷時からの2次元マップを見ることにより、加工精度の低下の原因を明らかにできる。つまり、その原因が、工作機械の初期不良によるものなのか、後発的な不良によるものなのかを明確にでき、工作機械メーカ側の責任なのか、ユーザ側の責任なのかをはっきりさせることができる。さらに、暖機運転中の検知値を検知して、検知した検知値を蓄積しておけば、サービスマンやユーザは、必要なときに2次元マップを見ることも可能である。
【0085】
なお、表示部303は、1画面に複数の2次元マップを並列に表示してもよい。例えば、表示部303は、1つの画面にボールねじ210の破損についての2次元マップおよびベアリングの破損についての2次元マップを同時に表示してもよい。そのように、複数の2次元マップを同時に表示すれば、各種の異常の発生の可能性を1つの画面上で確認することができる。
【0086】
また、図7に示したように、表示部703は、タッチスクリーンを備え、表示された2次元マップ331の点「T10」をタッチ(またはマウス等でクリック)すると、点T10に関する情報(日時、検知値、工具種、使用可能時間、加工条件など)が表示される。このように、検知値をプロットした点を選択することにより、その検知値に関連する情報をスクリーン上に表示することで、より詳細な動作状態を知ることができる。これにより、数秒前や数分前の動作状態を把握することができる。また、2次元マップにおける過去の動作状態を示す点の位置と、その点の検知値や加工条件などを参考にして、次の加工の加工条件を選択することができる。
【0087】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0088】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【要約】
【課題】ボールねじの状態を分かり易く視覚化すること。
【解決手段】工作機械であって、暖機運転中の振動、音、ボールねじを駆動するために印加される電流、熱、光および動力値の少なくともいずれか一つの検知値を検知する検知部と、検知部で検知した検知値から第1特徴量と第2特徴量とを抽出する特徴量抽出部と、第1特徴量に係る数値を第1軸とし第2特徴量に係る数値を第2軸とした平面上に、検知値をプロットした点と、前記ボールねじに異常が発生する可能性を表すために等高線状に配置された少なくとも2つの境界線と、を表示する表示部と、を備えた。
【選択図】 図1
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7