特許第6764524号(P6764524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6764524-粘着シート 図000004
  • 特許6764524-粘着シート 図000005
  • 特許6764524-粘着シート 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6764524
(24)【登録日】2020年9月15日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/22 20180101AFI20200917BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20200917BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20200917BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200917BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   C09J7/22
   C09J7/38
   C09J201/00
   B32B27/00 M
   B32B27/18 Z
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-510152(P2019-510152)
(86)(22)【出願日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2018013352
(87)【国際公開番号】WO2018181765
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2020年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-73236(P2017-73236)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 高志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 揮一郎
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/076131(WO,A1)
【文献】 特開2006−291137(JP,A)
【文献】 特開2000−248240(JP,A)
【文献】 特開2002−322359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
C09J 9/00− 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及び膨張開始温度(t)が120〜250℃である熱膨張性粒子を含み、非粘着性である熱膨張性基材と、粘着性樹脂を含む粘着剤層とを有する粘着シートであって、
前記熱膨張性基材が、下記要件(1)〜(2)を満たし、
23℃における、前記熱膨張性基材の厚さと、前記粘着剤層の厚さとの比(熱膨張性基材/粘着剤層)が5.0以上である、粘着シート。
・要件(1):100℃における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(100)が、2.0×10Pa以上である。
・要件(2):前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(t)が、1.0×10Pa以下である。
【請求項2】
前記熱膨張性基材が、下記要件(3)を満たす、請求項1に記載の粘着シート。
・要件(3):23℃における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(23)が、1.0×10Pa以上である。
【請求項3】
前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(t)が、1.0×10〜1.0×10Paである、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
23℃における、前記熱膨張性基材の厚さが10〜1000μmであり、前記粘着剤層の厚さが1〜60μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記熱膨張性基材の表面におけるプローブタック値が、50mN/5mmφ未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
23℃における、前記粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)が、1.0×10〜1.0×10Paである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記熱膨張性基材の両面に、2つの前記粘着剤層をそれぞれ有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記熱膨張性粒子の23℃における膨張前の平均粒子径が、3〜100μmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項9】
封止樹脂を使用した、加熱を伴う封止工程で用いられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項10】
100℃における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(100)が、4.0×10Pa以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の粘着シート
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の粘着シートを被着体に貼付後、膨張開始温度(t)以上の加熱処理によって、前記被着体から前記粘着シートを剥離する、粘着シートの使用方法。
【請求項12】
封止樹脂を使用した、加熱を伴う封止工程で用いる、請求項11に記載の粘着シートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、部材を半永久的に固定する用途だけでなく、建材、内装材、電子部品等を加工する際にこれらを仮固定するための仮固定用途に使用される場合がある。
このような仮固定用途の粘着シートには、使用時の接着性と、使用後の剥離性との両立が要求される。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材の少なくとも片面に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられた、電子部品切断時の仮固定用加熱剥離型粘着シートが開示されている。
この加熱剥離型粘着シートは、熱膨張性粘着層の厚さに対して、熱膨張性微小球の最大粒径を調整し、加熱前の熱膨張性粘着層の表面の中心線平均粗さを0.4μm以下に調整している。
特許文献1には、当該加熱剥離型粘着シートは、電子部品切断時には、被着体との接触面積を確保でき、チップ飛び等の接着不具合を防止し得る接着性を発揮でき、一方で、使用後には、加熱によって、熱膨張性微小球を膨張させて、被着体との接触面積を減少させることで、容易に剥離することができる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3594853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の小型化、薄型化、及び高密度化が進んでおり、電子機器に搭載される半導体装置にも、小型化、薄型化、及び高密度化が求められている。このような要求に対応し得る半導体パッケージ技術として、FOWLP(Fan out Wafer Level Package)が注目されている。
図3に示すように、FOWLP50は、封止樹脂層52によって封止された半導体チップ51の表面上に、再配線層53を設け、再配線層53を介して、はんだボール54と半導体チップ51とを電気的に接続した半導体パッケージである。
図3に示すように、FOWLP50は、半導体チップ51の外側まではんだボール54である端子を広げること(Fan out)ができるため、半導体チップ51の面積と比べて端子数が多い用途にも適用することができる。
【0006】
ところで、FOWLPの製造過程では、半導体チップを粘着シート上に載置し、100℃前後まで加熱した流動性を有する状態の封止樹脂を、(1)半導体チップ及び当該半導体チップの周辺の粘着シートの表面上に充填し、加熱して、封止樹脂から構成された層を形成する、もしくは、(2)封止用樹脂フィルムを半導体チップ上に積層して、加熱して、ラミネートする、といった(1)又は(2)の封止工程が行われる。そして、当該封止工程の後に、粘着シートを除去し、表出した半導体チップ側の表面に再配電層及びはんだボールを形成する工程を経て、FOWLPは製造される。
上記の封止工程において用いられる粘着シートには、半導体チップを載置してから封止樹脂で封止するまでの間は、半導体チップの位置ズレが生じず、且つ、半導体チップと粘着シートとの接着界面において封止樹脂が侵入しない程度の接着性が求められる。その一方で、封止後には、粘着シートを容易に除去し得る剥離性が求められる。
【0007】
上記のFOWLPの製造方法の封止工程において、例えば、特許文献1に記載されたような、基材上に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられた加熱剥離型粘着シートを用いることも考えられる。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の粘着シートを、上記封止工程に用いた場合、封止工程における加熱によって、熱膨張性粘着層の弾性率が低下し、載置している半導体チップが粘着シート側に沈み込むことが分かった。
半導体チップが粘着シート側に沈み込んだまま、封止樹脂が硬化されると、粘着シートを除去後の封止樹脂を含む半導体チップ側の表面は、半導体チップの表面と封止樹脂の表面との段差が生じ、平坦性に劣る。また、半導体チップの位置ズレが発生し、チップ間距離が一定とならない等の弊害が生じ得る。
さらに、特許文献1に記載の粘着シートを除去する際に、加熱をして熱膨張性粘着層を膨張させても、半導体チップが粘着シート側に沈み込んでしまっていることにより、ある程度の大きさの外力無しでは剥離が困難となることも考えられる。
【0008】
なお、このような問題は、FOWLPの製造方法の封止工程に限らず、例えば、PSP(パネルスケールパッケージ)の製造過程でも生じ得る問題であり、対象物を粘着シートで仮固定しながら加熱処理を施す工程にて、生じ得る懸念事項である。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、対象物を仮固定する際には、加熱時において当該対象物の沈み込みを抑制しつつ、剥離時には、わずかな力で容易に剥離可能である、粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、樹脂及び熱膨張性粒子を含み、非粘着性である熱膨張性基材と、粘着性樹脂を含む粘着剤層とを有する粘着シートの構成とすると共に、当該熱膨張性基材の所定の温度における貯蔵弾性率E’を特定の範囲に調整することで、上記課題を解決し得ることを見い出した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[12]に関する。
[1]樹脂及び膨張開始温度(t)が120〜250℃である熱膨張性粒子を含み、非粘着性である熱膨張性基材と、粘着性樹脂を含む粘着剤層とを有する粘着シートであって、
前記熱膨張性基材が、下記要件(1)〜(2)を満たす、粘着シート。
・要件(1):100℃における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(100)が、2.0×10Pa以上である。
・要件(2):前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(t)が、1.0×10Pa以下である。
[2]前記熱膨張性基材が、下記要件(3)を満たす、上記[1]に記載の粘着シート。
・要件(3):23℃における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(23)が、1.0×10Pa以上である。
[3]23℃における、前記熱膨張性基材の厚さと、前記粘着剤層の厚さとの比(熱膨張性基材/粘着剤層)が0.2以上である、上記[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4]23℃における、前記熱膨張性基材の厚さが10〜1000μmであり、前記粘着剤層の厚さが1〜60μmである、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[5]前記熱膨張性基材の表面におけるプローブタック値が、50mN/5mmφ未満である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[6]23℃における、前記粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)が、1.0×10〜1.0×10Paである、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[7]前記熱膨張性基材の両面に、2つの前記粘着剤層をそれぞれ有する、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[8]前記熱膨張性粒子の23℃における膨張前の平均粒子径が、3〜100μmである、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[9]封止樹脂を使用した、加熱を伴う封止工程で用いられる、上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[10]樹脂及び膨張開始温度(t)が120〜250℃である熱膨張性粒子を含み、非粘着性であり、下記要件(1)〜(2)を満たす、熱膨張性基材。
・要件(1):100℃における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(100)が、2.0×10Pa以上である。
・要件(2):前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(t)が、1.0×10Pa以下である。
[11]上記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の粘着シートを被着体に貼付後、膨張開始温度(t)以上の加熱処理によって、前記被着体から前記粘着シートを剥離する、粘着シートの使用方法。
[12]封止樹脂を使用した、加熱を伴う封止工程で用いる、上記[11]に記載の粘着シートの使用方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着シートは、対象物を仮固定する際には、加熱時において当該対象物の沈み込みを抑制しつつ、剥離時には、わずかな力で容易に剥離可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の粘着シートの構成の一例を示す、粘着シートの断面模式図である。
図2】本発明の粘着シートの構成の一例を示す、両面粘着シートの断面模式図である。
図3】FOWLPの一例を示す、断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、希釈溶媒を除いた成分を指す。
また、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0015】
本発明において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
また、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10〜90、より好ましくは30〜60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10〜60」とすることもできる。
【0016】
〔本発明の粘着シートの構成〕
本発明の粘着シートは、樹脂及び熱膨張性粒子を含み、非粘着性である熱膨張性基材と、粘着性樹脂を含む粘着剤層とを有するものであれば、特に限定されない。
図1及び2は、本発明の粘着シートの構成を示す、粘着シートの断面模式図である。
【0017】
本発明の一態様の粘着シートとしては、図1(a)に示すような、熱膨張性基材11上に、粘着剤層12を有する粘着シート1aが挙げられる。
なお、本発明の一態様の粘着シートは、図1(b)に示す粘着シート1bのように、粘着剤層12の粘着表面上に、さらに剥離材13を有する構成としてもよい。
【0018】
本発明の別の一態様の粘着シートとしては、前記熱膨張性基材の両面に、2つの前記粘着剤層をそれぞれ有する構成としてもよい。
このような構成の粘着シートとしては、例えば、図2(a)に示すような、熱膨張性基材11を第1粘着剤層121及び第2粘着剤層122で挟持した構成を有する、両面粘着シート2aが挙げられる。
また、図2(b)に示す両面粘着シート2bのように、第1粘着剤層121の粘着表面上にさらに剥離材131を有し、第2粘着剤層122の粘着表面上にさらに剥離材132を有する構成としてもよい。
【0019】
なお、図2(b)に示す両面粘着シート2bにおいて、剥離材131を第1粘着剤層121から剥がす際の剥離力と、剥離材132を第2粘着剤層122から剥がす際の剥離力とが同程度である場合、双方の剥離材を外側へ引っ張って剥がそうとすると、粘着剤層が、2つの剥離材に伴って分断されて引き剥がされるという現象が生じることがある。
このような現象を抑制する観点から、2つの剥離材131、132は、互いに貼付される粘着剤層からの剥離力が異なるように設計された2種の剥離材を用いることが好ましい。
【0020】
その他の粘着シートとしては、図2(a)に示す両面粘着シート2aにおいて、第1粘着剤層121及び第2粘着剤層122の一方の粘着表面に、両面に剥離処理が施された剥離材が積層したものを、ロール状に巻いた構成を有する両面粘着シートであってもよい。
【0021】
ここで、本発明の一態様の粘着シートにおいて、熱膨張性基材と粘着剤層との間に他の層を有する構成であってもよい。
ただし、わずかな力で容易に剥離可能な粘着シートとする観点から、図1に示す粘着シート1a、1b、及び図2に示す両面粘着シート2a、2bのように、熱膨張性基材11と粘着剤層12とが直接積層した構成を有するものであることが好ましい。
【0022】
〔熱膨張性基材〕
本発明の粘着シートが有する熱膨張性基材は、樹脂及び膨張開始温度(t)が120〜250℃である熱膨張性粒子を含み、非粘着性の基材であって、下記要件(1)〜(2)を満たすものである。
・要件(1):100℃における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(100)が、2.0×10Pa以上である。
・要件(2):前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(t)が、1.0×10Pa以下である。
なお、本明細書において、所定の温度における熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0023】
例えば、FOWLPの製造過程の封止工程では、100℃前後まで加熱し流動性を有する状態の封止樹脂を半導体チップ上に充填するか、もしくは、封止用樹脂シートを半導体チップ上に積層して、加熱してラミネートするといった方法により、半導体チップを封止することが一般的である。
つまり、上記要件(1)は、FOWLPの製造過程の封止工程における温度環境を100℃と仮定し、封止工程における温度環境下での熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’を規定したものである。
【0024】
一般的に、特許文献1に記載の粘着シートが有するような熱膨張性粘着剤層は、粘着性樹脂を含むため、温度の上昇と共に、貯蔵弾性率E’の低下の度合いが非常に大きくなるという傾向がある。
ここで、熱膨張性粘着剤層の貯蔵弾性率E’の低下の度合いが非常に大きくなると、熱膨張性粘着剤層に含まれる熱膨張性粒子及び粘着性樹脂が流動し易く、それに伴い、熱膨張性粘着剤層の粘着表面が変形し易くなる。
その結果、半導体チップ等の対象物の上に、例えば、封止樹脂を100℃前後に加熱をして流動性を有する封止樹脂を流し込みながら封止した場合には、当該封止樹脂の重さ及び加熱に伴って粘着シートが柔軟になることによって、対象物が粘着シート側に沈み込みが発生し易くなる。対象物の沈み込みは、対象物の位置ズレの発生、対象物間の距離のバラツキの発生、及び、封止後の対象物が載置された側の表面に凹凸が見られ、平坦性が劣る原因ともなる。なお、この問題は、封止用樹脂フィルムを用いたラミネートによる封止方法でも同様に生じ得る。
また、上記の熱膨張性粘着剤層の表面上に、新たな粘着剤層を設けた粘着シートにおいても、上記と同じく、熱膨張性粘着剤層中の熱膨張性粒子及び粘着性樹脂の流動によって、粘着剤層の粘着表面の変形が生じ易く、上述の問題が生じ得る。
【0025】
このような問題に対して、本発明の粘着シートでは、樹脂及び熱膨張性粒子を含み、且つ、上記要件(1)で規定するとおり、100℃における貯蔵弾性率E’(100)が2.0×10Pa以上に調整された熱膨張性基材を用いることで、上述の問題の解決を図っている。
【0026】
要件(1)を満たす熱膨張性基材を有することで、FOWLPの製造過程等の封止工程における温度環境下でも、熱膨張性粒子の流動を程よく抑制し得るため、熱膨張性基材上に設けた粘着剤層の粘着表面が変形し難くなる。
その結果、半導体チップ等の対象物の上に積層された封止樹脂の重さや封止用樹脂シートを用いたラミネートに伴う圧力によって、対象物が粘着シート側に沈み込み、平坦面が形成され難いといった弊害や、対象物の位置ズレの発生を抑制することができる。
【0027】
一方で、貯蔵弾性率E’(100)が、2.0×10Pa未満である熱膨張性基材を用いた場合、封止工程を想定した100℃の温度環境下で、熱膨張性基材に含まれる熱膨張性粒子の流動性が十分に抑制されずに、熱膨張性基材上に設けた粘着剤層の粘着表面の変形が生じ易い。
その結果、例えば、FOWLPの製造の封止工程で当該熱膨張性基材を有する粘着シートを用いた場合、封止樹脂の重さや封止用樹脂シートを用いたラミネートに伴う圧力によって、半導体チップが粘着シートの粘着剤層側に沈み込み、封止後の半導体チップ側の表面に凹凸が見られ、平坦面が形成され難いといった弊害が生じ得る。
【0028】
本発明の一態様で用いる熱膨張性基材の要件(1)で規定する貯蔵弾性率E’(100)は、2.0×10Pa以上であるが、上記観点から、好ましくは4.0×10Pa以上、より好ましくは6.0×10Pa以上、更に好ましくは8.0×10Pa以上、より更に好ましくは1.0×10Pa以上である。
また、封止工程において、半導体チップ等の封止対象物の位置ズレを効果的に抑制する観点から、当該熱膨張性基材の要件(1)で規定する貯蔵弾性率E’(100)は、好ましくは1.0×1012Pa以下、より好ましくは1.0×1011Pa以下、更に好ましくは1.0×1010Pa以下、より更に好ましくは1.0×10Pa以下である。
【0029】
一方、上記要件(2)は、粘着シートの剥離時における、熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’を規定したものである。
本発明の粘着シートを被着体から剥離する際には、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱することで、熱膨張性基材中の熱膨張性粒子が膨張し、熱膨張性基材の表面に凹凸が形成されると共に、その凹凸上に積層している粘着剤層も押し上げられ、粘着表面にも凹凸を形成される。
そして、粘着剤層の粘着表面に凹凸を形成させることで、被着体(半導体チップ及び硬化後の封止樹脂)と粘着表面との接触面積が減少すると共に、被着体と粘着表面との間に空間が生じることで、被着体から粘着シートをわずかな力で容易に剥離することができる。
【0030】
ところで、粘着シートの剥離性を向上させるには、膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱した際に、粘着剤層の粘着表面に凹凸が形成され易くする必要がある。そのためには、熱膨張性基材に含まれる熱膨張性粒子が膨張し易く調整されている必要がある。
【0031】
上記要件(2)では、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(t)を規定しているが、当該規定は、熱膨張性粒子が膨張する直前の熱膨張性基材の剛性を示す指標ともいえる。
つまり、本発明者らの検討によれば、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(t)が1.0×10Pa超となると、膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱して熱膨張性粒子の膨張しようとしても、膨張が抑制されて熱膨張性粒子が十分に大きくならず、熱膨張性基材の表面上に積層している粘着剤層の粘着表面の凹凸形成が不十分となることが分かった。
【0032】
本発明の一態様で用いる熱膨張性基材の要件(2)で規定する貯蔵弾性率E’(t)は、上記観点から、好ましくは9.0×10Pa以下、より好ましくは8.0×10Pa以下、更に好ましくは6.0×10Pa以下、より更に好ましくは4.0×10Pa以下である。
また、膨張した熱膨張性粒子の流動を抑制し、粘着剤層の粘着表面に形成される凹凸の形状維持性を向上させ、剥離性をより向上させる観点から、当該熱膨張性基材の要件(2)で規定する貯蔵弾性率E’(t)は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは1.0×10Pa以上、更に好ましくは1.0×10Pa以上である。
【0033】
また、本発明の一態様の粘着シートが有する熱膨張性基材は、さらに下記要件(3)を満たすものであることが好ましい。
・要件(3):23℃における、前記熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(23)が、1.0×10Pa以上である。
【0034】
上記要件(3)を満たす熱膨張性基材を用いることで、半導体チップ等の対象物を貼付する際の位置ズレを防止することができる。また、対象物を貼付する際に、粘着剤層への過度な沈み込みを防止することもできる。
例えば、半導体チップは、通常、その回路面が、粘着剤層の粘着表面で覆われるように載置される。半導体チップの載置には、例えば、フリップチップボンダーやダイボンダー等の公知の装置が用いられることがある。
ここで、フリップチップボンダーやダイボンダーを用いて、半導体チップを粘着シートの粘着剤層上に載置する際に、半導体チップを粘着シートの厚み方向に押し込む力が加わるため、半導体チップが粘着剤層の厚み方向側に過度に沈み込む恐れがある。
また、フリップチップボンダーやダイボンダーを用いて、半導体チップを粘着シート上に載置する際に、半導体チップを粘着シートの水平方向に移動させる力も加わるため、半導体チップが粘着剤層の水平方向に位置ズレする恐れもある。
しかし、上記要件(3)を満たす熱膨張性基材とすることで、これらの問題を解決することもできる。
【0035】
上記観点から、上記要件(3)で規定する熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’(23)は、好ましくは5.0×10〜5.0×1012Pa、より好ましくは1.0×10〜1.0×1012Pa、更に好ましくは5.0×10〜1.0×1011Pa、より更に好ましくは1.0×10〜1.0×1010Paである。
【0036】
本発明の一態様において、23℃における、熱膨張性基材の厚さは、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは20〜500μm、更に好ましくは25〜400μm、より更に好ましくは30〜300μmである。
なお、本明細書において、熱膨張性基材の厚さは、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。また、当該熱膨張性基材の厚さは、熱膨張性粒子の膨張前の値である。
【0037】
本発明の一態様の粘着シートが有する熱膨張性基材は、非粘着性の基材である。
本発明において、非粘着性の基材か否かの判断は、対象となる基材の表面に対して、JIS Z0237:1991に準拠して測定したプローブタック値が50mN/5mmφ未満であれば、当該基材を「非粘着性の基材」と判断する。
ここで、本発明の一態様で用いる熱膨張性基材の表面におけるプローブタック値は、通常50mN/5mmφ未満であるが、好ましくは30mN/5mmφ未満、より好ましくは10mN/5mmφ未満、更に好ましくは5mN/5mmφ未満である。
なお、本明細書において、熱膨張性基材の表面におけるプローブタック値の具体的な測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0038】
本発明の一態様の粘着シートが有する熱膨張性基材は、樹脂及び熱膨張性粒子を含むものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、基材用添加剤を含有してもよい。
また、熱膨張性基材は、樹脂及び熱膨張性粒子を含む樹脂組成物(y)から形成することができる。
以下、熱膨張性基材の形成材料である樹脂組成物(y)に含まれる各成分について説明する。
【0039】
<樹脂>
樹脂組成物(y)に含まれる樹脂としては、上記要件(1)及び(2)を満たす熱膨張性基材を形成可能な重合体であればよい。
なお、樹脂組成物(y)に含まれる樹脂としては、非粘着性樹脂であってもよく、粘着性樹脂であってもよい。
つまり、樹脂組成物(y)に含まれる樹脂が粘着性樹脂であっても、樹脂組成物(y)から熱膨張性基材を形成する過程において、当該粘着性樹脂が重合性化合物と重合反応し、得られる樹脂が非粘着性樹脂となり、当該樹脂を含む熱膨張性基材が非粘着性となればよい。
【0040】
樹脂組成物(y)に含まれる前記樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは1000〜100万、より好ましくは1000〜70万、更に好ましくは1000〜50万である。
また、当該樹脂が2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0041】
前記樹脂の含有量は、樹脂組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%、更に好ましくは65〜90質量%、より更に好ましくは70〜85質量%である。
【0042】
なお、上記要件(1)及び(2)を満たす熱膨張性基材を形成する観点から、樹脂組成物(y)に含まれる前記樹脂としては、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、上記アクリルウレタン系樹脂としては、以下の樹脂(U1)が好ましい。
・ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを重合してなるアクリルウレタン系樹脂(U1)。
【0043】
(アクリルウレタン系樹脂(U1))
アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ポリオールと多価イソシアネートとの反応物が挙げられる。
なお、ウレタンプレポリマー(UP)は、更に鎖延長剤を用いた鎖延長反応を施して得られたものであることが好ましい。
【0044】
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となるポリオールとしては、例えば、アルキレン型ポリオール、エーテル型ポリオール、エステル型ポリオール、エステルアミド型ポリオール、エステル・エーテル型ポリオール、カーボネート型ポリオール等が挙げられる。
これらのポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いるポリオールとしては、ジオールが好ましく、エステル型ジオール、アルキレン型ジオール及びカーボネート型ジオールがより好ましく、エステル型ジオール、カーボネート型ジオールが更に好ましい。
【0045】
エステル型ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;等のジオール類から選択される1種又は2種以上と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物から選択される1種又は2種以上と、の縮重合体が挙げられる。
具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0046】
アルキレン型ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;等が挙げられる。
【0047】
カーボネート型ジオールとしては、例えば、1,4−テトラメチレンカーボネートジオール、1,5−ペンタメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサメチレンカーボネートジオール、1,2−プロピレンカーボネートジオール、1,3−プロピレンカーボネートジオール、2,2−ジメチルプロピレンカーボネートジオール、1,7−ヘプタメチレンカーボネートジオール、1,8−オクタメチレンカーボネートジオール、1,4−シクロヘキサンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0048】
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となる多価イソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
これらの多価イソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの多価イソシアネートは、トリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0049】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる多価イソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましく、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及び脂環式ジイソシアネートから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0050】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられるが、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
【0051】
本発明の一態様において、アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ジオールとジイソシアネートとの反応物であり、両末端にエチレン性不飽和基を有する直鎖ウレタンプレポリマーが好ましい。
当該直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入する方法としては、ジオールとジイソシアネート化合物とを反応してなる直鎖ウレタンプレポリマーの末端のNCO基と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させる方法が挙げられる。
【0052】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
アクリルウレタン系樹脂(U1)の側鎖となる、ビニル化合物としては、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。
【0054】
アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用する場合、アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの配合割合としては、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.5〜30質量部、更に好ましくは1.0〜20質量部、より更に好ましくは1.5〜10質量部である。
【0055】
当該アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜24、より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8、より更に好ましくは1〜3である。
【0056】
また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、上述の直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入するために用いられるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと同じものが挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メタ(アクリルアミド)等の極性基含有モノマー;等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ビニル化合物中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量としては、当該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは65〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
【0059】
ビニル化合物中のアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合計含有量としては、当該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは65〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
【0060】
本発明の一態様で用いるアクリルウレタン系樹脂(U1)は、ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを混合し、両者を重合することで得られる。
当該重合においては、さらにラジカル開始剤を加えて行うことが好ましい。
【0061】
本発明の一態様で用いるアクリルウレタン系樹脂(U1)において、ウレタンプレポリマー(UP)に由来の構成単位(u11)と、ビニル化合物に由来する構成単位(u12)との含有量比〔(u11)/(u12)〕としては、質量比で、好ましくは10/90〜80/20、より好ましくは20/80〜70/30、更に好ましくは30/70〜60/40、より更に好ましくは35/65〜55/45である。
【0062】
(オレフィン系樹脂)
樹脂組成物(y)に含まれる樹脂として好適な、オレフィン系樹脂としては、オレフィンモノマーに由来の構成単位を少なくとも有する重合体である。
上記オレフィンモノマーとしては、炭素数2〜8のα−オレフィンが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1−ヘキセン等が挙げられる。
これらの中でも、エチレン及びプロピレンが好ましい。
【0063】
具体的なオレフィン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度:880kg/m以上910kg/m未満)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:910kg/m以上915kg/m未満)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:915kg/m以上942kg/m未満)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度:942kg/m以上)、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;ポリプロピレン樹脂(PP);ポリブテン樹脂(PB);エチレン−プロピレン共重合体;オレフィン系エラストマー(TPO);ポリ(4−メチルー1−ペンテン)(PMP);エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH);エチレン−プロピレン−(5−エチリデン−2−ノルボルネン)等のオレフィン系三元共重合体;等が挙げられる。
【0064】
本発明の一態様において、オレフィン系樹脂は、さらに酸変性、水酸基変性、及びアクリル変性から選ばれる1種以上の変性を施した変性オレフィン系樹脂であってもよい。
【0065】
例えば、オレフィン系樹脂に対して酸変性を施してなる酸変性オレフィン系樹脂としては、上述の無変性のオレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸又はその無水物を、グラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
なお、不飽和カルボン酸又はその無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
オレフィン系樹脂に対してアクリル変性を施してなるアクリル変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、側鎖として、アルキル(メタ)アクリレートをグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記のアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜16、更に好ましくは1〜12である。
上記のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、後述のモノマー(a1’)として選択可能な化合物と同じものが挙げられる。
【0067】
オレフィン系樹脂に対して水酸基変性を施してなる水酸基変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、水酸基含有化合物をグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の水酸基含有化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
【0068】
(アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂)
本発明の一態様において、樹脂組成物(y)には、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
そのような樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;アクリルウレタン系樹脂には該当しないポリウレタン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0069】
ただし、上記要件(1)及び(2)を満たす熱膨張性基材を形成する観点から、樹脂組成物(y)中のアクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有割合は、少ない方が好ましい。
アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有割合としては、樹脂組成物(y)中に含まれる樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは30質量部未満、より好ましくは20質量部未満、より好ましくは10質量部未満、更に好ましくは5質量部未満、より更に好ましくは1質量部未満である。
【0070】
<熱膨張性粒子>
本発明で用いる熱膨張性粒子は、膨張開始温度(t)が120〜250℃に調整された粒子であればよく、用途に応じて適宜選択される。
なお、本明細書において、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、以下の方法に基づき測定された値を意味する。
[熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)の測定法]
直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに、測定対象となる熱膨張性粒子0.5mgを加え、その上からアルミ蓋(直径5.6mm、厚さ0.1mm)をのせた試料を作製する。
動的粘弾性測定装置を用いて、その試料にアルミ蓋上部から、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、試料の高さを測定する。そして、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定し、正方向への変位開始温度を膨張開始温度(t)とする。
【0071】
熱膨張性粒子としては、熱可塑性樹脂から構成された外殻と、当該外殻に内包され、且つ所定の温度まで加熱されると気化する内包成分とから構成される、マイクロカプセル化発泡剤であることが好ましい。
マイクロカプセル化発泡剤の外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。
【0072】
外殻に内包された内包成分としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ネオペンタン、ドデカン、イソドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イソトリデカン、4−メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソノナデカン、2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、シクロトリデカン、ヘプチルシクロヘキサン、n−オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等が挙げられる。
これらの内包成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、内包成分の種類を適宜選択することで調整可能である。
【0073】
本発明の一態様で用いる、熱膨張性粒子の23℃における膨張前の平均粒子径は、好ましくは3〜100μm、より好ましくは4〜70μm、更に好ましくは6〜60μm、より更に好ましくは10〜50μmである。
なお、熱膨張性粒子の膨張前の平均粒子径とは、体積中位粒子径(D50)であり、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した、膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布において、膨張前の熱膨張性粒子の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%に相当する粒子径を意味する。
【0074】
本発明の一態様で用いる、熱膨張性粒子の23℃における膨張前の90%粒子径(D90)としては、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μm、更に好ましくは25〜90μm、より更に好ましくは30〜80μmである。
なお、熱膨張性粒子の膨張前の90%粒子径(D90)とは、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した、膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布において、膨張前の熱膨張性粒子の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が90%に相当する粒径を意味する。
【0075】
本発明の一態様で用いる熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱した際の体積最大膨張率は、好ましくは1.5〜100倍、より好ましくは2〜80倍、更に好ましくは2.5〜60倍、より更に好ましくは3〜40倍である。
【0076】
熱膨張性粒子の含有量は、樹脂組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%、より更に好ましくは15〜25質量%である。
【0077】
<基材用添加剤>
本発明の一態様で用いる樹脂組成物(y)は、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的な粘着シートが有する基材に含まれる基材用添加剤を含有してもよい。
そのような基材用添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が挙げられる。
なお、これらの基材用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの基材用添加剤を含有する場合、それぞれの基材用添加剤の含有量は、樹脂組成物(y)中の前記樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜20質量部、より好ましくは0.001〜10質量部である。
【0078】
<無溶剤型樹脂組成物(y1)>
本発明の一態様で用いる樹脂組成物(y)としては、上記要件(1)及び(2)を満たす熱膨張性基材を形成する観点から、質量平均分子量(Mw)が50000以下のエチレン性不飽和基を有するオリゴマーと、エネルギー線重合性モノマーと、上述の熱膨張性粒子を配合してなり、溶剤を配合しない、無溶剤型樹脂組成物(y1)が挙げられる。
無溶剤型樹脂組成物(y1)では、溶剤を配合しないが、エネルギー線重合性モノマーが、前記オリゴマーの可塑性の向上に寄与するものである。
無溶剤型樹脂組成物(y1)から形成した塗膜に対して、エネルギー線を照射することで、上記要件(1)及び(2)を満たす熱膨張性基材を形成し易い。
【0079】
なお、無溶剤型樹脂組成物(y1)に配合される熱膨張性粒子の種類や形状、配合量(含有量)については、上述のとおりである。
【0080】
無溶剤型樹脂組成物(y1)に含まれる前記オリゴマーの質量平均分子量(Mw)は、50000以下であるが、好ましくは1000〜50000、より好ましくは2000〜40000、更に好ましくは3000〜35000、より更に好ましくは4000〜30000である。
【0081】
また、前記オリゴマーとしては、上述の樹脂組成物(y)に含まれる樹脂のうち、質量平均分子量が50000以下のエチレン性不飽和基を有するものであればよいが、上述のウレタンプレポリマー(UP)が好ましい。
なお、当該オリゴマーとしては、エチレン性不飽和基を有する変性オレフィン系樹脂も使用し得る。
【0082】
無溶剤型樹脂組成物(y1)中における、前記オリゴマー及び前記エネルギー線重合性モノマーの合計含有量は、無溶剤型樹脂組成物(y1)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%、更に好ましくは65〜90質量%、より更に好ましくは70〜85質量%である。
【0083】
エネルギー線重合性モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート、トリシクロデカンアクリレート等の脂環式重合性化合物;フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレート等の芳香族重合性化合物;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等の複素環式重合性化合物等が挙げられる。
これらのエネルギー線重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
無溶剤型樹脂組成物(y1)中における、前記オリゴマーと、前記エネルギー線重合性モノマーとの含有量比[オリゴマー/エネルギー線重合性モノマー]は、質量比で、好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは30/70〜85/15、更に好ましくは35/65〜80/20である。
【0085】
本発明の一態様において、無溶剤型樹脂組成物(y1)は、さらに光重合開始剤を配合してなることが好ましい。
光重合開始剤を含有することで、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させることができる。
【0086】
光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8−クロアンスラキノン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
光重合開始剤の配合量は、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの全量(100質量部)に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.01〜4質量部、更に好ましくは0.02〜3質量部である。
【0088】
〔粘着剤層〕
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層は、粘着性樹脂を含むものであればよく、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、重合性化合物、重合開始剤等の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
なお、封止工程での加熱によって、載置した半導体チップ等の対象物が粘着剤層に沈む込むことを防止する観点から、本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層は、非熱膨張性粘着剤層であることが好ましい。
【0089】
本発明の一態様において、熱膨張性粒子の膨張前の23℃での、半導体チップ等の対象物が載置される粘着剤層の粘着表面における粘着力としては、好ましくは0.1〜10.0N/25mm、より好ましくは0.2〜8.0N/25mm、更に好ましくは0.4〜6.0N/25mm、より更に好ましくは0.5〜4.0N/25mmである。
当該粘着力が0.1N/25mm以上であれば、半導体チップ等の被着体を、封止工程等の次工程で位置ズレを防止し得る程度に、十分に固定することができる。
一方、当該粘着力が10.0N/25mm以下であれば、剥離時に、膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱することで、わずかな力で容易に剥離することができる。
なお、上記の粘着力は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0090】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、23℃における、半導体チップ等の対象物が載置される粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)としては、好ましくは1.0×10〜1.0×10Pa、より好ましくは5.0×10〜5.0×10Pa、更に好ましくは1.0×10〜1.0×10Paである。
当該粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)が1.0×10Pa以上であれば、半導体チップ等の対象物を貼付する際の位置ズレを防止することができ、また、その際の粘着剤層への過度な沈み込むを防止することができる。
一方、当該粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)が1.0×10Pa以下であれば、剥離時に、膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱することで変形し易くなり、熱膨張性基材中の熱膨張性粒子の膨張により、粘着剤層の表面に凹凸が形成され易く、その結果、わずかな力で容易に剥離することができる。
なお、本明細書において、粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0091】
なお、図2に示す両面粘着シート2a、2bのように、複数の粘着剤層を有する粘着シートである場合、複数の粘着剤層のうち、半導体チップ等の対象物が載置される粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、上記範囲内であることが好ましい。
一方、粘着シートを固定するために、23℃における、支持体等と貼付される側の粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)としては、支持体等との密着性を良好とする観点から、好ましくは1.0×10〜1.0×10Pa、より好ましくは3.0×10〜5.0×10Pa、更に好ましくは5.0×10〜1.0×10Paである。
【0092】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層の厚さは、優れた粘着力を発現させる観点、及び、加熱処理による熱膨張性基材中の熱膨張性粒子の膨張により、形成される粘着剤層の表面に凹凸を形成し易くする観点から、好ましくは1〜60μm、より好ましくは2〜50μm、更に好ましくは3〜40μm、より更に好ましくは5〜30μmである。
【0093】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、23℃における、熱膨張性基材の厚さと、粘着剤層の厚さとの比〔熱膨張性基材/粘着剤層〕としては、FOWLPの製造過程等の封止工程において、封止後の対象物側の表面を平坦にすると共に、対象物の位置ズレを防止する観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは5.0以上であり、また、剥離する際に、わずかな力で容易に剥離し得る粘着シートとする観点から、好ましくは1000以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは60以下、より更に好ましくは30以下である。
【0094】
なお、本明細書において、図2に示す両面粘着シート2a、2bのように、複数の粘着剤層を有する粘着シートである場合に、上記の「粘着剤層の厚さ」は、それぞれの粘着剤層の厚さを意味する。つまり、それぞれの粘着剤層について、厚さ、及び、前記比〔熱膨張性基材/粘着剤層〕が上記範囲内であることが好ましい。
また、粘着剤層の厚さは、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0095】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層は、粘着剤樹脂を含む粘着剤組成物から形成することができる。
また、図2に示す両面粘着シート2a、2bのように、複数の粘着剤層を有する粘着シートにおいては、それぞれの粘着剤層を、同一の粘着剤組成物から形成してもよく、互いに異なる粘着剤組成物から形成してもよい。
以下、粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0096】
<粘着性樹脂>
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂としては、当該樹脂単独で粘着性を有し、質量平均分子量(Mw)が1万以上の重合体であればよい。
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、粘着力の向上の観点から、好ましくは1万〜200万、より好ましくは2万〜150万、更に好ましくは3万〜100万である。
【0097】
具体的な粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂等のゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの粘着性樹脂が、2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0098】
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂は、上記の粘着性樹脂の側鎖に重合性官能基を導入した、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂であってもよい。
当該重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
また、エネルギー線としては、紫外線や電子線が挙げられるが、紫外線が好ましい。
【0099】
粘着性樹脂の含有量は、粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30〜99.99質量%、より好ましくは40〜99.95質量%、更に好ましくは50〜99.90質量%、より更に好ましくは55〜99.80質量%、更になお好ましくは60〜99.50質量%である。
なお、本明細書の以下の記載において、「粘着剤組成物の有効成分の全量に対する各成分の含有量」は、「当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層中の各成分の含有量」と同義である。
【0100】
本発明の一態様において、優れた粘着力を発現させる観点、及び、加熱処理による熱膨張性基材中の熱膨張性粒子の膨張により、形成される粘着剤層の表面に凹凸を形成し易くする観点から、粘着性樹脂が、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
粘着性樹脂中のアクリル系樹脂の含有割合としては、粘着剤組成物に含まれる粘着性樹脂の全量(100質量%)に対して、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%、より更に好ましくは85〜100質量%である。
【0101】
(アクリル系樹脂)
本発明の一態様において、粘着性樹脂として使用し得る、アクリル系樹脂としては、例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体等が挙げられる。
【0102】
アクリル系樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは10万〜150万、より好ましくは20万〜130万、更に好ましくは35万〜120万、より更に好ましくは50万〜110万である。
【0103】
本発明の一態様で用いるアクリル系樹脂としては、アルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A1)がより好ましい。
【0104】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、好ましくは1〜24、より好ましくは1〜12、更に好ましくは2〜10、より更に好ましくは4〜8である。
なお、モノマー(a1’)が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0105】
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(a1’)としては、ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0106】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50〜99.9質量%、より好ましくは60〜99.0質量%、更に好ましくは70〜97.0質量%、より更に好ましくは80〜95.0質量%である。
【0107】
モノマー(a2’)が有する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
つまり、モノマー(a2’)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、モノマー(a2’)としては、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーが好ましい。
【0108】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、上述した水酸基含有化合物と同じものが挙げられる。
【0109】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸及びその無水物、2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0110】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜35質量%、更に好ましくは1.0〜30質量%、より更に好ましくは3.0〜25質量%である。
【0111】
アクリル系共重合体(A1)は、さらにモノマー(a1’)及び(a2’)以外の他のモノマー(a3’)に由来の構成単位(a3)を有していてもよい。
なお、アクリル系共重合体(A1)において、構成単位(a1)及び(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0112】
モノマー(a3’)としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0113】
また、アクリル系共重合体(A1)は、側鎖に重合性官能基を導入した、エネルギー線硬化型のアクリル系共重合体としてもよい。
当該重合性官能基及び当該エネルギー線としては、上述のとおりである。
なお、重合性官能基は、上述の構成単位(a1)及び(a2)を有するアクリル系共重合体と、当該アクリル系共重合体の構成単位(a2)が有する官能基と結合可能な置換基と重合性官能基とを有する化合物とを反応させることで導入することができる。
前記化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0114】
<架橋剤>
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、上述のアクリル系共重合体(A1)のような官能基を含有する粘着性樹脂を含有する場合、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤は、官能基を有する粘着性樹脂と反応して、当該官能基を架橋起点として、粘着性樹脂同士を架橋するものである。
【0115】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの架橋剤の中でも、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、及び入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0116】
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂が有する官能基の数により適宜調整されるものであるが、官能基を有する粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.03〜7質量部、更に好ましくは0.05〜5質量部である。
【0117】
<粘着付与剤>
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、粘着力をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有してもよい。
本明細書において、「粘着付与剤」とは、上述の粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が1万未満のオリゴマーを指し、上述の粘着性樹脂とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは400〜10000、より好ましくは500〜8000、更に好ましくは800〜5000である。
【0118】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂、及びこれらを水素化した水素化樹脂等が挙げられる。
【0119】
粘着付与剤の軟化点は、好ましくは60〜170℃、より好ましくは65〜160℃、更に好ましくは70〜150℃である。
なお、本明細書において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
粘着付与剤は、単独で用いてもよく、軟化点や構造が異なる2種以上を併用してもよい。
そして、2種以上の複数の粘着付与剤を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
【0120】
粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01〜65質量%、より好ましくは0.05〜55質量%、更に好ましくは0.1〜50質量%、より更に好ましくは0.5〜45質量%、更になお好ましくは1.0〜40質量%である。
【0121】
<光重合開始剤>
本発明の一態様において、粘着剤組成物が、粘着性樹脂として、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂を含む場合、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
エネルギー線硬化型の粘着性樹脂及び光重合開始剤を含有する粘着剤組成物とすることで、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させ、粘着力を所望の範囲に調整することが可能となる。
なお、本発明の一態様で用いる光重合開始剤としては、上述の無溶剤型樹脂組成物(y1)に配合されるものと同じものが挙げられる。
【0122】
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.03〜5質量部、更に好ましくは0.05〜2質量部である。
【0123】
<粘着剤用添加剤>
本発明の一態様において、粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の添加剤以外にも、一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤を含有していてもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤(触媒)、紫外線吸収剤等が挙げられる。
なお、これらの粘着剤用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0124】
これらの粘着剤用添加剤を含有する場合、それぞれの粘着剤用添加剤の含有量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜20質量部、より好ましくは0.001〜10質量部である。
【0125】
粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱膨張性粒子を含有してもよい。
ただし、上述のとおり、本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層は、非熱膨張性粘着剤層であることが好ましい。そのため、当該粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物は、熱膨張性粒子の含有量が極力少ないほど好ましい。
熱膨張性粒子の含有量は、粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更に好ましくは0.1質量%未満、より更に好ましくは0.01質量%未満、特に好ましくは0.001質量%未満である。
【0126】
〔剥離材〕
図1(b)の粘着シート1b及び図2(b)の粘着シート2bのように、本発明の一態様の粘着シートは、粘着剤層の貼付表面に、さらに剥離材を有していてもよい。
なお、図2(b)の粘着シート2bのように、2つの粘着剤層を有する粘着シートでは、それぞれの粘着剤層の貼付表面上に設ける2枚の剥離材は、剥離力の差が異なるように調整されたものであることが好ましい。
剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
【0127】
剥離材用基材としては、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
【0128】
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0129】
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜170μm、更に好ましくは35〜80μmである。
【0130】
〔粘着シートの製造方法〕
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はなく、下記工程(1a)及び(2a)を有する製造方法(a)が挙げられる。
・工程(1a):剥離材の剥離処理面上に、熱膨張性基材の形成材料である樹脂組成物(y)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥又はUV照射し、熱膨張性基材を形成する工程。
・工程(2a):形成した前記熱膨張性基材の表面上に、粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、粘着剤層を形成する工程。
【0131】
また、本発明の粘着シートの別の製造方法としては、下記工程(1b)〜(3b)を有する製造方法(b)が挙げられる。
・工程(1b):剥離材の剥離処理面上に、熱膨張性基材の形成材料である樹脂組成物(y)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、熱膨張性基材を形成する工程。
・工程(2b):剥離材の剥離処理面上に、粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、粘着剤層を形成する工程。
・工程(3b):工程(1b)で形成した前記熱膨張性基材の表面と、工程(2b)で形成した粘着剤層の表面とを貼り合せる工程。
【0132】
上記製造方法(a)及び(b)において、樹脂組成物(y)及び粘着剤組成物は、さらに希釈溶媒を配合し、溶液の形態としてもよい。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0133】
また、製造方法(a)の工程(1a)、及び、製造方法(b)の工程(1b)において、塗膜から熱膨張性基材を形成する乾燥過程において、熱膨張性粒子の膨張を防ぐ観点から、乾燥温度は熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)未満で行うことが好ましい。
【0134】
〔本発明の粘着シートの用途、粘着シートの使用方法〕
本発明の粘着シートは、対象物を仮固定する際には、加熱時において当該対象物の沈み込みを抑制しつつ、剥離時には、わずかな力で容易に剥離可能である。
そのため、本発明の粘着シートは、封止樹脂を使用した、加熱を伴う封止工程で用いられることが好ましく、具体的には、FOWLPを製造する際の封止工程で使用されることが好ましい。
【0135】
FOWLPを製造する際の封止工程では、本発明の粘着シートの粘着剤層の粘着表面に、半導体チップを載置したのち、半導体チップの上面及び粘着表面を封止樹脂で被覆し、加熱によって封止樹脂を熱硬化させて封止する。
この際、一般的な粘着シートを用いた場合には、封止工程での加熱によって、粘着シートを構成する各層の弾性率が低下し、載置している半導体チップが粘着シート側に沈み込みが見られる。
これに対して、本発明の粘着シートは、上記要件(1)を満たすため、封止工程で生じ得る、半導体チップの粘着シート側への沈み込みを効果的に抑制し、封止後の半導体チップ側の表面を平坦にすることができると共に、半導体チップの位置ズレの発生を抑制することができる。
【0136】
封止樹脂としては、半導体封止材料として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができ、例えば、熱硬化性樹脂や、エネルギー線硬化性樹脂を含むものが挙げられる。
また、封止樹脂の形態としては、室温で、顆粒状、フィルム状等の固形であってもよく、組成物のように流動性がある液状物であってもよいが、作業性の観点から、フィルム状物であることが好ましい。
【0137】
封止樹脂を用いて、半導体チップ及びその周辺部を被覆する方法としては、従来、半導体封止工程に適用されている方法の中から、封止材の種類に応じて適宜選択して適用することができ、例えば、ロールラミネート法、真空プレス法、真空ラミネート法、スピンコート法、ダイコート法、トランスファーモールディング法、圧縮成形モールド法等を適用することができる。
【0138】
なお、封止工程は、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)未満の温度条件で行われることが好ましい。
また、封止樹脂の被覆処理と熱硬化処理は、別々に実施してもよいが、被覆処理において封止樹脂を加熱する場合には、当該加熱によって、そのまま封止材を硬化させ、被覆処理と熱硬化処理とを同時に実施してもよい。
【0139】
一方で、封止工程が終了後には、膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱することで、わずかな力で粘着シートを容易に剥離することができる。
粘着シートを剥離する際の「膨張開始温度(t)以上の温度」としては、「膨張開始温度(t)+10℃」以上「膨張開始温度(t)+60℃」以下であることが好ましく、「膨張開始温度(t)+15℃」以上「膨張開始温度(t)+40℃」以下であることがより好ましい。
【0140】
また、本発明の粘着シートの上述の特性から、本発明は、下記[1]の粘着シートの使用方法も提供し得る。
[1]上述の本発明の粘着シートを被着体に貼付後、膨張開始温度(t)以上の加熱処理によって、前記被着体から前記粘着シートを剥離する、粘着シートの使用方法。
なお、当該使用方法は、封止樹脂を使用した、加熱を伴う封止工程で用いることが好ましい。
【実施例】
【0141】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0142】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0143】
<各層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG−02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0144】
<熱膨張性粒子の平均粒子径(D50)、90%粒子径(D90)>
レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて、23℃における膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布を測定した。
そして、粒子分布の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%及び90%に相当する粒子径を、それぞれ「熱膨張性粒子の平均粒子径(D50)」及び「熱膨張性粒子の90%粒子径(D90)とした。
【0145】
<熱膨張性基材の貯蔵弾性率E’>
測定対象が非粘着性の熱膨張性基材である場合、当該熱膨張性基材を縦5mm×横30mm×厚さ200μmの大きさとし、剥離材を除去したものを試験サンプルとした。
動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製,製品名「DMAQ800」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hz、振幅20μmの条件で、所定の温度における、当該試験サンプルの貯蔵弾性率E’を測定した。
【0146】
<粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’、熱膨張性粘着剤層の貯蔵弾性率E’>
測定対象が粘着性を有する熱膨張性粘着剤層及び粘着剤層である場合、当該熱膨張性粘着剤層及び粘着剤層を直径8mm×厚さ3mmとし、剥離材を除去したものを試験サンプルとした。
粘弾性測定装置(Anton Paar社製、装置名「MCR300」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hzの条件で、ねじりせん断法によって、所定の温度における、試験サンプルの貯蔵せん断弾性率G’を測定した。
そして、貯蔵弾性率E’の値は、測定した貯蔵せん断弾性率G’の値を基に、近似式「E’=3G’」から算出した。
【0147】
<プローブタック値>
測定対象となる熱膨張性基材又は熱膨張性粘着剤層を一辺10mmの正方形に切断した後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置し、軽剥離フィルムを除去したものを試験サンプルとした。
23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、タッキング試験機(日本特殊測器株式会社製,製品名「NTS−4800」)を用いて、軽剥離フィルムを除去して表出した、前記試験サンプルの表面におけるプローブタック値を、JIS Z0237:1991に準拠して測定した。
具体的には、直径5mmのステンレス鋼製のプローブを、1秒間、接触荷重0.98N/cmで、試験サンプルの表面に接触させた後、当該プローブを10mm/秒の速度で、試験サンプルの表面から離すのに必要な力を測定した。そして、その測定した値を、その試験サンプルのプローブタック値とした。
【0148】
以下の製造例での各層の形成で使用した粘着性樹脂、添加剤、熱膨張性粒子、及び剥離材の詳細は以下のとおりである。
<粘着性樹脂>
・アクリル系共重合体(i):2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=80.0/20.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有する、Mw60万のアクリル系共重合体を含む溶液。希釈溶媒:酢酸エチル、固形分濃度:40質量%。
・アクリル系共重合体(ii):n−ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/アクリル酸=86.0/8.0/5.0/1.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有する、Mw60万のアクリル系共重合体を含む溶液。希釈溶媒:酢酸エチル、固形分濃度:40質量%。
<添加剤>
・イソシアネート架橋剤(i):東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度:75質量%。
・光重合開始剤(i):BASF社製、製品名「イルガキュア184」、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン。
<熱膨張性粒子>
・熱膨張性粒子(i):株式会社クレハ製、製品名「S2640」、膨張開始温度(t)=208℃、平均粒子径(D50)=24μm、90%粒子径(D90)=49μm。
<剥離材>
・重剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP−PET382150」、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
・軽剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、PETフィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
【0149】
製造例1(第1粘着剤層(X−1)の形成)
粘着性樹脂である、上記アクリル系共重合体(i)の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)5.0質量部(固形分比)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)25質量%の組成物(x−1)を調製した。
そして、上記重剥離フィルムの剥離剤層の表面上に、調製した組成物(x−1)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で60秒間乾燥して、厚さ10μmの第1粘着剤層(X−1)を形成した。
なお、23℃における、第1粘着剤層(X−1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、2.5×10Paであった。
【0150】
製造例2(第2粘着剤層(X−2)の形成)
粘着性樹脂である、上記アクリル系共重合体(ii)の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)0.8質量部(固形分比)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)25質量%の組成物(x−2)を調製した。
そして、上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面上に、調製した組成物(x−2)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で60秒間乾燥して、厚さ10μmの第2粘着剤層(X−2)を形成した。
なお、23℃における、第2粘着剤層(X−2)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、9.0×10Paであった。
【0151】
製造例3(熱膨張性基材(Y−1)の形成)
(1)組成物(y−1)の調製
エステル型ジオールと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を反応させて得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて、質量平均分子量(Mw)5000の2官能のアクリルウレタン系オリゴマーを得た。
そして、上記で合成したアクリルウレタン系オリゴマー40質量%(固形分比)に、エネルギー線重合性モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)40質量%(固形分比)、及びフェニルヒドロキシプロピルアクリレート(HPPA)20質量%(固形分比)を配合し、アクリルウレタン系オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの全量100質量部に対して、さらに光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、製品名「イルガキュア184」)2.0質量部(固形分比)、及び、添加剤として、フタロシアニン系顔料0.2質量部(固形分比)を配合し、エネルギー線硬化性組成物を調製した。
そして、当該エネルギー線硬化性組成物に、上記熱膨張性粒子(i)を配合し、溶媒を含有しない、無溶剤型の組成物(y−1)を調製した。
なお、組成物(y−1)の全量(100質量%)に対する、熱膨張性粒子(i)の含有量は20質量%であった。
【0152】
(2)熱膨張性基材(Y−1)の形成
上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面上に、調製した組成物(y−1)を塗布して塗膜を形成した。
そして、紫外線照射装置(アイグラフィクス社製、製品名「ECS−401GX」)及び高圧水銀ランプ(アイグラフィクス社製、製品名「H04−L41」)を用いて、照度160mW/cm、光量500mJ/cmの条件で紫外線を照射し、当該塗膜を硬化させ、厚さ50μmの熱膨張性基材(Y−1)を形成した。なお、紫外線照射時の上記の照度及び光量は、照度・光量計(EIT社製、製品名「UV Power Puck II」)を用いて測定した値である。
【0153】
製造例4(熱膨張性基材(Y−2)の形成)
(1)ウレタンプレポリマーの合成
窒素雰囲気下の反応容器内に、質量平均分子量1,000のカーボネート型ジオール100質量部(固形分比)に対して、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を、ポリカーボネート型ジオールの水酸基とイソホロンジイソシアネートのイソシアネート基との当量比が1/1となるように配合し、さらにトルエン160質量部を加え、窒素雰囲気下にて、撹拌しながら、イソシアネート基濃度が理論量に到達するまで、80℃で6時間以上反応させた。
次いで、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)1.44質量部(固形分比)をトルエン30質量部に希釈した溶液を添加して、両末端のイソシアネート基が消滅するまで、更に80℃で6時間反応させ、質量平均分子量2.9万のウレタンプレポリマーを得た。
【0154】
(2)アクリルウレタン系樹脂の合成
窒素雰囲気下の反応容器内に、上記(1)で得たウレタンプレポリマー100質量部(固形分比)、メチルメタクリレート(MMA)117質量部(固形分比)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)5.1質量部(固形分比)、1−チオグリセロール1.1質量部(固形分比)、及びトルエン50質量部を加え、撹拌しながら、105℃まで昇温した。
そして、反応容器内に、さらにラジカル開始剤(株式会社日本ファインケム製、製品名「ABN−E」)2.2質量部(固形分比)をトルエン210質量部で希釈した溶液を、105℃に維持したまま4時間かけて滴下した。
滴下終了後、105℃で6時間反応させ、質量平均分子量10.5万のアクリルウレタン系樹脂の溶液を得た。
【0155】
(3)熱膨張性基材(Y−2)の形成
上記(2)で得たアクリルウレタン系樹脂の溶液の固形分100質量部に対して、上記イソシアネート系架橋剤(i)6.3質量部(固形分比)、触媒としてジオクチルスズビス(2−エチルヘキサノエート)1.4質量部(固形分比)、及び上記熱膨張性粒子(i)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)30質量%の組成物(y−2)を調製した。
なお、得られた組成物(y−2)中の有効成分の全量(100質量%)に対する、熱膨張性粒子(i)の含有量は20質量%であった。
そして、上記軽剥離フィルムの剥離剤の表面上に、調製した組成物(y−2)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で120秒間乾燥して、厚さ50μmの熱膨張性基材(Y−2)を形成した。
【0156】
製造例5(熱膨張性粘着剤層(Y−3)の形成)
粘着性樹脂である、上記アクリル系共重合体(ii)の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)6.3質量部(固形分比)、及び、上記熱膨張性粒子(i)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)30質量%の組成物(y−3)を調製した。
なお、得られた組成物(y−3)中の有効成分の全量(100質量%)に対する、熱膨張性粒子(i)の含有量は20質量%であった。
そして、上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面上に、調製した組成物(y−3)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で120秒間乾燥して、厚さ50μmの熱膨張性粘着剤層(Y−3)を形成した。
【0157】
製造例6(熱膨張性基材(Y−4)の形成)
(1)アクリル系共重合体(iii)の合成
n−ブチルアクリレート(BA)52質量部、メチルメタクリレート(MMA)20質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)28質量部を、酢酸エチル溶媒中で溶液重合し、非エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体を得た。
得られた当該アクリル系共重合体の全水酸基数に対して、イソシアネート基数が0.9当量となる量のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を、当該アクリル系共重合体を含む溶液に加えて反応させ、側鎖にメタクリロイル基を有する、Mw100万のエネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(iii)を得た。
【0158】
(2)熱膨張性基材(Y−4)の形成
そして、上記(1)で得たエネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(iii)の固形分100質量部に対して、上記イソシアネート系架橋剤(i)を0.5質量部(固形分比)、上記光重合開始剤(i)を3.0質量部(固形分比)、上記熱膨張性粒子(i)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)30質量%の組成物(y−4)を調製した。
なお、得られた組成物(y−4)中の有効成分の全量(100質量%)に対する、熱膨張性粒子(1)の含有量は20質量%であった。
そして、上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面上に、調製した組成物(y−4)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で120秒間乾燥後、照度160mW/cm、光量500mJ/cmの条件で紫外線を照射して、厚さ50μmの熱膨張性基材(Y−4)を形成した。なお、紫外線照射時の上記の照度及び光量は、照度・光量計(EIT社製、製品名「UV Power Puck II」)を用いて測定した値である。
【0159】
製造例3〜4、6で形成した熱膨張性基材(Y−1)〜(Y−2)、(Y−4)及び、製造例5で形成した熱膨張性粘着剤層(Y−3)について、上述の方法に基づき、23℃、100℃、及び使用した熱膨張性粒子の膨張開始温度である208℃での貯蔵弾性率E’を測定すると共に、表面におけるプローブタック値もそれぞれ測定した。これらの結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
実施例1
製造例1で形成した第1粘着剤層(X−1)と、製造例3で形成した熱膨張性基材(Y−1)との表出している表面同士を貼り合わせた後、熱膨張性基材(Y−1)側の軽剥離フィルムを除去し、表出した熱膨張性基材(Y−1)の表面上に、製造例2で形成した第2粘着剤層(X−2)を貼り合わせた。
これにより、軽剥離フィルム/第2粘着剤層(X−2)/熱膨張性基材(Y−1)/第1粘着剤層(X−1)/重剥離フィルムをこの順で積層した粘着シート(1)を作製した。
【0162】
実施例2
熱膨張性基材(Y−1)を、製造例4で形成した熱膨張性基材(Y−2)に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、軽剥離フィルム/第2粘着剤層(X−2)/熱膨張性基材(Y−2)/第1粘着剤層(X−1)/重剥離フィルムをこの順で積層した粘着シート(2)を作製した。
【0163】
比較例1
製造例2で形成した第2粘着剤層(X−2)と、製造例5で形成した熱膨張性粘着剤層(Y−3)との表出している表面同士を貼り合わせた。
そして、熱膨張性粘着剤層(Y−3)側の軽剥離フィルムを除去し、表出した熱膨張性粘着剤層(Y−3)の表面上に、製造例1で形成した第1粘着剤層(X−1)を貼り合わせた。
これにより、軽剥離フィルム/第2粘着剤層(X−2)/熱膨張性粘着剤層(Y−3)/第1粘着剤層(X−1)/重剥離フィルムをこの順で積層した粘着シート(3)を作製した。
【0164】
比較例2
熱膨張性基材(Y−1)を、製造例6で形成した熱膨張性基材(Y−4)に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、軽剥離フィルム/第2粘着剤層(X−2)/熱膨張性基材(Y−4)/第1粘着剤層(X−1)/重剥離フィルムをこの順で積層した粘着シート(4)を作製した。
【0165】
比較例3
製造例2で形成した第2粘着剤層(X−2)と、製造例5で形成した熱膨張性粘着剤層(Y−3)の表出している表面同士を貼り合わせ、軽剥離フィルム/第2粘着剤層(X−2)/熱膨張性粘着剤層(Y−3)/軽剥離フィルムをこの順で積層した粘着シート(5)を作製した。
【0166】
また、作製した粘着シート(1)〜(5)について、以下の測定を行った。これらの結果を表2に示す。
【0167】
<封止工程時の半導体チップの位置ズレ評価>
作製した粘着シート(1)〜(5)が有する第2粘着剤層(X−2)側の軽剥離フィルムを除去し、表出した第2粘着剤層(X−2)の粘着表面を支持体と貼付した。
そして、粘着シート(1)〜(4)の重剥離フィルム、及び、粘着シート(5)の他方の軽剥離フィルムを除去し、表出した第1粘着剤層(X−1)又は熱膨張性粘着剤層(Y−3)の粘着表面上に、9個の半導体チップ(それぞれのチップサイズは6.4mm×6.4mm、チップ厚さは200μm(♯2000))を、各半導体チップの回路面が当該粘着表面と接するように、必要な間隔であけて載置した。
その後、封止用樹脂フィルムを、粘着表面及び半導体チップの上に積層し、真空加熱加圧ラミネーター(ROHM and HAAS社製の「7024HP5」)を用いて半導体チップを封止し、封止体を作製した。
なお、封止条件は、下記の通りである。
・予熱温度:テーブルおよびダイアフラムとも100℃
・真空引き:60秒間
・ダイナミックプレスモード:30秒間
・スタティックプレスモード:10秒間
・封止温度:180℃(熱膨張性粒子の膨張開始温度である208℃よりも低い温度)
・封止時間:60分間
【0168】
封止後、粘着シート(1)〜(5)を、熱膨張性粒子の膨張開始温度(208℃)以上となる240℃で3分間加熱して、粘着シート(1)〜(5)から当該封止体を分離し、分離した封止体の表面(粘着シートが貼付していた面)の半導体チップを目視及び顕微鏡にて観察し、半導体チップの位置ズレの有無を確認し、以下の基準で評価した。
・A:封止前より25μm以上の位置ズレが生じた半導体チップは確認されなかった。
・F:封止前より25μm以上の位置ズレが生じた半導体チップが確認された。
【0169】
<封止工程後の半導体チップ側の表面の平坦性の評価>
上述の「封止工程時の半導体チップの位置ズレ評価」で得た、粘着シート(1)〜(5)を分離した封止体の半導体チップ側の表面を、接触式表面粗さ計(ミツトヨ社製「SV3000」)を用いて段差を測定し、以下の基準により評価した。
・A:2μm以上の段差が生じている箇所は確認されなかった。
・F:2μm以上の段差が生じている箇所が確認された。
【0170】
<加熱前後での粘着シートの粘着力の測定>
作製した粘着シート(1)〜(5)が有する第2粘着剤層(X−2)側の軽剥離フィルムを除去し、表出した第2粘着剤層(X−2)の粘着表面上に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」)を積層し、基材付き粘着シートとした。
そして、粘着シート(1)〜(4)の重剥離フィルム、及び、粘着シート(5)の他方の軽剥離フィルムも除去し、表出した第1粘着剤層(X−1)又は熱膨張性粘着剤層(Y−3)の粘着表面を、被着体であるステンレス鋼板(SUS304 360番研磨)に貼付し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、24時間静置したものを試験サンプルとした。
そして、上記の試験サンプルを用いて、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、23℃における粘着力を測定した。
また、上記の試験サンプルを、ホットプレート上にて、熱膨張性粒子の膨張開始温度(208℃)以上となる240℃で3分間加熱し、標準環境(23℃、50%RH(相対湿度))にて60分間静置した後、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、膨張開始温度以上での加熱後の粘着力も測定した。
なお、被着体であるステンレス鋼板に貼付することができないほどに粘着力の測定が困難である場合には、「測定不能」とし、その粘着力は0(N/25mm)であるとした。
【0171】
【表2】
【0172】
表2から、実施例1及び2の粘着シート(1)及び(2)は、封止工程時の加熱時において、半導体チップの沈み込みの抑制効果が高いため、半導体チップの位置ズレも見られず、封止工程後の半導体チップ側の表面も平坦であった。
また、粘着シート(1)及び(2)は、加熱前は良好な粘着力を有するものの、膨張開始温度以上での加熱後は測定不能となる程度まで粘着力が低下していることから、剥離時には、わずかな力で容易に剥離可能であることが裏付けられる結果となった。
【0173】
一方、比較例1の粘着シート(3)及び比較例3の粘着シート(5)は、熱膨張性基材ではなく、熱膨張性粘着剤層を有するため、封止工程時の加熱時において、半導体チップの沈み込みが生じてしまい、半導体チップの位置ズレが見られ、また、封止工程後の半導体チップ側の表面に段差が見られた。そのため、例えば、FOWLPを製造する際の封止工程での使用には適さないと考えられる。
また、比較例2の粘着シート(4)は、膨張開始温度以上での加熱前後の粘着力はあまり変化しておらず、加熱によって剥離可能なものとはいえない結果となった。
【符号の説明】
【0174】
1a、1b 粘着シート
2a、2b 両面粘着シート
11 熱膨張性基材
12 粘着剤層
121 第1粘着剤層
122 第2粘着剤層
13、131、132 剥離材
50 FOWLP
51 半導体チップ
52 封止樹脂層
53 再配線層
54 はんだボール
図1
図2
図3