(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外乱光入射受光素子判定部は、前記第2受光素子から出力されるパルス信号の単位時間当たりのパルス数が所定値よりも大きいときに、当該パルス信号を出力した前記第2受光素子に外乱光が入射していると判定することを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
前記重み係数は、前記第2受光部の中央部分が最も小さく、当該中央部分から前記第2受光部の外周部分に向かうに従って大きくなることを特徴とする請求項3に記載の光検出器。
前記第2受光素子から出力されるパルス信号のパルス数が第1所定値より大きく、かつ、前記発光素子の発光時と非発光時との、前記パルス数の差または比が第2所定値より小さいときに、当該パルス信号を出力する前記第2受光素子に外乱光が入射していると判定することを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
前記発光素子の発光時と非発光時との、前記パルス数の差または比が所定値より大きいときに、前記発光素子の発光強度を低下させる発光強度制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の光検出器。
前記発光素子の発光時と非発光時との、前記パルス数の差または比が所定値より大きいときに、前記発光素子の発光放射角を制御する発光放射角制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の光検出器。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの携帯型情報端末が広く普及している。カメラ、近接センサ、方位センサ、加速度センサ、角速度センサ、照度センサ等の小型化により、上記のような携帯型情報端末には、各種センサが搭載されるようになってきている。スマートフォン内蔵のカメラのオートフォーカスは、従来、画像のコントラストを利用して、カメラのオートフォーカス(AF)を行う方法が一般的に使用されてきた。しかし、コントラストAFは、暗所等で撮影対象物のコントラストが低い場合に、AF速度が極端に低下し、レンズの合焦がもたつくといった弱点がある。このため、暗所でも高速のAFが可能な、小型かつ高速動作可能な測距センサが望まれている。このような要望を受けて、近年、TOF(Time of Flight)方式のAF用測距センサが携帯電話に搭載され始めている。
【0003】
また、ドローン等のロボット用途においても、小型軽量の測距センサが求められている。これに対し、三角測量方式のPSD受光素子を用いた測距センサに比較して小型化に有利なTOF方式の測距センサが有用である。
【0004】
ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードであるSPAD(Single-Photon-Avalanche-Diode:単光子雪崩増倍フォトダイオード)は、単一の光子(フォトン)を検出することができる。この単一光子検知は、
図26においてA点に示すように、ブレークダウン電圧より高い電圧でSPADをバイアスすることにより実現される。SPADは、光子が到着して、アバランシェ増幅が発生すると準安定状態(
図26のB点)になる。このアバランシェ増幅は、SPADに接続されるクエンチ抵抗によって消滅し(
図26のC点)、バイアス電圧をブレークダウン電圧より下げる。その後、バイアス電圧は元に戻り、ガイガーモードでの待機状態になり、次にフォトンが入射するまで、
図26に示すA点の状態を保持する。このように、SPADは、ガイガーモードで動作するため、光に対する感度が非常に高く、光子検出効率が波長により異なるが、数%〜数十%に達する。
【0005】
SPADを複数個アレイ状に配置して、さらに光子検出効率を高めることができる。このように、高感度のSPADをTOF方式測距センサに使用する場合、太陽光、人工照明光等の外乱光の影響を受けやすいという問題がある。
【0006】
図27は、従来のTOF方式の測距センサの構造を示す断面図である。測距センサにおいて、リファレンス側のSPADアレイ301と、リターン側のSPADアレイ302とは、遮光壁303により分離されている。リファレンス側のSPADアレイ301には、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)304が発光する光のみが入射する。一方、リターン側のSPADアレイ302には、検知対象物からの反射光のみが光学フィルタ305を介して入射するような構造になっている。
【0007】
光学フィルタ306は、VCSEL304の発光波長近傍の波長を通過させるバンドパスフィルタとして機能している。このため、光学フィルタ306は、外乱光によりSPADの誤反応が発生しにくいような構成になっている。
【0008】
図28は、太陽光(AM1.5)のスペクトル図である。
図28に示すように、940nm付近に水蒸気による吸収帯があり、野外での太陽光の影響を最小限にするために940nm付近の波長の光が用いられることが多い。
【0009】
図29に示すように、光学フィルタの透過分光スペクトルを持つ光学フィルタと、
図30に示すような発光スペクトルを持つ発光素子とを使用することが考えられる。これにより、波長が940nm付近以外の外乱光成分が、リファレンス側のSPAD301と、リターン側のSPADアレイ302とに入射しないような構造にすることができる。この結果、S/N比が高められる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について
図1〜
図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0019】
〈測距センサ100の構成〉
図1は、本実施形態に係る測距センサ100の構成を示すブロック図である。
図2は、測距センサ100の構造を示す縦断面図である。
【0020】
図1に示すように、測距センサ100(光検出器)は、TOF(Time of Flight)方式の測距センサである。この測距センサ100は、VCSEL1と、VCSELドライバ2と、SPADアレイ3,4と、SPADフロントエンド回路5,6と、DLL(Delay Lock Loop)7と、パルスカウンタ8と、データレジスタ9と、外乱光入射SPAD判定部10(外乱光入射受光素子判定部)と、HV発生回路11と、SPADバイアス制御部12とを備えている。
【0021】
VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)1は、光パルスを出力するレーザ光源である。VCSEL1は、発光波長帯域が狭く、かつ発光ピーク波長の温度変動が少ないので、発光素子として好ましい。VCSELドライバ2は、VCSEL1を駆動する駆動回路である。
【0022】
SPADアレイ3(第1受光部)は、リファレンス側に設けられており、VCSEL1からの光パルスを直接受光する。SPADアレイ3は、SPAD(Single-Photon-Avalanche-Diode:単光子雪崩増倍フォトダイオード)3a(第1受光素子)を複数有している。SPAD3aは、入射光の光子をガイガーモードで検出するアバランシェフォトダイオードであり、検出した1つの光子当たりに1つのパルスを含むパルス信号を出力する。また、SPAD3aは、SPADアレイ3においてマトリクス状に配されている。
【0023】
SPADアレイ4(第2受光部)は、リターン側に設けられており、VCSEL1の光パルスが
図2に示すように検知対象物200に反射した光パルスを受光する。SPADアレイ4も、SPADアレイ3と同じく、マトリクス状に配された複数の(SPAD3aと同数)のSPAD4a(第2受光素子)を有している。
【0024】
SPADフロントエンド回路5は、SPADアレイ3の各SPAD3aからのパルス信号を波形整形して、各パルス信号に応じた整形パルス信号を出力する回路である。SPADフロントエンド回路6(動作停止部)は、SPADアレイ4の各SPAD4aからのパルス信号を波形整形して、各パルス信号に応じた整形パルス信号を出力する回路である。また、SPADフロントエンド回路6は、後述する外乱光入射SPAD判定部10からのSPAD選択信号によって外乱光入射レベルが大きいSPAD4aの動作を停止させる。
【0025】
DLL7(時間差計測部)は、SPADフロントエンド回路5の整形パルス信号と、SPADフロントエンド回路6の整形パルス信号とから、SPADアレイ3の各SPAD3aが受光したパルス光とSPADアレイ4の各SPAD4aが受光したパルス光との時間差の平均値を検出する。この時間差は、各SPAD3aが受光したパルス光に対するSPADアレイ4の各SPAD4aが受光したパルスの遅延時間であり、検知対象物200の距離の光の飛行時間に相当する。
【0026】
パルスカウンタ8は、DLL7から出力された時間差の平均値を計測することで検知対象物200までの距離を算出するカウンタである。データレジスタ9は、パルスカウンタ8の計測値を格納する記憶回路である。
【0027】
外乱光入射SPAD判定部10は、SPADフロントエンド回路6から、VCSEL1が発光していないときのSPADアレイ4の各SPAD4からのパルス信号をモニタすることにより、外乱光の入射に反応しているSPAD4aを判定する。外乱光入射SPAD判定部10は、外乱光の入射レベルが大きいSPAD4aの動作を停止させるためのSPAD選択信号をSPADフロントエンド回路6に与える。
【0028】
HV発生回路11は、SPADアレイ3,4に印加する逆バイアス電圧VHV(高電圧)を発生する回路である。
【0029】
SPADバイアス制御部12は、リファレンス側のSPADアレイ3から出力されるパルス信号の有無によって、HV発生回路11の出力電圧を調整するとともに、VCSELドライバ2を制御する。このために、SPADバイアス制御部12は、パルスカウンタ13と、判定部14と、HV制御部15と、VCSELドライバ制御部16とを有している。
【0030】
パルスカウンタ13は、SPADアレイ3,4に印加する逆バイアス電圧を設定するときに、SPADアレイ3から出力されるパルス信号のパルス数をカウントする。判定部14は、パルスカウンタ13が出力する、パルス数のカウント値が、VCSEL1の発光パルス数よりも少ないか否かを判定する。
【0031】
HV制御部15は、判定部14による判定結果に基づいてHV発生回路11を制御する。VCSELドライバ制御部16は、判定部14による判定結果に基づいてVCSELドライバ2を制御する。HV制御部15およびVCSELドライバ制御部16の制御により、SPADアレイ3を最適なガイガーモードで動作させることができる。
【0032】
図2に示すように、測距センサ100は、ケース21と、光学フィルタ22,23と、集光レンズ24と、遮光壁25とをさらに備えている。
【0033】
ケース21の内部には、VCSEL1およびSPADアレイ3,4が配置されている。光学フィルタ22は、ケース21における開口21aの、VCSEL1からの出射光が透過する位置に配置されている。リファレンス側のSPADアレイ3には、VCSEL1からの直接光のみが入射し、リターン側のSPADアレイ4には、検知対象物200からの反射光のみが入射する。
【0034】
遮光壁25は、SPADアレイ3,4の間に配置されており、VCSELからの直接光をSPADアレイ4に入射しないように阻止している。光学フィルタ23は、ケース21における開口21bの、検知対象物200からの反射光が透過する位置に配置されている。光学フィルタ23は、VCSEL1の発光波長近傍の波長を通過させるバンドパスフィルタとして機能している。集光レンズ24は、光学フィルタ23の上の光が入射する側に配置されており、検知対象物200の位置に応じてSPADアレイ4への結像位置を変えるように機能する。
【0035】
続いて、リファレンス側のSPADアレイ3およびSPADフロントエンド回路5について説明する。
図3は、測距センサ100におけるSPADアレイ3およびSPADフロントエンド回路5の構成を示す回路図である。
【0036】
図3に示すように、SPADアレイ3は、SPAD3aとして、n個のSPAD41〜4nを含んでいる。SPAD41〜4nのカソードは、HV発生回路11によって高電圧VHVが印加されている。
【0037】
SPADフロントエンド回路5は、同じサイズのNMOSトランジスタM1〜Mnで構成されたアクティブクエンチ回路と、バッファBUF1〜BUFnと、論理和回路ORとを有している。バッファBUF1〜BUFnは、NMOSトランジスタM1〜Mnにゲート電圧を印加するために設けられている。バッファBUF1〜BUFnは、それぞれ、入力される制御信号CTL1〜CTLnがHighレベルになると、NMOSトランジスタM1〜Mnのゲートに電源電圧VS1を印加する。
【0038】
SPAD41〜SPAD4nのアノードは、それぞれNMOSトランジスタM1〜Mnが接続されている。SPAD41〜SPAD4nから出力されるパルス電流は、上記のアクティブクエンチ回路により、パルス電圧に変換される。論理和回路ORは、パルス電圧の信号の論理和を検出信号SPAD_OUTとして出力する。
【0039】
これにより、SPAD41〜SPAD4nのいずれか1つからパルス信号が出力された場合に、検出信号SPAD_OUTが出力されることになる。多数のSPAD41〜SPAD4nを使用することにより、感度を高くすることができる。
【0040】
また、SPADフロントエンド回路5は、電流源IQと、アクティブクエンチ回路を構成するNMOSトランジスタMaqmと、バッファBUF_AQMとを有している。定電流源IQは、電流値を任意の値に可変する回路である。バッファBUF_AQMは、制御信号CTL_AQMがHighレベルになると、NMOSトランジスタMaqmのゲートに電源電圧VS1を印加する。
【0041】
また、SPADフロントエンド回路5は、出力バッファBUFを有している。出力バッファBUFは、電流源IQと、NMOSトランジスタMaqmとの間の電位レベルをアクティブクエンチ検知信号AQM_OUTとして出力する。
【0042】
〈測距センサ100の動作〉
ここで、測距センサ100の動作について説明する。
図4は、測距センサ100の動作を示すシーケンス図である。
図5は、測距センサ100がアクティブクエンチ抵抗値を設定する動作を示すシーケンス図である。
図6は、測距センサ100がSPADアレイ3のバイアス電圧を設定する動作を示すシーケンス図である。
図7の(a)は、測距センサ100がSPADアレイ3のバイアス電圧を設定する動作を示すタイミングチャートであり、
図7の(b)は
図7の(a)のタイミングチャートにおける要部の拡大図である。
【0043】
図3に示すように、測距センサ100の動作は、測定前設定期間T1と、距離測定期間T2(VCSL発光、DLL収束期間)と、距離測定期間T3(平均化、距離データレジスタ格納)とに大きく分けられる。
【0044】
SPADフロントエンド回路5は、測定前設定期間T1において、まず、アクティブクエンチ設定期間T1−1でアクティブクエンチ抵抗の設定を行う。その後、SPADバイアス制御部12は、VHV電圧設定期間T1−2で、SPAD3a,4aの逆バイアス電圧VHVを設定することで、距離測定前にSPAD3a,4aが最適なガイガーモードで動作するための初期設定を行う。さらに、外乱光入射SPAD判定部10は、外乱光入射SPAD判定期間T1−3で、外乱光が入射しているSPAD4aを判定し、当該SPAD4aの動作を停止させる。
【0045】
距離測定期間T2において、SPADバイアス制御部12は、VCSEL1をパルス発光させるとともに、DLL7は、各SPAD3aが受光したパルス光に対するSPADアレイ4の各SPAD4aが受光したパルスの遅延時間(遅延量)を収束させる。そして、パルスカウンタ8は、距離測定期間T2で収束したDLL7の遅延量をカウントすることにより、検知対象物200までの距離をデータ化し、データレジスタ9に格納する。
【0046】
測距センサ100は、上記のような測定前設定期間T1、距離測定期間T2および距離測定期間T3を行った後に、所定時間の休止期に移行し、再び測定前設定期間T1、距離測定期間T2および距離測定期間T3を行うという処理を繰り返して行う。
【0047】
アクティブクエンチ設定期間T1−1において、SPADバイアス制御部12は、SPAD41〜4nに流れる電流の電流値を電流源IQによって設定し、制御信号CTL_AQMをHighレベルにして、電源電圧VS1の電圧値を
図5に示すように段階的に上昇させる。電源電圧VS1の電圧値が上昇することにより、NMOSトランジスタMaqmは、ゲート電圧が上昇してON抵抗(アクティブクエンチ抵抗)が変化する(小さくなる)。電源電圧VS1の上昇間隔は、等間隔であってもよいし、等間隔でなくてもよい。SPADバイアス制御部12は、アクティブクエンチ信号AQM_OUTがHighレベルからLowレベルに反転したときの電源電圧VS1(
図5ではVS19)をアクティブクエンチの制御電圧として採用する。
【0048】
VHV電圧設定期間T1−2において、HV制御部15は、
図6に示すように、逆バイス電圧VHVを低い電圧(初期電圧VHV0)から高い電圧に段階的に上昇させる。
図7の(a)および(b)に示すように、SPADバイアス制御部12は、HV発生回路11がSPADアレイ3へ逆バイアス電圧VHV0を印加した直後に、カウンタリセット信号をパルスカウンタ13に与える。これにより、パルスカウンタ13は、0カウントにリセットする。
【0049】
その後、VCSELドライバ制御部16は、VCSEL1を5回パルス発光させるようにVCSELドライバ2にVCSEL駆動信号を与える。ここでは、パルス数を5パルスとしているが、他のパルス数でも構わない。ここで、SPADバイアス制御部12は、VCSEL1が発光している期間にパルスカウンタ13のイネーブル信号をアクティブ(Highレベル)にする。これにより、パルスカウンタ13は、SPADアレイ3から出力されるパルスをカウントする。その後、SPADバイアス制御部12は、カウンタ読込信号をHighレベルにする。これにより、判定部14はパルスカウンタ13のカウント値を読み込む。
【0050】
ここで、判定部14は、カウント値がVCSEL1の発光パルス数よりも少ないと判定すると、HV発生回路11によるHV制御部15に逆バイアス電圧VHVを電圧VHV1に上昇させるように指示する。逆バイアス電圧VHVを上昇させるステップは等電圧でもよいし、等電圧でなくてもよい。判定部14は、逆バイアス電圧VHVを上昇させていき、例として逆バイアス電圧VHVが電圧VHV21に達したときに、パルスカウンタ13のカウント値が5以上になれば、電圧VHV21がSPADのブレークダウン電圧(VBD)であると判断する。
【0051】
HV制御部15は、SPADをガイガーモードで動作させるために、ブレークダウン電圧からオーバー電圧Vex分高い電圧を発生するようにHV発生回路11を制御する。こにより、HV発生回路11は、距離測定期間T2において、SPADアレイ3に印加する逆バイアス電圧VHVをVHV21+Vexに変更する。ここで、オーバー電圧Vexに温度依存性を持たせてもよい。距離測定期間T2の前に、毎回、上記のようにSPADアレイ3に印加する逆バイアス電圧VHVを制御することにより、温度変化やプロセス条件により、SPADのブレークダウンがばらついたとしても、SPADアレイ3を最適なガイガーモードで安定動作させることが可能となる。
【0052】
外乱光入射SPAD判定期間T1−3における測距センサ100の動作について説明する。
図8は、測距センサ100と検知対象物200と外乱光源との位置関係を示す図である。
図9は、測距センサ100と検知対象物200と外乱光源との他の位置関係を示す図である。
図10は、外乱光入射時のSPADアレイ4の各SPAD4aから出力されたパルス信号のパルスのカウント値の分布を示す図である。
図11は、外乱光が入射しているSPAD4aの動作を停止させた状態の各SPAD4aから出力されたパルス信号のパルスのカウント値の分布を示す図である。
【0053】
まず、測距センサ100、検知対象物200および外乱光源が、
図8に示す位置関係に配置されている場合について説明する。この位置関係では、検知対象物200が測距センサ100の正面に位置し、外乱光源が検知対象物200の斜め後ろから逆光位置で測距センサ100に対して光を照射している。
【0054】
図10は、SPADアレイ4におけるSPAD4aの配置の一例を示しており、SPADアレイ4には、16×16の計256個のSPAD4aが配置されている。4×4の計16のSPAD4aを1単位にして信号処理する場合、SPADアレイ4の領域はA〜Pの16の領域に分割される。なお、このような分割には、限定されず、例えば、1つのSPAD4aを1単位にして、SPADアレイ4を256の領域に分割してもよい。
【0055】
図8に示すように測距センサ100が配置されている場合、測距センサ100の発光素子(VCSEL1)が発光していない場合に、SPADアレイ4には、
図10に示すように外乱光源が領域Pを中心とした領域に結像される。この結像位置は、外乱光源の位置により変わる。
【0056】
また、
図9に示すように、測距センサ100から見て検知対象物200の背後に外乱光源がある場合、外乱光源は検知対象物によって隠されるため、SPADアレイ4には外乱光による光は結像されない。ただし、外乱光源の広がりが検知対象物200より大きな場合は、検知対象物200の周りにドーナツ状に外乱光が結像される。
【0057】
図10に示すように外乱光源が領域Pを中心とした領域に結像されている場合、SPAD4aから出力されるパルス数はSPAD4aに照射される光量に比例する。したがって、領域A〜Pの中で、領域PのSPAD4aのパルス数の和が最も多くなる。
【0058】
一般に、TOF方式測距センサは、発光素子からパルス光を検知対象物に向けて放射した時点から、検知対象物に反射して返ってきた時点までの遅延差を検出する。このため、外乱光によりランダムな時間にパルスが発生することにより、遅延時間を検出するDLL7の遅延値がばらついたり、DLL7が遅延値を収束する時間が長くなったりするために測距精度が低下する。
【0059】
このような測距精度の低下を防止するために、本実施形態では、外乱光によるSPAD4aの出力パルス数があらかじめ設定した値を超えた場合に、
図11に示すように、その領域のSPAD4aの動作を停止させる。これにより、外乱光によりSPAD4aから出力される外乱光に起因したランダムなパルス列をなくすことができる。したがって、外乱光入射時の測距精度の向上が可能となる。
【0060】
なお、本実施形態では、また、光の飛行時間をDLL7によって算出したが、これには限定されない。例えば、TDC(Time-to Digital Converter)回路を用いて光の飛行時間を算出してもよい。
【0061】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、
図12および
図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施形態では、SPADフロントエンド回路6における、外乱光が入射したSPAD4aの動作を停止させる構成について説明する。
【0062】
図12は、本実施形態に係るリターン側のSPADアレイ4およびSPADフロントエンド回路6の構成を示す回路図である。
図13は、本実施形態に係るリターン側のSPADアレイ4およびSPADフロントエンド回路6の他の構成を示す回路図である。
【0063】
図12に示すリターン側のSPADアレイ4は、SPAD4aとして、リファレンス側のSPADアレイ3と同じく、n個のSPAD41〜4nを含んでいる。
【0064】
図12に示すリターン側のSPADフロントエンド回路6は、リファレンス側のSPADフロントエンド回路5と同じく、NMOSトランジスタM1〜Mnで構成されたアクティブクエンチ回路と、バッファBUF1〜BUFnと、論理和回路ORとを有している。また、SPADフロントエンド回路6は、SPADフロントエンド回路5と同じく、電流源IQと、アクティブクエンチ回路を構成するNMOSトランジスタMaqmと、バッファBUF_AQMと、出力バッファBUFとを有している。
【0065】
SPADフロントエンド回路6は、さらに、SPADの動作を停止させるために用いられるNMOSトランジスタOFF_M1〜OFF_Mnを有している。NMOSトランジスタOFF_M1〜OFF_Mnは、SPAD41〜4nのアノードに、NMOSトランジスタM1〜Mnと並列になるように接続されている。また、NMOSトランジスタOFF_M1〜OFF_Mnのゲートには、それぞれ、NMOSトランジスタOFF_M1〜OFF_MnをOFFさせるための制御信号OFF_CTL1〜OFF_CTLnが入力される。制御信号OFF_CTL1〜OFF_CTLnは、前述のSPAD選択信号として外乱光入射SPAD判定部10から与えられる。
【0066】
図13に示すリターン側のSPADアレイ4は、
図12に示す上記のSPADアレイ4と同じ構成である。
【0067】
図13に示すリターン側のSPADフロントエンド回路6は、
図12に示す上記のSPADフロントエンド回路6と同じ回路素子を備える構成である。ただし、
図13に示すSPADフロントエンド回路6において、NMOSトランジスタOFF_M1〜OFF_Mnは、HV発生回路11と、SPAD41〜4nのカソードとに接続されている。
【0068】
上記のように構成される
図12および
図13に示すSPADフロントエンド回路6において、NMOSトランジスタOFF_M1〜OFF_Mnは、制御信号OFF_CTL1〜OFF_CTLnのいずれかがHighレベルになると、それに応じてOFFする。これにより、OFFしたNMOSトランジスタOFF_Mi(iは任意の整数)によってアノードがグランドに接続されたSPAD10iが動作しない(無効になる)。
【0069】
このように、SPADフロントエンド回路6は、NMOSトランジスタOFF_M1〜OFF_Mnを有することにより、SPAD41〜4nの動作を停止させることができる。これにより、SPAD41〜4nの動作停止機能を備えるSPADフロントエンド回路6を簡素に構成することができる。
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、
図1、
図14〜
図16に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0070】
図14は、本実施形態に係る測距センサ100と検知対象物200と外乱光源との位置関係を示す図である。
図15は、外乱光入射時の測距センサ100におけるSPADアレイ4の各SPAD4aから出力されたパルス信号のパルスのカウント値の分布を示す図である。
図16は、動作を停止させるSPAD4aを判定するためにSPADアレイ4の位置に応じた重み係数を示す図である。
【0071】
本実施形態では、測距センサ100、検知対象物200および外乱光源が、
図14に示す位置関係に配置されている場合について説明する。この位置関係では、検知対象物200が測距センサ100の正面に位置し、外乱光源が測距センサ100の斜め後ろから順光位置で測距センサ100に対して光を照射している。また、検知対象物200は、反射率が高い物質で構成されており、
図14に示すように、本実施形態に係る測距センサ100は、外乱光の照り返しを生じる。
【0072】
このような場合、
図15に示すように、SPADアレイ4は、検知対象物200からの照り返しの光によって、中央部分が反応することがある。
図1に示す外乱光入射SPAD判定部10は、SPADアレイ4において外乱光が入射しているのが中央部分のSPAD4aであると検出すると、これらのSPAD4aを停止させる。このため、検知対象物200の距離を測定できない状態になる現象が生じることがある。
【0073】
このような現象を回避するために、
図15に示すように、SPADフロントエンド回路6(係数乗算部)は、SPADアレイ4の位置に応じて1〜8の重み係数を各SPAD4aのパルス信号に付与する。具体的には、SPADフロントエンド回路6は、SPADアレイ4の中央部分から外周部分に向かうに従って値が大きくなるように、各SPAD4aのパルス信号に重み係数を乗じる。より具体的には、重み係数は、SPADアレイ4の中央部分が最も小さく、SPADアレイ4の外周部分が最も大きく、SPADアレイ4の中央部分から外周部分に向かうに従って(例えば1つずつ)大きくなる。ただし、重み係数は、1つずつ大きくなるように値でなくてもよい。
【0074】
SPADフロントエンド回路6は、SPADアレイ4から出力される各SPAD4aのパルス信号に上記の係数を乗じる。このため、SPADフロントエンド回路6は、SPAD4aごとに乗算回路を有している。
【0075】
外乱光入射SPAD判定部10は、SPADフロントエンド回路6から出力される整形パルス信号の単位時間当たりのパルス数が、所定値よりも大きいと判定すると、当該整形パルス信号に対応するSPAD4aの動作を停止すると決定する。
【0076】
このように、SPAD4aから出力されるパルス信号には、SPADアレイ4における位置に依存する重み係数が乗じられている。これにより、大きい重み係数が乗じられたパルス信号を出力するSPAD4aほど、外乱光が入射していると判定される可能性が高くなる。それゆえ、例えば、SPADアレイ4における中央部分のSPAD4aが停止する可能性を低くして、検知対象物200による外乱光の照り返しに起因するSPAD4aの停止を防ぐことができる。
【0077】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、
図1、
図14、
図17〜
図24に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0078】
図17は、本実施形態に係る測距センサ100の動作を示すシーケンス図である。
図18は、VCSEL1(発光素子)が発光したときのSPADアレイ4の各SPAD4aから出力されたパルス信号のパルスのカウント値の分布を示す図である。
図19は、VCSEL1が発光していないときのSPADアレイ4の各SPAD4aから出力されたパルス信号のパルスのカウント値の分布を示す図である。
図20は、測距センサ100と検知対象物200と外乱光源との位置関係を示す図である。
図21は、
図11に示す条件下でVCSEL1が発光していないときのSPADアレイ4の各SPAD4aから出力されたパルス信号のパルスのカウント値の分布を示す図である。
図22は、
図11に示す条件下でVCSEL1が発光しているときのSPADアレイ4の各SPAD4aから出力されたパルス信号のパルスのカウント値の分布を示す図である。
図23は、
図11に示す条件下で外乱光が入射しているSPAD4aの動作を停止させた状態の各SPADから出力されたパルス信号のパルスのカウント値の分布を示す図である。
図24は、本実施形態に係る他の測距センサ100Aの構成を示す縦断面図である。
【0079】
図17に示すように、本実施形態では、実施形態1(
図3参照)と異なり、外乱光入射SPAD判定部10は、外乱光入射SPAD判定期間T1−3に、VCSEL1を発光させたときと、VCSEL1を発光させないときの、SPADアレイ4が出力するパルス信号のパルス数(出力パルス数)をカウントする。発光素子を発光させる期間と発光素子を発光させない期間は同一とする。SPADアレイ4が16の領域A〜Pに分割された場合、16回の発光期間と16回の非発光期間とを設けることになる。
【0080】
測距センサ100が、
図14に示すような位置関係に配置されている場合、VCSEL1が発光しているときの各SPAD4aの出力パルス数のカウント値は、
図18に示すように、SPADアレイ4の中央部に集中する。また、VCSEL1が発光していないときの各SPAD4aの出力パルス数のカウント値は、
図19に示すように、SPADアレイ4の中央部に集中する。
【0081】
検知対象物200が測距センサ100の付近に配置されている場合、VCSEL1の光の検知対象物200による反射光と、外乱光の検知対象物200による反射光とが足し合わされた光がSPADアレイ4に入射することになる。したがって、VCSEL1が発光しているときのSPAD4aの出力パルス数は、VCSEL1が発光していないときのSPAD4aの出力パルス数よりも多くなる。
【0082】
そこで、外乱光入射SPAD判定部10は、VCSEL1が発光しているときとVCSEL1が発光していないときとで、SPADアレイ4における各領域A〜PのSPAD4aの出力パルス数の差または比を算出しておく。外乱光入射SPAD判定部10は、この差または比により、検知対象物200か太陽光等の遠距離にある外乱光源であるか否かを判別する。外乱光のみによりSPAD4aのパルス信号が発生している場合、外乱光入射SPAD判定部10は、その領域のSPAD4aの動作を停止させる。これにより、検知エリアの広さを確保したまま、検知対象物200までの距離を精度良く測定することが可能となる。
【0083】
さらに、測距センサ100が
図20に示すような位置関係に配置される場合、測距センサ100は、順光と逆光との2種類の外乱光による影響を受ける。この場合、測距センサ100の斜め後ろにある外乱光源からの光が検知対象物200に反射した光が測距センサ100に入射し、検知対象物200の斜め後ろにある外乱光源からの直接光が測距センサ100に入射する。
【0084】
図17に示す外乱光入射SPAD判定期間T1−3にVCSEL1を発光させたときのSPADアレイ4の各SPAD4aの出力パルス数のカウント値は、
図21に示すように分布する。この場合、測距センサ100の斜め後ろにある外乱光源からの外乱光が検知対象物200によって照り返した照り返し成分と、VCSEL1からの光の検知対象物200による反射成分との両方に、領域F,G,J,KのSPAD4aが反応してパルス信号を出力する。検知対象物200の斜め後ろにある外乱光源からの外乱光の直接光に、領域Pを中心としたSPAD4aが反応してパルス信号を出力する。
【0085】
VCSEL1が発光していないときのSPADアレイ4の各SPAD4aの出力パルス数のカウント値は、
図22のように分布する。このように、領域F,G,J,KのSPAD4aの出力パルス数は、VCSEL1が発光しているときと比べて減少する。これは、VCSEL1が発光している場合(
図21参照)と比較して、VCSEL1の光が検知対象物200に反射してSPAD4aに入射する光の成分が減少するためである。測距センサ100の斜め後ろからの外乱光による各SPAD4aの出力パルス数は、VCSEL1が発光している期間と発光していない期間とでほぼ同じになるため、差が小さい。
【0086】
したがって、外乱光入射SPAD判定部10は、
図21に示す状態と、
図22に示す状態とで、次の第1条件と第2条件とを共に満たすSPAD4aが動作を停止するようにSPAD選択信号を出力する。
【0087】
第1条件:SPAD4aの出力パルス数が所定値(第1所定値)より大きいこと
第2条件:VCSEL1の発光時と非発光時との、SPAD4aの出力パルス数の差または比が所定値(第2所定値)より小さいこと
外乱光入射SPAD判定部10が、上記の第1条件および第2条件を満たしたSPAD4aの動作を停止させると、各SPAD4aの出力パルス数が
図23に示すように分布する。これにより、領域PのSPAD4aが動作を停止する。領域Pには検知対象物200の斜め後ろからの外乱光の直接光が結像しており、SPAD4aが、この直接光に反応しないようにする。これにより、SPADアレイ4に直接入射する外乱光の影響を最小限に抑えることができ、精度の高い測距が可能となる。
【0088】
ところで、上述の外乱光入射SPAD判定期間T1−3にVCSEL1が発光しているときと発光していないときとのそれぞれのSPAD4aの出力パルス数の差または比が大きい場合(所定値より大きい場合)、検知対象物200が測距センサ100の近傍にあることを意味している。この場合、外乱光入射SPAD判定部10が、該当するSPAD4aを動作させないようにするとともに、SPADバイアス制御部12(発光強度制御部)が、
図17に示す距離測定期間T2におけるVCSEL1の発光強度を低下させる(発光量を少なくする)ことにより、消費電流を抑えることができる。
【0089】
あるいは、
図2に示す測距センサ100に代えて
図24に示す測距センサ100を用いる場合、次のようにして、消費電流を抑えることができる。
図24に示す測距センサ100は、
図2に示す測距センサ100と比べて、発光素子として5つのVCSEL1A〜1Eを備えるとともに、光学フィルタ22に代えて拡散レンズ26を備えている。このように構成される測距センサ100Aにおいて、SPADバイアス制御部12(発光放射角制御部)は、発光させているVCSEL1A〜1Eから、VCSEL1B、VCSEL1C、VCSEL1Dというように順次発光させないようにして、発光する発光素子の数を減らし、発光放射角を制限する。これにより、消費電流を抑えることができる。
【0090】
〔実施形態5〕
本発明に係る実施形態5について、
図25に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施形態1〜4にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0091】
図25は、本実施形態に係るスマートフォン201の構成を示す平面図である。
【0092】
図25に示すように、携帯型電子機器としてのスマートフォン201は、筐体202に液晶パネル203およびタッチパネル204が組み込まれることによって構成されている。このスマートフォン201において、液晶パネル203は、筐体202の操作面側に設けられている。また、タッチパネル204は、液晶パネル203の上に設けられている。
【0093】
筐体202における操作面と反対側の背面の上部には、カメラ205と、測距センサ100(
図2参照)または測距センサ100A(
図24参照)とが配置されている。カメラ205は、静止画または動画を撮影するために設けられている。
【0094】
測距センサ100,100Aは、カメラ205によって撮影する被写体としての検知対象物200までの距離を測定するために設けられている受発光部である。
【0095】
スマートフォン201は、上記のように、測距センサ100,100Aを備えることにより、外乱光が生じている環境下で使用しても、検知対象物200を外乱光の影響を抑えて、検知対象物200までの距離を正確に測定することができる。
【0096】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る光検出器は、発光素子(VCSEL1)と、前記発光素子が発するパルス光の光子をガイガーモードで検出する第1受光素子(SPAD3a)としてアバランシェフォトダイオードを複数有する第1受光部(SPADアレイ3)と、前記パルス光が検知対象物200に反射した反射光の光子をガイガーモードで検出する第2受光素子(SPAD4a)としてアバランシェフォトダイオードを複数有する第2受光部(SPADアレイ4)と、前記第1受光部の前記第1受光素子から出力されるパルス信号と前記第2受光部の前記第2受光素子から出力されるパルス信号との時間差を計測する時間差計測部(DLL7)と、前記発光素子が発光していないときの、前記第2受光部の各第2受光素子から出力されるパルス信号に基づいて、外乱光が入射している前記第2受光素子を判定する外乱光入射受光素子判定部(外乱光入射SPAD判定部10)と、外乱光が入射していると判定された前記第2受光素子の動作を停止する動作停止部(SPADフロントエンド回路6)と、を備えている。
【0097】
上記の構成によれば、外乱光が入射していると判定された第2受光素子の動作が停止する。これにより、当該第2受光素子に外乱光が入射しても、当該第2受光素子からパルス信号が出力されない。したがって、外乱光の影響を抑えて、精度よく、検知対象物までの距離を測定することができる。
【0098】
本発明の態様2に係る光検出器は、上記態様1において、前記外乱光入射受光素子判定部は、前記第2受光素子から出力されるパルス信号の単位時間当たりのパルス数が所定値よりも大きいときに、当該パルス信号を出力した前記第2受光素子に外乱光が入射していると判定してもよい。
【0099】
上記の構成によれば、外乱光の光量に応じて所定値を適宜設定することにより、外乱光を抑制する感度を調整することができる。
【0100】
本発明の態様3に係る光検出器は、上記態様1において、前記第2受光素子のパルス信号に前記第2受光部における前記第2受光素子における位置に応じた重み係数を乗じる係数乗算部(SPADフロントエンド回路6)をさらに備え、前記外乱光入射受光素子判定部が、重み係数が乗じられた前記パルス信号の単位時間当たりのパルス数が所定値よりも大きいときに、当該パルス信号を出力した前記第2受光素子に外乱光が入射していると判定してもよい。
【0101】
上記の構成によれば、大きい重み係数が乗じられたパルス信号を出力する第2受光素子ほど、外乱光が入射していると判定される可能性が高くなる。これにより、第2受光部において外乱光が入射する可能性の高い領域の第2受光素子のパルス信号に大きい重み係数を乗じることにより、外乱光が入射している第2受光素子を判定する精度を高めることができる。
【0102】
本発明の態様4に係る光検出器は、上記態様3において、前記重み係数は、前記第2受光部の中央部分が最も小さく、当該中央部分から前記第2受光部の外周部分に向かうに従って大きくなっていてもよい。
【0103】
上記の構成によれば、検知対象物からの反射光を受ける可能性が高い、第2受光部の中央部分および中央部分に近い第2受光素子は、そのパルス信号に乗じられる重み係数が小さい。これにより、これらの第2受光素子が、外乱光が入射していると判定される可能性を低くすることができる。これにより、例えば、検知対象物に対して正面に位置する第2受光部の斜め後ろから検知対象物に入射する外乱光が検知対象物に照り返す光を第2受光部が受けていても、第2受光部における中央部分の第2受光素子の動作を停止させないようにすることができる。したがって、距離の測定ができなくなくことを抑止することができる。
【0104】
本発明の態様5に係る光検出器は、上記態様1において、前記第2受光素子から出力されるパルス信号のパルス数が第1所定値より大きく、かつ、前記発光素子の発光時と非発光時との、前記パルス数の差または比が第2所定値より小さいときに、当該パルス信号を出力する前記第2受光素子に外乱光が入射していると判定してもよい。
【0105】
上記の構成によれば、検知対象物の斜め後ろからの外乱光が入射する、第2受光部の外周部分付近の第2受光素子の動作を停止させることができる。これにより、距離の測定精度を高めることができる。
【0106】
本発明の態様6に係る光検出器は、上記態様5において、前記発光素子の発光時と非発光時との、前記パルス数の差または比が所定値より大きいときに、前記発光素子の発光強度を低下させる発光強度制御部をさらに備えていてもよい。
【0107】
上記の構成によれば、検知対象物が第2受光部の近傍にあるときに、発光素子の発光強度を低下させて、消費電流を抑えることができる。
【0108】
本発明の態様7に係る光検出器は、上記態様5において、前記発光素子の発光時と非発光時との、前記パルス数の差または比が所定値より大きいときに、前記発光素子の発光放射角を制御する発光放射角制御部をさらに備えていてもよい。
【0109】
上記の構成によれば、検知対象物が第2受光部の近傍にあるときに、発光素子の発光放射角を小さくして、消費電流を抑えることができる。
【0110】
本発明の態様8に係る光検出器は、上記態様1から7のいずれかにおいて、前記第2受光部の光が入射する側に配置された集光レンズをさらに備えていてもよい。
【0111】
上記の構成では、検知対象物の位置に応じて、集光レンズによって、第2受光部への結像位置を変えることができる。
【0112】
本発明の態様9に係る携帯型電子機器は、上記態様1から8の光検出器を備えている。
【0113】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。