(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着剤層が、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、dl−カンフル、ハッカ油、及びチモールからなる群から選択される少なくとも1種の消炎鎮痛剤を含有する、請求項1又は2に記載の貼付剤。
前記粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、天然ゴム、ポリブテン、スチレン−ブタジエンゴム、及びイソプレンからなる群から選択される少なくとも1種のゴム系粘着基剤を含有する、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが温感刺激成分としてノニル酸ワニリルアミドを含有する貼付剤、特に非水系の貼付剤についてさらなる検討をおこなったところ、患者の皮膚症状等によっては、まれに、かぶれなどの皮膚刺激とは別の、温感刺激成分由来の「かゆみ」が貼付部位に発生する場合があることを見い出した。また、従来からかぶれなどの皮膚刺激を抑制する成分として知られている成分であっても、かかるかゆみの抑制には必ずしも有効ではなく、さらに、該成分等によっては、適度な温感刺激を貼付部位に持続的に与えることが困難となる場合があることも本発明者らは見い出した。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、貼付部位に適度な温感刺激を与えることができ、かつ、温感刺激成分由来のかゆみの発生を十分に抑制することができる非水系貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤において、前記粘着剤層を実質的に水を含有しない非水性とし、前記粘着剤層にノニル酸ワニリルアミド及び水酸化アルミニウムを、特定の含有量、かつ、特定の比率となるように組み合わせて含有させることにより、貼付部位に適度な温感刺激を与えることができ、かつ、温感刺激成分であるノニル酸ワニリルアミド由来のかゆみの発生を十分に抑制することができることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であり、
前記粘着剤層が非水性であり、
前記粘着剤層がノニル酸ワニリルアミド及び水酸化アルミニウムを含有しており、
前記粘着剤層におけるノニル酸ワニリルアミドの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.01〜0.025質量%であり、
前記粘着剤層における水酸化アルミニウムの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.55〜1.5質量%であり、かつ、
前記粘着剤層におけるノニル酸ワニリルアミドの含有量と水酸化アルミニウムの含有量との質量比(ノニル酸ワニリルアミドの含有量:水酸化アルミニウムの含有量)が、1:27〜1:150である、
ものである。
【0011】
本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が実質的に水を含有していないことが好ましい。また、前記粘着剤層が、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、dl−カンフル、ハッカ油、及びチモールからなる群から選択される少なくとも1種の消炎鎮痛剤を含有することが好ましく、前記粘着剤層における前記消炎鎮痛剤の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して1〜10質量%であることがより好ましい。
【0012】
さらに、本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、天然ゴム、ポリブテン、スチレン−ブタジエンゴム、及びイソプレンからなる群から選択される少なくとも1種のゴム系粘着基剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貼付部位に適度な温感刺激を与えることができ、かつ、温感刺激成分由来のかゆみの発生を十分に抑制することができる非水系貼付剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であり、
前記粘着剤層がノニル酸ワニリルアミド及び水酸化アルミニウムを含有しており、
前記粘着剤層におけるノニル酸ワニリルアミドの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.01〜0.025質量%であり、
前記粘着剤層における水酸化アルミニウムの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.55〜1.5質量%であり、かつ、
前記粘着剤層におけるノニル酸ワニリルアミドの含有量と水酸化アルミニウムの含有量との質量比(ノニル酸ワニリルアミドの含有量:水酸化アルミニウムの含有量)が、1:27〜1:150である。
【0015】
本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える。前記支持体層としては、後述の粘着剤層を支持し得るものであれば特に制限されず、貼付剤の支持体層として公知のものを適宜採用することができる。本発明に係る支持体層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミニウムなどの金属が挙げられる。これらの中でも、薬物非吸着性や薬物非透過性の観点からは、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。前記支持体層の形態としては、例えば、フィルム;シート、シート状多孔質体、シート状発泡体等のシート類;織布、編布、不織布等の布帛;箔;及びこれらの積層体が挙げられる。また、前記支持体層の厚みとしては、特に制限されないが、貼付剤を貼付する際の作業容易性及び製造容易性の観点からは、5〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
本発明の貼付剤は、前記粘着剤層の前記支持体層とは反対の面上に剥離ライナーをさらに備えるものであってもよい。かかる剥離ライナーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミ、紙などの材質からなるフィルムやシート及びこれらの積層体が挙げられる。これらの剥離ライナーとしては、前記粘着剤層から容易に剥離できるように該粘着剤層と接触する側の面に含シリコーン化合物コートや含フッ素化合物コート等の離型処理が施されたものであることが好ましい。
【0017】
本発明の貼付剤は非水系貼付剤であり、本発明に係る粘着剤層は、非水系の粘着剤層であることが必要である。本発明において「非水系の粘着剤層」とは、粘着剤層が実質的に水を含有していないことをいい、前記水としては、精製水、滅菌水、天然水、及びこれらの混合物等が挙げられる。本発明において、実質的に水を含有していないとは、製造工程中に前記粘着剤層に意図的に水を配合する工程がないことをいい、製造工程中に含有された空気中等の水分や貼付剤の皮膚への適用中に汗等を吸収した水分までを除くものではない。このような粘着剤層における水の含有量としては、より具体的には、前記粘着剤層の全質量に対して1質量%未満であることが好ましく、0.99質量%以下であることがより好ましく、0〜0.5質量%であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明に係る粘着剤層は、温感刺激成分としてノニル酸ワニリルアミド(「ノニル酸ワニルアミド」ともいう)を含有する。本発明において、前記粘着剤層中に含有されるノニル酸ワニリルアミドの含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して0.01〜0.025質量%であることが必要である。また、前記ノニル酸ワニリルアミドの含有量としては、0.012〜0.025質量%であることがより好ましく、0.012〜0.02質量%であることがさらに好ましい。ノニル酸ワニリルアミドの含有量が前記下限未満であると、貼付部位に与える温感刺激が不十分となって温熱感が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貼付部位に与える温感刺激が強くなり過ぎたり、かゆみの発生を十分に抑制することが困難となったり、不快臭が発生したりする傾向にある。
【0019】
本発明に係る粘着剤層は、水酸化アルミニウムを含有する。本発明において、前記粘着剤層中に含有される水酸化アルミニウムの含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して0.55〜1.5質量%であることが必要である。また、前記水酸化アルミニウムの含有量としては、0.6〜1.5質量%であることがより好ましく、0.6〜1.47質量%であることがさらに好ましい。水酸化アルミニウムの含有量が前記下限未満であると、かゆみの発生を十分に抑制することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貼付部位に与える温感刺激が不十分となって温熱感が低下する傾向にある。
【0020】
さらに、本発明においては、前記粘着剤層におけるノニル酸ワニリルアミドの含有量と水酸化アルミニウムの含有量との質量比(ノニル酸ワニリルアミドの含有量:水酸化アルミニウムの含有量)が、1:27〜1:150であることも必要である。また、前記質量比としては、1:30〜1:150であることがより好ましく、1:30〜1:122.5であることがさらに好ましい。ノニル酸ワニリルアミドの含有量に対する水酸化アルミニウムの含有量が前記下限未満であると、かゆみの発生を十分に抑制することが困難となったり、貼付部位に与える温感刺激が強くなり過ぎたりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貼付部位に与える温感刺激が不十分となって温熱感が低下する傾向にある。
【0021】
本発明に係る粘着剤層としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、dl−カンフル、ハッカ油、及びチモールからなる群から選択される少なくとも1種の消炎鎮痛剤をさらに含有することが好ましい。これらの消炎鎮痛剤をノニル酸ワニリルアミドと併用することにより、ノニル酸ワニリルアミド由来の温感刺激をより向上させることができる。これらの中でも、前記消炎鎮痛剤としては、適度な消炎鎮痛効果及び貼付部位に適度な刺激感を与える傾向にある観点から、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、及びl−メントールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、サリチル酸グリコール及びl−メントールの組み合わせであることがより好ましい。
【0022】
本発明において、前記粘着剤層が前記消炎鎮痛剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される消炎鎮痛剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して1〜10質量%であることが好ましく、1.5〜9質量%であることがより好ましく、2.55〜7.66質量%であることがさらに好ましい。前記消炎鎮痛剤の含有量が前記下限未満であると、消炎鎮痛効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層中に均一に含有させることが困難となる傾向にある。
【0023】
本発明に係る粘着剤層の粘着基剤としては、実質的に水を含有しないものであれば特に制限されず、例えば、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、及びシリコーン系粘着基剤が挙げられる。
【0024】
前記ゴム系粘着基剤としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリイソブチレン(PIB)、イソプレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブテン、天然ゴム等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、良好な皮膚への付着性及び貼付部位に適度な温感刺激を与えることができる傾向にある観点から、前記ゴム系粘着基剤としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いるか、又は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンを組み合わせて用いることがより好ましい。スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンを組み合わせて用いる場合、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とポリイソブチレンとの質量比(SISの質量:PIBの質量)としては、例えば、1:0.281〜1:0.587(さらに好ましくは1:0.338〜1:0.431の範囲)であることがより好ましい。
【0025】
前記アクリル系粘着基剤としては、「医薬品添加物辞典2016(日本医薬品添加剤協会編集)」に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸アセトアセトキシエチル・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有されるアクリル系高分子等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
前記シリコーン系粘着基剤としては、ポリジメチルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではMQと表されるポリマー等)、ポリメチルビニルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではVMQと表されるポリマー等)、ポリメチルフェニルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではPVMQと表されるポリマー等)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
これらの中でも、本発明に係る粘着剤層の粘着基剤としては、前記ゴム系粘着基剤であることが好ましく、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のゴム系粘着基剤であることがより好ましい。
【0028】
本発明において、これらの粘着基剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して10〜50質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。粘着基剤の含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の凝集性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、皮膚への付着性が低下する傾向にある。
【0029】
本発明に係る粘着剤層としては、前記粘着基剤として前記ゴム系粘着基剤を含有する場合には特に、粘着付与剤をさらに含有することが好ましい。前記粘着付与剤は、主に前記粘着基剤の粘着性を高めることを目的として配合される。
【0030】
前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂(脂環族炭化水素モノマーの単独重合体又は共重合体である脂環族飽和炭化水素樹脂等)、フェノール系樹脂、及びキシレン系樹脂が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
前記ロジン系樹脂とは、ロジン酸を主成分とする樹脂である。本発明に係る粘着剤層が前記ロジン系樹脂を含有する場合、該ロジン系樹脂としては、例えば、水素添加ロジングリセリンエステル、超淡色ロジン、超淡色ロジンエステル、酸変性超淡色ロジンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記ロジン系樹脂としては、パインクリスタル(KE−311、PE−590、KE−359、KE−100等)(商品名、荒川化学工業株式会社製)等の市販のものを適宜用いてもよく、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
また、前記テルペン系樹脂とは、イソプレンを構成単位とする樹脂である。本発明に係る粘着剤層が前記テルペン系樹脂を含有する場合、該テルペン系樹脂としては、例えば、ピネン重合体(α−ピネン重合体、β−ピネン重合体等)、テルペン重合体、ジペンテン重合体、テルペン−フェノール重合体、芳香族変性テルペン重合体、ピネン−フェノール共重合体が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記テルペン系樹脂としては、YSレジン(YSレジンPXN、YSレジンPX1150N、YSレジンPX1000、YSレジンTO125、YSレジンTO105等)、クリアロンP105、クリアロンM115、クリアロンK100(以上、商品名、ヤスハラケミカル株式会社製)、タマノル901(商品名、荒川化学工業株式会社製)等の市販のものを適宜用いてもよく、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
これらの中でも、前記粘着付与剤としては、良好な皮膚への付着性及び貼付部位に適度な温感刺激を与えることができる傾向にある観点から、前記ロジン系樹脂及び前記テルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水素添加ロジングリセリンエステル及びピネン重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0034】
本発明において、前記粘着剤層が前記粘着付与剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される粘着付与剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して10〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることがさらに好ましい。前記粘着付与剤の含有量が前記下限未満であると、十分な皮膚への付着性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、十分な粘着剤層の凝集性が発揮されなくなったり、貼付剤を剥離する際の痛みが増大する傾向にある。
【0035】
本発明に係る粘着剤層としては、有効成分の経皮吸収促進作用を有する吸収促進剤(経皮吸収促進剤)をさらに含有していてもよい。前記吸収促進剤としては、脂肪族アルコール、炭素数6〜20の脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、又は脂肪族アルコールエーテル;芳香族有機酸;芳香族アルコール;芳香族有機酸エステル又はエーテル;POE硬化ヒマシ油類;レシチン類;リン脂質;大豆油誘導体;トリアセチン等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明において、前記粘着剤層が前記吸収促進剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される吸収促進剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
また、本発明に係る粘着剤層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、ノニル酸ワニリルアミド及び前記消炎鎮痛剤以外の他の有効成分、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、溶解剤等を適宜、適量、さらに含有していてもよい。
【0038】
ノニル酸ワニリルアミド及び前記消炎鎮痛剤以外の他の有効成分としては、例えば、オウバク粉末、グリチルレチン酸等の植物由来成分;非ステロイド性消炎鎮痛剤(ジクロフェナク、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、チアプロフェン、アセメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ナプロキセン、アザプロパゾン、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アンフェナク等)、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、ホモクロルシクロジン等)、降圧剤(ジルチアゼム、ニカルジピン、ニルバジピン、メトプロロール、ビソプロロール、トランドラプリル等)、抗パーキンソン剤(ぺルゴリド、ロピニロール、ブロモクリプチン、セレギリン等)、気管支拡張剤(ツロブテロール、イソプレテノロール、サルブタモール等)、抗アレルギー剤(ケトチフェン、ロラタジン、アゼラスチン、テルフェナジン、セチリジン、アシタザノラスト等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン等)、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン等)、非麻薬性鎮痛薬(ブプレノルフィン、トラマドール、ペンタゾシン)、麻酔系鎮痛剤(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル等)、泌尿器官用剤(オキシブチニン、タムスロシン等)、精神神経用剤(プロマジン、クロルプロマジン等)、ステロイドホルモン剤(エストラジオール、プロゲステロン、ノルエチステロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン等)、抗うつ剤(セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム等)、抗痴呆薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン等)、抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン等)、中枢神経興奮剤(メチルフェニデート等)、骨粗しょう症治療薬(ラロキシフェン、アレンドロネート等)、乳がん予防薬(タモキシフェン等)、抗肥満薬(マジンドール、ジブトラミン等)、不眠症改善薬(メラトニン等)、抗リウマチ薬(アクタリット等)等の薬効成分が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明において、前記粘着剤層が前記他の有効成分を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される他の有効成分の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、治療目的に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、前記粘着剤層の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることがさらに好ましく、1〜3質量%であることがさらにより好ましい。
【0040】
前記酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウムが挙げられ、これらのうちの1種のみであっても2種以上の混合物であってもよい。
【0041】
本発明において、前記粘着剤層が前記酸化防止剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される酸化防止剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、例えば、前記粘着剤層の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、0.1〜1質量%であることがさらにより好ましい。
【0042】
前記可塑剤としては、例えば、シリコーンオイル;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン、スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記可塑剤としては、シリコーンオイル、流動パラフィン、及び液状ポリブテンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
本発明において、前記粘着剤層が前記可塑剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される可塑剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、例えば、前記粘着剤層の全質量に対して15〜50質量%であることが好ましく、20〜45質量%であることがより好ましく、22〜43質量%であることがさらに好ましい。
【0044】
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム等の炭酸塩;ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記充填剤としては、酸化チタン及びケイ酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
本発明において、前記粘着剤層が前記充填剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される充填剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、例えば、前記粘着剤層の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜3.5質量%であることがさらに好ましく、1〜3質量%であることがさらにより好ましい。
【0046】
前記溶解剤としては、例えば、ベンジルアルコール;ピロチオデカン;ミリスチン酸イソプロピル;クロタミトン;N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類;高級アルコール類;アジピン酸ジエチル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2−ヘプチルウンデシル)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の多塩基酸類が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明において、前記粘着剤層が前記溶解剤を含有する場合、前記粘着剤層中に含有される溶解剤の含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、例えば、前記粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0048】
本発明に係る粘着剤層としては、特に制限されないが、単位面積(貼付面の面積)あたりの全質量が80〜400g/m
2であることが好ましく、110〜380g/m
2であることがより好ましい。また、本発明に係る粘着剤層の貼付面の面積としては、治療の目的や適用対象に応じて適宜調整することができ、特に制限されないが、通常、0.5〜200cm
2の範囲である。さらに、本発明に係る粘着剤層の貼付面の形状としては、特に制限されず、丸型、楕円型、正方形型、長方形型等、任意の形状を採用することができる。
【0049】
本発明の貼付剤は、特に制限されず、公知の非水系貼付剤の製造方法を適宜採用することによって製造することができる。例えば、先ず、ノニル酸ワニリルアミド、水酸化アルミニウム、前記粘着基剤、及び必要に応じて上記のその他の成分を常法に従って混合し、均一な粘着剤層組成物を得る。次いで、この粘着剤層組成物を前記支持体層の面上(通常は一方の面上)に所望の単位面積あたり質量となるように塗布した後、必要に応じて所望の形状に裁断することにより、本発明の貼付剤を得ることができる。
【0050】
また、本発明の貼付剤の製造方法としては、前記粘着剤層の前記支持体層と反対の面上に前記剥離ライナーを貼り合わせる工程をさらに含んでいてもよく、前記粘着剤層組成物を先ず前記剥離ライナーの一方の面上に所望の単位面積あたり質量となるように塗布して粘着剤層を形成した後に、前記粘着剤層の前記剥離ライナーと反対の面上に前記支持体層を貼り合わせ、必要に応じて所望の形状に裁断することによって本発明の貼付剤を得てもよい。さらに、得られた貼付剤は、必要に応じて、保存用包装容器(例えば、アルミラミネート袋)に封入して包装体としてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、かゆみ評価・温感刺激評価試験は、それぞれ、以下に示す方法により行った。
【0052】
<かゆみ評価・温感刺激評価試験>
各貼付剤を直径40mmの円形に切断して剥離ライナーを剥離し、それぞれ、6〜30名の被験者の肩の皮膚に1枚の貼付剤を120分間貼付してもらい、貼付中における貼付部位のかゆみを、それぞれ、次のかゆみ評価の基準:
〔かゆみ評価〕
0 :かゆみを全く感じない
5 :かゆみをごくわずかに感じる
10:かゆみをわずかに感じる
20:かゆみをやや感じる
25:かゆみを感じるが許容できる
30:やや許容できないかゆみを感じる
35:許容できないかゆみを感じる
40:痛みを伴うかゆみを感じる
に従って評価してもらった。また、前記貼付中における貼付部位の温感刺激を、それぞれ、次の温感刺激評価の基準:
〔温感刺激評価〕
0 :温感刺激を全く感じない
25 :温感刺激を感じるが弱い
40 :温感刺激を感じるがやや弱い
50 :適度な温感刺激を感じる
60 :温感刺激をやや強く感じる
75 :温感刺激を強く感じる
100:強すぎる温感刺激を感じる
に従って評価してもらった。被験者から得られたかゆみ評価及び温感刺激評価の各評価の値について、得られた値の合計を被験者の人数で割って算出した平均値をそれぞれ各評価値とした。なお、かゆみ評価については25未満でかゆみとして問題はないものと認められ、温感刺激評価については40以上60未満で温感刺激として適度な温感刺激であると認められる。
【0053】
(実施例1)
先ず、ノニル酸ワニリルアミド0.012質量部、オウバク粉末1.70質量部、サリチル酸グリコール2.55質量部、l−メントール5.11質量部、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体27.24質量部、ポリイソブチレン10.00質量部、テルペン系樹脂22.0質量部、流動パラフィン27.49質量部、酸化防止剤(酢酸トコフェロール)0.43質量部、水酸化アルミニウム1.47質量部、及びその他成分(充填剤)2.00質量部を混合し、粘着剤層組成物を得た。次いで、得られた粘着剤層組成物を剥離ライナー(離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム)上に塗布して、単位面積あたり質量が294g/m
2となるように粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の前記剥離ライナーと反対の面上に支持体層(ポリエチレンテレフタレート製フィルム)を積層し、支持体層/粘着剤層/剥離ライナーの順に積層された貼付剤を得た。
【0054】
(実施例2〜4、比較例1〜2)
粘着剤層組成物の組成を下記の表1に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。下記の表1〜2中、ロジン系樹脂としてはパインクリスタル(荒川化学工業株式会社製)を用いた。
【0055】
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた貼付剤についてかゆみ評価・温感刺激評価試験を実施した。結果を各実施例及び比較例の粘着剤層組成物の組成とあわせてそれぞれ下記の表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤においては、貼付部位におけるかゆみの発生を十分に抑制することができ、かつ、温感刺激を適度な範囲内に維持できることが確認された。他方、ノニル酸ワニリルアミドに対する水酸化アルミニウムの含有量が少ない場合(比較例1)、及び、水酸化アルミニウムに代えて従来からかぶれなどの皮膚刺激抑制成分として知られているケイ酸アルミニウムを用いた場合(比較例2)には、本発明の貼付剤に比べてかゆみ評価の評価値が著しく高くなり、また、水酸化アルミニウムを含有していてもその含有量が本発明に係る範囲から外れる場合(比較例1)には温感刺激評価の評価値も適度な範囲から外れることが確認された。
【0058】
(実施例5〜9、比較例3〜6)
粘着剤層組成物の組成を下記の表2に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0059】
実施例5〜9、比較例3〜6で得られた貼付剤についてかゆみ評価・温感刺激評価試験を実施した。結果を各実施例及び比較例の粘着剤層組成物の組成とあわせてそれぞれ下記の表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示した結果からも明らかなように、本発明の貼付剤においては、貼付部位におけるかゆみの発生を十分に抑制することができ、かつ、温感刺激を適度な範囲内に維持できることが確認された。他方、水酸化アルミニウムを含有しない場合(比較例6)及び水酸化アルミニウムに代えて同じ金属の水酸化物である水酸化マグネシウムを用いた場合(比較例3)にも、本発明の貼付剤に比べてかゆみ評価の評価値が高くなってかゆみの発生を抑制できないことが確認された。
【0062】
また、実施例6〜7と比較例4との比較、及び、実施例6〜7と比較例5と実施例8〜9との比較等から明らかなように、本発明の貼付剤においては、水酸化アルミニウムの含有量が特定の範囲内(粘着剤層の全質量に対して0.55〜1.5質量%)にあり、かつ、ノニル酸ワニリルアミドの含有量が特定の範囲内(粘着剤層の全質量に対して0.01〜0.025質量%)にあることに加えて、さらに、ノニル酸ワニリルアミドの含有量と水酸化アルミニウムの含有量との質量比も特定の範囲内(ノニル酸ワニリルアミドの含有量:水酸化アルミニウムの含有量=1:27〜1:150)にあることにより、かゆみの発生を十分に抑制することができ、かつ、温感刺激を適度な範囲内に維持できるのに対して、これらの条件のうちのいずれか1つでも外れると(例えば、比較例4、比較例5)、かゆみ評価の評価値が高くなってかゆみの発生を抑制できないことが確認された。