(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電池特性の変化が小さい電池特性低変化領域と、電池特性の変化が前記電池特性低変化領域よりも大きい電池特性急峻変化領域と、を有する電池の許容電流を演算する電池制御装置において、現在の状態から所定時間後に前記電池特性急峻変化領域に入る場合、現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値を用いて電池特性値を算出し、前記電池特性値を用いて許容電流を演算する許容電流演算部を有し、前記電池特性は、SOC−OCV特性と、SOC−抵抗特性と、温度−分極抵抗特性と、の少なくとも何れかであることを特徴とする電池制御装置。
請求項1に記載の電池制御装置において、前記現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値は、前記電池特性急峻変化領域内における最大の傾きの絶対値以下であることを特徴とする電池制御装置。
請求項2に記載の電池制御装置において、前記現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値は、前記電池特性急峻変化領域内における最大の傾きの絶対値であることを特徴とする電池制御装置。
電池特性の変化が小さい電池特性低変化領域と、電池特性の変化が前記電池特性低変化領域よりも大きい電池特性急峻変化領域と、を有する電池と前記電池の許容電流を演算する電池制御装置と、を有する電池システムにおいて、前記電池制御装置は、現在の状態から所定時間後に前記電池特性急峻変化領域に入る場合、現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値を用いて電池特性値を算出し、前記電池特性値を用いて許容電流を演算する許容電流演算部を有し、前記電池特性は、SOC−OCV特性、SOC−抵抗特性と、温度−分極抵抗特性と、の少なくとも何れかであることを特徴とする電池システム。
電池特性の変化が小さい電池特性低変化領域と、電池特性の変化が前記電池特性低変化領域よりも大きい電池特性急峻変化領域と、を有する電池と前記電池と電気的に接続されるモータと、エンジンと、前記エンジンと前記モータとの出力比を演算する車両制御装置と、を備えた車両において、前記車両制御装置は、現在の状態から所定時間後に前記電池特性急峻変化領域に入る場合、現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値を用いて電池特性値を算出し、前記電池特性値を用いて前記エンジンと前記モータとの出力比を演算する出力比演算部を有し、前記電池特性は、SOC−OCV特性と、SOC−抵抗特性と、温度−分極抵抗特性と、の少なくとも何れかであることを特徴とする車両。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対応するため、エネルギーの有効利用が可能な電池に注目が集まっている。特に、移動体向け蓄電装置や系統連系安定化用蓄電装置といった電池システムは、化石燃料への依存度を下げることが可能であるため、一層の普及が期待されている。これらシステムの性能を引き出すには電池の充電率(State of Charge、以下SOCと略す)や劣化度(State of Health、以下SOHと略す)、充放電可能な最大電流(許容電流)といったパラメータを用いた適切な充放電制御や、各電池の充電率均等化が必要である。これらを実現するため各電池には電池電圧計測用の回路(セルコントローラ)が取り付けられ、これらセルコントローラから送信される情報に基づき中央演算処理装置(CPU)を搭載したバッテリコントローラが前記演算や動作を実行する。
【0003】
中でも許容電流演算は、電池の過電圧による劣化、異常反応を防ぐための安全機能の一部であり、これらを起こさないよう充分小さな電流を出力することが求められる。しかし、安全制御をするために過剰に小さな電流値を出力してしまうと、これにより電池の出力を過剰に制限してしまい、電池を用いる利点を損ねてしまう。安全性と高出力を両立する許容電流演算を行うには、電池が過電圧とならない最大の電流値を算出することが望まれる。
【0004】
電池が過電圧とならない最大電流を演算するためには、電池の開放電圧(Open Circuit Voltage、以下OCVと略す)や内部抵抗情報等の電池の内部状態やパラメータを使う必要がある。また、最大電流を印加する時間を考慮して、電流印加後の電池状態を予測することも重要となる。特に、急な入出力を求められる移動体向け蓄電装置では、SOCが短時間で変動するため、SOC変化に伴うOCVの予測傾きに応じて電池パラメータを補正し、電池状態を予測する必要がある。しかし、あるSOCでOCVが急峻に変化するような急峻変化領域がある場合は、この予測が困難である。
【0005】
許容電流演算に関する先行技術には特許文献1がある。この文献では、電流を印加してから任意時間後X秒目の内部抵抗、上下限電圧、現在のOCVから許容電流を演算している。一方、急峻な変化領域を有する電池の制御を対象としていないため、全SOC領域で同一の許容電流演算処理を行っている。しかし、急峻変化領域を有する電池を安全性と高出力を両立した上で制御するには、これを加味した制御構築が必須である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1から8を用いて実施例1から5を説明する。
【0012】
《実施例1》
以下、第一の実施例について説明する。
図1に本発明にかかる電池システムを示す。この構成は移動体向け蓄電装置、系統連系安定化用蓄電装置等幅広い用途で使用される形態であり、電力を蓄える電池システム1と、電池システム1に対し充放電を行うインバータ104と、インバータに接続された負荷105と、電池システム1やインバータ104を制御する上位コントローラ103から構成される。
【0013】
電池システム1は、電力の蓄電や放電及びこれらに必要な制御値であるSOCや許容電流等の電池の制御値演算を行う。上位コントローラ103は、負荷105の状態や電池システム1が出力した電池の制御値、その他外部からの指令に応じ電池モジュール100の制御や、インバータ104に対する電力の入出力指令を行う。インバータ104は上位コントローラ103からの指令に従い、電池モジュール100及び負荷105に対して電力の入出力を行う。負荷105は例えば三相交流モータや電力系統である。
【0014】
電池モジュール100の出力する電圧は充電率に応じて変化する直流電圧であり、多くの場合交流を必要とする負荷105へ電力を直接提供することはできない。そこで、インバータ104は必要に応じ直流から交流への変換や電圧の変換を行う。このような構成にすることで、電池システムは負荷に適した出力を適宜供給することが可能となる。以下、この構成を実現するための電池システム1の構成について述べる。
【0015】
電池システム1は電池モジュール100と、電池情報取得部101と、電池制御装置102から構成され、電力の蓄電・放電をし、SOC・許容電流といった電池の制御値を演算する。
【0016】
電池モジュール100は複数の電池から構成される。各電池は電池モジュール100に要求される出力電圧や容量に応じ、直列、又は並列に接続されている。この直列数は、電池の出力電圧がそのSOCに応じ変化することを考慮して決定する。
【0017】
電池情報取得部101は、電池に流れる電流値を測定する電流センサ106、電池表面温度を測定する温度センサ107、電池電圧を測定する電圧センサ108から成る。
【0018】
電流センサ107は電池モジュール100と外部との間に1つ、もしくは複数設置する場合がある。1つ設置した場合にはコストを最小限に抑えることが可能である。複数設置した場合には並列接続している電池間の電流配分を把握することが可能である。
【0019】
電圧センサ108は各電池に1つ設置する。これにより各電池間の電圧差測定が可能となり、これを元にした各電池電圧の均等化制御が可能となる。
【0020】
温度センサ107も電池モジュール100内の温度差を把握するために1つ、もしくは複数設置する。1つ設置した場合には、最小限のコストで電池モジュール100内の最高温度になる予測できる地点の温度を計測できる。複数設置した場合には、電池モジュール100内の温度ばらつきを計測することで、最低温度や最高温度を考慮した制御構築が可能となる。
【0021】
電池制御装置102は主に電池等価回路モデル演算部109、電池劣化度演算部110、許容電流演算部111から成る。電池の等価回路モデル演算部109は電池情報取得部101が出力した電流、温度、電圧の情報からSOC、OCV、分極の影響等といった電池内部情報を算出する。電池劣化度演算部110はこの情報を元に電池の劣化度であるSOHを演算する。許容電流演算部111はこのSOH及び電池の内部情報を元にして充放電可能な最大電流である許容電流を演算する。電池制御装置102は、これら電池等価回路モデル演算部109と電池劣化度演算部110、許容電流演算部111が演算した電池の内部状態やSOH、許容電流を上位コントローラに出力する。このように上位コントローラ103に電池の制御に必要な情報を出力する構成にすることで、上位コントローラ103は電池状態を考慮した上で、負荷に対応した電力出力指令を電池に送ることができる。
【0022】
電池等価回路モデル演算部109は電池の等価回路を用いてSOC等の電池内部状態を演算する。演算に用いる電池等価回路モデルの構成を
図2に示す。本実施例で使用する電池等価回路モデルは、OCVを電圧源200で、電解液の抵抗等を表現する直流抵抗を抵抗201で、電解液中のイオンの濃度分極等に由来する分極部202の抵抗成分を抵抗203で、分極容量成分をキャパシタ204でそれぞれ表現し、これらの足し合わせで電池の現在の電圧(Closed circuit voltage、以下CCVと略す)を表現する。なお、本実施例では分極項を1個としているが、複数個用いて高精度化を図ってもよい。この等価回路モデルを用いることで、前述した電池情報取得部101で測定した電流値,電圧値,温度の各電池情報から、現在の電池のSOCやOCV,分極電圧、各部の抵抗等の演算が可能となる。このようにすることで、分極等全情報を足し合わせた情報である電池電圧値を分離し、直接測定することができない現在の電池の内部状態を間接的に得ることができる。
【0023】
続いて許容電流演算部111の構成を
図3に示す。許容電流演算部111の目的は充放電可能な最大電流である許容電流を算出することである。充放電可能な最大電流とは、電流を印加した時のCCVが、電池の劣化及び暴走を防ぐために設定した上下限電圧に到達しないような最大の電流となる。本実施例では電流印加n秒後の電圧が上限電圧4.2V、下限電圧2.8Vを超えないように演算する。この許容電流演算部111は、SOC−OCV急峻変化領域判断部300、SOC補正部301、電池特性パラメータマップ部302、許容電流計算部303から成る。
【0024】
許容電流を演算するためには、SOCに対する電池の特性、例えばSOCとOCVの関係を考慮する必要がある。そこで、演算を行う際にはSOCとOCVの関係を離散的にマッピングしたパラメータマップを用いて、あるSOCにおけるOCVの値を求める。離散値から連続値への変換は、例えば線形的な内挿により行う。これにより、少ないデータ量で電池の各特性間の関係を参照することが可能となる。
【0025】
しかし、電池には、SOCに対して電池状態が急峻に変化する領域を有するものがある。この急峻変化領域の一例としては、黒鉛の脱挿入反応のステップ構造等により電池の電極の反応エネルギーがSOC範囲によって異なるために、SOCに対してOCVが線形的な振る舞いから乖離する場合が挙げられる。そこで、例えば
図4に示したようなSOC−OCV曲線を持つ電池では、急峻変化領域400、401ではOCV傾きの代表値を使ってOCVを求め、急峻変化領域以外、つまり低変化領域402、403ではOCVの傾きの代表値を使わずに別処理をする。急峻変化領域とは、例えばSOC1%毎のOCVの傾きが、SOC1%間で1mV/%以上異なる傾きとなっている領域である。この領域の定義は、適宜許容電流の目標精度によって決める。
【0026】
そして許容電流演算部111は、急峻変化領域近傍では常にOCVの傾きとしてその範囲内のOCVの傾きの最大値を用いることで上下限電圧を超過しないような制御をする。本実施例では、急峻変化領域近傍とは、急峻変化領域があるデータ間全域と定義する。例えば電池特性パラメータマップ部302がOCVをSOC10%毎にパラメータマップとして実装している場合、急峻変化領域近傍は急峻変化領域が属するデータ間10%の範囲となる。なお、この電池特性パラメータマップ部302は、RAM等の記憶部として機能する記憶装置を使用することが出来る。
【0027】
SOC−OCV急峻変化領域判断部300は、電池特性パラメータマップ部302にあらかじめ定めていたデータ点間に、この急峻に変化する領域がある場合に、上下限電圧を超過しないような処理が必要か判断する。具体的には、あらかじめ定めていた急峻変化領域400、401の情報と現在の電池のSOC情報を比較することで、補正が必要な領域であるか否かを判断する。補正処理が不要な場合は電池等価回路モデル演算部109が出力したSOC情報を電池特性パラメータマップ部302にSOC情報を出力し、補正が必要な領域である場合にはSOC補正部301へSOC情報を出力する。
【0028】
SOC補正部301は、入力されたSOC情報を電池特性パラメータマップ部302に格納したOCVの傾き代表値を参照するSOC代表値に補正し、電池特性パラメータマップ部302へ出力する。このOCVの傾き代表値は、急峻変化領域内でOCVの傾きの最大値とする。これにより、急峻変化領域近傍でも安全性と高出力を両立した許容電流演算が行える。
【0029】
電池特性パラメータマップ部302は、SOC情報,温度,電流値に対応した上下限電圧,直流抵抗値,分極項,OCVの傾きを出力する。これらのデータはマップデータとして格納されている。電池特性パラメータマップ部302に入力された値がマップデータの格子点上の値である場合はマップデータの参照値をそのまま出力する。入力された値がマップデータの格子点間の値である場合は、それぞれの値から、上限電圧,直流抵抗,分極抵抗,OCVの傾きをマップデータ間の内挿処理により算出する。なおOCVの傾きに関しては、SOC代表値が入力された場合は、それに対応するOCVの傾き代表値を参照し、これを用いてOCVを演算する。このように急峻変化領域400、401とそれ以外の領域(低変化領域402、403)の処理を分けることで、現在の状態から所定時間後に電池特性急峻変化領域に入る場合でも安全性と高出力を両立した制御が可能となり、またそれ以外の場合は通常の処理同様の高出力性を維持することが可能となる。
【0030】
許容電流計算部303は、パラメータマップ302からの情報を用いて許容電流を(式1)を用いて計算する。
【0032】
V
limitは上下限電圧、OCV
0は現在のOCV、V
P_0は現在の分極電圧、R
DCは抵抗201に対応する直流抵抗、G
OCVはn秒許容電流印加間に変化するOCV量を電流値で割ったもの、R
Pはn秒間電流を印加した後の直流抵抗値からR
DCを引いた値(以後n秒目分極抵抗)である。
図3では充放電方向を考慮していないように記載しているが、実際の制御では充放電方向によってn秒後の電池電圧予測方向が異なるため、充放電に分けて2つの処理を行う。
【0033】
具体的な制御フローについては
図5を用いて説明する。制御フローはステップS100からS106からなる。制御フローはステップS100より開始する。ステップS100は、電池等価回路モデル演算部109から許容電流演算部111への電池情報入力に対応し、制御フローの呼び出し元からSOCやOCV等の電池情報を受け取り、ステップS101へと渡す。
【0034】
ステップS101はSOC−OCV急峻変化領域判断部300での処理に対応し、SOCが前述した急峻変化領域近傍であるかを判断する。急峻変化領域近傍である場合はステップS102に進み、急峻変化領域近傍でない場合はステップS103に進む。
【0035】
ステップS102では、SOC補正部301での演算に対応し、SOCを、そのSOCが含まれる急峻変化領域に対応するSOC代表値に補正し、ステップS104に進む。SOC代表値とは、上述した通りOCVの傾き代表値(最大値)に対応するSOC値である。本実施例では、
図4に示したように急峻変化領域400、401を有する。SOC10%毎のマップデータとしてOCV傾きを格納しているので、例えば急峻変化領域400の放電方向の許容電流演算においては、SOC10〜20%であれば、SOC代表値である20%に補正し、SOC0〜10%であればSOC代表値である10%に補正している。一方、急峻変化領域401の充電方向の許容電流演算においては、SOC70〜80%であればSOC代表値である70%に補正している。この代表値と範囲の判断基準は、データマップの数、求められる高出力と安全性の程度によって異なるため、そのシステム毎に設計する事が可能である。
【0036】
一方、ステップS103では現在のSOCをそのまま選択し、ステップS104に進む。
【0037】
ステップS104は、SOC代表値からOCVの傾き代表値をマップデータから参照する、電池特性パラメータマップ部302の演算に対応する。直前のステップがステップS102の場合はSOCとしてSOC代表値が来ているのでこれに対応するOCVの傾き代表値を参照する。直前のステップがステップS103の場合、現在のSOC値が来ているのでOCVの傾きのマップデータ間を内挿処理し、対応するOCVの傾きを求める。
【0038】
そして最後にステップS105へと進む。ステップS105は許容電流計算部303での処理に対応し、求めたOCV又はOCVの傾き代表値と、ステップS100で受け取った他の値と共に許容電流演算を行う。このOCV又はOCVの傾き代表値で分ける処理により、急峻変化領域400、401とそれ以外の領域(低変化領域402、403)の両方で、高出力性と安全性を両立した許容電流演算が可能となる。
【0039】
また、本発明の電池に用いられる負極材料は黒鉛又はシリコンを主剤とする活物質が用いられる。このような物質は特に急峻変化領域と低変化領域の差がはっきりしており、制御が容易だからである。
【0040】
以上、簡単に本実施例をまとめる。本実施例に記載の電池制御装置102は、電池特性の変化が小さい電池特性低変化領域402と、電池特性の変化が前記電池特性低変化領域よりも大きい電池特性急峻変化領域400、401と、を有する電池の許容電流を演算する電池制御装置102において、現在の状態から所定時間後に電池特性急峻変化領域400、401に入る場合、現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値を用いて電池特性値を算出し、電池特性値を用いて許容電流を演算する許容電流演算部111を有する。このような構成にすることによって、SOC−OCV曲線に変曲点、つまり急峻変化領域を有するような電池であっても、実装するデータ量を増やすことなく、許容電流印加後の電池情報を適切に予測し、安全方向に制御することが可能となる。また、データ量を余分に増やすことがないのでデータ容量に制限があるような系でも実装が可能となる。
【0041】
《実施例2》
続いて実施例2について説明する。実施例1ではOCV傾きにのみ傾き急変の影響を考慮していたが、SOC等の電池状態に応じて変化する値はOCVだけではなく、抵抗201の抵抗値やn秒目分極抵抗も変化する。また、直流抵抗等にはSOCだけでなく、温度や電流値も影響を与える。そこで本実施例では実施例1で示したSOCの補正に加え、温度及び電流についても補正する構成について、
図6を用いて説明する。なお、既に
図1から
図5で説明した部分については説明を省略する。本実施例と実施例1との構成の違いは、SOC以外の電池状態に対しても急峻変化領域か否かの判断を行う電池状態急峻変化領域判断部500と、電池状態SOC,温度,電流全てをそれぞれの代表値に補正する電池状態補正部501である。
【0042】
図6は第2の実施例である。本実施例のSOC−OCV急峻変化領域判断部500はSOC−OCV急峻変化領域判断部300と同様に、SOCや電流、温度によりOCVの傾きや抵抗201、n秒目分極抵抗が急峻に変化する急峻変化領域近傍にあるか判断する。そして判断結果及びSOC、電流、温度をSOC補正部501に出力する。
【0043】
SOC補正部501はSOC、電流、温度がOCV傾き代表値や、これと同様にして定める抵抗201代表値、分極202の抵抗代表値を参照する値となるよう、それぞれに対応した代表値に補正し、電池特性パラメータマップ部302に出力する。
【0044】
このように本実施例では電流や温度についても補正を行い抵抗201やn秒目分極抵抗に関しても代表値を参照するようにすることで、SOC―OCV以外にSOC−抵抗R
DCやT−分極項R
DC等の傾きが急変しうる値に関しても、実施例1のOCV傾き同様に安全性と出力の両立が可能となる。
【0045】
以上、本実施例について簡単にまとめる。本実施例では、SOC補正部501がSOC、電流、温度がOCV傾き代表値や、これと同様にして定める抵抗201代表値、分極202の抵抗代表値を参照する値となるよう、それぞれに対応した代表値に補正し、電池特性パラメータマップ部302に出力することとした。このような構成にすることによって、OC―OCV以外にSOC−抵抗R
DCやT−分極項R
DC等の傾きが急変しうる値に関しても、実施例1のOCV傾き同様に安全性と出力の両立が可能となる。
【0046】
《実施例3》
続いて実施例3について説明する。実施例1、2がOCVの傾き等の代表値を最大値と定めていたが、安全性を特に考慮して最大値以下の値を用いることも可能である。つまり、実施例3では代表値は現在のOCVの傾きの絶対値よりも大きな値とし、当該区間のOCVの傾き最大値以下とした点が第1の実施例、及び第2の実施例と異なる。これにより、過度に許容電流を抑えすぎず、安全に方向に処理できるため、電池の特性が想定外の変化をした場合でも電池の安全性を保ちやすくなる。
【0047】
以上、簡単に本実施例についてまとめる。本実施例では、OCVの傾き等の代表値を傾きの最大値以下とした上で現在のOCVの傾きの絶対値よりも大きな値とした。このような構成にすることによって、許容電流制御において、過度に許容電流を抑えすぎず、安全性を向上させることが出来る。
【0048】
《実施例4》
続いて実施例4について説明する。上記実施例1、実施例2、及び実施例3では傾き情報を新たにマップデータとして導入しているが、本実施例では急峻変化領域近傍において、他の区間とは異なるマップデータとした構成としている。詳細については
図7を用いて説明する。なお、
図1から6で説明した部分については説明を省略する。この構成では、許容電流演算部111はSOC−OCV急峻変化領域対応済電池特性パラメータマップ部600と許容電流演算部303から成る。
【0049】
SOC−OCV急峻変化領域対応済電池特性パラメータマップ部600は、電流センサ106、温度センサ107、電池等価回路モデル演算部109から電池状態を受け取り、これを元に電池の上限電圧V
limitやR
DC等を出力する。ここで、SOC−OCV急峻変化領域対応済電池特性パラメータマップ部600には、急峻変化領域におけるデータ点数を増やした詳細なパラメータマップを導入する。これにより急峻変化領域近傍における各パラメータの誤差を減らしている。データ点数は全域で増やしてもよいが、急峻変化領域と他の電池特性低変化領域とをデータ点数で差別化することで、データ点数の増加を最小限に抑えつつ急峻変化領域で傾きが上昇し安全方向に制御する。データ点数は増えてしまうことが課題であるが、この構成でも急峻変化領域を判断し安全性と高出力を両立させることが可能となる。
【0050】
以上、本実施例について簡単にまとめる。本実施例では、直接測定したSOC−OCV急峻変化領域の傾きを用いるのではなく、あらかじめ記憶したSOC−OCV急峻変化領域対応済電池特性パラメータマップ部600を用いて許容電流制御を行った。このような構成にすることによって、直接測定されたデータを演算する際に載る誤差をデータに取り込まないため、継続して正確な許容電流制御を行うことが可能となる。
【0051】
《実施例5》
最後に実施例5を説明する。本実施例ではハイブリッド車両において電池特性の急峻変化領域を考慮した構成について説明する。車両のハイブリッドシステムの構成を
図8に示す。この車両のハイブリッドシステムは、電池システム700、インバータ701、モータ702、ハイブリッドコントローラ703、エンジン704、タイヤ705から構成される。
【0052】
電池システム700は実施例1に示したように適宜急峻変化領域に対応して許容電流の情報等をハイブリッドコントローラ703に送る。タイヤ705を駆動する場合、ハイブリッドコントローラ703は、電池システム700からの情報、エンジン704の状態等を把握し、タイヤ705から必要な駆動力を出力できるようエンジン703とモータ701の出力比率を決定し各部に指令を出す。その指令を元に、電池システム700はインバータ701に電力を供給し、モータ702を駆動する。エンジン704も同様に指令を元に動作し、モータ702の出力とあわせタイヤ705を駆動する。
【0053】
車両を減速するためにタイヤ705を用いて運動エネルギーを回生し、電力をモータ702経由で電池システム700に供給する場合でも同様に、回生可能な電力をハイブリッドコントローラ703が電池システム700の情報等から判断し、電力回生する。このように、電池特性の急峻変化領域に応じて演算した許容電流を介してモータやエンジンの出力比率を決定することで、入出力負荷の要求を満たし、かつ電池の安全性と、電池の高出力、すなわち低燃費との両立が可能となる。
【0054】
以上、本発明について簡単にまとめる。本発明に記載の電池制御装置102は、電池特性の変化が小さい電池特性低変化領域402と、電池特性の変化が前記電池特性低変化領域よりも大きい電池特性急峻変化領域400、401と、を有する電池の許容電流を演算する電池制御装置102において、現在の状態から所定時間後に電池特性急峻変化領域400、401に入る場合、現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値を用いて電池特性値を算出し、電池特性値を用いて許容電流を演算する許容電流演算部111を有する。このような構成にすることによって、SOC−OCV曲線に変曲点、つまり急峻変化領域を有するような電池であっても、実装するデータ量を増やすことなく、許容電流印加後の電池情報を適切に予測し、安全方向に制御することが可能となる。また、データ量を余分に増やすことがないのでデータ容量に制限があるような系でも実装が可能となる。
【0055】
また、本発明に記載の電池制御装置102は現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値は、電池特性急峻変化領域400、401内における最大の傾きの絶対値以下である。このような構成にすることによって、許容電流制御において、過度に許容電流を抑えすぎず、安全性を向上させることが出来る。
【0056】
また、本発明に記載の電池制御装置102は、現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値は、電池特性急峻変化領域400、401内における最大の傾きの絶対値である。このような構成にすることによって、最大限安全を考慮した上で許容電流制御を行うことが可能である。
【0057】
また、本発明に記載の電池制御装置102は、電池に用いられる負極材料には黒鉛又はシリコンを主剤とする活物質が用いられる。このような物質は特に急峻変化領域と低変化領域の差がはっきりしており、制御が容易だからである。
【0058】
また、本発明に記載の電池制御装置102は、さらに記憶部を有し、記憶部にはSOC−OCV特性のマップデータが記憶されており、現在の電池特性の傾きの絶対値は前記マップデータから算出されたものである。このような構成にすることによって、直接測定されたデータを演算する際に載る誤差をデータに取り込まないため、継続して正確な許容電流制御を行うことが可能となる。
【0059】
また、本発明に記載の二次電池システム1は、電池特性の変化が小さい電池特性低変化領域402と、電池特性の変化が電池特性低変化領域402よりも大きい電池特性急峻変化領域400、401と、を有する電池と電池の許容電流を演算する電池制御装置102と、を有し、電池制御装置102は、現在の状態から所定時間後に電池特性急峻変化領域400、401に入る場合、現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値を用いて電池特性値を算出し、電池特性値を用いて許容電流を演算する許容電流演算部111を有する。
【0060】
また、本発明に記載の車両は、電池特性の変化が小さい電池特性低変化領域402と、電池特性の変化が電池特性低変化領域402よりも大きい電池特性急峻変化領域400、401と、を有する電池と電気的に接続されるモータ702と、エンジン704と、エンジン704とモータ702との出力比を演算する車両制御装置703と、を備え、車両制御装置は、現在の状態から所定時間後に電池特性急峻変化領域400、401に入る場合、現在の電池特性の傾きの絶対値よりも大きな値を用いて電池特性値を算出し、電池特性値を用いてエンジン704とモータ702との出力比を演算する出力比演算部を有する。このような構成とすることによって、入出力負荷の要求を満たし、かつ電池の安全性と、電池の高出力、すなわち低燃費との両立が可能となる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。