(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)実施形態に係る樹脂ボード(構造体の一例)
以下、本発明の一実施形態である樹脂ボードの構造について説明する。実施形態に係る樹脂ボードは、収納式多目的シートの座面を構成する部材である。
図1は、実施形態に係る収納式多目的シート100の斜視図である。収納式多目的シート100は、樹脂ボード1と収納部5を含む。
樹脂ボード1には、主として座面として多目的に使用される樹脂積層体2と、樹脂積層体2に取り付けられたパイプ3とを含む。パイプ3はその一部が樹脂積層体2に覆われている。パイプ3のうち樹脂積層体2に覆われずに露出した部分は、収納部5に取り付けられ、それによって樹脂ボード1の樹脂積層体2がパイプ3の軸回りに回動可能に構成されている。なお、樹脂ボード1のパイプ3と収納部5の連結構造は図示しないが、収納部5と適切に連結するために、パイプ3の軸回りの回転方向の位置について高い精度が求められている。
【0015】
図1は、収納式多目的シート100が使用状態である場合を示しているが、不使用状態である場合には、樹脂ボード1の樹脂積層体2がパイプ3の軸回りに回動して収納部5の凹部5aに収納されるように構成されている。
【0016】
次に、
図2〜4を参照して、実施形態に係る樹脂ボード1の構造についてより詳細に説明する。
図2は、実施形態に係る樹脂ボード1の平面図である。
図3は、
図2のA−A断面を示す断面図である。
図4は、実施形態に係る樹脂ボード1の組立方法を説明する図である。
【0017】
図2に示すように、樹脂ボード1は全体として略矩形の板状の部材であり、その短辺に相当する端部から離間した状態でパイプ3が短辺に並行に配置されている。パイプ3の中央部3Cは樹脂積層体2に内蔵されており(つまり、樹脂で覆われており)、パイプ3の右端部3Rおよび左端部3Lは、収納部5との連結のために露出している。
図3に示すように、樹脂積層体2は、おもて側に形成される第1の樹脂シート21と、主として裏側に形成される第2の樹脂シート22と、第1の樹脂シート21と第2の樹脂シート22の間に介在する芯材23とからなる積層構造を有している。第1の樹脂シート21は、収納式多目的シート100の座面となるシートである。
【0018】
第1の樹脂シート21及び第2の樹脂シート22は共に非発泡樹脂であり、その樹脂材料は、限定されないが、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。
【0019】
芯材23は例えば熱可塑性樹脂を用いて成形される。その樹脂材料は限定しないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のアクリル誘導体のいずれか、又は2種類以上の混合物を含む。芯材23は樹脂ボード1の体積に占める割合が大きく、軽量化のために発泡剤を用いて発泡させた発泡樹脂であることが好ましい。芯材23となる発泡樹脂の発泡倍率は、例えば10〜60倍の範囲であり、代表的には30倍である。なお、発泡倍率とは、発泡前の混合樹脂の密度を、発泡後の発泡樹脂の見かけ密度で割った値である。
【0020】
パイプ3は、強磁性体の金属製であり、必要に応じて表面の滑り性を良くするため、メッキ等の表面処理を施してもよい。パイプ3の断面形状は特に限定されないが、樹脂積層体2に内蔵されている中央部3Cの断面形状は、樹脂ボード1の完成後にパイプ3が中心軸回りに回転してしまい収納部5との連結が困難になることがないように(すなわち、パイプ3の中心軸回りの位置を精度良く維持するために)、非円形の形状であることが好ましい。
図3に示す例では、パイプ3の中央部3Cの断面形状は、非円形の形状として楕円形状としているが、この形状に限定されず、例えば多角形の形状でもよい。
パイプ3の右端部3Rおよび左端部3Lの断面形状は、連結先の収納部5の形状に応じて適宜設計される。
パイプ3の少なくとも一方の端部には、樹脂積層体2を成形するときにパイプ3の軸回りの回転を規制するための切欠きが設けられているが、この点については後述する。
【0021】
本実施形態の樹脂ボード1の製造方法では、後述する真空成形によって樹脂積層体2を成形し、成形後の樹脂積層体2を基に樹脂ボード1を組み立てる。
図4の段階S1〜S3は、成形後の樹脂積層体2を基に樹脂ボード1を組み立てるときの各段階を順に示している。
図4の段階S1は、樹脂ボード1の樹脂積層体2の成形直後の状態を示している。樹脂積層体2の成形直後では、第2の樹脂シート22は、第1の樹脂シート21に対して、樹脂ボード1の長辺が延びる方向において長く形成されており、その長く形成された第2の樹脂シート22の端部を折り返すことでパイプ3の中央部3Cを樹脂積層体2に内蔵する。
【0022】
より具体的には、
図4の段階S1に示すように、後述する成形直後の第2の樹脂シート22は、樹脂ボード1の長辺が延びる方向において、ヒンジHとなる薄肉部と、当該薄肉部よりも外側にあるシート端部22aとを含む。シート端部22aの端は、第2の樹脂シート22のシート端22eである。
【0023】
次に、
図4の段階S2に示すように、段階S1の状態からヒンジHを中心にして第2の樹脂シート22のシート端部22aを第1の樹脂シート21側に折り返す。それによって、第2の樹脂シート22のシート端22eと第1の樹脂シート21の段部21sとが当接し、第1の樹脂シート21の段部21s近傍において、樹脂ボード1のおもて面が平滑面となる。第2の樹脂シート22のシート端部22aを折り返した後、ドリル等の開孔装置(図示せず)を使用して孔221を開ける。
最後に、
図4の段階S3に示すように、孔221からリベットR(
図1に示すように樹脂ボード1全体として2箇所)を挿入する。それによって第2の樹脂シート22のシート端部22aが第1の樹脂シート21に固定され、樹脂ボード1が完成する。
【0024】
(2)樹脂ボードの製造方法
次に、本実施形態の樹脂ボード1の製造方法について説明する。
【0025】
(2−1)成形前の準備工程
先ず、樹脂ボード1を製造するにあたって、成形前の準備工程について
図5〜11を参照して説明する。
図5は、実施形態に係る樹脂ボード1の製造に用いられる製造装置の一部を示す図である。
図6は、保持部材60R,60Lの動作を説明する図である。
図7は、パイプ3が分割金型51に挿入される前後において、分割金型51の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
図8は、パイプ3が分割金型51に挿入される前後において、ボールプランジャ(後述する)の動作を説明する図である。
図9は、実施形態に係る樹脂ボード1に含まれるパイプ3について、
図6の矢視G,Hから見た図である。
図10は、一方の保持部材60Rについて
図6の矢視G,Iから見た図である。
図11は、パイプ3と一方の保持部材60Rの係合動作を説明する図である。
【0026】
本実施形態に係る樹脂ボード1の製造方法では、分割金型51,52を用いて樹脂積層体2を成形する間にパイプ3が変位または回転することがないように、成形前に、保持部材60R,60Lの少なくともいずれか一方を用いてパイプ3を分割金型51の成形面51aに固定させる。以下で説明する例では、保持部材60Rによってパイプ3の中心軸回りの回転が規制される。
図5は、一方の分割金型51の成形面51aに直交する方向から見た図であり、パイプ3が保持部材60R,60Lによって保持された状態を示している。パイプ3が保持部材60R,60Lによって保持された状態では、保持部材60R,60Lはそれぞれパイプ3の右端部3R,左端部3Lを覆うように構成されている。
【0027】
保持部材60R,60Lのそれぞれの一端はロッド70R,70Lに連結されている。アクチュエータ80R,80Lはそれぞれ、ロッド70R,70Lがパイプ3の中心軸に沿って進退するようにロッド70R,70Lを駆動し、それによって保持部材60R,60Lを駆動するように構成されている。
【0028】
以下、
図6を参照して、保持部材60R,60Lによってパイプ3を保持する方法について説明する。
図6において、段階S10では、保持部材60R,60Lがパイプ3の外周面のうち右端部3R,左端部3Lを覆わない位置(第1位置の一例)にあり、段階S11では、保持部材60R,60Lがパイプ3の外周面のうち右端部3R,左端部3Lを覆う位置(第2位置の一例)にある。
分割金型51には、パイプ3を支持するためのパイプ支持部40が設けられている。
【0029】
図6の段階S10において先ず、作業者またはマニピュレータ(図示せず)によって、パイプ3を分割金型51のパイプ支持部40にセットする。詳しくは後述するが、分割金型51のパイプ支持部40は、パイプ3に合わせた形状の凹みが設けられており、この凹みの中に、パイプ3の回転方向の位置が適切となるようにして作業者またはマニピュレータがパイプ3をセットする。
図6に示すように、分割金型51のパイプ支持部40には、パイプ3の右端部3R、中央部3C、および、左端部3Lの表面と接触する位置に磁石Mが埋め込まれており、磁力によって強磁性体のパイプ3が分割金型51に固定(仮保持)されるため、段階S10においてパイプ3が落下することはない。
なお、
図6に示す例では、パイプ3の軸方向の概ね全域に対応して磁石Mが埋め込まれているが、この例に限られない。磁石Mによってパイプ3を仮保持できる限り、パイプ3の一部の領域(例えば、中央部3Cに対応する領域のみ)に対応して磁石Mが埋め込まれていてもよい。
【0030】
図6に示すように、パイプ3の中央部3Cの外周面に対向するパイプ支持部40には、1又は複数の引き込み孔DPが形成されていることが好ましい。引き込み孔DPは、後述する成形工程において溶融樹脂を賦形するときに、分割金型51の成形面51aとパイプ3の中央部3Cの間の狭まった領域に溶融樹脂を効果的に引き込むことができるように設けられている。パイプ3の中央部3Cと、中央部3Cに対応する成形面51aの部位とは、互いに接触しているが、両者の形状の寸法誤差及び/又は両者の表面粗さの違いから両者の間には僅かな間隙が形成されており、その間隙を通して成形時に空気を吸引し、分割金型51の成形面51aとパイプ3の中央部3Cの間の狭まった領域に溶融樹脂を効果的に引き込むことができる。
【0031】
次に、段階S11において、アクチュエータ80R,80Lを制御して、保持部材60R,60Lを互いに近接する方向に移動させる。それによって、保持部材60Rがパイプ3の右端部3Rを覆う位置まで移動し、保持部材60Lがパイプ3の左端部3Lを覆う位置まで移動する。このとき、樹脂積層体2の成形中にパイプ3が回転することがないように、パイプ3が保持部材60Rの内部で固定される。
【0032】
ここで、
図6の段階S10において、パイプ3を分割金型51のパイプ支持部40にセットする方法について、
図7を参照して説明する。
図7には、パイプ3の右端部3Rがセットされるパイプ支持部40の一部を拡大して示している。
パイプ支持部40はパイプ3を支持する部分であり、分割金型51に設けられている。
図7に示すように、パイプ支持部40は、パイプ3の一端である右端部3Rの端面に当接する端面44R(当接面の一例)と、右端部3Rの他端である左端部3Lの端面から端面44Rに向かう方向に、左端部3Lの端面を付勢する付勢手段と、を備えてもよい。付勢手段の一例として、以下の説明では、ボールプランジャ48を挙げる。
【0033】
図7の上側の図(パイプ挿入前の状態を示す図)に示すように、分割金型51のパイプ支持部40は、パイプ3の外周面の一部をパイプ3の軸方向の全域で載置面45上に載置可能となるように構成されている。パイプ3の右端部3Rが配置されるパイプ支持部40の端部には、パイプ3の回転による脱落を規制するための側壁42,43によって画定するパイプ挿入領域41が形成されている。パイプ挿入領域41には、パイプ3の右端部3Rの端面を当接させることによって、右端部3Rの端面の位置決めを行うためのパイプ挿入領域41の端面44Rが形成されている。パイプ挿入領域41の端面44Rは、概ね半円形の領域で構成されており、磁石Mが埋め込まれている。
図7の下側の図(パイプ挿入後の状態を示す図)に示すように、この磁石Mによって、パイプ3の右端部3Rの端面が磁力によってパイプ挿入領域41の端面44Rに保持され、パイプ3の軸方向の位置ずれが抑制される。
【0034】
本実施形態に係る樹脂ボード1では、パイプ3の右端部3Rの端面の軸方向の位置決めをさらに高精度に行うために、パイプ支持部40にパイプ3を端面44Rに押し付けるための付勢手段を設けてもよい。前述したように、かかる付勢手段の一例として、ボールプランジャを用いる場合の例について、
図8を参照して説明する。
【0035】
図8では、
図6の矢視Gで見たときの分割金型51のパイプ支持部40を概略的に示している。パイプ支持部40のパイプ挿入領域41には、右側の端面44Rに対向して左側の端面44Lが形成されている。
図8に示すように、分割金型51には、パイプ挿入領域41の端面44Lよりも左側にボールプランジャ48が内蔵されており、ボールプランジャ48のボールの先端が端面44Lから端面44Rに向けて突出している。ここで、パイプ3の全長をL1とし、パイプ3をパイプ挿入領域41に挿入する前の、ボールプランジャ48のボール先端とパイプ挿入領域41の端面44Rとの間の距離をL2とすると、L2<L1の関係となっている。
【0036】
パイプ挿入領域41にパイプ3(全長L1)を挿入する前にはL2<L1の関係となっているため、パイプ挿入領域41へのパイプ3の挿入によって、ボールプランジャ48のボールが端面44L側に変位する。なお、パイプ3の挿入後の状態において、パイプ3の左端部3Lの端面はパイプ挿入領域41の端面44Lに接触せず、両者の間に間隙が確保されている。パイプ3がパイプ挿入領域41に挿入された状態では、パイプ3がボールプランジャ48のスプリングによって付勢され、それによってパイプ挿入領域41の右側の端面44Rに押し付けられる。パイプ3がパイプ挿入領域41の端面44Rに押し付けられた状態は、後述する樹脂の成形が完了するまで維持されるため、完成後の樹脂ボード1においてパイプ3の右端部3Rの端面の位置は精度が高い状態となっている。
また、パイプ3の右端部3Rが、その連結先である収納部5の連結部分(図示せず)との間で高い取り付け精度が要求されるときに、パイプ3の軸方向の長さの精度が高くない場合であってもパイプ3の右端部3Rの端面が確実に端面44Lに押し付けられるため、完成後の樹脂ボード1において、パイプ3の右端部3Rの端面の軸方向の位置決めの精度を高くすることができる。
【0037】
なお、パイプ3を端面44Rに押し付けるための付勢手段は、上述したボールプランジャに限られない。例えば、パイプ3の左端部3Lの端面と接触する部材はボールに限られない。当該部材は、パイプ3の左端部3Lの端面に対して右方向に力を伝達可能な部材であれば如何なる部材でもよく、例えば板状部材であってもよい。また、コイルスプリングに代えて、あるいはコイルスプリングと共に、板ばねを用いてもよい。
なお、パイプ3の左端部3Lの端面の軸方向の位置決めの精度を高くするときには、上述した場合とは逆に、ボールプランジャ48等の付勢手段をパイプ支持部40の右側に内蔵し、パイプ3をパイプ挿入領域41の左側の端面44Lに押し付ける構成とすればよい。
【0038】
次に、保持部材60Rによるパイプ3の固定方法について、
図9〜11を参照してさらに説明する。以下で説明する例では、パイプ3の回転規制を保持部材60R側で行う場合について説明するが、保持部材60R側に代えて、あるいは保持部材60R側とともに、同様の回転規制構造を保持部材60L側で行うことが可能であることは当業者に理解される。
図9には、パイプ3の右端部3Rの端の形状の一部が示されている。
図9に示すように、パイプ3の右端部3Rの端には、2箇所の切欠き3aが設けられている。
図10には、保持部材60Rの形状が示されている。
図10に示すように、保持部材60Rは、断面U字形の壁部601と、保持部材60Lに近い側の端面近傍に設けられた係合ピン602とを備える。係合ピン602は、壁部601の内壁に溶接または圧入により固定される。係合ピン602の直径は、パイプ3の切欠き3aの幅よりも僅かに小さくなっている。
なお、壁部601の断面は、
図10に例示するU字形に限られず、円形または楕円形であってもよい。
【0039】
図11では、保持部材60Rがパイプ3の外周面のうち右端部3Rを覆わない位置にある段階S10と、保持部材60Rがパイプ3の外周面のうち右端部3Rを覆う位置にある段階S11とにおいて、保持部材60Rとパイプ3の関係を示している。なお、
図11の段階S10,S11は、それぞれ
図6の段階S10,S11に対応する。
図11に示すように、段階S10から段階S11へ移行するときには、保持部材60Rの壁部601が、分割金型51の成形面51aに固定されているパイプ3の右端部3Rを覆うように移動する。そして、保持部材60Rの壁部601の内壁に固定されている係合ピン602が、パイプ3の右端部3Rの切欠き3aに挿入された位置で、保持部材60Rの移動が停止するように制御される。それによって、パイプ3の分割金型51に対する変位が規制されるとともに、パイプ3の中心軸回りの回転が規制される。
【0040】
図11の段階S11に示すように、保持部材60Rが停止した状態では、保持部材60Rの係合ピン602がパイプ3の切欠き3aのストッパに当接しないようにすることが好ましい。係合ピン602がパイプ3の切欠き3aのストッパに当接してしまうと、係合ピン602によってパイプ3を左側へ押す力が働き、それによってボールプランジャ48のボールが左側へ変位することでパイプ3の右端部3Rの端面の位置が左側にずれる場合があるためである。
【0041】
(2−2)成形工程
準備工程の後に成形工程が行われる。
図12〜17は、それぞれ、実施形態に係る樹脂ボード1の成形工程を説明する図である。各図では、分割金型51,52の中央部での断面で示しており、また、成形される樹脂ボード1の縦横比は必ずしも
図1〜3に示したものと一致しない。
図12に示すように、樹脂ボード1の成形工程では、樹脂ボード1の樹脂積層体2の形状に応じた一対の分割金型51,52を用意する。すなわち、分割金型51の成形面51aは第1の樹脂シート21に応じた形状であり、分割金型52の成形面52aは第2の樹脂シート22に応じた形状である。上述した準備工程によって、パイプ3が分割金型51の成形面51aに固定されている。
分割金型51には摺動部511,512が設けられ、分割金型52には摺動部521,522が設けられている。摺動部511および摺動部521は互いに対向する方向に摺動可能であり、摺動部512および摺動部522は互いに対向する方向に摺動可能である。
【0042】
先ず、
図12に示すように、段階S20において、図示しない押出装置から溶融樹脂シート(パリソン)P,Pを押し出して分割金型51,52の間に垂下させる。
【0043】
次に、
図13に示すように、段階S21において、摺動部511,521を互いに近接する方向に移動(スライド)させ、かつ、摺動部512,522を互いに近接する方向に移動(スライド)させることで、各摺動部の先端を溶融樹脂シートPに接触させる。それによって、分割金型51の成形面51aと溶融樹脂シートPの間に密閉空間が形成され、分割金型52の成形面52aと溶融樹脂シートPの間に密閉空間が形成される。
図示しないが、分割金型51,52にはそれぞれ真空チャンバが内蔵され、当該真空チャンバと成形面51a,52aの間には真空吸引のための連通路が設けられている。そして、真空チャンバによって連通路から密閉空間内の空気を吸引する。この吸引により、
図14の段階S22に示すように、一対の溶融樹脂シートP,Pがそれぞれ成形面51a,52aに押圧させられ、成形面51a,52aに沿った形状に成形(賦形)される。このとき、
図6に示したように、パイプ3の中央部3Cの外周面に対向する分割金型51には引き込み孔DPが形成され、引き込み孔DPから密閉空間内の空気が吸引される。そのため、分割金型51の成形面51aとパイプ3の中央部3Cの外周面との間の狭まった領域に溶融樹脂を効果的に引き込むことができる。
【0044】
次に、
図15に示すように、段階S23において、各摺動部を初期の位置(
図12と同じ位置)に戻し、分割金型51,52の成形面51a,52a上で成形された溶融樹脂シートP,Pの間に、マニピュレータ90に保持された芯材23を正確に位置決めする。そして、芯材23の一方の面を成形面52a上に賦形された溶融樹脂シートPに押し付ける。それによって、芯材23が成形面52a上に賦形された溶融樹脂シートPに溶着して固定される。
【0045】
次に、
図16に示すように、段階S24において、分割金型51,52の型締めを行って、溶融樹脂シートP,Pおよび芯材23を挟み込む。この型締めによって、芯材23の他方の面が分割金型51の成形面51a上に賦形された溶融樹脂シートPに押し付けられ、溶着する。
分割金型51,52の外周には、分割金型51,52の成形面51a,52aを取り囲むようにピンチオフ部(図示せず)が設けられており、型締めによって溶融樹脂シートP,Pがピンチオフ部において一対の溶融樹脂シートP,Pの周縁が溶着させられ、パーティングライン(図示せず)が形成される。
【0046】
次に、分割金型51,52を開型する。そして、アクチュエータ80R,80Lを制御して、保持部材60R,60Lを互いに遠ざかる方向に移動させる(要するに、
図6の段階S11から段階S10とする。)。それによって、保持部材60Rによるパイプ3の固定が解除されるとともに、保持部材60R,60Lがそれぞれパイプ3の右端部3R,左端部3Lを覆う位置(第2位置の一例)から覆わない位置(第1位置の一例)まで、保持部材60R,60Lが移動する。
【0047】
保持部材60R,60Lを移動させた後に、
図17の段階S25に示すように、成形品を取り出す。そして、パーティングラインに沿って形成されたバリをカッターで切断することで、パイプ3が挿入された樹脂積層体2が得られる。最後に、パイプ3が挿入された樹脂積層体2に対して、
図4を参照して説明したように、ヒンジHにおいて第2の樹脂シート22のシート端部22aを折り曲げた後に孔221を開け、当該孔221を介してリベットRでシート端部22aを第1の樹脂シート21に固定することで、樹脂ボード1が完成する。
【0048】
上述したように、本実施形態に係る樹脂ボード1(構造体の一例)の製造方法によれば、分割金型51の成形面51aにパイプ3の外周面の少なくとも一部を接触させ、かつパイプ3の軸回りの回転が規制されるようにして、保持部材60Rにパイプ3を保持させ、溶融樹脂シートPを成形面51aおよびパイプ3の外周面に押圧させることによって溶融樹脂を成形する。このとき、パイプ3に接触する溶融樹脂が冷却して固化する過程では、樹脂の熱収縮によってパイプ3を中心軸回りに回転させる力が働く場合があるが、パイプ3は中心軸回りの回転が規制されるようにして成形面51aに固定されている。そのため、本実施形態の樹脂ボード1の製造方法では、樹脂の熱収縮によってパイプ3がその中心軸回りに回転してしまうことが防止される。
【0049】
また、本実施形態に係る樹脂ボード1の製造方法によれば、パイプ3の露出部分である右端部3Rおよび左端部3Lが、樹脂の成形中に、それぞれ保持部材60Rおよび保持部材60Lに覆われている。そのため、パイプ3の右端部3Rおよび左端部3Lの外周面に、樹脂の成形過程において樹脂が付着することがないことから、成形後にパイプ3の外周面から不要な樹脂を除去する処理が必要ない。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の構造体の製造方法は上述した実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0051】
上記実施形態において、保持部材によるパイプの固定方法は、
図11に例示した方法に限られず、他の方法を採るようにしてもよい。
図18および
図19は、それぞれ、実施形態の変形例において、パイプおよび保持部材の係合動作を説明する図である。
【0052】
図18に示す例では、変形例に係るパイプ3Aは、管部31と、管部31の端面近傍に設けられた2箇所の係合ピン32と、を備える。変形例に係る保持部材60Aの端部には、2箇所の切欠き60Aaが設けられている。すなわち、パイプ側に係合ピンを設け、保持部材側に切欠きを設けた点で、
図11に示した方法とは逆の構成となっている。
図18に示すように、段階S10から段階S11へ移行するときには、保持部材60Aが、分割金型51の成形面51aに固定されているパイプ3Aの端部を覆うように移動させられる。そして、保持部材60Aに設けられている切欠き60Aaが、パイプ3Aの端部の係合ピン32を受け入れた位置で、保持部材60Aの移動が停止するように制御される。それによって、パイプ3Aの分割金型51に対する変位が規制されるとともに、パイプ3Aの中心軸回りの回転が規制される。
【0053】
図19に示す例では、保持部材のみが
図11に示したものと異なる。変形例に係る保持部材60Bの端部は、平板形状の部分(平板部)をなしている。
図19に示すように、段階S10から段階S11へ移行するときには、保持部材60Bが、分割金型51の成形面51aに固定されているパイプ3の端部を覆うように移動させられる。そして、保持部材60Bの平板部が、パイプ3の右端部3Rの切欠き3aに挿入された位置で、保持部材60Bの移動が停止するように制御される。それによって、パイプ3の分割金型51に対する変位が規制されるとともに、パイプ3の中心軸回りの回転が規制される。
なお、
図19に示すように、保持部材は必ずしもパイプ3の端部を覆わなくてもよいが、後の樹脂の成形工程においてパイプ3の端部の外周面に樹脂が付着するため、必要に応じて、樹脂の成形後にパイプ3の端部に付着した樹脂を除去する。
【0054】
図11、
図18、および、
図19にそれぞれ例示したパイプの固定方法では、パイプの一方の端について2箇所の切欠き及び係合ピンを設けて固定する方法を示したが、1箇所の切欠き及び係合ピンによって固定してもよい。
【0055】
上述した実施形態に係る樹脂ボード1の製造方法では、樹脂ボード1の樹脂積層体2を真空成形によって成形する場合について説明したが、真空成形に代えて、ブロー成形を適用してもよいし、真空成形とブロー成形を併用してもよい。
また、上述した実施形態に係る樹脂ボード1の製造方法では、シート状の溶融樹脂シートP,Pを分割金型51,52の間に垂下させる場合について説明したが、環状の溶融樹脂(環状パリソン)を分割金型51,52の間に垂下させて樹脂成形を行うようにしてもよい。