(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記弁体操作部は、使用者により加えられた操作力を上記第1ワイヤに直接伝達するように構成されると共に、使用者の操作に基づいて自動的に上記給水装置を作動させるように構成されている請求項1又は2に記載の水洗大便器装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の水洗大便器をトイレ室に設置する場合には、まず、トイレ室の床面に施工された排水配管に排水ソケットを接続する。この排水ソケットからは、排水ソケットに設けられた開閉弁を操作するためのインナーワイヤが延びている。次に、水洗大便器本体をトイレ室内に搬入し、水洗大便器本体の排水トラップ管路の下流端が、床面に取り付けられている排水ソケットに接続されるように、水洗大便器本体を配置する。さらに、排水ソケットから延びているインナーワイヤの末端に設けられた把持部が、水洗大便器本体後部の所定の箇所に取り付けられる。最後に、水洗大便器本体後部に、スカート部の一部を構成する化粧カバーが取り付けられ、取り付けた把持部や、水洗大便器本体の機能部が覆われる。使用者が停電対応機能を使用する場合には、化粧カバーを取り外し、水洗大便器本体の後部に保持されている把持部を操作して排水ソケットの開閉弁を開閉させる。
【0007】
しかしながら、意匠性の高い優れた外観の水洗大便器を提供するために、ボウル部を取り囲むスカート部を、水洗大便器本体の後部まで一体的に形成したいという要求がある。このように、一体的に形成されたスカート部により水洗大便器本体後部の機能部が覆われたデザインが採用された場合、排水ソケットから延びるワイヤ末端の操作部を、機能部の適所に取り付けることが困難となる。即ち、予め床面に取り付けられている排水ソケットから延びるワイヤの末端の操作部を、排水ソケットを覆うように配置される水洗大便器本体側に取り付ける場合、水洗大便器本体後部の機能部がスカート部により覆われていると、取り付け作業が困難になるという問題がある。
従って、本発明は、意匠性の高い、設置作業が容易な、停電対応機能を備えた水洗大便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、停電対応機能を備えた水洗大便器装置であって、汚物を受けるボウル部、このボウル部の底部から延びる排水トラップ管路、及びボウル部の周囲を囲うスカート部を備えた水洗大便器本体と、排水トラップ管路の下流側に配置され、スカート部の内側で、排水トラップ管路と排水配管とを接続する排水ソケットと、この排水ソケットに設けられ、排水ソケットの流路を開閉するために、開位置と閉位置の間で移動される弁体と、水洗大便器本体に設けられ、停電対応機能の使用時において、使用者が弁体を閉位置に移動させるために操作される弁体操作部と、弁体が閉位置に移動されている状態で、ボウル部に洗浄水を流入させる給水装置と、弁体操作部に対する操作に基づく力を伝達するために、弁体操作部から延びる第1ワイヤと、弁体を移動させるために、排水ソケットから延びる第2ワイヤと、第1ワイヤに加えられた力が第2ワイヤに伝達されるように、第1ワイヤと第2ワイヤを中継するように構成され、更に、スカート部に設けられた開口を介して水洗大便器本体の内部に収納可能に構成されている中継装置と、を有
し、中継装置は、ケース部材と、このケース部材の内部に配置された方向転換機構と、を有し、第1ワイヤ及び第2ワイヤはケース部材の一側に接続され、方向転換機構は、第1ワイヤ及び第2ワイヤをケース部材の一側に接続できるように、第1ワイヤに加えられた力を方向転換して上記第2ワイヤに伝達することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、停電対応機能の使用時において、使用者は弁体操作部を操作して、排水ソケットの流路を開閉する弁体を「閉位置」に移動させる。給水装置は、弁体が「閉位置」に移動されている状態で、ボウル部に洗浄水を流入させる。次いで、ボウル部内に所定量の洗浄水が溜まった状態で弁体を「開位置」に移動させることにより、ボウル部内の溜水及び汚物が、排水トラップ管路を介して排水配管に排出される。弁体操作部に対する操作に基づく力を伝達する弁体操作部から延びる第1ワイヤと、排水ソケットから延びる第2ワイヤは中継装置によって中継され、この中継装置は、スカート部に設けられた開口を介して水洗大便器本体の内部に収納可能に構成されている。
【0010】
停電時に排水ソケットに設けられた弁体を開閉することができる水洗大便器装置を構成するには、水洗大便器本体側に設けられた弁体操作部から、排水ソケット側に設けられた弁体へ、ワイヤを介して力を伝達する必要がある。水洗大便器装置を設置する際は、まず、排水ソケットを排水配管に接続しておき、その後、設置された排水ソケットと排水トラップ管路が接続されるように水洗大便器本体が配置される。このため、設置現場において、排水ソケット及び水洗大便器本体が配置された後、水洗大便器本体側に設けられた弁体操作部から排水ソケット側に設けられた弁体に力が伝達されるようにワイヤを取り付ける必要がある。しかしながら、排水ソケットは水洗大便器本体の内側に位置しているため、ワイヤを取り付けるためには、ワイヤ取り付け作業を行うための大きな開口を水洗大便器本体に設ける必要があった。
【0011】
上記のように構成された本発明によれば、水洗大便器本体側から延びる第1ワイヤと、排水ソケットから延びる第2ワイヤが中継装置によって中継され、この中継装置は、スカート部に設けられた開口を介して水洗大便器本体の内部に収納可能に構成されている。このため、施工時においては、第1ワイヤと第2ワイヤを、スカート部の外側で中継装置を介して中継し、その後、中継装置をスカート部の開口を介して水洗大便器本体の内部に収納すればよい。従って、スカート部の開口は、中継装置を収納可能な大きさであれば良く、水洗大便器本体に大きな開口を設けることなく、水洗大便器本体側から排水ソケット側へワイヤを接続することができる。これにより、作業用の開口部が少ない、意匠性に優れた水洗大便器装置を構成することが可能になる。
【0013】
また、上記のように構成された本発明によれば、第1ワイヤ及び第2ワイヤがケース部材の一側に接続されるので、第1、第2ワイヤの取り回しが容易であり、スカート部の開口を小さく形成した場合でも、第1、第2ワイヤが接続された中継装置を水洗大便器本体内に収納することが可能になる。これにより、より意匠性の優れた水洗大便器装置を提供することが可能になる。
【0014】
本発明において、好ましくは、水洗大便器本体のスカート部に設けられた開口は、水洗大便器本体の背面側に形成されている。
このように構成された本発明によれば、水洗大便器本体背面側の目立たない位置に開口が形成されるので、より意匠性を高めることができる。また、本発明によれば、第1、第2ワイヤを容易に接続することができるので、開口が背面側であっても作業性が損なわれることがない。
【0015】
本発明において、好ましくは、弁体操作部は、使用者により加えられた操作力を第1ワイヤに直接伝達するように構成されると共に、使用者の操作に基づいて自動的に給水装置を作動させるように構成されている。
【0016】
このように構成された本発明によれば、使用者により加えられた操作力が第1ワイヤに直接伝達されるので、簡単な機構で弁体を移動させることができる。また、使用者の操作に基づいて自動的に給水装置が作動されるので、停電時において、使用者は簡単な操作で便器洗浄を行うことができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、排水ソケットは、第2ワイヤが所定の経路で取り回されるように、第2ワイヤを案内するワイヤガイドを有する。
このように構成された本発明によれば、ワイヤガイドにより第2ワイヤが所定の経路で取り回されるので、第2ワイヤにキンクが発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、意匠性の高い、設置作業が容易な、停電対応機能を備えた水洗大便器装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態の水洗大便器装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水洗大便器装置全体を示す斜視図であり、便蓋及び便座を上方位置まで回動させた状態を示している。
図2は、本実施形態の水洗大便器装置の前後方向の全断面図であり、便蓋及び便座を取り外した状態を示している。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器装置1は、陶器製の水洗大便器本体2と、この水洗大便器本体2の上面に上下方向に回動可能に配置された便座4と、この便座4を覆うように上下方向に回動可能に配置された便蓋6と、水洗大便器本体2の後方に配置された機能部8とを備えている。また、機能部8には、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄装置(図示せず)と、水洗大便器本体2への給水機能に関与する給水系機能部12(
図2)が内蔵されている。
【0022】
また、水洗大便器本体2にはボウル部20が形成されていると共に、このボウル部20の周囲を囲うようにスカート部10が形成されている。本実施形態においては、スカート部10は、水洗大便器本体2の全周を取り囲む外周壁面として、一体に形成されている。また、ボウル部20は、ボウル形状の汚物受け面14と、この汚物受け面14の上縁の棚面16から立ち上がるように形成されたリム部18とを備えている。
【0023】
さらに、
図2に示すように、水洗大便器本体2には、ボウル部20の底部に設けられた入口開口22aから延びる排水トラップ管路22が形成されている。この排水トラップ管路22は、入口開口22aから後方斜め上方に向かって延びる上昇管路22b、この上昇管路22bの下流端に設けられ、ボウル部20の溜水面Lの高さを規定する屈曲部22c、及びこの屈曲部22cから下方に向かって延びる下降管路22dから構成されている。即ち、ボウル部20の溜水面Lの高さは、排水トラップ管路22の底面が最も高い位置にある屈曲部22cにより規定される。
【0024】
また、
図2に示すように、水洗大便器本体2側面のリム部18の内部には、リム通水路24が形成されている。このリム通水路24の下流端には、リム吐水部の一部であるリム吐水口26が形成されている。さらに、リム通水路24の上流側は、給水装置である電磁弁28を介して洗浄水源である水道(図示せず)に接続されている。ボウル部20の通常洗浄時においては、給水系機能部12に内蔵されたコントローラ(図示せず)が電磁弁28に信号を送り、これを開弁させる。電磁弁28が開弁されると、水道の給水圧力により洗浄水がリム吐水口26まで導かれるようになっている。リム通水路24内に供給された洗浄水は、リム通水路24内で水洗大便器本体2の前方側へ導かれ、その後、後方側に折り返し、リム吐水口26から後方に向けて吐出(リム吐水)されるようになっている。
リム吐水口26から吐出された洗浄水は、リム吐水口26に連なるように形成された通水路を経て棚面16に導かれ、ボウル部20内を旋回することにより汚物受け面14を洗浄するようになっている。
【0025】
さらに、
図2に示すように、ボウル部20の底部には、ゼット吐水口32が形成されており、このゼット吐水口32は、排水トラップ管路22の入口開口22aに向けてジェット噴流が吐出されるように、入口開口22aに対向するように配置されている。また、水洗大便器本体2には、水洗大便器本体2に洗浄水を流入させる導水路流入部(図示せず)から、ボウル部20の底部に設けられたゼット吐水口32まで延びるゼット導水路(図示せず)が形成されている。
【0026】
さらに、
図2に示すように、水洗大便器本体2の後部には、給水系機能部12として、貯水タンク34、及び加圧ポンプ36が設けられている。加圧ポンプ36は、通常の便器洗浄時において、貯水タンク34内に貯留されている洗浄水を加圧して、水洗大便器本体2の導水路流入部(図示せず)に流入させるように構成されている。これにより、加圧ポンプ36が作動されると、貯水タンク34に貯水されていた洗浄水は、加圧ポンプ36によって加圧され、ゼット導水路(図示せず)を通ってゼット吐水口32から吐出される。
【0027】
また、ゼット吐水口32から吐出された洗浄水は、ボウル部20内に貯留されていた溜水を巻き込みながら、ゼット吐水口32に対向して設けられた排水トラップ管路22の入口開口22aに流入する。入口開口22aに流入した洗浄水は、上昇管路22b内を上昇して屈曲部22c内を満水とし、サイホン作用を誘発する。サイホン作用が発生すると、ボウル部20内の溜水及び汚物が入口開口22aを通って上昇管路22b内に吸引され、屈曲部22cを越えて下降管路22dから排出される。このように、加圧ポンプ36を使用してゼット吐水口32から洗浄水を噴射させることにより、早期に排水トラップ管路22内を満水にすることが可能になり、早期にサイホン作用を起動させることができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、貯水タンク34内の洗浄水を加圧ポンプ36を使用してゼット導水路(図示せず)に流入させているが、水道の給水圧力を利用して洗浄水を流入させる水道直圧式等の水洗便器に本発明を適用することもできる。
【0029】
さらに、
図2に示すように、水洗大便器装置1には、排水ソケット38が備えられている。この排水ソケット38は、排水トラップ管路22の下流側に配置され、スカート部10の内側で、排水トラップ管路22と、床面Fから立ち上げられている排水配管40とを接続している。また、排水ソケット38には弁体42が設けられており、この弁体42は、排水ソケット38の流路を開閉するために、開位置(
図5)と閉位置(
図2)の間で移動可能に構成されている。また、弁体42は、水洗大便器装置1の通常使用時においては、常に開位置にされており、停電対応機能の使用時において、使用者の操作により閉位置に移動される。
【0030】
なお、本明細書において、弁体42の「閉位置」とは、必ずしも排水ソケット38の流路が完全に閉塞された状態を意味するものではなく、排水ソケット38の流路断面積が「開位置」よりも狭くされた状態を含むものである。また、本実施形態においては、弁体42が「閉位置」にある状態でも、排水ソケット38の流路は完全に閉塞されず、小流量の洗浄水が排水ソケット38を通過できるようになっている。排水ソケット38及び弁体42の詳細については後述する。
【0031】
次に、
図3乃至
図7を参照して、水洗大便器装置1の停電対応機能を説明する。
図3は本実施形態の水洗大便器装置を斜め後方から見た斜視図であり、背面のカバー等(図示せず)を取り外した状態を示している。
図4は、本実施形態の水洗大便器装置において、停電対応機能に関与する部分を取り出して示した斜視図である。
図5は、本実施形態の水洗大便器装置に備えられている排水ソケットの断面図である。
図6は、排水ソケットに内蔵されている弁体の移動機構を説明するための図である。
図7は、本実施形態の水洗大便器装置において、排水ソケットの弁体を操作するワイヤを中継するための中継装置を示す図である。
【0032】
図3及び
図4に示すように、停電対応機能に関与する停電対応機能部は、ワイヤユニット44と、ワイヤユニット44に取り付けられるスイッチユニット46と、ワイヤユニット44から延びる第1ワイヤ48と、第1ワイヤ48が接続される中継装置50と、中継装置50から排水ソケット38まで延びる第2ワイヤ52と、弁体42を内蔵した排水ソケット38からなる。
【0033】
図3に示すように、ワイヤユニット44は、箱形のワイヤユニット本体44aと、リング状の把持部44bから構成され、水洗大便器本体2後部の、スカート部10の内側に配置されている。また、ワイヤユニット本体44aの下端には第1ワイヤ48の一方の端部が取り付けられている。停電対応時には、使用者は、スカート部10の背面上部開口10aを覆っている化粧カバー(図示せず)を取り外してワイヤユニット44を露出させ、把持部44bを操作する。さらに、スカート部10の背面は、背面下部開口10bが形成されるように、下端部が切り欠かれている。後述するように、施工時においては背面下部開口10bを介して中継装置50がスカート部10の内側に収納され、背面下部開口10bは中継装置50の収納が可能な寸法形状に形成されている。また、施工後は、背面下部開口10bは化粧カバー(図示せず)によって閉鎖される。
【0034】
図4に示すように、第1ワイヤ48は、管状の第1アウターチューブ48aと、この第1アウターチューブ48aの中を通っている可撓性の第1インナーワイヤ48bから構成されている。第1アウターチューブ48aの一方の端部は、ワイヤユニット本体44aの下端面に接続される一方、第1インナーワイヤ48bの端部はワイヤユニット本体44を貫通して延び、先端が把持部44bに固定されている。
【0035】
図4に示すように、スイッチユニット46は、ワイヤユニット本体44aを囲むように取り付けられたコの字型の部材であり、ワイヤユニット44と共に弁体操作部を構成している。また、スイッチユニット46の側面には電気コネクタ46aが設けられており、この電気コネクタ46aには接続コード(図示せず)が接続される。この接続コード(図示せず)は、給水系機能部12に内蔵された電磁弁28(
図2)に接続されており、停電対応時において、使用者が第1インナーワイヤ48bを所定量引き出すと、内蔵バッテリ(図示せず)により電磁弁28が開弁されるように構成されている。
【0036】
次に、第1ワイヤ48の他方の端部には、中継装置50が取り付けられている。さらに、中継装置50には第2ワイヤ52の一方の端部が接続されており、この第2ワイヤ52の他方の端部は排水ソケット38に接続されている。第2ワイヤ52は、第1ワイヤ48と同様の構造を有し、管状の第2アウターチューブ52aと、この第2アウターチューブ52aの中を通っている可撓性の第2インナーワイヤ52b(
図6)から構成されている。
【0037】
中継装置50は、第1ワイヤ48及び第2ワイヤ52が接続される箱形の装置であり、第1、第2ワイヤは、その一側である一つの側面に接続されている。中継装置50は、第1ワイヤ48と第2ワイヤ52を中継するように構成され、第1ワイヤ48に加えられた力が第2ワイヤ52に伝達されるようになっている。即ち、使用者が把持部44bを引き、第1ワイヤ48の第1インナーワイヤ48bが引き出されると、これに連動して第2ワイヤ52の第2インナーワイヤ52bも引かれるようになっている。なお、中継装置50の内部構造については後述する。
【0038】
また、水洗大便器装置1の工場出荷時においては、水洗大便器本体2側には、弁体操作部(ワイヤユニット44及びスイッチユニット46)及び第1ワイヤ48が取り付けられており、一方、排水ソケット38側には、第2ワイヤ52及び中継装置50が取り付けられている。このような状態で出荷された水洗大便器装置1は、水洗大便器を設置する現場において、第1ワイヤ48の先端が中継装置50に接続され、第1ワイヤ48に対する操作が第2ワイヤ52に伝達できるようになる。水洗大便器装置1の具体的な設置手順については後述する。
【0039】
次に、
図5及び
図6を参照して、排水ソケット38の構成を説明する。
図5に示すように、排水ソケット38は、排水ソケット本体54と、この排水ソケット本体54の上端に取り付けられたパッキン56と、排水ソケット本体54内部の通路を開閉する弁体42と、を有する。
排水ソケット本体54の下端にはベース部54aが設けられ、このベース部54aは、水洗大便器装置1を設置する床面F上に配置される。また、排水ソケット本体54の内部には、ベース部54aの底面から上端まで延びる湾曲した流路54bが形成されている。即ち、流路54bは、排水ソケット本体54上端の流入部54cから底面の流出部54dまで延びている。
【0040】
排水ソケット本体54の流入部54cには、環状のパッキン56が取り付けられている。パッキン56はゴム製であり、水洗大便器本体2に設けられた排水トラップ管路22の下流端を流入部54cに挿入すると、パッキン56により、排水トラップ管路22と排水ソケット本体54が水密的に接続される。一方、排水ソケット本体54の流出部54dは、床面Fに設けられた排水配管40に挿入され、パッキン(図示せず)を介して排水配管40に水密的に接続されている。
【0041】
さらに、流路54bの中間部には弁体42が設けられており、この弁体42は、「開位置」(
図5の状態)と「閉位置」(
図2の状態)の間で回動可能に取り付けられている。具体的には、弁体42は、中央部が上方に向けて盛り上がった板状の部材であり、その一端部には回転軸42aが設けられている。弁体42は、流路54b内で回転軸42aを中心に回動可能に取り付けられている。弁体42が概ね水平方向に向けられた「閉位置」では流路54bが概ね閉鎖されて流路断面積が狭くなり、弁体42が概ね鉛直下方に向けられた「開位置」では流路54bが開かれ、流路断面積が広くなる。このように、弁体42が流路54b内で回動することにより、フラッパ弁が形成される。
【0042】
次に、
図6を参照して、弁体42を開閉するための開閉機構を説明する。なお、
図6においては、開閉機構が露出されるように、排水ソケット38から一部のカバーが取り外されている。
図6に示すように、排水ソケット38には、開閉機構として、摺動溝58と、この摺動溝58に沿って摺動するスライダ60と、このスライダ60を付勢するコイルばね62と、スライダ60と弁体42の回転軸42aを連結するアーム64が設けられている。
【0043】
摺動溝58は、排水ソケット本体54の外側に設けられた直線状の溝であり、床面Fに対して傾斜して形成されている。摺動溝58の中にはスライダ60が摺動可能に配置されており、スライダ60は、摺動溝58の中に配置された付勢部材であるコイルばね62により斜め下方に向けて付勢されている。
さらに、スライダ60にはアーム64の一端が連結されており、アーム64の他端は弁体42の回転軸42aに連結されている。これにより、摺動溝58内でスライダ60が摺動されると、アーム64を介して回転軸42aが回動され、流路54b内の弁体42が開閉される。なお、
図6に示すように、スライダ60がコイルばね62の付勢力により摺動溝58の下端に位置する状態では、弁体42は
図5に示す「開位置」に位置する。
【0044】
一方、排水ソケット38には、スライダ60を摺動させるために第2ワイヤ52が接続されている。
図4に示すように、排水ソケット本体54には、排水ソケット38に接続される第2ワイヤ52を案内するワイヤガイド66が設けられている。ワイヤガイド66は、所定の曲率半径に形成された曲面を側方に向けて突出するように形成した部材であり、第2ワイヤ52は、この曲面に沿うように配索(配置)される。即ち、排水ソケット38に接続される第2ワイヤ52は、ワイヤガイド66の曲面の周りを這った後、先端が排水ソケット本体54に固定される。これにより、第2ワイヤ52の、排水ソケット38に接続される端部は常に所定の曲率半径に維持されるので、取り回しにより第2ワイヤ52にキンクが生じ、第2ワイヤ52の機能が損なわれるのを防止することができる。
【0045】
図6に示すように、第2ワイヤ52の、排水ソケット38に接続される第2アウターチューブ52aは、摺動溝58の端部下方に固定される。このように固定された第2アウターチューブ52aの先端から突出する第2インナーワイヤ52bの先端は、スライダ60に固定されている。このため、第2インナーワイヤ52bが第2アウターチューブ52aの先端の方に引き込まれると、コイルばね62の付勢力に抗してスライダ60は摺動溝58に沿って摺動し、
図6における右上方向に移動される。スライダ60が
図6における右上方向に移動されると、アーム64を介してスライダ60に接続されている回転軸42aが回動され、これにより弁体42が
図2に示す「閉位置」に移動される。また、第2インナーワイヤ52bを引き込む力が除去されると、スライダ60は、コイルばね62の付勢力により
図6における左下方向に移動される。これにより、弁体42が回動され、
図5に示す「開位置」に復帰する。このように、排水ソケット38に設けられた弁体42は、第2ワイヤ52の第2インナーワイヤ52bに伝達された力により移動され、開閉される。
【0046】
次に、
図7を参照して、中継装置50の構成を説明する。
図7には、中継装置50に第1ワイヤ48が接続されていない状態が示されており、第1ワイヤ48を接続した状態が想像線で示されている。
図7に示すように、中継装置50は、直方体状のケース部材である筐体68と、筐体68の1つの面を覆う板状の蓋68aと、筐体68の内部に回転可能に配置されたプーリー70と、筐体68の内部に摺動可能に配置された接続部材72と、を有する。
【0047】
筐体68は細長い直方体状の箱形の部材であり、その一方の端面に第1アウターチューブ48a及び第2アウターチューブ52aの端部を夫々固定するように構成されている。また、筐体68の内部には、筐体68の長手方向に延びる仕切壁68bが設けられており、接続部材72は、この仕切壁68bに沿って摺動可能に配置されている。さらに、筐体68内の、第1、第2ワイヤが接続されていない方の端部には、プーリー70が回転自在に取り付けられている。筐体68の端面には第2アウターチューブ52aの先端が固定され、この先端から突出している第2インナーワイヤ52bは、筐体68内を長手方向に延びた後、プーリー70に巻回されて方向転換される。方向転換された第2インナーワイヤ52bの先端は、接続部材72に固定される。
【0048】
一方、第1ワイヤ48も、第2ワイヤ52が固定されている端面と同じ端面で筐体68に接続される。上述したように、工場出荷時においては第1ワイヤ48は中継装置50に接続されておらず、水洗大便器装置1の設置現場において筐体68の蓋68aを開け、
図7に想像線で示すように第1ワイヤ48を接続した後、再び蓋68aを取り付ける。第1ワイヤ48を取り付ける際には、まず、第1アウターチューブ48aの端部を筐体68の端面に設けられた切り欠きに係合させ、第1アウターチューブ48aを筐体68に固定する。さらに、第1アウターチューブ48aの先端から突出している第1インナーワイヤ48bの先端には係合片48cが設けられており、この係合片48cを接続部材72に係合させる。これにより、第1インナーワイヤ48bと第2インナーワイヤ52bが接続部材72を介して連結される。この状態で筐体68に蓋68aを取り付けることにより、第1アウターチューブ48aと筐体68の間の係合、及び係合片48cと接続部材72の間の係合状態が保持される。
【0049】
このように、第1インナーワイヤ48bと第2インナーワイヤ52bがプーリー70を巻回して接続されることにより、例えば、第2インナーワイヤ52bが
図7における右方向に引かれたとき、第1インナーワイヤ48bは左方向に引かれる。従って、プーリー70はワイヤに加えられた力を方向転換して伝達する方向転換機構として作用する。中継装置50が方向転換機構を備えることにより、第1、第2ワイヤを、その一側に接続することができる。また、本実施形態においては、第1インナーワイヤ48bと第2インナーワイヤ52bが接続部材72を介して接続されているが、第1インナーワイヤ48b又は第2インナーワイヤ52bと、接続部材72とを一体に構成することもできる。或いは、筐体68の内部に第3のワイヤを配置しておき、その両端に第1、第2インナーワイヤを夫々接続するように本発明を構成することもできる。
【0050】
次に、
図2及び
図3を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器装置1の設置手順を説明する。
まず、トイレ室の床面Fに施工された排水配管40に接続されるように、排水ソケット38を配置し、排水ソケット38を床面Fに固定する。この際、専用の位置決めシート(図示せず)を使用して、水洗大便器本体2が排水ソケット38に接続されたとき、水洗大便器本体2の背面下部開口10b(
図3)が床面F上のどの位置に配置されるかを特定しておき、背面下部開口10bが位置する範囲を床面Fにマークしておく。次に、床面Fに固定された排水ソケット38から延びる第2ワイヤ52がマークされた背面下部開口10bの範囲を通り、且つ中継装置50がスカート部10の外側に位置するように、仮止めテープ(図示せず)等を使用して、第2ワイヤ52及び中継装置50を床面Fに仮止めしておく。これにより、水洗大便器本体2が所定の位置に配置されたとき、第2ワイヤ52は、背面下部開口10bを通ってスカート部10の外側に延びることとなり、第2ワイヤ52がスカート部10によって「踏まれる」のを防止することができる。
【0051】
次に、排水トラップ管路22の下流端が排水ソケット38に接続されるように、水洗大便器本体2を床面F上に配置し、固定する。ここで、水洗大便器本体2を配置する前に、
図3に想像線で示すように、水洗大便器本体2側に設けられたワイヤユニット44から延びる第1ワイヤ48の先端部を、仮止めテープ74等を使用して、スカート部10外面の適所に仮止めしておく。これにより、第1ワイヤ48の先端部が確実に水洗大便器本体2の外側に保持されるので、後に、第1ワイヤ48の先端を中継装置50に容易に接続することができる。水洗大便器本体2を配置した後、第1ワイヤ48及び第2ワイヤ52の仮止めテープを剥がし、上述した手順で第1ワイヤ48を中継装置50に接続する。これにより、第1ワイヤ48(把持部44b)に対する使用者の操作が、中継装置50を介して第2ワイヤ52に伝達され、排水ソケット38の弁体42を開閉させることができる。
【0052】
次いで、第1ワイヤ48を接続した中継装置50を、スカート部10の背面下部開口10bからスカート部10の内側に押し込み、背面下部開口10bに背面の化粧カバー(図示せず)を取り付けて開口部を覆う。中継装置50をスカート部10の内側に押し込む際、中継装置50に接続された第2ワイヤ52も湾曲されることとなるが、第2ワイヤ52はワイヤガイド66(
図4)を介して排水ソケット38に接続されているので、中継装置50を押し込む際に第2ワイヤ52にキンクが生じるのを防止することができる。また、第1ワイヤ48及び第2ワイヤ52は、中継装置50の一側に接続されているので、ワイヤの取り回しが容易であり、各ワイヤに無理な力をかけることなく中継装置50をスカート部10の内側に収納することができる。
【0053】
本実施形態によれば、スカート部10の外側に引き出した第1ワイヤ48及び第2ワイヤ52(中継装置50)を、水洗大便器本体2の側面後部に仮止めしておくことにより、設置作業者は、水洗大便器本体2の側面で第1ワイヤ48を中継装置50に接続する作業を行うことができる。このため、水洗大便器装置1背面側の空間が狭いトイレ室であっても、容易に設置作業を行うことができる。これにより、スカート部10の背面側に比較的小さな開口を設けておくだけで、水洗大便器本体2側の第1ワイヤ48と、排水ソケット38側の第2ワイヤ52を設置作業の現場で連結し、力を伝達させることが可能となる。その結果、水洗大便器本体2の全周がスカート部10により一体的に囲まれた意匠性の高いデザインを採用することが可能になる。
【0054】
次に、本発明の実施形態による水洗大便器装置1の作用を説明する。
上述したように、本実施形態による水洗大便器装置1は、加圧ポンプ36を使用してゼット吐水が行われるので、停電時には通常の便器洗浄を実行することができない。このため、停電時には停電対応機能を使用して便器洗浄を行う必要がある。停電対応機能を使用する場合には、使用者は、まず、水洗大便器本体2後部の背面上部開口10a(
図3)を覆っている化粧カバー(図示せず)を取り外してワイヤユニット44を露出させる。次いで、使用者は、ワイヤユニット44の把持部44bに指を掛け、第1インナーワイヤ48bを引く。
【0055】
第1インナーワイヤ48bが引かれると、中継装置50(
図7)の内部に延びている第1インナーワイヤ48bの先端部が、第1アウターチューブ48aの中に引き込まれる。これに伴い、中継装置50の中で接続部材72を介して接続されている第2インナーワイヤ52bが引かれる。第2インナーワイヤ52bが引かれると、第2インナーワイヤ52bの先端に固定されているスライダ60(
図6)が、コイルばね62の付勢力に抗して、摺動溝58に沿って斜め上方に移動される。スライダ60が移動されると、アーム64を介して回転軸42aが回動され、これにより弁体42が「開位置」(
図5)から「閉位置」(
図2)に移動される。
【0056】
第1インナーワイヤ48bがワイヤユニット44から所定量引き出されると、スイッチユニット46は電磁弁28(
図2)に信号を送り、これを開弁させる。なお、電磁弁28に送られる電気信号、及び電磁弁28を開弁させる電力は、機能部8に内蔵されている非常用のバッテリ又は大容量のコンデンサ(図示せず)により供給される。電磁弁28が開弁されると、水道の給水圧により洗浄水が供給され、この洗浄水はリム吐水口26からボウル部20に流入する。洗浄水が流入すると、ボウル部20内の洗浄水は排水トラップ管路22の屈曲部22cを越えて下降管路22dに流入する。ここで、排水ソケット38内に設けられた弁体42は使用者の操作により「閉位置」に移動されているので、下降管路22dに流入した洗浄水は殆ど弁体42の下流側へは流れず、弁体42の上流側に留まることとなる。
【0057】
これにより、排水トラップ管路22内が概ね満水となると共に、ボウル部20内の水位も、屈曲部22cによって規定される溜水水位Lよりも高くなる。ボウル部20内の水位が所定の水位まで上昇すると、使用者は第1インナーワイヤ48bを引く力を緩める。使用者が力を緩めると、排水ソケット38に備えられたコイルばね62(
図6)の付勢力により、第2インナーワイヤ52b及び第1インナーワイヤ48bは、排水ソケット38の方に引き戻される。同時に、スライダ60も、コイルばね62の付勢力により、摺動溝58に沿って斜め下方に移動される。スライダ60が移動されると、アーム64を介して回転軸42aが回動され、これにより弁体42が「閉位置」(
図2)から「開位置」(
図5)に移動される。
【0058】
これにより、弁体42の上流側に溜まっていた洗浄水が排水配管40に向けて落下して、排水トラップ管路22内に負圧が発生し、サイホン作用が起動する。サイホン作用の発生により、ボウル部20内の洗浄水及び汚物が排水トラップ管路22に吸引され、排水配管40に排出される。一方、使用者が第1インナーワイヤ48bを引く力を緩め、把持部44b(
図3、
図4)が元の位置に復帰すると、スイッチユニット46は電磁弁28(
図2)の開弁状態を所定時間維持した後、電磁弁28を閉弁させる。これにより、サイホン作用が発生した後も洗浄水が所定量供給されるので、ボウル部20内の水位が元の溜水水位Lに復帰して、1回の便器洗浄が終了する。
【0059】
本発明の実施形態の水洗大便器装置1によれば、水洗大便器本体2側から延びる第1ワイヤ48と、排水ソケット38から延びる第2ワイヤ52が中継装置50によって中継され、この中継装置50は、スカート部10に設けられた背面下部開口10b(
図3)を介して水洗大便器本体2の内部に収納可能に構成されている。このため、施工時においては、第1ワイヤ48と第2ワイヤ52を、スカート部10の外側で中継装置50を介して中継し、その後、中継装置50をスカート部10の背面下部開口10bを介して水洗大便器本体2の内部に収納すればよい。従って、スカート部10の背面下部開口10bは、中継装置50を収納可能な大きさであれば良く、水洗大便器本体2に大きな開口を設けることなく、水洗大便器本体2側から排水ソケット38側へワイヤを接続することができる。これにより、作業用の開口部が少ない、意匠性に優れた水洗大便器装置1を構成することが可能になる。
【0060】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、第1ワイヤ48及び第2ワイヤ52が筐体68の一側に接続される(
図7)ので、第1、第2ワイヤの取り回しが容易であり、スカート部10の背面下部開口10b(
図3)を小さく形成した場合でも、第1、第2ワイヤが接続された中継装置50を水洗大便器本体2内に収納することが可能になる。これにより、より意匠性の優れた水洗大便器装置1を提供することが可能になる。
【0061】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、水洗大便器本体2背面側の目立たない位置に背面下部開口10bが形成されるので、より意匠性を高めることができる。また、本実施形態によれば、第1、第2ワイヤを容易に接続することができるので、開口が背面側であっても作業性が損なわれることがない。
【0062】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、使用者により加えられた操作力が把持部44bから第1ワイヤ48に直接伝達されるので、簡単な機構で弁体42を移動させることができる。また、使用者の操作に基づいて自動的に電磁弁28が作動されるので、停電時において、使用者は簡単な操作で便器洗浄を行うことができる。
【0063】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、ワイヤガイド66(
図4)により第2ワイヤ52が所定の経路で取り回されるので、第2ワイヤ52にキンクが発生するのを抑制することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。例えば、上述した本発明の実施形態においては、スイッチユニットが電磁弁に信号を送り、これを開閉させているが、使用者が手動で電磁弁等の給水弁を開閉するように本発明を構成しても良く、弁体が「閉位置」に移動されている状態でボウル部に洗浄水が流入されるように、任意の給水装置を採用することができる。また、上述した本発明の実施形態においては、使用者が把持部を引いて、第1インナーワイヤに直接力を加えていたが、弁体操作部として電気的なスイッチ及びモータ等を設けておき、使用者のスイッチ操作に基づいてモータ等が作動し(非常用電源で作動)、これにより第1インナーワイヤに力が加えられるように本発明を構成することもできる。