特許第6764586号(P6764586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6764586
(24)【登録日】2020年9月16日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】低誘電接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/26 20060101AFI20200928BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200928BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20200928BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   C09J123/26
   C09J11/06
   C09J163/00
   H05K1/03 650
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-522098(P2020-522098)
(86)(22)【出願日】2019年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2019019658
(87)【国際公開番号】WO2019230445
(87)【国際公開日】20191205
【審査請求日】2020年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2018-101490(P2018-101490)
(32)【優先日】2018年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-101491(P2018-101491)
(32)【優先日】2018年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】薗田 遼
(72)【発明者】
【氏名】三上 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川楠 哲生
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−098504(JP,A)
【文献】 特開2017−047686(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/047289(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/029917(WO,A1)
【文献】 特開2016−210856(JP,A)
【文献】 特開2017−197597(JP,A)
【文献】 特開2014−034668(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/131571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン(a)、数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(b)エポキシ樹脂(c)およびポリカルボジイミド(d)を含有する接着剤樹脂組成物
【請求項2】
酸変性ポリオレフィン(a)の酸価が5〜40mgKOH/gである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(b)が、一般式(1)の構造単位および/または一般式(2)の構造単位を有する請求項1または2に記載の接着剤組成物。
[化1]
(一般式(1)中、R,R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基を表す。)
[化2]
(一般式(2)中、R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基を表す。Aは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、または酸素である。)
【請求項4】
酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(b)0.05質量部以上200質量部以下含有する請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、ポリカルボジイミド(d)を0.5〜20質量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
1GHzにおける比誘電率(ε)が3.0以下、誘電正接(tanδ)が0.02以下である請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤組成物を含有する接着シート。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤組成物を含有する積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。より詳しくは、樹脂基材と樹脂基材または金属基材との接着に用いられる接着剤組成物に関する。特にフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと略す)用接着剤組成物、並びにそれを含む、カバーレイフィルム、積層板、樹脂付き銅箔及びボンディングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC)は、優れた屈曲性を有することから、パソコン(PC)やスマートフォンなどの多機能化、小型化に対応することができ、そのため狭く複雑な内部に電子回路基板を組み込むために多く使用されている。近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、これらの流行から配線板(電子回路基板)の性能に対する要求がますます高度なものとなっている。特にFPCにおける伝送信号の高速化に伴い、信号の高周波化が進んでいる。これに伴い、FPCには、高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の要求が高まっている。このような、低誘電特性を達成するため、FPCの基材や接着剤の誘電体損失を低減する方策がなされている。接着剤としてはポリオレフィンとエポキシの組み合わせ(特許文献1)やエラストマーとエポキシの組み合わせ(特許文献2)にて開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2016/047289号公報
【特許文献2】WO2014/147903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、補強板や層間に使用される接着剤の耐熱性に優れるとは言い難い。また、特許文献2では、使用時に重要となる配合後の保存安定性が十分でなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の物性を有する接着剤組成物が、従来のポリイミドフィルムなどの樹脂基材と、銅箔などの金属基材との、高い接着性、ハンダ耐熱性、および配合後のポットライフ性に優れることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は、ポリイミドなどの様々な樹脂基材と金属基材双方への良好な接着性を有し、且つハンダ耐熱性、およびポットライフ性にも優れた接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
酸変性ポリオレフィン(a)、数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(b)、およびエポキシ樹脂(c)を含有し、かつ下記(A)および/または(B)を満足する接着剤樹脂組成物。
(A)酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、エポキシ樹脂(c)を20質量部超60質量部以下含有する
(B)さらにポリカルボジイミド(d)を含有する
【0008】
酸変性ポリオレフィン(a)の酸価が5〜40mgKOH/gであることが好ましく、 数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(b)が、一般式(1)の構造単位および/または一般式(2)の構造単位を有することが好ましい。
【化1】
(一般式(1)中、R,R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基を表す。Aは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、または酸素である。)
【0009】
酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(b)を0.05質量部以上200質量部以下含有することが好ましく、ポリカルボジイミド(d)を0.5〜20質量部含有することが好ましい。
【0010】
前記接着剤組成物は、1GHzにおける比誘電率(εc)が3.0以下、誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましい。
【0011】
前記接着剤組成物を含有する接着シートまたは積層体。前記積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる接着剤組成物は、ポリイミドなどの様々な樹脂基材と金属基材双方への良好な接着性を有し、且つハンダ耐熱性、およびポットライフ性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<酸変性ポリオレフィン(a)>
本発明で用いる酸変性ポリオレフィン(a)(以下、単に(a)成分ともいう。)は限定的ではないが、ポリオレフィン樹脂にα,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等に例示されるオレフィンモノマーの単独重合、もしくはその他のモノマーとの共重合、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。すわなち、酸変性ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものが好ましい。
【0014】
プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα−オレフィンを共重合したものである。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニルなどを1種又は数種用いるこができる。これらのα−オレフィンの中では、エチレン、1−ブテンが好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体のプロピレン成分とα−オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0015】
α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。具体的には、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性プロピレン−エチレン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等が挙げられ、これら酸変性ポリオレフィンを1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
酸変性ポリオレフィン(a)の酸価は、耐熱性および樹脂基材や金属基材との接着性の観点から、下限は5mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは6mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは7mgKOH/g以上である。前記下限値以上とすることでエポキシ樹脂(c)との相溶性が良好となり、優れた接着強度を発現することができる。また、架橋密度が高く耐熱性が良好となる。上限は40mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは30mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは20mgKOH/g以下である。前記上限値以下とすることで接着性が良好となる。また、溶液の粘度や安定性が良好となり、優れたポットライフ性を発現できる。さらに製造効率も向上する。
【0017】
酸変性ポリオレフィン(a)の数平均分子量(Mn)は、10,000〜50,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは15,000〜45,000の範囲であり、さらに好ましくは20,000〜40,000の範囲であり、特に好ましくは22,000〜38,000の範囲である。前記下限値以上とすることで凝集力が良好となり、優れた接着性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで流動性に優れ、操作性が良好となる。
【0018】
酸変性ポリオレフィン(a)は、結晶性の酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。本発明でいう結晶性とは、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、−100℃〜250℃ まで20℃/分で昇温し、該昇温過程に明確な融解ピークを示すものを指す。
【0019】
酸変性ポリオレフィン(a)の融点(Tm)は、50℃〜120℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは60℃〜100℃の範囲であり、最も好ましくは70℃〜90℃の範囲である。前記下限値以上とすることで結晶由来の凝集力が良好となり、優れた接着性や耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶液安定性、流動性に優れ、接着時の操作性が良好となる。
【0020】
酸変性ポリオレフィン(a)の融解熱量(ΔH)は、5J/g〜60J/gの範囲であることが好ましい。より好ましくは10J/g〜50J/gの範囲であり、最も好ましくは20J/g〜40J/gの範囲である。前記下限値以上とすることで結晶由来の凝集力が良好となり、優れた接着性や耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶液安定性、流動性に優れ、接着時の操作性が良好となる。
【0021】
酸変性ポリオレフィン(a)の製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(すなわち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点として不飽和カルボン酸および酸無水物をグラフト重合させる反応)、などが挙げられる。
【0022】
ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物を使用することが好ましい。有機過酸化物としては、特に限定されないが、ジ−tert−ブチルパーオキシフタレート、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。
【0023】
<オリゴフェニレンエーテル(b)>
本発明で用いるオリゴフェニレンエーテル(b)(以下、単に(b)成分ともいう。)は数平均分子量(Mn)が3000以下のものであり、好ましくは下記一般式(1)で表される構造単位および/または一般式(2)の構造単位を有する化合物を用いることができる。
【化1】
【0024】
一般式(1)中、R,R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基であることが好ましい。置換されていてもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、炭素数が1以上6以下、好ましくは炭素数が1以上3以下の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルケニル基の「アルケニル基」としては、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、エテニル基または1−プロペニル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルキニル基の「アルキニル基」としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル(プロパルギル)基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられ、エチニル基、1−プロピニル基または2−プロピニル(プロパルギル)基であることがより好ましい。置換されていてもよいアリール基の「アリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアラルキル基の「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、α−メチルベンジル基、2−ビニルフェネチル基、4−ビニルフェネチル基等が挙げられ、ベンジル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルコキシ基の「アルコキシ基」は、例えば炭素数が1以上6以下、好ましくは炭素数が1以上3以下の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基である。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、メトキシ基またはエトキシ基であることがより好ましい。上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、及びアルコキシ基が置換されている場合、置換基を1または2以上有していてよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アルケニル基(例えば、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)等が挙げられる。なかでもRおよびRがメチル基であり、RおよびRが水素であることが好ましい。
【0025】
【化2】
一般式(2)中、R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基であることが好ましい。なお、各置換基の定義は、前記のとおりである。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。なかでもR13、R14、R17およびR18がメチル基であり、R11、R12、R15およびR16が水素であることが好ましい。また、−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、または酸素であることが好ましい。Aの炭素数は1以上15以下であることがより好ましく、さらに好ましくは2以上10以下である。また、Aの2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基等が挙げられ、なかでもフェニレン基であることが好ましい。特に好ましくは酸素である。
【0026】
(b)成分は、一部又は全部を、ビニルベンジル基等のエチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、及びシリル基等で官能基化された変性ポリフェニレンエーテルとしてもよい。さらに両末端が、ヒドロキシ基、エポキシ基、またはエチレン性不飽和基を有することが好ましい。エチレン性不飽和基としては、エテニル基、アリル基、メタアクリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ビニルベンジル基、ビニルナフチル基等のアルケニルアリール基が挙げられる。また、両末端は、同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。低誘電正接及び樹脂残渣の低減のバランスを高度に制御する観点から、両末端が、ヒドロキシ基、またはビニルベンジル基であることが好ましく、両末端のいずれもが、ヒドロキシ基、またはビニルベンジル基であることがより好ましい。
【0027】
一般式(1)で表される構造単位を有する化合物としては、一般式(3)の化合物であることが特に好ましい。
【化3】
一般式(3)において、nは3以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、23以下であることが好ましく、より好ましくは21以下であり、さらに好ましくは19以下である。
【0028】
また、一般式(2)で表される構造単位を有する化合物としては、一般式(4)の化合物であることが特に好ましい。
【化4】
一般式(4)において、nは2以上であることが好ましく、より好ましくは4以上であり、23以下であることが好ましく、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは18以下である。
【0029】
(b)成分の数平均分子量は、3000以下であることが必要であり、2700以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましい。また(b)成分の数平均分子量は500以上であることが好ましく、700以上であることがより好ましい。(b)成分の数平均分子量を下限値以上とすることにより、得られる接着剤層の可撓性を良好にできる。一方、(b)成分の数平均分子量を上限値以下とすることにより、有機溶剤に対する溶解性を良好にできる。
【0030】
(b)成分の含有量は、(a)成分100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましい。より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上である。前記下限値以上とすることで優れたハンダ耐熱性を発現することができる。また、200質量部以下であることが好ましい。より好ましくは150質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下であり、特に好ましくは50質量部以下である。前記上限値以下とすることで優れた接着性およびハンダ耐熱性を発現することができる。
【0031】
<エポキシ樹脂(c)>
本発明で用いるエポキシ樹脂(c)(以下、単に(c)成分ともいう。)としては、分子中にグリシジル基を有するものであれば、特に限定されないが、好ましくは分子中に2個以上のグリシジル基を有するものである。具体的には、特に限定されないが、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、およびエポキシ変性ポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。好ましくは、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはエポキシ変性ポリブタジエンである。より好ましくは、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはエポキシ変性ポリブタジエンである。
【0032】
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、前記(a)成分〜(c)成分の3種類の樹脂を含有し、下記(A)および/または(B)の要件を満足することで、液晶ポリマー(LCP)などの低極性樹脂基材や金属基材との優れた接着性、耐熱性、ポットライフ性および電気特性(低誘電特性)発現することができる。すなわち、接着剤組成物を基材に塗布、硬化後の接着剤塗膜(接着剤層)が優れた低誘電率特性を発現することができる。
【0033】
<要件(A)>
本発明の接着剤組成物において、ポリカルボジイミド(d)を含有しない場合、エポキシ樹脂(c)の含有量は、酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、20質量部超であることが好ましい。より好ましくは20.5質量部以上であり、さらに好ましくは21質量部以上である。前記下限値以上とすることで十分な硬化効果が得られ、優れた接着性およびハンダ耐熱性を発現することができる。また、60質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下であり、特に好ましくは35質量部以下である。前記上限値以下とすることで接着剤組成物の誘電特性が良好となる。すなわち、前記範囲内とすることで、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性に加え、優れた低誘電特性を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0034】
<要件(B)>
本発明の接着剤組成物は、前記(a)成分〜(c)成分の3種類の樹脂に加え、さらにポリカルボジイミド(d)(以下、単に(d)成分ともいう。)を含有することができる。
【0035】
<ポリカルボジイミド(d)>
ポリカルボジイミド(d)としては、分子内にカルボジイミド基を有するものであれば、特に限定されない。好ましくは分子内にカルボジイミド基を2個以上有するポリカルボジイミドである。ポリカルボジイミドを使用することによって、酸変性ポリオレフィン(a)のカルボキシル基とカルボジイミド基とが反応し、接着剤組成物と基材との相互作用を高め、接着性およびハンダ耐熱性を向上することができる。
【0036】
ポリカルボジイミド(d)を含有させる場合、その含有量は、酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上である。前記下限値以上とすることで基材との相互作用が発現し、接着性が良好となる。また、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。前記上限値以下とすることで優れた誘電特性を発現することができる。すなわち、上記範囲内とすることで、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性に加え、優れた低誘電特性を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0037】
ポリカルボジイミド(d)を含有させる場合は、エポキシ樹脂(c)の含有量は特に限定されず、酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して20質量部以下でも問題ないし、20質量部超でも問題ない。ポリカルボジイミド(d)を含有させる場合のエポキシ樹脂(c)の含有量は、酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上であり、特に好ましくは10質量部以上である。前記下限値以上とすることで十分な硬化効果が得られ、優れた接着性およびハンダ耐熱性を発現することができる。また、60質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下であり、特に好ましくは35質量部以下である。前記上限値以下とすることで接着剤組成物のポットライフ性および誘電特性が良好となる。すなわち、前記範囲内とすることで、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性に加え、優れた低誘電特性を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0038】
本発明の接着剤組成物は、さらに有機溶剤を含有することができる。本発明で用いる有機溶剤は、酸変性ポリオレフィン(a)、オリゴフェニレンエーテル(b)、エポキシ樹脂(c)、およびポリカルボジイミド(d)を溶解させるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノn -ブチルエーテル、エチレングリコールモノiso -ブチルエーテル、エチレングリコールモノtert - ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn -ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノiso -ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn -ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノn -ブチルエーテ等のグリコールエーテル系溶剤等を使用することができ、これら1種または2種以上を併用することができる。特に作業環境性、乾燥性から、メチルシクロへキサンやトルエンが好ましい。
【0039】
有機溶剤は、酸変性オレフィン(a)100質量部に対して、100〜1000質量部の範囲であることが好ましく、200〜900質量部の範囲であることがより好ましく、300〜800質量部の範囲であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで液状およびポットライフ性が良好となる。また、前記上限値以下とすることで製造コストや輸送コストの面から有利となる。
【0040】
本願発明に係る接着剤組成物は、周波数1GHzにおける比誘電率(εc)が3.0以下であることが好ましい。より好ましくは2.6以下であり、さらに好ましくは2.3以下である。下限は特に限定されないが、実用上は2.0である。また、周波数1GHz〜30GHzの全領域における誘電率(ε)が3.0以下であることが好ましく、2.6以下であることがより好ましく、2.3以下であることがさらに好ましい。
【0041】
本願発明に係る接着剤組成物は、周波数1GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましい。より好ましくは0.01以下であり、さらにより好ましくは0.008以下である。下限は特に限定されないが、実用上は0.0001である。また、周波数1GHz〜30GHzの全領域における誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明において、比誘電率(εc)および誘電正接(tanδ)は、以下のとおり測定することができる。すなわち、接着剤組成物を離型基材に乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、約130℃で約3分間乾燥する。次いで約140℃で約4時間熱処理して硬化させて、硬化後の接着剤組成物層(接着剤層)を離型フィルムから剥離する。剥離後の該接着剤組成物層の周波数1GHzにおける比誘電率(εc)を測定する。具体的には、接着剤層の両面に蒸着、スパッタリング法などの薄膜法、または導電性ペーストの塗布などの手法により金属層を形成してコンデンサとし、静電容量を測定して厚さと面積から比誘電率(εc)および誘電正接(tanδ)を算出することができる。
【0043】
また、本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、さらに他の成分を必要に応じて含有してもよい。このような成分の具体例としては、難燃剤、粘着性付与剤、フィラー、シランカップリング剤が挙げられる。
【0044】
<難燃剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて難燃剤を配合しても良い。難燃剤としては、臭素系、リン系、窒素系、水酸化金属化合物等が挙げられる。中でも、リン系難燃剤が好ましく、リン酸エステル、例えば、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等、リン酸塩、例えばホスフィン酸アルミニウム等、ホスファゼン等の公知のリン系難燃剤を使用できる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。難燃剤を含有させる場合、(a)〜(d)成分の合計100質量部に対し、難燃剤を1〜200質量部の範囲で含有させることが好ましく、5〜150質量部の範囲がより好ましく、10〜100質量部の範囲が最も好ましい。前記下限値以上とすることで難燃性が良好となる。また、前記上限値以下とすることで接着性、耐熱性、電気特性等が低下することがない。
【0045】
<粘着性付与剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて粘着付与剤を配合しても良い。粘着性付与剤としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられ、接着強度を向上させる目的で用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。粘着付与剤を含有させる場合、(a)〜(d)成分の合計100質量部に対し、1〜200質量部の範囲で含有させることが好ましく、5〜150質量部の範囲がより好ましく、10〜100質量部の範囲が最も好ましい。前記下限値以上とすることで粘着付与剤の効果を奏することができる。また、前記上限値以下とすることで接着性、耐熱性、電気特性等が低下することがない。
【0046】
<フィラー>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じてシリカなどのフィラーを配合しても良い。シリカを配合することにより耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シリカとしては一般に疎水性シリカと親水性シリカが知られているが、ここでは耐吸湿性を付与する上でジメチルジクロロシランやヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン等で処理を行った疎水性シリカの方が良い。シリカを配合する場合、その配合量は、(a)〜(d)成分の合計100質量部に対し、0.05〜30質量部の配合量であることが好ましい。前記下限値以上とすることで耐熱性を向上させる効果を奏することができる。また、前記上限値以下とすることでシリカの分散不良が生じることがなく、溶液粘度が良好であり作業性が良好となる。また接着性も低下しない。
【0047】
<シランカップリング剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じてシランカップリング剤を配合しても良い。シランカップリング剤を配合することにより金属への接着性や耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されないが、不飽和基を有するもの、グリシジル基を有するもの、アミノ基を有するものなどが挙げられる。これらのうち耐熱性の観点からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランやβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有したシランカップリング剤がさらに好ましい。シランカップリング剤を配合する場合、その配合量は(a)〜(d)成分の合計100質量部に対して0.5〜20質量部の配合量であることが好ましい。0.5質量部以上とすることで優れた耐熱性が良好となる。一方、20質量部以下とすることで耐熱性や接着性が良好となる。
【0048】
<積層体>
本発明の積層体は、基材に接着剤組成物を積層したもの(基材/接着剤層の2層積層体)、または、さらに基材を貼り合わせたもの(基材/接着剤層/基材の3層積層体)である。ここで、接着剤層とは、本発明の接着剤組成物を基材に塗布し、乾燥させた後の接着剤組成物の層をいう。本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種基材に塗布、乾燥すること、およびさらに他の基材を積層することにより、本発明の積層体を得ることができる。
【0049】
<基材>
本発明において基材とは、本発明の接着剤組成物を塗布、乾燥し、接着剤層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、フィルム状樹脂等の樹脂基材、金属板や金属箔等の金属基材、紙類等を挙げることができる。
【0050】
樹脂基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。好ましくはフィルム状樹脂(以下、基材フィルム層ともいう)である。
【0051】
金属基材としては、回路基板に使用可能な任意の従来公知の導電性材料が使用可能である。素材としては、SUS、銅、アルミニウム、鉄、スチール、亜鉛、ニッケル等の各種金属、及びそれぞれの合金、めっき品、亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属等を例示することができる。好ましくは金属箔であり、より好ましくは銅箔である。金属箔の厚みについては特に限定はないが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは、3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下ある。厚さが薄すぎる場合には、回路の充分な電気的性能が得られにくい場合があり、一方、厚さが厚すぎる場合には回路作製時の加工能率等が低下する場合がある。金属箔は、通常、ロール状の形態で提供されている。本発明のプリント配線板を製造する際に使用される金属箔の形態は特に限定されない。リボン状の形態の金属箔を用いる場合、その長さは特に限定されない。また、その幅も特に限定されないが、250〜500cm程度であるのが好ましい。
【0052】
紙類として上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙等を例示することができる。また複合素材として、ガラスエポキシ等を例示することができる。
【0053】
接着剤組成物との接着力、耐久性から、基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、SUS鋼板、銅箔、アルミ箔、またはガラスエポキシが好ましい。
【0054】
<接着シート>
本発明において、接着シートとは、前記積層体と離型基材とを接着剤組成物を介して積層したものである。具体的な構成態様としては、積層体/接着剤層/離型基材、または離型基材/接着剤層/積層体/接着剤層/離型基材が挙げられる。離型基材を積層することで基材の保護層として機能する。また離型基材を使用することで、接着シートから離型基材を離型して、さらに別の基材に接着剤層を転写することができる。
【0055】
本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種積層体に塗布、乾燥することにより、本発明の接着シートを得ることができる。また乾燥後、接着剤層に離型基材を貼付けると、基材への裏移りを起こすことなく巻き取りが可能になり操業性に優れるとともに、接着剤層が保護されることから保存性に優れ、使用も容易である。また離型基材に塗布、乾燥後、必要に応じて別の離型基材を貼付すれば、接着剤層そのものを他の基材に転写することも可能になる。
【0056】
<離型基材>
離型基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたものが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、及びポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものも挙げられる。離型基材と接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、またはポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0057】
なお、本発明において接着剤組成物を基材上にコーティングする方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。もしくは、必要に応じて、プリント配線板構成材料である圧延銅箔、またはポリイミドフィルムに直接もしくは転写法で接着剤層を設けることもできる。乾燥後の接着剤層の厚みは、必要に応じて、適宜変更されるが、好ましくは5〜200μmの範囲である。接着フィルム厚が5μm未満では、接着強度が不十分である。200μm以上では乾燥が不十分で、残留溶剤が多くなり、プリント配線板製造のプレス時にフクレを生じるという問題点が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は1質量%以下が好ましい。1質量%超では、プリント配線板プレス時に残留溶剤が発泡して、フクレを生じるという問題点が挙げられる。
【0058】
<プリント配線板>
本発明における「プリント配線板」は、導体回路を形成する金属箔と樹脂基材とから形成された積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、例えば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、或いは全面的にカバーフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などを総称している。
【0059】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の4層から構成されるプリント配線板とすることができる。また例えば、基材フィルム層、接着剤層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の5層から構成されるプリント配線板とすることができる。
【0060】
さらに、必要に応じて、上記のプリント配線板を2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。
【0061】
本発明の接着剤組成物はプリント配線板の各接着剤層に好適に使用することが可能である。特に本発明の接着剤組成物を接着剤として使用すると、プリント配線板を構成する従来のポリイミド、ポリエステルフィルム、銅箔だけでなく、LCPなどの低極性の樹脂基材と高い接着性を有し、耐ハンダリフロー性を得ることができ、接着剤層自身が低誘電特性に優れる。そのため、カバーレイフィルム、積層板、樹脂付き銅箔及びボンディングシートに用いる接着剤組成物として好適である。
【0062】
本発明のプリント配線板において、基材フィルムとしては、従来からプリント配線板の基材として使用されている任意の樹脂フィルムが使用可能である。基材フィルムの樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。特に、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の低極性基材に対しても、優れた接着性を有する。
【0063】
<カバーフィルム>
カバーフィルムとしては、プリント配線板用の絶縁フィルムとして従来公知の任意の絶縁フィルムが使用可能である。例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の各種ポリマーから製造されるフィルムが使用可能である。より好ましくは、ポリイミドフィルムまたは液晶ポリマーフィルムである。
【0064】
本発明のプリント配線板は、上述した各層の材料を用いる以外は、従来公知の任意のプロセスを用いて製造することができる。
【0065】
好ましい実施態様では、カバーフィルム層に接着剤層を積層した半製品(以下、「カバーフィルム側半製品」という)を製造する。他方、基材フィルム層に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側2層半製品」という)または基材フィルム層に接着剤層を積層し、その上に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側3層半製品」という)を製造する(以下、基材フィルム側2層半製品と基材フィルム側3層半製品とを合わせて「基材フィルム側半製品」という)。このようにして得られたカバーフィルム側半製品と、基材フィルム側半製品とを貼り合わせることにより、4層または5層のプリント配線板を得ることができる。
【0066】
基材フィルム側半製品は、例えば、(A)前記金属箔に基材フィルムとなる樹脂の溶液を塗布し、塗膜を初期乾燥する工程、(B)(A)で得られた金属箔と初期乾燥塗膜との積層物を熱処理・乾燥する工程(以下、「熱処理・脱溶剤工程」という)を含む製造法により得られる。
【0067】
金属箔層における回路の形成は、従来公知の方法を用いることができる。アクティブ法を用いてもよく、サブトラクティブ法を用いてもよい。好ましくは、サブトラクティブ法である。
【0068】
得られた基材フィルム側半製品は、そのままカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後にカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0069】
カバーフィルム側半製品は、例えば、カバーフィルムに接着剤を塗布して製造される。必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0070】
得られたカバーフィルム側半製品は、そのまま基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0071】
基材フィルム側半製品とカバーフィルム側半製品とは、それぞれ、例えば、ロールの形態で保管された後、貼り合わされて、プリント配線板が製造される。貼り合わせる方法としては、任意の方法が使用可能であり、例えば、プレスまたはロールなどを用いて貼り合わせることができる。また、加熱プレス、または加熱ロ−ル装置を使用するなどの方法により加熱を行いながら両者を貼り合わせることもできる。
【0072】
補強材側半製品は、例えば、ポリイミドフィルムのように柔らかく巻き取り可能な補強材の場合、補強材に接着剤を塗布して製造されることが好適である。また、例えばSUS、アルミ等の金属板、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化させた板等のように硬く巻き取りできない補強板の場合、予め離型基材に塗布した接着剤を転写塗布することによって製造されることが好適である。また、必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0073】
得られた補強材側半製品は、そのままプリント配線板裏面との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0074】
基材フィルム側半製品、カバーフィルム側半製品、補強材側半製品はいずれも、本発明におけるプリント配線板用積層体である。
【実施例】
【0075】

以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。実施例中および比較例中に単に部とあるのは質量部を示す。
(物性評価方法)
【0076】
酸価(a)成分:酸変性ポリオレフィン
本発明における酸価(当量/10g)は、酸変性ポリオレフィンをトルエンに溶解し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定した。樹脂1ton中の当量(当量/10g)として表した。
【0077】
数平均分子量(Mn)
本発明における数平均分子量は(株)島津製作所製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC、標準物質:ポリスチレン樹脂、移動相:テトラヒドロフラン、カラム:Shodex KF−802 + KF−804L + KF−806L、カラム温度:30℃、流速:1.0ml/分、検出器:RI検出器)によって測定した値である。
【0078】
融点、融解熱量の測定
本発明における融点、融解熱量は示差走査熱量計(以下、DSC、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製、Q−2000)を用いて、20℃/分の速度で昇温融解、冷却樹脂化して、再度昇温融解した際の融解ピークのトップ温度および面積から測定した値である。
【0079】
(1)剥離強度(接着性)
後述する接着剤組成物を厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル(登録商標))、または、厚さ18μmの圧延銅箔(JX金属株式会社製、BHYシリーズ)に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を厚さ12.5μmのポリイミドフィルムもしくは18μmの圧延銅箔と貼り合わせた。貼り合わせは、圧延銅箔の光沢面が接着剤層と接する様にして、160℃で40kgf/cmの加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た。剥離強度は、25℃において、フィルム引き、引張速度50mm/minで90°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。
<評価基準>
◎:1.0N/mm以上
○:0.8N/mm以上1.0N/mm未満
△:0.5N/mm以上0.8N/mm未満
×:0.5N/mm未満
【0080】
(2)ハンダ耐熱性
上記と同じ方法でサンプルを作製し、2.0cm×2.0cmのサンプル片を23℃で2日間エージング処理を行い、280℃で溶融したハンダ浴に10秒フロートし、膨れなどの外観変化の有無を確認した。
<評価基準>
◎:膨れ無し
○:一部膨れ有
△:多くの膨れ有
×:膨れ、かつ変色有
【0081】
(3)比誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ)
後述する接着剤組成物を厚さ35μmの電解銅箔の光沢面に、乾燥硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて試験用の銅張積層板を得た。得られた試験用の銅張積層板の硬化した接着剤組成物面に、蒸発乾固型の導電性銀ペーストを直径50mmの円形にスクリーン印刷にて塗布し120℃30分乾燥硬化させ、さらに導電性銀ペーストによる円の中央に長さ30mmのリード線を導電性接着剤にて接着し平行平板コンデンサを得た。得られた平行平板コンデンサの静電容量Capと損失係数D(誘電正接)をPRECISION LCR meter HP−4284Aを用いて、22℃下、周波数1MHzの条件で測定を行い、次式より比誘電率(εc)を算出した。
εc=(Cap×d)/(S×ε0
ここで Cap:静電容量[F]
d:誘電体層厚さ=25×10-6[m]
S:被測定誘電体面積=π×(25×10-32
ε0:真空の誘電率 8.854×10-12
である。
得られた比誘電率、誘電正接について、以下の通りに評価した。
<比誘電率の評価基準>
◎:2.3以下
○:2.3を超え2.6以下
△:2.6を超え3.0以下
×:3.0を超える
<誘電正接の評価基準>
◎:0.008以下
○:0.008を超え0.01以下
△:0.01を超え0.02以下
×:0.02を超える
【0082】
(4)ポットライフ性
ポットライフ性とは、(a)〜(d)成分およびメチルシクロヘキサンとトルエンの混合溶媒(メチルシクロヘキサン/トルエン=80/20(v/v))を固形分濃度が20質量%となるように配合して樹脂溶液(ワニス)を調製し、その配合直後または配合後一定時間経過後の該ワニスの安定性を指す。ポットライフ性が良好な場合は、ワニスの粘度上昇が少なく長期間保存が可能であることを指し、ポットライフ性が不良な場合は、ワニスの粘度が上昇(増粘)し、ひどい場合にはゲル化現象を起こし、基材への塗布が困難となり、長期間保存が不可能であることを指す。
表1、2の比率に従い調製したワニスを、ブルックフィールド型粘度計を用いて25℃の分散液粘度測定し、初期分散液粘度ηB0を求めた。その後、ワニスを25℃下7日間貯蔵し、25℃下で分散粘度ηBを測定した。ワニス粘度を下記式にて算出を行い、以下の通りに評価した。
溶液粘度比=溶液粘度ηB/溶液粘度ηB0
<評価基準>
◎:0.5以上1.5未満
○:1.5以上2.0未満
△:2.0以上3.0未満
×:3.0以上、またはプリン化により粘度測定不可
【0083】
実施例1
CO−1を80質量部、OPE−2St 1200を20質量部、ポリカルボジイミドV−09GBを5質量部、エポキシ樹脂HP−7200を17質量部および有機溶媒(メチルシクロヘキサン/トルエン=80/20(v/v))を488質量部(固形分濃度で20質量%)配合し、接着剤組成物を得た。配合量、接着強度、ハンダ耐熱性、電気特性を表1に示す。
【0084】
実施例2〜20
表1に示すとおりに変更し、実施例1と同様な方法で実施例2〜20を行った。接着強度、ハンダ耐熱性、電気特性を表1に示す。なお、有機溶媒(メチルシクロヘキサン/トルエン=80/20(v/v))は固形分濃度が20質量%となるように調整した。
【0085】
【表1】
【0086】
比較例1〜5
表2に示すとおりに変更し、実施例1と同様な方法で比較例1〜5を行った。接着強度、ハンダ耐熱性、電気特性を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
表1、2で用いた酸変性ポリオレフィン(a)、オリゴフェニレンエーテル(b)、エポキシ樹脂(c)ポリカルボジイミド(d)は以下のものである。
(オリゴフェニレンエーテル(b))
オリゴフェニレンエーテルスチレン変性品:OPE−2St 1200(三菱ガス化学社製 Mn1000の一般式(4)の構造を有する化合物)
オリゴフェニレンエーテルスチレン変性品:OPE−2St 2200(三菱ガス化学社製 Mn2000の一般式(4)の構造を有する化合物)
オリゴフェニレンエーテル:SA90(SABIC社製 Mn1800の一般式(3)の構造を有する化合物)
オリゴフェニレンエーテル:PPOレジンパウダー(SABIC社製 Mn20000の一般式(3)の構造を有する化合物)
(エポキシ樹脂(c))
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:HP−7200(DIC社製 エポキシ当量 259g/eq)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:HP−7200H(DIC社製 エポキシ当量 278g/eq)
エポキシ変性ポリブタジエン樹脂:JP−100(日本曹達社製)
(ポリカルボジイミド(d))
ポリカルボジイミド樹脂:V−09GB(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド当量 216g/eq)
ポリカルボジイミド樹脂:V−03(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド当量 209g/eq)
【0089】
(酸変性ポリオレフィン(a))
製造例1
1Lオートクレーブに、プロピレン−ブテン共重合体(三井化学社製「タフマー(登録商標)XM7080」)100質量部、トルエン150質量部及び無水マレイン酸19質量部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド6質量部を加え、140℃まで昇温した後、更に3時間撹拌した。その後、得られた反応液を冷却後、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、当該樹脂を含有する液を遠心分離することにより、無水マレイン酸がグラフト重合した酸変性プロピレン−ブテン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離、精製した。その後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体(CO−1、酸価19mgKOH/g、数平均分子量25,000、Tm80℃、△H35J/g)を得た。
【0090】
製造例2
無水マレイン酸の仕込み量を14質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体(CO−2、酸価14mgKOH/g、数平均分子量30,000、Tm78℃、△H25J/g)を得た。
【0091】
製造例3
無水マレイン酸の仕込み量を11質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体(CO−3、酸価11mgKOH/g、数平均分子量33,000、Tm80℃、△H25J/g)を得た。
【0092】
製造例4
無水マレイン酸の仕込み量を6質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体(CO−4、酸価7mgKOH/g、数平均分子量35,000、Tm82℃、△H25J/g)を得た。
【0093】
表1、2から明らかなように、実施例1〜20では、主剤のポットライフ性に優れ、接着剤として、ポリイミド(PI)と銅箔、銅箔同士およびPI同士の優れた接着性、ハンダ耐熱性を有する。また、実施例1〜16、19、20の接着剤組成物の電気特性は誘電率、誘電正接ともに低く良好である。実施例17、18では、それぞれエポキシ樹脂(c)またはポリカルボジイミド(d)の配合量が多いため電気特性が劣るものの、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性は良好である。これに対し、比較例1では、オリゴフェニレンエーテル(b)を含有していないため、ハンダ耐熱性が低い。比較例2では、酸変性ポリオレフィン樹脂(a)を含有していないため接着性が劣る。比較例3では、エポキシ樹脂(c)を含有していないためハンダ耐熱性が低い。比較例4では、オリゴフェニレンエーテル(b)の数平均分子量が大きいため有機溶剤に溶解せず、樹脂溶液(ワニス)を作製できなかった。比較例5では、エポキシ樹脂(c)の配合量が少なく、かつカルボジイミド(d)を含有していないため、ハンダ耐熱性が低い。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の接着剤組成物は、従来のポリイミド、ポリエチレンテレフタレートフィルムだけでなく、銅箔などの金属基材との、高い接着性を有し、高いハンダ耐熱性を得ることができ、ポットライフ性にも優れる。また、エポキシ樹脂やポリカルボジイミドの配合量を調整することで優れた低誘電特性を発現することができる。本発明の接着剤組成物は、接着性シート、およびこれを用いて接着した積層体を得ることができる。上記特性により、フレキシブルプリント配線板用途、特に高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が求められるFPC用途において有用である。