(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ナーリング加工部以外の部分における架橋重合体粒子の突出高さは、架橋重合体粒子の長径の0.3倍以上0.8倍以下である請求項1から3いずれか記載の光学フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪光学フィルム≫
光学フィルムは、架橋重合体粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物からなり、幅方向に関する一部にナーリング加工部を有する光学フィルムである。
また、ナーリング加工部のナーリング凸に接触する接触面(以下、単に接触面とも記す。)では、架橋重合体粒子の突出高さが架橋重合体粒子の長径の0.0倍以上0.5倍以下である。
【0012】
光学フィルムにおいて、ナーリング加工は片面に施される。フィルムは通常、ロール状に巻き取られるが、その際、ナーリング加工部のナーリング凸は、フィルムのナーリング加工が施されていない面と接触する。
つまり、「ナーリング加工部のナーリング凸に接触する接触面」とは、フィルムのナーリング加工が施されていない面である。
なお、接触面は、ナーリング加工が施されていないフィルム表面中のナーリング凸と接触する箇所のみを意味する。
【0013】
光学フィルムにおいては、ナーリング加工部のナーリング凸に接触する接触面での、架橋重合体粒子の突出高さが架橋重合体粒子の長径の0.0倍以上0.5倍以下であることにより、ナーリング加工部と、接触面との滑りが抑えられ、これによりフィルムの蛇行が抑制される。
なお、下限値0.0倍は、架橋重合体粒子がフィルムに埋没して接触面の表面が凹んでいる状態も含まれる。
架橋重合体粒子の突出高さは、架橋重合体粒子の長径の0.1倍以上であってもよく、0.2倍以上であってもよい。また、架橋重合体粒子の突出高さは、架橋重合体粒子の長径の0.4倍以下であってもよく、0.3倍以下であってもよい。
架橋重合体粒子の突出高さは、走査型プローブ顕微鏡を用いてフィルムの表面形状に関するデータを取得し、架橋重合体粒子が突出していない平滑部の高さと、突出する架橋重合体粒子の頂部の平均高さとの差として測定される。
【0014】
架橋重合体粒子の突出高さが架橋重合体粒子の長径の0.0倍以上0.5倍以下であることは、接触面の表面において架橋重合体が少ししか突出していないことを意味する。
この場合、ナーリング加工部と、接触面との接触状態が、点接触よりも面接触に近い状態であるため、ナーリング加工部と接触面とが滑りにくい。その結果、蛇行が抑制される。
【0015】
架橋重合体粒子の長径とは、架橋重合体粒子の外周の任意の二点間を結ぶ距離のうち最長の長さであって、以下の方法により測定される。架橋重合体粒子を顕微鏡観察し、架橋重合体粒子の外周の任意の二点間を結ぶ距離のうち最長の長さが50nm以上の10個以上の架橋重合体粒子の長径を測定することで、数平均粒子径として架橋重合体粒子の長径の値を求めることができる。
フィルム内の架橋重合体粒子について長径を測定する場合には、フィルム表面またはフィルム断面を顕微鏡観察して、上記の方法に従って、数平均径である長径を求めればよい。
【0016】
架橋重合体粒子の長径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。架橋重合体粒子の長径は、50〜450nmが好ましく、50〜350nmがより好ましく、60〜300nmがさらに好ましい。架橋重合体粒子の長径が短すぎると、十分な耐割れ性を備えるフィルムを得にくい場合がある。架橋重合体粒子の長径が長すぎると、透明性に優れるフィルムを得にくい場合がある。
【0017】
接触面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、接触面における架橋重合体粒子の突出状態が、所定の要件を満たしていれば特に限定されない。接触面の表面粗さは、1nm以上50nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましい。
【0018】
接触面を含むフィルム表面における、ナーリング凸に接触しない箇所(非接触面)における架橋重合体粒子の突出高さは、架橋重合体粒子の長径の0.3倍以上0.8倍以下であるのが好ましい。
ナーリング凸に接触しない箇所における架橋重合体粒子の突出高さは、架橋重合体粒子の長径の0.4倍以上であってもよく、0.5倍以上であってもよい。また、架橋重合体粒子の突出高さは、架橋重合体粒子の長径の0.7倍以下であってもよく、0.6倍以下であってもよい。
非接触面における架橋重合体粒子の突出高さと、接触面における架橋重合体粒子の高さとは、いずれが高くてもよいが、非接触面における架橋重合体粒子の突出高さが高いのが好ましい。
ナーリング凸に接触しない箇所において、架橋重合体粒子が上記の範囲で突出している場合、フィルム表面にアンチブロッキング性が付与され、ブロッキングに起因する欠陥の発生が良好に抑制される。
【0019】
接触面に含まれる架橋重合体粒子と、非接触面に含まれる架橋重合体粒子とについて、材質や長径は同一でも、異なっていてもよい。
接触面に含まれる架橋重合体粒子と、非接触面に含まれる架橋重合体粒子とについて、材質や長径が異なる場合、例えば、接触面が形成される箇所と、非接触面が形成される箇所とで、異なる架橋重合体粒子を含む熱可塑性樹脂を共押出してフィルムを形成した後、接触面が形成される箇所にナーリング加工を施せばよい。
【0020】
ナーリング加工は、フィルムの幅方向の任意の領域になされてよい。ナーリング加工が施される領域は、1箇所でもよく、2箇所以上でもよい。ナーリング加工が施される箇所が2箇所以上である場合、ナーリング加工部と接触面とが滑りにくいことによって、ナーリングが施された複数の領域に挟まれた領域についてフィルム輸送時のずれが顕著に抑制される。
蛇行の抑制効果が高い点からは、ナーリングはフィルム幅方向に関する両端部に施されるのが好ましい。
ナーリングをフィルム幅方向に関する両端部に施すことは、ナーリングが施された箇所をスリット加工等により切除する場合に、幅広のフィルムが得られる点でも好ましい。
【0021】
ナーリング加工を施す箇所の幅の合計は、所望する効果が得られる限り特に限定されないが、フィルムの幅方向に関する幅として、10mm以上100mm以下が好ましい。ナーリング加工を施す箇所の幅の合計は20mm以上であってもよく、30mm以上であってもよい。また、ナーリング加工を施す箇所の幅の合計は90mm以下であってもよく、80mm以下であってもよい。
【0022】
ナーリング加工が、フィルムの幅方向に関する両端部に施される場合、両端部からそれぞれ50mm以下の範囲内において、30mm以下の幅でナーリングが施されるのが好ましい。フィルム両端に施されるナーリング加工の幅は、所望する効果が得られる限り特に限定されないがそれぞれ5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。
ナーリング加工が、フィルムの幅方向に関する両端部に施される場合、両端部においてナーリング加工が行なわれる幅は、同じ幅であるのが好ましい。
【0023】
ナーリングによる形成される凹凸について、そのパターン形状は特に限定されない。これらに限定されないが、パターン形状の例としては、平目、斜目、綾目等が挙げられる。
ナーリングのパターンにおけるピッチ(隣接するナーリング凸の頂部間の最短距離)は特に限定されない。
ナーリング凸の高さは、フィルムの膜厚に応じて適宜選択され、1〜10μmが好ましく、1.5〜8μmがより好ましく、2.0〜6.0μmが特に好ましい。
【0024】
光学フィルムの厚みは特に限定されない。
以上説明した構成を備える光学フィルムであれば、例えば、厚み30μm以上、80μm以下といった極めて薄いフィルムにおいてもナーリングが施された箇所における滑性抑制が実現され、且つナーリングが施されていない箇所に滑性を付与することができるので、架橋重合体粒子を用いてフィルムに滑性を付与しつつ、フィルムの蛇行等による巻きずれの発生を抑制できる。
従来知られる光学フィルムでは、薄いフィルムの製造時に、架橋重合体粒子を用いてフィルムに滑性を付与しつつ、フィルムの蛇行等による巻きずれの発生を抑制することは困難であり、かかる効果は顕著である。
【0025】
以上説明した通り、上記の光学フィルムはナーリング加工部を備える。光学フィルムは、通常、ナーリング加工部をスリット加工等の方法により切除した状態で使用される。
しかし、光学フィルムの使用の態様によって、ナーリング加工部の存在が許容される場合がある。この場合は、ナーリング加工部を切除することなく、光学フィルムを使用することができる。
【0026】
以下、光学フィルムの材料である熱可塑性樹脂組成物における、必須または任意の成分について説明する。
【0027】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、フィルムにおけるマトリックス部分を構成する材料である。フィルムの製造に使用される熱可塑性樹脂としては、光学フィルムとして使用可能な熱可塑性樹脂であって、溶融押出による成形が可能なものであれば、特に制限されない。
例えば、ポリカーボネート樹脂、芳香族ビニル系樹脂およびその水素添加物、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等の熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。これらのうち、アクリル系樹脂が透明性の観点から特に好ましい。
【0028】
アクリル系樹脂としては、特に制限されないが、メタクリル酸メチルを単量体成分としたメタクリル系樹脂が使用でき、メタクリル酸メチル由来の構成単位が30〜100重量%含有されたものが好ましい。アクリル系樹脂の中でも、耐熱性のアクリル系樹脂が好ましい。
【0029】
耐熱性のアクリル系樹脂としては、例えば、
1)共重合成分としてN−置換マレイミド化合物が共重合されているアクリル系樹脂、
2)無水グルタル酸アクリル系樹脂、
3)ラクトン環構造を有するアクリル系樹脂、
4)グルタルイミドアクリル系樹脂、
5)水酸基および/またはカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂、
6)芳香族ビニル単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られる芳香族ビニル含有アクリル系重合体(例えば、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン含有アクリル系重合体)
7)上記6)の樹脂の芳香族環を部分的にまたは全て水素添加して得られる水添芳香族ビニル含有アクリル系重合体(例えば、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン含有アクリル系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン含有アクリル系重合体)、
8)環状酸無水物繰り返し単位を含有するアクリル系重合体等を挙げることができる。
耐熱性および光学特性の観点からグルタルイミドアクリル系樹脂をより好ましく用いることができる。
【0030】
グルタルイミドアクリル系樹脂について、以下に詳述する。グルタルイミドアクリル系樹脂としては具体的には、例えば、下記一般式(1):
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「グルタルイミド単位」ともいう)と、
下記一般式(2):
【化2】
(式中、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう)とを含むグルタルイミドアクリル系樹脂を好適に用いることができる。
【0031】
また、上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3):
【化3】
(式中、R
7は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
で表される単位(以下、「芳香族ビニル単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0032】
上記一般式(1)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。R
3は水素原子、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましく、R
1はメチル基であり、R
2は水素原子であり、R
3はメチル基であることがより好ましい。
【0033】
上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR
1、R
2、およびR
3が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位が連続している場合に、当該連続した(メタ)アクリル酸エステル単位に含まれる隣接した2つのアルコキシカルボニル基(カルボン酸エステル基)をイミド化することにより、形成することができる。
【0034】
また、無水マレイン酸等の酸無水物、または、このような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成させることができる。
【0035】
上記一般式(2)において、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R
6は水素またはメチル基であることが好ましく、R
4は水素であり、R
5はメチル基であり、R
6はメチル基であることがより好ましい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR
4、R
5、およびR
6が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位として、スチレン、α−メチルスチレン等を含むことが好ましく、スチレンを含むことがより好ましい。
また、上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、芳香族ビニル構成単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R
7、およびR
8が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0036】
上記一般式(2)において、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり、R
6は水素原子またはメチル基であることが好ましく、R
4は水素原子であり、R
5はメチル基であり、R
6はメチル基であることがより好ましい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR
4、R
5、およびR
6が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位として、スチレン、α−メチルスチレン等を含むことが好ましく、スチレンを含むことがより好ましい。
また、上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、芳香族ビニル構成単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R
7、およびR
8が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0037】
上記グルタルイミドアクリル系樹脂において、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、R
3の構造等に依存して変化させることが好ましい。
【0038】
一般的には、上記グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミドアクリル系樹脂の1重量%以上が好ましく、1重量%〜95重量%がより好ましく、2重量%〜90重量%がさらに好ましく、3重量%〜80重量%が特に好ましい。
グルタルイミド単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性および透明性が低下したり、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度が低下したりしにくい。
【0039】
一方、グルタルイミド単位の含有量が上記範囲より少ないと、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。また、上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に脆くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
【0040】
上記グルタルイミドアクリル系樹脂において、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、特に限定されるものではなく、求められる物性に応じて適宜設定することが可能である。使用される用途によっては、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は0重量%であってもよい。
一般式(3)で表される芳香族ビニル単位を含む場合、その含有量は、グルタルイミドアクリル系樹脂の総繰り返し単位を基準として、10重量%以上とすることが好ましく、10重量%〜40重量%とすることがより好ましく、15重量%〜30重量%とすることがさらに好ましく、15重量%〜25重量%とすることが特に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性が不足したり、フィルム加工時の機械的強度が低下したりしにくい。
一方、芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲より多いと、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性が不足する傾向がある。
【0041】
上記グルタルイミドアクリル系樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
その他の単位としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。
これらのその他の単位は、上記グルタルイミドアクリル系樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0042】
上記グルタルイミドアクリル系樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×10
4〜5×10
5であることが好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりしにくい。一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0043】
また、上記グルタルイミドアクリル系樹脂のガラス転移温度は特に限定されるものではないが、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の適用範囲を広げることができる。
【0044】
上記グルタルイミドアクリル系樹脂の製造方法は特に制限されないが、例えば、特開2008−273140号公報に記載されている方法等があげられる。
【0045】
(架橋重合体粒子)
架橋重合体粒子は、従来知られる種々の架橋構造を有する重合体を含む粒子であれば特に限定されない。
架橋重合体粒子は、ゴム部を有する多層構造型(コアシェル型)の粒子であるのが好ましい。シェル層の存在により、混合する熱可塑性樹脂との相溶性が向上し、均一に粒子を分散させることができる。シェル層がない粒子を熱可塑性樹脂に混合すると、粒子が均一に分散しにくく、フィルムの透明性が低下する場合がある。
以下、架橋重合体粒子の好ましい例について説明する。
【0046】
・多層構造粒子
架橋重合体粒子の好ましい例としては、架橋度が2.3重量%以上4.0重量%以下であり且つ粒子径が180nm以上400nm以下であるゴム部を有する多層構造粒子が挙げられる。
かかる多層構造粒子は、フィルムの滑性を高めフィルムにアンチブロッキング性を付与するとともに、フィルム内での分散性に優れ、フィルムの透明性を低下させにくい。
【0047】
2.3重量%以上4.0重量%以下の架橋度を有するゴム部を有する多層構造粒子は、ある程度の硬さを有する。その結果、多層構造粒子を含むフィルムが、フィルム同士、またはフィルムとロールとで接触する場合に、多層構造粒子が変形しにくく、特にフィルムに滑性を付与しやすい。
なお、架橋度とは、ゴム部の材質に製造に使用された単量体についての、単量体の総重量に対する、2官能性以上の多官能性単量体の重量の比率(重量%)である。
【0048】
ゴム部の架橋度が2.3重量%未満である場合、ゴム部が柔軟であるため、フィルム表面から突出した多層構造粒子がロールやフィルムに接触した場合に変形しやすい。このため、若干フィルムに滑性を付与しにくい場合がある。
ゴム部の架橋度が4.0重量%超である場合、多層構造粒子に割れや欠けが発生しやすく、所望する滑性をフィルム中央部に付与できなかったり、フィルム製造時に微粉が生じたりする場合がある。
【0049】
コアであるゴム部の粒子径が180nm以上400nm以下である多層構造粒子を用いる場合、フィルムの透明性を損なうことなく、フィルムに滑性を付与しやすい。ゴム部の粒子径が、180nm未満である場合、フィルムに所望する程度の滑性を若干付与しにくい。また、ゴム部の粒子径が400nm超である場合、所望する程度の透明性を有するフィルムを得にくい場合がある。ここで、ゴム部の粒子径は、株式会社 日立ハイテクノロジーズのU−5100形レシオビーム分光光度計を用いて、546nmの波長の光散乱を用いて求められる。
【0050】
多層構造粒子は、上記の所定の要件を備えるゴム部を有するコア粒子と、シェル層とからなる。シェル層は単層であっても、多層であってもよい。
【0051】
シェル層は、共有結合等によりゴム部に化学的に結合していてもよく、ゴム部に化学的に結合することなく、ゴム部を被覆していてもよい。また、シェル層が、2層以上の多層構造である場合、シェル層を構成する各層は、共有結合等により相互に化学的に結合していてもよく、化学的に結合していなくてもよい。
シェル層を、ゴム部の表面、または他のシェル層の表面に化学的に結合させる方法の好適な例としては、グラフト重合によりシェル層をさせる方法が挙げられる。
【0052】
ゴム部の材質としては、例えば、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、オルガノシロキサン系架橋重合体等が挙げられる。なかでも、フィルムの耐候性(耐光性)、透明性の面で、(メタ)アクリル系架橋重合体(本願明細書において、(メタ)アクリル系共重合体からなるゴム部を、アクリル系ゴム粒子ともいう)が特に好ましい。
【0053】
アクリル系ゴム粒子としては、例えばABS樹脂ゴム粒子、ASA樹脂ゴム粒子、アクリル酸エステル系ゴム粒子が挙げられる。
多層構造粒子としては、これらのアクリル系ゴム粒子の表面に、所望する単量体を用いてグラフト重合を行ってシェル層を形成して得られる多層構造粒子が好ましい。
得られるフィルムの透明性等の点から、多層構造粒子としては、以下に示すアクリル酸エステル系ゴム状重合体の粒子の表面にグラフト重合を行って得られる、アクリル系グラフト共重合体粒子が好ましい。
アクリル系グラフト共重合体粒子は、アクリル酸エステル系ゴム状重合体の粒子の存在下に、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合して得ることができる。
【0054】
ゴム部の材質である、アクリル酸エステル系ゴム状重合体は、アクリル酸エステルを主成分としたゴム状重合体である。具体的には、アクリル酸エステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体50〜0重量%からなる単量体混合物(100重量%)並びに、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体を重合させてなるものが好ましい。
多官能性単量体は、ゴム部の架橋度が、2.3重量%以上4.0重量%以下の範囲内であるように、所望する量使用される。
単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。
【0055】
アクリル酸エステルとしては、重合性やコストの点より、アルキル基の炭素数1〜12のものを用いることが好ましい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸フェニル、およびアクリル酸2−フェノキシエチル等が挙げられる。
これらのアクリル酸エステルは2種以上併用してもよい。
アクリル酸エステル量は、単量体混合物100重量%において50重量%以上100重量%以下が好ましく、60重量%以上99重量%以下がより好ましく、70重量%以上99重量%以下がさらに好ましく、80重量%以上99重量%以下が最も好ましい。
50重量%未満では耐衝撃性が低下し、引張破断時の伸びが低下し、フィルム切断時にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0056】
アクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステル類が特に好ましい。メタクリル酸エステル類としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、およびメタクリル酸n−オクチル等が挙げられる。
【0057】
また、芳香族ビニル類およびその誘導体、およびシアン化ビニル類も好ましい。これらのビニル系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等があげられる。その他、無置換および/または置換無水マレイン酸類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル、ハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸およびその塩、(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0058】
アクリル酸エステルを主成分とする単官能性の単量体と共重合される多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、およびこれらのアクリレート類等を使用することができる。これらの多官能性単量体は2種以上使用してもよい。
【0059】
多層構造重合体は、前記ゴム部の内側(中心側)に、さらに他の重合体層を有していてもよい。アンチブロッキング性の観点から、メタクリル酸アルキルエステル40〜100重量%、および、これと共重合可能な二重結合を有する他の単量体60〜0重量%からなる単量体混合物、並びに、当該単量体混合物100重量部に対して多官能性単量体0.01〜10重量部を重合して得られるメタクリル系架橋重合体層を有することが好ましい。共重合可能な二重結合を有する単量体としては、上述の共重合可能な他のビニル系単量体や、アクリル酸エステル等を同様に例示される。
ゴム部と、ゴム部の表面にグラフト重合により形成されたシェル層とを備える、アクリル系グラフト共重合体は、アクリル酸エステル系ゴム状重合体の粒子5〜90重量部(より好ましくは、5〜75重量部)の存在下に、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物95〜25重量部を少なくとも1段階で重合させることより得られるものが好ましい。
【0060】
グラフト共重合組成(単量体混合物)中のメタクリル酸エステルは50重量%以上が好ましい。50重量%未満では得られるフィルムの硬度、剛性が低下する傾向がある。
グラフト共重合に用いられる単量体としては、前述のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、これらを共重合可能なビニル系単量体を同様に使用でき、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルが好適に使用される。アクリル系樹脂との相溶性の観点からメタクリル酸メチル、ジッパー解重合を抑制する点からアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0061】
光学的等方性の観点からは、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体(「環構造含有(メタ)アクリル系単量体」と称する。)も、グラフト共重合用の単量体として好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、および(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル等が挙げられる。
【0062】
その使用量は、グラフト共重合用の単量体混合物の総量(環構造含有(メタ)アクリル系単量体およびこれと共重合可能な他の単官能性単量体の総量)100重量%において1〜100重量%が好ましく、5〜70重量%がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。
【0063】
ここでいう、環構造含有(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な他の単官能性単量体には、前述のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、共重合可能な他のビニル系単量体が同様に使用できるが、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルを含むことが好ましい。
【0064】
メタクリル酸エステルは、前述の環構造含有ビニル系単量体およびこれと共重合可能な他の単官能性単量体の総量100重量%において0〜98重量%含まれることが好ましく、0.1〜98重量%含まれることがより好ましく、1〜94重量%がさらに好ましく、30〜90重量%が特に好ましい。
また、アクリル酸エステルは、前述の環構造含有ビニル系単量体およびこれと共重合可能な他の単官能性単量体の総量100重量%において0〜98重量%含まれることが好ましく、0.1〜98重量%含まれることがより好ましく、1〜50重量%がさらに好ましく、5〜50重量%が特に好ましい。
【0065】
アクリル酸エステル系ゴム状重合体の粒子に対するグラフト率は、10〜250%が好ましく、より好ましくは40〜230%、最も好ましくは60〜220%である。
グラフト率が10%未満では、フィルム中でアクリル系グラフト共重合体粒子が凝集しやすく、透明性が低下したり、異物原因となるおそれがある。また引張破断時の伸びが低下しフィルム切断時にクラックが発生しやすくなったりする傾向がある。250%を超えると、例えばフィルム成形時の溶融粘度が高くなり、フィルムの成形性が低下する傾向がある。
【0066】
上記グラフト率とは、アクリル系グラフト共重合体粒子におけるグラフト成分の重量比率であり、例えば、次の方法で測定される。
アクリル系グラフト共重合体粒子2gをメチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpm、温度12℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とに分離する(遠心分離作業を合計3回セット)。得られた不溶分の重量と、アクリル系グラフト共重合体粒子に含まれるアクリル酸エステル系ゴム状重合体の重量とから、以下の式によりグラフト率を算出する。
グラフト率(%)=[{(メチルエチルケトン不溶分の重量)−(アクリル酸エステル系ゴム状重合体の重量)}/(アクリル酸エステル系ゴム状重合体の重量)]×100
【0067】
アクリル系グラフト共重合体粒子は、一般的な乳化重合法によって製造できる。具体的には、水溶性重合開始剤の存在下、乳化剤を用いてアクリル酸エステル単量体を連続的に重合させる方法を例示できる。
乳化重合法では、連続重合を単一の反応槽で行うことが好ましく、二槽以上の反応槽を用いるとラテックスの機械的安定性が低下するため好ましくない。
重合温度としては30℃以上100℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上80℃以下である。30℃未満では生産性が低下する傾向があり、100℃を超えた温度では、目標分子量が過剰に大きくなる等によって、品質が低下する傾向がある。
重合反応槽へ連続的に添加する単量体、開始剤、乳化剤および脱イオン水等の原料類は、定量ポンプの制御下で正確に添加するが、反応槽内で発生する重合熱の除熱量を確保するため必要に応じて予め冷却しても支障ない。
反応槽から払い出されたラテックスには、必要に応じて重合禁止剤、凝固剤、難燃剤、酸化防止剤、pH調節剤を添加してもよく、未反応単量体の回収や後重合を行ってもよい。その後、凝固、熱処理、脱水、水洗、乾燥等公知の方法を経て共重合体を得ることができる。
【0068】
乳化重合においては、通常の重合開始剤を使用できる。例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物や、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物、さらにアゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤も使用される。これらは単独または2種以上併用してもよい。これらの開始剤は亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒド、スルフォキシレート、アスコロビン酸、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム錯体等の還元剤と併用した通常のレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
【0069】
重合開始剤と合わせて連鎖移動剤を併用してもよい。連鎖移動剤には炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素等が挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもよい。
【0070】
乳化重合法にて使用する乳化剤に関して特に制限はなく、通常の乳化重合用の乳化剤を使用することが出来る。例えば、アルキル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩系界面活性剤、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩系界面活性剤、アルキルリン酸ナトリウムエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムエステル等のリン酸塩系界面活性剤といったアニオン系界面活性剤が挙げられる。また上記ナトリウム塩はカリウム塩等の他のアルカリ金属塩やアンモニウム塩でもよい。これらの乳化剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。さらに、ポリオキシアルキレン類またはその末端水酸基のアルキル置換体またはアリール置換体に代表される、非イオン性界面活性剤を使用または一部併用しても差し支えない。その中でも、重合反応安定性、粒子系制御性の点から、スルホン酸塩系界面活性剤、またはリン酸塩系界面活性剤が好ましく、中でも、ジオクチルスルホコハク酸塩、またはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩がより好ましく用いることができる。
【0071】
乳化剤の使用量は、単量体成分全体100重量部に対して、0.05重量部以上10重量部が好ましく、0.1重量部以上1.0重量部以下であることがより好ましい。0.05重量部より少量では、共重合体の粒子径が大きくなり過ぎる傾向があり、10重量部より多量ではグラフト共重合体の粒子径が小さくなりすぎる、また、粒度分布が悪化する傾向がある。
【0072】
以上説明した多層構造粒子と、熱可塑性樹脂とが混合され、熱可塑性樹脂組成物が得られる。
多層構造粒子と、熱可塑性樹脂とは、フィルムを製造する前に、常法に従って、均一にペレット化されてもよいし、フィルム製造時に、押出機にて混合されてもよい。
多層構造粒子の使用量は、本発明の目的が阻害されない範囲で特に限定されない。多層構造粒子の使用量は、熱可塑性樹脂組成物の全重量を100重量部とする場合に、0.1〜2.0重量部が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましい。
多層構造粒子の使用量が、0.1重量部よりも少ないと、得られるフィルムに所望する程度の滑性を付与しにくく、フィルムを巻き取る際にブロッキング起因欠陥が発生しやすい。
また、多層構造粒子の使用量が、2.0重量部よりも多いと、フィルムに過度な滑性が与えられ、搬送トラブルが生じる場合がある。
【0073】
・ゴム粒子
架橋重合体粒子の他の好ましい例としては、架橋度が2.3重量%未満であり且つ粒子径が180nm以上400nm以下であるゴム部を有する多層構造型のゴム粒子が挙げられる。
ゴム部のガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃未満が好ましい。
熱可塑性樹脂組成物がゴム粒子を含む場合、フィルムに靱性が付与され、その結果、搬送工程でのフィルムの割れや、スリット部でのスリット不良に伴う微粉の発生が生じにくくなり、生産性を向上させることができる。
【0074】
多層構造を有する好適なゴム粒子は、ゴム部の架橋度が異なる他は、前述の多層構造粒子と、同様の材料および同様の方法により製造できる。
【0075】
ゴム粒子の使用量は、本発明の目的が阻害されない範囲で特に限定されない。ゴム粒子の使用量は、熱可塑性樹脂組成物の全重量を100重量部とする場合に、1〜60重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましく、1〜25重量部がさらに好ましい。
【0076】
ゴム粒子は、前述の多層構造粒子と比較した場合に、フィルムに滑性を付与しにくい。このため、ゴム粒子は、前述の多層構造粒子とともに熱可塑性樹脂組成物に配合されるのが好ましい。
【0077】
(その他の成分)
熱可塑性樹脂組成物は、多層構造粒子以外に、熱や光に対する安定性を向上させるための酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等を単独または2種以上含んでいてもよい。
【0078】
≪光学フィルムの製造方法≫
光学フィルムの製造方法は、前述の所定の構成を備える光学フィルムを製造できる方法であれば特に限定されない。
光学フィルムの製造方法としては、押出機よりTダイを経て押し出されたシート上の熱可塑性樹脂組成物に対して挟み込み成形を行った後、所望のタイミングで、所望する位置にナーリングを施す方法が挙げられる。
図1は、光学フィルムの製造方法における挟み込み成形を模式的に示す図である。なお、
図1中、押出機10について、簡略化し、Tダイ11付近のみを図示する。
【0079】
まず、フィルム原料たる所定の熱可塑性樹脂組成物が押出機10に投入され、押出機10内において、ガラス転移温度以上の温度まで加熱され、溶融状態となる。
溶融状態の熱可塑性樹脂組成物は、押出機10の出口側に取り付けられたTダイ11に移行し、ダイ先端のダイ出口12から溶融状態のまま、吐出される。その吐出時においてダイ出口12の形状により、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物13はシート形状をとる。
【0080】
溶融状態にあるシート状の熱可塑性樹脂組成物13は、一対の平滑化ロールに挟み込まれることにより、その表面が平滑化される。この平滑化ロールの一方は弾性ロール14であり、他方はキャストロール15である。弾性ロール14は、ゴム等の弾性体からなるロールの表面が金属膜で覆われたロールをいい、表面の金属膜によりロール表面が平坦になり、平滑化ロールとして機能する。
キャストロール15は、金属から構成された硬質のロールである。
【0081】
ダイ出口12から吐出されたシート状の熱可塑性樹脂組成物13を、弾性ロール14とキャストロール15とで挟み込むことにより、そのガラス転移温度以下の温度に冷却し、シート表面の平滑性を向上させる。
なお、当該挟み込み成形工程は、フィルム表面の平滑化のための工程であり、フィルムを延伸するための工程とは異なる。
なお、
図1は、シート状の熱可塑性樹脂組成物13を、ダイ出口12の幅方向に対して垂直な面からみた模式図である。
【0082】
以上のように、押出機10(ダイ出口12)からの吐出、および、弾性ロール14とキャストロール15とによる挟み込み成形工程を連続的に行うことにより、長手方向に伸長した光学フィルムが連続的に製造される。
【0083】
光学フィルムの製造方法は、必要に応じ、フィルム中の異物を検査する工程や、挟み込み成形後のフィルムを原反フィルムとして用いる延伸工程を含んでいてもよい。
【0084】
このようにして得られるフィルムを、最終的に製品として巻き取る前にフィルムの幅方向の任意の箇所にナーリング加工が施される。
ナーリング加工は、熱可塑性樹脂をフィルムにする製膜工程においてフィルムを巻き取る前、また、延伸や塗工等フィルムに追加工を施す追加工工程においてフィルムを巻き取る前、もしくは、製膜工程で巻き取った後に、別途巻き返す工程においてフィルムを巻き取る前、に実施すればよい。
このうち、フィルム状になってから、ロール状に最初に巻きとる前の際にナーリング加工を施すのが最も好ましい。一度巻いてしまうと、その後にナーリング加工を施すまでの間にブロッキング起因欠陥が生じる可能性があるので好ましくない。
【0085】
ナーリング加工を施す方法として、ローレット方式、レーザー方式等各種方法が採用可能であり、ローレット方式が好ましい。
後述するようなナーリング加工部以外の架橋重合体粒子の突出高さを制御する場合に、非凸部も熱変形させることが可能である点で、ローレット方式が好ましい。
【0086】
ナーリング加工が施される際に、フィルムの両面に対して圧力が加えられる。このため、フィルムの両面に加えられる圧力の高さに応じて、前述の接触面において架橋重合体粒子が幾分埋没し、架橋重合体の突出高さが所定の範囲内に調整される。
【0087】
ローレット方式でナーリング加工を行う場合、ナーリングの際のローレット温度は、Tg+10℃以上からTg+40℃が好ましく、ナーリング処理速度は、20m/分〜50m/分が好ましく、ローレット押付圧は、0.1MPa以上0.5MPa以下が好ましい。
ローレット温度がTg+10℃以上からTg+40℃であれば、熱可塑性樹脂組成物が適度に変形するため、ナーリング凸に接触する接触面における、架橋重合体粒子の突出高さを所望する範囲内に調整しやすい。
ナーリング処理速度が、20m/分〜50m/分であれば、フィルム表面に十分に力を加えやすく、所望する高さのナーリング凸を形成しやすく、且つ、ナーリング凸に接触する接触面における、架橋重合体粒子の突出高さを所望する範囲内に調整しやすい。
ローレット押し付け圧が、0.1MPa以上0.5MPa以下であれば、所望する高さのナーリング凸を形成しやすく、且つ、熱可塑性樹脂組成物が適度に変形させることができ、ナーリング凸に接触する接触面における、架橋重合体粒子の突出高さを所望する範囲内に調整しやすい。
【0088】
以上のようにして製造される、上記所定の構成を備える光学フィルムは、液晶表示装置、有機EL装置等の表示装置に用いられる部材、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、液晶基板、光拡散シート、プリズムシート等に用いることができる。中でも、偏光板保護フィルムや位相差フィルムに好適である。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0090】
実施例および比較例で測定した各物性の測定方法は次の通りである。
(多層構造粒子のゴム部の平均粒子径)
得られた重合体ラテックスを、固形分濃度0.02%に希釈したものを試料として、株式会社 日立ハイテクノロジーズのU−5100形レシオビーム分光光度計を用いて、546nmの波長の光散乱を用いて求めた。
(ガラス転移温度)
セイコーインスツルメンツ製の示差走査熱量分析装置(DSC)SSC−5200を用い、試料を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドし、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行い、得られたDSC曲線から積分値を求め(DDSC)、その極大点からガラス転移温度を求めた。
(巻きズレ)
巻き上がったフィルムロールの端部のずれをノギスで測定し、1mm以下を無し(○)、1mmより大きく3mm以下を軽微に発生(△)、3mmよりも大きいものを発生(×)、として評価した。
(ブロッキング起因欠陥)
巻き上がったフィルムロールに高輝度ライトを端部から当てた際に色の濃淡が観察されないものを発生無し(○)、色の濃淡が観察されるものを軽微に発生(△)、高輝度ライトを使わずに蛍光灯下で色の濃淡が観察されるものを発生(×)とした。
【0091】
<製造例1:アクリル系樹脂(A1)の製造>
製造例1では、原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル(A2)、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、グルタルイミドアクリル系樹脂であるアクリル系樹脂(A1)を製造した。
この製造においては、押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いた。
タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機、第2押出機共に直径が75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の噛合い型同方向二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、第1押出機の原料供給口に原料樹脂を供給した。
第1押出機、第2押出機における各ベントの減圧度は−0.095MPaとした。さらに、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構には定流圧力弁を用いた。
第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力調整、または押出変動を見極めるために、第1押出機の吐出口、第1押出機と第2押出機間の接続部品の中央部、および、第2押出機の吐出口に樹脂圧力計を設けた。
第1押出機において、原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機の最高温部の温度は280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2.0部とした。定流圧力弁は第2押出機の原料供給口直前に設置し、第1押出機のモノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。
第2押出機において、リアベントおよび真空ベントで残存しているイミド化剤および副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルを添加しイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機の各バレル温度は260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して3.2部とした。さらに、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することで、アクリル系樹脂(A1)を得た。
得られたアクリル系樹脂(A1)は、グルタミルイミド単位と、(メタ)アクリル酸エステル単位が共重合したアクリル系樹脂である。
【0092】
<製造例2:ゴム粒子(B1)の製造>
製造例2では、非滑性粒子であるゴム粒子(B1)を製造した。
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.05部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、アクリル系ゴム粒子(ゴム部粒子)の原料混合物(アクリル酸ブチル90%、メタクリル酸メチル10%からなる単官能性単量体45重量部に対し、メタクリル酸アリル0.45部、クメンハイドロパーオキサイド0.041部)45.491部を225分かけて連続的に添加した。原料混合物の追加開始から20分後、40分後、60分後にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.2部ずつ重合機に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、ゴム部粒子を得た。重合転化率は98.6%であった。
その後、内温を60℃にし、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部を仕込んだ後、シェル層の原料混合物(メタクリル酸メチル57.8%、アクリル酸ブチル4%、メタクリル酸ベンジル38.2%からなる単官能性単量体55重量部に対し、t−ドデシルメルカプタン0.3部、クメンハイドロパーオキサイド0.254部)55.554部を210分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックス(コアシェル構造のゴム粒子)を得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のゴム粒子(B1)を得た。
ゴム粒子(B1)の平均粒子径は121nmであった。ゴム粒子(B1)のグラフト率は56%であった。
【0093】
<製造例3:多層構造粒子(B2)の製造>
製造例3では、フィルムに滑性を付与する粒子である多層構造粒子(B2)を製造した。
以下の物質をガラス製反応器に仕込んだ。
イオン交換水 125部
ホウ酸 0.47部
炭酸ナトリウム 0.05部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸 0.0042部
重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、単量体17.5部(アクリル酸n−ブチル3%、メタクリル酸メチル97%)、メタクリル酸アリル0.17部およびt−ブチルハイドロパーオキサイド0.065部からなる混合物の25%を重合機に一括で追加し、その後5%ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.00645部、エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム0.0056部、硫酸第一鉄0.0014部を追加し、その15分後にt−ブチルハイドロパーオキサイド0.022部を追加し、さらに15分重合を継続させた。その後、2%の水酸化ナトリウム水溶液を0.013部追加した。残り75%を30分かけて連続的に添加した。添加終了30分後に69%のt−ブチルハイドロパーオキサイド0.0069部を追加し、同温度で30分保持し重合を完結させた。重合転化率は98%であった。
その後、得られた重合体ラテックスを窒素気流中で80℃に保ち、水酸化ナトリウム0.0346部、過硫酸カリウム0.0519部を添加した。その後単量体32.5部(アクリル酸n−ブチル82%、スチレン18%)、メタクリル酸アリル0.97部およびポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.3部からなる混合物を74分にわたって連続添加した。その後、重合を完結させるために45分保持した。得られた重合体の平均粒子径は260nmであり、重合転化率は99%であった。
さらに、得られた重合体ラテックスを80℃に保ち、過硫酸カリウム0.0097部、水酸化ナトリウム0.05部添加したのち、単量体50部(メタクリル酸メチル90%、アクリル酸n−ブチル10%)からなる混合物を150分にわたって連続添加した。混合物の添加終了後1時間保持し多層構造粒子(B2)のラテックスを得た。
多層構造粒子の平均粒子径は380nmであり、重合転化率は99%であった。
得られた多層構造粒子のラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い白色粉末状の多層構造粒子(B2)を得た。
【0094】
<製造例4:樹脂ペレット(C1)の製造>
直径75mmの二軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を255℃、スクリュー回転数を70rpmとし、アクリル系樹脂(A1)85重量部、および白色粉末状のゴム粒子(B1)15重量部、および白色粉末状の多層構造粒子(B2)0.5重量部の混合物を、150kg/hrの割合で供給した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化した。樹脂ペレット(C1)のガラス転移温度Tgは119℃であった。
【0095】
<製造例5:樹脂ペレット(C2)の製造>
ゴム粒子(B1)を添加しなかった以外は樹脂ペレットの製造(C1)と同様に樹脂ペレット(C2)を製造した。
【0096】
<実施例1>
熱可塑性樹脂組成物として、製造例5で得られた樹脂ペレット(C1)(ガラス転移温度Tg119℃)を用い、乾燥機にて80℃で4時間乾燥させた後、φ90mm単軸押出機に供給した。押出機出口にはスクリーンメッシュを押出機側から#40、#100、#400、#400、#100、#40の順に重ねて設置した。押出機出口で樹脂温度が250℃となるよう加熱溶融し、ギアポンプを介し1850mm幅のTダイへと溶融樹脂を押し出した。このとき、Tダイ出口における樹脂温度が260℃となるようにダイ設定温度を調整した。
吐出した溶融樹脂に対し、ライン速度15m/分で引き取り、100℃に温調したキャストロールと100℃に温調したタッチロールにて挟み込み、冷却固化したのち、引き取りロールにて引き取り、巻き取りコア前にて端部200mmをスリットし、巻き取りコアに厚み60μmのフィルム原反を得た。その後、原反を巻き返しながら端部にナーリングを施す巻換機にて、ライン速度40m/分、ローレット温度が140℃、ローレット押付圧が0.2MPaの条件でフィルムを搬送しながら両端部に幅の範囲にナーリングを施した。巻換機処理中のフィルムの蛇行は見られず、巻いた際のブロッキング起因欠陥も見られず、良好な巻き姿であった。この時のフィルム中央部およびナーリング凸に接触する面(フィルム両端部)の架橋重合粒子の突出高さ、並びに表面粗さは表1に記載の通りである。
【0097】
<実施例2>
Tダイ出口の樹脂温度を260℃から250℃に変更した以外は実施例1と同様に行った。巻換機処理中のフィルムの蛇行は見られず、巻いた際のブロッキング起因欠陥も見られず、良好な巻き姿であった。この時のフィルム中央部およびナーリング凸に接触する面(フィルム両端部)の架橋重合粒子の突出高さ、並びに表面粗さは表1に記載の通りである。
【0098】
<実施例3>
熱可塑性樹脂として、製造例6で作成したC3を用いた以外は実施例1と同様に行った。巻換機処理中のフィルムの蛇行は全く見られず、巻いた際のブロッキング起因欠陥も見られず、良好な巻き姿であった。この時のフィルム中央部およびナーリング凸に接触する面(フィルム両端部)の架橋重合粒子の突出高さ、並びに表面粗さは表1に記載の通りである。
【0099】
<比較例1>
巻換機にてナーリングを施さなかった以外は実施例1と同様に行った。結果、巻きズレが顕著に生じ、またブロッキング起因欠陥が軽微に見られた。
【0100】
<比較例2>
樹脂ペレット(C1)を、熱可塑性樹脂(A1)に変更すること以外は実施例1と同様に行った。結果、巻きズレは無かったもののブロッキング起因欠陥がひどく発生した。
【0101】
<比較例3>
ナーリング条件として、ローレット温度を140℃から120℃に変更した以外は実施例2と同様に行った。結果、ブロッキング起因欠陥の発生はなかったが、巻きずれが軽微に発生した。
【0102】
<比較例4>
ナーリング条件として、ローレット温度を140℃から130℃に変更したことと、ローレット押圧を0.2MPaから0.05MPaに変更したことと以外は実施例2と同様に実施した。結果、ブロッキング起因欠陥の発生はなかったが、巻きずれが軽微に発生した。
【0103】
以下、表1に、実施例および比較例の結果をまとめる。
【表1】
【0104】
実施例1〜3によれば、架橋重合体粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いてフィルムが形成され、且つナーリング加工部を有する光学フィルムにおいて、ナーリング凸に接触する接触面(両端部)での、架橋重合体粒子の突出高さが架橋重合体粒子の長径の0.0倍以上0.5倍以下である場合、巻きズレとブロッキング起因欠陥とが、良好に抑制されることが分かる。
【0105】
比較例1によれば、光学フィルムにナーリングが施されていない場合、巻きズレとブロッキング起因欠陥との双方を抑制しにくいことが分かる。
比較例2によれば、光学フィルムにナーリングが施されると、巻きズレを抑制しやすいが、光学フィルムの材料が架橋重合体粒子を含まない場合、ブロッキング起因欠陥を抑制しにくいことが分かる。
比較例3及び4によれば、架橋重合体粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いてフィルムが形成され、且つナーリング加工部を有する光学フィルムであっても、ナーリング凸に接触する接触面(両端部)での、架橋重合体粒子の突出高さが架橋重合体粒子の長径の0.5倍を超える場合、巻きズレを抑制しにくいことが分かる。