(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝熱面が板状体の対応する二つの板面にて構成され、且つ該二つの板面の少なくとも一方に、前記漸深化凹所の複数が配設されている請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の伝熱部材。
前記伝熱面が、管内に前記液状冷媒が流通せしめられる管体の内周面にて構成されて、該内周面に、前記漸深化凹所の複数が配設されている請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の伝熱部材。
発熱部品が一方の面に熱的に接続されて配設される板状のベースプレートと、このベースプレートの他方の面に立設された板状フィンとを備えたヒートシンクにおいて、該板状フィンとして、請求項5に記載の伝熱部材が用いられていることを特徴とするヒートシンク。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハイブリッド自動車や電気自動車に用いられるモータ等の大出力モータを制御するインバータには、IGBTモジュール等のパワー半導体モジュールが使用されてきているが、そのようなパワー半導体モジュールは高発熱となるものであるところから、その冷却には、大きな冷却能力が必要とされ、そのために、特開2004−349324号公報や特開2007−36214号公報等において、水冷による冷却方式が、明らかにされている。
【0003】
そして、そこでは、パワー半導体モジュールにおける発熱体であるパワー半導体の取付け側とは反対側の板状の金属ベースの面に、所定高さの板状の放熱フィンの複数を互いに相対向させて一体的に設けて、ヒートシンクを構成すると共に、かかる放熱フィンを取り囲むようにカバーを取り付けて、金属ベース面上に閉鎖空間を形成し、更にその閉鎖空間内に冷却水を導入して、そのような放熱フィン付き金属ベースに、直接に、冷却水を接触させて、冷却するようにした水冷構造が、採用されている。
【0004】
ところで、このような水冷型パワー半導体モジュール構造において、インバータ等の発熱体の高出力化の要求に対応するためには、放熱フィン付き金属ベースの冷却性能を更に向上させることが必要とされることとなるが、単なる板状の放熱フィンの複数を互いに平行に板状の金属ベース上に立設、配置せしめてなる形態の従来のヒートシンク構造では、その構造上、限界のあるものであった。
【0005】
また、伝熱部材となる伝熱管を介して熱交換を行う熱交換器においても、プレート式、シェル&チューブ式、フィンチューブ式等の各種の方式のものが知られており、その中でも、第一の流体を流通させる第一の伝熱管と、第二の流体を流通させる第二の伝熱管との二つの伝熱管を組み合わせて、それら第一の流体と第二の流体との間で熱交換を行うように構成した熱交換器が各種用いられてきており、特開2002−228370号公報においても、その一つが明らかにされている。そこでは、水が流通する心管の外周に、冷媒が流通する冷媒管を螺旋状に巻き付けたり、心管と冷媒管とを管軸方向に平行に配置して、伝熱接合してなる形態において、それら水と冷媒との間の熱交換が行われるようになっている。しかしながら、そのような従来の熱交換器に用いられる伝熱管、特に、内部に水を流通させる伝熱管に、単純な円形断面とされた内面が平滑な管を用いると、その外部を流通する冷媒等の流体との熱交換性能が充分でないという問題がある。
【0006】
そこで、そのような熱交換器においては、その熱交換効率を向上させるべく、従来から様々な工夫が為されてきており、例えば特開2009−270755号公報においては、管外面において管軸方向に螺旋状に連続して延びる凹条に対応して、管内面に、螺旋状の連続した凸条を設けると共に、その凸条の頂部に、複数の突起を所定間隔及び所定の大きさで形成してなる構造の熱交換器用伝熱管が提案されており、また特開2011−12909号公報においては、管外周面に螺旋状に設けたコルゲート溝に対応した凸状部を管内周面に螺旋状に形成すると共に、かかるコルゲート溝に隣接して設けた複数の窪み部に対応した突起部を、管内周面に形成してなる伝熱管が明らかにされている。
【0007】
しかしながら、それら特許公報に明らかにされた熱交換器用伝熱管においても、その熱交換性能は充分であるとは言えず、更なる熱交換性能の向上が求められているのである。また、特開2009−270755号公報の
図7や特開2011−12909号公報の
図3〜
図6には、前記した特開2002−228370号公報に示される構成の熱交換器とは異なる、所謂二重管式熱交換器が明らかにされているが、そのような二重管式熱交換器に用いられる伝熱管においても、同様の問題が内在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、簡単な構造にて、熱交換性能の一層の向上を有利に図ることが出来る伝熱部材を提供することにあり、また、他の課題とするところは、そのような伝熱部材を用いた、冷却特性に優れたヒートシンクや熱交換特性に優れた熱交換器を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、液状冷媒の流れに接触せしめられて、該液状冷媒との間で熱交換を行う伝熱面を有する伝熱部材にして、前記液状冷媒の流れの上流側から下流側に向かって狭幅化されると共に、深さが漸次深くなるように形成され、且つかかる深さの漸次的変化の終点において立ち上がる壁部によって、該液状冷媒の流れの上流側に向かって拡開するV字形状の平面形態を呈する漸深化凹所の複数が、前記伝熱面に配設されていることを特徴とする伝熱部材を、その要旨とするものである。
【0011】
なお、このような本発明に従う伝熱部材の望ましい態様の一つによれば、前記漸深化凹所の複数が、前記液状冷媒の流れ方向に平行な方向に直線的に配列されている。
【0012】
また、本発明に従う熱交換部材の他の望ましい態様の一つによれば、前記漸深化凹所の複数が、前記液状冷媒の流れ方向に直交する方向に直線的に配列されている。
【0013】
さらに、本発明に従う伝熱部材の望ましい態様の別の一つによれば、前記漸深化凹所の複数が、互いに交差する二つの方向に、それぞれ直線的に配列されている。
【0014】
そして、本発明に従う伝熱部材においては、好ましくは、前記伝熱面が板状体の対応する二つの板面にて構成され、且つ該二つの板面の少なくとも一方に、前記漸深化凹所の複数が配設されている。また、そのような板状体の少なくとも一方の面に、前記漸深化凹所の複数が配設されてなる伝熱部材は、発熱部品が一方の面に熱的に接続されて配設される板状のベースプレートと、このベースプレートの他方の面に立設された板状フィンとを備えたヒートシンクにおいて、該板状フィンとして、有利に用いられることとなる。
【0015】
また、本発明に従う他の態様によれば、前記伝熱面が、管内に前記液状冷媒が流通せしめられる管体の内周面にて構成されて、該内周面に、前記漸深化凹所の複数が配設されている構造が採用されることとなる。このような管体の内周面に、前記漸深化凹所の複数が配設されてなる伝熱部材は、また、管内に所定の冷却液が流通せしめられる熱交換器における伝熱管として、有利に用いられることとなる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従う構成とされた伝熱部材にあっては、伝熱面に接触する液状冷媒の流れに対して、上流側に拡開した形態のV字形状の漸深化凹所の複数が、かかる伝熱面に配設されているところから、液状冷媒の流れは、そのような漸深化凹所が液状冷媒の流れの下流側に向かって深さが漸次深くなるように形成されていることと相俟って、漸深化凹所のV字形状の開口部から、そのV字を構成する壁部に沿って、V字の角部である基部に収束せしめられ、そして、そのようなV字の基部の壁部部位を乗り越えるような流れとなることとなり、これによって、伝熱面(放熱面)の表面近傍に生じる薄い温度境界層が、効果的に攪乱されて、破壊されるようになることにより、液状冷媒と伝熱面との間の熱伝達が有利に促進されることとなるのであり、以て、熱交換性能が有利に向上せしめられ得ることとなるのである。
【0017】
そして、かくの如き本発明に従う伝熱部材が、板状体において構成されていることにより、放熱フィンとして、優れた熱交換性能を発揮することとなるところから、そのような放熱フィンを所定のベースプレート上に配設してなるヒートシンクとしての機能も、有利に高め得ることとなるのであり、また、本発明に従う伝熱部材は、管状体として形成されて、優れた熱交換性能を発揮し得る伝熱管としても構成され得るものであり、以て、そのような伝熱管の管内に、所定の液状冷媒が流通せしめられるようにした熱交換器においても、その熱伝達率が効果的に向上せしめられ得るのである。
【0018】
しかも、本発明にあっては、そのような熱交換性能の向上効果が実現せしめられる構造が、漸次深さが深くなるV字形状の凹所からなる単純な構造とされているところから、伝熱面に接触する液状冷媒の圧力損失が効果的に低減され得る(特に、管体状の伝熱部材において)利点を有していることに加えて、比較的簡単な機械加工によって、目的とするV字形状の漸深化凹所を容易に形成することが出来るところから、比較的単純な構造において、優れた熱交換特性を発揮する伝熱部材を、低いコストで製作することが出来、その生産コストを有利に低減せしめて、その生産性を効果的に高めることが出来る特徴も有している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0021】
先ず、
図1には、本発明に従って、伝熱面に配設されてなる漸深化凹所の一例に係るものの一つが示されている。そこにおいて、(a)は、そのような漸深化凹所の一つを、平面形態において示しており、また(b)は、(a)における各部位の断面形態を示している。そして、それら(a)及び(b)に示される図から明らかなように、漸深化凹所10は、白抜き矢印にて示される液状冷媒の流れに対して、その上流側から下流側に向かって漸次狭幅化されると共に、その深さが漸次深くなるように形成され、且つかかる深さの漸次的変化の終点において立ち上がる壁部12,12によって、液状冷媒の流れの上流側に向かって拡開するV字形状の平面形態において、伝熱面14に配設されている。
【0022】
換言すれば、
図2(a)に示される斜視図や
図2(b)に示される漸深化凹所壁部の展開図からも明らかなように、漸深化凹所10は、液状冷媒の流れの上流側に向かって開口するV字形状の平面形態を呈していると共に、V字の開口端部(自由端部)10b,10bから、V字の基部10aに向かって漸次深さが深くなる形態において設けられ、且つかかるV字の基部10aにおける深さdが最も深くなるように、換言すればV字の角部となる基部10aが深さの漸次的変化の終点となるように、構成されている。従って、そのようなV字形状を与える両側の壁部12,12は、V字の開口端部10bから基部10aに向かって漸次高さ(深さ)が大となるように、構成されているのである。
【0023】
そして、本発明に従う伝熱部材においては、その伝熱面14に、上述の如き漸深化凹所10の複数が、任意のパターンにおいて、例えば、
図3(a)〜(c)の如き配設形態において、設けられることとなるのである。具体的には、(a)においては、複数の漸深化凹所10が、白抜きの矢印にて示される液状冷媒の流れ方向に平行な方向と直交する方向に、それぞれ、直線的に伝熱面14に配列されてなる碁盤格子状配列形態とされており、また(b)においては、白抜き矢印にて示される液状冷媒の流れに対して直交する方向に直線的に配列されると共に、液状冷媒の流れ方向に平行な方向においては、千鳥足状の配列形態において、伝熱面14に形成されており、更に(c)においては、白抜き矢印にて示される液状冷媒の流れに対して、複数の漸深化凹所10が、不規則な(ランダム)配設形態において、伝熱面14に設けられているのである。特に、
図3の(a)や(b)に示される如く、漸深化凹所10の複数を、互いに交差する二つの方向に、それぞれ直線的に配列してなる形態が、本発明においては有利に採用され、それによって、伝熱特性の向上に有利に寄与せしめられることとなる。なお、それら漸深化凹所10は、ここでは、それぞれ独立して配設されているが、それらの複数を、液体冷媒の流れに直交する方向において連結し、連続的に配設することも可能である。
【0024】
ところで、このような複数の漸深化凹所10が配設される伝熱面14を与える伝熱部材は、よく知られているように、良熱伝導性の材質から構成されてなるものであって、例えば銅やその合金、アルミやその合金、鉄、ステンレス、コバルト合金、ニッケル合金、金属混合プラスチック等の中から、適宜に選択されることとなる。また、そのような伝熱部材を構成する材質は、熱伝導率が5W/mK以上であるものが望ましく、中でも20W/mK以上、特に80W/mK以上であるものが望ましい。更に、熱膨張率の観点から、金属シリコン(Si)又はシリコン合金を使用することも可能である。
【0025】
また、かかる本発明に従う漸深化凹所10における最深部となるV字の基部10aの深さ(壁部12の高さ)dは、伝熱部材の厚みに応じて、適宜に選定されるところであるが、一般に、0.1mm〜0.5mm程度とされることとなる。かかる深さdが浅くなり過ぎると、漸深化凹所10の形成による伝熱特性の向上効果を充分に奏し難くなるからであり、一方、dが大きくなり過ぎると、漸深化凹所10の形成に手間が掛かり、またその形成が困難となる等の問題を惹起するようになる。そして、かかる漸深化凹所10の深さは、液状冷媒の流れ方向において漸次深くなり、各壁部12に到達することとなるのであれば、例示の如く直線的に変化する形態の他、曲線的に変化する形態のものであっても、何等差支えない。
【0026】
さらに、
図4(a)に示されるように、漸深化凹所10におけるV字のなす角度、換言すれば左右両側の壁部12,12によって形成される角度θは、一般に、40度〜140度の範囲内とされ、これによって、有効な熱交換特性が発揮されることとなる。なお、このV字の形状としては、図示の如きV字の角部、即ち基部10aが、角張った形状の他、丸みの付いた湾曲形状とされていても、何等差支えない。また、
図4(b)に示される如く、液状冷媒の流れ方向に平行な方向に対して、V字を構成する各壁部12,12のなす角度θ
1 ,θ
2 (但しθ=θ
1 +θ
2 )は、一般に、等しくされることとなる(θ
1 =θ
2 )が、それら角度θ
1 ,θ
2 を互いに異ならしめても、何等差支えなく、更にそれら角度θ
1 ,θ
2 の何れか一方を、0度とすることも可能である。
【0027】
また、かかるV字形状の漸深化凹所10の複数を液状冷媒の流れ方向に配設するに際しては、互いに隣り合う漸深化凹所10,10の間隔、即ち
図4の(a)に示される距離Sは、適宜に選定することが可能ではあるが、一般に、10mm以下とすることにより、熱伝達率を有利に向上せしめることが可能である。尤も、かかる距離Sの値が0.1mmよりも小さくなると、そのような漸深化凹所10による効果が飽和するようになるところから、本発明にあっては、隣接する漸深化凹所10,10間の距離Sは、0.1mm〜10mm程度、好ましくは0.1mm〜1mm程度とされることとなる。一方、液状冷媒の流れに直交する方向における漸深化凹所10の配列間隔にあっても、適宜に選定されるところであって、上記した液状冷媒の流れに平行な方向における配設形態と同様に、配設することが可能であるが、特に、この液状冷媒の流れに直交する方向においては、V字形状の開口端部10bが互いに連結された形態において、複数の漸深化凹所10を直線的に連続して配列してなる構成(
図5参照)が、熱伝達特性の向上のために、有利に採用されることとなる。
【0028】
加えて、かかる漸深化凹所10のV字形状を与える左右の壁部12,12のそれぞれの長さl
1 ,l
2 [
図4(b)参照]は、同等(l
1 =l
2 )であることが望ましいものではあるが、それらの長さを異ならしめる(l
1 ≠l
2 )ことも可能である。なお、それらl
1 ,l
2 の長さとしては、一般に、0.1mm〜20mm程度の範囲内おいて、適宜に選定されることとなる。
【0029】
そして、かくの如き構成の漸深化凹所10は、従来から公知の各種の加工手法を適宜に採用して、伝熱部材の伝熱面14に対して、所定のパターンにおいて配設されることとなるのである。例えば、板状の伝熱部材(平坦な伝熱面14)に対しては、切削、プレス、ターレットパンチ等の機械加工により、またエッチングにより、目的とする配設形態において、多数の漸深化凹所10が形成されることとなる。また、そのような漸深化凹所10の多数が配設されてなる伝熱面14を、3Dプリンタを用いて、三次元造形手法に従って製作することも可能である。
【0030】
従って、上述のような本発明に従う漸深化凹所10の複数が配設されてなる伝熱部材の伝熱面14においては、そのような漸深化凹所10の特徴的な形状によって、水、LLC、油等の液体の如き液状冷媒の流れが、漸深化凹所10のV字形状の開口部から、そのV字を構成する壁部12,12に沿って集められて、V字形状の基部10aに収束せしめられた後、かかるV字形状の基部10aの壁部部位を乗り越えるようにして、下流側に導かれるようになるのである。このため、従来の平坦な伝熱面では、その放熱平面の表面近傍に、薄い温度境界層が生じることとなるのであるが、本発明に従う伝熱部材の伝熱面14には、上述の如き漸深化凹所10の存在による液状冷媒の流れの変化、特にV字形状を与える壁部12,12の存在による伝熱面14から離れる方向への流れによって、そのような薄い温度境界層が、有利に破壊されるようになるのである。そして、そのような温度境界層の厚さは、液状冷媒の上流側から下流側に向かって、距離の平方根に従って厚くなり、そのために、伝熱面での熱交換に関与しない冷媒が、そのまま下流側に導かれることとなって、熱交換性能を充分に発揮し難くなるのであるが、本発明にあっては、そのような温度境界層の除去乃至は解消が効果的に達成され得ることとなって、熱交換に関与しない冷媒の下流側への流出が、効果的に抑制され得ることとなるところから、その熱伝達率の向上が、有利に図られ得るようになるのである。
【0031】
ところで、本発明に従う伝熱部材にあっては、
図5及び
図6に示される如く、複数の漸深化凹所10が、白抜き矢印で示される液状冷媒の流れに平行な方向において、直線的に且つ連続的に形成されていると共に、それら複数の漸深化凹所10が、かかる液状冷媒の流れに対して直交する方向においては、隣接する漸深化凹所10のV字状開口端部10bが相互に連結されてなる形態において、直線的に且つ連続的に配列せしめられている構成が、有利に採用されることとなる。即ち、そこでは、液状冷媒の流れに平行に配列された漸深化凹所10が、
図6におけるB’−B’断面、C’−C’断面及びD’−D’断面から明らかな如く、上流側の漸深化凹所10のV字形状を与える壁部12,12から、隣接する下流側の漸深化凹所10のV字形状を与える壁部12,12に向かって、直ちに、深さが漸次変化するような形態において、連続的に且つ直線的に配列されているのである。また、液状冷媒の流れに直交する方向に配列された漸深化凹所10は、
図5から明らかな如く、そのV字形状を与える壁部12のV字の開口端部10bにおいて、隣接する漸深化凹所10の対応する開口端部10bに接続されて、かかる液状冷媒の流れに直交する方向にV字が連続して繰り返し形成されてなる形態とされている。
【0032】
従って、液状冷媒の流れに直交する方向に配列された複数の漸深化凹所10は、それぞれの壁部12の連結によって、
図5に示されているように、ノコギリ歯状の平面形態を呈する連続的な形状を示す配設形態となると共に、液状冷媒の流れに平行な方向においては、そのようなノコギリ歯形状が、所定間隔を隔てて、繰り返し現出せしめられることとなる。そして、このような複数の漸深化凹所10の配列形態の採用によって、より一層優れた伝熱特性乃至は熱交換特性が発揮され得ることとなるのである。
【0033】
なお、かかる
図5,6では、漸深化凹所10におけるV字形状の開口端部10bは、
図6におけるA’−A’断面やE’−E’断面より明らかな如く、その深さが0mmとされて、伝熱面において最も高い部位とされているが、特に、本実施形態の如く、液状冷媒の流れに直交する方向において、複数の漸深化凹所10がV字形状の開口端部10bにおいて相互に連結されて、連続的なノコギリ歯状の壁部12が形成されてなる形態においては、かかる開口端部10bにおいても、
図7に示される如く、0.1mm程度以下、好ましくは0.05mm以下の深さ(高さ)d’の壁部が形成されていることが望ましい。即ち、液状冷媒の流れ方向に平行な方向において、隣接する開口端部10b間においても、漸次深さが深くなるように構成することによって、液状冷媒の流れがそれら開口端部10bをつなぐ線上において直線的に流れることが、効果的に解消せしめられることとなるのであり、それ故に、伝熱特性乃至は熱交換特性の向上にも有利に寄与させ得るのである。
【0034】
また、本発明に従う伝熱部材は、有利には、両側の板面が伝熱面とされてなる板状体を呈するものであって、その2つの板面の少なくとも一方に、本発明に従う漸深化凹部10の複数が配設されてなる形態が、採用され、それは、
図8に示される如きヒートシンクにおける板状の放熱フィンとして好適に用いられることとなる。
【0035】
すなわち、
図8に示されるヒートシンクは、板状のベースプレート20とその一方の面に、互いに対向して、平行に伸びるように、複数の放熱フィン22が立設されてなる櫛形構造を呈するものであって、ベースプレート20の他方の面(図においては下面)に対して熱的に接続されてなる形態において、所定の発熱部品が配設されるようになっており、この発熱部品からの熱が、ベースプレート20から放熱フィン22に伝熱され、この放熱フィン22の板面に沿って流通せしめられる液状冷媒との間において熱交換されて、放熱されるようになっている。そして、そのような放熱を行う放熱フィン22の少なくとも一方の板面に、図示の如く、複数の漸深化凹所10が、液状冷媒の流れに平行な方向に且つ直交する方向に、それぞれ、直線的に且つ連続的に形成せしめられているのである。なお、そのような漸深化凹所10の配列形態は、ここでは、
図5及び
図6に示される配列形態と同様とされている。
【0036】
また、かかる本発明に従う伝熱部材は、管内に所定の液状冷媒が流通せしめられて、管壁を通じて熱交換が行われる管体の形態においても実現され得るものであり、そこでは、そのような管体の内周面に、漸深化凹所10の複数が、所定パターンにおいて配設されることとなる。そして、そのような管体状の伝熱部材は、
図9に示されるように、管内に所定の液状冷媒が流通せしめられる伝熱管として、各種の熱交換器に適用されることとなるのである。なお、そのような伝熱管24は、例えば、細長な帯板の一方の面(管体としたとき、管内面となる側の面)に、本発明に従って、複数の漸深化凹所10を配設した(
図5及び
図6に示される如き漸深化凹所10の配列形態において形成した)後、公知の電縫管の製作方法(例えば、特開平9−236395号公報参照)に従って、かかる帯板の幅方向の両端部を接合することにより、管体とする方法等によって、容易に製造することが可能である。
【0037】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0038】
例えば、例示の実施形態において、複数の漸深化凹所10は、何れも、同様な大きさ及び形状とされているが、それら複数の漸深化凹所10を、相互に異なる大きさや形状において、配設することも可能である。
【0039】
また、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、更に、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明の特徴を更に明確にすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことも、また、言うまでもないところである。
【0041】
先ず、冷却水が流通せしめられる水管として、外径:10mm、内径:9mm、長さ:10mの銅管を用い、その外周面に、80℃の二酸化炭素冷媒が流通せしめられるCO
2 管として、外径:3.4mmの銅管の4本を、10mmピッチにおいて巻き付けて、固定することによって構成される外巻き式熱交換器(特開2002−228370号公報参照)を作製し、評価対象とした。
【0042】
そして、上記の水管として、内外面が平滑な丸管と、深さ:0.5mmのスパイラル溝がピッチ:10mmにおいて管壁に螺旋状に形成されてなるスパイラル管と、管内面に、V字角度θ:90度、最大深さd:0.3mm、管軸方向ピッチ:1mmにおいて、管軸方向及び管周方向にそれぞれ連続してV字状漸深化凹所10が形成されてなる、
図9に示される如き内面V字凹所管とを用い、それぞれの管内に17℃の低温水を1.7L/minの流量で流通させる一方、細径のCO
2 管には、80℃の二酸化炭素冷媒を、水管内の低温水の流れに対して、対向的に流通せしめることにより、それら低温水と二酸化炭素冷媒との間の熱交換を行い、その熱交換性能について、評価した。なお、熱交換性能の評価は、CO
2 管内を流通せしめられる二酸化炭素冷媒の温度が、80℃から20℃に変化した時に、水管内の水の温度が17℃から何度まで上昇するかを評価し、その温度差と熱容量から、水側熱交換量を求めて、熱交換性能とした。そして、その得られた結果を、圧損の結果と共に、下記表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
また、板状の伝熱部材を放熱フィンとして用いてなる、
図8や
図10に示される如きヒートシンクについて、それぞれの熱伝達率を、シミュレーションにより評価した。なお、ベースプレート20としては、50mm×100mmの大きさのアルミ製板材を用い、また高さ:10mm、厚さ:1mmの板状のアルミ製フィンが、それぞれの放熱フィンとして、ベースプレート20上に、1mmの間隔を隔てて、図示の如く、櫛形に配設されてなる構造とした。
【0045】
具体的には、本発明に従うV字凹所形成タイプのヒートシンクは、
図8に示される如く、平板状の放熱フィン22の両面に、それぞれ、V字角度θ:90度、V字最高深さd:0.3mm、V字間隔S:1mmにおいて、多数の漸深化凹所10が、液状冷媒(水)の流れに平行な方向及び直交する方向に、それぞれ連続的に形成されてなる形態のものとし、また
図10(a)に示される単純平面タイプのヒートシンクにおいては、板面に何等の加工も施されていない平滑な面とされた平滑フィン26を、放熱フィンとして用いたものであり、更に
図10(b)に示される、放熱フィン分割タイプのヒートシンクにおいては、長さ:10mmの分割フィン28が、スリット29(間隔:1mm)を介して、冷却水の流れ方向に、一列に配列されて構成されるものにおいて、検討した。
【0046】
その結果、本発明に従うV字凹所形成タイプのヒートシンク(
図8)においては、その熱伝達率が、36400W/m
2K であるのに対して、
図10の(a)や(b)に示される、従来の単純平面タイプのヒートシンクや放熱フィン分割タイプのヒートシンクにおいては、それぞれの熱伝達率は、10120W/m
2K 及び20050W/m
2K となることが明らかとなった。
【0047】
さらに、
図8に示される如き、本発明に従うV字凹所形成タイプのヒートシンクにおいて、V字形状の漸深化凹所10の間隔SやV字のなす角度θを種々変化させて、シミュレーションを行って、熱伝達率を求めた。そして、その得られた結果を、下記表2及び表3に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
以上の評価結果から明らかなように、本発明に従う伝熱部材が、管体形状を呈するものであっても、また板状形状を呈するものであっても、何れも、熱交換特性に優れていることが認められ、その中でも、管体状の伝熱部材よりも、板状の伝熱部材として用いることにより、より一層優れた伝熱特性乃至は熱交換特性が発揮され得ることを、確認することが出来る。