(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、吸気を圧縮する低圧用圧縮機と、前記低圧用圧縮機で圧縮された吸気をさらに圧縮して前記エンジンに供給する高圧用圧縮機と、前記エンジンからの排気で駆動され、かつ前記高圧用圧縮機を回転駆動させる高圧用タービンと、前記高圧用タービンからの排気で駆動され、かつ前記低圧用圧縮機を回転駆動させる低圧用タービンと、前記高圧用タービン及び前記低圧用タービンのうち、少なくとも一方を通過する排気の流量を調節する排気流量調節部と、を備えたエンジンシステムを制御するエンジンシステム用制御装置であって、
前記低圧用圧縮機の圧力比、及び前記高圧用圧縮機の圧力比の取得に必要なパラメータを受け付けるパラメータ受付部と、
前記パラメータに基づいて、前記低圧用圧縮機の圧力比、及び前記高圧用圧縮機の圧力比を取得する圧力比取得部と、
前記高圧用圧縮機の圧力比、及び前記低圧用圧縮機の圧力比に基づいて得られる圧縮機間圧力比を取得する圧縮機間圧力比取得部と、
前記圧縮機間圧力比が前記エンジンシステムの作動効率が最適となる所定圧力比となるように、前記排気流量調節部を制御する制御部と、
を備え、
前記圧縮機間圧力比と前記エンジンシステムの作動効率との関係を示す作動曲線が記憶された作動曲線記憶部を有しており、
前記制御部は、前記作動曲線のうち、前記エンジンシステムの作動効率が最も高くなるときの圧縮機間圧力比を前記所定圧力比として前記排気流量調節部を制御するエンジンシステム用制御装置。
前記作動曲線記憶部は、前記エンジンと接続され、かつ前記低圧用圧縮機及び前記高圧用圧縮機が設けられた供給ラインの所定位置の温度に対応した複数の前記作動曲線を記憶しており、
前記制御部は、複数の前記作動曲線のうち、前記所定位置の温度に対応した作動曲線を用いる請求項1記載のエンジンシステム用制御装置。
前記制御部は、前記エンジンシステムの燃費を向上させたい場合には、前記所定圧力比となるように前記排気流量調節部を制御し、前記エンジンの応答速度を高めたい場合には前記排気流量調節部を全閉する制御を行い、前記高圧用圧縮機から吐出される圧縮された吸気から前記エンジンを保護したい場合には前記排気流量調節部を全開する制御を行う請求項1または2記載のエンジンシステム用制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンに供給する空気の圧力を高める観点から、圧縮機及びタービンを含む過給機を2段にしたエンジンシステムがある。近年、2段の過給機を備えたエンジンシステムのさらなる燃費の向上が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、2段の過給機を有し、燃費を向上させることの可能なエンジンシステム用制御装置、及びエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るエンジンシステム用制御装置によれば、エンジンと、吸気を圧縮する低圧用圧縮機と、前記低圧用圧縮機で圧縮された吸気をさらに圧縮して前記エンジンに供給する高圧用圧縮機と、前記エンジンからの排気で駆動され、かつ前記高圧用圧縮機を回転駆動させる高圧用タービンと、前記高圧用タービンからの排気で駆動され、かつ前記低圧用圧縮機を回転駆動させる低圧用タービンと、前記高圧用タービン及び前記低圧用タービンのうち、少なくとも一方を通過する排気の流量を調節する排気流量調節部と、を備えたエンジンシステムを制御するエンジンシステム用制御装置であって、前記低圧用圧縮機の圧力比、及び前記高圧用圧縮機の圧力比の取得に必要なパラメータを受け付けるパラメータ受付部と、前記パラメータに基づいて、前記低圧用圧縮機の圧力比、及び前記高圧用圧縮機の圧力比を取得する圧力比取得部と、前記高圧用圧縮機の圧力比、及び前記低圧用圧縮機の圧力比に基づいて得られる圧縮機間圧力比を取得する圧縮機間圧力比取得部と、前記圧縮機間圧力比が前記エンジンシステムの作動効率が最適となる所定圧力比となるように、前記排気流量調節部を制御する制御部と、を備
え、前記圧縮機間圧力比と前記エンジンシステムの作動効率との関係を示す作動曲線が記憶された作動曲線記憶部を有しており、前記制御部は、前記作動曲線のうち、前記エンジンシステムの作動効率が最も高くなるときの圧縮機間圧力比を前記所定圧力比として前記排気流量調節部を制御する。
【0008】
本発明によれば、上述したパラメータ受付部、圧力比取得部、圧縮機間圧力比取得部、及び制御部を含むエンジンシステム用制御装置を有することで、圧縮機間圧力比がエンジンシステムの作動効率が最適となる所定圧力比となるように、排気流量調節部を制御することが可能となる。
これにより、2段の過給機(具体的には、低圧用圧縮機及び低圧用タービンよりなる過給機、及び高圧用圧縮機及び高圧用タービンよりなる過給機)を有するエンジンシステムの燃費を向上できる。
また、作動曲線のうち、エンジンシステムの作動効率が最も高くなるときの圧縮機間圧力比を所定圧力比として排気流量調節部を制御することで、2段の過給機を有するエンジンシステムの燃費を向上できる。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係るエンジンシステム用制御装置において、前記作動曲線記憶部は、前記エンジンと接続され、かつ前記低圧用圧縮機及び前記高圧用圧縮機が設けられた供給ラインの所定位置の温度に対応した複数の前記作動曲線を記憶しており、前記制御部は、複数の前記作動曲線のうち、前記所定位置の温度に対応した作動曲線を用いてもよい。
【0012】
このように、複数の作動曲線のうち、所定位置の温度に対応した作動曲線を用いる制御部を有することで、2段の過給機を有するエンジンシステムの燃費をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明の一態様に係るエンジンシステム用制御装置によれば、前記パラメータ受付部は、前記高圧用圧縮機の入口側の圧力、及び前記高圧用圧縮機の出口側の圧力を受け付け、前記圧力比取得部は、前記低圧用圧縮機の入口側の圧力として大気圧を用いてもよい。
【0014】
このように、パラメータ受付部が高圧用圧縮機の入口側の圧力、及び高圧用圧縮機の出口側の圧力を受け付け、圧力比取得部が低圧用圧縮機の吸込圧として大気圧を用いることで、低圧用圧縮機の圧力比を取得することが可能となる。これにより、圧縮機間圧力比を取得することができる。
【0015】
本発明の一態様に係るエンジンシステム用制御装置によれば、前記パラメータ受付部は、前記高圧用圧縮機の入口側の圧力、前記高圧用圧縮機の出口側の圧力、及び前記低圧用圧縮機の回転数を受け付け、前記圧力比取得部は、前記高圧用圧縮機の入口側の圧力、前記高圧用圧縮機の出口側の圧力、及び前記低圧用圧縮機の回転数に基づいて、前記低圧用圧縮機の入口側の圧力を推定し、推定した前記低圧用圧縮機の入口側の圧力、及び前記高圧用圧縮機の入口側の圧力に基づいて、前記低圧用圧縮機の圧力比を取得してもよい。
【0016】
このように、高圧用圧縮機の入口側の圧力、高圧用圧縮機の出口側の圧力、及び低圧用圧縮機の回転数に基づいて、低圧用圧縮機の入口側の圧力を推定し、推定した低圧用圧縮機の入口側の圧力、及び高圧用圧縮機の入口側の圧力(低圧用圧縮機の出口側の圧力)に基づいて、低圧用圧縮機の圧力比を取得することで、低圧用圧縮機の圧力比の精度を高めることが可能となる。これにより、2段の過給機を有するエンジンシステムの燃費をさらに向上させることができる。
【0017】
本発明の一態様に係るエンジンシステム用制御装置によれば、前記制御部は、前記エンジンシステムの燃費を向上させたい場合には、前記所定圧力比となるように前記排気流量調節部を制御し、前記エンジンの応答速度を高めたい場合には前記排気流量調節部を全閉する制御を行い、前記高圧用圧縮機から吐出される圧縮された吸気から前記エンジンを保護したい場合には前記排気流量調節部を全開する制御を行ってもよい。
【0018】
このような制御を行う制御部を有することで、エンジンシステムの燃費を向上したり、エンジンの応答速度を高めたり、エンジンを保護したり、目的に応じた運転を行うことができる。
【0019】
本発明の一態様に係るエンジンシステムによれば、上記エンジンシステム用制御装置と、前記エンジンと、前記エンジンと接続された前記高圧用圧縮機及び前記高圧用タービンを含む高圧用の過給機と、前記高圧用の過給機と接続された前記低圧用圧縮機及び前記低圧用タービンを含む低圧用の過給機と、前記低圧用圧縮機と前記低圧用タービンとを接続する第1の回転軸と、前記高圧用圧縮機と前記高圧用タービンとを接続する第2の回転軸と、前記エンジンシステム用制御装置と電気的に接続された前記排気流量調節部と、前記エンジンと接続され、前記低圧用圧縮機及び前記高圧用圧縮機が設けられた供給ラインと、前記エンジンと接続され、前記低圧用タービン及び前記高圧用タービンが設けられた排気ラインと、前記高圧用圧縮機の入口側の圧力を検出し、検出した圧力の情報を前記エンジンシステム用制御装置に送信する第1の圧力検出部と、前記高圧用圧縮機の出口側の圧力を検出し、検出した圧力の情報を前記エンジンシステム用制御装置に送信する第2の圧力検出部と、を備えてもよい。
【0020】
上記エンジンシステム用制御装置を有することで、エンジンシステムの燃費を向上させることができる。
【0021】
本発明の一態様に係るエンジンシステムによれば、前記供給ラインの所定位置を流れる前記吸気の温度を検出し、検出した温度の情報を前記エンジンシステム用制御装置に送信する温度検出部を有してもよい。
【0022】
このような構成とされた温度検出部を有することで、吸気の温度に対応する作動曲線を用いて、排気流量調節部を制御することができる。
【0023】
本発明の一態様に係るエンジンシステムによれば、前記第1の回転軸の回転数を検出し、検出した前記回転数の情報を前記エンジンシステム用制御装置に送信する回転数検出部を有してもよい。
【0024】
このような構成とされた回転数検出部を有することで、高圧用圧縮機の入口側の圧力、高圧用圧縮機の出口側の圧力、及び低圧用圧縮機の回転数に基づいて、低圧用圧縮機の入口側の圧力を推定できる。
【0025】
本発明の一態様に係るエンジンシステムによれば前記排気流量調節部は、両端が前記排気ラインと接続され、前記低圧用タービン及び前記高圧用タービンのうち、少なくとも一方をバイパスさせるバイパスラインと、前記バイパスラインに設けられ、前記制御部と電気的に接続された弁と、を有してもよい。
【0026】
このように、排気流量調節部は、両端が排気ラインと接続され、低圧用タービン及び高圧用タービンのうち、少なくとも一方をバイパスさせるバイパスラインと、バイパスラインに設けられ、制御部と電気的に接続された弁と、で構成することが可能である。
【0027】
本発明の一態様に係るエンジンシステムによれば、前記低圧用タービン及び前記高圧用タービンは、それぞれタービン本体を備えており、前記排気流量調節部は、前記低圧用タービン及び前記高圧用タービンのうち、少なくとも一方の前記タービン本体の内側に設けられた可変式ノズルであってもよい。
【0028】
このように、排気流量調節部は、低圧用タービン及び高圧用タービンのうち、少なくとも一方のタービン本体の内側に設けられた可変式ノズルを用いることが可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、2段の過給機を有するエンジンシステムの燃費を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るエンジンシステム10について説明する。
エンジンシステム10は、低圧用の過給機11、及び高圧用の過給機12(2段の過給機)を備える。エンジンシステム10は、供給ライン13と、低圧用圧縮機14と、第1の冷却部16と、第1の圧力検出部17と、温度検出部18と、高圧用圧縮機22と、第2の冷却部23と、第2の圧力検出部25と、エンジン27と、排気ライン29と、低圧用タービン31と、第1の回転軸33と、高圧用タービン34と、第2の回転軸36と、排気流量調節部38と、エンジンシステム用制御装置39と、を有する。
【0033】
過給機11は、低圧用圧縮機14、第1の回転軸33、及び低圧用タービン31を含む。過給機12は、高圧用圧縮機22、第2の回転軸36、及び高圧用タービン34を含む。
【0034】
供給ライン13は、第1供給ライン13Aと、第2供給ライン13Bと、第3供給ライン13Cと、を有する。
第1供給ライン13Aは、一端が空気を吸い込むことが可能な状態とされており、他端が低圧用圧縮機14の吸込口と接続されている。
【0035】
第2供給ライン13Bは、一端が低圧用圧縮機14の吐出口と接続されており、他端が高圧用圧縮機22の吸込口と接続されている。第2供給ライン13Bは、低圧用圧縮機14が圧縮した吸気(例えば、空気)を高圧用圧縮機22の吸込口に供給する。
なお、第1の実施形態では、一例として、吸気が空気である場合を例に挙げて説明する。
【0036】
第3供給ライン13Cは、一端が高圧用圧縮機22の吐出口と接続されており、他端がエンジン27の吸込口と接続されている。第3供給ライン13Cは、高圧用圧縮機22が圧縮した高圧の空気をエンジン27の吸込口に供給する。
【0037】
低圧用圧縮機14は、供給ライン13に設けられている。低圧用圧縮機14は、第1供給ライン13Aから供給される空気を圧縮し、第2供給ライン13Bに吐出する。低圧用圧縮機14は、第1の回転軸33の一端と接続されている。
第1の冷却部16は、第2供給ライン13Bを流れる圧縮された空気を冷却する。圧縮及び冷却された空気は、高圧用圧縮機22の吸込口に供給される。
【0038】
第1の圧力検出部17は、冷却及び圧縮された吸気の圧力を検出可能な状態で第2供給ライン13Bに設けられている。第1の圧力検出部17は、エンジンシステム用制御装置39と電気的に接続されている。第1の圧力検出部17は、高圧用圧縮機22の入口側の圧力を検出する。第1の圧力検出部17は、検出した高圧用圧縮機22の入口側の圧力に関する情報をエンジンシステム用制御装置39に送信する。
【0039】
温度検出部18は、冷却及び圧縮された空気の温度(以下、「温度t」という)を検出可能な状態で第2供給ライン13Bに設けられている。温度検出部18は、エンジンシステム用制御装置39と電気的に接続されている。温度検出部18は、高圧用圧縮機22内に導入される空気の温度tを検出し、検出した空気の温度tに関する情報をエンジンシステム用制御装置39に送信する。
【0040】
高圧用圧縮機22は、供給ライン13に設けられており、低圧用圧縮機14とエンジン27との間に配置されている。高圧用圧縮機22は、低圧用圧縮機14により圧縮された空気をさらに圧縮して、第3供給ライン13Cに吐出する。
第2の冷却部23は、第3供給ライン13Cを流れる圧縮された空気を冷却する。圧縮及び冷却された空気は、エンジン27の吸込口に供給される。
【0041】
第2の圧力検出部25は、圧縮及び冷却された空気の圧力を検出可能な状態で第3供給ライン13Cに設けられている。第2の圧力検出部25は、エンジンシステム用制御装置39と電気的に接続されている。第2の圧力検出部25は、高圧用圧縮機22の出口側の圧力を検出する。第2の圧力検出部25は、検出した高圧用圧縮機22の出口側の圧力に関する情報をエンジンシステム用制御装置39に送信する。
【0042】
エンジン27は、高圧用圧縮機22から供給される圧縮された空気により駆動される。エンジン27は、排気ライン29の一端と接続されている。エンジン27は、排気ライン29にエンジン27内を通過した空気を含んだ排気(排気ガス)を吐出する。
【0043】
排気ライン29は、第1排気ライン29Aと、第2排気ライン29Bと、第3排気ライン29Cと、を有する。
第1排気ライン29Aは、一端がエンジンと接続されており、他端が高圧用タービン34の吸込口と接続されている。
【0044】
第2排気ライン29Bは、一端が高圧用タービン34の吐出口と接続されており、他端が低圧用タービン31の吸込口と接続されている。第2排気ライン29Bは、高圧用タービン34を通過した空気を低圧用タービン31の吸込口に導く。
【0045】
第3排気ライン29Cは、一端が低圧用タービン31の吐出口と接続されている。第3排気ライン29Cは、低圧用タービン31を通過した排気をエンジンシステム10の外部へと導く。
【0046】
低圧用タービン31は、排気ライン29に設けられている。低圧用タービン31は、第1の回転軸33の他端と接続されている。低圧用タービン31は、排気により第1の回転軸33を回転させることで、低圧用圧縮機14を回転駆動させる。本実施形態では、低圧用タービン31の入口側の圧力を圧力P7、低圧用タービン31の出口側の圧力を圧力P8とする。
高圧用タービン34は、排気ライン29に設けられている。高圧用タービン34は、エンジン27と低圧用タービン31との間に配置されている。高圧用タービン34は、排気により第2の回転軸36を回転させることで、高圧用圧縮機22を回転駆動させる。本実施形態では、高圧用タービン34の入口側の圧力を圧力P5、高圧用タービン34の出口側の圧力を圧力P6とする。
【0047】
排気流量調節部38は、バイパスライン41と、弁43と、を有する。バイパスライン41は、第1排気ライン29Aから分岐されるとともに、第2排気ライン29Bと接続されている。バイパスライン41の両端は、排気ライン29と接続されている。バイパスライン41は、高圧用タービン34をバイパスするためのラインである。
【0048】
弁43は、バイパスライン41に設けられた弁本体44と、弁本体44の開閉動作を行うアクチュエータ45と、を有する。アクチュエータ45は、エンジンシステム用制御装置39と電気的に接続されている。アクチュエータ45は、エンジンシステム用制御装置39から送信される開度信号(弁本体44の開度の変位量に関する信号)に基づいて、弁本体44の開度の調節を行う。
なお、開度信号には、弁本体44の開度を最大にする信号や弁本体44を閉じる信号も含まれる。
弁43としては、例えば、電磁弁を用いることが可能である。
【0049】
図1及び
図2を参照して、エンジンシステム用制御装置39の機能ブロック図について説明する。
図2では、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0050】
エンジンシステム用制御装置39は、パラメータ受付部47と、圧力比取得部49と、作動曲線記憶部51と、圧縮機間圧力比取得部52と、制御部54と、を有する。
【0051】
パラメータ受付部47は、温度検出部18、第1の圧力検出部17、第2の圧力検出部25、及び圧力比取得部49と電気的に接続されている。
パラメータ受付部47は、低圧用圧縮機14の圧力比(=(低圧用圧縮機14の出口側の圧力P2)/(低圧用圧縮機14の入口側の圧力P1))、及び高圧用圧縮機の圧力比(=(高圧用圧縮機22の出口側の圧力P4)/(高圧用圧縮機22の入口側の圧力P3))の取得に必要なパラメータを受け付ける。
【0052】
具体的には、パラメータ受付部47は、温度検出部18が検出する空気の温度tと、第1の圧力検出部17が検出する高圧用圧縮機22の入口側の圧力P3と、第2の圧力検出部25が検出する高圧用圧縮機22の出口側の圧力P4と、をパラメータとして受け付ける。
【0053】
なお、第1の実施形態では、低圧用圧縮機14の出口側の圧力P2と高圧用圧縮機22の入口側の圧力P3とが等しいものとし、低圧用圧縮機14の入口側の圧力P1として、大気圧(=大気圧Pa)を用いた場合を例に挙げて以下の説明をする。
【0054】
圧力比取得部49は、圧縮機間圧力比取得部52と電気的に接続されている。圧力比取得部49は、低圧用圧縮機14の入口側の圧力を大気圧とし、パラメータ受付部47が受け付けたパラメータに基づいて、上述した低圧用圧縮機14の圧力比、及び高圧用圧縮機22の圧力比を取得する。
【0055】
作動曲線記憶部51は、温度検出部18、及び制御部54と電気的に接続されている。
作動曲線記憶部51には、圧縮機間圧力比(=(高圧用圧縮機22の圧力比)/(低圧用圧縮機14の圧力比))とエンジンシステム10の作動効率との関係を示す複数の作動曲線(
図3参照)が記憶されている。
【0056】
ここで、
図3に示す複数の作動曲線のグラフの一例について説明する。
図3では、圧縮機管圧力比を横軸とし、エンジンシステム10の過給システム効率η
tc(過給システムのシステム効率)を縦軸としている。
エンジンシステム10の過給システム効率η
tcは、下記(1)式に基づいて得ることができる。
【0058】
上記(1)式において、G
aは第2供給ライン13Bを流れる空気の流量(kg/s)、G
eは第3供給ライン13Cを流れる空気の流量(kg/s)、K
aは空気の比熱比(=1.40)、K
eは排気(排気ガス)の比熱比(=1.35)をそれぞれ示している。
また、上記(1)式において、Rは空気のためのガス定数(=287J/kg・K)、K
aは低圧用圧縮機14の入口側の空気の温度t(=298K)、T
eは高圧用タービン34の入口側の空気の温度(K)をそれぞれ示している。
また、高圧用圧縮機22の出口側の圧力P4、高圧用圧縮機22の入口側の圧力P3としたとき、上記(1)式に示す圧力比π
cはP2/Paとなり、圧力比π
tはP4/P3となる。なお、Paは、先に説明した大気圧Paである。
【0059】
図3では、一例として、高圧用圧縮機22の入口側における空気の温度t(言い換えれば、温度検出部18が検出する温度)が、セルシウス温度で、50degC、55degC、60degC、65degC、70degCのときの作動曲線(合計5つの作動曲線)を図示している。
【0060】
作動曲線記憶部51は、温度検出部18が検出した空気の温度に基づいて、1つの作動曲線を選択する。例えば、温度検出部18が検出した空気の温度が50degCの場合、複数の作動曲線の中から作動曲線Aを選択する。
複数の作動曲線は、上に凸の曲線とされている。作動曲線Aの場合、エンジンシステム10の過給システム効率が最も高くなるときの圧縮機間圧力比は、
図3に示すBとなる。Bは、エンジンシステム10の作動効率が最適となる所定圧力比(以下、「所定圧力比B」という)である。
【0061】
運転中のエンジンシステム10の圧縮機間圧力比と所定圧力比Bとの差が大きくなればなるほど、エンジンシステム10の作動効率が低下する。一方、運転中のエンジンシステム10の圧縮機間圧力比と所定圧力比Bとの差が小さくなればなるほど、エンジンシステム10の過給システム作動効率が向上するので、エンジンシステム10の作動効率を向上させることができる。
【0062】
圧縮機間圧力比取得部52は、高圧用圧縮機の圧力比を低圧用圧縮機の圧力比で割ることで得られる圧縮機間圧力比を取得する。
【0063】
制御部54は、排気流量調節部38と電気的に接続されている。制御部54は、圧縮機間圧力比取得部52により取得された圧縮機間圧力比と、温度検出部18が検出した空気の温度に対応する作動曲線(温度が50degCの場合、
図3に示す作動曲線A)と、に基づいて、圧縮機間圧力比がエンジンシステム10の作動効率が最適となる所定圧力比(
図3の場合、所定圧力比B)となるように、排気流量調節部38を制御する。
【0064】
制御部54は、運転中のエンジンシステム10の圧縮機間圧力比が上記所定圧力比と等しくなるような排気流量調節部38の制御量を取得する。具体的には、制御部54は、制御量として、アクチュエータ45に弁本体44の開度の変位量を取得する。
制御部54は、アクチュエータ45に開度の変位量に関する信号を送信することで、弁本体44の開度を制御する。
【0065】
図1、
図2、及び
図4を参照して、エンジンシステム用制御装置のハード構成について説明する。
エンジンシステム用制御装置39は、入力インターフェース56と、メモリ57と、CPU59と、出力インターフェース61と、を有する。
入力インターフェース56は、
図2に示すパラメータ受付部47に対応する部分である。メモリ57には、
図2に示す作動曲線記憶部51を含んだ部分であり、エンジンシステム10を駆動させるためのプログラム等が格納されている。
【0066】
CPU59は、入力インターフェース56、メモリ57、及び出力インターフェース61と電気的に接続されている。
CPU59は、
図2に示す圧力比取得部49及び圧縮機間圧力比取得部52と、制御部54の一部(弁本体44の開度の変位量を取得する部分)と、に対応する部分である。
出力インターフェース61は、制御部54の残部(取得した弁本体44の開度の変位量を排気流量調節部のアクチュエータ45に送信する部分)に対応している。
【0067】
次に、
図1及び
図5を参照して、第1の実施形態のエンジンシステム用制御装置39が行う処理について説明する。
図5に示す処理が開始されると、S1では、温度検出部18、第1の圧力検出部17、及び第2の圧力検出部25により、温度t、圧力P1、及び圧力P4を取得する。なお、
図5のフローチャートの場合、低圧用圧縮機14の入口側の圧力P1は、大気圧Pa(1気圧)とする。取得された温度t、圧力P1(=大気圧Pa)、及び圧力P4に関する情報は、パラメータ受付部47に送信される。
【0068】
次いで、S2では、上述した手法により、圧力比取得部49が、圧力P1(=大気圧Pa),P4に基づいて、低圧用圧縮機14の圧力比、及び高圧用圧縮機22の圧力比を取得する。
【0069】
次いで、S3では、上述した手法により、圧縮機間圧力比取得部52が、圧縮機間圧力比を取得する。
次いで、S4では、制御部54が、温度tに対応する作動曲線(作動曲線記憶部51に記憶された作動曲線)に基づいて、エンジンシステム10の作動効率が最適となる所定圧力比を取得する。
【0070】
次いで、S5では、制御部54が、圧縮機間圧力比が所定圧力比となるような弁本体44の開度の変位量を取得する。
その後、S6では、S5で取得した弁本体44の開度の変位量に基づいて、制御部54により、排気流量調節部の弁本体の開度の制御を行う。これにより、
図5に示す処理は、終了する。
なお、
図5に示す処理は、所定時間経過後に繰り返し行ってもよいし、連続的に行ってもよい。
【0071】
第1の実施形態のエンジンシステム用制御装置39によれば、上述したパラメータ受付部47、圧力比取得部49、圧縮機間圧力比取得部52、作動曲線記憶部51、及び制御部54を有することで、圧縮機間圧力比がエンジンシステムの作動効率が最適となる所定圧力比となるように、排気流量調節部38を制御することが可能となる。
これにより、2段の過給機(具体的には、過給機11,12)を有するエンジンシステム10の燃費を向上させることができる。
【0072】
なお、第1の実施形態では、一例として、温度検出部18を用いて高圧用圧縮機22の入口側の温度を検出し、高圧用圧縮機22の入口側の温度に対応する作動曲線を用いた場合を例に挙げて説明したが、温度検出部18を用いて高圧用圧縮機22の出口側の温度を検出し、高圧用圧縮機22の出口側の温度に対応する作動曲線を用いてもよい。
或いは、温度検出部18を用いて低圧用圧縮機14の入口側の温度を検出し、低圧用圧縮機14の入口側の温度に対応する作動曲線を用いてもよい。
つまり、温度検出部18は、供給ライン13の所定位置の温度(1箇所の温度)を測定すればよい。
【0073】
次に、
図6を参照して、第1の実施形態の第1変形例に係るエンジンシステム65について説明する。
エンジンシステム65は、バイパスライン41の分岐位置と接続位置を異ならせたこと以外は、第1の実施形態のエンジンシステム10と同様に構成されている。
バイパスライン41は、第2排気ライン29Bから分岐されており、第3排気ライン29Cと接続されている。バイパスライン41は、低圧用タービン31をバイパスさせるためのラインである。
【0074】
このような構成とされた第1の実施形態の第1変形例に係るエンジンシステム65は、先に説明した第1の実施形態のエンジンシステム10と同様な効果を得ることができる。
【0075】
図7を参照して、第1の実施形態の第2変形例に係るエンジンシステム70について説明する。
エンジンシステム70は、バイパスライン41の接続位置を異ならせたこと以外は、第1の実施形態のエンジンシステム10と同様に構成されている。
バイパスライン41は、第3排気ライン29Cと接続されている。バイパスライン41は、低圧用タービン31及び高圧用タービン34をバイパスさせるためのラインである。
【0076】
このような構成とされた第1の実施形態の第2変形例に係るエンジンシステム70は、先に説明した第1の実施形態のエンジンシステム10と同様な効果を得ることができる。
【0077】
(第2の実施形態)
図8を参照して、本発明の第2の実施形態に係るエンジンシステム80について説明する。
図8では、先に説明した第1の実施形態のエンジンシステム10と同一構成部分には同一符号を付す。
【0078】
エンジンシステム80は、高圧用タービン34及び排気流量調節部38に替えて、高圧用タービン81を有すること以外は、第1の実施形態のエンジンシステム10と同様に構成されている。
【0079】
ここで、
図9及び
図10を参照して、高圧用タービン81について説明する。
図9及び
図10では、
図8に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図9では、排気の移動方向を黒い矢印で図示している。
【0080】
高圧用タービン81は、ハウジング83及び複数の動翼84を含むタービン本体82と、排気流量調節部として機能する複数の可変式ノズル86と、を有する。
ハウジング83は、排気が導入される導入口83Aと、排気を導出する導出口(図示せず)と、を有する。複数の動翼84は、第2の回転軸36の周囲に設けられている。
【0081】
複数の可変式ノズル86は、ハウジング83の内側に設けられている。複数の可変式ノズル86は、複数の動翼84の外側に配置されている。
複数の可変式ノズル86は、複数の動翼84から離間した状態で、複数の動翼84の周囲を囲むように配置されている。複数の可変式ノズル86は、エンジンシステム用制御装置39と電気的に接続されている。複数の可変式ノズル86は、エンジンシステム用制御装置39により開度が調節可能な構成とされている。
【0082】
図9に示すように、複数の可変式ノズル86の開度が大きいと、複数の動翼84に多くの排気が供給される。一方、
図9に示すように、複数の可変式ノズル86の開度が絞られる(開度が小さい)と、複数の動翼84に供給される排気は少なくなる。
【0083】
このような構成とされた第2の実施形態のエンジンシステム80によれば、第1の実施形態で説明したバイパスライン41や弁43が不要となるので、エンジンシステム80の構成を簡略化することができる。
また、第2の実施形態のエンジンシステム80は、第1実施形態のエンジンシステム10と同様な効果を得ることができる。
【0084】
なお、第2の実施形態では、一例として、低圧用タービン及び高圧用タービンのうち、高圧用タービン81が複数の可変式ノズル86を有する場合を例に挙げて説明したが、例えば、低圧用タービン31が複数の可変式ノズル86を有するタービンであってもよい。
或いは、低圧用タービン及び高圧用タービンの両方のタービンが複数の可変式ノズル86を有するタービンであってもよい。これらの場合も第2の実施形態のエンジンシステム80と同様な効果を得ることができる。
【0085】
また、第2の実施形態の場合、第1の実施形態の
図5で説明したフローチャートと同様な手順で処理が行われる。
【0086】
(第3の実施形態)
図11及び
図12を参照して、本発明の第3の実施形態のエンジンシステム90について説明する。
図11では、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図12では、
図11に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0087】
エンジンシステム90は、回転数検出部91を有するとともに、圧力比取得部49が行う処理が異なること以外は、第1の実施形態のエンジンシステム10と同様に構成されている。
【0088】
回転数検出部91は、第1の回転軸33の回転数(以下、「回転数N」という)を検出可能な位置に設けられている。回転数検出部91は、パラメータ受付部47と電気的に接続されている。回転数検出部91は、第1の回転軸33の回転数Nの情報をパラメータ受付部47に送信する。
【0089】
圧力比取得部49は、パラメータ受付部47が受け付けた回転数N、温度t、圧力P1、及び圧力P4に基づいて、下記(2)式及び(3)式を用いて、低圧用圧縮機14の入口側の圧力P1を推定する。
Q=f(P4/P1,N) ・・・(2)
P1=Pa・ΔP ・・・(3)
なお、上記(2)式において、Qは空気の流量を示している。また、上記(3)式において、Paは大気圧(1気圧)、ΔPは圧損をそれぞれ示している。
そして、圧力比取得部49は、推定した低圧用圧縮機14の入口側の圧力P1、及び高圧用圧縮機22の入口側の圧力P3に基づいて、低圧用圧縮機14の圧力比を取得する。
【0090】
次に、
図11〜
図13を参照して、本発明の第3の実施形態のエンジンシステム用制御装置39が行う処理について説明する。
図13では、
図5に示すフローチャートと同様なステップ(S)には同じ符号を付す。
【0091】
図13に示す処理が開始されると、S7では、回転数検出部91、温度検出部18、第1の圧力検出部17、及び第2の圧力検出部25により、回転数N,温度t、圧力Pa、及び圧力P4を取得する。取得された回転数N,温度t、圧力Pa、及び圧力P4に関する情報は、パラメータ受付部47に送信される。
【0092】
次いで、S8では、上述した手法により、圧力比取得部49により、低圧用圧縮機14の入口側の圧力P1を取得する。
次いで、S2では、圧力Pa、圧力P4、及び圧力P1を用いて、圧力比取得部49により、低圧用圧縮機14の圧力比、及び高圧用圧縮機22の圧力比を取得する。
その後、第1の実施形態の
図5で説明したS3〜S6の処理を順次行うことで、
図13に示す処理は完了する。
【0093】
第3の実施形態のエンジンシステム90によれば、回転数検出部91を設け、回転数検出部91が検出した第1の回転軸33の回転数N、温度t、圧力Pa、及び圧力P4に基づいて、低圧用圧縮機14の入口側の圧力P1を推定することで、圧力P1を大気圧とした場合と比較して、低圧用圧縮機14の圧力比の精度を高めることが可能となる。
これにより、圧縮機間圧力比の精度を高めることが可能となるので、2段の過給機11,12を有するエンジンシステム90の燃費をさらに向上させることができる。
【0094】
ところで、流量計を用いて、空気の流量Qを測定することが考えられるが、低負荷状態と高負荷状態の両方を1つの流量計で計測することは困難である。このため、空気の流量Qを測定する場合、複数の流量計が必要となるため、エンジンシステム90のコストが上昇してしまう。
よって、複数の流量計を設ける替りに、1つの回転数検出部91を設けることで、簡便な構成で、圧力P1を推定することができる。
【0095】
なお、第3の実施形態において、第2の実施形態で説明した複数の可変式ノズル86を排気流量調節部として用いてもよい。
【0096】
図11、
図14、及び
図15を参照して、第3の実施形態のエンジンシステム用制御装置39の処理の第1変形例について説明する。
図14では、
図12に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
図15では、
図13に示すフローチャートを構成するステップ(S)と同一のステップには同一の符号を付す。
【0097】
図14に示すように、制御部54に、優先モード信号が入力される点が第3の実施形態のエンジンシステム用制御装置39の処理とは異なる。
優先モード信号には、燃費優先モード信号と、エンジン27の応答速度を優先させる応答速度優先モード信号と、エンジン保護優先モード信号と、がある。制御部54には、上記3つの優先モード信号のうちの1つの優先モード信号が入力される。
【0098】
図15に示す処理が開始されると、S9では、上述した3つの優先モード信号のうち、1つの優先モード信号が制御部54に入力される。
S9において、制御部54に燃費優先モード信号が入力されると、処理はS10へと進む。制御部54に応答速度優先モード信号が入力されると、処理はS11へと進む。制御部54にエンジン保護優先モード信号が入力されると、処理はS12へと進む。
【0099】
S10では、燃費優先モードの運転が開始され、その後、
図13で説明した処理が順次行われる。
S11では、エンジン27の応答優先モードの運転が開始され、その後、処理はS13へと進む。S13では、エンジンシステム用制御装置39の制御部54により、弁本体44が全閉状態となるように制御される。
S12では、エンジン保護応答優先モードの運転が開始され、その後、処理はS14へと進む。S14では、エンジンシステム用制御装置39の制御部54により、弁本体44が全開状態となるように制御される。
【0100】
このような制御をエンジンシステム用制御装置39が行うことで、目的に応じた運転を行うことができる。
なお、
図15に示す運転は、第1及び第2の実施形態で説明したエンジンシステム10,65,70,80にも適用可能であり、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0101】
図11及び
図16を参照して、第3の実施形態のエンジンシステム用制御装置39の処理の第2変形例について説明する。
図16では、
図13に示すフローチャートを構成するステップ(S)と同一のステップには同一の符号を付す。
【0102】
図16に示す処理が開始されると、
図13で説明したS7,S8,S2,S3,S4の処理が順次行われる。次いで、S15では、制御部54により、第1及び第2の冷却部16,23における凝縮水の発生量を予測する。
【0103】
凝縮水の発生量は、エンジン27の入口側の空気の温度及び相対湿度と、低圧用圧縮機14の圧力比と、高圧用圧縮機22の圧力比と、第1の冷却部16の出口側の温度と、第2の冷却部23の出口側の温度と、に基づいて予測する。
【0104】
具体的には、下記手法により、凝縮水の発生量を予測する。
まず、エンジン27の入口側の空気の温度に応じた飽和蒸気圧力及び相対湿度に基づいて、エンジン27の入口側の空気に含まれる水分量(以下、「水分量G1」という)を算出する。
次いで、第1の冷却部16の出口側の温度に応じた飽和蒸気圧力に基づいて、第1の冷却部16の出口側の空気に含まれる水分量(以下、「水分量G2」という)を算出する。
第1の冷却部16の出口側における凝縮水の発生量は、水分量G1から水分量G2を引くこと(引き算すること)で求められる。
【0105】
上述した手法と同様な手法により、高圧用圧縮機22の入口側の空気の温度に応じた飽和蒸気圧力と相対湿度とに基づいて、高圧用圧縮機22の入口側の空気に含まれる水分量(以下、「水分量G3」という)を算出する。
その後、第2の冷却部23の出口側の温度に応じた飽和蒸気圧力から第2の冷却部23の出口側の空気に含まれる水分量(以下、「水分量G4」という)を算出する。第2の冷却部23の出口側における凝縮水の発生量は、水分量G1から水分量G2を引くこと(引き算すること)で求められる。
【0106】
次いで、S16では、S15で予測した凝縮水の発生量が考慮された所定圧力比を取得する。
具体的には、下記手法を用いて、上記所定圧力比を取得する。
まず、第1の冷却部16における熱交換量の低下量は、第1の冷却部16の出口側における凝縮水の発生量(=G1−G2)に蒸発潜熱を乗じる(掛け算する)ことで算出する。
第2の冷却部23における熱交換量の低下量は、第2の冷却部23の出口側における凝縮水の発生量(=G3−G4)に蒸発潜熱を乗じる(掛け算する)ことで算出する。
【0107】
ついで、第1及び第2の冷却部16,23の熱交換量の低下量を把握することで、熱交換量の低下量を最小に設定するための低圧用圧縮機14の圧縮比、及び高圧用圧縮機22の圧力比を算出する。
次いで、上記低圧用圧縮機14の圧縮比、及び高圧用圧縮機22の圧力比を用いて、第1及び第2の冷却部16,23の熱交換量の低下量が考慮された圧縮機間圧力比を取得する。
次いで、作動曲線に基づいて、エンジンシステム10の作動効率が最適となる所定圧力比を取得する。
【0108】
次いで、S5では、S16で予測した第1及び第2の冷却部16,23の性能が考慮された圧縮機間圧力比が、エンジンシステム10の作動効率が最適となる弁本体44の開度の変位量を取得する。
その後、S6では、S5で取得した弁本体44の開度の変位量に基づいて、制御部54が弁本体44の開度を制御する。
【0109】
第3の実施形態のエンジンシステム用制御装置39の処理の第2変形例によれば、気象条件(気温、気圧、湿度等)が変化した場合や、過給機11,12、第1の冷却部16、及び第2の冷却部23が経年劣化した場合でもエンジンシステム90の燃費を向上させることができる。
特に、湿度が高い運転環境下では、第1及び第2の冷却部16,23において凝縮水が発生しやすいため、上記第2変形例に係るエンジンシステム用制御装置39の処理を行うことが好適である。
【0110】
なお、上記第2変形例に係るエンジンシステム用制御装置39の処理は、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明したエンジンシステム10,65,70,80にも適用可能である。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。