(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6764848
(24)【登録日】2020年9月16日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】ひずみゲージ及びひずみゲージの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20200928BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20200928BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20200928BHJP
B32B 37/02 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
G01B7/16 R
C23C14/06 N
B32B15/08 E
B32B37/02
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-215327(P2017-215327)
(22)【出願日】2017年11月8日
(65)【公開番号】特開2019-86420(P2019-86420A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2019年10月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 真一
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
【審査官】
川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−062803(JP,A)
【文献】
特開平09−036061(JP,A)
【文献】
米国特許第04176445(US,A)
【文献】
特表平06−511087(JP,A)
【文献】
特開2010−247335(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/005019(WO,A1)
【文献】
特開2006−234384(JP,A)
【文献】
特開平05−257105(JP,A)
【文献】
特開平04−007826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属層と絶縁体であるエッチングストップ層を交互に形成することにより積層体を形成することと、
前記積層体をパターニングして抵抗体を形成することと、
前記形成した抵抗体の抵抗値を測定することと、
前記測定された抵抗値が所定の値よりも低い場合には、前記金属層のうちの少なくとも最上側の金属層をエッチングして除去することと、
前記最上側の金属層が除去された抵抗体の抵抗値を測定することと、
前記最上側の金属層が除去された抵抗体の抵抗測定値と前記所定の値との差が許容範囲外である場合、前記最上側の金属層の下層のエッチングストップ層を除去し、次いで除去したエッチングストップ層の下層の金属層をエッチングにより除去して、前記抵抗体の抵抗値を測定することを含み、
前記抵抗体の抵抗測定値と前記前記所定の値との差が前記許容範囲内になるまで、エッチングストップ層の除去と金属層の除去を繰り返すことを含むひずみゲージの製造方法。
【請求項2】
前記抵抗体が、一対のリード線接続部と、前記リード線接続部の一方からジグザグに折り返しながら延在して前記リード線接続部の他方に接続するひずみ受感部とを有し、前記一対のリード線接続部に前記エッチングストップ層を貫通する孔を形成することを含む請求項1に記載のひずみゲージの製造方法。
【請求項3】
前記孔に導電体を充填して、前記積層体の前記金属層同士を電気的に接続することを含む請求項2に記載のひずみゲージの製造方法。
【請求項4】
前記積層体を形成することが、前記基材上に第1金属層を形成し、前記第1金属層上に第1エッチングストップ層を形成し、前記第1エッチングストップ層上に第2金属層を形成することを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のひずみゲージの製造方法。
【請求項5】
前記積層体を形成することが前記第2金属層上に第2エッチングストップ層を形成することを含む請求項4に記載のひずみゲージの製造方法。
【請求項6】
前記エッチングストップ層が前記積層体の最上層として配置される請求項1〜5のいずれか一項に記載のひずみゲージの製造方法。
【請求項7】
前記基材がフィルム状の基材であり、
前記基材を前記金属層の材料からなるスパッタリングターゲットに対向する位置と前記エッチングストップ層の材料からなるスパッタリングターゲットに対向する位置の間を往復搬送しながらスパッタリングを行うことにより、前記積層体を形成する請求項1〜6のいずれか一項に記載のひずみゲージの製造方法。
【請求項8】
前記金属層の材料からなるスパッタリングターゲット及び前記エッチングストップ層の材料からなるスパッタリングターゲットを成膜ロールの外周面に対向するように配置し、前記基材を前記成膜ロールの外周に沿って往復搬送しながら前記スパッタリングを行う請求項7に記載のひずみゲージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージ及びひずみゲージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ひずみゲージは一般に、絶縁性を有する板状の基材と、基材の一面上に設けられた抵抗体とを有し、基材の他面が起歪体の表面に接着剤によって固定されている。起歪体は一般にアルミニウム合金等の金属製であり、計測対象の重量に応じて変形する(ひずみを生じる)。起歪体に変形(ひずみ)が生じるとこれに応じてひずみゲージの抵抗体に伸縮が生じ、抵抗体の電気抵抗値が変化する。この抵抗体の電気抵抗値の変化に基づいてひずみ量が求められる。ひずみセンサの一例は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−85259号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ひずみゲージの抵抗体は金属膜をパターニングすることによって形成されるが、パターニングの精度が低い場合、抵抗体の寸法のばらつきにより抵抗体の抵抗値がばらつくことがある。しかし、ひずみゲージの量産においては、所望の抵抗値の抵抗体を歩留まりよく形成することが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、所望の抵抗値の抵抗体を有するひずみゲージを歩留まりよく製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、基材上に金属層とエッチングストップ層を交互に形成することにより積層体を形成することと、
前記積層体をパターニングして抵抗体を形成することを含むひずみゲージの製造方法が提供される。
【0007】
第1の態様のひずみゲージの製造方法において、前記積層体を形成することが、前記基材上に第1金属層を形成し、前記第1金属層上に第1エッチングストップ層を形成し、前記第1エッチングストップ層上に第2金属層を形成することを含んでよい。前記積層体を形成することは、前記第2金属層上に第2エッチングストップ層を形成することをさらに含んでよい。
【0008】
第1の態様のひずみゲージの製造方法は、前記金属層をエッチングすることをさらに含んでよい。前記金属層のエッチングは、前記抵抗体を形成した後に行ってよい。
【0009】
第1の態様のひずみゲージの製造方法において、前記エッチングストップ層は絶縁体から形成されてよい。
【0010】
第1の態様のひずみゲージの製造方法において、前記抵抗体が、一対のリード線接続部と、前記リード線接続部の一方からジグザグに折り返しながら延在して前記リード線接続部の他方に接続するひずみ受感部とを有してよく、
第1の態様のひずみゲージの製造方法が、前記一対のリード線接続部に前記エッチングストップ層を貫通する孔を形成することをさらに含んでよい。前記孔に導電体を充填して、前記積層体の前記金属層同士を電気的に接続することをさらに含んでもよい。
【0011】
第1の態様のひずみゲージの製造方法において、前記エッチングストップ層が前記積層体の最上層として配置されてよい。
【0012】
第1の態様のひずみゲージの製造方法において、前記基材がフィルム状の基材であり、
前記基材を前記金属層の材料からなるスパッタリングターゲットに対向する位置と前記エッチングストップ層の材料からなるスパッタリングターゲットに対向する位置の間を往復搬送しながらスパッタリングを行うことにより、前記積層体を形成してよい。前記金属層の材料からなるスパッタリングターゲット及び前記エッチングストップ層の材料からなるスパッタリングターゲットを成膜ロールの外周面に対向するように配置し、前記基材を前記成膜ロールの外周に沿って往復搬送しながら前記スパッタリングを行ってよい。
【0013】
本発明の第2の態様に従えば、基材と、
前記基材上に設けられた抵抗体を備え、
前記抵抗体が、金属層とエッチングストップ層が交互に形成された積層体からなるひずみゲージが提供される。
【0014】
第2の態様のひずみゲージにおいて、前記積層体が、前記基材上に形成された第1金属層と、前記第1金属層上に形成された第1エッチングストップ層と、前記第1エッチングストップ層上に形成された第2金属層を含んでよい。前記積層体は、前記第2金属層上に形成された第2エッチングストップ層をさらに含んでよい。
【0015】
第2の態様のひずみゲージにおいて、前記エッチングストップ層が絶縁体から形成されてよい。
【0016】
第2の態様のひずみゲージにおいて、前記抵抗体が、一対のリード線接続部と、前記リード線接続部の一方からジグザグに折り返しながら延在して前記リード線接続部の他方に接続するひずみ受感部とを有し、
前記一対のリード線接続部において、前記エッチングストップ層を貫通する孔が形成されていてよい。前記積層体の前記金属層同士が、前記孔に充填された導電体により電気的に接続されていてよい。
【0017】
第2の態様のひずみゲージにおいて、前記エッチングストップ層が前記積層体の最上層として配置されてよい。
【0018】
本発明のひずみゲージの製造方法では、金属層とエッチングストップ層を交互に積層した積層体から抵抗体を形成することにより、抵抗体の抵抗値を容易にかつ精度よく調整できる。そのため所望の抵抗値の抵抗体を有するひずみゲージを歩留りよく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係るひずみゲージの斜視図である。
【
図2】
図2(a)〜(c)はひずみゲージの抵抗体の概略断面図である。
【
図3】
図3(a)はエッチングストップ層を貫通する孔を形成したリード線接続部の概略断面図であり、
図3(b)は該リード線接続部の孔に導電体を充填した状態を示す概略断面図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は孔を形成したリード線接続部の概略上面図である。
【
図5】
図5は本発明の実施形態に係るひずみゲージの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6はフィルム状基材上に積層体を形成するために用いることができるスパッタリング装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のひずみゲージ及びその製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
[ひずみゲージ]
図1に示す通り、実施形態のひずみゲージ10は、基材1と、基材1の一面上に設けられた抵抗体2とを有し、さらに、抵抗体2を覆うカバー3を有してよい。
【0022】
基材1は、樹脂材料で形成された可撓性を有する板状部材であり、より具体的には平行平板である。樹脂材料は、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などであってよい。基材1の厚さは例えば約12μm〜約25μmmである。
【0023】
抵抗体2は、外部接続用のリード線が接合される一対のタブ(リード線接続部)2tと、一方のタブ2tからジグザグに折り返しながら延在して他方のタブ2tに接続するゲージ受感部(ひずみ受感部)2cとを有する。
【0024】
図2(a)〜(c)に抵抗体2の断面構造を示す。抵抗体2は、基材1に対して垂直な方向に金属層22とエッチングストップ層24が交互に積層された積層体20からなる。エッチングストップ層24は、後述する金属層22のエッチング処理によるエッチングレートが小さい層である。金属層22は、例えば銅ニッケル合金等から形成されてよい。エッチングストップ層24は、例えばSiO
2やSiN等の絶縁体、Au、Pt、Rhなどの貴金属、酸に強いTaやIr等から形成されてよい。特にAuは適切なエッチング処理を選択することで高いエッチングレートを有することができるため、エッチングストップ層24として薄いAu層を用いた場合、後述するエッチング工程におけるエッチングストップ層24の除去が容易になる。抵抗体2がエッチングストップ層24を有することにより、後述するエッチング工程において抵抗体2の抵抗値の調整を安定的に行うことができる。
【0025】
積層体20は、
図2(a)に示すように、基材1上に形成された第1金属層22a、第1金属層22a上に形成された第1エッチングストップ層24aと、第1エッチングストップ層24a上に形成された第2金属層22bを有してよい。また、
図2(b)に示すように、第2金属層22b上に形成された第2エッチングストップ層24bを備えてよく、さらに金属層22c、22dとエッチングストップ層24c、24dを有してもよい。
図2(b)に示すように、エッチングストップ層24dが積層体20の最上層(すなわち、抵抗体2の最上層)として配置されていてもよい。積層体20の最上層としてエッチングストップ層24dが配置されることにより、当該エッチングストップ層24dが保護層として働くという利点がある。また、
図2(c)に示すように、積層体20の表面付近にエッチングストップ層24が偏在していてもよい。すなわち、第1金属層22aの厚みが、第1金属層22a以外の金属層22b、22c、22dの厚みよりも大きくてよい。この場合、同数のエッチングストップ層24が積層体20において均等な間隔で配置されている場合(
図2(b)参照)と比べて、抵抗体2の抵抗値をより細かく調整できる。
【0026】
前記一対のリード線接続部2tにおいて、
図3(a)に示すようにエッチングストップ層24を貫通する孔26が形成されていてよい。エッチングストップ層24が絶縁体である場合、
図3(b)に示すように孔26に導電体28を充填することにより、導電体28を介して積層体20中の(すなわち抵抗体2中の)複数の金属層22を電気的に接続することができる。リード線接続部2tにおいて複数の金属層22が電気的に接続されることにより、ひずみ受感部2cにおける複数の金属層22は並列に接続される。孔26の形状及び配置は特に限定されない。例えば、孔26が
図4(a)に示す様に円形の平面形状を有してもよく、
図4(b)に示す様に線状の平面形状を有してもよい。導電体28ははんだ等であってよい。
【0027】
カバー3は、抵抗体2のひずみ受感部2cのみを覆うように抵抗体2の上に設けられ、ひずみ受感部2cに損傷等が生じることを防いでいる。カバー3は一例としてポリイミドで形成することができるが、前述のPAI、PE、PEEK等でもよい。なお、
図1においては、抵抗体2のひずみ受感部2cを明示するためカバー3は破線で示している。
【0028】
[ひずみゲージの製造方法]
次に、ひずみゲージ10の製造方法を、
図5のフローチャートに従って説明する。
【0029】
図5に示す通り、ひずみゲージ10の製造方法は、基材上に、複数の金属層と少なくとも1つのエッチングストップ層を交互に形成することにより積層体を形成する工程(S01)と、積層体をパターニングして抵抗体を形成する工程(S02)と、抵抗体の抵抗値を測定する工程(S03)と、少なくとも1つの金属層をエッチングする工程(S04)と、一対のリード線接続部にエッチングストップ層を貫通する孔を形成する工程(S05)と、抵抗体2をカバー3で覆うカバー形成工程(S06)と、複数の金属層を電気的に接続する工程(S07)とを有する。S03〜S07は任意の工程である。
【0030】
<積層体形成工程>
積層体形成工程S01では、基材1上に金属層22とエッチングストップ層24を交互に形成する(
図2(a)〜(c)参照)。例えば、
図6に概念的に示すようなスパッタリング装置40を用いることができる。スパッタリング装置40は、真空チャンバー41を備えている。真空チャンバー41の内部には、可撓性のあるフィルム状(ベルト状)の基材1を繰り出し又は巻き取る第1ロール42と、フィルム状の基材1を巻き取り又は繰り出す第2ロール43が設置され、第1ロール42から繰り出された基材1が第2ロール43により巻き取られるまでの搬送路の間に成膜ロール44が設置されている。さらに、真空チャンバー41内には基材1を搬送するためのガイドロール(不図示)が設置されていてもよい。基材1は、成膜ロール44に巻回され、成膜ロール44の外周に沿って搬送される。成膜ロール44に巻回される基材1に対向するように、第1ターゲット45、第2ターゲット46、第3ターゲット47が配置されている。すなわち、第1ターゲット45、第2ターゲット46、第3ターゲット47は、成膜ロール44の外周面に対向するように配置される。第1ターゲット45及び第3ターゲット47は、エッチングストップ層24を形成するためのターゲットである。第2ターゲット46は金属層22を形成するためのターゲットである。第2ターゲット26は、基材1の搬送方向において第1ターゲット45と第3ターゲット47の間に配置される。
【0031】
スパッタリング装置40を用いて、以下のようにして積層体20を成膜することができる。まず、真空チャンバー41内を高真空に減圧する。次いで、真空チャンバー41内にAr等の希ガスを導入し、DCプラズマや高周波プラズマによって第2ターゲット46及び第3ターゲット47の原子を叩き出しながら、基材1を
図6において実線矢印で示す方向(第1搬送方向)に搬送する。すなわち、基材1を、第1ロール42から成膜ロール44に向かって繰り出し、成膜ロール44に沿ってその表面に接触させながら搬送し、成膜ロール44から第2ロール43に向かって搬送して第2ロール43で巻き取る。基材1が第2ターゲット46に対向する位置を通過するときに、基材1の表面に第2ターゲット46から叩き出された原子が堆積されることにより第1金属層22aが形成される。基材1が第3ターゲット47に対向する位置を通過するときに、第1金属層22a上に第3ターゲット47から叩き出された原子が堆積されることにより第1金属層22a上に第1エッチングストップ層24aが形成される。
【0032】
次いで、DCプラズマや高周波プラズマによって第1ターゲット45及び第2ターゲット46の原子を叩き出しながら、第2ロール43で巻き取った基材1を
図6において破線矢印で示す方向(第2搬送方向)に搬送する。すなわち、基材1を、第2ロール43から成膜ロール44に向かって繰り出し、成膜ロール44に沿ってその表面に接触させながら搬送し、次いで成膜ロール44から第1ロール42に向かって搬送して第1ロール42で巻き取る。基材1が第2ターゲット46に対向する位置を通過するときに、基材1上の第1エッチングストップ層24a上に第2ターゲット46から叩き出された原子が堆積され、第2金属層22bが形成される。基材1が第1ターゲット45に対向する位置を通過するときに、第2金属層22b上に第1ターゲット45から叩き出された原子が堆積され、第2エッチングストップ層24bが形成される。
【0033】
基材1を第1ロール42と第2ロール43の間で往復搬送しながら、上記の第2ターゲット46及び第3ターゲット47を用いたスパッタ成膜と第1ターゲット45及び第2ターゲット46を用いたスパッタ成膜を繰り返すことにより、金属層22とエッチングストップ層24を交互に形成し、積層体20を形成することができる。
【0034】
この積層体20の形成方法においては、積層体20全体の厚さに対して各金属層22及び各エッチングストップ層24の厚さが小さくてよいため、基材1がターゲット45、46、47に対向する時間を短くすることができる。そのため、基材1がターゲット45、46、47に対向する位置を通過する時に基材1が加熱されてダメージを受けることを抑制することができる。また、基材1への熱ダメージをさらに軽減するために、成膜ロール44に冷却機構(不図示)を設け、基材1を冷却してもよい。
【0035】
スパッタ法に代えて、電子線加熱蒸着法、抵抗加熱蒸着法等により積層体20を形成してもよい。
【0036】
<抵抗体形成工程>
次いで、フォトリソグラフィを用いて、積層体20をパターニングし、抵抗体2(
図1参照)を形成する。具体的には積層体20上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、積層体20をエッチングすることで抵抗体2を形成することができる。あるいは、基材1上にレジストパターンを形成し、その上に積層体20を形成した後レジスト及びレジスト上の積層体20を除去することによって抵抗体2を形成することもできる。
【0037】
<抵抗値測定工程>
形成した抵抗体2の一対のリード線接続部2tの間の抵抗値を測定する。
【0038】
<エッチング工程>
抵抗体形成工程のパターニング精度によっては抵抗体2の抵抗値にばらつきが生じることがあるが、抵抗体2の抵抗値が設計値(目標値)よりも小さく、そのずれの大きさが許容範囲を超えた場合、金属層24をエッチングすることにより抵抗体2の抵抗値を調整することができる。例えば、抵抗体2の最上層のエッチングストップ層24を除去した後、金属層22のエッチング処理を行うことで、抵抗体2の最上層の金属層22を除去することができる。エッチングストップ層24の除去は、NH
4F:HF:H
2Oの水溶液若しくはH
3PO
4:HNO
3の水溶液を用いたウェットエッチング、又はフッ素系ガス(CHF
3,C
2F
6)を用いたドライエッチングにより行うことができる。金属層22のエッチング処理は、適切なガスを用いた反応性イオンエッチング、スパッタエッチング等、金属層22とエッチングストップ層24のエッチングレートの比(選択比)が十分大きいエッチング法により行うことができる。エッチングストップ層24は金属層22のエッチング処理によってはエッチングされないまたはほとんどエッチングされないため、ほぼ抵抗体2の最上層の金属層22のみをエッチングすることができる。このように金属層22を1層除去することで、抵抗体2の抵抗値を上昇させることができる。さらに抵抗体2の抵抗値を上昇させる必要がある場合には、再度エッチングストップ層24の除去及び金属層22のエッチングを行ってよい。これを繰り返すことにより、抵抗体2の抵抗値を段階的に調整することができる。なお、上述の抵抗値測定工程で測定した抵抗体2の抵抗値と設計値とのずれが許容範囲内であった場合は、エッチング工程を行う必要はない。
【0039】
<孔形成工程>
エッチングストップ層24が絶縁体である場合、抵抗体2のリード線接続部2tに孔26(
図3(a)参照)を形成する。孔26は、リード線接続部2tをレーザブラスト加工する方法、超音波発振器と接続した治具をリード線接続部2tに押し当てる方法等により形成することができる。
【0040】
<カバー形成工程>
抵抗体2のひずみ受感部2cを保護するため、ポリイミド等のカバー3でひずみ受感部2cを覆ってよい。
【0041】
<金属層の電気的接続工程>
エッチングストップ層24が絶縁体である場合、孔26にはんだ等の導電体28(
図3(b)参照)を充填することにより、導電体28を介して抵抗体2中の(すなわち積層体20中の)複数の金属層22を電気的に接続する。
【0042】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のひずみゲージの製造方法では、ひずみゲージの抵抗体の抵抗値を容易にかつ精度よく調整できるため、所望の抵抗値の抵抗体を有するひずみゲージを歩留りよく製造できる。したがって、ひずみゲージやこれを用いた計測機器の高精度化及び低価格化に貢献することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 基材、2 抵抗体、3 カバー、10 ひずみゲージ、20 積層体、22 金属層、24 エッチングストップ層