特許第6765041号(P6765041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6765041屋外型沈澱池における処理環境の保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765041
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】屋外型沈澱池における処理環境の保持方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20200928BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20200928BHJP
   B01D 21/08 20060101ALI20200928BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   B01D21/02 Z
   B01D21/01 B
   B01D21/01 C
   B01D21/02 S
   B01D21/08 A
   B01D21/24 G
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-173551(P2016-173551)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-38949(P2018-38949A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−094563(JP,A)
【文献】 特開2000−120115(JP,A)
【文献】 特開2003−236525(JP,A)
【文献】 特開2003−010606(JP,A)
【文献】 特開2003−300059(JP,A)
【文献】 特開平03−245804(JP,A)
【文献】 特開2013−146685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
C02F 1/52− 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外型沈澱池の水面上に、該水面から前記屋外型沈澱池の側壁の上縁部までの高さの任意の位置に、少なくとも1枚のメッシュ状膜を展張し、境界層を設けることを特徴とする屋外型沈澱池の処理環境を保持する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁水を清澄処理するための屋外型沈澱池における処理環境の保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚濁物質を含有する汚濁水を清澄処理するための代表的な沈澱池としては、例えば、横流式普通沈澱池、横流式薬品沈澱池、放射流式普通沈澱池、放射流式薬品沈澱池、高速凝集沈澱池等が知られている。これらの沈澱池は、一般的に屋外に設置するのが常である。
このように屋外に沈澱池を設置すると、気候、気象条件によって設計時の処理条件を保持することができず、結果的に所望する汚濁水の清澄化を行うことができなかった。すなわち、一般的に沈澱池の流れの主体は、水面近くに流れが集中するので、部分的に整流壁で流れを早くして水深下の通水断面を広げることが必要であった。そのため整流設備を設けて、沈澱池内の偏流を少なくして除去率を高めることが行われている。しかしながら実際の沈澱池では、池内の水流は、水流自体の乱れや気候、気象条件の影響で、理想的な状態とはほど遠い乱れた水流状態を呈してしまうことがあった。例えば風速5m/S以上になると水深0.5m迄水の擾乱が生起し、また沈澱池内の処理水の表層面と水底との温度差が1℃生ずることによって流速が10倍速くなり、充分な清澄化処理が行えなくなるのである。
【0003】
そこで近年では、特に気象条件の変化に対応できる沈澱池として、沈澱池の天井部を覆う沈澱池が提案されている(特許文献1)。
しかしながら沈澱池の天井部を覆うためには莫大な費用がかかり、かつ内部に設けた設備等の交換ができない欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−146685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、特に気象条件の変化によっても処理環境を保持し、ある一定の清澄化の処理条件を満たす方法について種々研究を重ねた結果簡単な装備をすることによって、満足する結果を得ることができた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、屋外型沈澱池の水面上に、該水面から前記屋外型沈澱池の側壁の上縁部までの高さの任意の位置に、少なくとも1枚のメッシュ状膜を展張することを特徴とする屋外型沈澱池の処理環境を保持する方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明方法は、屋外型沈澱池の水面の上部に少なくとも1枚のメッシュ状膜を展張することによって、該メッシュ状膜によって境界層を設けることができ、それによって風による沈澱池内の処理水の擾乱を防止すると共に日光による水温上昇、また冬期における放射熱、積雪による水温の低下を防止し、安定した処理条件によって原水の処理をすることができる。またメッシュ状膜の設置も簡単に行えるので費用を大幅に節減することができると共に沈澱槽内のメンテナンスも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】従来の横流沈澱池の側断面図である。
図2図1の横流沈澱池の平面図である。
図3】水流傾斜膜の正面図である。
図4図3の水流傾斜膜の側面図である。
図5】本発明のメッシュ状膜の斜視図である。
図6】本発明のメッシュ状膜を展張した横流沈澱池の側断面図である。
図7】本発明のメッシュ状膜を展張した放射流式普通沈澱池の側断面図である。
図8】本発明のメッシュ状膜を展張した放射流式普通沈澱池の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の屋外型沈澱池の代表的なものとしては図1に示すような横流沈澱池が知られている。この横流沈澱池の構造は、混和槽1、フロック形成槽2、孔3を設けた整流壁4、沈澱槽5、取水トラフ6、処理水排出管7、排泥渠8から構成されている。
【0010】
次に図1に示す横流沈澱池により、汚濁物質を含有する原水を処理する場合について説明する。
汚濁物質を含有する原水は、凝集剤が添加された後、混和槽1において急速撹拌され、次にフロック形成槽2において緩速撹拌された後、孔3を有する整流壁4を経て沈澱槽5を通過する。その際フロック化された汚濁物質は分離除去され、底部の排泥渠8に集泥される。集泥渠8に集泥されたフロック化された汚濁物質は、スラッジ集水管から排泥される。沈澱槽5を通過した処理水は、集水トラフ6を介して処理水排出管7から沈澱池外に排出される。
【0011】
また前期沈澱槽5には、フロック化された汚濁物質の沈降効果を高めるために例えば図2に示すような水流傾斜膜10を展張することが好ましい。図3および図4に示すように水流傾斜膜10はシート状膜11の上部にフロート12を設け、このフロート12をシャックル等を用いて連結することによって構成することができる。その際に隣接するシート状膜11との間に間隔部13を設けることが必要である。この間隔部13は、水流の速度にもよるが、一般的には5〜20cmの間隔を設けることが好ましい。
【0012】
本発明方法は、前記のような沈澱池の水面を覆うようにメッシュ状膜を展張するものである。図5に示すように本発明方法に使用するメッシュ状膜14としては、例えば結節網、無結節網、成型網、寒冷紗等が挙げられる。これらのメッシュ状膜14は可変形性でも、プラスチック製薄板状の不変形性のもでも使用できる。メッシュ状膜14の一つの目の大きさは1mm〜100cmであることが好ましい。
【0013】
メッシュ状膜14は少なくとも沈澱池の沈澱槽5の水面上部全体あるいは部分的に展張する。具体的な展張位置としては水面から沈澱槽5の側壁の上縁部との間の任意の位置(高さ)に展張することが好ましい。また複数枚を重ねたり、あるいは複数枚重ねるに当りメッシュ状膜14の上下のメッシュ状膜14の間に間隔を置いて設けることもできる。このようにメッシュ状膜14を複数枚重ねて使用することによって効果はさらに向上する。
【0014】
沈澱槽5中にメッシュ状膜14を展張する方法としては、図6に示すような水流傾斜膜10を使用した場合は、そのフロート12を利用して、該フロート12上に適宜の手段によってメッシュ状膜14を固定することによって展張することができる。また展張されたメッシュ状膜14は必ずしも全体が水面上にある必要はなく、場合によっては一部が水表面あるいは水中に浸る状態であっても差し支えない。
【0015】
また、本発明方法に使用するメッシュ状膜14は、沈澱槽5の他、混合槽1、フロック形成槽2にも展張することによってさらに効果は向上する。
【0016】
沈澱槽5中にメッシュ状膜14を展張する他の方法としては、図7に示すような放射流式普通沈澱池の場合は、外周にメッシュ状膜14を固定することによって展張することができる。また展張されたメッシュ状膜14は必ずしも沈澱池の全体に展張することなく、図8に示すような外周側に満遍無く複数枚のメッシュ状膜14を固定することによって展張することができる。
【0017】
本発明方法は、汚濁物質を含有する汚濁水を清澄処理するための沈澱池の他に、たとえば水酸化カルシウムや水酸化マグネシウム等の生産工程に使用する沈澱池にも使用する事が出来る。
【0018】
次に本発明方法を実施例1を掲げて説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例
図6に示した縦30mおよび横10mの横流沈澱池の沈澱槽5に設けられた水流傾斜膜10のフロート12上にメッシュ状膜14を展張し固定した。
この横流沈澱池を用い冬期(気温0℃、水温26℃、風速5m/S)に原水(濁度39000mg/L、水量240m/hr)を処理したところ、処理水排出管7から採取した処理水の濁度は60mg/Lであった。
一方比較のためにメッシュ状膜14を用いなかった以外前記実施例とほぼ同一条件で原水を処理したところ処理水排出管7から採取した処理水は、濁度350mg/Lであった。
【符号の説明】
【0019】
5・・・沈澱槽
14・・・メッシュ状膜

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8