(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765106
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20200928BHJP
C11D 7/24 20060101ALI20200928BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20200928BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20200928BHJP
C11D 7/34 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
C11D7/50
C11D7/24
C11D7/26
B08B3/08 Z
C11D7/34
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-548832(P2018-548832)
(86)(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公表番号】特表2019-515978(P2019-515978A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2017054996
(87)【国際公開番号】WO2017157694
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年11月20日
(31)【優先権主張番号】16160080.4
(32)【優先日】2016年3月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シュタインメッツ,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコヴスキー,ペギー
(72)【発明者】
【氏名】ルーマン,ナディア
(72)【発明者】
【氏名】マツラ,ミヒャエル
【審査官】
柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102011000083(DE,A1)
【文献】
特表2016−506383(JP,A)
【文献】
特開2008−075090(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19526351(DE,A1)
【文献】
英国特許出願公開第02299812(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
B08B 3/08
C10M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄組成物であって、
20〜90質量%のジメチルスルホキシド、
5〜30質量%の少なくとも1種の鉱油(M)、及び
5〜50質量%の少なくとも1種の双極性有機溶媒(L)
を含み、上記各割合の範囲はそれぞれ前記洗浄組成物の全質量に基づき、
前記双極性有機溶媒(L)が4〜14個の炭素原子を有する脂肪族モノアルコールからなる群から選択される、洗浄組成物。
【請求項2】
35〜80質量%のジメチルスルホキシド、
10〜30質量%の少なくとも1種の鉱油(M)、及び
10〜40質量%の少なくとも1種の双極性有機溶媒(L)
を、それぞれ前記洗浄組成物の全質量に基づいて含有する、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のパラフィン系及び/又はナフテン系鉱油(M)を含有する、請求項1又は2に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のイソパラフィンベースの鉱油(M)を含有する請求項3に記載の洗浄組成物。
【請求項5】
前記洗浄組成物の全量に基づき5質量%以下の芳香族鉱油を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項6】
前記双極性有機溶媒(L)が、2−エチルヘキサノールである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項7】
少なくとも80質量%程度のジメチルスルホキシド、少なくとも1種の鉱油及び少なくとも1種の双極性有機溶剤からなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項8】
構成要素、すなわち物品、及び/又はプラント並びにプラントの部品を洗浄する方法であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の洗浄組成物を使用する方法。
【請求項9】
構成要素、すなわち物品、及び/又はプラント並びにプラントの部品の洗浄に、請求項1から7のいずれか一項に記載の洗浄組成物を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業利用における様々なプラント系及びそのようなプラントの部品を洗浄するのに傑出して適した新規洗浄組成物に関する。特に、該洗浄組成物は、表面被覆の、例えば車両被覆のための表面被覆の生産設備における配管の洗浄に適している。
【背景技術】
【0002】
産業用車両被覆、例えば大量生産の自動車被覆の分野では、適切な表面被覆を施与場所に運搬するために複雑な配管系を有するプラントが使用される。例として、それ自体公知であるリングラインプラント(ring line plants)が挙げられる。
【0003】
これらのプラントの清掃には特に二つの要因が考慮されなければならず、これにより、この手順は特に困難となる。第一に、配管設備の重要な部品は手が届きにくい場所にあり、汚れが沈着又は固着する可能性がある大きな表面積を有する。第二に、複雑な表面被覆配合物は、除去することが困難で、非常に頑固な汚れを生成する特異な傾向を有する。よって、様々な有機構成成分、特に物理的に硬化可能な結合剤及び様々な添加剤成分、例えば疎水性の高いシリコーン誘導体、並びに、無機成分、特に顔料及び充填剤などは、特に強力な付着物及び沈着物の形成をもたらす可能性がある。プロセスに関連した、配管中の汚染物質、例えば疎水性の高い潤滑剤はまた、プラントの洗浄を非常に困難なものとする。
【0004】
様々な洗浄成分及び組成物が産業用途において知られているが、これらは洗浄に関する上述の問題を必ずしも満足に解決することができるとは限らず、及び/又は健康及び環境に害を及ぼす成分をかなりの割合で含有する。よって、原則的に洗浄用として知られているジメチルスルホキシド(DMSO)であっても、いかなる種類の汚染をも満足に除去することができるわけではない。同様に、NMP(1−メチル−2−ピロリドン)も原則的に洗浄用として非常に有効であるが、既知のように、有毒で、かつ、催奇形性成分として分類されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、上述の汚れを特に良く取り除くことができ、同時に、健康及び環境に特に有害な成分を使用せずに済む可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、
20〜90質量%のジメチルスルホキシド、
5〜30質量%の少なくとも1種の鉱油(M)、及び
5〜50質量%の少なくとも1種の双極性有機溶媒(L)
を含む新規洗浄組成物によって達成することができた。
【0007】
上記各割合の範囲はそれぞれ、洗浄組成物の全質量に基づく。
【0008】
新規洗浄組成物は本発明によって提供され、これ以降、本発明の洗浄組成物と言う。本発明の洗浄組成物の好ましい実施形態は、以下の記載及び従属請求項から得ることができる。
【0009】
本発明はまた、物品、構成要素及び/又はプラント、並びにそのようなプラントの部品を洗浄する方法(該方法において、本発明の洗浄組成物を用いる)を提供する。
【0010】
様々な物品、構成要素及び/又はプラント並びにそのようなプラントの部品の優れた洗浄が、その洗浄組成物を用いて、又は洗浄方法におけるその使用によって、達成可能であることが見出された。驚くべきことに、その組成物の洗浄作用は、個々の成分の洗浄作用よりも著しく良好である。この理由から、その組成物及び方法は、複雑な配管系を有するプラントの、例えば車両産業の分野におけるリングラインプラントの、洗浄の分野において特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の洗浄組成物は、ジメチルスルホキシドを含有する。ジメチルスルホキシドを洗浄剤として使用するという原則的な可能性は既知である。しかしながら、この成分は、下記の成分と組み合わせたときのみ優れた洗浄作用を示す。
【0012】
ジメチルスルホキシドの割合は、洗浄組成物の全量に基づき、20〜90質量%である。割合の好ましい範囲は35〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%である。
【0013】
本発明の洗浄組成物は、少なくとも1種の鉱油(M)をさらに含有する。
【0014】
本発明の目的のために、それ自体当業者に既知である鉱油を使用することができる。これら鉱油は、既知であるように、石油等の化石原材料を蒸留して得られる油であり、その主構成成分は、パラフィン系炭化水素(飽和非環式炭化水素)、ナフテン系炭化水素(飽和環状炭化水素)及び/又は芳香族炭化水素である。これらの蒸留物は一般に、少量の様々な硫黄含有及び/又は窒素含有有機化合物、並びにオレフィン炭化水素をさらに含有する。ミネラルグリースや鉱物ワックスとは対照的に、鉱油は流動性があり、標準的な条件(1013hPa、20℃)下においてワックス様又は固体ではない。それら鉱油は対応して、比較的短鎖の炭化水素をより高い割合で有する。好ましい鉱油は、25℃で(ASTM D 445)、1000mPas以下の、より好ましくは500mPas以下の、特に好ましくは100mPas以下の粘度を有する。
【0015】
本発明の目的のために、パラフィン系鉱油及び/又はナフテン系鉱油を使用することが好ましい。芳香族系鉱油には、健康に害を及ぼす及び環境に害を及ぼす特性があるからである。
【0016】
本発明の目的のために、イソパラフィンベースの鉱油、すなわち炭化水素の大部分が非環式分岐構造を有するパラフィン系鉱油を使用することが、非常に好ましい。
【0017】
この種の鉱油は多くの形態で市販されており、例えばExxonMobil Chemical社から市販されている。特に好ましいイソパラフィンベースの鉱油は、例えばIsoparの商品名で入手可能である。
【0018】
非常に特に好ましい洗浄組成物は、洗浄組成物の全量に基づき、10質量%以下の、好ましくは5質量%以下の芳香族鉱油を含有し、より好ましくは芳香族鉱油を含有しない。
【0019】
少なくとも1種の鉱油の割合は、洗浄組成物の全量に基づき、5〜30質量%である。その割合の好ましい範囲は10〜20質量%である。
【0020】
本発明の洗浄組成物は、少なくとも1種の双極性有機溶媒(L)(ジメチルスルホキシドとは異なる)をさらに含有する。
【0021】
双極性有機溶媒もまた、当業者に既知である。双極性有機溶媒は、親水性成分と疎水性成分の両方を有することによって、混合物の水相と疎水相との間の可溶化剤としての役目を果たすことができる有機溶媒である。
【0022】
典型的な親水性成分は、当業者の知識によれば、ヒドロキシル基、アミノ基及びカルボキシル基などの極性官能基、又はエチレンオキシド単位などの極性セグメントである。典型的な疎水性単位は、同様に専門知識によれば、アルキル基などの炭化水素基である。
【0023】
適切な双極性溶媒は、例えば、(i)4〜14個の炭素原子を有するモノアルコール、好ましくは4〜14個の炭素原子を有する脂肪族モノアルコール、(ii)4〜14個の炭素原子を有する(好ましくは脂肪族の)モノアルコールのグリコールエーテル、好ましくは4〜14個の炭素原子を有するモノアルコールのモノエチレングリコールエーテル又はオリゴエチレングリコールエーテル(エチレンオキシド単位2〜5個、好ましくは2〜3個)(そのグリコール単位は遊離ヒドロキシル基を有することができる、又はそのヒドロキシル基はアルコキシル化、好ましくはメトキシル化及び/若しくはエトキシル化することができる)、(iii)4〜14個の炭素原子を有する(好ましくは脂肪族の)モノアルコールのエステル、特にギ酸又は酢酸のエステルである。
【0024】
好ましい双極性溶媒は、上述の群(i)及び(ii)からのものである。
【0025】
少なくとも1種の双極性有機溶媒(L)は、好ましくは、カルボキシル基及び/又はアミノ基などのイオン性基及び/又は潜在的にイオン性の基を有さない。
【0026】
好ましい溶剤(L)として、2−エチルヘキサノール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、イソブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、イソトリデシルアルコール及びヘキシルグリコールを明確に挙げることができる。
【0027】
2−エチルヘキサノールの使用が特に非常に好ましい。
【0028】
少なくとも1種の双極性有機溶媒の割合は、洗浄組成物の全量に基づき、5〜50質量%である。割合の好ましい範囲は10〜40質量%、特に好ましくは15〜35質量%である。
【0029】
本発明の洗浄組成物は、特に非常に好ましくは、少なくとも80質量%程度の、好ましくは少なくとも90質量%の、より好ましくは100質量%のジメチルスルホキシド、少なくとも1種の鉱油及び少なくとも1種の双極性有機溶剤からなる。よって本発明の洗浄組成物は、さらなる有機溶媒などのさらなる構成成分を、もし含有するとしてもほんの少量しか含有しない。
【0030】
本発明は同様に、構成要素を、この場合では物品、構成要素及び/又はプラント並びにそのようなプラントの部品を洗浄する方法を提供する。該方法において、本発明の洗浄組成物を用いる。
【0031】
本発明の洗浄組成物について、上記に記載したすべての特定の好ましい実施形態は、無論、本発明の方法にも適用される。
【0032】
洗浄組成物の使用は、広く様々な手段で実施することができる。洗浄する構成要素は、例えば、特定の期間の間、組成物中に静置させておくことができ、及び/又は組成物を噴霧する及び/又は組成物で洗い流すことができる。それに代わる方法として又は追加する方法として、洗浄する構成要素を、ブラシ又は布などの洗浄用品を追加で使用して洗浄することが可能である。
【0033】
洗浄する構成要素、又は洗浄する構成要素の洗浄する表面は、本質的に金属性であることが好ましい。
【0034】
最後となるが、本発明は、本発明の方法によって洗浄した構成要素、この場合は物品、構成要素、プラント又はそのようなプラントの部品を提供する。
【実施例】
【0035】
様々な洗浄組成物及び成分の洗浄特質を決定するために、以下の方法を選択した。
【0036】
30×60cmの寸法を有し、BASF Coatings GmbH社製の硬化標準電気泳動被覆で被覆した鋼板を、基材として供した。BASF Coatings GmbH社製の青色標準水系塗料(WBC)による約5cmの直径を有する染み及び、ブチルグリコール中のWacker社製のシリコーンオイルAK1.000の0.01%濃度溶液による約5cmの直径を有する染みを、約30cmの間隔でそれぞれ基材に施与した。その後続いて、鋼板を40℃の温度で10分間乾燥させた。
【0037】
表1による様々な洗浄組成物及び成分でこのように処理した鋼板に、その後続いて、洗浄組成物及び成分を浸した布を用いて染みを拭き取るための処理を施した。ここでは、それぞれの染みを布で2回だけ拭いた。
【0038】
その後続いて、得られた鋼板を乾燥させ、青色水系塗料の染みの位置に残った青色の着色に関して評価を行った。残った青色の着色は、水系塗料及びその成分に関して、洗浄組成物及び成分の不十分な洗浄作用を示した。
【0039】
次いで鋼板を80℃の温度で30分間乾燥させ、室温に冷却し、その後続いて慣用の二液型クリア塗料を30ミクロンの目標層厚(乾燥膜層厚)で、ブチルグリコール中のWacker製AK1.000シリコーン油の0.01%濃度溶液の染み領域に被覆した。次いで、鋼板を室温で20分間フラッシュし、続いて140℃の温度で20分間焼き付けた。その後続いて、得られたクリア塗料を濡れ欠陥に関して評価した。ここで、濡れ欠陥は、シリコーン油に関する洗浄組成物及び成分の洗浄作用が不十分であることを示す。
【0040】
表1に、この手順に従って得られた結果と一緒に洗浄組成物及び成分を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
各実施例は、本発明の洗浄組成物が洗浄に傑出して適していることを示している。それら洗浄組成物は、代わりに使用されるが健康及び環境に有害であるNMPよりもさらに優れている。利点は、DMSO及び鉱油の使用と比較しても確認することができる。従って、優れた洗浄結果をもたらし、かつ、同時に健康及び環境に特に害を及ぼす成分を使用せずに済む組成物が提供される。