(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
老朽化した窓や扉等のサッシ枠をリフォームする場合、既設サッシ枠を撤去することなく、該既設サッシ枠の内側に新設サッシ枠を固定する方法が知られているが、さらにこのリフォーム方法は、既設サッシ枠に対する新設サッシ枠の固定の仕方から、以下の二つの工法に大別される。
【0003】
その一つは、「かぶせ工法」とか「カバー工法」と呼ばれている工法であって、例えば特許文献1に示されるように、既設サッシ枠の内側に新設サッシ枠を嵌装し、これら両者間を連結部材を介して溶接あるいはネジ止め等によって固定する方法である。
他の一つは、例えば、特許文献2に示されるように、既設サッシ枠と新設サッシ枠の間に生じる空間部内に発泡性樹脂を注入して発泡硬化させ、この樹脂硬化層を介して上記既設サッシ枠に上記新設サッシ枠を固定する方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図5には、「かぶせ工法」の一例として、躯体1に設けられた開口部2に当初から取り付けられていた既設サッシ枠3が古くなったため、該既設サッシ枠3の内側に新たに新設サッシ枠4を嵌装し、これら両者を連結具6を介して固定した状態を示している。
【0006】
この状態においては、上記既設サッシ枠3の外周面3bは上記開口部2の内周面2aに当接しているが、既設サッシ枠3の厚さ方向に伸びる周壁3aは、該外周面3bよりも枠中心側に後退した位置に形成されていることから、該周壁3aと上記開口部2の内周面2aとの間には、該開口部2の内周面2aに沿って延びる空間部21が生じている。なお、上記既設サッシ枠3は、その下側縁部においては、該既設サッシ枠3の付属品としての枠取付座5を介して上記開口部2の内周面に固定されているので、ここでは上記枠取付座5と上記既設サッシ枠3の間に上記空間部21が生じている。
【0007】
また、上記既設サッシ枠3の上記周壁3aと新設サッシ枠4の周壁4aの間には空間部22が生じている。そして、この空間部22は、該既設サッシ枠3及び新設サッシ枠4の表裏両面上に開口する帯状開口14,15を介して外部に臨む状態となっており、これら各帯状開口14,15はそれぞれシーリング材7,8によって封止されている。
【0008】
ところが、このような「かぶせ工法」により上記既設サッシ枠3の内側に上記新設サッシ枠4を取り付けてこれら両者を一体化した状態においては、上述のように、上記躯体1の開口部2の内周面2aと上記既設サッシ枠3の周壁3aの間には上記空間部21が生じていることから、例えば、躯体1の老朽化によって該躯体1にひび割れが生じたような場合には、このひび割れを伝って雨水等の水Wが上記空間部21内に浸入してここに溜まることがある。そして、この空間部21に溜まった水Wを放置すれば、例えば、上記既設サッシ枠3を上記躯体1に固定するために上記空間部21内に配置されている鉄製の連結具(図示省略)が腐食して上記既設サッシ枠3の固定強度が損なわれるとか、鉄錆の混入によって汚れた水Wが上記躯体1の表面側に滲み出て、その周囲を汚損することが懸念される。
【0009】
また一方、上記既設サッシ枠3の周壁3aと上記新設サッシ枠4の周壁4a間には、上記空間部22が生じていることから、例えば、長期の使用による老朽化の進行、あるいは施工不良などを原因として、上記シーリング材7,8と上記既設サッシ枠3及び新設サッシ枠4との隙間等から上記空間部22内に雨水等の水Wが浸入し、ここに溜まることがある。この空間部22に溜まった水Wをそのまま放置しておくと、鉄製の上記連結具6が腐食し、上記既設サッシ枠3と新設サッシ枠4間の連結強度が損なわれるとか、鉄錆が混入して褐色になった水Wが上記シーリング材7,8と上記既設サッシ枠3及び新設サッシ枠4との隙間から滲み出て躯体1の壁面を汚損することが懸念される。
【0010】
このような既設サッシ枠3及び新設サッシ枠4の老朽化に伴う上記各空間部21、22への雨水の進入に起因する問題を、これら既設サッシ枠3及び新設サッシ枠4を取り除いたり、その構造を大きく変えたりすることなく解決するには、上記各空間部21,22への雨水浸入を防止し得るようにこれら各サッシ枠3、4を補修することが必要となる。この補修工法として有用な工法の一つとして、上記各空間部21、22内に発泡性樹脂を注入して硬化させて該各空間部21、22内を樹脂硬化層で満たすことで、各空間部21、22内への水の浸入及び水溜りの発生を未然に防止することが考えられる。
【0011】
しかしながら、このような発泡性樹脂の注入による補修方法を上記既設サッシ枠3と新設サッシ枠4の補修に適用したとしても、上記問題が全て解消されるわけではない。即ち発泡性樹脂の注入工法を採用したとしても、単に上記各空間部21、22内に発泡性樹脂を注入して発泡させるだけでは、発泡性樹脂が上記各空間部21、22の全域に十分に行き渡らず、ところどころに空気溜が生じ、この空気溜が発泡性樹脂の硬化後に空洞となって樹脂硬化層内に残存することになる。そして、このような樹脂硬化層内に空洞が残存していると、上記各空間部21、22内に浸入した雨水や結露による水が上記空洞を通って室内に浸入するという問題が生じることになる。
【0012】
そこで本願発明は、躯体と既設サッシ枠と新設サッシ枠の三者間に生じる各空間部
に水溜りが発生するサッシ枠において、該各空間部に発泡性樹脂を注入して該各空間部内を発泡樹脂層で満たすことで、該各空間部内での水溜りの発生が防止できるとともに、躯体と既設サッシ枠の間、及び既設サッシ枠と新設サッシ枠の間の固定状態を補強でき、さらに上記各空間部内を発泡性樹脂で満たす際の空洞の生成を防ぐことができるサッシ枠の補修方法を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の第1の発明では、躯体の開口部に固定された既設サッシ枠の内側に、該既設サッシ枠の周縁に対して密接又は近接した状態で新設サッシ枠を嵌装して固定してなるサッシ枠
で、上記既設サッシ枠の内周面と上記新設サッシ枠の外周面の間に形成されてその周方向に延びる空間部に水が溜まったサッシ枠の補修方法であって、
上記新設サッシ枠の側面に、
水抜孔と樹脂注入孔を兼ねる小孔を上記空間部の延設方向に所定間隔で複数個形成し、該
小孔を通して、上記各空間部内に溜まった水を抜き取り、
しかる後、上記小孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入してこれを発泡硬化させるが、
その際、上記複数の小孔のうち、任意の
小孔を1番目の樹脂注入孔とし、該1番目の樹脂注入孔から近い側
の小孔から順次2番目の樹脂注入孔、3番目の樹脂注入孔、4番目の樹脂注入孔とし、上記1番目の樹脂注入孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入しこれを発泡膨張させ、上記2番目の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出する程度において発泡性樹脂の注入を停止し、次いで、上記3番目の樹脂注入孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入しこれを発泡膨張させ、上記4番目の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出する程度において発泡性樹脂の注入を停止するものとし、
係る段階的な発泡性樹脂の注入作業を繰り返すことで上記空間部内に発泡性樹脂を充填しこれを硬化させて樹脂硬化層を形成するとともに、上記樹脂注入孔から溢出して硬化した溢出樹脂部を切除する、ことを特徴としている。
【0014】
ここで、発泡性樹脂としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂またはオレフィン系樹脂など、液体の樹脂原料を化学反応により発泡及び硬化させることができる樹脂、あるいは液体の樹脂原料に、窒素、LPGまたはフロン等の気体を導入して気泡を形成させつつ硬化させることができる樹脂を用いることができる。特に、2種類の液体樹脂原料を混合することで化学反応を生じさせ、発泡及び硬化させる硬質ポリウレタン樹脂は、扱い易く、硬化後の圧縮強度が大きいためより好ましい。
【0015】
本願の第2の発明では、躯体の開口部に固定された既設サッシ枠の内側に、該既設サッシ枠の周縁に対して密接又は近接した状態で新設サッシ枠を嵌装して固定してなるサッシ枠
で、上記躯体の開口部の内周面とこれに対向する上記既設サッシ枠の外周面との間に形成されてその周方向に延びる空間部に水が溜まったサッシ枠の補修方法であって、
上記既設サッシ枠の側面に、
水抜孔と樹脂注入孔を兼ねる小孔を上記空間部の延設方向に所定間隔で複数個形成し、該
小孔を通して、上記各空間部内に溜まった水を抜き取り、
しかる後、上記小孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入してこれを発泡硬化させるが、
その際、上記複数の小孔のうち、任意の
小孔を1番目の樹脂注入孔とし、該1番目の樹脂注入孔から近い側
の小孔から順次2番目の樹脂注入孔、3番目の樹脂注入孔、4番目の樹脂注入孔とし、上記1番目の樹脂注入孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入しこれを発泡膨張させ、上記2番目の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出する程度において発泡性樹脂の注入を停止し、次いで、上記3番目の樹脂注入孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入しこれを発泡膨張させ、上記4番目の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出する程度において発泡性樹脂の注入を停止するものとし、
係る段階的な発泡性樹脂の注入作業を繰り返すことで上記空間部内に発泡性樹脂を充填しこれを硬化させて樹脂硬化層を形成するとともに、上記樹脂注入孔から溢出して硬化した溢出樹脂部を切除する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
(a)本願の
第1の発明
本願の第1の発明に係るサッシ枠の補修方法によれば、躯体の開口部に固定された既設サッシ枠の内側に、該既設サッシ枠の周縁に対して密接又は近接した状態で新設サッシ枠を嵌装して固定してなるサッシ枠
で、上記既設サッシ枠の内周面と上記新設サッシ枠の外周面の間に形成されてその周方向に延びる空間部に水が溜まったサッシ枠の補修方法であって、上記新設サッシ枠の側面に、
水抜孔と樹脂注入孔を兼ねる小孔を上記空間部の延設方向に所定間隔で複数個形成し、該
小孔を通して、上記各空間部内に溜まった水を抜き取り、しかる後、上記小孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入してこれを発泡硬化させるが、
その際、上記複数の小孔のうち、任意の
小孔を1番目の樹脂注入孔とし、該1番目の樹脂注入孔から近い側
の小孔から順次2番目の樹脂注入孔、3番目の樹脂注入孔、4番目の樹脂注入孔とし、上記1番目の樹脂注入孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入しこれを発泡膨張させ、上記2番目の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出する程度において発泡性樹脂の注入を停止し、次いで、上記3番目の樹脂注入孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入しこれを発泡膨張させ、上記4番目の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出する程度において発泡性樹脂の注入を停止するものとし、係る段階的な発泡性樹脂の注入作業を繰り返すことで上記空間部内に発泡性樹脂を充填しこれを硬化させて樹脂硬化層を形成するとともに、上記樹脂注入孔から溢出して硬化した溢出樹脂部を切除する
ようにしているので、以下のような効果が得られる。
【0017】
(a−1) 上記空間部内が樹脂硬化層で満たされており、該空間部内に雨水等の水が浸入してここに溜まるということが確実に防止され、例えば、上記既設サッシ枠と新設サッシ枠を連結する連結具が溜まった水によって腐食されるということが無く、既設サッシ枠と新設サッシ枠の固定状態が維持されるとともに、鉄錆が混入した水が外部に滲み出ることもなく躯体表面の汚損が防止されその美観性が維持される。
【0018】
(a−2) 上記空間部内が樹脂硬化層で満たされていることから、この樹脂硬化層がもつ剛性によって上記既設サッシ枠と新設サッシ枠の間の固定状態が補強され、その分だけサッシ枠全体としての固定性能が高められる。
【0019】
(a−3) 上記空間部内で発泡性樹脂が発泡膨張して該空間部内に順次拡散移動していく場合、該空間部内の空気は次第に発泡性樹脂の膨張方向前方側へ押しやられ、複数個形成された上記樹脂注入孔から外部へ排出されることから、空気が発泡性樹脂内に巻き込まれて空気溜りとなり、これが発泡性樹脂の硬化後に雨漏りや結露の原因ともなる空洞として残存することが無く、例えば、空間部内に浸入した雨水とか結露による水が空洞を通って室内に浸入するようなことが確実に防止される。
【0020】
(a−4) 上記空間部内では、先に注入されて発泡膨張した発泡樹脂層の膨張方向前方側に、後から注入されて発泡膨張した発泡樹脂層が順次積層されることから、該空間部内の空気が発泡樹脂層内に巻き込まれて空気溜りが生成されること、及びこの空気溜りが硬化後に樹脂硬化層内に雨漏りや結露の原因ともなる空洞として残留することが確実に防止され、この結果、空間部内に浸入した雨水とか結露による水が空洞を通って室内に浸入するようなことがより一層確実に防止される。
【0021】
(a−5) 発泡性樹脂の注入作業に際しては、現に注入作業に供している樹脂注入孔よりも発泡膨張方向の前方側に位置する他の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出することを目視することで、該他の樹脂注入孔の部分まで発泡性樹脂が十分に充填されていることを確認することができることから、発泡性樹脂の注入量の不足とか発泡性樹脂の発泡不足等に起因する発泡性樹脂の充填不良等が確実に防止されるとともに、発泡性樹脂の注入作業の容易化によって作業コストの低廉化が促進される。
【0022】
(a−6) 補修後のサッシ枠では、上記樹脂注入孔から溢出して硬化した溢出樹脂部を切除するようにしていることから、サッシ枠周辺の美観性が維持される。
【0023】
(a−7)
上記空間部への発泡性樹脂の注入に先立って、上記新設サッシ枠の適所に水抜孔と樹脂注入孔を兼ねる小孔を上記空間部の延設方向に所定間隔で複数個形成し、該小孔を通して、上記各空間部内に溜まった水を抜き取り、しかる後、上記空間部内に発泡性樹脂を注入してこれを発泡硬化させるようにしているので、発泡性樹脂の発泡膨張が水溜りの無い空間部内で行われることになる。
【0024】
ここで、発泡性樹脂には、水に触れると発泡不良とか硬化不良を生じ易くなる性状があることから、仮に、空間部内に水が溜まっているとすれば、この水が溜まった部分では発泡性樹脂の発泡不良とか硬化不良によって空洞が生じ、これが樹脂硬化層中に空洞として残存することになる。また、発泡性樹脂が発泡不良とか硬化不良を生じるに至らなかった場合でも、水は非圧縮性の流体であることから、空間部内に水が溜まっているとすれば、該空間部内に注入された発泡性樹脂が発泡膨張しても、この水溜り部分には充填されず、この部分が、空間部内の樹脂硬化層中に空洞(水が蒸発した後)として残存することになる。
【0025】
これら樹脂硬化層内に残存する空洞は、既設サッシ枠及び新設サッシ枠の取付強度を損ねるとか、サッシ枠の補修作業の完了後において雨水等がこの空洞内に浸入して躯体の表面を汚損する等の原因となるものであるところ、本発明の補修方法では、上述のように上記空間部内には水溜りが存在しないことから、係る事態の発生が未然に防止され、信頼性の高いサッシ枠を得ることができる。
【0026】
(b)本願の
第2の発明
本願の第2の発明に係るサッシ枠の補修方法によれば、躯体の開口部に固定された既設サッシ枠の内側に、該既設サッシ枠の周縁に対して密接又は近接した状態で新設サッシ枠を嵌装して固定してなるサッシ枠
で、上記躯体の開口部の内周面とこれに対向する上記既設サッシ枠の外周面との間に形成されてその周方向に延びる空間部に水が溜まったサッシ枠の補修方法であって、上記既設サッシ枠の側面に、
水抜孔と樹脂注入孔を兼ねる小孔を上記空間部の延設方向に所定間隔で複数個形成し、該
小孔を通して、上記各空間部内に溜まった水を抜き取り、しかる後、上記小孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入してこれを発泡硬化させるが、
その際、上記複数の小孔のうち、任意の
小孔を1番目の樹脂注入孔とし、該1番目の樹脂注入孔から近い側
の小孔から順次2番目の樹脂注入孔、3番目の樹脂注入孔、4番目の樹脂注入孔とし、上記1番目の樹脂注入孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入しこれを発泡膨張させ、上記2番目の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出する程度において発泡性樹脂の注入を停止し、次いで、上記3番目の樹脂注入孔から上記空間部内に発泡性樹脂を注入しこれを発泡膨張させ、上記4番目の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出する程度において発泡性樹脂の注入を停止するものとし、係る段階的な発泡性樹脂の注入作業を繰り返すことで上記空間部内に発泡性樹脂を充填しこれを硬化させて樹脂硬化層を形成するとともに、上記樹脂注入孔から溢出して硬化した溢出樹脂部を切除する
ようにしているので、以下のような効果が得られる。
【0027】
(b−1) 上記空間部内が樹脂硬化層で満たされており、該空間部内に雨水等の水が浸入してここに溜まるということが確実に防止され、例えば、上記既設サッシ枠と新設サッシ枠を連結する連結具が溜まった水によって腐食されるということが無く、既設サッシ枠と新設サッシ枠の固定状態が維持されるとともに、鉄錆が混入した水が外部に滲み出ることもなく躯体表面の汚損が防止されその美観性が維持される。
【0028】
(b−2) 上記空間部内が樹脂硬化層で満たされていることから、この樹脂硬化層がもつ剛性によって上記既設サッシ枠と新設サッシ枠の間の固定状態が補強され、その分だけサッシ枠全体としての固定性能が高められる。
【0029】
(b−3) 上記空間部内で発泡性樹脂が発泡膨張して該空間部内に順次拡散移動していく場合、該空間部内の空気は次第に発泡性樹脂の膨張方向前方側へ押しやられ、複数個形成された上記樹脂注入孔から外部へ排出されることから、空気が発泡性樹脂内に巻き込まれて空気溜りとなり、これが発泡性樹脂の硬化後に雨漏りや結露の原因ともなる空洞として残存することが無く、例えば、空間部内に浸入した雨水とか結露による水が空洞を通って室内に浸入するようなことが確実に防止される。
【0030】
(b−4) 上記空間部内では、先に注入されて発泡膨張した発泡樹脂層の膨張方向前方側に、後から注入されて発泡膨張した発泡樹脂層が順次積層されることから、該空間部内の空気が発泡樹脂層内に巻き込まれて空気溜りが生成されること、及びこの空気溜りが硬化後に樹脂硬化層内に雨漏りや結露の原因ともなる空洞として残留することが確実に防止され、この結果、空間部内に浸入した雨水とか結露による水が空洞を通って室内に浸入するようなことがより一層確実に防止される。
【0031】
(b−5) 発泡性樹脂の注入作業に際しては、現に注入作業に供している樹脂注入孔よりも発泡膨張方向の前方側に位置する他の樹脂注入孔から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出することを目視することで、該他の樹脂注入孔の部分まで発泡性樹脂が十分に充填されていることを確認することができることから、発泡性樹脂の注入量の不足とか発泡性樹脂の発泡不足等に起因する発泡性樹脂の充填不良等が確実に防止されるとともに、発泡性樹脂の注入作業の容易化によって作業コストの低廉化が促進される。
【0032】
(b−6) 補修後のサッシ枠では、上記樹脂注入孔から溢出して硬化した溢出樹脂部を切除するようにしていることから、サッシ枠周辺の美観性が維持される。
【0033】
(b−7) 上記空間部への発泡性樹脂の注入に先立って、上記既設サッシ枠の適所に水抜孔と樹脂注入孔を兼ねる小孔を上記空間部の延設方向に所定間隔で複数個形成し、該小孔を通して、上記各空間部内に溜まった水を抜き取り、しかる後、上記空間部内に発泡性樹脂を注入してこれを発泡硬化させるようにしているので、発泡性樹脂の発泡膨張が水溜りの無い空間部内で行われることになる。
【0034】
ここで、発泡性樹脂には、水に触れると発泡不良とか硬化不良を生じ易くなる性状があることから、仮に、空間部内に水が溜まっているとすれば、この水が溜まった部分では発泡性樹脂の発泡不良とか硬化不良によって空洞が生じ、これが樹脂硬化層中に空洞として残存することになる。また、発泡性樹脂が発泡不良とか硬化不良を生じるに至らなかった場合でも、水は非圧縮性の流体であることから、空間部内に水が溜まっているとすれば、該空間部内に注入された発泡性樹脂が発泡膨張しても、この水溜り部分には充填されず、この部分が、空間部内の樹脂硬化層中に空洞(水が蒸発した後)として残存することになる。
【0035】
これら樹脂硬化層内に残存する空洞は、既設サッシ枠及び新設サッシ枠の取付強度を損ねるとか、サッシ枠の補修作業の完了後において雨水等がこの空洞内に浸入して躯体の表面を汚損する等の原因となるものであるところ、本発明の補修方法では、上述のように上記空間部内には水溜りが存在しないことから、係る事態の発生が未然に防止され、信頼性の高いサッシ枠を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
A:実施形態
図1には、本願発明の実施形態に係る補修方法を適用して補修されるサッシ枠部分、即ち、躯体1に設けた開口部2内に当初から取り付けられている窓又は扉の既設サッシ枠3の内側に、「かぶせ工法」によって該既設サッシ枠3よりも形状の小さい新設サッシ枠4を嵌装して固定してなるサッシ枠部分が示されている。
【0038】
A−1:既設サッシ枠3及び新設サッシ枠4の具体的構造
上記既設サッシ枠3は、
図2に示すように、上記躯体1の開口部2内に嵌装され、且つ適宜の固定具(図示省略)によって該躯体1側に固定されている。上記既設サッシ枠3は所定寸法を隔てて対向する矩形枠状の一対の側壁3a、3aと、これら一対の側壁3a、3a間を接続する周壁3bを備える。この周壁3bは、上記側壁3aの外周端より所定寸法だけ枠中心側へ偏位した位置において、上記側壁3aの全周に亘って形成されている。なお、上記周壁3aのうち、上記既設サッシ枠3の下面に対応する部分は、排水性を考慮して、室内側から室外側へ向かって下降傾斜するように形成されている。
【0039】
そして、上記既設サッシ枠3の上記躯体1への固定状態では、該既設サッシ枠3の側壁3bの上面側及び左右両側の外周端は、それぞれ上記開口部2の内周上面2a及び内周側面2cに当接あるいは近接対向しているが、その下面側の外周端は枠取付座5を介して上記開口部2の内周下面2bに載置されている。したがって、この固定状態では、上記開口部2の内周上面2a及び内周側面2cと上記既設サッシ枠3の上記周壁3bの間には平矩形の断面形状をもつ空間部21が形成されている。これに対して、上記枠取付座5と上記既設サッシ枠3の周壁3bとの間には略台形の断面形状をもつ空間部21が形成されている。なお、この空間部21は、上記既設サッシ枠3の全周に亘って連続している。
【0040】
一方、上記新設サッシ枠4は、「かぶせ工法」によって上記既設サッシ枠3の内側に嵌装され且つ固定されたものであり、その形状は上記既設サッシ枠3の内周形状に略合致した僅かに小さい寸法とされ、その側壁4aの外周端縁は上記既設サッシ枠3の側壁3aの内周端縁に対して密接又は近接されており、該新設サッシ枠4の周壁4bと上記既設サッシ枠3の周壁3bの間にはこれら各サッシ枠3、4の延設方向に連続する空間部22が形成されている。なお、上記新設サッシ枠4の周壁4bは、その下部側においては、上記既設サッシ枠3の周壁3bと同様に、排水性を考慮して、室内側から室外側へ向かって下降傾斜されており、上記空間部22は、この下降傾斜部分において室外側に開口するとともに、着脱可能なシーリング材8によって閉塞されている。
【0041】
そして、上記既設サッシ枠3と上記新設サッシ枠4は、その長手方向(延設方向)に所定間隔(例えば、400mm程度)で設けられる複数個の連結具6によって、所定の相対位置で固定されている。なお、この実施形態では、上記連結具6を所定長さのボルトで構成し、上記新設サッシ枠4の周壁4bにその内面側から挿通してその先端側を上記既設サッシ枠3の周壁3bに予め溶接固定したナット6aに螺合させるようになっている。また、
図2において、符号9は上記新設サッシ枠4の内側に取り付けられる建具である。
【0042】
A−2:発泡性樹脂注入前の準備作業
A−2−1:上記既設サッシ枠3に対する準備作業
上記既設サッシ枠3に対しては、上記躯体1側の開口部2の内周上面2aとの間に形成されている上記空間部21内に溜まった水の水抜き作業と、該空間部21内への樹脂注入用の樹脂注入孔31の形成作業が行われるが、この実施形態では、上記樹脂注入孔31を上記既設サッシ枠3の側壁3aに形成するに際して、その上下方向における形成位置を、その周壁3bの直上位置に設定することで該樹脂注入孔31を水抜孔に兼用するようにしていることから、専用の水抜孔は設けていない。
【0043】
上記樹脂注入孔31は、
図1及び
図2に示すように、上記既設サッシ枠3の全周に跨って矩形枠状に延びる室内側の側壁3aのうち、その底部を除く三部分と、該既設サッシ枠3の底部に配置された上記枠取付座5の側面に、それぞれその長手方向(延設方向)に所定間隔で形成される。ここで、この樹脂注入孔31の寸法形状は、直径が5〜30mm程度の円形孔とか、一辺が5〜30mm程度の矩形孔であることが望ましい。また、この樹脂注入孔31の形成間隔は、50〜200mm程度とするのが望ましい。
【0044】
そして、このように形成された樹脂注入孔31のうち、上記既設サッシ枠3の上面側に設けた複数個の樹脂注入孔31と、上記枠取付座5に設けた複数個の樹脂注入孔31が、水抜孔として機能し、上記空間部21内に溜まっている水と上記枠取付座5内に溜まっている水は速やかに排出され、これによって、この後に行われる上記空間部21内への発泡性樹脂の樹脂注入作業において、該空間部21内に溜まった水に起因する不都合が未然に防止される。
【0045】
即ち、発泡性樹脂には、水に触れると発泡不良とか硬化不良を生じ易くなる性状があることから、仮に、空間部21内に水が溜まっているとすれば、この水が溜まった部分では発泡性樹脂の発泡不良とか硬化不良によって空洞が生じ、これが樹脂硬化層中に空洞として残存することになる。また、発泡性樹脂が発泡不良とか硬化不良を生じるに至らなかった場合でも、水は非圧縮性の流体であることから、空間部21内に水が溜まっているとすれば、該空間部21内に注入された発泡性樹脂が発泡膨張しても、この水溜り部分には充填されず、この部分が空間部内の樹脂硬化層中に空洞(水が蒸発した後)として残存することになる。これら樹脂硬化層内に残存する空洞は、上記開口部2に対する上記既設サッシ枠3の固定強度を損ねるとか、サッシ枠の補修作業の完了後において雨水等がこの空洞内に浸入して躯体の表面を汚損する等の原因となるものであるが、これらが全て解消されるものである。
【0046】
A−2−2:上記新設サッシ枠4に対する準備作業
上記新設サッシ枠4においても、発泡性樹脂注入前の準備作業として、樹脂注入孔32が形成される。即ち、この実施形態では、
図1に示すように、上記樹脂注入孔32が上記新設サッシ枠4の全周に亘って形成される。そして、その形成位置は
図2に示すように、室内側の側壁4aにおける上記周壁4bの直上(直外)位置とされ、その長手方向に所定間隔(50〜200mm程度)で複数個形成される。したがって、これら各樹脂注入孔32のうち、上記新設サッシ枠4の上面側に設けられた樹脂注入孔32は、該新設サッシ枠4の周壁4bの上側に溜まった水の水抜孔として兼用される。なお、この樹脂注入孔32の寸法形状は、上記既設サッシ枠3側の樹脂注入孔31の場合と同様に、直径が5〜30mm程度の円形孔とか、一辺が5〜30mm程度の矩形孔であることが望ましい。
【0047】
以上のように、例えサッシ枠の補修開始時点において上記空間部22内に水が溜まっていたとしても、上記樹脂注入孔32の形成によって、上記新設サッシ枠4の周壁4bの上側に溜まった水は該樹脂注入孔32を通して速やかに外部へ排出される。また、上記新設サッシ枠4の下面側において上記既設サッシ枠3の周壁3bの上面に溜まった水は、上記シーリング材8を取り外すことで外部へ排出される。この結果、上記既設サッシ枠3側の水抜効果と同様に、この新設サッシ枠4側においても、該空間部22内に溜まった水に起因する不都合が未然に解消される。したがって、上記空間部22内に適正状態で樹脂硬化層12を形成することができ、既設サッシ枠3と新設サッシ枠4との間の固定状態が該樹脂硬化層12の剛性によって補強されるとともに、躯体1の表面の汚損発生が未然に防止されることになる。
【0048】
A−3:発泡性樹脂の注入作業
上述の準備作業が完了すると、以下に述べる発泡性樹脂の注入作業が行われる。
【0049】
上記躯体1と既設サッシ枠3との間に生じた上記空間部21には、上記既設サッシ枠3に設けた複数の上記樹脂注入孔31を通して発泡性樹脂の注入作業が行われるが、この空間部21への発泡性樹脂の注入は、主として上記躯体1と上記既設サッシ枠3の間への水の浸入防止とか、上記躯体1に対する上記既設サッシ枠3の固定状態の補強という目的で行われる。また、上記既設サッシ枠3と上記新設サッシ枠4の間に生じた上記空間部22には、上記新設サッシ枠4に設けた複数の樹脂注入孔32を通して発泡性樹脂の注入作業が行われるが、この空間部22への発泡性樹脂の注入は、主として上記既設サッシ枠3と新設サッシ枠4の間への水の浸入防止とか、該既設サッシ枠3と新設サッシ枠4の固定状態の補強という目的で行われる。このように、これら各空間部21,22への発泡性樹脂の注入目的は若干異なるものの、作業の内容、及び発泡性樹脂の注入による作用効果等は同様であるので、ここでは上記既設サッシ枠3と新設サッシ枠4の間の空間部22への発泡性樹脂の注入作業を例にとって説明し、上記躯体1と既設サッシ枠3の間の空間部21への注入作業はこれを援用してその説明を省略する。
【0050】
ところで、この空間部22内への発泡性樹脂の注入は、一度の注入作業で完了させることも可能ではあるが、この実施形態においては、上記空間部22内に形成される樹脂硬化層12内の空洞の残存防止等の観点から、上記空間部22内への発泡性樹脂の注入を、所定量ずつ複数回に分けて行うようにしている。ここで、説明の便宜上、上記新設サッシ枠4の長手方向に所定間隔で複数個形成された樹脂注入孔32のうち、任意の一つを最初に樹脂注入を行うための一番目の樹脂注入孔32と仮称する。さらに、この一番目の樹脂注入孔32から一方向に向かって距離が近い順に、2番目の樹脂注入孔、3番目の樹脂注入孔、4番目の樹脂注入孔と仮称する。
【0051】
そして、先ず、一番目の樹脂注入孔32から上記空間部22内に注入ガン(図示省略)を差し入れて該空間部22内に発泡性樹脂を注入する。注入された発泡性樹脂は、空間部22内で発泡膨張しながら前方へ拡散移動し、これが2番目の樹脂注入孔32に達すると発泡途上にある発泡樹脂層の一部が該2番目の樹脂注入孔32から外部へ溢出する。この溢出量が所定量に達した時点で、上記一番目の樹脂注入孔32からの発泡性樹脂の注入作業を停止する。
【0052】
次に、上記2番目の樹脂注入孔32よりも一つ前方にある3番目の樹脂注入孔32に注入ガンを差し入れて該空間部22内に発泡性樹脂を注入し、4番目の樹脂注入孔32から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が所定量溢出した時点で、該3番目の樹脂注入孔32からの発泡性樹脂の注入作業を停止する。このような発泡性樹脂の注入作業を順次繰り返して行うことで、上記空間部22内には、
図3及び
図4に示すように、発泡膨張した発泡性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層12が、発泡膨張方向に向けて多層状に形成されることになる。即ち、
図4に便宜的に符号を付したように、一番目の樹脂硬化層12A、2番目の樹脂硬化層12B、三番目の樹脂硬化層12C・・・というように多層状に形成される。
【0053】
なお、このように上記空間部22内に多層状の樹脂硬化層12が形成されると同様に、上記既設サッシ枠3側の上記空間部21側においても、樹脂硬化層11が、一番目の樹脂硬化層11A,2番目の樹脂硬化層11B,三番目の樹脂硬化層11C・・・というように多層状に形成される(
図4参照)。
【0054】
以上のように、躯体1の開口部2に固定された上記既設サッシ枠3の内側に、「かぶせ工法」によって該既設サッシ枠3の周縁に対して密接又は近接した状態で上記新設サッシ枠4が嵌装され固定されている場合に、上記新設サッシ枠4側に上記樹脂注入孔32を、上記空間部22の延設方向に所定間隔で複数個形成し、この樹脂注入孔32から上記空間部22内に発泡性樹脂を注入してこれを発泡硬化させて該空間部22内に樹脂硬化層12を形成することで、該空間部22内が上記樹脂硬化層12で満たされ、該空間部22内への水の浸入が未然に防止される。したがって、上記空間部22内に水が浸入してここに溜まるということが確実に防止され、例えば、上記既設サッシ枠3と新設サッシ枠4を連結する連結具6が溜まった水によって腐食されるとか、鉄錆が混入した水が外部に滲み出て躯体1の表面を汚損される等のことが未然に防止される。
【0055】
さらに、上記空間部22内で発泡性樹脂が発泡膨張して該空間部22内に順次拡散移動していく場合、該空間部22内の空気は、次第に発泡性樹脂の膨張方向前方側へ押しやられ、複数個形成された上記樹脂注入孔32から外部へ排出されることから、空気が発泡性樹脂内に巻き込まれて空気溜りとなり、これが発泡性樹脂の硬化後に空洞として残存することが未然に防止される。この結果、例えば、空間部22内に浸入した雨水とか結露による水が空洞を通って室内に浸入するようなことが確実に防止される。
【0056】
一方、この実施形態では、上記空間部22への発泡性樹脂の注入作業を、上記新設サッシ枠4に所定間隔で複数個設けられた上記樹脂注入孔32を介して段階的に行うようにしているので、上記空間部22内では、先に注入されて発泡膨張した発泡樹脂層の膨張方向前方側に、後から注入されて発泡膨張した発泡樹脂層が順次積層されることから、該空間部内の空気が発泡性樹脂内に巻き込まれて空気溜りが生成されること、及びこの空気溜りが硬化後の樹脂硬化層12内に空洞として残留することがより一層確実に防止されることになる。
【0057】
なお、この実施形態では、上記新設サッシ枠4に設けられる樹脂注入孔32の形成間隔を50〜200mmの範囲に設定するようにしているが、この間隔が大きくなり過ぎると上記空間部22内で発泡性樹脂を発泡させた場合、該発泡性樹脂の膨張変化に伴い、該空間部22内の空気が逃げ場を失って圧縮され、発泡した樹脂層内に内圧の高い空気溜りが生じ易くなるため好ましくない。また、逆に、上記間隔が狭すぎると、新設サッシ枠4の剛性が損なわれその強度性能が低下する恐れがあるため好ましくない。このような観点から上記のように樹脂注入孔32の形成間隔を「50〜200mm」の範囲に設定したものである。
【0058】
また、発泡性樹脂の注入作業に際しては、現に注入作業に供している樹脂注入孔32よりも発泡膨張方向の前方側に位置する他の樹脂注入孔32から発泡途上にある発泡樹脂層の一部が溢出することを目視することで、該他の樹脂注入孔32の部分まで発泡性樹脂が十分に充填されていることを確認することができることから、発泡性樹脂の注入量の不足とか発泡性樹脂の発泡不足等に起因する発泡性樹脂の充填不良等が確実に防止され、これにより上記既設サッシ枠3と新設サッシ枠4の固定強度が良好に維持されるとともに、発泡性樹脂の注入作業が容易となり作業コストの低廉化が促進される。
【0059】
なお、上記発泡性樹脂としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂またはオレフィン系樹脂など、液体の樹脂原料を化学反応により発泡及び硬化させることができる樹脂、あるいは液体の樹脂原料に、窒素、LPGまたはフロン等の気体を導入して気泡を形成させつつ硬化させることができる樹脂が好適である。特に、2種類の液体樹脂原料を混合することで化学反応を生じさせ、発泡及び硬化させる硬質ポリウレタン樹脂は扱い易く、硬化後の圧縮強度が大きいためより好ましい。
【0060】
A−4:サッシ枠の補修状態の検査
上述のように、上記新設サッシ枠4に設けた上記各樹脂注入孔32から上記空間部22への樹脂注入が完了し、発泡膨張した発泡性樹脂が硬化して上記樹脂硬化層12が形成された後、上記新設サッシ枠4の上記各樹脂注入孔32から溢出して硬化した溢出樹脂部を切除する。
【0061】
この溢出樹脂部の切除によって、樹脂硬化層12の樹脂断面が外部に露出することになる。この樹脂断面を観察することで上記既設サッシ枠3と上記新設サッシ枠4の補修状態の良否を検査することができる。即ち、上記空間部22内の樹脂硬化層12の比較的深部で生じている硬化不良とか、空気溜りに起因する空洞の発生を高い確率で発見することができ、目視検査による検査精度及び信頼性が向上する。また、これによって上記既設サッシ枠3と新設サッシ枠4に対する補修の信頼性が担保されるとともに、もし、検査によって硬化不良や空気溜りとか空洞が発見された場合には、施工のやり直し、あるいは部分的な補修等の対応措置を迅速に執ることができるものである。
【0062】
なお、この実施形態では、上記樹脂注入孔32の寸法は、樹脂注入孔32が円形孔である場合には直径5〜30mmに設定し、樹脂注入孔32が矩形孔である場合には一辺5〜30mmに設定するようにしているが、樹脂注入孔32の寸法を小さくし過ぎると、溢出樹脂部を切除した際の樹脂断面が小さくなり観察が困難となるため好ましくない。また逆に、大きくし過ぎると、新設サッシ枠4の剛性が損なわれその強度性能が低下する恐れがあるため好ましくない。