特許第6765137号(P6765137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6765137-洗濯によって嵩高性が増すタオル地 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6765137
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】洗濯によって嵩高性が増すタオル地
(51)【国際特許分類】
   D03D 27/00 20060101AFI20200928BHJP
   D03D 27/08 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   D03D27/00 A
   D03D27/08
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-73856(P2019-73856)
(22)【出願日】2019年4月9日
【審査請求日】2020年5月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399096756
【氏名又は名称】日繊商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆雄
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−029174(JP,U)
【文献】 特開2005−065877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 27/00
D03D 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とパイル糸とを備え、
前記パイル糸には、S撚り糸とZ撚り糸との2種類の撚糸が用いられており、
前記S撚り糸と前記Z撚り糸によるパイルループが隣り合っているタオル地において、
前記パイル糸の撚り数は、前記経糸の撚り数に対して10cm当たり±8回以内の近似撚り数であり、
10回洗浄後の嵩高性が未洗浄のものと比べて120%以上増加するように構成されたことを特徴とするタオル地。
【請求項2】
前記パイル糸の撚り数が前記緯糸の撚り数よりも少なく、
前記パイル糸の撚り数が10cm当たり60回未満であることを特徴とする請求項1に記載のタオル地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タオル地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、タオル地は、ハンドタオル、バスタオルなどの種々のタオルを始め、トレーナーやウインドブレーカーなどの衣料品や、バッグやポーチなどの身の回り品の素材として広く用いられている。
このタオル地の先行技術としては、経糸と緯糸とパイル糸とを備えたタオル地にあっては、S撚り糸とZ撚り糸によるパイルを隣り合せて設けることによってパイルループが倒れることなく立ちの良いタオルを作ることができることが特許文献1に示されている。
ところが特許文献1の提案は、パイルが倒れにくくすることに止まっていたものであった。また技術常識としても、タオル地は洗濯することによって嵩高性が増すことがあっても、それはわずかなものに止まると考えられていた。
また、柔らかい風合いのタオル地を得るためには、撚りをかけない無撚糸を用いることも知られているが、無撚糸を用いた場合には、パイルループの立ちが悪く、嵩高性が低下する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭48−21974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、タオル地の技術常識に挑戦し、洗濯によって嵩高性が増すタオル地を提供せんとするものである。
さらに本発明は、柔らかな風合いを持つと同時に洗濯によって嵩高性が増すタオル地を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、経糸と緯糸とパイル糸とを備え、前記パイル糸には、S撚り糸とZ撚り糸との2種類の撚糸が用いられ、前記S撚り糸と前記Z撚り糸によるパイルループが隣り合っているタオル地の改良に関する。本発明のタオル地では、前記パイル糸の撚り数が、前記経糸の撚り数に対して10cm当たり±8回以内の近似撚り数である。そして、前記パイル糸の撚り数が前記緯糸の撚り数よりも少なく、10回洗浄後の嵩高性が未洗浄のものと比べて120%以上増加するように構成されものである。
本発明の実施に際しては、前記パイル糸の撚り数が10cm当たり60回未満の甘撚りであり、前記緯糸の撚り数よりも少ないものとすることをが望ましい。
前記S撚り糸と前記Z撚り糸による前記パイルは、S撚、Z撚、S撚、Z撚のように1本ずつが交互に配列されたものであってもよく、S撚、S撚、Z撚、Z撚、S撚、S撚、Z撚、Z撚のように2本ずつが交互に配列されたものであっても構わないし、S撚、Z撚、Z撚、S撚、Z撚、Z撚のように配列された本数が異なるものであっても構わない。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、洗濯によって嵩高性が増すタオル地を提供することができたものである。さらに本発明は、柔らかな風合いを持つと同時に洗濯によって嵩高性が増すタオル地を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るタオル地を示すものであり、(A)は構造説明図、(B)は組織図。
図2】本発明の他の実施形態に係るタオル地の組織図。
図3】嵩高性のテスト結果を示すものであり、(A)は、本発明の実施形態に係るタオル地のテスト結果の写真、(B)は従来のタオル地に係るテストの写真。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
この実施の形態に係るタオル地は、緯糸として緯糸11を用い、縦糸として経糸21とパイル糸31を用いたもので、緯糸11と経糸21とによって地組織が構成されている。パイル糸31は地組織の両面にパイルループを形成するのである。
図1(B)に示すように、パイル糸31には、S撚り糸32とZ撚り糸33との2種類を用い、S撚り糸32とZ撚り糸33とによるパイルループが隣り合っている。この例では、S撚り糸32、Z撚り糸33、S撚り糸32、Z撚り糸33というように交互に配列されている。
【0009】
(緯糸11と経糸21について)
まず緯糸11と経糸21について説明すると、緯糸11と経糸21とには、撚り糸が用いられているが、これについては、S撚り、Z撚のいずれであっても構わないし、その両者を用いても構わない。
緯糸11と経糸21の撚り数は、一般的なタオル地に用いられるものと同じ程度でよく、例えば10cm当たり40回〜70回程度のものを示すことができる。緯糸11と経糸21の糸の太さはタオル地の用途にもよるが、10/1番手〜20/1番手程度のものが適当である。
【0010】
(パイルループについて)
パイルループの撚り数は、経糸21の撚り数に対して10cm当たり±8回以内の近似撚り数であることが適当であり、好ましくは10cm当たり±6回以内、さらに好ましくは10cm当たり±2回以内のほぼ同じ撚り数として実施する。このように、近似撚り数にすることによって、縦糸(経糸21とパイル糸31)同士の作用で、パイルの嵩高性を高めることができたことは、発明者にとっても大きな驚きであった。
【0011】
タオル地に柔らかい風合いを出すようにするという観点からは、パイルループの撚り数は10cm当たり60回未満とすることができる。他方、撚り数が少なくなりすぎると嵩高性に悪影響を及ぼしてしまう恐れがある。そのために、パイルループの撚り数を、上記の近似撚り数とすると共に、10cm当たり40回〜56回程度とすることによって、嵩高性と柔らかい風合いとを両立させることができる点で好ましい。
パイルループの糸の太さはタオル地の用途にもよるが、10/1番手〜20/1番手程度のものが適当である。
【0012】
(嵩高性について)
本発明のタオル地にあっては、10回洗浄後の嵩高性が未洗浄のものと比べて少なくとも120%以上増加するもので、より好ましくは130%以上増加する。
【実施例】
【0013】
<嵩高性テスト>
実施例
実施例の嵩高性について、図2を参照しながら説明する。
図2(A)は、実施例に係るタオル地によって形成されたタオルであり、このタオルを四つ折りにして3枚重ねた状態を撮影したものである。左側は洗濯を行っていない状態のタオルを試料としたものであり、右側は電気洗濯機で洗濯と乾燥をタオル地回ずつ行った状態のタオルを試料としたものである。各試料を5つずつ用意し、左側の洗濯を行っていない状態のタオルを積み重ねた平均高さを100とし、右側の洗濯と乾燥をタオル地回ずつ行った状態のタオルを積み重ねた平均高さを求めたところ131であった。即ち、実施例のタオル地は、10回洗浄後の嵩高性が未洗浄のものと比べて131%増加していることが確認された。
なお、試料のタオル地の緯糸11、経糸21、パイル糸31には14/1番の綿糸を用い、緯糸11とパイル糸31の撚り数を10cm当たり49回、経糸21の撚り数を10cm当たり65回とした。
【0014】
比較例
図2(B)は、比較例のタオル地によって形成されたタオルであり、このタオルを四つ折りにして3枚重ねた状態を撮影したものである。比較例のタオルには、本願出願人が市販しているものであって、実施例のタオルとほぼ同じ番手の糸で織成されたほぼ同じ重さのタオルを用いた。
図2(A)の実施例と同じく、左側は洗濯を行っていない状態のタオルを試料としたものであり、右側は電気洗濯機で洗濯と乾燥をタオル地回ずつ行った状態のタオルを試料としたものである。各試料を5つずつ用意し、左側の洗濯を行っていない状態のタオルを積み重ねた平均高さを100とし、右側の洗濯と乾燥をタオル地回ずつ行った状態のタオルを積み重ねた平均高さを求めたところ112であった。
よって、比較例のタオル地は、10回洗浄後の嵩高性が未洗浄のものと比べて112%増加しているに止まることが確認された。
【0015】
<官能テスト>
実施例のタオルと比較例のタオルについて、本願出願人の社員12名を対象として官能テストを行った。
柔らかさとふっくら感とについて、実施例のタオルが比較例のタオルに比べて如何なる感覚を受けるかを評価してもらったもので、その結果を以下に示す。
【0016】
柔らかさの評価結果
柔らかい 8名
多少柔らかい 2名
同じ程度 2名
多少硬い 0名
硬い 0名
【0017】
ふっくら感の評価結果
ボリュームがある 10名
多少ボリュームがある 2名
同じ程度 0名
あまりボリュームがない 0名
ボリュームがない 0名
【0018】
本発明は種々変更して実施することができるものであり、図3に示すように片面パイルのタオル地として実施することもできる。また、糸の素材は綿100%の物のほか、吸水性や速乾性を増すために合成樹脂繊維の混紡糸を用いたりするなど、タオル地の用途に応じて変更することができるし、織組織についても種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0019】
11 緯糸
21 経糸
31 パイル糸
32 S撚り糸
33 Z撚り糸
【要約】
【課題】柔らかな風合いを持つと同時に洗濯によって嵩高性が増すタオル地の提供を図る。
【解決手段】
経糸と緯糸とパイル糸とを備え、前記パイル糸は、S撚り糸とZ撚り糸によるパイルループが隣り合っている。パイル糸の撚り数は、前記経糸の撚り数に近似しているものとする。前記パイル糸の撚り数は、前記緯糸の撚り数よりも少ないものとする。このタオル地を10回洗浄した後の嵩高性は、洗浄を行っていない未洗浄のものと比べて120%以上増加するように構成したタオル地。
【選択図】図1
図1
図2
図3