(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765142
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】着色コンクリートの製造方法および着色コンクリート
(51)【国際特許分類】
B05D 7/00 20060101AFI20200928BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20200928BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20200928BHJP
C04B 41/72 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
B05D7/00 D
B05D3/12 B
B05D5/06 G
C04B41/72
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-118645(P2019-118645)
(22)【出願日】2019年6月26日
(65)【公開番号】特開2020-1036(P2020-1036A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-121162(P2018-121162)
(32)【優先日】2018年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515177871
【氏名又は名称】福岡ILB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】天野 重治
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−308680(JP,A)
【文献】
特開平2−44079(JP,A)
【文献】
特開平4−148901(JP,A)
【文献】
特開昭63−166781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
C04B 41/00−41/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層部が、細骨材を使用せずに、セメント、水、粗骨材を使用して形成されたポーラスコンクリートであるコンクリートの表面全体に着色塗料を満遍なく塗布し、前記ポーラスコンクリートの空隙の内部まで浸透させて着色被膜を形成する塗装工程と、
前記コンクリートの表面の地肌上に前記着色被膜が確実に残らないように前記コンクリートの表層部を前記コンクリートの地肌が露出するまで削り取る研磨工程と
を含む着色コンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記研磨工程は、前記コンクリートの表層部を0.1mm〜10mm削り取ることを特徴とする請求項1記載の着色コンクリートの製造方法。
【請求項3】
少なくとも表層部が、細骨材を使用せずに、セメント、水、粗骨材を使用して形成されたポーラスコンクリートであるコンクリートの表面の凹凸の凹部内にのみ着色塗料による着色被膜を有し、前記コンクリートの表面の凹凸の凸部の頂部の地肌が露出した着色コンクリート。
【請求項4】
前記コンクリートの表面の凹凸の凹部は、前記コンクリートを構成する骨材間に当該コンクリートの形成時に形成されたポーラスコンクリートの空隙の内面である請求項3記載の着色コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を着色した着色コンクリートの製造方法および着色コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートブロックの表面を着色したい場合には、顔料を混合したコンクリートを型枠内に打設してブロック全体を着色したり、予め製造したコンクリートブロックの表面に別途塗料を塗布したりしている。また、着色料を溶かした着色液を型の内面に付着させた後、該型枠内にコンクリートを打設して着色液を拡散させ、その後に養生する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−169410号公報(段落0002−0004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、顔料を混合したコンクリートを型枠内に打設したり、着色料を溶かした着色液を型の内面に付着させてからコンクリートを打設したりする場合、コンクリートブロック本体の製造段階において予め着色する色を決定しておく必要がある。また、型枠内へのコンクリートの打設により着色層をコンクリート本体と一体化する必要があるため、使用できる着色材料に制限が大きい。また、予め製造したコンクリートブロックの表面に着色塗料を塗布すると、表面の塗料が経年変化により剥がれてしまい、体裁を損ねてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明においては、多種多様な着色塗料を使用することが可能であり、経年変化による体裁の劣化が少ない着色コンクリートの製造方法および着色コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の着色コンクリートの製造方法は、少なくとも表層部がポーラスであるコンクリートの表面全体に着色塗料を満遍なく塗布し、ポーラスの空隙の内部まで浸透させて着色被膜を形成する塗装工程と、コンクリートの表層部をコンクリートの地肌が露出するまで削り取る研磨工程とを含む。
【0007】
本発明の着色コンクリートの製造方法によれば、少なくとも表層部がポーラスであるコンクリートの表面の凹凸の凹部内にのみ着色塗料による着色被膜を有し、コンクリート表面の凹凸の凸部の頂部の地肌が露出した着色コンクリートが得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の着色コンクリートは、着色被膜がコンクリートの表面の凹凸の凹部内にのみ存在し、コンクリートの表面の凹凸の凸部の頂部には初めから着色被膜がなく、地肌が露出している。そのため、歩行者や車両等の通過等によって着色コンクリートの表面が削られても、露出した地肌は地肌のままであり、着色コンクリートの表面の凹凸の凹部内のみに存在する着色被膜に影響はなく、経年変化による体裁の劣化が少ない。
【0009】
また、本発明の着色コンクリートは、コンクリートの表面全体に着色塗料を満遍なく塗布し、ポーラスの内部まで浸透させて着色被膜を形成するため、多種多様な着色塗料を使用することが可能であり、ユーザの好みに合わせて自由に色を選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態における着色コンクリートブロックの斜視図である。
【
図2】
図1の着色コンクリートブロックの製造工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の実施の形態における着色コンクリートブロックの斜視図、
図2は
図1の着色コンクリートブロックの製造工程を示す縦断面図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施の形態における着色コンクリートとしての着色コンクリートブロック1は、コンクリートとしてのコンクリートブロック本体2の表面の凹凸の凹部内にのみ着色塗料による着色被膜3を有する。着色被膜3は、
図1の表面を拡大した部分拡大図の黒塗り部分に現れる。また、コンクリートブロック本体2の表面の凹凸の凸部の頂部の地肌4上には着色被膜3がなく、地肌4は露出している。
【0013】
以下、
図2を参照して、
図1の着色コンクリートブロック1の製造方法について説明する。
【0014】
[コンクリートブロック本体製造工程]
コンクリートブロック本体2は、セメント、細骨材、粗骨材や水等を混練し、成形、養生することにより形成する。
図2(a)に示すように、コンクリートブロック本体2は、通常のコンクリートからなる基層部2bと、基層部2b上に形成されるポーラスコンクリートからなる表層部2aとから構成される。ポーラスコンクリートである表層部2bは、細骨材を使用せずに、セメント、水、粗骨材5を使用して形成する。粗骨材5としては、例えば、粒径2mm以上5mm未満の骨材のみ使用したり、粒径2mm以上5mm未満の骨材と粒径5mm以上13mm未満の骨材とを混合して使用したりすることができる。
【0015】
本製造工程により製造されたコンクリートブロック本体2には、
図2(a)に示すように、その表層部2aの粗骨材5間にポーラス(多孔質)を構成する空隙6が自然に形成されている。なお、
図2(a)〜(c)においては、粗骨材5以外のセメント、水等からなるモルタル分については図示を省略しているが、実際には粗骨材5の表面にはモルタルが付着している。
【0016】
[塗装工程]
上記コンクリートブロック本体2の形成直後、
図2(b)に示すように、コンクリートブロック本体2の表層部2aの表面全体に、着色塗料を満遍なく塗布し、ポーラスの空隙6の内部まで浸透させて着色被膜3を形成する(塗布工程)。このとき、着色塗料の塗布は吹き付けや刷毛塗り等により行い、表層部2aの表面が膜厚0.01〜5.0mm、より好ましくは0.05〜3.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.0mm程度覆われるようにする。なお、着色塗料の塗布はコンクリートブロック本体が硬化した後に行うことも可能である。
【0017】
なお、
図2(b)においては、着色塗料が表層部2aの空隙6の全体に充填され、空隙6内が全て着色被膜3により満たされているように図示しているが、着色被膜3は空隙6の内面を膜厚0.01〜5.0mm、より好ましくは0.05〜3.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.0mm程度覆うようにすれば良い。また、着色被膜3は表層部2aの深さ方向(
図2の上下方向)全体に形成する必要はなく、後述する研磨工程においてコンクリートブロック本体の表層部2aを削り取った際に空隙6内の着色被膜3が剥がれない深さまで形成すれば良い。
【0018】
[研磨工程]
次に、
図2(c)に示すように、コンクリートブロック本体2の表層部2aを地肌4が露出するまで削り取る。このとき、コンクリートブロック本体2の表面の地肌4を0.1mm〜10mm、より好ましくは0.5〜5.0mm、さらに好ましくは1.0〜3.0mm削り取るようにすることで、地肌4上に着色被膜3が確実に残らないようにすることができる。
【0019】
上記製造方法により得られた着色コンクリートブロック1は、着色被膜3がコンクリートブロック本体2の表面の凹凸の凹部内、すなわちポーラスの空隙6の内面にのみ存在し、コンクリートブロック本体2の表面の、すなわち粗骨材5の頂部には初めから着色被膜がなく、地肌4が露出している。そのため、歩行者や車両等の通過等によって着色コンクリートブロック1の表面が削られても、露出した地肌は地肌のままであり、着色コンクリートブロック1の表面の凹凸の凹部内のみに存在する着色被膜3に影響はなく、経年変化による体裁の劣化が少ない。
【0020】
また、本実施形態における着色コンクリートブロック1は、コンクリートブロック本体2の表面全体に着色塗料を満遍なく塗布し、ポーラスの空隙6の内部まで浸透させて着色被膜3を形成するため、多種多様な着色塗料を使用することが可能であり、ユーザの好みに合わせて自由に色を選択することが可能である。
【0021】
なお、上記実施形態においては、表層部2aがポーラスコンクリートからなる着色コンクリートブロック1について説明したが、少なくとも表層部2aがポーラスコンクリートであれば良く、表層部2aおよび基層部2bの全体がポーラスコンクリートにより形成されたものにも適用可能である。要するに、研磨工程において表層部2aを削り取った際にポーラスの空隙6内の着色被膜3が剥がれない深さまでポーラスコンクリートであれば良い。
【0022】
また、本実施形態においてはコンクリートブロックの表面を着色した着色コンクリートブロックについて説明したが、現場打ちのコンクリートにも適用可能である。要するに、少なくとも表層部がポーラスであるコンクリートの表面全体に着色塗料を満遍なく塗布し、ポーラスの空隙の内部まで浸透させて着色被膜を形成し、コンクリートの表層部をコンクリートの地肌が露出するまで削り取ることで、経年変化の少ない着色コンクリートが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、表面を着色した着色コンクリートの製造方法および着色コンクリートとして有用であり、特に、多種多様な着色塗料を使用することが可能であり、経年変化による体裁の劣化が少ない着色コンクリートの製造方法および着色コンクリートとして好適である。
【符号の説明】
【0024】
1 着色コンクリートブロック
2 コンクリートブロック本体
2a 表層部
2b 基層部
3 着色被膜
4 地肌
5 粗骨材
6 空隙