特許第6765152号(P6765152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6765152-品質管理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6765152
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/00 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
   B29B17/00
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-40381(P2020-40381)
(22)【出願日】2020年3月9日
【審査請求日】2020年3月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307016700
【氏名又は名称】福井環境事業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135448
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】安達 弘幸
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−123193(JP,A)
【文献】 特開2004−074507(JP,A)
【文献】 特開2002−264128(JP,A)
【文献】 特開2005−313165(JP,A)
【文献】 特表2006−505419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00
B09B 5/00
G06F 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の材質の廃棄物が混在する廃棄物群から前記廃棄物由来の再生原料を再生する再生工程と、
前記再生工程で再生された前記再生原料を対象として前記再生原料の出荷先の要求品質に応じた性質を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定された測定値毎に前記再生原料を管理する管理工程と、を含み、
前記再生工程は、前記複数の材質の前記廃棄物が混在する前記廃棄物群としての、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリアミドを含み且つポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート及び塩化ビニル樹脂の一部又は全部を含む複数の材質の廃プラスチックが混在する廃プラスチック群から、前記廃棄物由来の前記再生原料としての、前記廃プラスチック由来の再生プラスチック原料であるポリエチレン及びポリプロピレン混合材をロット単位で再生し、
前記測定工程は、前記再生工程で再生された前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材を対象として、前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材の出荷先の要求品質に応じた性質である流動性を1ロット単位で測定し、更に、前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材の出荷先の要求品質に応じた性質である、塩素濃度、水分率、所定の成分の含有率、異物混合率、色、形状、臭気、機械的性質、熱的性質、化学的性質及び電気的性質の一部又は全部を前記流動性の測定頻度より少ない所定の複数ロット単位で測定し、
前記管理工程は、
前記流動性が第一範囲に含まれる前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材が再生された第一種ロットを第一出荷用として管理し、
前記流動性が前記第一範囲とは異なる第二範囲に含まれる前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材が再生された第二種ロットを前記第一出荷用とは異なる第二出荷用として管理する、品質管理方法。
【請求項2】
前記再生工程は、前記複数の材質の前記廃プラスチックを選別、粉砕、洗浄、脱水、乾燥、溶融及び製品化する処理を含む、請求項1に記載の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物由来の再生原料の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、使用済みプラスチックのリサイクル方法を開示する。プラスチック材料が縮合系ポリマーの場合、このプラスチック材料は使用中に加水分解を引き起こす。そのため、分子量が減少し、粘度が低下する。使用済みプラスチック材料の粘度を測定することで、その劣化のレベルを知ることができる。粘度が減少するとポリマーのメルトフローレイトが大きくなる。そのため、メルトフローレイトを測定することでも使用済みプラスチック材料の劣化のレベルを知ることができる。このリサイクル方法は、使用済みプラスチック材料の劣化度を判定した後、該劣化度に基づいて使用済みプラスチック材料の再生手段を決定する。リサイクル方法は、第一工程と、第二工程と、第三工程〜第七工程とを含む。第一工程は、市場から回収された製品を分解、粉砕して使用済みプラスチック材料を回収する工程である。第二工程は、回収された使用済みプラスチック材料の流動性又はメルトフローレイトを測定し、該使用済みプラスチック材料の劣化度を判定する工程である。第三工程は、使用済みプラスチック材料を燃焼に給して発生する熱エネルギーを利用するサーマルリサイクル工程である。第四工程は、使用済みプラスチック材料をより品質の低い他分野の製品の材料として転用するカスケード利用工程である第五工程は、使用済みプラスチック材料をプラスチック材料のバージン材又はプラスチック材料の原料コンパウンドとブレンド及び混練して物性を回復し、同一分野の製品の材料として利用する工程である。第六工程は、使用済みプラスチック材料をサンドイッチ成形品の内部コア層樹脂として利用するサンドイッチ成形工程である。第七工程は、使用済みプラスチック材料を二層成形品の裏面層樹脂として利用する二層成形工程である。例えば、第二工程では、粉砕樹脂が第一グループ樹脂〜第五グループ樹脂に仕分けられる。第一グループ樹脂は、メルトフローレイトが50〜90g/10minのロットである。第二グループ樹脂は、メルトフローレイトが90〜140g/10minのロットである。第三グループ樹脂は、メルトフローレイトが140〜200g/10minのロットである。第五グループ樹脂は、メルトフローレイトが200g/10min以上のロットである。第一グループ樹脂は、第七工程にて再利用される。第二グループ樹脂は、第六工程にて再利用される。第三グループ樹脂は、第五工程にて再利用される。第五グループ樹脂は、第三工程にて再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−123193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃棄物群から廃棄物由来の再生原料が再生されている。しかしながら、廃棄物群には、複数の材質の廃棄物が混在していることがある。例えば、家庭からの廃棄物は、複数の材質の廃棄物を含む。そして、廃棄物群では、混在する廃棄物の種類及び比率は、一定せず、常に変化する。そのため、複数の材質の廃棄物が混在する廃棄物群から廃棄物由来の再生原料を再生する場合、素材となる廃棄物のばらつきに起因し、再生後の再生原料の品質にばらつきが生じ易い。この場合、特定の出荷先に一定品質の再生原料を継続して出荷することができない。換言すれば、特定の出荷先は、一定品質の再生原料を継続して受け入れることができない。
【0005】
本発明は、特定の出荷先に一定品質の再生原料を継続して出荷可能な品質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、複数の材質の廃棄物が混在する廃棄物群から前記廃棄物由来の再生原料を再生する再生工程と、前記再生工程で再生された前記再生原料を対象として前記再生原料の出荷先の要求品質に応じた性質を測定する測定工程と、前記測定工程で測定された測定値毎に前記再生原料を管理する管理工程と、を含み、前記再生工程は、前記複数の材質の前記廃棄物が混在する前記廃棄物群としての、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリアミドを含み且つポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート及び塩化ビニル樹脂の一部又は全部を含む複数の材質の廃プラスチックが混在する廃プラスチック群から、前記廃棄物由来の前記再生原料としての、前記廃プラスチック由来の再生プラスチック原料であるポリエチレン及びポリプロピレン混合材をロット単位で再生し、前記測定工程は、前記再生工程で再生された前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材を対象として、前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材の出荷先の要求品質に応じた性質である流動性を1ロット単位で測定し、更に、前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材の出荷先の要求品質に応じた性質である、塩素濃度、水分率、所定の成分の含有率、異物混合率、色、形状、臭気、機械的性質、熱的性質、化学的性質及び電気的性質の一部又は全部を前記流動性の測定頻度より少ない所定の複数ロット単位で測定し、前記管理工程は、前記流動性が第一範囲に含まれる前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材が再生された第一種ロットを第一出荷用として管理し、前記流動性が前記第一範囲とは異なる第二範囲に含まれる前記ポリエチレン及びポリプロピレン混合材が再生された第二種ロットを前記第一出荷用とは異なる第二出荷用として管理する、品質管理方法である。
【0007】
この品質管理方法によれば、再生プラスチック原料としてのポリエチレン及びポリプロピレン混合材を、塩素濃度、水分率、所定の成分の含有率、異物混合率、色、形状、臭気、機械的性質、熱的性質、化学的性質及び電気的性質の一部又は全部に応じて複数ロット単位で管理しつつ、流動性に応じて第一出荷用又は第二出荷用としてロット単位で管理することができる。
【0008】
前記再生工程は、前記複数の材質の前記廃プラスチックを選別、粉砕、洗浄、脱水、乾燥、溶融及び製品化する処理を含む、ようにしてもよい。
【0009】
この構成によれば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリアミドを含み且つポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート及び塩化ビニル樹脂の一部又は全部を含む複数の材質の廃プラスチックが混在する廃プラスチック群から、ポリエチレン及びポリプロピレン混合材を再生することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の出荷先に一定品質の再生原料を継続して出荷可能な品質管理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】品質管理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成に置換してもよい。本発明は、他の構成を含んでもよい。
【0013】
<品質管理方法>
品質管理方法は、再生工程S1と、測定工程S2と、管理工程S3とを含む(図1参照)。品質管理方法では、再生工程S1は、連続的に実施され、測定工程S2及び管理工程S3は、繰り返して実施される。
【0014】
再生工程S1は、複数の材質の廃棄物が混在する廃棄物群から廃棄物由来の再生原料を再生する。廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で定義される廃棄物を意味する。例えば、廃棄物は、家庭から排出される。この他、廃棄物は、事業活動に伴い生じる。
【0015】
実施形態は、廃棄物として、廃プラスチックを対象として説明する。この場合、上述の廃棄物群は、複数の材質の廃プラスチックが混在する廃プラスチック群である。再生工程S1は、この廃プラスチック群から、廃棄物由来の再生原料として、廃プラスチック由来の再生プラスチック原料を再生する。廃プラスチックは、使用済みプラスチックを含む。家庭から排出される廃プラスチック(使用済みプラスチック)の例としては、プラスチック製容器包装及びペットボトルが挙げられる。例えば、プラスチック製容器包装が家庭から排出される場合、材質の異なる複数種のプラスチック製容器包装が混在する。従って、上述した通り、廃棄物群には、複数の材質の廃棄物(複数の材質の廃プラスチック)が混在する。
【0016】
家庭から排出される廃プラスチックの材質の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び塩化ビニル樹脂(PVC)が挙げられる。
【0017】
ポリエチレンは、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンに分類される。低密度ポリエチレン製のプラスチック製品の例としては、袋、ラップフィルム及び食品チューブが挙げられる。高密度ポリエチレン製のプラスチック製品の例としては、包装フィルム、袋、食品容器、シャンプー・リンス容器が挙げられる。ポリプロピレン製のプラスチック製品の例としては、包装フィルム、食品容器、キャップ、トレイ、ごみ容器が挙げられる。ポリアミド製のプラスチック製品の例としては、包装フィルムが挙げられる。
【0018】
ポリスチレンは、ポリスチレン及び発泡ポリスチレンに分類される。ポリスチレン製のプラスチック製品の例としては、食品容器及びCDケースが挙げられ、発泡ポリスチレン製のプラスチック製品の例としては、食品用トレイ及びカップ麺容器が挙げられる。
【0019】
ポリエチレンテレフタレートは、ボトル、延伸フィルム及び無延伸シートに分類される。ポリエチレンテレフタレート製のボトルの例としては、飲料・醤油・酒類・茶類・飲料水等の容器(ペットボトル)が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート製の延伸フィルムの例としては、包装フィルムが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート製の無延伸シートの例としては、惣菜・佃煮・フルーツ・サラダ・ケーキ等の包装が挙げられる。塩化ビニル樹脂製のプラスチック製品の例としては、ラップフィルムが挙げられる。
【0020】
再生工程S1によって、上述した各プラスチック製品は、次のような廃プラスチック由来の再生プラスチック原料へと再生される。即ち、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリアミドは、PE/PP混合ペレットへと再生される。ポリエチレンは、PEペレットへと再生されてもよく、ポリプロピレンは、PPペレットへと再生されてもよい。ポリスチレンは、PSペレットへと再生される。ポリエチレンテレフタレート製のボトルは、圧縮品又はフレークへと再生される。ポリエチレンテレフタレート製の延伸フィルム・無延伸シート及び塩化ビニル樹脂は、固形燃料化される。
【0021】
この他、廃プラスチックの材質の例としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)が挙げられる。再生プラスチック原料の形状の例としては、上述した、ペレット、圧縮品及びフレークの他、フラフ、インゴット及び減容品が挙げられる。例えば、前述の形状の再生プラスチック原料は、次のようにして形成される。ペレットは、廃プラスチックを加熱溶融し粒状にして形成される。フラフは、廃プラスチックのうちのフィルム類を破砕して形成される。フレークは、廃プラスチックのうちのボトル又は固形容器を破砕して形成される。インゴットは、廃プラスチックを直方体の型に流し込み、棒状又は板状に固めて形成される。減容品は、廃プラスチックを摩擦熱又は圧縮力により体積を減らして粒状又は俵状にして形成される。減容品は、形状又は大きさによって「ミル」又は「グラッシュ」と称されることもある。圧縮品は、廃プラスチックを圧縮し、結束材で梱包し俵状にして形成される。圧縮品は、「ベール」と称されることもある。再生プラスチック原料の形状は、特に限定されない。再生プラスチック原料の形状は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0022】
再生工程S1は、選別、粉砕、洗浄、溶融及び製品化の処理を含む。再生プラスチック原料は、これら処理を経て生成される。例えば、再生プラスチック原料の形状をペレットとする場合、溶融された樹脂を造粒し、ペレット状の再生プラスチック原料が生成される。例えば、造粒は、ペレタイザーによって実施される。ペレタイザーは、公知の装置である。従って、ペレタイザーに関する説明は、省略する。
【0023】
再生工程S1における上述の処理は、例示である。再生工程S1は、上述の処理以外の処理を含んでもよい。例えば、再生工程S1は、脱水及び乾燥の処理を含んでもよい。
【0024】
選別処理は、複数回実施することが好ましい。この場合、複数回実施される選別処理は、それぞれ異なる複数の選別法とすることがより好ましい。選別法の例としては、風力選別、手選別、磁力選別、ふるい選別、光学選別及び比重選別が挙げられる。前述の選別法のうち、手選別は、人によって実施され、手選別以外の選別法は、専用の選別機によって実施される。風力選別、磁力選別、ふるい選別、光学選別及び比重選別用の選別機は、公知の装置であり、既に実用化されている。従って、これらに関する説明は、省略する。
【0025】
選別処理として複数の選別法が採用される場合、再生工程S1は、例えば、次の順で実施される。即ち、再生工程S1は、風力選別、手選別、磁力選別、光学選別、破砕又は粉砕、洗浄、比重選別、遠心分離、脱水、乾燥、溶融及び製品化の順で実施されてもよい。この他、再生工程S1は、風力選別、手選別、ふるい選別、破砕又は粉砕、洗浄、比重選別、遠心分離、脱水、乾燥及び製品化の順で実施されてもよい。
【0026】
脱水処理は、溶融前の原料を脱水する。乾燥処理は、熱風によって脱水後の原料を乾燥させる。その後、原料は、溶融処理にて溶融される。例えば、脱水処理は、スクリュープレスによって実施され、乾燥処理は、サーマルドライヤーによって実施される。スクリュープレス及びサーマルドライヤーは、公知の装置である。従って、スクリュープレス及びサーマルドライヤーに関する説明は、省略する。
【0027】
再生プラスチック原料は、単位量ずつ袋詰め等され製品化される。例えば、再生プラスチック原料は、500kgずつフレキシブルコンテナに詰められ製品化される。即ち、再生工程S1は、再生原料としての再生プラスチック原料をロット(500kg)単位で再生する。1ロット当たりの再生原料(再生プラスチック原料)の質量は、500kgとは異なる値としてもよい。この質量は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0028】
測定工程S2は、再生工程S1で再生された再生原料を対象として再生原料の出荷先の要求品質に応じた性質を測定する。更に、測定工程S2は、この性質をロット単位で測定する。従って、実施形態では、測定工程S2は、再生工程S1で再生された再生プラスチック原料を対象として再生プラスチック原料の出荷先の要求品質に応じた性質をロット単位で測定する。
【0029】
再生プラスチック原料の出荷先の要求品質に応じた性質の例としては、流動性、塩素濃度、水分率、所定の成分の含有率、異物混合率、色、形状、臭気、機械的性質、熱的性質、化学的性質及び電気的性質が挙げられる。機械的性質の例としては、比重、硬度、引張強度、伸び、引張弾性率、圧縮強度、曲げ強度及び曲げ弾性率が挙げられる。硬度の例としては、ロックウェル硬度が挙げられる。熱的性質の例としては、荷重たわみ温度、線膨張係数及び耐熱温度が挙げられる。化学的性質の例としては、吸水率、耐酸性、耐アルカリ性及び耐有機溶剤が挙げられる。電気的性質の例としては、体積固有抵抗値、絶縁破壊強度が上げられる。従って、測定工程S2は、再生プラスチック原料の出荷先の要求品質に応じた性質として、流動性、塩素濃度、水分率、所定の成分の含有率、異物混合率、色、形状、臭気、機械的性質、熱的性質、化学的性質及び電気的性質のうちの少なくとも1つを測定する。
【0030】
但し、測定工程S2は、再生プラスチック原料の出荷先の要求品質に応じた性質として、流動性を測定することが好ましい。流動性は、メルトフローレイトを含み、メルトフローレイトは、メルトマスフローレイトと、メルトボリュームフローレイトとを含む。実施形態では、再生プラスチック原料の出荷先の要求品質は、流動性であるとし、測定工程S2は、再生プラスチック原料のメルトマスフローレイトを測定することとする。
【0031】
測定には、株式会社東洋精機製作所製のメルトフローレイタ(D-M型)を用いることができる。但し、測定には、これとは異なる装置を用いてもよい。測定は、JIS K7210に準拠することができる。例えば、測定は、JIS K7210−1:2014(プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方−第1部:標準的試験方法)のA法(質量測定法)に準拠することができる。測定は、1ロット分の再生プラスチック原料から、所定量の再生プラスチック原料を採取し、これを測定試料として実施する。測定条件は、測定試料がPSペレット以外のペレット(例えば、PE/PP混合ペレット)である場合、下記の第一測定条件としてもよく、測定試料がPSペレットである場合、下記の第二測定条件としてもよい。
[第一測定条件]
温度(炉体温度):230℃
錘:2.16kg
[第二測定条件]
温度(炉体温度):200℃
錘:5.00kg
管理工程S3は、測定工程S2で測定された測定値毎に再生原料を管理する。即ち、管理工程S3は、測定値が第一範囲に含まれる再生原料が再生された第一種ロットを第一出荷用として管理する。管理工程S3は、測定値が第二範囲に含まれる再生原料が再生された第二種ロットを第二出荷用として管理する。第二範囲は、第一範囲とは異なる。第二出荷用は、第一出荷用とは異なる。従って、実施形態では、管理工程S3は、測定値が第一範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第一種ロットを第一出荷用として管理し、測定値が第二範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第二種ロットを第二出荷用として管理する。
【0032】
第一範囲とは異なる第二範囲は、より細分化してもよい。例えば、第二範囲を第三範囲、第四範囲及び第五範囲の3つの評価範囲に細分化してもよい。つまり、測定値の評価範囲は、第一範囲と、第二範囲としての第三範囲、第四範囲及び第五範囲としてもよい。メルトマスフローレイトを例とすると、第一範囲、第三範囲、第四範囲及び第五範囲は、次のように設定してもよい。即ち、第一範囲は、3.5g/10min以上である。第三範囲は、2.5g/10min以上である(2.5g/10min≦第三範囲<3.5g/10min)。第四範囲は、2.0g/10min以上である(2.0g/10min≦第範囲<2.5g/10min)。第五範囲は、2.0g/10min未満である。この場合、第二範囲は、3.5g/10min未満ということもできる。
【0033】
実施形態では、測定値が第三範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第二種ロットを「第三種ロット」といい、測定値が第四範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第二種ロットを「第四種ロット」といい、測定値が第五範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第二種ロットを「第五種ロット」という。この場合、第二種ロットは、第一種ロットとは異なるロットであって、第三種ロット、第四種ロット及び第五種ロットの一部又は全部に対応する。第二種ロットは、3.5g/10min未満である再生プラスチック原料が再生されたロットであるということもできる。
【0034】
測定値の評価範囲の数及び設定値は、出荷先の要求品質に応じて適宜設定される。実施形態では、測定値の評価範囲は、第一範囲と、第二範囲としての第三範囲、第四範囲及び第五範囲とし、これらに対する設定値も、上述の通りとする。
【0035】
出荷先は、顧客単位としてもよく、又は再生プラスチック原料の用途単位としてもよい。この他、出荷先は、顧客及び用途の両方としてもよい。再生プラスチック原料の用途の例としては、加工技術と再生プラスチック原料を素材として形成される製品とが挙げられる。出荷先の設定に再生プラスチック原料の用途を用いる場合、再生プラスチック原料の用途は、加工技術及び再生プラスチック原料を素材として形成される製品の一方又は両方であってもよい。
【0036】
例えば、再生プラスチック原料の顧客として、A社、B社及びC社を想定する。A社は、射出成形(用途:加工技術)によって一般生活用品及び建築資材(用途:製品)を製造し、そのために、メルトマスフローレイトが3.5g/10min以上(第一範囲)の再生プラスチック原料を要求しているとする。A社製の一般生活用品の例としては、ハンガー及びプランターが挙げられる。A社製の建築資材の例としては、鉄筋スペーサーが挙げられる。この他、A社は、射出成形(用途:加工技術)によって物流用パレット(用途:製品)を製造し、そのために、メルトマスフローレイトが2.5g/10min以上(第二範囲)の再生プラスチック原料を要求しているとする。
【0037】
B社は、押出成形(用途:加工技術)によってA社とは異なる建築資材(用途:製品)を製造し、そのために、メルトマスフローレイトが2.0g/10min以上(第三範囲)の再生プラスチック原料を要求しているとする。B社製の建築資材の例としては、桟木及び擬木が挙げられる。
【0038】
C社は、インフレーション成形(用途:加工技術)によって袋類(用途:製品)を製造し、そのために、メルトマスフローレイトが2.0g/10min未満(第四範囲)の再生プラスチック原料を要求しているとする。C社製の袋類の例としては、レジ袋及びごみ袋が挙げられる。
【0039】
測定工程S2での測定の結果、測定値が3.5g/10min以上であったとする。この場合、管理工程S3は、測定値が第一範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第一種ロットを「A社・射出成形・一般生活用品及び建築資材」用として管理する。
【0040】
測定工程S2での測定の結果、測定値が2.5g/10min以上であったとする。この場合、管理工程S3は、測定値が第三範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第三種ロットを「A社・射出成形・物流用パレット」用として管理する。
【0041】
測定工程S2での測定の結果、測定値が2.0g/10min以上であったとする。この場合、管理工程S3は、測定値が第四範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第四種ロットを「B社・押出成形・建築資材」用として管理する。
【0042】
測定工程S2での測定の結果、測定値が2.0g/10min未満であったとする。この場合、管理工程S3は、測定値が第五範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第五種ロットを「C社・インフレーション成形・袋類」用として管理する。
【0043】
その後、品質管理方法の実施者は、第一種ロットをこれに対応する出荷先に出荷し、第二種ロットをこれに対応する出荷先に出荷する。即ち、この実施者は、A社からの要求(射出成形・一般生活用品及び建築資材)に応じて第一種ロットをA社に出荷する。また、この実施者は、A社からの要求(射出成形・物流用パレット)に応じて第二種ロットをA社に出荷する。更に、この実施者は、B社からの要求(押出成形・建築資材)に応じて第三種ロットをB社に出荷する。更にまた、この実施者は、C社からの要求(インフレーション成形・袋類)に応じて第四種ロットをC社に出荷する。
【0044】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0045】
(1)品質管理方法は、再生工程S1と、測定工程S2と、管理工程S3とを含む(図1参照)。再生工程S1は、複数の材質の廃棄物が混在する廃棄物群から廃棄物由来の再生原料を再生する。測定工程S2は、再生工程S1で再生された再生原料を対象として再生原料の出荷先の要求品質に応じた性質を測定する。管理工程S3は、測定工程S2で測定された測定値毎に再生原料を管理する。再生工程S1は、再生原料をロット単位で再生する。測定工程S2は、再生原料の出荷先の要求品質に応じた性質をロット単位で測定する。管理工程S3は、測定値が第一範囲に含まれる再生原料が再生された第一種ロットを第一出荷用として管理し、測定値が第二範囲に含まれる再生原料が再生された第二種ロットを第二出荷用として管理する。
【0046】
第二範囲は、第三範囲、第四範囲及び第五範囲の3つに細分化してもよい。この場合、管理工程S3は、測定値が第三範囲に含まれる再生原料が再生された第三種ロットを第三出荷用として管理し、測定値が第四範囲に含まれる再生原料が再生された第四種ロットを第四出荷用として管理し、測定値が第五範囲に含まれる再生原料が再生された第五種ロットを第五出荷用として管理する。
【0047】
そのため、再生原料を測定値に応じて第一出荷用又は第二出荷用(第一出荷用、第三出荷用、第四出荷用又は第五出荷用)としてロット単位で管理することができる。特定の出荷先に一定品質の再生原料を継続して出荷することが可能となる。
【0048】
(2)廃棄物が廃プラスチックであり、再生原料が再生プラスチック原料であるとする。この場合、再生工程S1は、複数の材質の廃棄物が混在する廃棄物群としての、複数の材質の廃プラスチックが混在する廃プラスチック群から、廃棄物由来の再生原料としての、廃プラスチック由来の再生プラスチック原料をロット単位で再生する。測定工程S2は、再生工程S1で再生された再生プラスチック原料を対象として再生プラスチック原料の出荷先の要求品質に応じた性質をロット単位で測定する。管理工程S3は、測定値が第一範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第一種ロットを第一出荷用として管理し、測定値が第二範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第二種ロットを第二出荷用として管理する。
【0049】
廃棄物が廃プラスチックであり、再生原料が再生プラスチック原料である場合も、第二範囲は、第三範囲、第四範囲及び第五範囲の3つに細分化してもよい。この場合、管理工程S3は、測定値が第三範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第三種ロットを第三出荷用として管理し、測定値が第四範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第四種ロットを第四出荷用として管理し、測定値が第五範囲に含まれる再生プラスチック原料が再生された第五種ロットを第五出荷用として管理する。
【0050】
そのため、再生プラスチック原料を測定値に応じて第一出荷用又は第二出荷用(第一出荷用、第三出荷用、第四出荷用又は第五出荷用)としてロット単位で管理することができる。特定の出荷先に一定品質の再生プラスチック原料を継続して出荷することが可能となる。
【0051】
(3)廃棄物が廃プラスチックであり、再生原料が再生プラスチック原料であるとする。この場合、測定工程S2は、再生プラスチック原料の出荷先の要求品質に応じた性質として、流動性、塩素濃度、水分率、所定の成分の含有率、異物混合率、色、形状、臭気、機械的性質、熱的性質、化学的性質及び電気的性質のうちの少なくとも1つを測定する。
【0052】
そのため、流動性、塩素濃度、水分率、所定の成分の含有率、異物混合率、色、形状、臭気、機械的性質、熱的性質、化学的性質及び電気的性質のうちの少なくとも1つによって再生プラスチック原料を管理することができる。但し、測定工程S2は、再生プラスチック原料の出荷先の要求品質に応じた性質として、流動性を測定することが好ましい。これにより、流動性によって再生プラスチック原料を管理することができる。
【0053】
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では、上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は、適宜省略する。
【0054】
(1)上記では説明を省略したが、例えば、再生プラスチック原料の出荷先の要求品質が塩素濃度であるとする。この場合、測定工程S2は、再生工程S1で再生された再生プラスチック原料を対象として塩素濃度をロット単位で測定する。測定には、オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製(現:日立ハイテク・アナリティカル・サイエンス社製)の蛍光X線装置(X-Supreme8000)を用いることができる。但し、測定には、これとは異なる装置を用いてもよい。測定は、JIS Z7302−6:1999(廃棄物固形化燃料−第6部:全塩素分試験方法)に準拠することができる。塩素濃度は、質量分率(%)で示される。
【0055】
再生プラスチック原料の出荷先の要求品質としての塩素濃度に関し、評価範囲は、JIS Z7311:2010(廃棄物由来の紙,プラスチックなど固形化燃料(RPF))に準じた設定としてもよい。
【0056】
この他、再生プラスチック原料の出荷先の要求品質が水分率であるとする。この場合、測定工程S2は、再生工程S1で再生された再生プラスチック原料を対象として水分率をロット単位で測定する。測定には、株式会社ケツト科学研究所製の赤外線水分計(FD-720)を用いることができる。但し、測定には、これとは異なる装置を用いてもよい。測定は、JIS Z7302−3:1999(廃棄物固形化燃料−第3部:水分試験方法)に準拠することができる。水分率は、質量%で示される。
【0057】
(2)測定工程S2は、再生原料の出荷先の要求品質に応じた性質をロット単位で測定する。廃棄物が廃プラスチックであり、再生原料が再生プラスチック原料である場合、測定工程S2は、流動性を測定することが好ましい。即ち、測定工程S2は、流動性をロット単位で測定することが好ましい。この他、測定工程S2は、塩素濃度をロット単位で測定してもよい。例えば、測定工程S2は、流動性及び塩素濃度の一方又は両方をロット単位で測定することとし、水分率、所定の成分の含有率、異物混合率、色、形状、臭気、機械的性質、熱的性質、化学的性質及び電気的性質の一部又は全部については、測定頻度をロット単位より少なくしてもよい。流動性の測定頻度をロット単位とし、塩素濃度の測定頻度をロット単位より少なくしてもよい。再生プラスチック原料の1週間当たりの再生量が複数ロットであるとする。この場合、例えば、水分率の測定頻度は、1回以上/週としてもよい。
【0058】
(3)測定工程S2での測定は、次のような簡易検査によって行ってもよい。即ち、前述の簡易検査では、上述したJISに準拠して得られる測定値と相関を有する測定値が得られる。管理工程S3では、上記同様、測定工程S2で採用する簡易検査によって得られる測定値に従った評価範囲が設定される。管理工程S3は、この評価範囲に応じて再生原料を管理する。簡易検査の採用により、測定工程S2を迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
S1 再生工程、 S2 測定工程、 S3 管理工程
【要約】
【課題】特定の出荷先に一定品質の再生原料を継続して出荷可能な品質管理方法を提供する。
【解決手段】品質管理方法は、再生工程と、測定工程と、管理工程とを含む。再生工程は、複数の材質の廃棄物が混在する廃棄物群から廃棄物由来の再生原料を再生する。測定工程は、再生工程で再生された再生原料を対象として再生原料の出荷先の要求品質に応じた性質を測定する。管理工程は、測定工程で測定された測定値毎に再生原料を管理する。再生工程は、再生原料をロット単位で再生する。測定工程は、再生原料の出荷先の要求品質に応じた性質をロット単位で測定する。管理工程は、測定値が第一範囲に含まれる再生原料が再生された第一種ロットを第一出荷用として管理し、測定値が第一範囲とは異なる第二範囲に含まれる再生原料が再生された第二種ロットを第一出荷用とは異なる第二出荷用として管理する。
【選択図】図1
図1