(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765166
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】誘導発熱ローラ装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/14 20060101AFI20200928BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
H05B6/14
F16C13/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-187644(P2014-187644)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-62681(P2016-62681A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月16日
【審判番号】不服2019-7395(P2019-7395/J1)
【審判請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(72)【発明者】
【氏名】松川 長通
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝次
【合議体】
【審判長】
山崎 勝司
【審判官】
塚本 英隆
【審判官】
松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭48−97134(JP,A)
【文献】
特開2002−222689(JP,A)
【文献】
米国特許第3412229(US,A)
【文献】
特開2006−225896(JP,A)
【文献】
特開2004−174600(JP,A)
【文献】
特開2014−46672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体の内部に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導コイルを有する誘導発熱機構とを備える誘導発熱ローラ装置の製造方法であって、
前記ローラ本体の内部に溶接トーチを挿入して、前記ローラ本体を回転させながら、前記ローラ本体に対して前記溶接トーチを回転軸方向に相対移動させることによって、前記ローラ本体の内側周面に、肉盛溶接により二次導体を形成することを特徴とする誘導発熱ローラ装置の製造方法。
【請求項2】
前記二次導体を、前記ローラ本体の回転軸方向に沿って螺旋状に形成することを特徴とする請求項1記載の誘導発熱ローラ装置の製造方法。
【請求項3】
前記二次導体のピッチを、前記ローラ本体の回転軸方向において変化させることを特徴とする請求項2記載の誘導発熱ローラ装置の製造方法。
【請求項4】
前記二次導体が、非鉄金属の高導電性材料からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置の製造方法。
【請求項5】
前記二次導体が、銅又は銅合金からなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関し、特に二次導体が設けられたローラ本体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の誘導発熱ローラ装置としては、特許文献1に示すように、ローラ本体と当該ローラ本体内に設けられた誘導発熱機構とを有し、ローラ本体の内側周面に二次導体を設けることにより、力率を改善させるものが考えられている。
【0003】
そして、従来の二次導体のローラ本体への取り付け方法は、以下のとおりである。
まず、銅板を曲げ加工した後に銀ロー付けなどで接合することによって円筒状の管体を成形する(管体成形工程)。このように製作された円筒状の管体を、ローラ本体に圧入又は焼き嵌めによって装着する(管体装着工程)。これによって、ローラ本体の内側周面に二次導体が取り付けられる。
【0004】
しかしながら、従来の取り付け方法では、円筒状の二次導体を製作する手間や、その二次導体をローラ本体に装着する手間が大掛かりであり、二次導体の取り付け作業に時間がかかってしまう。
【0005】
また、圧入や焼き嵌めなどの取り付け方法では、ローラ本体と二次導体とが単に機械的に密着しているだけであり、ローラ本体と二次導体との熱膨張率の差により緩んでしまい、また、ローラ本体と二次導体との間での熱伝導性が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭45−29650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、ローラ本体の内側周面への二次導体の取り付け作業を容易にするとともに、ローラ本体と二次導体との密着性を向上させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体の内部に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導コイルを有する誘導発熱機構とを備える誘導発熱ローラ装置であって、前記ローラ本体の内側周面に、肉盛溶接により二次導体が形成されていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、肉盛溶接により二次導体を形成しているので、従来の管体成形工程及び管体装着工程を省略することができ、二次導体の取り付け作業を大幅に短縮することができる。また、肉盛溶接するだけで良く、ローラ本体の内側周面への二次導体の取り付け作業を容易にすることができる。さらに、肉盛溶接により二次導体を形成しているので、ローラ本体と二次導体とが一体となり、ローラ本体と二次導体との熱膨張率の差による緩みが無く、ローラ本体と二次導体との間の熱伝導性の低下も抑えることができる。
【0010】
前記二次導体が、前記ローラ本体の回転軸方向に沿って螺旋状に形成されていることが望ましい。このとき、前記二次導体のピッチが、前記ローラ本体の回転軸方向において変化していることが望ましい。
このように螺旋状に二次導体を形成しているので、二次導体のピッチを調整することで、誘導発熱ローラ装置の力率を改善しつつ、電気特性(容量)を自在にコントロールすることができる。
【0011】
前記二次導体が、非鉄金属の高導電性材料からなることが望ましい。具体的には、前記二次導体が、銅又は銅合金からなることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、ローラ本体の内側周面に肉盛溶接により二次導体を形成しているので、ローラ本体の内側周面への二次導体の取り付け作業を容易にするとともに、ローラ本体と二次導体との密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態に係る二次導体の形成パターンを模式的に示す断面図。
【
図3】同実施形態に係る二次導体の形成方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続材の連続熱処理工程等において用いられるものである。
【0016】
<1.装置構成>
具体的にこのものは、
図1に示すように、回転自在に支持された中空円筒状のローラ本体2と、このローラ本体2の内部に設けられた誘導発熱機構3とを備えている。
【0017】
ローラ本体2の両端部には中空の駆動軸21が設けられており、当該駆動軸21は、転がり軸受等の軸受8を介して機台9に回転自在に支持されている。なお、駆動軸21は、ローラ本体2の軸方向端面に接続されるフランジ211を有している(
図2参照)。そして、ローラ本体2は、例えばモータ等の回転駆動機構(不図示)により外部から与えられる駆動力によって回転されるように構成されている。また、本実施形態のローラ本体2の側周壁201には、長手方向(回転軸方向)に延びる気液二相の熱媒体を封入するジャケット室2Aが、周方向に複数且つ等間隔に形成されている。
【0018】
誘導発熱機構3は、円筒形状をなす円筒状鉄心31と、当該円筒状鉄心31の外側周面に巻装された誘導コイル32とを備えている。
【0019】
円筒状鉄心31の両端部には支持軸33が設けられており、当該支持軸33は、それぞれ駆動軸21の内部に挿通されて、転がり軸受等の軸受10を介して駆動軸21に回転自在に支持されている。これにより、誘導発熱機構3は、回転するローラ本体2の内部において、機台9(固定側)に対して静止状態に保持される。
【0020】
また、誘導コイル32には、外部リード線L1が接続されており、この外部リード線L1には、交流電圧などを印加するための電源回路5が接続されている。
【0021】
このような誘導発熱機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2の側周壁201を通過する。この通過によりローラ本体2に誘導電流が発生し、その誘導電流でローラ本体2はジュール発熱する。また、ジャケット室2Aにより、ローラ本体2の側周壁201の回転軸方向の温度分布が均一となる。
【0022】
しかして本実施形態のローラ本体2の内側周面には、肉盛溶接により二次導体4が形成されている。ここで、二次導体4の材質(肉盛材料)は、非鉄金属の高導電性材料であり、具体的には、銅又は銅合金である。
【0023】
具体的には、二次導体4が、ローラ本体2の内側周面201aにおいて周方向全体に亘って形成されるとともに、ローラ本体2の回転軸方向に沿って連続的に螺旋状に形成されている。
【0024】
ここで、螺旋状に形成された二次導体4のピッチを、ローラ本体2の回転軸方向において変化させることができる。より詳細には、誘導発熱ローラ装置100の力率を改善しつつ、回転軸方向において所望の電気特性(容量)を示すように、二次導体4のピッチを調整することができる。
【0025】
次に、ローラ本体2の内側周面201aに二次導体4を形成する肉盛溶接作業の一例について説明する。
ローラ本体2を回転させる回転装置11にローラ本体2を装着する。この状態のローラ本体2の内部に溶接トーチ12を挿入して、回転装置11によりローラ本体2を回転させながら、ローラ本体2に対して溶接トーチ12を回転軸方向に相対移動させることによって、螺旋状の二次導体4がローラ本体2の内側周面201aに形成される。この肉盛溶接において、ローラ本体2の予熱などの溶接前処理条件、溶接ワイヤのサイズ及び材質、トーチ角度、トーチ位置、電圧、電流、ローラ本体2の回転速度、溶接トーチ12の移動速度(引きピッチ)などの溶接条件、ローラ本体2の後熱などの溶接後処理条件を適宜設定することによって、種々の二次導体4を形成することができる。
【0026】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した誘導発熱ローラ装置100によれば、肉盛溶接により二次導体4を形成しているので、従来の管体成形工程及び管体装着工程を省略することができ、二次導体4の取り付け作業を大幅に短縮することができる。また、肉盛溶接するだけで良く、ローラ本体2の内側周面201aへの二次導体4の取り付け作業を容易にすることができる。さらに、肉盛溶接により二次導体4を形成しているので、ローラ本体2と二次導体4とが一体となり、ローラ本体2と二次導体4との熱膨張率の差による緩みが無く、ローラ本体2と二次導体4との間の熱伝導性の低下も抑えることができる。
【0027】
<3.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0028】
例えば、二次導体は、互いに隣接する溶接部が離間するように螺旋状に形成されたものの他、互いに隣接する溶接部が接触して連続するように螺旋状に形成されたものであっても良い。また、螺旋状に形成された二次導体は、回転軸方向において等ピッチとなるように形成されたものであっても良い。
【0029】
さらに、二次導体は、ローラ本体の内側周面に螺旋状に形成されたものの他、ローラ本体の内側周面に円環状に形成されており、ローラ本体の回転軸方向に間欠的又は連続的に複数形成されたものであっても良い。
【0030】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
100・・・誘導発熱ローラ装置
2・・・ローラ本体
201a・・・内側周面
3・・・誘導発熱機構
32・・・誘導コイル
4・・・二次導体