(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Rosa sp.属の植物からの脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を、老化した皮膚又は老化した毛の組織再生の不足に続いて起る審美的欠陥を処置し及び/又は防ぐ為の活性剤として化粧的に使用する方法。
皮膚の薄化、皮膚の堅実さの喪失、弾力性の喪失、密度の喪失若しくは緊張性の喪失、皮膚の乾燥、皮膚の表面外観の変化、皮膚の目立つ微起伏の外観、荒れの外観、小じわ及び/若しくはしわの形成及び/若しくは存在、皮膚の色つやの輝きの変化、皮膚のしなびた外観、皮膚のたるみ、又は皮膚のしぼみを処置する為の、及び/又は良い毛の密度を回復又は維持する、及び/又は頭髪及び/又は毛繊維の質を改善する為の、請求項2に記載の使用方法。
細く、活力のない、こわれやすい、弱い毛であって、保持力がなく、明るさがなく、及び/又は白髪化している毛を防ぎ及び/又は減少し及び/又は処置する為の、請求項1に記載の使用方法。
該脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物が、それらを含む組成物の合計重量に対して、乾燥重量に基づき0.01%〜30%を表す量で用いられる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用方法。
老化した皮膚又は老化した毛の組織再生の不足に続いて起る審美的欠陥を処置し及び/又は防ぐ為の化粧的方法であって、Rosa sp.属の植物の少なくとも一つの脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を活性剤として同物質の必要がある個体に投与することからなる少なくとも一つの工程を含む、前記方法。
【背景技術】
【0004】
皮膚は、個体の生存期間を通じて連続的に自己再生する組織である。この再生は、表皮の基底層に存在するケラチノサイトにより維持される。この細胞集団は、一方で、幹細胞を含み、これは非常にしっかりした長期間の増殖能力によって及び自己再生能力によっても特徴づけられる稀な細胞である、及び、他方で、前駆細胞(progenitor)と呼ばれる細胞を含み、これは活発に増殖し及び分化し得、一方で角質層へと遊走する。
【0005】
毛包に関して、上皮区画と真皮区画の相互作用が、毛の形態形成及び再成長にとって必須であること、及び、毛包サイクルを維持することにとっても必須であると知られている。これらの2つの区画の機能の維持は、種々の幹細胞リザーバーの存在及び活性に依存する。上皮幹細胞の第一のリザーバーが、げっ歯類における「バルジ(bulge)」と呼ばれる領域において同定されている(Cotsarelis et al., Cell, 1990, 61:1329)。この第一の発見以来、ケラチノサイト幹細胞の他のリザーバーが同定されており、及び、ヒトにおいて、多かれ少なかれ活性であるいくつかのリザーバーが毛包の外毛根鞘(ORS)内に入れられているようである(Rochat et al., Cell, 1994, 76:1063; Commo et al., Differentiation, 2000, 66:157; Jaks et al., Nature Genetics, 2008, 40:1291)。
【0006】
真皮区画に関して、SKP(皮膚由来前駆体)と呼ばれる細胞が、真皮乳頭中及び結合組織鞘に収容されており、マウスにおける毛成長誘発及び皮膚修復において関与する多能性細胞であると同定された(Biernaskie et al., Cell Stem Cell, 2009, 5:310)。いくつかのチームが、ヒト組織における及び特には毛包中の真皮乳頭におけるSKPの存在を実証した(Toma et al., Stem Cells, 2005, 23:727; Hunt et al., Stem Cells, 2008, 26:163)。
【0007】
皮膚区画における加齢が、特には表皮表面のかなりの変化、陰、及び表面の不均一性(なめらかな外観の喪失)、弾性の喪失、しわの外見、傷の後の修復/治癒の減速、薄くなった表皮、及び/又は毛の喪失及び/又は白化、減少した毛密度など、によって明らかにされる。
【0008】
皮膚及び毛におけるこれらの視認可能な変化の全てが、皮膚区画の再生能力の変化を示す。それらはまた、ホメオスタシスを確実にする必須の生物学的機能及びこれらの組織の再生が、経年的に脅かされることも示唆する。
【0009】
既存のデータは、年とともに、表皮の再生細胞の数が減少するが(Giangreco et al., Aging Cell, 2008, 7:250)、それらの機能が、基底層の再生能力を制御するそれらの微小環境の変化によって大きく影響されるとみえることを示唆する。すなわち、齢に関連する皮膚の質の低下は、これらの細胞の変化した再生能力に関連するとみえる。細胞の微小環境の重要な構成要素のうち、細胞間相互作用、基底層区画の物理的制約、及び真皮区画の周囲細胞及び常在細胞によって分泌されるパラクリン因子が言及されうる。
【0010】
同様に、脱毛症と又は経時的老化と関連する、毛の数及び/又は質の点での損失は、変化された再生能力を示唆する。実際に、脱毛症頭皮の毛包は、長さにおいて縮んでおり、及び、非脱毛症頭皮と比較して、より少ない増殖するケラチノサイトを有することが示されている(Ashrafussaman et al., Acta Histochem Cytochem, 2010, 43:9)。さらに、最近の研究は、上皮幹細胞の前駆体細胞への転換を欠くことが、アンドロゲン性脱毛症において重要な役割を果たすことを示唆する(Garza et al., J Clin Invest, 2010)。真皮区画において、脱毛症頭皮の真皮乳頭から得られた細胞は、非脱毛症頭皮から得られた細胞と比較して、インビトロでよりゆっくりと増殖し、及び、早期老化をわずらうようであり(Bahta et al., J Invest Dermatol, 2008, 128:1088)、及び、齢に伴う、SKPの数の減少が、ヒト組織において観察されている(Gago et al., Stem Cells, 2009, 27:1164)。これらすべての観察が、脱毛症及び/又は経時的老化との関連における毛包の区画の再生能力の変化を示唆する。
【0011】
すなわち、老化に関連する皮膚及び毛の変化に対抗する為の解決法を見つける為に、再生細胞に、又は皮膚及び毛の幹細胞さえに、特に注意が払われるべきでる。
【0012】
脱分化植物細胞が、1902年のHaberlandによる研究から生じた。過去40年にわたって、植物細胞培養物は、関心のある代謝物の生産の為に、又は、まったく同じである植物の増殖(体細胞胚形成)の為に、用いられている。この植物バイオテクノロジーは、細胞分化全能性のコンセプト:「いずれの植物細胞も、脱分化することができ、及び、それが由来するものと同一である他の固体を再生することができる」に基づく。脱分化植物細胞は、培養物中に置かれた器官(葉、茎、根、花弁など)に由来する植物細胞であり、再度その脱分化した形をとり、すなわちその葉、茎、根、又は花弁の特異性を失い、及び、再度植物全体を再生することができるようになりうる。
【0013】
分化していない植物細胞は、真の植物幹細胞と同等なものであり、分裂組織植物細胞から得られ、及び、器官特異的な生物学的過去を有さない。
【0014】
国際公開第2009/151302号パンフレット及び韓国特許出願公開第2009-0118877号明細書は、Panax ginsengの形成層から得られた又はTaxus属の植物から得られた、分化していない植物細胞を含む抗老化又は抗酸化組成物を記載する。
【0015】
欧州特許出願公開第1985280号明細書は、Rosaceae科の植物から得られた、特にはリンゴ木Malus domesticaから得られた脱分化植物細胞の、種々の内因性及び外因性ストレスに直面した皮膚を幹細胞を保護する為の、特には齢に関連する皮膚又は毛への損傷を処置する為の使用を記載する。
【0016】
欧州特許出願公開第1699423号明細書は、好塩性植物から得られた脱分化植物細胞の凍結乾燥物の、皮膚の外見の若返りのための使用を記載する。
【0017】
独国特許出願公開第102009027361号明細書及び欧州特許出願公開第2266529号明細書は、特にはMalus属の植物から得られた脱分化植物細胞の、ケラチン毛繊維を処置する為の、特にはUV放射に対するそれらの保護の為の、又は老化した皮膚を処置する為の使用を記載する。
【0018】
欧州特許出願公開第0909556号明細書は、Rosaceae科の植物、特にはバラ、の抽出物、任意的に未分化植物細胞から得られる、を、ブラジキニンアンタゴニストとして、種々の状態の処置の為、特には皮膚状態の処置の為に使用することを記載する。
【0019】
国際公開第2011121051号パンフレットは、argania木の脱分化した非誘発細胞(non-elicited cell)の培養物から得られた調製物、皮膚老化、炎症及び瘢痕を処置する為のその使用方法、及びその製造を記載する。
【0020】
国際公開第200482643号パンフレットは、Olibanum、Boswelia又はNegundoの脱分化した誘発された植物細胞(elicited plant cell)を含み且つ活発にする効果を示す化粧料組成物を記載する。
【0021】
欧州特許出願公開第2436759号明細書は、Solanaceae科の形成層から得られ且つ抗老化効果を示す未分化細胞株を記載する。
【0022】
欧州特許出願公開第2436758号明細書は、Ginkgoaceae科の形成層から得られ且つ強化された抗酸化効果を示す未分化細胞株を記載する。
【0023】
欧州特許出願公開第2436757号明細書は、Asteraceae科の形成層から得られ且つ強化された抗炎症効果を示す未分化細胞株を記載する。
【0024】
国際公開第2010137879号パンフレットは、Salicaceae科の形成層から得られ且つ強化された抗炎症効果を示す未分化細胞株を記載する。
【0025】
欧州特許出願公開第1064932号明細書は、抗におい効果を示す脱分化細胞の使用を記載する。
【0026】
欧州特許出願公開第1244464号明細書は、抗紫外線スクリーニング剤としてのLeontopodium属の脱分化細胞の抽出物の使用を記載する。
【0027】
本出願人の知る限り、それ故に、本願明細書に記載された特定の化粧的特性を示すバラ脱分化細胞株を得ることについて言及する文献はない。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の目的のために、語「皮膚」は、頭皮を包含する、個体の皮膚表面全体を意味することが意図される。
【0039】
本発明の目的のために、語「毛」は、毛幹及び毛包を含む集合体を意味することが意図される。
【0040】
さらに他の実施態様に従い、本発明は、Rosa sp.属、特にはLancomeバラ、の植物由来の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物又は凍結乾燥物を、老化した皮膚又は老化した毛の組織再生の不足に続いて起る審美的欠陥を処置し及び/又は防ぐ為の活性剤としての化粧的使用に関する。
【0041】
本発明の目的のために、語「防ぐ」は、考慮下の現象の顕在化のリスクを減少することを意味する。
【0042】
さらに他の実施態様に従い、本発明は、特には表皮又は皮膚が薄くなることを減少し、皮膚の表面外観を改善し、しわを解消し、毛損失を遅らせ及び/又は抑制し、又は毛の白化を遅らせ及び/又は抑制する為に、老化した皮膚又は毛の組織更新の不足に対抗することに向けられている。
【0043】
その目的のさらに他に従い、本発明は、Rosa sp.属の植物の少なくとも一つの脱分化した植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を活性剤として含む化粧料組成物に関し、該脱分化植物細胞が、少なくともNH
4NO
3; KNO
3; CaCl
2.2H
2O; MgSO
4; KH
2PO
4; MnSO
4.4H
2O; ZnSO
4.7H
2O; Na
2MoO
4.2H
2O; CuSO
4.5H
2O; FeSO
4.7H
2O; ミオ-イノシトール; ニコチン酸; ピリドキシンHCl; チアミンHCl; 及びスクロース; 及び、任意的に、カイネチン、KI、Na
2EDTA.2H
2O、及び/又はナフタレン酢酸を含む培養培地中に培養にRosa sp.属の植物の細胞を置くことにより得られる。
【0044】
その主題の他に従い、本発明は、Lancomeバラから得られる少なくとも一つの脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を活性剤として含む化粧料組成物に関する。
【0045】
その主題の他に従い、本発明は、老化した皮膚又は老化した毛をケアする為の化粧的方法であって、Rosa sp.属の植物の少なくとも一つの脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を活性剤としてそれが必要な個体に投与することからなる少なくとも一つの工程を含む前記化粧的方法に関する。
【0046】
さらなる実施態様に従い、Rosa sp.属の植物の脱分化した細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、本発明に従い、経口的に又は局所的に投与されうる。一つの好ましい実施態様に従い、本発明は局所的に用いられる。
【0047】
本発明の一つの利点に従い、本発明の活性剤は、毛包の真皮細胞を刺激することを可能にする。
【0048】
有利にはやはり、本発明の活性剤は、皮膚又は毛の幹細胞又は前駆細胞の自己再生を刺激すること、及び、皮膚及び毛、特には老化した皮膚及び毛に関する有益な効果を発揮するためのそれらの機能性を改善することを可能にする。
【0049】
他の利点に従い、本発明の活性剤は、皮膚及び毛の幹細胞のリザーバーの生物学的機能を保存し又は回復さえすることを可能にする。
【0050】
脱分化した植物細胞及び同物を得る方法
【0051】
本発明の目的の為に、語「脱分化植物細胞」は、Rosa sp.属のバラ(rosebush)の組織から得られ及び特定のインビトロ条件によって得られる任意の細胞株であって、もはや分化特徴を示さず、及び、誘導の影響下で、そのゲノムに従う任意の分化をすることができ、及び、それ自体により、それが由来する植物の植物全体を作ることができる前記細胞株を意味することが意図される。そのような細胞は、それら自体で生存することができ、及び、他の細胞との依存関係にない。
【0052】
該脱分化植物細胞は、植物において自然に存在する未分化植物細胞と異なる。
【0053】
本発明の目的のために、語「脱分化植物細胞」は、インビトロ培養又はインビボ栽培において得られ、Lancomeバラ(Lancome rosebush)の組織から得られ、分化することができ、及び/又は、任意の細胞タイプ(全能性)若しくはいくつかの細胞タイプ(多能性)への誘導の影響下で分化した細胞、特には胚形成細胞又は分裂組織的細胞、の新たな特徴を獲得することができる株を意味することが意図される。
【0054】
通常の条件下で、植物細胞は、それらのゲノムの約20%を発現し、残りの80%は、特定の環境条件への応答においてだけ発現される。特定の培養条件下でのこれらの細胞のインビトロ培養が、該細胞を「リプログラム」すること、及び、すなわち、植物全体において発現されないこのゲノムの一部にアクセスすることを可能にする。植物からの抽出により得ることが困難ないくつかの化合物が、細胞培養においてより入手可能になる。
【0055】
すなわち、有利には、本発明の脱分化植物細胞は、植物全体において存在しない新規化合物にアクセスすること、又は、既知であるが植物全体において稀である分子の発現を有意に増加することを可能にする。
【0056】
本発明の脱分化植物細胞は、Rosa sp.属の任意の植物から得られうる。これらの細胞は、植物全体から又は植物の部分から得られる植物材料から得られ、例えばインビボで栽培された又はインビトロで培養された葉、茎、花、花弁、萼片、又は根から得られる植物材料から得られうる。
【0057】
語「インビボ栽培」は、慣用のタイプの任意の栽培、すなわち野外での若しくは温室での土壌における栽培、又は土壌外での栽培を意味することが意図される。
【0058】
語「インビトロ培養」は、植物又は植物部分を人工的に得るための、当技術分野の当業者に既知の技術の全てを意味することが意図される。植物細胞のインビトロ増殖の間の物理化学的条件によって課される選択圧は、インビボで栽培された植物と対照的に、一年を通して利用可能である標準化された植物材料を得ることを可能にする。
【0059】
優先的には、本発明に従い、インビボ栽培から得られた植物が用いられる。
【0060】
好ましくは、本発明の脱分化植物細胞は、Rosa sp.属の植物の少なくとも一つの葉から得られる。
【0061】
Rosa属は、200超の種を含み、そのうち、Rosa alba、Rosa alpina、Rosa canina、Rosa cinnamonea、Rosa gallica、Rosa repens、Rosa rubrifolia、Rosa rubiginosa、Rosa sempervirens、Rosa spinosissima、Rosa stylosa、Rosa tomentosa、又はRosa villosaが言及されうる。
【0062】
より好ましくは、本発明の脱分化植物細胞は、Lancomeバラから、より特にはLancome delboip Roseと呼ばれるバラから得られる。そのようなバラは、例えばDELBARD社(フランス)から、市販入手可能である。
【0063】
最も好ましくは、本発明に従う脱分化植物細胞は、出発物として、Lancome delboipバラの葉又は該葉から得られた細胞を用いて得られる。
【0064】
Lancomeバラは、ハイブリッド・ティー(tea hybrid)であり、その雌の祖先は、品種Dr. Albert Schweitzer × [Michele Meilland × Bayadere]の交配により得られたハイブリッドであり、及び、品種Melmetにより授粉された。
【0065】
選択された培養方法によって及び、特には、選択された培養培地によって、一つの同じ植物から、異なる特徴を有する脱分化植物細胞を得ることが可能である。
【0066】
一つの好ましい実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞は、Lancomeバラの葉から得られる植物材料から得られる。
【0067】
一つの優先的な実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞を得る為に適した培養培地は、植物中に天然に存在するホルモンを含む。
【0068】
一つの優先的な実施態様に従い、Lancomeバラの脱分化細胞は、以下の工程を含む方法により得られる:
a) Lancome roseの葉又は該葉から得られた細胞を用意すること、
b) 工程a)において用意された葉又は細胞を、少なくとも一つの植物ホルモンの存在下で培養して、脱分化した細胞を作ること、そして、
c) 工程b)の終わりで得られた該脱分化した細胞を回収すること。
【0069】
工程a)において、「葉」は、葉全体及び葉の断片を包含する。工程a)において、葉から得られた該細胞は、当技術分野の当業者によく知られた任意の技術に従い得られうる。
【0070】
優先的には、該葉又は葉から得られた細胞は、無菌の(いずれの生物学的汚染もない)形で用意される。
【0071】
該方法の工程b)において、該葉又は該葉から得られた細胞が、少なくとも一つの植物ホルモンを含む適切な培養培地で培養される。いくつかの実施態様において、該培養培地は、複数の植物ホルモン、例えば2又は3の植物ホルモンを含む。
【0072】
優先的には、該培養培地は、少なくとも一つのホルモンを含み、完全に好ましくは少なくとも一つの植物ホルモンを含む。該植物ホルモンは、特にはオーキシン、サイトカイニン及びジベレリンを包含する。
【0073】
本発明に極めて特に適したオーキシンは、主に、IAA(インドール-3-酢酸)、IBA(インドール酪酸)、フェニル酢酸及びNAA(ナフタレン酢酸)である。優先的には、2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)が、本発明に適したオーキシンから排除される。というのも、それは非自然的な化合物であるからである。
【0074】
本発明に極めて特に適した、細胞伸長に関与するサイトカイニンは、最も重要には、カイネチン(N-(フラン-2-イルメチル)-7H-プリン-6-アミン; CAS Ref n° 525-79-1)、ゼアチン(2-メチル-4-(7H-プリン-6-イルアミノ)ブト-2-エン-1-オール; CAS Ref n° 1637-39-4)及びベンジルアデニン(N-ベンジル-7H-プリン-6-アミン; CAS Ref n° 1214-39-7)である。
【0075】
ジベレリンは、植物ホルモンすなわちファイトホルモンのファミリーを形成し、これは、100超程度の化合物を包含し、これらの化合物は、それらのオーダー番号GA1、GA2、.../... GA126によりリストされる。種々のジベレリンが、構造的な観点から互いに非常に近い。本発明に特に適したジベレリンは、本質的に、根由来であり、及び、非常に多数の誘導体を含み、この最も重要なものはジベレリン酸(これはジベレリンA3とも呼ばれる)及びジベレリンA1及びA12である。
【0076】
該方法の工程b)において、植物ホルモンは優先的には、インドール-3-酢酸、インドール酪酸、フェニル酢酸、ナフタレン酢酸、カイネチン、ゼアチン、ベンジルアデニン、ジベレリン酸、及びジベレリンA1、A3及びGA3から選ばれる。工程b)において、植物ホルモンの組み合わせ、例えば、ナフタレン酢酸とカイネチンとの組み合わせが用いられうる。
【0077】
一つの実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞を得る為に適した培養培地は、少なくともNH
4NO
3; KNO
3; CaCl
2.2H
2O; MgSO
4; KH
2PO
4; MnSO
4.4H
2O; ZnSO
4.7H
2O; Na
2MoO
4.2H
2O; CuSO
4.5H
2O; FeSO
4.7H
2O; ミオ-イノシトール; ニコチン酸; ピリドキシンHCl; チアミンHCl; 及びスクロース; 及び任意的に、KI; カイネチン, Na
2EDTA.2H
2O, 及び/又はナフタレン酢酸を含む。
【0078】
他の実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞を得る為に適した培養培地は、少なくともNH
4NO
3; KNO
3; CaCl
2.2H
2O; MgSO
4; KH
2PO
4; MnSO
4.4H
2O; ZnSO
4.7H
2O; KI; Na
2MoO
4.2H
2O; CuSO
4.5H
2O; Na
2EDTA.2H
2O; FeSO
4.7H
2O; ミオ-イノシトール; ニコチン酸; ピリドキシンHCl; チアミンHCl; ナフタレン酢酸; カイネチン; 及びスクロースを含む。
【0079】
有利には、培養培地は、1200〜2000mg/lのNH
4NO
3; 1500〜2100mg/lのKNO
3; 300〜500mg/lのCaCl
2.2H
2O; 150〜200mg/lのMgSO
4; 153〜187mg/lのKH
2PO
4; 10〜30mg/lのMnSO
4.4H
2O; 5〜10mg/lのZnSO
4.7H
2O; 0〜0.91mg/lのKI; 0〜0.30mg/lのNa
2MoO
4.2H
2O; 0.01〜0.05mg/lのCuSO
4.5H
2O; 10.5〜50mg/lのNa
2EDTA.2H
2O; 10〜30mg/lのFeSO4.7H
2O; 70〜150mg/lのミオ-イノシトール; 0.3〜0.6mg/lのニコチン酸; 0.4〜0.6mg/lのピリドキシン; 0.08〜0.15mg/lのチアミン; 0〜11mg/lのナフタレン酢酸; 0〜0.066mg/lのカイネチン; 及び10〜35g/lのスクロースを含みうる。
【0080】
工程b)における培養は、有利には、24〜30℃、好ましくは26〜27℃の温度で行われる。
【0081】
工程b)における培養は、有利には、約10%のO
2分圧を含む雰囲気において行われる。
【0082】
該方法は、優先的には、6〜10日間バッチ式で行われる。
【0083】
該方法は、フェッドバッチ発酵又は連続式発酵技術に従い行われうる。
【0084】
適切な培地における培養後、本発明の該脱分化植物細胞は、工程c)において、例えばろ過により、回収され、そして、凍結乾燥され又は抽出プロセスに付されうる。
【0085】
一つの特定の実施態様に従い、培養工程b)は、6〜14日、優先的には6〜10日の期間行われる。
【0086】
本発明はまた、Lancomeバラの脱分化細胞、特にはLancome delboipバラのこれら脱分化細胞に関し、該脱分化細胞は、実施例を含む本願明細書において詳述された方法により得られる。
【0087】
本発明者らは、本発明に従う方法が、Lancomeバラの脱分化細胞の細胞株を得ることを可能にすることを発見し、該細胞株における該細胞が、脱分化細胞の形で非常に長期間にわたって又は無期限にさえ、それらの形態学における検出可能な変化無く、且つ、それらの特性における検出可能な変化無く、特にはそれらの皮膚再生特性の検出可能な変化無く、培養されることが可能である。
【0088】
本発明に従うLancomeバラ脱分化細胞の細胞株は、特には以下の特徴によって特徴づけられる:
- 稀な分離された細胞(<5%)のサイズが、10〜30μmの直径を超えない、
- 非常に優勢な細胞集合物が、50〜300μmの直径を有する、
- 細胞は、球形の形態を有し、及び、色が白い、
- 他のバラ細胞株と比較して、培養物は、非常に少ない細胞デブリを含み、及び該集合物が非常に均質であり約100ミクロンの平均直径を有する、
- 該Lancomeバラ脱分化細胞培養物は特定のにおいを示さない。
【0089】
本発明はまた、本出願人によって分離され且つ、ブタペスト条約に従い2012年7月4日に、参照番号2-6307下で、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen (DSMZ) [German Collection of Microorganisms and Cell Cultures]に寄託された細胞株にも関する。
【0090】
有利には、本発明に従い、新鮮に又は凍結乾燥された脱分化植物細胞、又はそれらの抽出物、又はそれらを安定化する組成物中に処方されたものが用いられうる。
【0091】
該凍結乾燥された脱分化植物細胞は、水で再抽出されうる。該脱分化植物細胞の凍結乾燥は有利には、該活性剤を、バイオポリマーフィラー、例えば細胞壁多糖類から分離することを可能にする。
【0092】
いくつかの実施態様において、該脱分化細胞は凍結乾燥され、そして次に、再懸濁される。得られた該懸濁物中に存在しうる細胞デブリは、例えばシリンジを通過させそして次に遠心により、除去される。該細胞デブリを除去された該懸濁物が、本発明に従う脱分化植物細胞から得られた活性剤として用いられうる。
【0093】
本発明の一つの実施態様に従い、脱分化植物細胞の抽出物が用いられうる。本発明は必然的に、老化した皮膚及び老化した毛に対して得られるべき効果の観点から、該脱分化した植物細胞の活性抽出物に関する。本発明の抽出物の活性は、特には、本明細書内以下で示された実施例に詳述された種々の実験プロトコルにより評価されうる。
【0094】
当技術分野の当業者に既知の任意の抽出方法が、本発明に従う脱分化植物細胞の抽出物を調製する為に用いられうる。
【0095】
本発明に適した抽出物として、水性抽出物、アルコール性抽出物、又は有機溶媒を用いた抽出物が言及されうる。
【0096】
語「水性溶媒」は、水によって全体的に又は部分的に構成された任意の溶媒を意味することが意図される。すなわち、水それ自体、任意の割合にある水性−アルコール溶媒、又は、任意の割合にある水とプロピレングリコールなどの化合物とから構成された溶媒が言及されうる。該アルコール性溶媒のうち、特にはエタノールが言及されうる。
【0097】
本発明に適した抽出方法は、例えば冷たい水性溶液中で、該脱分化植物細胞をすりつぶす第一工程、次に、該第一工程から得られた該水性溶液から懸濁中の粒子を除去する第二工程、及び、該第二工程から得られた該水性溶液を殺菌する第三工程を含みうる。この水性溶液が抽出物に相当する。
【0098】
次に、得られた該抽出物が、任意の慣用の凍結乾燥方法によって凍結乾燥されうる。このようにして粉末が得られ、これが、直接に用いられ、又は使用の前に適切な溶媒中に混合されうる。
【0099】
本発明の該脱分化植物細胞は、凍結乾燥物の形でも用いられうる。そのような凍結乾燥物は、当技術分野の当業者に既知の任意の凍結乾燥方法により得られうる。
【0100】
原理的に、凍結乾燥は、液状、ペースト状、又は固形の産物から、冷及び真空の組み合わせ作用によって、水を除去することからなる。水が非常に低圧で固体状態で加熱される場合、水は昇華し、すなわちそれは、固体状態から気体状態へと直接にすすむ。該水蒸気(又は任意の他の溶媒の蒸気)は、該産物をはなれ、そして、それは、コンデンサー又はトラップを用いたフリージングによって捕えられる。この技術は、処理された産物の体積及び外観の両方を保存することを可能にする。それは、自然に(山での乾燥)又はより迅速には、フリーズドライヤーにおいて行われうる。
【0101】
凍結乾燥は一般に、3つの工程を含む:凍結、昇華及び第二の乾燥。
【0102】
凍結は、非常に迅速に、物質を-20℃〜-80℃の温度にすることからなり、その結果、水を、それが液体状態であったところで、氷の形で水をブロックし、このようにして、該細胞の溶解が回避される。
【0103】
昇華は、「遊離」水を除去することからなる。約100μbarの減圧下で(しかしこれは産物によって非常に大きく異なり得る)、熱が該産物に供給され;該氷が昇華を受ける。該産物及び該製造のニーズによって、温度がサイクルの間に変えられうる。水蒸気が、「トラップ」又は「コンデンサー」によって捉えられ、及び、該産物の脱水が連続的に進行する。水の大部分が昇華を受けた場合、該産物はその水の約80%〜90%を失っている。
【0104】
乾燥は、該産物からとらえられた水を除去することからなる。この工程において、該減圧は高く、最大で約5μbarである。この段階で、該産物は95%乾燥している。
【0105】
例えば、制御された多孔度(約80μm)を有する布上でのろ過により培養培地から細胞を回収した後、該細胞が低い温度で、好ましくは-20℃〜-80℃で、それらを損傷できる大きな氷結晶の形成を回避することを可能にする条件下で、凍結される。該凍結された細胞は、次に、5〜500μbarの減圧、好ましくは100μbarの減圧で、該氷の昇華の工程に付される。
【0106】
上記で示された通り、本発明のフリーズドライされた植物細胞は、使用の前に再水和されうる。
【0107】
驚くべきことに、本出願人は、本発明に従う脱分化したLancomeバラ細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物の皮膚再生に対する効果が、脱分化していないバラ細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物により観察されるものと有意に異なることを示した。
【0108】
特に、本出願人は、脱分化したLancomeバラ細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物の皮膚再生に対する効果が、脱分化ししていないLancomeバラ細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物により観察されるものと異なることを示した。
【0109】
また、驚くべきことに、本出願人は、Lancomeバラ脱分化細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物が、ヒト皮膚細胞による遺伝子発現のプロファイルに対する特定の影響を示すことを示した。本発明者らは、Lancomeバラ脱分化細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物が、他の品種のバラの脱分化細胞(又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物)によって及びまた脱分化していないLancomeバラ細胞(又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物)により誘発される皮膚細胞による遺伝子発現に対する影響と比較して、ヒト皮膚細胞による遺伝子発現に対する特定の影響を示すことを示した。
【0111】
語「老化した皮膚」は、経時的老化及び/又は光により誘発された老化から結果する皮膚の一般的な審美的状況を意味することが意図される。
【0112】
より特には、本発明は、皮膚老化の徴候を防ぎ及び/又は減少し及び/又は処置することに向けられる。
【0113】
表現「皮膚老化の徴候」は、経時的な起源のもの及び/又は光により誘発された起源のものである老化に起因する皮膚の表面的な外観の変化のいずれかを意味することが意図される。
【0114】
本発明において考慮されるこの変化の例として、非常には均一でなく及びより滑らかでない表面、薄化した及び/又はバリア機能の点でより有効でない(これは攻撃の次により早くなく修復する)表皮、しわ及び小じわ、しなびた皮膚、皮膚の弾力性及び/又は緊張性の欠如、真皮の薄化及び/又はコラーゲン繊維の減成(これはたるんだ及びしわの皮膚の外観をもたらす)が言及されることができる。
【0115】
該表現はまた、変化された表面外観により体系的には反映されない皮膚の内部的変化の全て、例えば皮膚の内部減成のすべて、及びより特には、紫外線放射への曝露に続いて起こるエラスチン線維すなわち伸縮性線維の減成を意味することが意図される。
【0116】
特には、本発明により標的とされる皮膚老化の徴候は、皮膚の薄化、皮膚の堅実さの喪失(a loss of firmness)、弾力性の喪失、密度の喪失又は緊張性の喪失、皮膚の乾燥、皮膚の表面外観の変化、皮膚の目立つ微起伏の外観、荒れの外観、小じわ及び/又はしわの形成及び/又は存在、皮膚の色の明るさの変化、皮膚のしなびた外観、皮膚のにおいの変化、皮膚のたるみ、又は皮膚のしぼみから選ばれる。
【0117】
好ましくは、本発明により標的とされる皮膚老化の徴候は、皮膚の薄化、皮膚の目立つ微起伏の外観、小じわ及び/又はしわの形成及び/又は存在、皮膚のたるみ、及び皮膚のしぼみから選ばれる。
【0118】
より好ましくは、本発明により標的とされる皮膚老化の徴候は、皮膚の目立つ微起伏の外観、小じわ及び/又はしわの形成及び/又は存在、皮膚のたるみ、及び皮膚のしぼみから選ばれる。
【0120】
年齢とともに現れる毛の質の変化は、特には、繊維の外観における変化(細く、活力のない、弱い毛であって、支えがない)、明るさがなく、及び/又は白髪化、よりたやすく壊れやすい、及び髪の密度の喪失からなる。
【0121】
本発明はすなわち、良い毛の密度を回復/維持すること、及び/又は、頭髪及び/又は毛繊維、特には老化した毛、の質を改善することに向けられる。より特には、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物が、若く及び密度のある外観を毛に与える為に、毛密度の喪失を防ぐこと、及び、老化した毛の質を保護し、強化し又は改善することを可能にする。
【0122】
一つの実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、細く、活力のない、こわれやすい、弱い毛であって、保持力がなく、明るさがなく、及び/又は白髪の髪の形成を防ぎ及び/又は制限するのに特に適している。
【0123】
他の実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物はまた、ケラチン繊維の質を、特には輝きのある及び/又は厚い及び/又は生き生きとした毛の成長を促進することにより、改善するのにも適している。
【0124】
他の実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、枝毛を防ぎ及び/又は処置する為、消費者により感じられる柔らかさの改善の為、又は繊維の活力、頭髪の量及びその輝きの改善の為に有用である。
【0125】
他の実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、毛繊維、より特には髪の部分的又は全体の喪失を防ぎ及び/又は処置する為に適している。さらに好ましくは、本発明は、脱毛症の予防及び/又は処置に適している。
【0126】
脱毛症は、より特には、個体における毛の部分的又は全体的な喪失により反映される。脱毛症状態を患う個体は、特には、びまん性脱毛症の犠牲者であり、例えばアンドロゲン(男性ホルモン)の過剰に起因する、アンドロゲン性脱毛症又は脂漏性脱毛症又は一般的なはげでありうる。この種類の脱毛症において、主に男性において、頭の頂部(頭頂)を構成する領域において、毛生産サイクルがときどき時期尚早に停止することが注目され、この現象は、頭の周囲の領域について、特には首のうなじの領域について観察されない。
【0127】
他の実施態様に従い、該脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、髪の白化、好ましくは白髪症を防ぐ及び/又は処置するのに極めて特に適している。
【0128】
白髪症は、毛の自然の白化に相当し、これは、年齢とともに、又は、酸化ストレスに続いて現れる。より特には、白毛症は、毛のメラノサイトの特定の及び徐々の増加した欠乏に関連し、毛球のメラノサイト及びメラノサイト前駆細胞の両方に影響する。
【0129】
有利には、本発明は、髪及び/又は体毛の白化又は灰色化を防ぎ、制限し及び/又は減少することを可能にする。特には、該脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物が、白毛症の発展及び/又は進行を防ぎ、制限し及び/又は停止することについて有用でありうる。
【0130】
該脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物はまた、頭髪の合計における白髪の数の増加を防ぎ及び/又は制限し及び/又は遅くする為に、及び/又は、毛の合計数に対する白い毛の百分率を減少し又は維持する為に用いられうる。
【0131】
一つの特定の実施態様に従い、本発明は、毛の天然の着色を維持することにも向けられる。
【0133】
本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、化粧的又は医薬的な使用に適した任意の組成物中に処方されうる。
【0134】
本発明に従う組成物は、生理学的又は医薬的に許容可能な媒体を含む。
【0135】
適切な媒体における培養後、本発明の該脱分化植物細胞は、ろ過により回収され、そして、凍結乾燥され又は抽出され又は溶液中に置かれうる。
【0136】
有利には、本発明の該脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、水若しくは水溶性有機溶媒又はそれらの混合物中の溶液において処方され又は置かれうる。
【0137】
本発明に適した水溶性有機溶媒は、2〜6ヒドロキシル基、好ましくは3〜5のヒドロキシル基を含むC
2〜C
8、好ましくはC
3〜C
6の炭化水素に基づく化合物及びそれらの混合物から選ばれうる。
【0138】
本発明に適した水溶性有機溶媒のうち、2〜8の炭素原子を含むグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又は1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、及びそれらの混合物、が言及されうる。好ましくは、プロピレングリコール又は1,3-プロパンジオールが、本発明に極めて特に適している。
【0139】
水溶性有機溶媒は、それを含む組成物の20重量%〜100重量%、好ましくはそれを含む組成物の30重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜80重量%、より好ましくは50重量%〜70重量%を構成しうる。
【0140】
本発明に適した水は、特にはVittel水、Vichy盆地からの水、及びla Roche Posay水から選ばれる、湧き水及び/又はミネラルウォーターでありうる。
【0141】
該水は、それを含む組成物の20重量%〜100重量%、好ましくはそれを含む組成物の30重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜80重量%、より好ましくは50重量%〜70重量%を構成しうる。有利には、該水は、それを含む組成物の50重量%までを構成する。
【0142】
一つの実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を含む調製物は、少なくとも一つの親水性ゲル化剤を含みうる。そのような剤は、該細胞の沈降を回避し又は減少することを可能にする。
【0143】
本発明に適した親水性ゲル化剤は、ポリサッカライドポリマー及びそれらの混合物から選ばれうる。
【0144】
本発明の目的のために、語「ポリサッカライドポリマー」は、多くの要素糖、例えばキシロース、グルコース、ガラクトース、ラムノース、マンノース、フコース、及びアラビノース、及びそれらのめいめいの酸、の結合によって形成された任意の炭水化物分子を意味することが意図される。本発明に従う該ポリサッカライドポリマーは好ましくは、10〜250kDaの分子量を有するポリマーから選ばれる。本発明に適したポリサッカライドポリマーとして、特には、ペクチン; グアーガム; セルロース; デキストリン; マルトデキストリン; スターチ; タラガム; ロカストビーンガム; イヌリン; アカシアガム; アラビアガム; フコースに富むポリマー、例えばFucogel; カラギーナン; コンニャクガム; キサンタンガム; デキストラン; キトサン; トラガカントガム; ghattiガム; カラヤガム; tamarinガム; アガー; アルギネート; ゲランガム; 及びそれらの混合物が特に言及されうる。好ましくは、キサンタンガム、ロカストビーンガム、グアーガム、ゲランガム、アガー、アルギネート及びそれらの混合物が使用される。
【0145】
一つの好ましい実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を含む調製物は、キサンタンガムを含みうる。
【0146】
ゲル化剤は、該組成物の合計重量に対して、ポリサッカライドの重量に基づき0.01%〜10%、好ましくは0.1%〜5%の割合で存在しうる。
【0147】
他の実施態様に従い、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を含む調製物は、少なくとも一つの糖を含みうる。
【0148】
本発明に適した糖は、C
4〜C
6単糖であってよく、特には、イノシトール、マンニトール、グルコース、スクロース、トレハロース、マルトース、キシリトール、及びフルクトース並びにそれらの混合物から選ばれうる。
【0149】
本発明の組成物中の糖含有割合は、該組成物の合計重量に対して、1重量%〜80重量%、例えば5重量%〜75重量%、特には10重量%〜70重量%でありうる。
【0150】
一つの好ましい実施態様に従い、本発明の該脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、水、1,3-プロパンジオール、及び/又はキサンタンガムの存在下において処方されうる。.
【0151】
Rosa sp.の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を用いる為に用いられる処方がなんであれ、それらは必ず、有効量において用いられる。
【0152】
有効量は、本発明の考慮下の指示の観点から望ましい効果を得る為に要求される量である。
【0153】
この量はもちろん、種々のパラメータ、例えば所望の効果、又は、処置されるべき個体の齢、体重、身長、若しくはタイプ、及び投与経路に依存し、それゆえに、大きな程度で変わり得る。この量は、当技術分野の当業者に既知の任意の方法により決定されうる。
【0154】
指標を与える為に、本発明の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、それらを含む組成物の合計重量に対して、乾燥物質の重量に基づき0.01%〜30%を表す量で用いられ、優先的には該組成物の合計重量に対して、乾燥物質の重量に基づき0.1%〜50%を表す量で用いられうる。
【0155】
本発明のRosa sp.の脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物は、任意の化粧料組成物において、特には皮膚、毛、爪又は粘膜へ(経口の、頬の、歯肉の、生殖器の、結膜の)摂取、注入又は施与されることが意図された任意の化粧料組成物中に処方されうる。選択された投与様式によって、本発明の組成物は、通常用いられる任意のガレヌス形態にありうる。
【0156】
皮膚への局所的施与の為に、組成物は、特には水性又は油性の溶液、ローション若しくはセラムタイプの分散物、ミルクタイプの液状若しくは半液状粘稠性のエマルジョン(水性相中の脂肪相(O/W)の分散又は反対(W/O)の分散により得られる)、柔らかい粘稠性の懸濁物又はエマルジョン、水性若しくは無水のゲル若しくはクリームタイプ、又はマイクロカプセル若しくはマイクロ粒子、又はイオン性及び/又は非イオン性タイプの小胞分散物の形にありうる。これらの組成物は、通常の方法に従い調製される。
【0157】
これらの組成物は、顔、手、足、主な解剖学的しわ、又は体のためのクレンジングクリーム、保護クリーム、処置クリーム又はケアクリーム(例えば、デイクリーム、ナイトクリーム、メイク除去クリーム、ファンデーションクリーム又は抗日光クリーム)、流体状ファンデーション、メイク除去ミルク、保護ミルク若しくはケアボディミルク、抗日光ミルク、スキンケアローション、ゲル又はフォーム、例えばクレンジングローション、抗日光ローション、人工日焼けローション、バス組成物、殺バクテリア剤含有デオドラント組成物、アフターシェイブゲル若しくはローション、又は毛除去クリームを構成しうる。これらの組成物はまた、せっけん又はクレンジングバーを構成する固形調製物からなってよく、又は、圧縮された噴射剤も含むエアロゾル組成物の形においてパッケージングされうる。
【0158】
毛へ施与されることが意図された組成物は、水性、アルコール性、又は水性−アルコール性の溶液の形にあってよく、又は、クリーム、ゲル、エマルジョン若しくはムースの形にあってよく、又は、圧縮された噴射剤も含むエアロゾル組成物の形にあってよい。そのような組成物は、ヘアケア組成物、例えばシャンプー、ヘアセッティングローション、処置ローション、ヘアスタイリングゲル若しくはクリーム、ダイ(特には酸化ダイ)組成物、カラーリングシャンプー、リストラクチャリングローション、パーマネントウェービング組成物(特にはパーマネントウェーブの第一の工程のための組成物)、抗毛損失ゲル若しくはローションなど、の形にありうる。
【0159】
皮下又は皮内投与のために、組成物は、水性若しくは油性のローションの形又はセラムの形にありうる。
【0160】
摂取に適した組成物は、カプセル、顆粒、シロップ又はタブレットの形にありうる。
【0161】
本発明に従う組成物の種々の構成要素の量は、考慮下の分野において慣用的に用いられるものである。
【0162】
組成物がエマルジョンである場合、脂肪相の割合は、該組成物の合計重量に対して、5重量%〜80重量%、好ましくは5重量%〜50重量%でありうる。エマルジョンの形にある組成物において用いられるオイル、ワックス、乳化剤及び共乳化剤(coemulsifiers)は、化粧料分野において慣用的に用いられるものから選ばれる。該乳化剤及び該共乳化剤は、組成物中に、該組成物の合計重量に対して0.3重量%〜30重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%の割合で存在しうる。
【0163】
組成物が油性溶液又はゲルである場合、脂肪相は、該組成物の合計重量の90%超を表しうる。
【0164】
既知の様式で、本発明の化粧料組成物は、化粧料分野において慣用のアジュバント、例えば親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性添加物、保存料、抗酸化剤、溶媒、フレグランス;フィラー、スクリーニング剤、におい吸収剤及び着色剤など、も含みうる。これらの種々のアジュバントの量は、化粧料分野において慣用的に用いられるものであり、例えば、化粧料の合計重量の0.01%〜10%である。それらの性質によって、これらの剤は、脂肪相中に、水性相中に及び/又は脂質小球中に導入されうる。
【0165】
本発明において用いられうるオイル又はワックスとして、鉱油(液状ワセリン)、植物オイル(シアバターの液状画分、ヒマワリオイル)、動物オイル(パーヒドロスクアレン)、合成オイル(purcellinオイル)、シリコーンオイル又はワックス(シクロメチコン)、及びフッ素オイル(パーフルオロポリエーテル)、ビーズワックス、カルナウバワックス又はパラフィンワックスが言及されうる。脂肪アルコール及び脂肪酸(ステアリン酸)がこれらのオイルに添加されうる。
【0166】
本発明において用いられうる乳化剤として、例えばグリセリルステアレート、ポリソルベート60、及び、Gattefosse社によりTefose(商標) 63の名称で販売されるPEG-6/PEG-32/グリコールステアレートの混合物が言及されうる。
【0167】
本発明において用いられうる溶媒として、低級アルコール、特にはエタノール及びイソプロパノール、及びプロピレングリコールが言及されうる。
【0168】
本発明において用いられうる親水性ゲル化剤として、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリルコポリマー、例えばアクリレート/アルキルアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリサッカライド、例えばヒドロキシプロピルセルロース、天然ガム、好ましくはキサンタン、及びクレイが言及されることができ、及び、親油性ゲル化剤として、改質されたクレイ、例えばベントン、脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸アルミニウム及び疎水性シリカ、エチルセルロース及びポリエチレンが言及されることができる。
【0170】
その局面の他に従い、本発明は、老化した皮膚又は老化した毛をケアする為の化粧的方法に関し、該方法は、Rosa sp.属の植物の少なくとも一つの脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を活性剤として同物が必要な個体に投与することからなる少なくとも一つの工程を含む。そのような方法は、特には、上記で定義されたとおりの化粧料組成物をこの組成物の使用の為の通常の技術に従い投与することにより行われうる。
【0171】
一つの実施態様に従い、本発明は、老化した皮膚又は老化した毛の組織更新の不足に続く審美的欠陥を、それが必要な個体において処置し及び/又は防ぐ為の化粧的方法であって、該個体に、Rosa sp.属の植物の少なくとも一つの脱分化植物細胞又は該細胞の抽出物若しくは凍結乾燥物を活性剤として投与する少なくとも一つの工程を含む前記方法に関する。
【0172】
本発明に従う方法は、老化した皮膚又は老化した毛の組織再生の不足に続く審美的欠陥の減少又は消失さえを観察することからなる工程を含みうる。
【0173】
有利には、本発明の方法の実施は、皮膚及び/又は頭髪の若い外観を強化し、改善し又は回復さえすることを可能にする。
【0174】
本発明に従う化粧的方法は特には、上記で定義されたとおりの化粧料組成物の経口的又は局所的な、好ましくは局所的な、投与により行われうる。
【0175】
本発明の方法は、毎日、例えば、1日当たり単回投与又は1日当たり2回の1投与、例えば朝に1回及び夕に1回、で行われうる。
【0176】
本発明に従う化粧的方法は、例えばゲル、ローション、クリーム、フォーム、ゲルカプセル、糖により被覆されたタブレット、エマルジョン、タブレット、カプセル又は経口バイアルの形で処方された組成物を、それらの形によって、適切な量及び数で、毎日投与することによって例えば行われうる。
【0177】
本発明の活性剤の有効量は、1日当たりの単回投与量で、又は、1日わたって分割された投与量で、例えば1日当たり2〜3回で、投与されうる。
【0178】
本発明に従う方法は有利には、単回投与を含みうる。
【0179】
本発明に従う化粧的方法は、1週〜数週の期間、又は数か月の期間にわたって行われてよく、この期間はさらに、処置なしの期間後に、数か月間又は数年間さえ繰り返されうる。
【0180】
例として、本発明に従う活性剤の投与は、例えば1日当たり2〜3回繰り返され、及び、一般には、少なくとも4週の延長された期間にわたって、又は4〜15週の延長された期間にわたってさえ繰り返されてよく、必要に応じて、1又はそれより多くの中断期間を伴う。
【0181】
明細書及び以下の実施例において、他に示されない限り、百分率は重量%であり、及び、「…〜…」の形で記載された値の範囲は、特定された上限及び下限を含む。成分は、形成される前に、当技術分野の当業者により容易に決定される順番及び条件下で混合される。
【0182】
本明細書内以下の実施例は、本発明の分野における非限定的な説明として提示される。
【実施例】
【0183】
実施例1
植物組織を用いたバラ(Lancome Rose)脱分化植物細胞の培養
【0184】
バラ(Lancome Rose)の葉が、当技術分野の当業者の通常の技術によって除染され、そして、以下の培養培地上に置かれた:
【0185】
【0186】
用いられたホルモンは、植物に天然に存在するホルモンである。
【0187】
逐次の継代培養後、培養器で培養されることができそしてそれ故に産業可能な脱分化植物細胞が得られた。バイオリアクター中での培養の制御の為に用いられたパラメータは、以下のとおりである。
T°: 24℃〜30℃、理想的には26〜27℃
エアレーション: pO
2 10%、滅菌空気の侵入及び/又は細胞に対するせん断応力を回避しながらの撹拌により制御される。
【0188】
バッチ式の生産が6〜14日続く。次に、細胞が、80μmの多孔度を有する布上でろ過により回収される。
【0189】
得られたLancomeバラ脱分化細胞が、水中で、1,3-プロパンジオール及びキサンタンガムの存在下で、組成物の合計重量に対して、新鮮バイオマスの重量に基づき10%の割合で、処方される。
【0190】
実施例2
Lancomeバラ脱分化細胞の、低い再生能力を有する再構成されたモデルに対する「再生促進」効果の実証
【0191】
a-低い再生能力を有する再構成されたモデルの調製
【0192】
ケラチノサイトが、ヒト皮膚標本から分離された。
【0193】
メスでの皮下組織の除去後、該皮膚標本が、断片に切断され、そして次に、DMEM培養培地(Life Technologies Ltd, スコットランド)中での抗生物質−抗真菌剤処置によって除染された。
【0194】
真皮が表皮から分離されることを可能にする為に、該標本が次に、タンパク質溶解処理(Dispase II)/トリプシン0.25%)に4℃で一晩付された。真皮組織から分離された表皮の断片が、1xトリプシン-EDTA溶液中に20分間37℃で置かれた。該トリプシンの効果が、10%のウシ胎仔血清(FCS)を含む培養培地を添加することにより中和された。細胞懸濁物が、ホモジナイズされ、そして次に、ケラチノサイト培養培地(ケラチノサイト成長培地、KGM) (KGM Bulletキット、BioWhittaker、Clonetics Corp.、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)において洗浄された。該細胞懸濁物が次に、I型コラーゲン(Sigma Chemical Co Ltd、アーバイン、英国)によってあらかじめ被覆された培養フラスコ中に置かれた。15分後、接着しなかったケラチノサイトが、PBSバッファーにおける洗浄によって回収された。このようにして選択された非付着細胞が、基底層の幹細胞及び前駆細胞を枯渇される。
【0195】
このケラチノサイト部分集団が、150000〜450000細胞の割合で、挿入物(insert)中に前もっておかれた真皮支持体の上部上の培養培地(N Fortunel et al (2011). Eur J Dermatol. 21(S2):12-20)中にまかれた。
【0196】
用いられた培養基体は、表皮を含まない失活されたヒト皮膚又はコラーゲン格子内に線維芽細胞を含む生きている皮膚(ストレッチされたモデル、生産Episkin(商標))である。培地は次に、各挿入物の下及び上に添加され、そして、この培地が、2日毎に更新される。5%CO
2でのインキュベーター中の37℃での6〜7日後、試料の上部上の培地が、完全に取り除かれ、そして、挿入物の下部の培地が、トランスフェリン、トリヨードチロニン及びアデニンを欠く以外は下記で言及された同じ培地により、置き換えられた。これが、表皮区画の層形成及び分化を誘発する為に必要な出現フェーズ(emersion phase)を開始する。該試料が、1〜3週間、37℃及び5%CO
2で培養され;培地が、2日毎に更新される。
【0197】
b-脱分化植物細胞による処置
【0198】
実施例1において得られた該バラ脱分化細胞が凍結乾燥され、次に、シリンジにおける逐次的な継代により再懸濁された。細胞デブリが遠心により除去された。該細胞デブリが除去された得られた活性剤が、0.43 mg/ml及び0.043 mg/mlの割合で用いられた。該活性剤が、該真皮支持体がケラチノサイトと一緒にまかれたらすぐに、浸透的に(systemically)(該挿入物の下の培養培地中に)施与された。活性剤の施与が、3、6、8及び10日目に更新された。組織学的分析:
- 表皮の厚さ、
- 一般的構成、
- 層形成、
- 基底層の質等、
が、13日目及び20日目に行われた。
【0199】
対照は、バラ脱分化細胞を欠く培養培地に相当する。
【0200】
図1に示されるとおり、バラ脱分化細胞の存在下において、表皮が厚くなることが観察された。さらに、基底層がより密であり、形態学的質は改善され、及び、正確な分化、すなわち生きている層の層形成及び顆粒層の外見、が観察される。
【0201】
これらの結果は、バラ(Lancome Rose)脱分化細胞を用いて行われた処置の後に、低い再生能力を有する再構成された皮膚のモデルの再生能力の回復を実証し、皮膚を処置する為のそのような成分の使用を裏付ける。
【0202】
実施例3
低い再生能力を有する再構成された皮膚のモデルを、Lancomeバラ脱分化植物細胞によって処置することにより誘発されるケラチノサイト成長因子(KGF)の分泌の滴定
【0203】
実施例2に記載された実験の培養培地が、3、5、7、11、13、17及び20日目に集められた。再構成された皮膚により分泌され及びこれらの培地中に存在するKGFの可溶性量が次に、ELISA (Enzyme-linked immunosorbent assay) (R&D Systems, カタログ番号DKG00)によって分析された。
【0204】
図2に示される通り、KGFの分泌の増加が、対照(未処置)と比較して、特には0.43 mg/mlでのバラ脱分化細胞による処置後13日目で、観察された。
【0205】
この成長因子は線維芽細胞により産生され、及び、それは、ケラチノサイトに対するその分裂促進効果について知られている(Finch PW et al. Science 1989 245:752; Marchese et al./ J Cell Physiol 1990 144:326)。この結果は、該バラ(Lancome Rose)脱分化植物細胞が、線維芽細胞により少なくとも部分的に産生される拡散可能因子の分泌を誘発し、これが、表皮再生に対する有益な効果を有することを示す。それ故に、再生促進性ダイアログ(pro-regenerating dialogue)が、真皮と表皮との間で生成される。
【0206】
実施例4
真皮幹細胞の自己再生に対する有益な効果のインビトロでの実証
【0207】
ヒトバイオプシーから得られた真皮幹細胞の分離
【0208】
真皮区画から得られた幹細胞(SKP)は、それらがFGF2及びEGFの存在下においてインビトロで培養された場合、懸濁物において球形で増殖し及び自己更新する能力を有する。それらは、皮膚及び毛包から、刊行物Nature Protocols (Biernaskie et al. 2006)に記載されたプロトコルに従い分離される。用いられたフィーディング培地は、抗生物質:ペニシリン(Lonza)及びストレプトマイシン(Lonza)、抗真菌剤Fungizone(Invitrogen)、成長因子EGF(BD)及びFGF2(BD)、及び血清置換補助物B27(Invitrogen)を補われたDMEM/F12(Invitrogen)からなる。
【0209】
SKPは、皮膚標本から、特には3の異なるドナー(8歳、10歳、22歳)からの包皮から得られる。フラスコ中の培養での第一継代後、球が、コラーゲナーゼと結合され、そして次に、50%のフィーディング培地及び50%の馴化培地(細胞それら自身によって馴化された)の存在下において個別にされた細胞の形で培養物中に戻される。
【0210】
バラ脱分化細胞の存在下又は不在下における自己再生レベルの評価
【0211】
自己再生のレベルを評価する為に用いられた方法は、細胞の継代の間に用いられるものと同様である。SKPが最初に、コラーゲナーゼにより解離され、その後、(96ウェルプレート中に)ウェル当たり3000細胞の割合でまかれる。該細胞が、前に記載されたとおりに、半分の馴化培地及び半分のフィーディング培地を含む混合物中において培養される。細胞が、37℃(21%のO
2− 5%のCO
2)で培養され、そして、処理が、実施例2において記載されたとおりに得られたLancomeバラ脱分化細胞から得られた活性剤0.43 mg/mlの不在下(対照)又は存在下において行われる。10日の培養後、形成された球が、処理後のこれら細胞の自己再生能力を評価する為に数えられた。
【0212】
結果が本明細書内以下の表Iに与えられる。
【0213】
表I:10日目でのウェル当り、条件当り、及びバイオプシー当りの球の平均数(4つのウェルの平均)
【0214】
対照(−処理)と比較して、該バラ脱分化細胞から得られた活性剤による処理後(+処理)に、真皮幹細胞の自己再生が有意に増加された。
【0215】
この研究は、該バラ脱分化細胞から得られた活性剤による処理が、インビトロで真皮幹細胞の自己更新能力を有意に増加すると結論付けることを可能にする。例えば毛包再生などの生物学的プロセスにおいて、毛幹の形状の制御において、及び皮膚修復において、これらの細胞により果たされる役割の重要性を考慮すると、この結果は、皮膚及び毛の老化の処置の為の技術的解決法としてのこの成分の利点を強調する。
【0216】
実施例5
低い再生能力を有する再構成された皮膚のモデルに対する、バラ脱分化細胞の「再生促進」効果と他の参照「抗老化性」活性剤の効果との比較
【0217】
再構成された皮膚のモデルが実施例2において示されたとおりに調製された。バラ脱分化細胞から得られた活性剤が、実施例2において示されたとおりに調製された。該再構成された皮膚モデルが、0.43 mg/mlの割合での該バラ脱分化細胞から得られた活性剤の不在下(対照−培養培地単独)又は存在下において、又は10 μMの割合でのレチノールの存在下において、12日間処理された。
【0218】
組織学的観察が、実施例2に示された通りに行われた。
【0219】
図3に示される通り、バラ脱分化植物細胞から得られた活性剤の存在下において、表皮が厚くなることが観察された。さらに、基底層はより密であり、形態学的質が改善され、及び、正確な分化(生きている層の層形成、顆粒層の外観)が観察される。
【0220】
他方、レチノールによる処理は、表皮の質を改善せず、分化を阻害さえするようである。