(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765176
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】車落下防護構造
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20200928BHJP
E04H 6/10 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
E04H6/42 Z
E04H6/10 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-196205(P2015-196205)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2017-66817(P2017-66817A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】根上 茂之
(72)【発明者】
【氏名】藤永 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安川 真知子
【審査官】
桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−156210(JP,A)
【文献】
特開2007−107297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/42
E04H 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車の駐車スペースと、前記駐車スペースの車止めの後方に開口部を備えた立体駐車場における車落下防護構造であって、
前記駐車スペースと前記開口部の間に配置したフェンスと、
前記開口部の側面の梁間に横架した鉄骨横架材と、
を備え、
前記鉄骨横架材は複数横架し、前記鉄骨横架材どうしは前記車のトレッドの1/2以下で、タイヤ幅よりも大きい間隔で配置したことを特徴とする車落下防護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自走式立体駐車場における吹き抜けなどの開口部から下方へ車が落下することを防護するための車落下防護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式立体駐車場は、運転者が自ら車を運転して駐車スペースへ移動して駐車する駐車場であり、機械式と比べて短時間かつ利便性良く駐車できるため、ショッピングセンターなどの大型施設に幅広く適用されている。
このような自走式立体駐車場は、駐車台数を多くするため複数階建の構造を採用し、採光(明り取り)又は換気のために吹き抜けとなる開口部を設ける場合がある。
【0003】
運転者のアクセルとブレーキの操縦ミスによって、この開口部から車が落下する事故が発生するおそれがある。
従来、このような立体駐車場では車の落下事故を防護するため、柱間に、鋼製プレートを横架させた車落下防護柵を設けて、柱間から車が外部に落下することを防護している(特許文献1に開示)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5748642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記車落下防護柵を吹き抜けなどの開口部周りに設けることは技術的に可能である。しかし、採光や換気のための小さな吹き抜けなどの開口で、強固な防護柵を設置すると費用がかかるだけではなく、設置スペースが取られてしまい駐車のためのスペースが狭くなる可能性がある。
また、開口部に常時ネットを張るという対処法も考えられるが、通気性や光の透過性が悪くなるという問題が生じるおそれがある。
【0006】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、簡易な構成かつ省スペースで開口部から車の落下を防護できる車落下防護構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための第1の手段として、本発明は、車の駐車スペースと、前記駐車スペースの車止めの後方に開口部を備えた立体駐車場における車落下防護構造であって、前記駐車スペースと前記開口部の間に配置したフェンスと、前記開口部の側面の梁間に横架した鉄骨横架材と、を備え
、
前記鉄骨横架材は複数横架し、前記鉄骨横架材どうしは前記車のトレッドの1/2以下で、タイヤ幅よりも大きい間隔で配置したことを特徴とする車落下防護構造を提供することにある。
【発明の効果】
【0009】
上記のような第1の手段によれば、市販のネットフェンスと、ほとんど加工してない鋼材からなる防護構造を採用することにより、経済性に優れかつ簡易な構成で車の落下を効果的に防止できる。
また駐車場ではネットフェンスを設けるだけなので設置スペースを少なくして駐車のために必要なスペースを確保でき無駄が生じることがない。
【0010】
また、仮に、運転者の誤操作によって車がフェンスをなぎ倒して、車が開口部に落下したときでも、車がフェンスと共に駐車スペースの床面から下方(20〜30cm下)の横架材にひっかかるなどして、落下による車や防護構造の損傷(ダメージ)を抑えることができる。
また落下した車を、クレーン車などを使わずに引き上げることができ、車や防護構造の復旧作業を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】開口部側からの車落下防護構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の車落下防護構造の実施形態について、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0013】
[車落下防護構造10]
図1は本発明の車落下防護構造の側面図である。
図2は本発明の車落下防護構造の平面図である。
図3は開口部側からの車落下防護構造の斜視図である。
本発明の車落下防護構造10は、駐車スペース12に吹き抜けなどの開口部16を備えた自走式立体駐車場を適用対象としている。開口部16は、採光、換気を目的とし、一例として図示のように互いに車の出入口側18が逆方向となる駐車スペース12の間に設けられている。図中の開口部16は、駐車スペース12a,12bの間に挟まれている。駐車スペース12a,12bはいずれも車止め14が開口部16側にあり、車の出入口側18が開口部16から最も離れた位置にある。このような開口部16は、立体駐車場の最下階を除く上階に設けられている。
【0014】
本発明の車落下防護構造10は、フェンス20と、鉄骨横架材30を主な基本構成としている。
フェンス20は、所定強度を備えた汎用性のある網状の柵であり、開口部16周り、換言すると開口部16と車止め14の間の駐車スペース上に取り付けている。具体的なフェンス20の構造は、床面から垂直方向に伸びる支柱を所定間隔で床面に配置し、固定金具を用いて支柱に網状のフェンス本体を取り付けている。
このようなフェンス20によれば、駐車スペース12と開口部16の間を仕切って、運転者が駐車する際に駐車スペース12の後方位置を認識することができる。また、駐車スペース12から開口部16への人の立ち入りを制限できる。
【0015】
鉄骨横架材30は、開口部16の側面の梁17間に横架する形鋼である。本発明の鉄骨横架材30は、開口部16の側面の梁17間に所定間隔で複数横架している。鉄骨横架材30と梁17の接続は、駐車スペース12の床面から下方(数十cm)の梁17間に締結ボルトなどの締結手段を用いている。鉄骨横架材30どうしの所定間隔は、開口部16から下方へ車が落下しない間隔であれば良い。また鉄骨横架材30は、1本で少なくとも車(普通乗用車)の重量に耐えうる強度を備えていれば良い。例えば鉄骨横架材30どうしの所定間隔は、少なくとも車の全幅よりも小さい長さであれば良く、望ましくは車のトレッド(左右タイヤ接地面の中心間の距離)の1/2以下であると良い。これにより、鉄骨横架材30どうしの間から車が脱輪するのみで車体が下方へ落下することを確実に防護できる。
【0016】
このような鉄骨横架材30によれば、経済性に優れかつ簡易な構成で開口部16から車が下方へ落下することを確実に防護できる。また、鉄骨横架材30を所定間隔で開口部16に設けることにより、開口部16を閉塞することなく、開口部16本来の採光、換気としての役割を果たすことができる。
【0017】
上記構成の車落下防護構造10によれば、汎用性のある網状のフェンスと、ほとんど加工してない鋼材からなる防護構造を採用することにより、簡易な構成で車の落下を効果的に防止できる。また駐車場ではフェンスを設けるだけであり設置のためのスペースを少なくして駐車スペースの無駄が生じることがない。
【0018】
[作用]
上記構成による本発明の車落下防護構造10の作用について以下説明する。
本実施形態の車落下防護構造10は、駐車スペース12の間に開口部16が設けられている自走式立体駐車場において、駐車スペース12の車止め14と開口部16の間にフェンス20を取り付けている。また開口部16の側面の梁17間に所定間隔で鉄骨横架材30を複数横架している。
【0019】
このような構成で、運転者のアクセルとブレーキの操縦ミスにより、車がフェンスをなぎ倒して開口部16に侵入したとき、車が開口部16から下方へ落下しても、開口部16の側面の梁17間に設けた複数の鉄骨横架材30によって車体を受け止めることができる。
これにより、落下による車や防護構造の損傷を抑えることができる。また落下した車を、クレーン車などを使わずに引き上げることができ、車や防護構造の復旧作業を容易に行える。
【0020】
[変形例]
図4は変形例の車落下防護構造の側面図である。図示のように、変形例の車落下防護構造10Aは、鉄骨横架材30Aの配置箇所が
図1に示す車落下防護構造10と異なり、その他の構成は同一構成であり、詳細な説明を省略する。
変形例の鉄骨横架材30Aは、上面が駐車スペース12の床面とほぼ同一平面上となるように、開口部16の側面の梁17間の上方、かつ駐車スペース12の床面に配置している。
【0021】
このような車落下防護構造10Aによれば、運転車の操縦ミスにより、車がフェンスをなぎ倒して開口部16に侵入したときでも、駐車スペース12の床面とほぼ同一平面上に設けた開口部16の複数の鉄骨横架材30Aによって車体を受け止めることができる。これにより、落下による車や防護構造の損傷を抑えることができる。また鉄骨横架材30Aから脱輪した車を、クレーン車などを使わずに引き上げることができ、車や防護構造の復旧作業を容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、吹き抜けなどの開口部を備えた自走式立体駐車場の分野における産業上利用可能な車落下防護構造として、特に有用である。
【符号の説明】
【0023】
10,10A………車落下防護構造、12………駐車スペース、14………車止め、16………開口部、17………梁、18………出入口側、20………フェンス、30,30A………鉄骨横架材。