特許第6765179号(P6765179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765179
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】入浴支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
   A61H33/00 310N
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-213376(P2015-213376)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-80187(P2017-80187A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿尾 康宏
(72)【発明者】
【氏名】吉村 龍雄
【審査官】 國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−306564(JP,A)
【文献】 実開昭51−029554(JP,U)
【文献】 実開平07−033331(JP,U)
【文献】 特開2005−000556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00 − 5/14
7/00 − 7/16
A61H 3/04
33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助対象が位置する位置設定部材と、
補助対象を補助する補助体と、
浴槽の縁壁の上端部に固定された状態で、前記位置設定部材を前記浴槽内に位置させる固定フレーム部と、
前記位置設定部材に対して前記固定フレーム部側とは反対側の位置に固定され、前記補助体を支持する支持部材と、
前記補助体が係止して寄り掛かることで姿勢の維持が可能な係止部材とを備えた、補助者による操作が可能な入浴支援装置であって、
前記支持部材は、前記補助体の先端部が揺動するように、前記補助体が回動する回動軸部を有し、
前記回動軸部は、
前記補助体が、補助者が接触して操作可能であって、前記位置設定部材に近接する第1位置と、前記係止部材によって係止され、前記位置設定部材および前記固定フレーム部から離間した第2位置との間を回動するように、前記補助体と接続し、
前記補助体の回動軸が、平面視して、前記支持部材における取付位置から前記固定フレーム部側への最短距離となる位置を結ぶ線に対して交差する線と、前記補助体の回動軸とのなす角が鋭角となるように、前記交差する線に対して前記位置設定部材に近づく方向に水平に傾斜して設けられ、
前記補助体は、前記第1位置に位置するとき、前記回動軸部から前記補助体の前記先端部まで、前記固定フレーム部に向かって前記位置設定部材の側方で延びるように、配置される、
入浴支援装置。
【請求項2】
前記補助体は、前記第1位置に位置した際に、前記位置設定部材に位置する補助対象が、前記支持部材から前記固定フレーム部側に亘って、前記補助体が位置する方向の移動方向への移動を抑制可能な長さを有し、
前記係止部材は、前記補助体が前記第2位置に位置した際に、前記補助体が、補助対象が前記移動方向へ移動することを許容する位置で、前記補助体を係止する、
請求項1に記載の入浴支援装置。
【請求項3】
前記支持部材は、補助者が位置する側の前記固定フレーム部に対して水平横方向に伸びる水平部を有し、
前記補助体は、
棒状部材であり、
前記先端部を有する手摺部と、
基端部側で前記回動軸部に取り付けられる直線状部と、
固定フレーム部側に屈曲し、一端側が前記直線状部と繋がり、他端側が前記手摺部と繋がり前記第2位置にあるときに前記水平部の延びる方向と前記他端側の延びる方向であり且つ前記手摺部の延びる方向である方向とが鈍角をなす屈曲部を有し、
前記回動軸部は、前記水平部に接続して設けられ、
前記第1位置は、平面視して、前記補助体が前記回動軸部から前記水平部に対して垂直方向に延び、前記補助体の先端部が補助者の操作可能な位置にある位置であり、
前記第2位置は、前記固定フレーム部側から見て、前記第1位置における前記補助体と前記第2位置における前記補助体とが鈍角をなし、前記回動軸部と接続する前記補助体の基端部が前記先端部よりも固定フレーム部側に位置する位置である、
請求項1または2に記載の入浴支援装置。
【請求項4】
前記位置設定部材は、人が着座する座面を有する腰掛部材であり、
前記腰掛部材は、前記支持部材に取付けられ、
前記補助体は、前記先端部と、前記支持部材と繋がって前記支持部材に対して回動する基端部と、手摺部とを有する手摺部材であり、
前記第1位置は、
前記手摺部を、前記座面に着座した人が入浴した状態で把持すること、および、前記座面に着座した人が入浴した状態で前方への移動を規制すること、の少なくとも一方が可能な位置であり、
前記第2位置は、前記手摺部が、前記基端部を挟んで前記第1位置とは反対の側に倒れ込むように力がかかり、かつ、前記手摺部の先端側が、前記第1位置よりも前記着座した人から離間した位置に、前記手摺部材が位置する位置であり、
さらに、前記腰掛部材を昇降させる昇降部材と、前記昇降部材を駆動する駆動装置とを備えた、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の入浴支援装置。
【請求項5】
前記駆動装置が、一端が前記座面に固定された伸縮部材を有し、
前記伸縮部材は、内部に流体が充填される充填部を有し、
前記充填部への流体の充填により前記伸縮部材が伸長することで前記座面が上昇し、前記伸縮部材の内部に充填された流体が排出されて前記伸縮部材が収縮することで前記座面が下降する、請求項4に記載の入浴支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護や介助のための支援装置であり、入浴介助のためにその支援装置を適用した入浴支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体力が低下した高齢者、身体障害者等の、介護・支援等の手助けや補助が必要な要介助者や要介護者など補助の必要な者を支援するための装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、入浴介護(支援)装置については、特許文献1には、座面と背凭とを有する椅子部材と、椅子部材が上面に固定され、上下方向に伸縮する伸縮装置と、伸縮装置の下端部が取付固定された基台と、椅子部材の背凭に対して回動可能に取り付けられた肘掛と、を備えた入浴介護(支援)装置が開示されている。肘掛は、座面に対して略水平に回動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−273783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肘掛は、介護や介助などの補助の対象となる補助対象者にとって、体を寄り掛からせて姿勢を維持したり、体勢を崩した際に掴まって着座部分から滑り落ちることの防止の補助として有用である。しかし、この肘掛のような補助対象者の補助をする部材は、介護や介助などの補助をする者の側に常に位置している場合には補助作業の邪魔となってしまい、退避させた位置に移動させる際には補助対象者や補助者の邪魔とならないように移動させる必要がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、補助者が操作しやすい入浴支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の入浴支援装置は、補助対象が位置する位置設定部材と、補助対象を補助する補助体と、浴槽の縁壁の上端部に固定された状態で、前記位置設定部材を前記浴槽内に位置させる固定フレーム部と、前記位置設定部材に対して前記固定フレーム部側とは反対側の位置に固定され、前記補助体を支持する支持部材と、前記補助体が係止して寄り掛かることで姿勢の維持が可能な係止部材とを備えた、補助者による操作が可能な入浴支援装置であって、前記支持部材は、前記補助体の先端部が揺動するように、前記補助体が回動する回動軸部を有し、前記回動軸部は、前記補助体が、補助者が接触して操作可能であって、前記位置設定部材に近接する第1位置と、前記係止部材によって係止され、前記位置設定部材および前記固定フレーム部から離間した第2位置との間を回動するように、前記補助体と接続し、前記補助体の回動軸が、平面視して、前記支持部材における取付位置から前記固定フレーム部側への最短距離となる位置を結ぶ線に対して交差する線と、前記補助体の回動軸とのなす角が鋭角となるように、前記交差する線に対して前記位置設定部材に近づく方向に水平に傾斜して設けられ、前記補助体は、前記第1位置に位置するとき、前記回動軸部から前記補助体の前記先端部まで、前記固定フレーム部に向かって前記位置設定部材の側方で延びるように、配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補助体を回動させる際に補助者が操作しやすい支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の入浴支援装置の腰掛部材が下方位置にあるときの状態を示す斜視図である。
図2図1の入浴支援装置の腰掛部材が上方位置にあるときの状態を示す斜視図である。
図3図1の矢印A方向から本発明の実施形態の入浴支援装置を見た上面図である。
図4図1の矢印B方向から本発明の実施形態の入浴支援装置を見た右側面図である。
図5図1の矢印C方向から本発明の実施形態の入浴支援装置を見た前面図で、図1の入浴支援装置とこれを浴槽に取り付ける場合の浴槽との取合関係を示す図である。
図6図1の入浴支援装置の手摺部材の回動機構部分の構造を説明するための図で、(a)は分解斜視図、(b)は(a)のD−D矢視部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態の入浴支援装置1を、図面を参照して詳細に説明し、併せて一実施形態の支援装置についても説明する。図1から図5は、実施形態の入浴支援装置の概略構成図、図6は、手摺部材の回動機構部分の構造を説明するための図である。なお、図1は、腰掛部材が下方位置にあるときの状態を示し、図2は、腰掛部材が上方位置にあるときの状態を示している。
【0011】
入浴支援装置1は、腰掛部材2と、手摺部材8aと、腰掛部材2を昇降させる昇降部材6と、昇降部材6を駆動する駆動装置7とを備えている。腰掛部材2は、人が着座する座面2aを有し、補助対象が位置する位置設定部材として構成されている。位置設定部材である腰掛部材2は、補助者が操作する側とは反対側の位置に固定される支持部材36が取付けられている。支持部材36は、手摺部材8aを支持する。手摺部材8aは、支持部材36と繋がって支持部材36に対して回動する基端部81と、手摺部82とを有し、補助対象の転落や摺り落ちなどの防止や姿勢維持などの、補助対象を補助する補助体として構成されている。位置設定部材である腰掛部材2と、補助体である手摺部材8aと、支持部材36とは、補助者の支援をする支援装置を構成し、この支援装置には、補助体である手摺部材8aが係止して寄り掛かることで、手摺部材8aの姿勢の維持が可能な係止部材としての係止機構9が設けられている。
【0012】
支持部材36は、補助体である手摺部材8aが回転する回動軸部38を有している。補助体は、回動可能に回動軸部38に接続している。回動軸部38による補助体の回動は、第1位置と第2位置との間で行わる。第1位置は、手摺部材8aに対して、補補助対象を補助する補助者が手で握るなどの、補助者が接触して操作可能な位置であって、位置設定部材である腰掛部材2と近接した位置である。第2位置は、補助体である手摺部材8aが係止機構9により係止され、位置設定部材および補助者から離間した位置である。つまり、回動軸部38により、補助体である手摺部材8aは、補助対象を補助する位置と補助対象の補助が解除された位置との間を回動することとなる。この回動の回動軸は、支持部材36が取り付けられる取付位置とその取付位置から補助者が操作する側へ延ばした線が最短となる位置とを結ぶ線に交差する線に対し、回動軸部38の回動軸のなす角が、鋭角となるように設けられている。そのため、回動軸部38の回動軸が、補助者の補助の際に向かう方向と略直角とはならない方向に延び、手摺部材8aの係止機構9による係止位置が、補助者に近い位置となっている。
【0013】
手摺部材8aは、支持部材36と繋がって支持部材36に対して回動する基端部81と、手摺部82とを有している。そして、第1位置は、手摺部82を、座面2aに着座した人が入浴した状態で把持すること、および、座面2aに着座した人が入浴した状態で前方への移動を規制すること、の少なくとも一方が可能な位置でもある。また、第2位置は、手摺部82が、基端部81を挟んで第1位置とは反対の側に倒れ込むように力がかかり、かつ、手摺部82の先端側が、第1位置よりも着座した人から離間した位置に、手摺部材8aが位置する位置である。さらに、入浴支援装置1は、腰掛部材2を昇降させる昇降部材6と、昇降部材6を駆動する駆動装置7とを備える。
【0014】
この入浴支援装置1は、被介助者の入浴を介助者が介助する場合に用いられ、浴槽内部に配置されて利用される(図5参照)。入浴支援装置1は、後述する下方位置Y1と上方位置Y2との間を昇降する。その際、介助者は一般に、浴槽の縁壁の外側から浴槽内の被介助者に向けて介助を行い、被介助者の入浴を支援することになる。また、この入浴支援装置1は、浴槽の外側の介助者による操作が可能となるように設けられている。なお、入浴支援装置1は、怪我や体力低下など単独での入浴に不都合があるために何らかの補助が必要な、補助対象(補助対象者)に用いられるものであり、介護や介助の使用目的に限定されるものではない。そのため、補助対象は、被介護者や被介助者に限定されるものではなく、補助対象を補助する者も、介護者や介助者に限定されるものでもではない。
【0015】
具体的には、図1から図5に示すように、この入浴支援装置1は、腰掛部材2と、昇降フレーム3と、固定フレーム4と、昇降部材6と、駆動装置7と、手摺部材8aと、背凭れ部材8bと、係止機構9とを備えている。
【0016】
ここで、本実施形態の説明の便宜上、図1図5における方向性について定義する。
本実施形態では、方向の基準を、浴槽100の浴槽内部104において腰掛部材2に着座する被介助者としており、被介助者の前後方向を入浴支援装置1の前後方向とし、被介助者の左右方向を入浴支援装置1の左右方向としている。被介助者は、浴槽100の縁壁102に平行な方向に前と後を向けて入浴するものとし、ここでは、特に図5に表されるように、浴槽100の縁壁102の外側から見て右側を前方向、浴槽100の縁壁102の外側から見て左側を後方向とする。つまり、被介助者が腰掛部材2に入浴姿勢で着座した状態で、被介助者の右手側に浴槽100の縁壁102がある。
従って、浴槽100の縁壁102の上端102aに取付可能な固定フレーム4は、腰掛部材2に入浴姿勢で着座した状態の被介助者の右手側に位置し、昇降フレーム3の垂直フレーム部34(後述)は、被介助者の左手側に位置する。
【0017】
なお、この浴槽100においては、特に図5に表されるように、内底部101と縁壁(側壁)102とで囲まれる空間が、湯が貯留されるための浴槽内部104である。なお、図5においては、被介助者の左側(図5における紙面右側)の縁壁は図示していない。以下の説明では、縁壁102は、特に断りが無い限り、被介助者の左側の縁壁をいう。この浴槽内部104に入浴支援装置1が収容され、浴槽外床面105に介助者が位置する。
【0018】
<固定フレーム>
固定フレーム4は、浴槽100の縁壁102の上端102aに沿って前後方向に延在する取付ベース部材41を有する。ここでは、取付ベース部材41は、図5に示すように、浴槽100の右側の縁壁102の上端102aの上面と内側面に被さるように載置される断面L字形状の部材である。
【0019】
取付ベース部材41には、浴槽100の縁壁102の外側方向に延びる部分と、外側方向に延びる部分から、略直角に下側に延びる部分とを有するL字状金具42が取り付けられている。L字状金具42の下側に延びる部分の先端には、縁壁102の側面方向に進退可能な締め付け部材43が設けられている。固定フレーム4を、浴槽100の縁壁102の上端102aに取り付けるときには、締め付け部材43と取付ベース部材41とで浴槽100の縁壁102の上端102aを挟持する。具体的には、取付ベース部材41を上端102aに載置する。その後、締め付け部材43を縁壁102側に進出させて、締め付け部材43により縁壁102を押圧することで、取付ベース部材41を、浴槽100の縁壁102の上端102aに固定することができる。これにより、後述する伸縮部材62の伸縮や被介助者の移動などに伴って、入浴支援装置1が左右方向や前後方向などに移動することを規制できる。ここでは、L字状金具42と締め付け部材43は、前後方向に延在する取付ベース部材41の長手方向(前後方向)の両端に一つずつ設けられている。L字状金具42と締め付け部材43の数は、特に限定されず、取付ベース部材41を上縁102aに固定することができる数であればよい。
【0020】
前後方向に延在する取付ベース部材41には、垂直下方に延びる一対の昇降ガイド44が設けられている。一対の昇降ガイド44は、それぞれパイプ等の棒状の部材からなり、取付ベース部材41に固定された上端から下方に行くに従い、浴槽100の縁壁102から離れる方向(左方向)に向けて傾斜し互いに平行に延びている。そして、一対の昇降ガイド44の下端が、浴槽100の内底部101に載る下端ベース板45上に固定されている。
【0021】
<昇降フレーム>
昇降フレーム3は、例えば内底部101に対して水平な平板状の昇降ベース板31と、昇降ベース板31の前後方向の側縁に固定された一対の左右方向に延びる水平フレーム部32と、各水平フレーム部32の右方向の端部から上方向に屈曲する一対の屈曲フレーム部33と、屈曲フレーム部33の上端から上方に延びる一対の垂直フレーム部34と、を備えている。詳細は後述するが、昇降フレーム3は、伸縮部材62の伸縮による腰掛部材2の昇降に追随して昇降する。一対の水平フレーム部32、屈曲フレーム部33、及び垂直フレーム部34は、例えば、それぞれ1本の連続したパイプを曲げ加工することで構成される。
【0022】
<支持部材>
支持部材は、位置設定部材に対して補助者が操作する側とは反対側の位置に固定され、補助体を支持する部材である。なお、「固定される」とは、位置設定部材との相対的な位置関係が変化しないことをいう。そのため、相対的な位置関係が変化しなければ、位置設定部材の移動に伴って支持部材が移動した場合も含む。本実施形態における支持部材36は、手摺部材8aが取り付けられる垂直フレーム部34の上端部を含む部分である。さらに、支持部材は、補助者に対して水平横方向に伸びる水平部を有してもよい。本実施形態では、水平部37は、垂直フレーム部34とカバーCVとから構成される。カバーCVは、前後一対の垂直フレーム部34間に設けられた帯状の部材である。カバーCVは、昇降フレーム3の剛性を向上させると共に、補助体の右方向への移動を規制する。これにより、本実施形態では、非介助者が右方向へ倒れ込んでも、座面2aから落下してしまうことが防止される。
【0023】
支持部材は、補助体が回動する回動軸部を有する。回動軸部は、補助体の回動軸となる部分が嵌合される部材である。本実施形態における回動軸部38は、垂直フレーム部34の上端34aに設けられている。回動軸部38の具体的な構成については、後述する。
【0024】
<ガイドパイプ>
昇降フレーム3の前後一対の水平フレーム部32の右方向の端部(浴槽100の縁壁102側の端部)には、短尺のガイドパイプ35が接合されている。このガイドパイプ35は、固定フレーム4の昇降ガイド44の外周にスライド自在に嵌まっており、昇降フレーム3は、昇降ガイド44にガイドパイプ35がスライドすることによって、昇降動作が案内される。
【0025】
<腰掛部材>
腰掛部材2は、補助対象の一例である被介助者が位置する位置設定部材に相当するものであり、昇降フレーム3の昇降ベース板31の上に固定されている。つまり、腰掛部材2は、間接的に支持部材36に取付けられているともいえる。従って、腰掛部材2は、浴槽100の縁壁102側の固定フレーム4と、昇降フレーム3の支持部材36との間に位置している。よって、腰掛部材2の位置を基準にすると、支持部材36は、腰掛部材2に対して、介助者(補助者)が操作する側とは反対側の位置に位置している。昇降ベース板31上に固定された腰掛部材2は、被介助者が着座する座面2aを有し、ここでは、腰掛部材2の上面が座面2aとなっている。また、昇降ベース板31の下面には、昇降部材6の上端が連結されている。
【0026】
<昇降部材>
昇降部材6は、腰掛部材2を昇降させる部材であって、下端が、ベース部材61に連結され、上端が、昇降ベース板31の下面に連結された伸縮部材62を有している。すなわち、伸縮部材62の一端(上端)は、昇降ベース板31を介して座面2aに固定されている。ベース部材61は、固定フレーム4の下端ベース板45に固定されており、昇降動作の際に位置が固定となる部材である。伸縮部材62は、内部に流体が充填される充填部(図示略)を有している。本実施形態では、伸縮部材62は、頂面及び底面(いずれも図示略)が塞がれて胴体部が蛇腹形状となっている筒状体であり、その内部空間全体が充填部となっている。充填部への流体の充填により、伸縮部材62が伸長して昇降ベース板31を上方向に移動させることで、昇降ベース板31に固定された腰掛部材2の座面2aを上昇させる。また、充填部に充填された流体が外部に排出されることにより、伸縮部材62が収縮してベース板31に固定された腰掛部材2の座面2aを下降させる。このような操作により、図5に示すように、腰掛部材2は、下方位置Y1と、上方位置Y2との間で昇降できるようになっている。すなわち、充填部への流体の充填により伸縮部材62が伸長することで座面2aが上昇し、伸縮部材62の内部に充填された流体が排出されて伸縮部材62が収縮することで座面2aが下降する。なお、伸縮部材62の上端の少なくとも一部が腰掛部材2に直接固定されてもよい。このような構成は、例えば、昇降ベース板31の中央に開口部を設け、この開口部から腰掛部材の一部を露出させて伸縮部材62の上端と固定することなどで実現できる。なお、前述したように昇降ガイド44が傾斜しているため、腰掛部材2が上方位置Y2に停止した際、その座面2aは浴槽100の縁壁102(特にその上端102a)の近傍に位置するため、浴槽100に対する被介助者の出入りが容易となる。一方、腰掛部材2が下方位置Y1に停止した際、その座面2aは浴槽100の縁壁102から離間しているため、入浴中の被介助者にとって縁壁102が邪魔にならない。もちろん、充填部への流体の充填量や排出量を調整することで、下方位置Y1と上方位置Y2との間の任意の箇所に座面2aを位置させてもよい。また、流体は、流動性を有する物質であれば特に限定されるものではないが、ここでは水である。
【0027】
駆動装置7は、昇降部材6を駆動する装置であって、ここでは、伸縮部材62の充填部に対して流体を供給することと、伸縮部材62の充填部の内部の流体を排出することができる装置である。例えば流体が水である場合、駆動装置7は、所定圧を有する水道水の導水路や給排水用のバルブ等から水を供給可能に接続する装置として構成することができる。駆動装置7の給水経路は、浴槽内部104に湯を供給するための供給経路とは別としてもよいし、同じとしてもよい。なお、駆動装置7は、昇降部材6を駆動することができれば、給液管を含む以外にも、排液管、取水口部、ポンプや一時的に流体を貯留することができるタンクなどの構成を備えていてもよい。
【0028】
<手摺部材、及び、手摺部材と支持部材との取付構造>
次に手摺部材8a及びその支持部材36との取付構造について詳細に述べる。
手摺部材8aは、補助対象を補助する補助体の一例である。ここでは、手摺部材8aは、支持部材36と繋がって支持部材36に対して回動する基端部81と、手摺部82とを有する。また、補助体は、棒状部材とし、回動軸部に取り付けられる直線状部と、補助者側に屈曲し、一端側が直線状部と繋がり、他端側が第2位置にあるときに水平部の延びる方向と他端側の延びる方向とが鈍角をなす屈曲部を有することができる。そのため、本実施形態においては、基端部81が、手摺部82と繋がる屈曲部81aと、屈曲部81aの一端側と繋がる直線状部81bとを有するように構成されている。なお、棒状部材とは、長さを有する部材をいう。支持部材36を構成する垂直フレーム部34の上端34aには、例えばパイプ状の回動軸部38が固定されている。直線状部81bは回動軸部38に嵌合され、屈曲部81aの他端に接続された手摺部82が上述した第1位置と第2位置との間で回動するように嵌合される。なお、手摺部82の延びる方向は屈曲部81aの他端側の延びる方向と等しい。ここでは、直線状部81bが回動軸部38に挿入されることにより、手摺部82が回動できるように構成されている。そのため、手摺部材8aの回動軸は、直線状部81bの延びる方向となる。回動軸部38の中心軸の延びる方向と手摺部材8aの回動軸とは、同一方向に延び、径方向から見たときに重なる。なお、詳細は後述するが、補助体は、第1位置に位置した際に、位置設定部材に位置する補助対象が、支持部材から補助者側に亘って、補助体が位置する方向の移動方向への移動を抑制可能な長さを有することが好ましく、ここでも、そのように形成している。また、屈曲部が補助者側に屈曲するとは、例えば、補助体が第1位置にあるときに、屈曲部が補助者側に屈曲することをいう。さらに、屈曲部の他端側が第2位置にあるときに水平部の延びる方向と他端側の延びる方向とが鈍角をなすとは、例えば、水平部の延びる方向と直交する方向から水平部と屈曲部とのなす角が鈍角となることをいう。本実施形態においては、図4に示すように、水平部37の延びる前後方向と直交する左右方向から見たときに、水平部37と、屈曲部81aの他端側の延びる方向(上述した手摺部82の延びる方向)とのなす角が鈍角となることをいう。
【0029】
手摺部材8aの回動軸R(図3参照)は、上述したように直線状部81bの延びる方向となる。そして、手摺部材8aは、支持部材36における取付位置から、介助者が操作する側への最短距離となる位置を結ぶ線に対して交差する交差線Lとのなす角θ1が鋭角となるように、設けられている。本実施形態では、交差線Lが、介助者が操作する側への最短距離となる位置を結ぶ線に対して直交するようにしている。つまり、回動軸Rは、前後方向に対して、鋭角θ1の角度だけ前後方向と左右方向とを含む水平面内で傾斜した角度で設けられている。なお、本実施形態においては、介助者が操作する側への最短距離となる位置は、おおよそ固定フレーム4の昇降ガイド44の上端が取付ベース部材41に接合されている位置付近といえる。そのため、この位置に対して交差する交差線Lは、前後方向に略平行な方向に相当する。
【0030】
手摺部材8aの手摺部82は、第1位置では、前後方向と左右方向とを含む水平面内において左右方向と平行な方向に向くことで、腰掛部材2の真上の空間とそれよりも前方の空間とを遮断する。
【0031】
手摺部材8aは、前後方向に対して水平面内で鋭角θ1に傾斜した回動軸Rの周りに回動することにより、第1位置と第2位置との間で移動する。第2位置は、腰掛部材2の真上の空間とそれよりも前方の空間とを遮断しないように第1位置から退避した位置である。
【0032】
<係止部材>
係止部材は、補助体が係止して寄り掛かることで姿勢の維持が可能な部材である。本実施形態においては、係止部材は、回動軸部38の周壁に、周方向の所定範囲に亘って設けられた長孔91と、止めネジ92とを備える係止機構9である。さらに、本実施形態における係止機構9は、第1位置および第2位置を超えて手摺部材8aが回動することを規制する。なお、図1では係止機構9としての長穴が2つ設けられているが、図6では簡略化のため長孔91は1つだけ示されている。一方、回動軸部38の周壁の内側に挿入される直線状部81bには、回動軸部38に所定の深さまで挿入された際に、止めネジ92の先端を螺合できるネジ孔93が設けられている。
【0033】
本実施形態においては、直線状部81bを回動軸部38の周壁の内側に所定の深さまで挿入して、外側から止めネジ92の先端を長孔91を通してネジ孔93にねじ込む。こうすることで、手摺部材8aを回動させることで止めネジ92も回動する。そして、長孔91の一端または他端が、手摺部材8aを回動させた際に止めネジ92の軸部と当接することで回動が規制され、回動軸部38に対して手摺部材8aを長孔91の周方向長さの範囲で回動させることができる。従って、長孔91の周方向長さの一端91Aと他端91Bをそれぞれ第2位置X2と第1位置X1として、止めネジ92の回動範囲を規制することにより、手摺部材8aの回動位置を第1位置X1と第2位置X2とに係止することができる。なお、止めネジ92と長孔91は、手摺部材8aを係止して、手摺部材8a自身が寄り掛かることで、その姿勢の維持が可能な構造と強度を持つものである。詳細は後述するが、長孔91の端縁の位置を、止めネジ92が固定された手すり部材8aが寄り掛かる位置として構成すればよい。また、回動軸部38に挿入された直線状部81bの軸方向への移動は、止めネジ92が長孔91の縁部に直線状部81bの軸方向で当接することで規制される。そのため、直線状部81bが回動軸部38から抜けることで、手摺部材8aが脱落することを防止している。
【0034】
<第1位置>
第1位置X1は、手摺部材8aが、補助者の一例である介助者が接触して操作可能であって、位置設定部材の一例である腰掛部材2に近接する位置に設定される。特に、本実施形態においては、補助体が回動軸部から水平部に対して垂直方向に延び、補助体の先端部が補助者の操作可能な位置にある位置である。つまり、第1位置X1は、手摺部材8aが、回動軸部38から水平部37に対して垂直方向に延び、手摺部材8aの先端部84が介助者の操作可能な位置にある位置である。入浴支援装置1においては、第1位置X1は、手摺部82を、座面2aに着座した被介助者が入浴した状態で把持すること、及び、座面2aに着座した人が入浴した状態で前方への移動を規制すること、の少なくとも一方が可能な位置であることが好ましい。特に、補助体は、第1位置に位置した際に、位置設定部材に位置する補助対象が、支持部材から補助者側に亘って、補助体が位置する方向の移動方向への移動を抑制可能な長さを有することが好ましい。本実施形態では、第1位置X1に位置した際に、腰掛部材2に位置する被介助者が、支持部材36から補助者側に亘って、手摺部材8aが位置する方向の移動方向への移動を抑制可能な長さを有する。このため、被介助者が前方向に移動した際に、被介助者が腰掛部材2から落下することを抑制できる。
【0035】
以上説明したように、手摺部材8aは、第1位置X1にあることで、被介助者が把持する手摺りや被介助者の移動を規制する規制枠として使用することができる。特に、本実施形態では、手摺部82を、座面2aに着座した人が入浴した状態で把持すること、および、座面2aに着座した人が入浴した状態で前方への移動を規制すること、の少なくとも一方が可能な位置である。そのため、手摺部材8aが第1位置X1にあるとき、座面2aに着座した被介助者が入浴した状態で、手摺部82を把持することができる。また、手摺部82により、座面2aに着座した人が入浴した状態で前方へ移動しないように規制することができる。この腰掛部材2に近接する第1位置X1にあるとき、介助者は、手摺部材8aに接触して、手摺部材8aを容易に動かすことができる。
【0036】
<第2位置>
第2位置X2は、係止部材によって係止され、位置設定部材および補助者から離間した位置である。本実施形態においては、第2位置は、手摺部材8aが、上方の開放位置に係止され、腰掛部材2及び介助者から離間した位置である。つまり、第2位置X2は、第1位置X1における手摺部82と第2位置X2における手摺部82とが鈍角をなし、回動軸部38と接続する手摺部材8aの基端部81が、手摺部材8aの先端部84(手摺部82の先端部)よりも介助者側に位置する位置である。入浴支援装置1においては、第2位置X2は、手摺部82が、基端部81を挟んで第1位置X1とは反対の側に倒れ込むように力がかかり、かつ、手摺部82の先端側が、第1位置X1よりも着座した被介助者から離間した位置に、手摺部材8aが位置する位置であることが好ましい。ここで、回動軸部と接続する補助体の基端部が先端部よりも介助者側に位置するとは、基端部の少なくとも一部が先端部よりも介助者側に位置すればよい。したがって、本実施形態のように、基端部81の全体が先端部84よりも補助者側に位置する場合に限定されない。なお、本実施形態では、係止部材は、補助体が第2位置に位置した際に、補助体が補助対象が移動方向へ移動することを許容する位置で、前記補助体を係止する。すなわち、手摺部材8aが第2位置にあるときには、非介助者の前方への移動が規制されない。
【0037】
また、手摺部材8aを、第2位置X2に持ち上げることによって、手摺部82を、介助動作の邪魔にならないように退避させることができる。即ち、手摺部材8aが第2位置X2にあるとき、手摺部材8aの手摺部82は、鉛直方向を超えて第1位置Xとは反対側に倒れ込む。つまり、基端部81を挟んで、第1位置X1とは反対の側に倒れ込むように力(手摺部材8aの自重による力)がかかる。従って、係止機構9の止めネジ92が第2位置X2に係止されることになり、手摺部材8aが第2位置X2に係止された状態に保たれることになる。この状態では、手摺部82の先端部84が、第1位置X1よりも着座した被介助者から離間した位置に位置する。特に、詳細は後述するが、本実施形態では、第2位置X2は、手摺部82が、基端部81を挟んで第1位置X1とは反対の側に倒れ込むように力がかかり、かつ、手摺部82の先端側が、第1位置X1よりも着座した人から離間した位置に、手摺部材8aが位置する位置としている。
【0038】
従って、手摺部材8aが第2位置X2にあることにより、手摺部材8aが、上方の退避位置に保持されることになり、腰掛部材2及び介助者から遠く離間した位置にあることで、介助者や被介助者にとって邪魔になりにくくなる。
【0039】
<背凭れ部材>
背凭れ部材8bは、補助対象を補助する補助体の一例である。ここでは、背凭れ部材8bは、後側の垂直フレーム部34の上端に取り付けられる。背凭れ部材8bは、代表的には、被介助者の後ろ方向への移動を規制すると共に、座面2aに着座した被介助者が背中を凭れさせることができるように構成される。これにより、被介助者が後ろ方向へ落下したり、被介助者の入浴中の姿勢の維持を補助したりすることができる。
なお、本実施形態においては、背凭れ部材8bは、手摺部材8aと基本的には同様の構成であり、左右方向を軸として線対称に配置されるため、詳細な説明は省略する。ただし、本実施形態においては、背凭れ部材8bは回動不能に固定されている。もちろん、背凭れ部材8bは、手摺部材8aと同様に回動可能に形成されていてもよい。この際、回動範囲を手摺部材8aと同様とすれば、被介助者が腰掛部材2に前後逆向きに着座することも可能となる。言い換えれば、入浴支援装置1は、被介助者がどちらの向きに着座しても同様の使用が可能となるように、機能的にも構造的にも前後対称に構成することもできる。
【0040】
<操作性>
入浴支援装置1が、補助者が補助体を回動させる操作を行いやすい理由について説明する。はじめに、介助者が手摺部材8aを第1位置X1から第2位置X2へ操作する場合について説明する。
図3に示すように、手摺部材8aの先端部84は、第1位置X1から第2位置X2方向へ移動させるに従って、介助者から遠ざかることとなる。ここで、先端部84が介助者から遠ざかるとは、先端部84が支持部材36側へ移動することをいい、本実施形態では左側へ移動することをいう。したがって、前後方向の移動は含まれない。そのため、介助者の体格や浴槽100の左右方向の長さによっては、介助者が第1位置X1から第2位置X2へと手摺部材8aを移動させにくい。ここで、上述したように、第2位置X2は、例えば、補助対象が移動方向へ移動することを許容する位置とすることが好ましい。つまり、手摺部材8aが被介助者が前方向へ移動することを許容する位置とすることで、被介助者の座面2aへの乗降などが行いやすいためである。また、第2位置X2は、例えば、基端部を挟んで第1位置とは反対の側に倒れ込むように力がかかる位置(以下、単に「倒れ込む位置」という)とすることが好ましい。つまり、第2位置X2を、基端部81を挟んで第1位置X1とは反対の側(左側)に倒れ込むように力がかかる位置とすることで、入浴支援装置1の昇降の際の振動や被介助者の座面2aへの乗降の際に生じる振動等で、手摺部材8aが第1位置X1方向へ移動することを防ぐことができるからである。倒れ込む位置は、手摺部82の長さや質量にもよるが、代表的には、第1位置から鉛直方向を超えて回動させた位置となる。
【0041】
ここで、本実施形態では、操作において、手摺部材8aの回動軸Rが支持部材36における取付位置から介助者が操作する側への最短距離となる位置を結ぶ線に対して交差する線(以下、単に「交差する線」という)は、手摺部材8aの回動軸Rとのなす角が鋭角となるように構成されている。これにより、交差する線と回動軸Rとのなす角が鋭角以外の場合と比較して、第2位置X2に位置する手摺部材8aを介助者側に位置させることができる。以下、この点について、交差する線と回動軸Rとのなす角が鋭角以外の一例である直角の場合と比較して説明する。
【0042】
交差する線と回動軸Rとのなす角が直角の手摺部材(以下、比較対象の手摺部材という)の基本的な構成は手摺部材8aと同様であるが、回動軸Rとのなす角が直角となるように、屈曲部が構成されている。また、両手摺部材は、第1位置において、介助者から先端部までの距離と、手摺部の実質的な長さとが、それぞれ同一となるように構成されている。ここでは、両手摺部材の倒れ込む位置は、それぞれ同一であるものとする。
【0043】
両手摺部材を第1位置から第2位置へ移動させる場合、いずれの手摺部材においても先端部は介助者から遠ざかるように移動する。しかし、手摺部材8aは、交差する線Lと回動軸Rとの成す角を鋭角としているため、倒れ込む位置が同じであれば、比較対象の手摺部材よりも、先端部を介助者側に位置させることができる。すなわち、両手摺部材が第2位置にあるときにおいて、介助者からそれぞれの先端部までの距離には、差が生じることになる。
【0044】
また、第2位置に位置する際の先端部の上下方向の位置も、上述したように、屈曲部81aを水平部37と、屈曲部81aの他端側の延びる方向とのなす角が鈍角となるように形成しているため、比較対象の手摺部材と比較して、先端部の上下方向の回動範囲を小さくできる。より具体的には、先端部の最高到達点を低くでき、また、第2位置にあるときの先端部の位置を低くできるため、介助者が操作しやすい。
【0045】
このように、本実施形態における手摺部材8aは、比較対象の手摺部材よりも第2位置における先端部の位置を介助者側に設定できるため操作性が良い。また、屈曲部81aを鈍角としているため、上下方向の回動範囲を低くできるので、この点からも操作性が良い。さらに、屈曲部81aを水平部37と、屈曲部81aの他端側の延びる方向とのなす角が鈍角となるように形成しているため、手摺部82を左右方向に沿って設けることができ、手摺部82を被介助者に正対できる。これにより、被介助者が手摺部82を把持しやすい。
【0046】
<入浴支援装置の使用方法>
以下、上述した入浴支援装置1の使用方法の一例について説明する。
この入浴支援装置1を使用する場合は、図5に示すように、浴槽100の浴槽内部104に入浴支援装置1を入れ、固定フレーム4の下端ベース板45(図1、2参照)を浴槽100の内底部101上に載せる。そして、上述したように、取付ベース部材61を浴槽100の縁壁102の上端102aに締め付け部材43を用いて取り付ける。この状態で、昇降部材6の伸縮部材62に駆動装置7を用いて水道水(圧力水)を導入(図1中矢印Z1)し、伸縮部材62を伸長させて図1に示すように下方位置Y1にある腰掛部材2を図2に示すように上昇させる。腰掛部材2が上方位置Y2に到達したら、その位置で伸縮部材62の伸長を停止する。
【0047】
次に、上方位置Y2に高さを保持した腰掛部材2に被介助者を乗せ、必要に応じて座面2aや被介助者を回転させるなどして、被介助者の前後の向きを入浴支援装置1の前後の向きに揃える。その際、前側の手摺部材8aは第1位置X1から第2位置X2に持ち上げておく。この際、上述したように、介助者が第1位置X1から第2位置X2へ手摺部材8aを持ち上げる操作を行いやすい。さらに、先端部84の前後方向の動きは、被介助者から遠ざかるように前方向に移動することとなるので、第1位置X1から第2位置X2へ手摺部材8aを持ち上げるときに、被介助者に手摺部材8aが当たることを抑制できる。そして、被介助者の前後の向きを入浴支援装置1の前後の向きに揃えたら、第2位置X2に持ち上げてある手摺部材8aを、第1位置X1まで倒す。
【0048】
次に、昇降部材6の伸縮部材62に充填した水道水(圧力水)を駆動装置7を用いて排水(図1中矢印Z2)し、伸縮部材62を収縮させて、上方位置Y2にある腰掛部材2を、下方位置Y1まで下降させる。腰掛部材2が下方位置Y1に降下するに従い、被介助者を浴槽内部104の湯に浸からせることができる。
【0049】
以上の介助作業の際に、浴槽100外に居る介助者が、手摺部材8aを直接操作して、第1位置X1と第2位置X2との間で容易に回動させることができる。しかも、第2位置X2に持ち上げた際に、介助者や被介助者から離れた位置に手摺部材8aを係止しておくことができるので、手摺部材8aが邪魔になりにくく、安全性が高まるうえ、介助作業がしやすくなる。
【0050】
なお、手摺部材8aの回動範囲を規制する機構(係止機構9である止めネジ92や長孔91)を備える代わりに、手摺部材8aの手摺部82の長さを長めに設定してもよい。この場合、手摺部82の先端部84を浴槽100の縁壁102の上端102aに当てることで、手摺部材8aを第1位置X1に係止し、手摺部82の先端部84を浴室の壁等に当てることで、手摺部材8aを第2位置X2に係止することができる。そのため、回動範囲を規制する機構を省略できるので、生産性が良い。
【0051】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、補助体(手摺部材)を回動させる際に介助者(補助者)が操作しやすくなるという効果を有し、入浴支援装置等の支援装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 入浴支援装置
2 腰掛部材(位置設定部材)
2a 座面
3 昇降フレーム
31 昇降ベース板
32 水平フレーム部
33 屈曲フレーム部
34 垂直フレーム部
34a 上端
35 ガイドパイプ
36 支持部材
37 水平部
38 回動軸部
4 固定フレーム
41 取付ベース部材
42 L字状金具
43 締め付け部材
44 昇降ガイド
45 下端ベース板
6 昇降部材
61 ベース部材
62 伸縮部材
7 駆動装置
8a 手摺部材(補助体)
8b 背凭れ部材
81 基端部
81a 屈曲部
81b 直線状部
82 手摺部
84 先端部
9 係止機構(係止部材)
91 長孔
92 止めネジ
93 ネジ孔
100 浴槽
101 内底部
102 縁壁
102a 上端
104 浴槽内部
105 浴槽外床面
CV カバー
L 交差線
R 回動軸
X1 第1位置
X2 第2位置
Y1 下方位置
Y2 上方位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6