(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765210
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】光ファイバ・石英ブロック接合構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
G02B6/26
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-80069(P2016-80069)
(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公開番号】特開2017-191194(P2017-191194A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湖東 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】浦松 知史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一
【審査官】
井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−191276(JP,A)
【文献】
特開2005−241822(JP,A)
【文献】
特開2007−279291(JP,A)
【文献】
米国特許第04962988(US,A)
【文献】
中国実用新案第203480079(CN,U)
【文献】
特開2007−065437(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102902030(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00 − 6/036
G02B 6/10
G02B 6/24 − 6/27
G02B 6/30 − 6/34
G02B 6/36 − 6/54
H01S 3/00 − 3/02
H01S 3/04 − 3/0959
H01S 3/098 − 3/102
H01S 3/105 − 3/131
H01S 3/136 − 3/213
H01S 3/23 − 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと石英ブロックとが接合されたレーザ加工に用いられる光ファイバ・石英ブロック接合構造であって、
前記光ファイバは、前記石英ブロックにおける前記光ファイバ側に膨出するように形成された部分内に接合されており、
前記石英ブロックにおける前記光ファイバ側に膨出するように形成された部分の表面は、前記光ファイバの軸をz軸とする座標系において、前記光ファイバの断面の半径をR0として、−2R0≦x≦2R0及び−2R0≦y≦2R0の範囲で、下記式(1)で表される回転楕円面、又は、下記式(2)で表される双曲面で最小2乗近似したとき、その決定係数が0.95以上となる外向きに凸の曲面であり、
【数1】
前記光ファイバの先端が前記石英ブロックの内部に位置している光ファイバ・石英ブロック接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイバ・石英ブロック接合構造において、
R1/R0が100以下である光ファイバ・石英ブロック接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光ファイバ・石英ブロック接合構造において、
前記石英ブロックの前記外向きに凸の曲面と前記光ファイバの外周面との間に内側に没入した曲面が形成されており、前記没入した曲面の側面視における曲率半径をR2としたとき、R2/R0が0.1〜2である光ファイバ・石英ブロック接合構造。
【請求項4】
請求項3に記載された光ファイバ・石英ブロック接合構造において、
前記R2が30〜1500μmである光ファイバ・石英ブロック接合構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載された光ファイバ・石英ブロック接合構造において、
R2/R1が0.01〜1である光ファイバ・石英ブロック接合構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された光ファイバ・石英ブロック接合構造において、
前記石英ブロックにおける前記光ファイバ側に膨出するように形成された部分の後端から前記光ファイバの先端までの長さが10〜500μmである光ファイバ・石英ブロック接合構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法であって、
前記光ファイバを、前記石英ブロックにおける前記光ファイバ側に膨出するように形成された部分内に接合し、前記光ファイバの先端を前記石英ブロックの内部に位置させる光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法において、
前記光ファイバを前記石英ブロックに接合する前に、前記石英ブロックの前記光ファイバの接合予定部の平坦面を加熱して前記外向きに凸の曲面を形成する光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載された光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法において、
前記光ファイバの接合予定部の平坦面を加熱して前記外向きに凸の曲面を形成するのに連続して、前記光ファイバを前記石英ブロックにおける前記光ファイバ側に膨出するように形成された部分内に接合する光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ・石英ブロック接合構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光伝送に用いられる光ファイバの先端に石英ブロックを接合した構造が知られている(例えば特許文献1〜4)。
【0003】
ところで、レーザ光伝送用の光ファイバケーブルでは、入射端部側の光コネクタ内において、軸ずれ等のために光ファイバのコアに入射されなかったレーザ光に起因して、また、出射端部側の光コネクタ内において、レーザ光照射対象からの反射光に起因して、光ファイバ心線のジャケットが炭化焼損し、そのために光ファイバも破断するといった損傷が生じる虞がある。そして、かかる損傷を防止する手段として、特許文献5には、光コネクタ内の空間にレーザ光や反射光を検知するための光センサが設けられ、その光センサがインターロック回路に接続された光コネクタ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−321470号公報
【特許文献2】特開2007−279289号公報
【特許文献3】特開2009−180770号公報
【特許文献4】特開2009−526265号公報
【特許文献5】特表2015−505969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、光ファイバのコアに入射されなかった光や光照射対象からの反射光に起因する損傷を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光ファイバと石英ブロックとが接合されたレーザ加工に用いられる光ファイバ・石英ブロック接合構造であって、
前記光ファイバは、前記石英ブロックにおける前記光ファイバ側に膨出するように形成された部分内に接合されており、前記石英ブロックにおける前記光ファイバ側に膨出するように形成された部分の表面は、前記光ファイバの軸をz軸とする座標系において、前記光ファイバの断面の半径をR0として、−2R0≦x≦2R0及び−2R0≦y≦2R0の範囲で、下記式(1)で表される回転楕円面、又は、下記式(2)で表される双曲面で最小2乗近似したとき、その決定係数が0.95以上となる外向きに凸の曲面であり、
【数1】
前記光ファイバの先端が前記石英ブロックの内部に位置している。
【0007】
本発明は、
本発明の光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法であって、前記光ファイバを、
前記石英ブロックにおける前記光ファイバ側に膨出するように形成された部分内に接合し、前記光ファイバの先端を前記石英ブロックの内部に位置させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ファイバが石英ブロックの光ファイバ側に膨出するように形成された曲面に接合されていると共に、光ファイバの先端が石英ブロックの内部に位置しているので、軸ずれ等のために光ファイバに入射されない光のうち、光ファイバと石英ブロックとの接合部近傍を通過して空間へ出射するものは、石英ブロックの曲面で屈折して光ファイバに沿った方向に伝搬するのが規制されると共に、石英ブロックの曲面のレンズ効果により広げられてパワー密度が低下し、その結果、これらの光ファイバのコアに入射されなかった光や光照射対象からの反射光に起因した損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る光コネクタ構造の断面図である。
【
図2】実施形態に係る光ファイバ心線の斜視図である。
【
図3】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の断面図である。
【
図4A】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の動作を示す図である。
【
図4B】従来技術の光ファイバ・石英ブロック接合構造の動作を示す図である。
【
図5】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の断面拡大図である。
【
図6A】光ファイバの最小の押し込み量の場合の実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の断面図である。
【
図6B】光ファイバの押し込み量が最小値よりも大きい場合の実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の断面図である。
【
図7A】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法を示す第1の図である。
【
図7B】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法を示す第2の図である。
【
図7C】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法を示す第3の図である。
【
図7D】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法を示す第4の図である。
【
図7E】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法を示す第5の図である。
【
図8】実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造の製造方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る光コネクタ構造Cを示す。この実施形態に係る光コネクタ構造Cは、例えばレーザ加工機等に装着されるレーザ光伝送用の光ファイバケーブルの入射端部及び/又は出射端部に構成されるものである。
【0012】
実施形態に係る光コネクタ構造Cは、光ファイバ心線10に光コネクタ20が取り付けられて構成されている。
【0013】
図2は、実施形態に係る光ファイバ心線10を示す。
【0014】
光ファイバ心線10は、光ファイバ11とそれを被覆するジャケット12とを有する。光ファイバ心線10の外径は例えば1.3mmである。
【0015】
光ファイバ11は、相対的に高屈折率なコア11aとそれを被覆する相対的に低屈折率のクラッド11bとを有する。光ファイバ11は、例えば、コア11aが純粋石英で形成されており、クラッド11bが屈折率を低下させるドーパントがドープされた石英で形成されている。光ファイバ11の外径は例えば500μmである。コア11aの直径は例えば100μmである。コア11aの開口数(NA)は例えば0.20である。なお、光ファイバ11は、クラッド11bの外側を更に被覆するサポート層を有していてもよい。
【0016】
ジャケット12は、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等で形成された単一層で構成されていてもよく、また、例えばシリコーン樹脂の内側バッファ層とそれを被覆するナイロン樹脂或いはフッ素樹脂の外側被覆層との2層で構成されていてもよい。
【0017】
光コネクタ20内に位置する光ファイバ心線10の端部は、先端側のファイバ露出部分10aと、そのファイバ露出部分10aの後方側のジャケット12で被覆されたジャケット被覆部分10bとを含む。
【0018】
ファイバ露出部分10aは、ジャケット12で被覆されずに光ファイバ11が突出するように露出しており、その露出した光ファイバ11の外周面にモードストリッパ13が設けられている。ここで、モードストリッパ13とは、光ファイバ11のクラッド11bを伝搬する光を光ファイバ11外に放出するための加工形状を意味する。モードストリッパ13は、例えば光ファイバ11の外周面にエッチング処理を施すことによって形成することができる。なお、光ファイバ11がサポート層を有する場合には、サポート層を含めてモードストリッパ13を形成する。
【0019】
光コネクタ20は、筒状部材により構成されたコネクタ本体21を有する。コネクタ本体21の内部には、中間部に長さ方向に延びるように形成された内径の大きいファイバ収容空間21aが設けられ、且つその後方に連続して形成された内径の小さい心線嵌入部21bが設けられている。また、コネクタ本体21の内部のファイバ収容空間21aの先端側には、ファイバ収容空間21aに連続するように形成されたブロック収容空間21cが設けられている。ファイバ収容空間21aの先端部には環状の封止部材22が内嵌めされており、その封止部材22の開口には円筒状のファイバ保持部材23が内嵌めされている。コネクタ本体21におけるファイバ収容空間21aを形成する内壁は、光を散乱させるように粗面に形成されていてもよい。ブロック収容空間21cには石英ブロック24が収容されている。
【0020】
この光コネクタ構造Cでは、光ファイバ心線10の端部が光コネクタ20の後方から挿通され、そして、ファイバ露出部分10aの先端部がファイバ保持部材23に内嵌めされて保持され、また、ファイバ露出部分10aのモードストリッパ13が構成された部分がファイバ収容空間21aを長さ方向に延び、更に、ジャケット被覆部分10bが心線嵌入部21bに内嵌めされて保持されている。ジャケット被覆部分10bのジャケット12の端面はファイバ収容空間21aに露出している。
【0021】
ファイバ保持部材23から露出したファイバ露出部分10a、つまり、光ファイバ11の先端はブロック収容空間21cに収容された石英ブロック24に接合されている。石英ブロック24は、先端側部分が円柱状に形成されていると共に、後端側部分が円錐状に形成されており、その円錐状の後端側部分の頂部が光ファイバ11側、つまり、後側に膨出するように形成された曲面24aであり、光ファイバ11の先端は、その石英ブロック24の後端側部分の頂部の曲面24aに接合されている。
【0022】
図3は、実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造Aを示す。
【0023】
実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造Aは、光ファイバ11が石英ブロック24の後端側部分の頂部の曲面24aに接合されていると共に、光ファイバ11の先端が石英ブロック24の内部に位置している。
【0024】
このような構成の光コネクタ構造Cにおいて、光源からのレーザ光の出力を開始すると、入射端部側では、石英ブロック24を介して入射したレーザ光は、主には光ファイバ11のコア11aに入射して伝搬する。しかしながら、入射端部側の光コネクタ20内においては、光源からのレーザ光のうち軸ずれ等のために光ファイバ11に入射されないレーザ光が石英ブロック24を伝搬し、石英ブロック24の後端側部分に到達することがある。また、出射端部側の光コネクタ20内においては、同様に、レーザ光照射対象からの反射光が石英ブロック24に入射して伝搬し、石英ブロック24の後端側部分に到達することがある。なお、光ファイバ11のクラッド11bに入射するクラッドモード光は、クラッド11bと空気との界面で反射を繰り返して伝搬し、モードストリッパ13において光ファイバ11外に除去される。
また、実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造Aによれば、光ファイバ11が石英ブロック24の光ファイバ11側に膨出するように形成された曲面24aに接合されていると共に、光ファイバ11の先端が石英ブロック24の内部に位置しているので、光ファイバ11と石英ブロック24との接合部近傍を通過して空間へ出射するレーザ光Lは、
図4Aに示すように、石英ブロック24の曲面24aで屈折して光ファイバ11に沿った方向に伝搬するのが阻止されると共に、石英ブロック24の曲面24aのレンズ効果により広げられてパワー密度が低下する結果、光ファイバ心線10のジャケット12や光コネクタ20の損傷を低減することができる。これに対し、例えば、
図4Bに示すような光ファイバ11’が石英ブロック24’の後側の平坦面24a’に接合された光ファイバ・石英ブロック接合構造の場合、光ファイバ11’と石英ブロック24’との接合部近傍を通過して空間へ出射するレーザ光L’は、石英ブロック24の平坦面24a’で屈折せずに直線的に光ファイバ11に沿った方向に伝搬し、光ファイバ心線10’のジャケット12’等が吸光、発熱して損傷を招く虞がある。
【0025】
ここで、
図3に示すように、光ファイバ11の軸をz軸とする座標系において、光ファイバ11の断面の半径をR
0としたとき、石英ブロック24の曲面24aは、下記の式(1)で表される回転楕円面の式、又は、下記の式(2)で表される双曲面の式で近似して表すことができる。そして、これらの式を用いて−2R
0≦x≦2R
0及び−2R
0≦y≦2R
0の範囲で曲面24aの実測データに対して最小2乗近似を行い、各定数(a、b、R
1、C)を設定したとき、その決定係数R
2が0.95以上となることが好ましい。なお、決定係数R
2は、近似曲線(回帰曲線)と実測データとのフィッティングの度合いを示す値であり、この値が1に近いほどフィッティングの度合いが高いことを意味する。また、R
0は、一般的には例えば50〜1500μmであり、レーザ加工用途の場合には例えば300〜750μmである。R
1/R
0は、好ましくは100以下、より好ましくは60以下である。
【0027】
光ファイバ11と石英ブロック24との接合部において、石英ブロック24の曲面24aが上記式(1)又は(2)で決定係数R
2が0.95以上で近似されるとき、R
1は、光ファイバ11の半径R
0及び後述する曲面24aに対する光ファイバ11の押し込み量により適宜設定することができる。例えば、光ファイバの半径R
0を500μmとした場合、R
1は、光ファイバ11の曲面24aへの押し込みによる歪みの発生を低減する観点から、好ましくは500μm以上、より好ましくは1500μm以上であり、また、曲面24aが平面に近づくことによるビーム偏向やビーム拡大の効果低下を抑制する観点から、好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下である。また、R
1により曲面24aをレンズとしたときの光の焦点距離が決定する。この焦点距離が長い場合、石英ブロック24の後段に配置されているファイバ保持部材23と光ファイバ11との隙間を光が通過する確率が高くなる。従って、これらの条件のバランスを考慮してR
1を設定することが好ましい。なお、曲面24aが球面に一致する場合、
図5に示すように、R
1は、その球の半径である。
【0028】
更に、
図5に示すように、表面張力の作用により、石英ブロック24の曲面24aと光ファイバ11の外周面との間に内側に没入した曲面25が形成されているとき、没入した曲面25の側面視における曲率半径をR
2とすると、R
2は、好ましくは30μm以上、より好ましくは80μm以上であり、また、好ましくは1500μm以下、より好ましくは750μm以下である。R
2/R
0は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.25以上であり、また、好ましくは2以下、より好ましくは1以下である。
【0029】
また、石英ブロック24の曲面24aが上記式(1)又は(2)で決定係数R
2が0.95以上で近似され且つ石英ブロック24の曲面24aと光ファイバ11の外周面との間に内側に没入した曲面25が形成されているとき、R
2/R
1は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、また、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下である。
【0030】
光ファイバ11の先端部は石英ブロック24に押し込められており、その先端は石英ブロック24の内部に位置している。石英ブロック24の曲面24aの後端から光ファイバ11の先端までの長さ、つまり、光ファイバ11の最小の押し込み量δは、
図6Aに示すように、光ファイバ11の先端面の全面が石英ブロック24に当接する状態である。
図6Bに示すように更に押し込められたときの石英ブロック24の曲面24aの後端からの光ファイバ11の押し込み量δは、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上である。また、光ファイバ11の押し込み量は、石英ブロック24の内部に押し込まれる光ファイバ11の変形のレーザ光の伝送特性への影響を抑える観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。なお、光ファイバ11の先端位置は、石英ブロック24の側面視で視認できるコア11aの先端位置である。
【0031】
以上の構成の実施形態に係る光ファイバ・石英ブロック接合構造Aは、
図7Aに示すように、光ファイバ11及び石英ブロック24の軸を一致させて配置し、
図7Bに示すように、光ファイバ11を石英ブロック24の曲面24aに近接させ、
図7Cに示すように、石英ブロック24の曲面24a部分、又は、光ファイバ11の先端部分及び石英ブロック24の曲面24a部分を加熱溶融させた後、
図7Dに示すように、光ファイバ11の先端面を石英ブロック24の曲面24aの頂部に当接させると共に、
図7Eに示すように、光ファイバ11を石英ブロック24の内部側に押し込むことにより得ることができる。
【0032】
ここで、光ファイバ11を石英ブロック24に接合する前に、
図8に示すように、石英ブロック24の光ファイバ11の接合予定部の平坦面24a’を加熱して溶融させることにより、その表面張力の作用で曲面24aに形成してもよい。このように石英ブロック24の曲面24aの形成を、光ファイバ11の接合予定部の平坦面24a’を加熱溶融させることにより行えば、表面が滑らかで、欠陥の少ない曲面24aを得ることができ、また、研磨により形成する場合のように研磨材等の不純物が混入することがなく、更に、加熱により不純物を蒸散させる等の効果があることから、結果として、信頼性が高く、接続損失を低減することができる。なお、石英ブロック24の曲面24aの形成は、研磨や研削等の機械加工によって行うこともできる。
【0033】
また、このとき、石英ブロック24の曲面24aの形成及びその曲面24aへの光ファイバ11の接合を一連の工程で行う観点からは、光ファイバ11の接合予定部の平坦面24a’を加熱して曲面24aに形成するのに連続して、光ファイバ11を石英ブロック24の曲面24aに接合することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、光ファイバ・石英ブロック接合構造及びその製造方法の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0035】
A 光ファイバ・石英ブロック接合構造
11 光ファイバ
24 石英ブロック
24a,25 曲面
24a’ 平坦面