(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
エレベーターのかごのように閉鎖された空間内では、乗車中の乗客は、かご内で特にすることがない場合が多い。また、百貨店などに設置されるエレベーターでは、乗客によっては、目的階に至るまでの途中階に停止させられることも多く、乗車している時間が長くなる傾向がある。このような時間を有効活用するために、エレベーター内に設置されたディスプレイを用いて、乗客に対して情報提供を行うエレベーター広告装置が従来からある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に係るエレベーター広告装置は、エレベーターの利用者を容易に判別して、利用者に適する広告を表示している。より具体的には、特許文献1は、かごの乗降口に設置されたマルチビームセンサから出力される赤外線ビームの受光信号から、乗り込んだ乗客の身長、または移動速度を算出している。
【0004】
そして、特許文献1は、算出した身長から子供か大人を判定し、算出した移動速度から壮年以下か老人かを判定する。さらに、特許文献1は、判定結果に基づいて、かご内ディスプレイに表示するコンテンツを選択している。この結果、乗客の属性に応じたコンテンツを広告することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のエレベーター広告装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るエレベーター広告装置1の全体構成図である。本実施の形態1におけるエレベーター広告装置1は、コンテンツ制御装置10と、エレベーターのかご10内に設置されたカメラ21およびディスプレイ22と、を備えて構成されている。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態1に係るエレベーター広告装置1に含まれるコンテンツ制御装置10の内部構成を示した図である。本実施の形態1におけるコンテンツ制御装置10は、表示コンテンツ制御部11および表示データ記憶部12を備えて構成されている。
【0014】
次に、
図1、
図2に基づいて、本実施の形態1におけるエレベーター広告装置1の具体的な機能、動作について説明する。カメラ21は、かご内の乗客を撮像する。一方、コンテンツ制御装置10内の表示コンテンツ制御部11は、カメラ21により撮像された画像に対して画像処理を施すことで、次の2つの機能を実行することを特徴としている。
【0015】
(1)初期表示コンテンツ決定機能
表示コンテンツ制御部11は、かご10内の乗客の画像から、乗客の属性を判断し、どのようなコンテンツを表示すべきかを決定する。
(2)表示コンテンツ修正機能
表示コンテンツ制御部11は、ディスプレイ22にすでに何らかのコンテンツを表示している状態において、かご10内の乗客の画像から乗客の視線を抽出し、コンテンツの評価を行う。
【0016】
そこで、上述した2つの機能について、具体的に説明する。
<初期表示コンテンツ決定機能の詳細説明>
表示コンテンツ制御部11は、かご10内の乗客の画像に対して画像処理を施すことで、人数、性別、年代などに関する情報を乗客属性情報として生成する。一方、表示データ記憶部12内には、乗客属性情報と複数の表示データとを対応付けたテーブルが記憶されている。
【0017】
従って、表示コンテンツ制御部11は、生成した乗客属性情報に基づいて、表示データ記憶部12内のテーブルに記憶された複数の表示データの中から適切な表示データ(コンテンツ)を抽出して、ディスプレイ22に表示させることができる。
【0018】
ここで、表示コンテンツ制御部11による適切な表示データの抽出処理について、百貨店のエレベーター内で広告を行う場合を具体例として、以下に列挙する。
(具体例1)表示コンテンツ制御部11は、乗客の男性人数と女性人数の比率から、女性向けのコンテンツを表示させるべきか、男性向けのコンテンツを表示させるべきか、男女共通のコンテンツを表示されるべきかを判断できる。
【0019】
(具体例2)表示コンテンツ制御部11は、乗客の中に子供が含まれていると判断した場合には、子供向けのコンテンツを表示させ、乗客の中に乳幼児を連れた母親が含まれていると判断した場合には、ベビー用品関連のコンテンツを表示させる。
【0020】
なお、表示コンテンツ制御部11による適切な表示データの抽出処理を実行するに当たっては、画像処理に基づく乗客属性情報を参照する以外に、以下のような属性情報をさらに参照することができる。
時間属性情報:朝昼夜、あるいは開店/閉店時間、昼食/夕食時間といった時間帯情報、または、春夏秋冬といった季節情報に相当する。
かご移動属性情報:移動先である目的階に関する情報、または目的階に到着するまでにかかる所要時間情報に相当する。
【0021】
このような時間属性情報、移動属性情報をさらに考慮した場合の、表示コンテンツ制御部11による適切な表示データの抽出処理の具体例を、以下に列挙する。なお、このように、時間属性情報、移動属性情報をさらに考慮する場合には、表示データ記憶部12内には、乗客属性情報とともに、時間属性情報、移動属性情報をさらに対応付けた状態で、複数の表示データがテーブルとして記憶されていることが必要である。
【0022】
(具体例3)表示コンテンツ制御部11は、乗客属性情報に基づいて、女性向けのコンテンツを表示させると判断した際に、さらに、時間属性情報から夏場の日中と判断した場合には、日傘や日焼け防止グッズなどの内容を特定して表示させることができる。
【0023】
(具体例4)表示コンテンツ制御部11は、乗客属性情報に基づいて、女性向けのコンテンツを表示させると判断した際に、さらに、目的階で取り扱っている商品内容に応じて、適切な内容を特定して表示させることができる。
(具体例5)表示コンテンツ制御部11は、乗客属性情報に基づいて、女性向けのコンテンツを表示させると判断した際に、さらに、目的階までの所要時間に応じて、適切な表示時間の内容を特定して表示させることができる。
【0024】
<表示コンテンツ修正機能の詳細説明>
本発明では、カメラにより取得した画像に基づいて表示されたコンテンツに対して、乗客がどれだけ興味を示しているかを定量的に評価し、評価結果に応じて表示内容をより適切なものに修正していく機能をさらに備えている。
【0025】
具体的には、表示コンテンツ制御部11は、上述した初期表示コンテンツ決定機能に基づいて決定したコンテンツを表示した状態において、カメラ21を介して取得した画像に対して画像処理を施すことで、利用者の視線がディスプレイ22の方向に向いているか否かを判断する。そして、表示コンテンツ制御部11は、判断結果に基づいてディスプレイ22を見ている乗客数の割合を求めることで、現在表示しているコンテンツの視聴率を算出することができる。
【0026】
表示コンテンツ制御部11は、算出した視聴率に基づいて、例えば、以下のような表示制御を行うことができる。
(表示制御1)表示コンテンツ制御部11は、視聴率があらかじめ設定した第1閾値以上であると判断した場合には、現状のコンテンツが適切であるとして、表示を継続する。
【0027】
(表示制御2)表示コンテンツ制御部11は、視聴率があらかじめ設定した第1閾値未満、かつ第2閾値以上であると判断した場合には、乗客の興味が予想よりも低いと判断し、現状のコンテンツから別の候補のコンテンツに切り替えて、表示内容の変更を考慮することができる。なお、表示データ記憶部12内に記憶される乗客属性情報と複数の表示データとを対応付けたテーブルとして、乗客属性情報ごとに優先順位を付けて表示データを記憶しておくことで、表示コンテンツ制御部11は、別の候補に切り替えることができる。
【0028】
(表示制御3)表示コンテンツ制御部11は、視聴率があらかじめ設定した第2閾値未満であると判断した場合には、乗客は、乗客同士の会話等、別のことを行っており、表示には興味がないと判断し、表示を消すことができる。あるいは、当日の天気や最新のニュースなど、万人向けのコンテンツに表示内容を変更することもできる。
【0029】
上述した表示制御1〜3は、百貨店での表示に関する一例を示したに過ぎず、本発明は、このような表示制御に限定されるものではない。表示コンテンツ制御部11は、それぞれの設置環境において、視聴率に応じてあらかじめ規定しておいた表示制御内容によって、かご内での乗客の動向を考慮した上で、表示コンテンツの最適化を図ることができる。
【0030】
以上のように、実施の形態1によれば、かご内の乗客を撮像した画像に基づいて、初期表示コンテンツ決定機能および表示コンテンツ修正機能を実現するための構成を備えている。具体的には、画像に基づいて乗客の属性を判断して、初期表示させるコンテンツを決定する機能とは別に、画像に基づいて表示コンテンツの視聴率を判断し、必要に応じて表示コンテンツを修正する機能を備えている点に特徴がある。
【0031】
従って、表示コンテンツ修正機能を備えることで、表示されたコンテンツが利用者にどれだけ視聴してもらえたかを定量的に評価し、評価結果に基づいて乗客にとって適切な表示内容を提供することのできるエレベーター広告装置を得ることができる。
【0032】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、乗客属性情報に対応付けられた複数の表示データのテーブルが表示データ記憶部12内にあらかじめ記憶されており、このテーブルに基づいて、初期表示を行うコンテンツ、あるいは切り替え表示を行うコンテンツを決定する場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、乗客属性情報との対応付けを学習機能により構築し、テーブルを構築あるいは修正する場合について説明する。
【0033】
視聴率を応用した表示制御としては、先の実施の形態1で詳述したように、初期の表示コンテンツの修正に用いるばかりでなく、表示コンテンツ制御部11に記憶させておくテーブルを構築する、あるいは修正する際の学習機能にも応用できる。
【0034】
先の実施の形態1では、表示コンテンツ制御部11は、初期表示コンテンツ決定機能により、画像から判断した乗客属性に対応する表示コンテンツを1つ決定し、表示させる場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、画像から判断した乗客属性に対応する表示コンテンツが複数存在する場合について、学習機能に基づいて、いずれの表示コンテンツが最適かを学習する。
【0035】
一例として、乗客属性から女性向けのコンテンツを表示させると判断された際に、女性向けの表示コンテンツの候補として、第1候補と第2候補の2つがある場合について説明する。この場合、表示コンテンツ制御部11は、まずは第1候補のコンテンツを表示させ、その際の視聴率を算出することで、第1候補の視聴率を学習する。
【0036】
同様に、表示コンテンツ制御部11は、乗客属性から女性向けのコンテンツを表示させると判断された別の機会において、第2候補のコンテンツを表示させ、その際の視聴率を算出することで、第2候補の視聴率を学習する。表示コンテンツ制御部11は、このような学習を所望回数繰り返すことで、第1候補と第2候補のいずれが女性向けのコンテンツとして適切かを評価することができる。
【0037】
そして、表示コンテンツ制御部11は、評価結果に基づいて、今後、女性向けのコンテンツを選択する際には、学習機能によって視聴率が高いと判断された方の候補を選択できるように、テーブルを修正することができる。また、表示コンテンツ制御部11は、次点であった候補については、視聴率に応じて切り替え表示を行うための、優先順位が2番目のコンテンツとして利用することができる。
【0038】
また、上述した例では、女性向けのコンテンツとして2候補が存在するテーブルがすでに記憶されている場合について説明したが、乗客属性との対応関係が決まっていない複数の表示データから、学習機能に基づいてテーブルを構築することもできる。この場合には、例えば、複数の表示データのうち、まず始めに、第1の表示データを初期表示させた際に画像処理を実行することで、乗車属性と視聴率との関係を、一定期間繰り返して学習する。
【0039】
このような学習処理を、全ての表示データに渡って、順次行うことで、表示コンテンツ制御部11は、乗客属性情報のそれぞれと、複数の表示データのそれぞれとの適切な対応関係を統計データとして収集することができ、テーブルを構築することができる。さらに、表示コンテンツ制御部11は、それぞれの乗客属性について、視聴率が高かった順に優先順位を設定してコンテンツを特定でき、視聴率に応じて切り替え表示を行うコンテンツの順位決めも行うことができる。
【0040】
また、上述した学習処理機能は、構築済みのテーブルを更新するために使用することもできる。例えば、定期的に学習機能を実行し、複数の表示データに対する視聴率評価を行うことで、視聴率があらかじめ設定された下限レベル以下のなった場合には、そのコンテンツは乗客に飽きられていると判断して削除し、テーブルを更新することができる。
【0041】
以上のように、実施の形態2によれば、学習機能により、乗客属性情報に対応付けられた複数の表示データのテーブルを構築あるいは修正できる構成を備えている。具体的には、画像に基づいて乗客の属性を判断して、複数の表示データのそれぞれに対する視聴率を学習していき、統計的なデータ処理に基づいて、乗客属性情報と複数の表示データとの適切な対応関係を特定したテーブルを構築できる。さらに、すでに構築済みのテーブルについても、学習機能により更新することができる。
【0042】
このような構成を備えることで、表示されたコンテンツが利用者にどれだけ視聴してもらえたかを定量的に評価し、評価結果に基づいて乗客にとって適切な表示内容を提供することのできるエレベーター広告装置を得ることができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態1、2では、エレベーターが百貨店に設置される場合を具体例として説明したが、住宅用のマンション、オフィスビル、駅ビル等、種々の設置環境におけるエレベーターに対しても、適切なテーブルを用いることで、初期表示コンテンツ決定機能および表示コンテンツ修正機能を実現することができる。さらに、乗客属性情報に加えて、設置環境に応じた時間属性情報や移動属性情報を考慮してテーブルを作成することで、それぞれの設置環境に適した表示制御を実現できる。
【0044】
また、乗客属性を判断する際には、画像処理以外にも、乗客が所有するチップからID情報を取得するなど、他の方法を採用することも可能である。換言すると、本発明における画像処理は、視聴率を算出するために適用することができればよい。