特許第6765239号(P6765239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765239
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】ダイアフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
   F04B43/02 N
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-137260(P2016-137260)
(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公開番号】特開2018-9463(P2018-9463A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 一清
(72)【発明者】
【氏名】山田 直人
(72)【発明者】
【氏名】成尾 元彰
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−545464(JP,A)
【文献】 特開2016−061169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内にポンプ室を形成するように配置されるとともに、流体を前記ポンプ室に吸い込みかつ流体を前記ポンプ室から吐出するために、前記ポンプ室の容積を変化させるように往復動可能に設けられたダイアフラムと、
複数の運転モードのうち、あらかじめ選択された運転モードに基づき、前記ダイアフラムを往復動させ得るように構成された駆動装置と、
運転モードおよびこれに対応する運転条件を入力可能な入力部を有し、運転モードおよび運転条件を設定しかつ送信し得るように構成された設定装置と、
前記設定装置により送信された運転モードおよび運転条件を受信し得るように構成されるとともに、前記設定装置から受信した運転モードおよび運転条件に従って前記ダイアフラムを往動または復動させるべく前記駆動装置を制御するように構成された制御装置と
を備え、
前記複数の運転モードが通常運転モードと部分運転モードとを含み、
通常運転モードでは、流体を前記ポンプ室に吸い込む吸込処理と、吸い込んだ流体を前記ポンプ室から吐出する吐出処理とが、一連の処理として連続的に実行され、
部分運転モードでは、前記設定装置が前記制御装置に運転条件として吸込速度を指定して指示する度に前記吸込処理が単独で実行され、前記設定装置が前記制御装置に運転条件として吐出速度を指定して指示する度に前記吐出処理が単独で実行される
ことを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項2】
前記複数の運転モードのうち、前記部分運転モードが選択された場合に、前記設定装置が前記制御装置に一回の指示を与えるたびに、その指示に応じた第1の所定量の流体についての前記吸込処理または前記吐出処理が単独で一回実行される、請求項1に記載のダイアフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
薬液等の流体の移送を行うためのダイアフラムポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のダイアフラムポンプは、半導体、液晶、有機EL、太陽電池、または、LEDの製造等のためによく使用されるものであり、ダイアフラムと、駆動装置と、制御装置とを備えている。
【0003】
前記ダイアフラムポンプにおいて、前記ダイアフラムは、前記ハウジング内にポンプ室を形成するように配置されるとともに、流体を前記ポンプ室に吸い込みかつ流体を前記ポンプ室から吐出するために、前記ポンプ室の容積を変化させるように往復動可能に設けられている。
【0004】
前記駆動装置は、前記ダイアフラムを往復動させ得るように構成されている。前記制御装置は、あらかじめ設定された運転条件(吸込および吐出を連続的に実行する一連の処理に関する条件)に従って、前記ダイアフラムを往動または復動させるべく前記駆動装置を制御するように構成されている。
【0005】
そして、前記ダイアフラムポンプが、流体の移送を行うために運転されるとき、前記駆動装置および前記制御装置を用いて前記ダイアフラムを往復動させ、これにより流体を吸い込む吸込処理(吸込工程)と、流体を吐出する吐出処理(吐出工程)とを交互に繰り返して実行するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−23935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のようなダイアフラムポンプの運転時には、その運転条件が流体の種類について不適切なものである場合、具体的には、吸込処理に関し流体の吸込速度を適切なものよりも速く設定してしまった場合、前記ダイアフラムポンプから吐出された流体に気泡(マイクロバルブ)が混入することがある。
【0008】
このような流体への気泡の混入は、不適正なものであり、前記ダイアフラムポンプの運転条件の不適切さを示す。そこで、流体の種類に応じた適切な運転条件を見出すために、運転条件を変化させながら吸込処理および吐出処理を伴う運転を行い、流体への気泡の混入の有無を確認する必要がある。
【0009】
しかしながら、この確認に際し、前記ダイアフラムポンプにおいては、前記吸込処理と前記吐出処理とが一組の処理として扱われ、運転条件の変化のたびにこの一組の処理が実行されるので、流体の種類に応じた適切な運転条件を見出すために比較的多量の流体の移送を行わざるを得ない。
【0010】
つまり、前記ダイアフラムポンプの運転条件の最適化だけのために使用され、実際の目的には使用できない無駄な流体が増加する傾向がある。そのため、前記ダイアフラムポンプの運転時、コストの増大を招くおそれがあった。特に、流体が高価である場合、コストの増大が顕著になりやすかった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、適切な運転条件の設定を低コストで実現できるダイアフラムポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
ハウジングと、
前記ハウジング内にポンプ室を形成するように配置されるとともに、流体を前記ポンプ室に吸い込みかつ流体を前記ポンプ室から吐出するために、前記ポンプ室の容積を変化させるように往復動可能に設けられたダイアフラムと、
複数の運転モードのうち、あらかじめ選択された運転モードに基づき、前記ダイアフラムを往復動させ得るように構成された駆動装置と、
運転モードおよびこれに対応する運転条件を入力可能な入力部を有し、運転モードおよび運転条件を設定しかつ送信し得るように構成された設定装置と、
前記設定装置により送信された運転モードおよび運転条件を受信し得るように構成されるとともに、前記設定装置から受信した運転モードおよび運転条件に従って前記ダイアフラムを往動または復動させるべく前記駆動装置を制御するように構成された制御装置とを備え、
前記複数の運転モードが、流体を吸い込む吸込処理および吸い込んだ流体を吐出する吐出処理の一連の処理が連続的に実行されるように前記駆動装置を駆動させる通常運転モード、ならびに、ユーザが所望の運転条件を設定して指示するごとに当該運転条件に応じた前記吸込処理または前記吐出処理個別に実行されるように前記駆動装置を駆動させる部分運転モードを有するダイアフラムポンプである。
【0013】
この構成によれば、前記部分運転モードを選択することにより、前記ダイアフラムポンプを通常運転モードにおいて適切な運転条件で運転できるように、流体の種類に応じた適切な運転条件を把握することが可能となる。また、前記部分運転モードにおける前記ダイアフラムポンプの運転時、前記吸込処理および前記吐出処理を単独で実行可能となる。すなわち、この際、前記吸込処理ごとに、また、前記吐出処理ごとに運転条件を変化させながら、流体の処理を個別に実行可能となる。したがって、一回の吸込量または吐出量を微量に設定した状態で、前記ダイアフラムポンプを複数の運転条件で運転させることができ、適切な運転条件を見出すために使用する流体の流量の節減化を図ることができる。よって、適切な運転条件の把握を低コストで実現できる。
【0014】
本発明の別の態様によれば、
前記複数の運転モードのうち、前記部分運転モードが選択された場合に、前記設定装置が前記制御装置に一回の指示を与えるたびに、その指示に応じた第1の所定量の流体についての前記吸込処理または前記吐出処理が単独で一回実行される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、適切な運転条件の把握を低コストで実現できるダイアフラムポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るダイアフラムポンプの吐出工程終了時の状態を示す側面断面図である。
図2図1のダイアフラムポンプの吸込工程終了時の状態を示す側面断面図である。
図3図1のダイアフラムポンプのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るダイアフラムポンプ1について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
前記ダイアフラムポンプ1は、薬液等の流体の移送を行うための容積式往復動ポンプである。前記ダイアフラムポンプ1は、図1および図2に示すように、ハウジング2と、ダイアフラム3と、駆動装置4とを備えるとともに、設定装置7と、制御装置8とを備えている。
【0019】
以下の説明において、前後方向とは図面中の上下方向を指し、前進とは前方への移動をいい、後退とは後方への移動をいうこととする。
【0020】
本実施形態において、前記ハウジング2は、シリンダ11と、ポンプヘッド12とを有している。前記シリンダ11は、例えば、SUS304等のステンレス鋼から構成される。前記シリンダ11は、円筒形状を有し、軸方向が前後方向となるように配置されている。
【0021】
前記シリンダ11は、通気口13を有している。前記通気口13は、前記シリンダ11の軸方向と交差する方向に貫通するように、当該シリンダ11の側部に設けられている。前記通気口13は、真空ポンプまたはアスピレータ等の減圧装置(図示せず)と接続可能とされている。
【0022】
前記ポンプヘッド12は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から構成される。前記ポンプヘッド12は、前記シリンダ11と略同一の内径をもつ有蓋円筒形状を有し、前記シリンダ11と同軸的に配置されている。
【0023】
前記ポンプヘッド12は、前記シリンダ11の軸方向一方側(前側)の開口部を閉塞するように、前記シリンダ11の軸方向一端部(前端部)に取り付けられている。これにより、前記ハウジング2内に、前記シリンダ11と前記ポンプヘッド12とに囲まれた第1内部空間14が形成されている。
【0024】
前記ポンプヘッド12は、吸込口15および吐出口16を有している。前記吸込口15は、前記ポンプヘッド12の軸方向と交差する方向に貫通するように、当該ポンプヘッド12の側部に設けられている。前記吸込口15は、流体の供給元となる所定の機器(図示せず)と吸入側の開閉バルブおよび配管等を介して接続可能とされている。
【0025】
前記吐出口16は、前記ポンプヘッド12の軸方向に貫通するように、当該ポンプヘッド12の軸方向一端部(前端部)、即ち蓋部18に設けられている。前記吐出口16は、前記蓋部18の径方向中央部分に配置され、流体の供給先となる所定の機器(図示せず)と吐出側の開閉バルブおよび配管等を介して接続可能とされている。
【0026】
前記駆動装置4は、複数の運転モードのうち、あらかじめ選択された前記ダイアフラムポンプ1の運転モードに基づき、前記ダイアフラム3を往復動させ得るように構成されている。本実施形態において、前記駆動装置4は、可動部材であるピストン21およびシャフト22を有している。前記ピストン21および前記シャフト22は、それぞれ、前記ハウジング2内に往復動可能に設けられている。
【0027】
前記ピストン21は、例えば、アルミニウム合金から構成される。前記ピストン21は、凹状部分を含む円柱形状を有し、前記ハウジング2(前記シリンダ11)と同軸的に配置されている。前記ピストン21は、前記ハウジング2において前記第1内部空間14に収容されている。
【0028】
そして、前記ピストン21は、前記ハウジング2(前記シリンダ11および前記ポンプヘッド12)の内壁との間に隙間を生じさせるように設けられるとともに、前記ハウジング2の軸方向(前後方向)に前記ハウジング2の内壁に沿って往復動可能に設けられている。
【0029】
前記シャフト22は、例えば、焼き入れされた高炭素クロム軸受鋼等の鋼材から構成される。前記シャフト22は、前記ピストン21と同軸的に配置され、前記ハウジング2内を前記第1内部空間14と第2内部空間24とに区画する隔壁25にOリング26を介して軸方向に往復動可能に貫設されている。
【0030】
ここで、前記Oリング26は、前記Oリング押え27により前記隔壁25に保持されている。前記Oリング押え27は、前記ハウジング2に収容される静止部材であり、例えば、ステンレスから構成される。前記Oリング押え27は、前記シャフト22を接触させないように貫通させた状態で、前記ハウジング2の前記第2内部空間24に配置されている。
【0031】
前記シャフト22は、前記第1内部空間14に位置する軸方向一端部(前端部)と、前記第2内部空間24に位置する軸方向他端部(前端部)とを有している。前記シャフト22は、前記ピストン21と一体的に往復動するように、前記軸方向一端部で前記ピストン21と接続されている。
【0032】
前記駆動装置4は、また、前記可動部材として、前記シャフト22を前記ハウジング2に保持するためのシャフトホルダ29を有している。前記シャフトホルダ29は、例えば、ステンレスから構成される。前記シャフトホルダ29は、前記ハウジング2の前記第2内部空間24に配置され、前記シャフト22と後述の出力軸42とを結合するように設けられている。
【0033】
前記ダイアフラム3は、前記ハウジング2内にポンプ室28を形成するように配置されるとともに、前記ポンプ室28の容積を変化させるように原点位置を基準として往復動可能に設けられている。前記ダイアフラム3は、ローリングダイアフラムである。
【0034】
本実施形態において、前記ダイアフラム3は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から構成される。前記ダイアフラム3は、有蓋筒形状を呈する中央部分を有するものであり、この中央部分で前記ピストン21を軸方向一方側(前側)から覆うように設けられている。
【0035】
詳しくは、前記ダイアフラム3は、中央部31と、外周部32と、折返部33とを有している。前記中央部31は、前記ダイアフラム3の蓋部分をなすものであり、前記ポンプ室28に臨みかつ前記ハウジング2の軸方向一端部(天井部)、即ち前記蓋部18と対向するように前記ピストン21に取り付けられている。
【0036】
前記外周部32は、前記ダイアフラム3の外周縁部分をなすものであり、前記中央部31の径方向外側に配置されるとともに、前記シリンダ11と前記ポンプヘッド12とに挟持されている。前記折返部33は、可撓性を有するものであり、前記中央部31と前記外周部32との間に変形可能に設けられている。
【0037】
そして、前記ダイアフラム3は、前記外周部32により前記ハウジング2に対して位置固定された状態で、前記折返部33を前記ハウジング2の内壁と前記ピストン21との間で変形させかつ前記中央部31の位置を軸方向に変化させながら、前記ピストン21と一体的に往復動し得るようになっている。
【0038】
前記ダイアフラム3は、また、前記ハウジング2の第1内部空間14を前記ポンプ室28と減圧室38とに区画するように設けられている。前記ポンプ室28は、前記ダイアフラム3(前記中央部31および前記折返部33)と前記ポンプヘッド12とにより囲まれて形成されている。
【0039】
そのため、前記ポンプ室28は、前記ピストン21との一体的な往復動に伴う前記ダイアフラム3の位置の変化、即ち前記折返部33の変形を伴う前記中央部31の位置の変化によって、当該ポンプ室28の容積を変化(増大または減少)させられるようになっている。
【0040】
ここで、前記ポンプ室28は、前記吸込口15および前記吐出口16の各々と接続されて、前記吸込口15から吸い込まれた流体を一時的に貯溜できるようになっている。前記減圧室38は、前記通気口13と接続され、前記減圧装置により減圧され得るようになっている。
【0041】
前記ダイアフラムポンプ1においては、また、前記駆動装置4が、駆動源としてのモータ40を有している。本実施形態において、前記駆動装置4は、前記ピストン21、前記シャフト22および前記モータ40に加え、前記可動部材である前記出力軸42を更に有している。
【0042】
前記モータ40は、パルスモータ(ステッピングモータ)である。前記モータ40は、前記ハウジング2の軸方向他方側(後側)に設けられている。前記出力軸42は、ネジ軸(送りねじ)である。前記出力軸42は、前記モータ40の回転軸に対して連動するように接続されている。
【0043】
前記出力軸42は、前記モータ40側から前記ハウジング2内へ突出した状態で軸方向に往復動可能に設けられている。前記出力軸42は、前記シャフト22と同軸的に配置され、軸方向一端部(前端部)で前記シャフト22の軸方向他端部(後端部)と前記シャフトホルダ29を介して接続されている。
【0044】
そして、前記駆動装置4は、前記出力軸42および前記ピストン21等を介して前記ダイアフラム3を軸方向(前後方向)に往復移動させ得るように、前記モータ40の回転運動を直線運動に変換して前記出力軸42から前記シャフト22に伝達し得るようになっている。
【0045】
また、前記駆動装置4においては、エンコーダ45が使用される(図3参照)。前記エンコーダ45は、前記モータ40の回転軸に取り付けられている。前記エンコーダ45は、前記モータ40の駆動制御のためのものであり、前記モータ40の回転に同期したパルス信号を出力するように構成されている。
【0046】
図3に示すように、前記設定装置7は、入力部53を有し、前記ダイアフラムポンプ1の運転モードおよび運転条件を設定しかつ送信し得るように構成されている。前記入力部53は、前記ダイアフラムポンプ1の運転モードおよびこれに対応する運転条件を入力可能なものである。本実施形態において、前記設定装置7は、前記ダイアフラムポンプ1の運転モードおよび運転条件を表示可能な表示部54を有している。
【0047】
前記設定装置7は、前記入力部53を介して、選択された運転モードに対応する任意の運転条件パラメータ(例えば、吸込に関するパラメータ(吸込速度等)、吐出に関するパラメータ(吐出速度等)、または、前記ダイアフラム3に関するパラメータ(移動量等))を入力され、その入力された情報に基づき、前記ダイアフラムポンプ1の運転条件を設定し、前記制御装置8に送信できるようになっている。
【0048】
なお、前記設定装置7は、前記ダイアフラムポンプ1の運転条件を設定可能なものであればよく、前記制御装置8と別体に構成されたものであってもよいし、前記制御装置8と一体的に構成されたものであってもよい。
【0049】
また、前記制御装置8は、前記設定装置7により送信された前記ダイアフラムポンプ1の運転モードおよび運転条件を受信し得るように構成されている。そして、前記制御装置8は、前記設定装置7から受信した前記ダイアフラムポンプ1の運転モードおよび運転条件に従って前記ダイアフラム3を往動または復動させるべく前記駆動装置4を制御するように構成されている。
【0050】
なお、ここで、前記ダイアフラム3の往復動のうちの往動とは前方(前記ポンプ室28の容積が減少する方向)への移動(前進)であり、復動とは反対の後方(前記ポンプ室28の容積が増大する方向)への移動(後退)である。
【0051】
本実施形態において、前記制御装置8は、図3に示すように、コントローラ(制御基板)47を介して前記モータ40および前記エンコーダ45と接続されている。前記制御装置8は、前記モータ40を駆動制御するため、駆動信号を前記コントローラ47へ出力できる構成となっており、前記コントローラ47は、その駆動信号に基づき、前記モータ40を駆動するためのパルス信号を前記モータ40に出力する構成となっている。
【0052】
前記コントローラ47は、前記エンコーダ45より出力されたパルス信号を取得し、その取得したパルス信号(パルス数)に基づき、前記モータ40の回転量(回転角度)等を検知し、その検知した回転量等を前記制御装置8に出力する構成となっている。前記制御装置8は、前記コントローラ47より取得した回転量に基づき、前記ダイアフラム3の往復動方向に関する位置を把握できるようになっている。
【0053】
そして、前記制御装置8は、前記ダイアフラムポンプ1の運転時に流体の移送のために吸込工程と吐出工程とを交互に行うべく、前記ダイアフラム3を前記ハウジング2の軸方向に往復動させるように前記モータ40の駆動制御を行うことができるようになっている。
【0054】
前記吸込工程においては、前記モータ40が負回転し、前記ダイアフラム3を前記ポンプ室28の容積が増大する方向へ(図1に示す状態から図2に示す状態へ)変位させるように前記ピストン21を介して復動させる。このとき、前記制御装置8は、前記吸入側の開閉バルブを開き、かつ、前記吐出側の開閉バルブを閉じる制御も行う。これにより、流体が前記ポンプ室28に前記吸込口15を通じて吸い込まれることとなる。
【0055】
一方、前記吐出工程においては、前記モータ40が正回転し、前記ダイアフラム3を前記ポンプ室28の容積が減少する方向へ(図2に示す状態から図1に示す状態へ)変位させるように前記ピストン21を介して往動させる。このとき、前記制御装置8は、前記吸入側の開閉バルブを閉じ、前記吐出側の開閉バルブを開く制御も行う。これにより、流体が前記ポンプ室28から前記吐出口16を通じて吐出されることとなる。
【0056】
そして、このように構成される前記ダイアフラムポンプ1が、前述の通り複数の運転モードを有している。前記複数の運転モードには、少なくとも、流体を吸い込む吸込処理(吸込工程)および吸い込んだ流体を吐出する吐出処理(吐出工程)の一連の処理(吸込→吐出工程)が実行されるように前記駆動装置4を駆動させる通常運転モード、ならびに、前記一連の処理の一部が実行されるように前記駆動装置4を駆動させる部分運転モードが含まれる。
【0057】
前記部分運転モードは、主として、前記通常運転モードに応じた当該ダイアフラムポンプ1の運転条件を設定するために用いられるが、前記ダイアフラムポンプ1において移送される薬液の状態確認(異物の混入がないか等の確認)のために用いてもよい。
【0058】
前記通常運転モードは、通常、流体の移送を行うときに選択されるものであって、前記一連の処理が連続的に実行されるモードである(自動運転)。ここで、「連続的」とは、前記ダイアフラム3の往復動が休止を挟むことなく連続して行われる場合だけでなく、往復動が一時的な休止を挟んで(間欠的に)連続して行われる場合をも含む意味である。
【0059】
前記部分運転モードは、たとえば、初めての流体の移送を行うとき(例えば、前記ダイアフラムポンプ1の初使用時、もしくは、移送する流体の種類の変更時)、または、流体の状態確認を行うときに選択されるものであって、前記一連の処理の一部のみが実行されるモードである(手動運転)。
1.
【0060】
本実施形態において、運転モードは、前記設定装置7においてユーザが前記複数の運転モードのうちから選択設定できるようになっている。ユーザによる運転モードの選択設定後、その選択された運転モードに対応する運転条件が設定されるように、前記設定装置7においてユーザにより任意の運転条件パラメータが入力されるようになっている。
【0061】
そして、前記設定装置7により選択設定された運転モードおよび入力された運転条件パラメータに基づき設定された運転条件が、前記制御装置8に送信されるようになっている。こうして、前記制御装置8が、これらの運転モードおよび運転条件を満たすように前記設定装置7から指示され、その指示に従って前記ダイアフラム3を往動または復動させるべく前記駆動装置4を駆動させるようになっている。
【0062】
また、前記ダイアフラムポンプ1においては、前記複数の運転モードのうち、前記部分運転モードが選択された場合に、前記設定装置7から前記制御装置8に任意のタイミングで与えられる運転条件に関する指示に応じて、流体を吸い込む吸込処理および流体を吐出する吐出処理が互いに独立して実行され得るようになっている。
【0063】
すなわち、この場合、前記ダイアフラムポンプ1において、前記吸込処理(前記吸込工程)と前記吐出処理(前記吐出工程)とが、それぞれ、前記一連の処理の一部として単独で実行され得るようになっている。したがって、前記吸込処理と前記吐出処理とを一連の処理として実行させずに済み、これらの連続する処理に応じた運転条件を設定する必要がないようになっている。
【0064】
また、本実施形態においては、前記複数の運転モードのうち、前記部分運転モードが選択された場合に、前記設定装置7が前記制御装置8に一回の指示(前記吸込処理または前記吐出処理に関する運転条件)を与えるたびに、その指示に応じた第1の所定量の流体についての前記吸込処理または前記吐出処理が一回実行されるようになっている。なお、前記第1の所定量は、前記設定装置7においてユーザにより入力された任意の運転条件パラメータに基づき、任意に設定され得るものである。
【0065】
ユーザは、前記設定装置7において、所望の運転条件パラメータを任意に入力することができるようになっている。すなわち、吸込速度および吐出速度を低速から高速まで幅広く指定することができるし、移動量も微小量からまとまった量まで幅広く指定することができるようになっている。
【0066】
また、ユーザは、前記設定装置7において、前記吸込処理または前記吐出処理の実行を指示することができるようになっている。例えば、前記設定装置7には、前記吸込処理または前記吐出処理を実行するための操作部としての実行ボタンが設けられており、ユーザはその実行ボタンを押下することにより、前記吸込処理または前記吐出処理の実行を指示することができる。ユーザが指示するごとに、前記設定装置7から前記制御装置8に指示が与えられる。
【0067】
ユーザは、まとまった量の移動量を指定し、一度だけ前記吸込処理または前記吐出処理の実行を指示することもできるし、微小量の移動量を指定し、連続的に実行ボタンを押下するなどして立続けに前記吸込処理または前記吐出処理の実行を指示することもできる。
【0068】
以上のことから、前記ダイアフラムポンプ1によれば、前記吸込処理と前記吐出処理とを異なる運転条件で運転させることができる。そのため、前記部分運転モードの選択後に、運転条件パラメータとして前記吸込処理に関する任意のパラメータの入力を行い、これに応じた前記吸込処理が行われるように前記ダイアフラムポンプ1を運転させることが可能となる。
【0069】
前記部分運転モードの選択後には、また、運転条件パラメータとして前記吐出処理に関する任意のパラメータの入力を行い、これに応じた前記吐出処理が行われるように前記ダイアフラムポンプ1を運転させることが可能となる。よって、運転条件を前記吸込処理と前記吐出処理とで個別に調整しながら、前記ダイアフラムポンプ1の運転を行うことができる。
【0070】
つまり、前記部分運転モードを選択することにより、前記ダイアフラムポンプを通常運転モードにおいて適切な運転条件で運転できるように、流体の種類に応じた適切な運転条件を把握することが可能となる。また、前記部分運転モードにおける前記ダイアフラムポンプ1の運転時、前記吸込処理および前記吐出処理を単独で実行可能となる。
【0071】
換言すれば、この際、前記吸込処理ごとに、また、前記吐出処理ごとに運転条件を変化させながら、流体の処理を個々に実行可能となる。したがって、一回の吸込量または吐出量を微量に設定した状態で前記ダイアフラムポンプ1を複数の運転条件で運転させることができ、流体に気泡(マイクロバルブ)が混入しない適切な運転条件を見出すために使用する流体の流量の節減化を図ることができる。よって、適切な運転条件の把握を低コストで実現できる。
【0072】
なお、本実施形態においては、吐出後の流体への気泡の混入の有無を確認することによって、前記ダイアフラムポンプ1の運転条件が適切なものであるか否かを判定することができる。この確認は、前記吐出側の排気管をその内部を視認可能な色(透明または半透明)をもつものとし、前記吐出口から吐出された流体を当該吐出側の配管を介して視認することにより行うことができる。
【0073】
結果、前記吐出後の流体に気泡が混入していなければ、その時点で設定された前記ダイアフラムポンプ1の運転条件が適切であると判定することができる。一方、前記吐出後の流体に気泡が混入していれば、前記ダイアフラムポンプ1の運転条件が不適切であると判定することができる。流体の視認に際しては、流体の流速等により視認性に悪影響が及ぶ場合には、前記設定装置7において、吸込速度または吐出速度の運転条件を変更するか、或いは、前記ダイアフラムポンプ1の運転を一時的に停止させればよい。
【0074】
また、前記部分運転モードを選択することにより、前記ダイアフラムポンプ1において移送される薬液等の流体の状態確認(異物の混入がないか等の確認)を行うことが可能となる。
【0075】
前述した実施形態において、前記駆動装置4、前記設定装置7および前記制御装置8の構造的な構成や機能的な構成は、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。例えば、前記コントローラ47は、前記制御装置8に組み込まれていてもよい。その場合、前記モータ40および前記エンコーダ45は、前記制御装置8と直接接続され、前記制御装置8は、前記モータ40を駆動するためのパルス信号を前記モータ40に出力するとともに、前記エンコーダ45より出力されるパルス信号を取得し、その取得したパルス信号に基づき、前記モータ40の回転量(回転角度)等を検知する。また、前記モータ40は、パルスモータ(ステッピングモータ)以外のモータであってもよい。
【0076】
また、前記複数の運転モードには、前記通常運転モードおよび前記部分運転モード以外の運転モードが含まれていてもよい。また、前記通常運転モードや前記部分運転モードは、さらに詳細な運転モードに区分されていてもよい。具体的には、部分運転モードは、往動(前進)時部分運転モードと復動(後退)時部分運転モードに区分されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 ダイアフラムポンプ
2 ハウジング
3 ダイアフラム
4 駆動装置
7 設定装置
8 制御装置
53 入力部
図1
図2
図3