特許第6765243号(P6765243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765243
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/71 20110101AFI20200928BHJP
【FI】
   H01R12/71
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-139324(P2016-139324)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-10801(P2018-10801A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和成
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−214089(JP,A)
【文献】 特開2014−067723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00−12/91
H01R24/00−24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手接続体との接続方向に対して直角な方向を端子配列方向としてハウジングにより配列保持されている複数の端子を有する電気コネクタにおいて、
上記端子は、金属板製で、上記端子配列方向が板厚方向をなしていて該板厚方向で対面する板面をもって互いに分離して上記接続方向に延びる少なくとも二つの腕部を有し、
上記二つの腕部は、それらの基部で互いに連結されていて、独立して弾性変位して相手接続体と接触可能であり、上記相手接続体に設けられた対応接触部と接触するための上記二つの腕部の接触部が上記接続方向で上記基部とは反対側となる先端側にそれぞれ形成されており、
二つの腕部の接触部は、接続方向で互いに異なる位置にあるとともに、二つの腕部の接触部のうち少なくとも一方が腕部の基部側部分に対して端子配列方向に偏倚して位置するように板厚方向に屈曲された形状をなしていて、上記端子配列方向で重複する位置にあることを特徴とする電気コネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの端子に複数の接触部が設けられた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタに設けられる端子は、相手コネクタに設けられた相手端子との接触の信頼性を向上させるために、一つの端子が複数の接触部をもつように形成されることがある。このような複数の接触部をもつ端子が設けられた電気コネクタは、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1では、それぞれの多接点コンタクト(端子)は、相手コネクタに設けられたピンコンタクト(相手端子)に、後述する四つの接点部(接触部)でそれぞれ接圧をもって接触するようになっている。上記多接点コンタクトは、金属板部材を折り曲げて作られており、コネクタ同士の接続方向から見た形状が略U字形状をなし互いに対向する二つの脚部と該脚部同士を連結する連結部とを備えていて、ハウジングに保持される保持部と、該保持部の対向する二つの脚部から上記接続方向に延びる第一ないし第三ばね片を有し、第一と第二ばね部の先端に相手端子を挟圧する第一と第二接点部が設けられ、第一ばね片と第二ばね片の間に位置する第三ばね片の先端が上記第一と第二接点部よりも先方に設けられて上記相手端子を挟圧する第三と第四接点部とを有している。かくして多接点コンタクトは全体として上記略U字形状をなしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のコネクタの多接点コンタクトは、第一および第二接点部同士間そして第三接点部及び第四接点部同士間のそれぞれに、上記ピンコンタクトの進入が可能な程度の間隔を形成する必要がある。このように、第一および第二接点部同士間そして第三接点部及び第四接点部同士間が離間していると、信号は互いに離間した二つの経路で伝送されることとなる。この結果、例えば、コネクタを高速伝送信号用として使用すると、上記多接点コンタクトでのインピーダンス特性が低下する。また、接点部同士間が離間している分だけ、すなわちばね片同士間が離間している分だけ各多接点コンタクトの端子配列方向での寸法が大きくなるので、該多接点コンタクトを多数配列したとき、端子配列方向で電気コネクタが大型化する。
【0004】
そこで、特許文献2では、端子が金属板部材を折り曲げて一部材として作られていて、端子配列方向で対面する板面をもって並行し互いに分離して相手接続体へ向けた接続方向に延びる二つの腕部を有し、該二つの腕部の基部が上述した折り曲げにより互いにその板厚方向で近接した状態で連結されて、上記二つの腕部が、上記板面を含む面内で独立して弾性変位可能として、上記相手接続体に設けられた対応接触部と接触するための接触部が上記接続方向での先端側にそれぞれ形成されている電気コネクタを提案している。この二つの腕部の接触部は、それぞれ該接触部の板厚面で、一つの上記対応接触部の板面に接圧をもって接触して近接配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平05−009822
【特許文献2】特開2014−127422
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる特許文献2における端子は金属板部材を折り曲げて、二つの腕部を形成している結果、両腕部の接触部同士は、互いに近接することとなるので、特許文献1がかかえていたインピーダンス特性の低下という問題は解決される。しかしながら、二つの接触部同士は近接しているとはいうものの、端子配列方向では異なる位置にある。したがって、相手接続体に異物が付着している場合には、上記二つの接触部が該相手接続体に対して摺動しながら接続状態に入るときに、異物が上記二つの接触部の両方で相手接続体と間に噛み込まれてしまうことがある。その結果、二つの接触部の両方で接触不良を生ずるということになる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、二つの腕部のそれぞれに接触部を有している端子で、インピーダンス特性の低下を防止しつつ、相手接続体に異物が付着していても、接触部が相手接続体との間で良好な接続状態を確保できる電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気コネクタは、相手接続体との接続方向に対して直角な方向を端子配列方向としてハウジングにより配列保持されている複数の端子を有している。
【0009】
かかる電気コネクタにおいて、本発明では、上記端子は、金属板製で、上記端子配列方向で対面する板面をもって互いに分離して上記接続方向に延びる少なくとも二つの腕部を有し、上記二つの腕部は、それらの基部で互いに連結されていて、独立して弾性変位して相手接続体と接触可能であり、上記相手接続体に設けられた対応接触部と接触するための上記二つの腕部の接触部が上記接続方向で上記基部とは反対側となる先端側にそれぞれ形成されており、二つの腕部の接触部は、接続方向で互いに異なる位置にあるとともに、相手接続体との接続状態で、上記端子配列方向で重複する位置にあることを特徴としている。
【0010】
このように本発明では、一つの端子をなす二つの腕部のそれぞれに設けられた接触部が、相手接続体との接続方向で延びる一つの直線上で前後して位置している。したがって、相手接続体の接続部位に異物が付着していた場合、二つの接触部のうち先頭の接触部が異物を掻き取るので、後続の接触部には上記異物が及ぶことがなくなり、後続の接触部が確実な良好接触となる。
【0011】
本発明において二つの腕部の接触部のうち少なくとも一方が腕体の基部側部分に対して端子配列方向に偏倚した屈曲形状をなしているようにすることで、二つの接触部を一つの線上で前後して位置させることできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように、一つの端子に設けられた二つの腕部の接触部が、接続方向で互いに異なる位置にあるとともに、相手接続体との接続状態で、端子配列方向で同位置にて接続方向に延びる一つの直線上に位置しているようにしたので、上記二つの腕部の接触部が上記接続方向の一つの直線上で前後して位置し、その結果、相手接続体の接触部位に異物が付着していても、先頭の接触部が異物を掻き取るので、後続の接触部には上記異物が及ぶことがなくなり、少なくとも後続の接触部が確実に良好に相手接続体と接触する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態としてのレセプタクルコネクタとその相手方となるプラグコネクタの外観を、コネクタ嵌合接続前の状態で示す斜視図である。
図2図1のレセプタクルコネクタとプラグコネクタとをコネクタ嵌合接続前の状態で示す、端子位置での縦断面図である。
図3図1のレセプタクルコネクタとプラグコネクタから端子を一つずつ抜き出して示し斜視図であり、(A)はコネクタ嵌合接続前、(B)はコネクタ嵌合接続後の状態を示す。
図4図3のレセプタクルコネクタの端子を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
図5図3のレセプタクルコネクタの端子の変形例で、端子の主要部のみを示し、(A)は第一の変形例、(B)は第二の変形例、(C)は第三の変形例についての斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のレセプタクルコネクタ1と、これに嵌合接続される相手方としてのプラグコネクタ2とを、嵌合前の状態での外観を示す斜視図である。
【0016】
レセプタクルコネクタ1は、電気絶縁材製のレセプタクルハウジング10と、該レセプタクルハウジング10に配列保持される金属板製の複数の端子20とを有している。レセプタクルハウジング10は、端子20の配列方向をなすコネクタ幅方向の寸法がこれに対して直角なコネクタ厚み方向の寸法よりも大きく、かつプラグコネクタ2との嵌合方向となる接続方向をなす上下方向に高く延びた略直方体外形をなしている。該レセプタクルハウジング10は、相手方たるプラグコネクタ2の後述する嵌合凹部内に設けられた嵌合凸部を受け入れるための受入凹部11が上方に向け開口して形成され、上半部10Aの外周面が上記プラグコネクタ2の嵌合凹部に嵌入する嵌合外面12となっている。上記レセプタクルハウジング10は、外周面に嵌合外面12が形成された上半部10Aに対しそれよりも下方の下半部10Bが、該嵌合外面12に対し段状をなして端子配列をなすコネクタ幅方向そして厚み方向に突出しており、特に、コネクタ幅方向両端部分では他部分よりも大きく突出して位置決め部13を形成している。該位置決め部13の上面をなすプラグコネクタに対する対向面13Aは相手方たるプラグコネクタ2の対応下端面をなす対向面と当接することでプラグコネクタ2の嵌合深さ位置を決め、また該位置決め部13の底面13Bは該レセプタクルコネクタ1の回路基板(図示せず)上での位置を決める。さらに、上記位置決め部13の端子配列方向の端面には金具保持突部14が突出して設けられていて、その上面そして側面にわたり門型状の溝部14Aが形成されていて、該溝部14Aに門型の固定金具30が圧入取付けされている。該固定金具30は下端にコネクタ厚み方向での横方向に延出する固定部31を有し、該固定部31にて回路基板の対応部へ半田固定される。
【0017】
かかるレセプタクルコネクタ1の端子20は、上記レセプタクルハウジング10の受入凹部11の内面に位置する接触部21とレセプタクルハウジング10の底面から延出する接続部22とを有している。上記接触部21はプラグコネクタ2の端子と接触し、接続部22は回路基板の対応回路部に半田接続される。この端子20についての詳細は、図2以降を参照してレセプタクルハウジング10との関連で再度後述する。
【0018】
上記レセプタクルコネクタ1の相手方となるプラグコネクタ2は、図1に見られるように、レセプタクルコネクタ1の上半部10Aに形成された嵌合外面12に嵌合する嵌合凹部(図1には表われず)が電気絶縁材製のプラグハウジング50の周壁51の内部に形成され、また該レセプタクルコネクタ1の端子20に対し相手接続体となる端子60をプラグハウジング50により保持している。該プラグハウジング50はコネクタ幅方向の両端部にレセプタクルコネクタ1のレセプタクルハウジング10に設けられた金具保持突部14と同様な金具保持突部52が設けられ、ここにレセプタクルコネクタ1の固定金具30と同様な固定金具70が取り付けられている。該固定金具70は、レセプタクルコネクタ1の固定金具30と同様に、門型をなし、コネクタ厚み方向に突出する固定部71を有し、該固定部31で回路基板への半田固定される。上記位置決め部52は、図1で上方に向く底面52Aが回路基板上での位置を決める。
【0019】
プラグコネクタ2の端子60は、レセプタクルコネクタ1の端子20の接触部21と接触する接触部(図1には表われず)と、回路基板の対応回路部に半田接続される接続部61とを有している。この端子60については、これと保持するプラグハウジング50との関連で、図2以降を参照して上記レセプタクルコネクタ1の端子20と併せて後述する。
【0020】
次に、レセプタクルコネクタ1の端子20とプラグコネクタ2の端子60について、それぞれを保持するレセプタクルハウジング10とプラグハウジング50との関連で説明する。
【0021】
レセプタクルコネクタ1の端子20は、図1に見られるように、コネクタ厚み方向で対向して一対をなし、コネクタ幅方向を配列方向として複数対配列されている。図2にはコネクタ厚み方向(図2にて左右方向)で対向している一対の端子20が図示されている。一対の端子20の両方は同一形状をなしていて、図2にて互いに左右対称をなすようにして対向配置されているので、ここではその一方について説明するに留める。
【0022】
上記レセプタクルコネクタ1の端子20は、金属板製で、図3(A)のごとく、帯状片を屈曲した形状を有している。端子20は、折曲部23で重なるように折曲され、該折曲部23で連結された二つの基部24A,24Bからそれぞれ上方に延びる腕部25A,25Bと、一方の腕部25Aの基部24Aから下方に延びる延長部26Aの下端からL字状に屈曲されて横方向に延びる接続部22とを有している。
【0023】
端子20は、図3(A)そして図4(A)〜(C)にも見られるように、一方の腕部25Aがその上方先端縁を除き基部24Aそして延長部26Aと平坦な同一の板面をもつ帯状に形成されている。上記腕部25Aは、該腕部25Aの板厚方向(上記板面に対して直角方向)に見たときに、基部24Aから上方先端に向け幅を狭めていて上方先端部に、三角形状をなし幅方向の一方に突出する接触突部28Aが形成されている。該接触突部28Aは上方先端縁がプレス加工により板厚方向にクランク状に屈曲されて板厚の半分位、他方の腕部25Bの方に寄った接触部21Aを形成し、該接触部21Aが上記幅方向に突状をなす三角形の頂部で相手接続体としてのプラグコネクタ2の端子60と接触するようになる。上記接触部21Aは基部24Aに対し、板厚方向で上記板厚の半分位偏倚している。
【0024】
上記一方の腕部25Aはその基部24Aで他方の腕部25Bの基部24Bと点状の溶着あるいはカシメ24Cにより結合されていて補強が図られている。上記一方の腕部25Aの基部24Aから下方に延びる延長部26Aの両側縁のそれぞれには、上下して二箇所ずつ、突出した被固定突起29−1,29−2;29−3,29−4が設けられている。該被固定突起29−1,29−2;29−3,29−4は上記延長部26Aをレセプタクルハウジング10に後述の対応の端子保持孔へ圧入したときに、該端子保持孔に喰い込んで位置が固定されるとともに抜け防止を図る機能を有する。
【0025】
上記延長部26Aの下端で該延長部26Aの面に対して直角な面をもつように屈曲されてから略L字状に屈曲されて横方向に延びる接続部22は、該接続部22の幅方向での位置を上記延長部26Aの方向に戻すように曲げられてから中間にて板厚方向でクランク状に屈曲されていて、その先端側が回路基板との半田接続に供する。
【0026】
上記折曲部23で上記一方の腕部25Aの基部24Aと連結された基部24Bから上方に延びる他方の腕部25Bは、該腕部25Bの板厚方向に見たときに、図4(A),(C)にも示されるように、その形状そして幅寸法が上記一方の腕部25Aとほぼ同じとなっているが上方先端部の接触突部28Bが一方の腕部25Aの接触突部28Aよりも若干下方に位置している。すなわち、他方の腕部25Bの基部24Bから接触突部28Bまでの距離の方が一方の腕部25Aの基部24Aから接触突部28Aまでの距離よりも若干短い。この他方の腕部25Bの接触突部28Bは、板面に対し直角方向から見たときには、一方の腕部25Aの接触突部28Aとほぼ同一の三角形状をなし該接触突部28Aよりも若干下方に位置していて、その頂部も上記接触突部28Aと同じ高さをなしているが、接触突部28Bの先端縁が接触部21Aのようには屈曲されておらず、該接触突部28Bの頂部が該接触突部28Bの板厚方向で腕部25Aの方へ向け偏倚するよう小さくクランク状に屈曲されていて、その頂部が接触部21Bをなして相手接続体としてのプラグコネクタ2の端子60と接触するようになる。
【0027】
かくして、一方の腕部25Aの接触部21Aと他方の接触部21Bは、図2に見られるように、両コネクタの接続方向(図2にて上下方向)で高さ位置が若干ずれているが、コネクタ厚み方向(図2にて左右方向)で同一位置にあり、また、端子配列方向(図2にて紙面に直角方向)となるコネクタ幅方向でも同一位置にある。したがって両接触部21A,21Bは上記接続方向の一つの直線上にあり、該接続方向で前後(図では上下)にずれて位置していることになる。
【0028】
上述のごとく、接続方向で一つの直線上に前後して位置する接触部21A,21Bをそれぞれ有する腕部25A,25Bは、それらの基部24A,24Bで折曲部23により連結されているので、互いに板面同士が至近しつつも僅かながら隙間を形成していて、互いに独立してコネクタ厚み方向(図2にて左右方向)となる端子幅方向で基部24A,24Bを基点として弾性撓み変位が可能である。
【0029】
かかるレセプタクルコネクタ1の端子20は、図1そして図2に見られるように、左右で対向して対をなすとともに、この対が複数配列されて、レセプタクルハウジング10により保持されている。該レセプタクルハウジング10は、その外形が図1にもとづき既述した形態をなしているが、その内部は上部に受入凹部11が形成され、該受入凹部11の内面から下方へ向けて延びレセプタクルハウジング10の下面に開口するように貫通する端子溝15が端子20の配列位置に形成されている。上記端子溝15は、レセプタクルハウジング10の比較的厚い底壁16では、スリット孔になっていて端子保持孔15Aを形成している。上記端子20は、この端子保持孔15Aへ下方から上方へ向け圧入されて、端子20の延長部26Aの両側縁に設けられた被固定突起29−1,29−2;29−3,29−4が上記端子保持孔15Aの内面に喰い込み、端子20の位置を定めるとともに抜けを防止する。端子20の二つの腕部25A,25Bは、上記レセプタクルハウジング10の受入凹部11の内面に形成された端子溝15内に収まり、接触部21A,21Bのみが該端子溝15から突出している。端子20の接続部27はレセプタクルハウジング10の底面側で該レセプタクルハウジング10外にあって、レセプタクルコネクタ1が回路基板上に配置されたとき、該回路基板の対応回路部に接面する位置にある。
【0030】
このようなレセプタクルコネクタ1に対し嵌合接続されるプラグコネクタ2は、図2に見られるように、レセプタクルコネクタ1のレセプタクルハウジング10の上半部10Aが嵌合外面12Aで嵌合する嵌合凹部53が形成されたプラグハウジング50が端子60を保持している。上記嵌合凹部53はその内面が上記レセプタクルコネクタ10の上半部10Aの嵌合外面12が嵌入するに好適な寸法に作られており、該嵌合凹部53の中央部には、上記レセプタクルコネクタ1の受入凹部11へ進入する嵌合凸部54が形成されている。
【0031】
上記嵌合凸部54の両面には、図2において、端子60の接触部62が左右で対向して位置し、紙面に直角方向に配列されている。該端子60は、紙面に直角方向すなわち端子配列方向に幅をもつ帯状金属片をその板厚方向に屈曲して、全体として略逆L字状の形状を有している。該端子60は、図2に見られる状態で、プラグハウジング50の底面(図2では上面)からプラグハウジング50外へ突出するとともに逆L字状に屈曲されて横方向に延びていて、この横方向部分の先端側(自由端側)がクランク状に段部をなし、その先端部が接続部61を形成している。該接続部61は、回路基板(図示せず)の対応回路部との半田接続に供する。
【0032】
かくして、プラグコネクタ2の端子60は、上記レセプタクルコネクタ1の端子20と板面同士が直角をなす。したがって、レセプタクルコネクタ1の端子10に形成された先端縁が屈曲されて狭い接触幅の接触部21Aそして板厚幅となる狭い接触幅の接触部21Bに対し、プラグコネクタ2の端子60の帯状をなす接触部62はその幅方向に広がる板面で接触するので接触可能範囲が広くなり、確実にレセプタクルコネクタ1の端子10の接触部21A,21Bが上記接触部62の範囲に収まる。
【0033】
また、上記プラグコネクタ2の端子60は、その接触部62がプラグハウジング50の嵌合凸部54の壁面で接面保持されていて、対向する両接触部62の表面同士間距離が一定しており、その距離は、図2に見られるように、レセプタクルコネクタ1の対向する端子20の自由状態における接触部21A同士間そして接触部21B同士間の距離よりも、僅かな量δだけ大きくなっており、コネクタ嵌合時に、上記接触部62が接触部21A,21Bを上記量δだけ弾性変位させるようになっている。
【0034】
次に、上述のレセプタクルコネクタ1と相手方たるプラグコネクタ2との使用要領について図2そして図3をも参照しつつ説明する。
【0035】
図2は、既述の説明にて参照されているが、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2とのコネクタ嵌合接続前における端子位置での縦断面図であり、図3は両コネクタ1,2から端子20,60を一つずつ抜き出して示しており、(A)はコネクタ嵌合接続前、(B)はコネクタ接続後の状態である。
【0036】
先ず、レセプタクルコネクタ1を対応の回路基板上に配し端子20をその接続部22で上記回路基板の対応回路部と半田接続するとともに固定金具30の固定部31を対応部へ半田固定する。一方、プラグコネクタ2を対応の他の回路基板上に配し端子60を接続部61で上記他の回路基板の対応回路部と半田接続するとともに固定金具70の固定部71を対応部へ半田固定する。
【0037】
次に、上記回路基板そして他の回路基板の図示が省略されている図2そして図3(A)に示されるように、レセプタクルコネクタ1の上方にプラグコネクタ2をもたらし、両コネクタ1,2を嵌合接続に備えた位置そして姿勢とする。この図2の状態では、レセプタクルコネクタ1が取り付けられた回路基板は該レセプタクルコネクタ1の下面に位置し、プラグコネクタ2が取り付けられた他の回路基板は該プラグコネクタ2の上面に位置し、上記回路基板と他の回路基板は平行な姿勢を保っている。
【0038】
しかる後、他の回路基板に取り付けられている上記プラグコネクタ2を降下させると、該プラグコネクタ2の嵌合凹部53へレセプタクルコネクタ1の上半部10Aが、そして該レセプタクルコネクタ1の受入凹部11へプラグコネクタ2の嵌合凸部54がそれぞれ嵌入を開始するようになる。
【0039】
プラグコネクタ2の嵌合凸部54のレセプタクルコネクタ1の受入凹部11への嵌入開始直後、プラグコネクタ2の嵌合凸部54の壁面上に位置する端子60の接触部62がレセプタクルコネクタ1の受入凹部11内に位置する端子20の接触部21A,21Bのうち接触部21Aと先に接触し、次に接触部21Bと接触する。その際、該接触部21A,21Bは上記接触部62により側方へ圧せられて、腕部25A,25Bが側方へ弾性撓みを生じて、上記量δだけ弾性変位する。すなわち、接触部21A,21Bは該弾性変位量δに相当する分の接圧をもって上記接触部62と接触するようになる(図3(B)をも参照)。なお、本実施形態において、上記腕部25A,25Bが弾性撓みする際に、併せて延長部26Aも弾性撓みしてもよく、そうすることで接触部21A,21Bにおける上記量δを容易に確保できる。
【0040】
既述したように、コネクタ接続方向(図2では上下方向)の一つの直線の上に、上記接触部21A,21Bが前後して(図2では上下して)位置している。したがって、コネクタ嵌合前にプラグコネクタ2の端子60の接触部62に異物が付着していたり、あるいはコネクタ嵌合時にプラグコネクタ2の上記接触部62とレセプタクルコネクタ1の上記接触部21Aとの間に異物が咬み込まれたとしても、プラグコネクタ2の接触部62に対して先に接触するレセプタクルコネクタ1の接触部21Aと上記接触部62の間の上記接圧により、異物は、側方に排除されるので、コネクタ接続方向での上記一つの直線上で上記接触部21Aの後方に位置していて次に接触部62に対して接触する接触部21Bには異物が至ることがない。したがって、レセプタクルコネクタ1の端子20の二つの接触部21A,21Bのうち、少なくとも後方の接触部21Bでは、プラグコネクタ2の接触部62との間で良好な接触が確保される。
【0041】
本発明おけるレセプタクルコネクタ1の端子20は、図1〜4に示された状態に限定されず、種々変形が可能である。図5(A)〜(C)には、その可能な変形例をそれぞれ示している。なお、図5(A)〜(C)では、端子20はその基部から上方の腕部のみを示しており、延長部や接続部は図示が省略されている。
【0042】
第一の変形例を図5(A)に示す。既出の図1〜4の端子20は、一方の腕部25Aに設けられた三角形状の接触突部28Aの先端縁がクランク状に板厚方向で屈曲されて接触部21Aを形成していたが、図5(A)の変形例では、一方の腕部25’Aは何ら板厚方向に屈曲されておらず、平坦板そのままであり、したがって、接触部21’Aは三角形状の接触突部28’Aの頂部の板厚面で形成されている。これに対し、他方の腕部25’Bにおける三角形状の接触突部28’Bがその根元部で板厚方向にクランク状に屈曲されて板厚方向に偏倚することで、接触部21’Aを通るコネクタ接続方向の一つの直線上に接触部21’Bが位置するようにしている。したがって、他方の腕部25’Bの接触突部28’Bにおける偏倚量は、既出の図1〜4の接触突部28Bの場合よりも大きい。
【0043】
次に、第二の変形例であるが、図1〜4では一方の腕部25Aの三角形状の接触突部28Aの先端縁がクランク状に板厚方向に屈曲されていたが、この第二の変形例では、図5(B)に見られるように、一方の腕部25”Aでは、接触突部28”Aの全域が板厚方向に偏倚するように該接触突部28”Aの根元部分でクランク状に板厚方向で屈曲されている。他方の腕部25”Bでは接触突部28”Bは何ら屈曲されておらず平坦である。
【0044】
そして図5(C)に見られる第三の変形例では、図5(B)の一方の腕部25”Aと図5(A)の他方の腕部25’Bとの組み合わせのごとくの屈曲例である。第一の変形例では他方の腕部25’Bのみがそして第二の変形例では一方の腕部25’Aのみが板厚方向に偏倚するようにしたので、それらの偏倚量はほぼ板厚あるいは板厚より若干大きくなっていることが必要であったが、第三の変形例では両方の腕部で互いに近づく方向に偏倚しているので、片方の腕部の偏倚量は第一そして第二変形例の場合にくらべ、略半分ですむようになるので加工が楽である。第三の変形例では、図5(B)の一方の腕部25”Aと図5(A)の他方の腕部25’Bとを組み合わせてあるが、他方の腕部25’Bはその先端(上端)が一方の腕部25”Aの接触突部28”Aと干渉しないように切り落としてある。
【0045】
かくして、第一ないし第三の変形例においても、接触部が腕部の他部に対して板厚方向で偏倚することで、二つの腕部の接触部はコネクタ接続方向で一つの直線上に前後して位置するようになる。
【0046】
本発明は、実施形態としてレセプタクルコネクタの例で説明したが、レセプタクルコネクタでもプラグコネクタでもよい。また、相手接続体としてプラグコネクタの例を示したが、プラグコネクタでなくとも、回路基板であってもよい。また、二つの腕体の接触部同士は、端子配列方向で同一位置にあったが、同一でなくとも端子配列方向で重複して位置していればよい。
【0047】
さらに、本発明のコネクタの端子は、二つの腕体を有する例で説明されたが、腕体は三つあるいはそれ以上有していてもよく、その場合でも、各腕体の接触部は、コネクタ接続方向で異なる位置にありながら、端子配列方向では、同一もしくは重複する位置にある。
【符号の説明】
【0048】
1 (レセプタクル)コネクタ 24A,24B 基部
10 (レセプタクル)ハウジング 24’A,24’B 基部
20 端子 24”A,24”B 基部
21(21A,21B) 接触部 25A,25B 腕部
21’ (21’A,21’B) 接触部 25’A,25’B 腕部
21” (21”A,21”B) 接触部 25”A,25”B 腕部
図1
図2
図3
図4
図5